著者
木下 浩作 雅楽川 聡
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

敗血症から多臓器不全への進展には神経内分泌免疫系の破綻と全身性血管内皮傷害の関与が示唆される。体温が上昇した環境での高血糖が血管内皮細胞に与える影響についての検討はない。本研究結果から高温・高糖環境が血管内皮細胞における炎症性物質(炎症性サイトカイン:IL-6)産生を増加させることが明になった。この反応はエンドトキシン存在下で促進される。従って、高体温患者にみられる高血糖は、血管内皮細胞からのIL-6産生などの炎症反応を増大させ、二次性組織傷害を悪化させ、多臓器不全進展の危険因子となり得ると考えられた。高体温の敗i血症患者では、早期からの血糖管理と体温管理が重要な管理項目と考えられた。
著者
北 敏郎 田中 敏子
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

異常環境下により発症する熱中症発生メカニズムを検討した。ラットを用いた熱中症モデルで腸内細菌の侵入(BT)の発生が認められた。次に,熱中症における肝臓障害発生に果たすLPSの役割を検討し,熱中症による臓器障害発生にLPSの関与が示唆された。その結果,熱中症の発生因子のPrimary factorとしてLPSが考えられ,Secondary factorとして蓄熱による直接的障害が発生している可能性が考えられた。
著者
太田 雅春
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

日本企業の今後の課題として、国内産業の空洞化対応、新情報技術対応、環境問題対応、想像型企業への脱皮等に対処できるように組織および業務の変革を図っていく必要がある。本研究の目的は、これらの背景に基づく要請に応えるため、企業転換もしくは社会共生を目指す企業がその方向に向けて自らをスムースに移行することを支援する情報システムがあるとして、それを構築するための環境整備とシステム構築の指針もしくは理論の検討を行い、次の結果を得た。1.企業転換もしくは社会共生を目指す場合、まずは業務改革・改善が必須事項である。まず、製造業の業務構造をその成立の歴史等を振り返って検討し、特にアジリティーという視点にたった場合、業務構造の変革をどのような方向に向けて行うべきかをプリミティブな立場から検討した。2.インターネット等の情報技術の普及も考慮に入れた近年の実務界で注目されつつある業務改革のコンセプトついて、それらが製造業の業務構造のどのような構造に焦点をあててその変革をはかるものであるかを、プロダクション・プロセスマトリックスという概念を導入して検討を行った。3.近年の業務改革は、情報技術の発展、利用をその念頭においたものであることから、業務改革の成否はそのパフォーマンスに影響されると言っても過言ではない。その視点にたって、組織情報システムの性能評価の方法について検討した。4.社会共生企業への向けての業務改革は重要な業務改革の方向性でもある。それに向けて業務改革を行っていく場合、既存の生産性重視、利益重視の価値観から脱却して、社会との共生、具体的には環境との調和という新たな価値観を組織に根付かせる必要があることから、それを行っている先進企業について事例研究を行い、社会共生企業へ向けての価値観の転換手続き、それを支援する情報システムのあり方等を含むその一つの方向性を提言した。
著者
竹中 興慈 落合 明子 小原 豊志 井川 眞砂
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、アメリカ合衆国における「白人性」whiteness意識の構築とその展開過程を社会史的、文化的、思想史的側面から学際的、総合的に検討した。全年度を通じて、毎週1回、2〜3時間程度の研究会を開催した。研究会では、主としてD.Roediger, The Wages of the Whiteness(白人性の代償)をテキストにして、その内容理解とともに、諸問題に関するディスカッションを行った。そのなかで浮上した様々な問題点の解決、および各研究分担者の関連諸テーマを深めるための資料収集、およびアメリカ合衆国の研究者との意見交換のために、平成13年度に竹中興慈がイリノイ州シカゴ、平成14年度に井川眞砂がニューヨーク州エルマイラ、平成15年度に小原豊志がノースカロライナ州チャペルヒルへ出張した。研究補助金による研究の締めくくりとして、『アメリカ社会における「白人性」成立の学際的総合研究』を公刊した。各研究分担者が執筆した内容は、1.竹中が「日本における『白人性』研究の現状と展望」というテーマで、日本における「白人性」研究の持つ問題点と展望を考察した。2.井川は「『ハックルベリー・フィンの冒険』をめぐる人種主義論争-19世紀アメリカの白人作家が描写した黒人像」というテーマで、今日のアメリカ合衆国で展開されている本作品の人種主義論争に関わる黒人描写を検討した。3.小原は「アメリカ合衆国における黒人選挙権問題の19世紀的展開-選挙権における『白さ』の研究-」というテーマで、南北戦争を画期にした選挙権のおける「白さ」の構築・解消・再構築の過程を追究した。4.落合は「人種と記憶-『記憶の場』としての映画『グローリー』-」というテーマで、南北戦争をめぐる記憶の形成と、黒人の排除によって成立した白人性の構築との関係を検討した。
著者
秋元 孝之
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

執務空間温熱環境評価のため、床吹出空調方式が採用されている環境配慮オフィスと既存のオフィスの比較検討のために、執務空間の温熱環境、空気質環境、光環境や、音環境の室内環境の調査を行った。滞在する執務者に対して温熱環境調査や行動調査を実施し、この環境配慮オフィスの各環境が、建築基準法等で定められた基準値を満たしているか、また、滞在する執務者の快適性や生産性への影響があるかを執務者にアンケート調査を行った。温熱環境評価として行ったSET^*の算出では、既存オフィスで最大で26.5℃まで上昇し快適域を0.9℃上回っていたが、新オフィスでは、24.1℃〜25.6℃であった。光環壌評価として行った照度分布測定では、既存オフィスでは、JISZ9110の基準値を下回り期間中の変動範囲は259lx〜1225lxと約1000lxもの差があり、室中央は基準の下限値である750lxを満たすことはなかった。新オフィスでは、期間中を通して基準値の範囲内に収まっていた。音環境評価として行った等価騒音測定では、室内騒音の設計推奨値は43dB_A〜55dB_A程度とされており、既存オフィスは53.3dB_A〜65.2dB_Aと10:30の測定では推奨値を満たしていたが、その後の測定では13dB_A以上増加し推奨値を大幅に超えていた。空気質環境評価として行ったCO_2濃度測定では、既存オフィスで基準値である1000ppmを下回っていたものの最大で733ppmとなり、新オフィスは勤務時間中に平均で483ppm程度であった。知的生産性に関しては、自覚症状しらべで訴え率は新オフィスで若干増えたもののその絶対数は少なく、眼精疲労しらべにおいては既存オフィスでは出勤後から退勤前にかけて訴え率は増加し、新オフィスでは減少傾向にあることから、新オフィス環境において作業性が向上したものと推察される。
著者
左巻 健男
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小学校理科における「ものづくり」のテーマを25選ぶことができた。それらの「ものづくり」は理科の観察・実験とともに、技術的な要素を含んでいる。それらを実際にやって検討する「ものづくりワークショップ」を2回開催し、その成果を『RikaTan理科の探検』誌に2回にわたって掲載した。
著者
DETHELEFS H.J.
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

この研究のテーマはゲーテ時代におけるゴシック様式の再興である。かっては悪趣味と見なされたゴシック様式の再評価は、疾風怒濤時代の、とりわけ若きゲーテによるシュトラ-スブルク大聖堂賛美の功績である。時代の趣味のこのようにラジカルな変化と、ロマン派、特にフリードリッヒ・シュレ-ゲルに見られる芸術の宗教化に至る過程を辿りたい。研究は二部から成る。第一部では英国人の先駆者、リベラルでエクセントリックなウィッグ派貴族党員達について詳論する。彼らのゴシックへの関心は芸術の宗教化や中世賛美からはほど遠いものだった。英国におけるゴシック再興の源は絵画的な庭園芸術という新しい考えである。一見無秩序な風景庭園の中のゴシック建築は、公的な自己表現から私的領域への隠遁表明だった。ヨーロッパ大陸におけるこのような「自然的」ゴシックの最初の例は、リベラルなデッサウ君主、フランツ・フォン・デッサウによって、ワイマ-ル近郊の田舎町ヴェルリッツに建造された。ゲーテはこの場所を愛して度々訪れ、ワイマ-ル市のための造園研究を行った。もう一人のヴェルリッツ賛美者はゲオルク・フォルスターである。フォルスターは後に、未完成のケルン大聖堂を礼賛する演説を書くが、これがF・シュレ-ゲルに強い影響を与えることになる。第二部では、シュレ-ゲルが、多くの点で古典派建築理論から隔たっていないが、超越性に達しようとする建築としてのゴシックの特性を貶めることもない、彼独自の美学的カテゴリーをいかにして構築してゆくか、詳論する。
著者
稲場 進
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究を遂行するにあたり用いたベロトキシン受容体に対する抗体は、CD77に対するモノクローナル抗体であり、これは静岡県立大学生化学鈴木先生より供与された。1.ヒト腎組織におけるglobotriosylceramide(Gb3)の局在に関する検討対象は溶血性尿毒症性症候群3例、IgA腎症14例、紫斑病性腎炎14例、頻回再発ネフローゼ症候群5例とした。溶血性尿毒症性症候群では3例とも糸球体内並びに尿細管上皮細胞に強く染色された。IgA腎症では学校検尿などの無症候性に発見された症例は陰性であり、感冒時の肉眼的血尿発見例やネフローゼ症候群合併例では尿細管上皮細胞や糸球体内に陽性であった。紫斑病性腎炎は全例尿細管上皮細胞並びに糸球体内に陽性であった。頻回再発ネフローゼ症候群では感染合併例で陽性であった。染色部位は尿細管上皮細胞ではほとんどが細胞質であったが、一部核内に強く染色されていた。一方糸球体内では毛細管係蹄壁もしくはメサンギウム領域に染色された。2.培養尿細管上皮細胞におけるGb3の発現の検討ヒト尿細管上皮細胞Cell Line(HK2)を培養し各種サイトカインにて刺激し、Gb3の発現をフローサイトメーターにて観察した。刺激には、IL-1α,IL-6,IL-8,TNF-α,LPSの5種類のサイトカインを用いた。コントロールと比較すると、刺激48時間後にはいずれのサイトカインの刺激でもGb3の発現の増強がみられた。特にTNF-αの刺激で著しく増強した。以上の結果はヒト腎組織においてGb3は、血管内皮細胞のみならず尿細管上皮細胞においても発現しており、その多くは感染を契機として分泌される各種サイトカインが関与していることが強く示唆された。
著者
小嶌 正稔 河野 昭三 村山 貴俊 星野 広和 河野 昭三 村山 貴俊 星野 広和
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

フランチャイジングのシステム的発展を経営革新機能の側面から研究すると共に、システムとしての発展と創業機能変化についてまとめた。フランチャイジングの創業機能の変化については、独立型の起業家とフランチャイジング起業家の比較等から, フランチャイジングの創業機能と創業者が持つ特徴を明らかにすると共に, フランチャイジング起業を活発にするためには, 積極的な情報開示を通してフランチャイジングの透明化を促進することが必要であることを明らかにした。
著者
高橋 日出男 三上 岳彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,関東地方南部を対象とした稠密な雨量計とレーダの資料による強雨頻度の統計的解析と,東京都心域に発生した雷雨に伴う短時間強雨の事例解析を行った.都心域では夕刻から夜半に強雨頻度が増加していること,都心風下側で空間スケールの小さい強雨域が多発していることがわかった.また,都心域の強雨発生事例について,高い都市キャノピーによって強雨域近傍で停滞したガストフロントが強雨の維持停滞に関与した可能性が指摘された.
著者
桜井 智野風
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

遅発性筋痛発生時および治癒過程において、筋内に発生する物質の動態には不明な点が多い。本研究では,骨格筋損傷発生および治癒過程において筋内で発生する発痛関連物質を観察し,それらの物質動態と遅発性筋痛との関連性の解明を試みた。その結果、筋損傷および治癒に関連が深い一酸化窒素(NO)と発痛関連物質の動態に関連性が観察された。NOは損傷細胞の炎症と修復に関与することから、NO発生の遅延が筋痛の遅れを生み出しているものと考えられた。
著者
森本 浩一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

虚構としての表象・表現は,現実としての表象・表現と「区別」される限りにおいて,固有の認知的役割を演じる。従って虚構論は,現実性の本質を扱う存在論と不可分の関係にある。この点については,過去の補助金研究(「文学的虚構の基本性質に関する研究」(2000〜2001年度)課題番号12610568)においても一定の検討を行ったが,これを踏まえつつ,本研究では,虚構の認知的特性とそれが現実認識との関係において持つ役割について考察した。1 虚構の認知的効果。近年,認知科学において,表象内容が真として妥当する範囲(スコープ)を限定する表象機構,いわゆる「メタ表象」の研究が進んでいるが,虚構は,世界に関する直接的な信念形成からの「分離」を特徴とする点で,メタ表象の典型である。虚構は「分離」のもとでの表象の試行・探索を可能にし,それが美的な報酬感を伴うとも考えられる。虚構のメタ表象的メカニズムとその効果について検討した。2 虚構の社会的機能。現実認知を構成する多くの表象は,百科事典的知識や報道・伝聞に基づく公共的表象であり社会的な信念システムであり,個々の表象は多くの場合,確からしさの程度を伴うスコープ付き表象であり,神話的信念や信憑性に乏しい虚構的なものも混入している。解釈を通じた虚構作品の直接的影響を含め,現実認識の構成において虚構や虚構的なものが果たす役割について検討した。3 虚構の現実性。虚構の本来的な「現実性」は,作品の還元的解釈においてではなく,むしろその「部分」消費の過程においてこそあらわになる。詳細は今後の課題であるが,「レイヤー構造」分析の方法論を提示することで,この問題に関する端緒的な検討を行った。
著者
西田 雅嗣
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.実測データの図面化と調査データ整理:補足調査の結果も含めて概ね手許にある実測データの図化は完了した。完成した実測平面図の総覧の結果、多くのものが従来流布している図面に見られる以上の歪みを示し、本研究における図化の意義が認められた。実測数値データについても整理を行い、数値データの比較検討が行えるようになった。2.調査データのデータベース化:完全なデータベース化には至らなかったが利用可能な整理は行った。35mmポジスライドの大量の画像データは、順次デジタル化した。作成済み実測平面図のデジタル化は終了した。3.現地補足踏査:平成13年度はスペイン、ポルトガル、イタリアの初期ロマネスク、末期ロマネスクの、平成14年度は、ル・トロネとセナンクのシトー会修道院について実測を含む補足的な現地調査を行った。正確な実測平面図、数値データが得られ、設計法と霊性表現の両義的プロポーションのあり方の仮説が確認された。4.プロポーション分析:ロマネスクの設計法としての幾何図形の使用の検証は、遺構から確実に言うのは難しいことが判ったが、蓋然性としては否定できないことも判明した。寸法を通じて表れる数、尺数が、当時の尺度単位の扱い方さえ間違えなければ、当時の心性として極めて重要な数象徴を介して、ロマネスク建築の多くを語ることが判った。設計法としての技術的意味の数と、数象徴を伴った霊性の表象との両義的プロポーションであり、寸法を様々なレベルでの建築的表象として捕らえ、当時の建築の意味を理解すると言う、今後の研究の新たな展望につながる視座を得た。5.フランスの大学でのセミナーに於ける口頭発表も含め、比較的多くの研究成果の公表の機会を活用できたが、発表論稿の大半は、寸法を通じて表れるプロポーションの両義的姿の重要性を明らかにすることに関係する論稿となった。
著者
小黒 康正
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、ドイツ文学を考察の中心に据えながら、ヨーロッパ文学におけるトポス「水の精の物語」の古代から現代に至るまでの変遷と、その背後にある「視覚と聴覚の弁証法」の解明を目指した。その結果、トポス「水の精の物語」が聴覚重視と視覚重視の融合と離反を繰り返しながら変容する過程を明らかにした。具体的には、1.ホメロス『オデュッセイア』のセイレンの誘惑手段をめぐって古代から現代にいたるまで知性重視、聴覚重視、視覚重視の概ね三つの異なる見解があること、2.本来は聴覚を重視する「水の精の物語」が次第に変質し、歌うことのない美しい水の精が登場し、視覚のみを重視する伝統が中世において形成されること、3.ゲーテが水の精における歌の欠如という点で伝統の継承者となるが、同時に歌を再び復活させる改革者となり、更には新たな展開の先駆者となること、4.ドイツ・ロマン派によって「水の精の物語」における聴覚重視と視覚重視のふたつの見解が混淆するが、その影響を多大に受けたアンデルセンおいて再び歌声が消失すること、5.その後、新たな「水の精の物語」が多様に展開しながらも、特にドイツ文学では同時に歌声の欠如という点で共通し、我々に新たな身体論的問題を問うに至っていること、6.このような更なる展開が近代日本文学の人魚をめぐるディスクールに決定的な影響をもたらし、またもたらし続けていること、以上の六点を明らかにした。
著者
小林 直人 濱田 文彦
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

平面内細胞極性形成シグナルは、細胞膜上に存在するFrizzled-1受容体を中心に構成されるが、この受容体と結合するリガンド分子は不明である。本研究では未知のリガンド分子の同定を目的とし、培養細胞を用いて受容体とリガンド分子との結合の評価系を確立した。種々の膜タンパク質をコードする遺伝子を細胞株で発現させるコンストラクトも構築中であり、これらの膜タンパク質と同受容体との結合について検討を進める。
著者
山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的はNPO法人と商店街との連携が中心市街地の活性化にいかなる役割を果たすのか、その経済的効果はいかなるものが期待されているのか検討した。大店立地法は売場面積規模が数万m^2に達するほどの出店申請をほとんど全て認め、これが周辺環境問題とりわけ生活環境問題を悪化させた。中小企業団体や地方自治体から厳しい意見が出され、まちづくり三法の改正が着手された。労働効率、売場効率、販売効率の検討から、大型店は売場面積が2〜3万m^2を超えないと効果が現れず、このことが売場面積規模を大きくする原因であることが判明した。また最寄品中心型商店街をロードサイド型と比較すると、売場効率では遜色のないものの、労働効率がかなり悪いことがわかり、これが地方都市中心商店街の衰退原因であることが判明した。地方都市中心商店街を活性化する方途の一つとしてNPO等との連携がある。中心市街地に訪れる生活者は中心商店街に、コミュニティの維持発展の基盤となる「安全・安心」、買い物などのサービス利便性、公共的性格を持つ交流・サービス機能、歴史的文化的豊かさ、地球環境問題への対応等に期待を寄せている。各種調査からこうした生活者の複合的かつ多様なニーズへの対応には、「商い」を専らとする商業者がNPO等と連携することが不可欠であることが判明した。福島県福島市では2002年度から「市民協働型まちづくり」に取り組み、企画提案型事業の公募、人材育成のための「まちづくり楽校」の開校、市民電子会議室の設置などの成果を出している。なかでも「ふくしま城下まちづくり協議会」の取り組みが注目される。この協議会は市民協働型でペーパープランにとどまっていた地区計画に生気を吹き込み、福島市が借上住宅として活用する商住型民間マンションが建設され、定住者の増加により伝統的なイベントも活気を取り戻し、まだ事例的に過ぎないものの、店舗が新規開店した。
著者
中村 伸枝 林 有香 伊庭 久江 武田 淳子 石川 紀子 遠藤 巴子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,日常生活習慣上の問題の程度に関わらず、より健康な生活をするためのアプローチが可能である学校の場を利用して,養護教諭とともに学童と親を対象とした日常生活習慣改善のために楽しく、親子で、段階的に行うプログラムの試作と検討を行うことを目的としている。研究の対象校は,平成10年度に実施した学童とその親に対する日常生活習慣と健康状態に関する調査で協力が得られた岩手県内の2つの小学校であった。小学校3年生1クラスと小学校5年生1学年(3クラス)で実施の協力が得られ,平成12年度には前回の調査結果と,学校内の協力体制,身体計測や学級活動等のスケジュール,体育や理科,家庭科の学習内容などを考慮して「学童と親の日常生活習慣改善プログラム」を試作した。平成13年度にプログラムを実施し,平成14年度にプログラム前後で行った生活習慣の変化,プログラムの満足度や家族の参加と反応,プログラムで学童が学んだことを視点に評価を行った。その結果,食習慣についてのプログラムを中心に実施した小学校5年生では,「好き嫌い」「野菜の摂取」「夕食時間」「排便習慣」と,「近くに出かけるときには歩く」項目でプログラム前後に有意な改善がみられた。また,学童はブレーン・ストーミングやグループワークを取り入れた学習に積極的に参加していた。運動習慣についてのプログラムを中心に行った小学校3年生では万歩計を用いた学習に学童は強い興味を示し,生活目標や,がんばったこととして運動に関することを最も多くあげていた。また,いずれの学年も,1年間通して使用した「健康ファイル」を家庭に持ち帰り,家族と共に健康目標を立てたり,学校での学びを家族にも伝えていた。健康ファイルは,肥満学童の保護者面談の資料としても用いることが出来た。看護職者と養護教諭の連携による学童と親への健康教育の有効性が示唆された。
著者
丹治 愛
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ヴィクトリア朝英国における生体解剖をめぐる論争は、めざましい発展を示しながら唯物論化していったヴィクトリア朝の科学(生体解剖とはそのような科学の典型としての生理学が生み出した新しい科学的方法だった)と、18 世紀後半以降、福音主義などの影響とともに発展していた動物愛護の文化が真っ向から衝突した事件であった。そのようなものとしての生体解剖論争のなかに、そしてその論争のディスコース圏のなかで書かれた多くの文学作品(たとえばウィルキー・コリンズの『心と科学』、H・G・ウェルズの『モロー博士の島』、G・B・ショー『医者のジレンマ』など)のなかに、われわれは、宗教性を離れて没道徳的に真実を追求しはじめた唯物論的な科学にたいするヴィクトリア朝人のさまざまな反応を見てとることができるだろう。
著者
平下 政美
出版者
金城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

【目的】最近体温の日内変動パターンが暑熱負荷様式の違いにより特徴的に変化することがラットを用いた実験で示された。本実験では冬期に一日一定の時間に繰り返し運動した後、熱帯地方へ移動することで12日間の連続的暑熱暴露を経験し、再び日本へ帰国したときの、基礎体温の経日的変化や、暑熱暴露経験前後の運動パフォーマンス(最大酸素摂取量:Vo_2maxと無酸素性作業閾値:AT)、体液量あるいは体温調節反応がいかに修飾されるかについて検討した。【方法】毎日一定の時間に持久的運動トレーニングを繰り返す被験者を用いて、日本とタイに合宿生活をさせ、この時の基礎体温、運動前後の安静時体温及び運動時発汗量を連日記録した。また暑熱暴露経験前後のAT(Vslope法)とVo_2max及び血液成分を測定・分析した。【結果と考察】基礎体温の経日的変動:日本における基礎体温は35.9℃であった。タイにおけるそれは36.4℃付近を推移し、再び日本に戻った2日で36.3℃と高いレベルを維持した。日本においては運動後の体温は運動前の体温に比べ常に低い値をしました。しかしタイではその逆であった。運動時発汗量は日本においてはおよそ700g/hを示したがタイで1400g/hと顕著に増加した。これに対して飲水量は日本では飲水量は観察されなかった。タイではおよそ500g/hであった。これらの結果からタイにおける基礎体温の上昇は慢性的な脱水の可能性が示唆された。また12日間の連続暑熱暴露経験後は血漿量が増加し、暑熱暴露前に比べて暑熱暴露後のVo_2maxやATは増加傾向を示した。この暑熱暴露後の運動能の上昇は血漿量の増加によるものと示唆された。
著者
塩出 貴美子 中部 義隆 宮崎 もも
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

富美文庫所蔵の江戸時代の絵入本及び絵巻コレクションを調査し、その全容を明らかにした。同コレクションは絵入本10件27冊及び絵巻6件12巻からなり、その大半は奈良絵本・絵巻と通称されるものである。主題は古典、舞の本、お伽草紙、風俗に分類される。これらの全作品について、基礎データの収集、写真撮影、本文(詞書)の翻字、絵の分析等を行い、解題を作成した。また、一部の作品については個別に考察を加え、同主題の作品や様式的に近似する作品と比較した。