著者
松根 彰志 黒野 祐一 砂塚 敏明 大久保 公裕 吾妻 安良太 藤倉 輝道 後藤 穣 吉福 孝介 大堀 純一郎
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

マクロライドは本来抗菌薬としての作用があるが、慢性副鼻腔炎治療の分野では抗炎症作用としての働きが期待され、近年「マクロライド少量長期投与療法」が確立された。しかし、鼻茸や副鼻腔粘膜に好酸球浸潤が著明に認められ、アスピリン喘息を含む気管支喘息の合併が高頻度に認められる成人での難治性、易再発性の慢性副鼻腔炎には効果がない。経口ステロイドの漸減療法や長期使用に頼らざるをえないのが現状である。一方マクロライドには、過剰な免疫反応の抑制、調整作用やあることも分かってきていることから、直接の治療効果がなくてもステロイドのいわゆる増強する作用(primingeffect、プライミング効果)が期待でき、本疾患治療におけるステロイド使用の減量が期待できると考えられた。手術で得られた鼻茸粘膜の培養系や、術後症例に対するマクロライド少量長期投与とステロイド点鼻の併用効果から、期待されたプライミング効果はすべての症例に対して認められたわけではなかったが、程度の差はあるものの症例によっては認められた。どのような症例で認められるかについては今後の検討課題である。ただし副作用の点などから、術後の内服ステロイドの30~40mg/dayからの漸減療法2週間終了後、マクロライドの少量長期投与にステロイド点鼻(鼻噴霧用ステロイドよりはベタメタゾン点鼻)の併用でとりあえず様子を見ることは意義のあることであり、今回の重要な研究の成果と考えられる。更なる症例の蓄積による検討が必要である。
著者
米田 佐紀子 西村 洋一 細川 真衣 物井 尚子 ヒューズ ジェイソン
出版者
北陸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は小学生から大学生までを対象に、CEFRに基づくポートフォリオの使用により英語学習に目標を持たせることができるか、また、英語力に影響があるか検証することを目的として実施された。使用した材料はEuropean Language Portfolioに基づくポートフォリオ、ケンブリッジ英検、英語学習および動機づけ等に関する質問紙である。合計4,479名の調査参加者のうち3年間の追跡調査データが得られた869名のデータ分析の結果、ポートフォリオ評価高群は低群に比べて、動機づけ、異文化友好オリエンテーションの得点が高いことが確認された。一方、導入には制度的枠組みが必要であることが分かった。
著者
樹林 千尋 阿部 秀樹 青柳 榮
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

世界保健機構がWHO方式癌疼痛治療方針を発表して以来、モルヒネの消費は増大しており、先進国ではモルヒネ消費の主目的は癌治療と言われている。しかしながら、モルヒネには連用による耐性や依存を生じる深刻な欠点があり、モルヒネに代わる強力な非麻薬性鎮痛薬の開発が世界的に求められている。インカビラテインは最近角高Incarvillea sinensis(ノウゼンカツラ科)より発見された新奇モノテルペンアルカロイドである。本アルカロイドはモルヒネに匹敵する強力な鎮痛作用を示すことが見出され、その作用はオピオイド受容体よりもアデノシン受容体の関与が大きいことが示唆されていることから、非麻薬性鎮痛薬のリード化合物として期待される。本研究は、このような特異な化学構造と顕著な薬理活性を有するインカビラテインの全合成を完成させ、さらに、アデノシン受容体アゴニスト性の解明及びアナログ合成・活性評価へと展開し非オピオイド性鎮痛薬創製を目的とする。角嵩抽出物中にインカビラテインと共にインカビンCが共存することから、インカビラテインの生合成前駆体はインカビンCであると推定される。そこで初めにインカビンCの合成を行った。L-酒石酸より導いたシクロペンテノン誘導体、アルケニルスズ化合物、ヨウ化メチルの3成分連結法によりトリ置換シクロペンテノンを合成し、次いで分子内還元的Heck反応を経て(-)-インカビンCの合成を行った。次に、同様の経路により6-エピインカビリンを合成し、フェルラ酸の[2+2]光二量化反応によって得られたα-トルキシル酸と光延反応により結合することにより、目的とした(-)-インカビラティンの最初の全合成に成功した。
著者
川端 輝江 仲井 邦彦
出版者
女子栄養大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

宮城県沿岸部に在住する妊娠女性523 名の母体血と臍帯血赤血球中脂肪酸分析を行い、n-6 系多価不飽和脂肪酸(PUFA) であるアラキドン酸(ARA)とn-3 系PUFA であるドコサヘキサエン酸(DHA)の、母から児への移行について検討を行った。その結果、臍帯血PUFA は母体血PUFAを反映し、臍帯血赤血球中PUFA レベルの決定要因として、胎盤を介した母から児への移行が重要であることが示された。さらに、妊娠期間中の経時的な観察から、母体血ARA は妊娠末期に低下したが、DHAの変化はほとんどみられず、母の体内DHA は、妊娠末期に高まる児のDHAの需要を満たしていた可能性が示唆された。
著者
中山 茂樹 積田 洋 鈴木 弘樹 鈴木 弘樹
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

隔離室の調査分析では、1、 変化の乏しい閉鎖された空間で、空間要素を改良することは、患者の空間に対する満足度をよくする。また、唯一外的情報としての窓からの風景は、患者にとって重要な空間要素である。2、 隔離室に長期入院するほど患者は、安全・安心感において良い評価となる。3、 入院回数が1回の患者の全員が、自宅が安全・安心・居心地がよいと回答し、複数回の入院患者は隔離室が安全・安心・居心地がよいと回答する割合が増えてくる。共用エリアの調査分析では、1.統合失調症患者および認知症患者において、1人あたりの空間量的増加や空間が新しくなるなどの環境の変化は、身体的症状、睡眠障害などを改善する。
著者
坂内 徳明 金澤 美知子 鳥山 祐介 ニコラエフ N. V. イリイナ O. N. 坂内 知子 ニコラエヴァ N. V.
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、ロシア近代の社会と文化に関する諸問題を考察する上で欠かすことのできない貴族屋敷(ウサーヂバ)という文化現象を特に近代ロシア文学の成立をめぐる「環境」として捉え、ウサーヂバ文化の意義について明らかにすることにあった。本研究の最終年度にあたる平成27年度には、これまで三カ年の研究成果を全体で11本の論文ならびに翻訳、さらに文献目録としてまとめ、成果報告書(176ページ)として刊行することができた。本研究の成果により、ロシア・ウサーヂバの文化史的意義の大きさが明らかになり、加えて、この現象がさらなる学際的な研究対象となることが確認された。
著者
小森 康加 榎本 至 北田 耕司
出版者
大阪国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

水球競技において,シュート時の投球速度は競技力を構成する重要な要因であるが,投球速度を決定する体力的要因は明らかではない.これは投球動作が多くの体力要素で構成され,複雑に関与しているためであると考えられる.本研究では,水球競技におけるシュート時の投球速度と体力特性との関係を明らかにし,投球速度に関連した体力要素を検証することを目的とした.その結果,水中での投球速度と最も関連した体力要素は水中垂直跳びであった.動作制限法の結果からも,水中での下肢の動作の貢献度が大きいことが明らかとなったことから,投球速度を向上させるためには下肢を中心とした水中トレーニングを確立する必要性があると考えられた.
著者
堀井 惠子
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

国内外からの社会的ニーズの高い留学生の就職支援のためのビジネス日本語教育のための調査研究として、中国、ベトナム、タイなどの海外の日系企業の人事担当者ならびに元留学生にニーズ調査を行った。調査結果の分析から、ロールプレイ教材、プロジェクト型教材を開発、教育実践を行い改善をはかりながら、教授法を構築した。口頭表現教育、文書表現教育、読解教育の実践をまとめビジネス日本語教育の評価としてCAN-DO-STATEMENTの施策を試みた。研究の発信と活性化のために日本語教育学会テーマ研究会としてビジネス日本語研究会を設立した。
著者
松尾 正人
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、旧藩華族について、史料に基づいた実証的な研究を行い、旧藩華族の国家的役割及び社会的意義を明らかにすることを目的とした。第一に、山口県文書館に所蔵されている毛利家文庫の調査を行い、廃藩置県後の大名家当主に関係する資料を収集してその内容を分析した。これにより、廃藩置県とその後の長州藩の動きを明らかにし、幕末長州藩研究に新たな視点を提起することができた。毛利家研究の前進に結びつけることができたと思われる。第二に、徳川幕府崩壊後に徳川家を相続し、静岡藩主となった徳川家達について、英国での調査や静岡県立図書館所蔵史料の調査を実施して、史料を収集し、考察を行った。
著者
植田 毅 藤井 雅留太 森本 元 宮本 潔 小作 明則
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

青い羽根を持つルリビタキの羽枝の断面TEM画像より、羽枝を多孔質誘電体円筒とした数理モデルを完成し、様々な入射角に対する反射特性を計算した。その結果、ルリビタキの羽の反射スペクトルはポーラス構造による反射で、また、エアーロッドがランダムに並んでいることが本質的であること、反射スペクトルが青色より長波長側に尾を引くのは光が斜めに入射した部分の寄与であることを示した。また、網目構造を持ち、より複雑なカワセミの羽枝の実測に基づく数理モデルを完成した。
著者
溝部 明男 銭 閑適 劉 晴暄 張 泓明 ガザンジエ
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大村英昭は「煽る文化」と「鎮める文化」という図式を提唱した。ある戦友会の参与観察と大村の図式に基づいて、戦友会とは、旧軍の将兵意識を鎮めるための一つの装置であると特徴づけた。戦友会のメンバーは、(1)過去の軍隊風振舞いの再現、(2)戦争体験の物語り、(3)戦死者の慰霊を通じて、彼らの軍隊体験を見直す共同作業に従事していると考えられる。軍隊体験の物語りの一つのタイプは、次のようなものである。出征を拒否することはできなかった。国を守るために戦った。戦死者は戦争の犠牲者である。英霊ではない。彼らの物語りの根底には、太平洋戦争は国を守るための戦いであった、という見方が横たわっているように思われる。
著者
大出 春江 中村 美優 松田 弘美 古川 早苗
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成19年度は過去3年間の研究成果をまとめる形で、定例研究会の実施、学会報告、報告書の作成を行った。また在宅医療をめぐる全国大会が開催され、このうち千葉、東京、岐阜、大阪の大会に参加し、在宅医療にかかわる専門職者らと交流を深めた。以下は、学会発表と報告書の骨子でもある研究成果を担当毎に要約したものである。1)在宅の看取りと家庭看護の歴史(大出):明治期から現代までおよそ100年間の在宅の看取りの変遷について、家庭看護書の記述をもとに明らかにした。1960年代前後から、死にゆく身体への関わりは看護職にゆだねられる経過が示される。2)死後処置からみた看取りの歴史と担い手(古川):明治期の看護職による死後処置が伝染病対策からはじまり、そこに民俗慣習の儀礼が組み込まれていった経過が看護教科書等の文献研究から示される。さらに近年、急速な広がりをみせる〈エンゼルメイク〉のもつ効果と危うさについても触れ、死後処置の行方を論ずる。3)看取りを実践した家族からみた在宅医療と訪問看護(中村):看取りを実践した兵庫県・家族7例に対し、主介護者を対象に実施した半構造化インタビュー調査(2004年12月〜2006年8月実施)結果の分析。看取る家族からみた病院、疾師、訪闇看講師、存宅疾療に必藝た俗源やネットワークの必要性が明らかにされる。4)長野市訪問看護ステーションからみる在宅医療と訪問(松田):長野市内4カ所の訪問ステーションにおける調査をもとに、訪問看講STが病院併設型の場合、病院との円滑なコミュニケーションと情報の共有により、在宅療養の患者および患者家族の<ゆれ>を支える構造的な基磐を提供していることが示きれた。5)在宅医療という経験と運動(大出):長野県、兵庫県、大阪府にそれぞれ在宅医療を実践する無床診療所を開設する医師ヘのインタビュー調査から、2006年度在宅療養支援診療所という新たな制度の導入と受容を医師の視点から捉えている。
著者
有薗 育生 竹本 康彦
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

生産技術の向上から精密な製造が可能となった近年では,規格値を満たさない不適合品が製造される割合,不適合品率は極めて小さい環境が現実のものとなってきた.ただし,これに対応してより高度な解析技術を組込んだ品質管理システムの設計・開発が急務であった.本研究では,適合・不適合とする従来の品質評価と比べ緻密な評価を与える品質基準を採用して従来の解析技術の高度化を図り,ハイクオリティ環境下での次世代品質管理システムの土台となる方法の確立を実現した.
著者
筧 久美子 成田 靜香 林 香奈 野村 鮎子
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

この研究は、女性の視点から中国の古典文学を読み直すことに主眼をおいたものである。具体的には、古典文学の中で「女」がどのように描かれたか、どのような女性像が形成されたかについて、作品を分析した。個別の研究としては、筧久美子が主に清末の評論を、野村鮎子が宋・明・清の寿序や墓志銘を、林香奈は六朝の詩文を、成田静香は唐の詩文を中心にした。なお、研究メンバーが集まって、東京の中国女性史研究会が出版した『論集 中国女性史』について批評を行い、その一部を研究主担者である筧が「書評『中国女性史』」(『女性史学』11号)として公表した。さらに筧は女性の称謂や『列女伝』についても考察をすすめ、「漢語称謂-女性語を中心に」(新村出記念財団報15号)、「『列女伝』という書物」(女性史総合研究会会報No.86)などを発表した。六朝時代を担当した林は、「妬婦」(嫉妬する女)に関する研究をすすめ「『妬婦』考補説-恐妻家の記録-」(『言語文化論叢』6号)を発表している。明・清時代を担当した野村は、女性の寿序についての研究をすすめ、明清時代に女性の寿序という新しい散文の文体が流行することを、当時の「孝」と「家」の思想から分析した。これは、中国から出版された『明清文学とジェンダー』に「明清女性寿序考」というタイトルで収められている。
著者
出原 隆俊
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

明治20年代半ばに、大阪を拠点とする雑誌『葦分船』と『大阪文芸』が、別々にではあるが、森鴎外と論争をしている。これは鴎外が石橋忍月や斎藤緑雨と論争していることに絡んでである。それに対して『早稲田文学』などもからかい気味に発言している。緑雨も『葦分船』との間でやり取りを交わしている。関西対東京という構図が出来そうなのであるが、『葦分船』と『大阪文芸』の間にも鴎外との場合と同じような、いささか口汚い論争が起きているのである。この時期には〈地方文学〉という表現が見られるようになり、中央来壇からは関西もその一つの対象であるが、その関西からも東京以外の地域に対して〈地方文学〉という視点で関心を払っていることが確認される。『大阪文芸新聞』第二号(明治三十一年五月十七日)で、木崎好尚は『国民之友』一号の好尚の「時文一家言」を取り上げて、「文学の東都にのみ集中せるを叙して所謂上方文壇を鼓吹せり」と記したことについて、「一大感謝の意を表」している。しかし、二面には菊池幽芳の「大阪文壇管見(二)」が、「大阪文壇は何故に進歩せざるか」・「大阪文壇に評論なし」・「何ぞ競争なからん 何ぞ刺戟なからん」という小見出しが、その内容を示している。これは、一面トップの藤田天放「大作催促の声」が、大阪に特定するのではなく「久いかな、小説界に大作を催促の声の喧きことや今の世に新作の小説とし云へば、端物に限り、短篇に止まるが如き、」と指摘するのと重ねて考察することが出来よう。『みをつくし』第九号(明治三十二年九月十目)の巻頭に「歴史的観念を論じて大阪の文学に及ぶ」にも同様の趣旨の発言がある。明治20年代半ばの関西文壇を興隆させようという動きが停滞しているとの苦い認識がある。しかも、それは中央の文壇の状況とも無縁の物ではなかった。関西文壇という視点は中央文壇を相対化するのに有効であると確認できる。
著者
古川 雅人 原 和雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究課題では,旋回失速の初生時における旋回擾乱波の発生形態および伝播挙動に及ぼす翼端漏れ渦の崩壊の効果を調べることにより,擾乱波の発生メカニズムを明らかにして,旋回失速の予知モデルを新たに構築することを目的として,軸流圧縮機動翼列の失速点近傍に対し,動翼列の上・下流の三次元速度ベクトル場の非定常測定を行うとともに,動翼列全周にわたる大規模なRANS非定常流れ解析を実施した.以上の解析から,比較的大きな翼端すき間をもつ場合には,翼端漏れ渦の崩壊に起因した旋回失速の初生が発生するが,翼端すき間の小さい場合には,前縁はく離が支配的な旋回失速の初生形態が発現することが明らかにされた.大きな翼端すき間を有する場合,失速点近傍において,前縁はく離よりも先に翼端漏れ渦のスパイラル形崩壊が動翼列全ピッチで発生し,流量の低下とともに,漏れ渦は崩壊による自励振動を強め,隣接翼圧力面だけでなく,負圧面とも干渉を始め,負圧面境界層のはく離が引き起こされることを示し,そのはく離を伴う漏れ渦と負圧面の干渉は動翼列の回転方向とは逆方向へ伝播し,旋回不安定擾乱を形成すること,それらの干渉の結果,翼負圧面と隣接翼圧力面とに足を持つ大規模なはく離渦構造が形成され,部分スパン形の旋回失速形態へと至る.一方,翼端すき間の小さい場合,失速点近傍においても,翼端漏れ渦は弱く,渦崩壊を示さず,流量の低下とともに,前縁はく離が発生して旋回失速へと至ることを示し,その旋回失速セルは翼負圧面とケーシング面に足を持つ竜巻状のはく離渦に支配されること,そのはく離渦構造は非常に大きなブロッケージ効果を持つため,隣接翼に接近するとともに,隣接翼の迎え角を増大させて前縁はく離を誘起し,隣接翼に新たな竜巻状のはく離渦を発生させる結果,失速セルが周方向に伝播する.
著者
三原 法子 冨樫 整 田村 朝子
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

加齢に伴い、摂食嚥下障害(食物の飲み込み障害)が起こる。現在の医療や福祉施設では、栄養状態や食事の選択は管理栄養士が、摂食嚥下状態は医師や言語聴覚士が、咀嚼機能は歯科医師が、それぞれ判定しています。嚥下食は、その他の判定と合わせることなく提供されている。そのため、栄養・摂食嚥下状態・咀嚼機能を合わせてみることができる新指標が必要となる。我々の研究結果より、学会分類に添った物性値を提案し、咀嚼機能とサルコペニア判定に基づいた要介護高齢者向けの「食形態選択表」を作成した。
著者
鈴木 雅人 松本 章代 北越 大輔 松本 章代
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

一般の手書き文章では,字形に筆者の癖が強く現れ,また文章自体が日本語構文に合致しない場合が多いため,高い認識精度を実現するのが困難であった.本研究では,日本語構文の変遷・誤用に対する対策として,自然言語処理やデータマイニングを用いた,日本語構文解析の自己組織化モデルと,筆者の癖などに対応可能な標準パタン作成のための学習パタンの自己生成に関する研究を行った.その結果,従来の方法に比べて,手書き文章の認識精度を改善することができた.
著者
渡邉 尭 野澤 恵
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

太陽活動周期の上昇期から極大期に及ぶ1997-1999年に発生したCMEに伴う惑星間空間衝撃波の伝播特性を調べた.主なデータ源は,人工衛星や電波シンチレーション観測によって得られた太陽風データと,「ようこう」やSOHOなどの太陽観測衛星によって得られたコロナ画像である.この研究によって明らかになったことは,CMEの発生・伝播において,コロナ・太陽風における磁気中性面の役割が本質的に重要である,という点である.CMEの形状と磁気中性面との関係については,磁気中性面が惑星間空間衝撃波の伝播に対して,磁気中性面の方向に低速度の部分が形成されたり,惑星間空間衝撃波の広がりを制限することが示されたが,その後の研究により,CMEの一見複雑に見える構造は,コロナ中のsource surface近辺の磁気中性面に沿って,CMEが形成されていることが明らかとなり,磁気中性面はCMEの発生源となると同時に,CMEや惑星間空間衝撃波の伝搬特性を規制する,という複雑な役割を持っていることが分かった.次いで,CMEや惑星間空間衝撃波による高エネルギー粒子加速についても研究を行った.地上レベルでもそのような高エネルギー粒子が観測されるケースでは,フレアが太陽の西半球において発生していることが多いが,これは太陽と地球を結ぶ磁力線が太陽面を出発する経度である,太陽子午線の西60度の近辺に,800km/secを越える高速のCMEや惑星間空間衝撃波が存在することを示唆している.そのため,例えフレアが東半球で発生しても,CMEや惑星間空間衝撃波が十分な拡がりを持っていれば高エネルギー粒子現象が起こりうる.本研究ではこの点についても,実際の観測例によって確認した.また,CMEを発生させる要因は,コロナ磁場に蓄えられた磁場のエネルギーであることは,以前より指摘されている.その蓄積がどのような形で行われているかを見るため,「ようこう」による軟X線コロナ画像により,プロミネンス爆発が数回発生した場所を数太陽回転にわたって追跡したところ,磁場構造の複雑化に伴って,ポテンシャル磁場を仮定して計算した磁場構造に対して,軟X線コロナ・ループがなす角度が次第に大きくなり,プロミネンス爆発(CME発生)のあと,磁場構造が単純化するとともに,この角度も減少し,エネルギー状態に変化が起きた例がいくつか見られた.
著者
杉浦 勉 山本 一彦 堤 定美 姜 有峯
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

オーバーロード(負担過重)によるインプラント周囲骨の吸収は,インプラント治療の臨床において重要な課題となっている.本研究では,即時荷重および遅延荷重モデルにおいて埋入部位の骨密度がインプラント周囲骨のひずみに及ぼす影響を検討し,オーバーロードのリスクを評価した.皮質骨,海綿骨ともに低骨密度のモデルでは最小主ひずみのピーク値は約-6200μεであったが,それ以外の場合は骨の微小損傷の閾値とされる-4000με以下であった.したがって,埋入部位の骨密度を評価することによって,即時荷重時の周囲骨のオーバーロードのリスクを低減できることが示された