著者
吉田 敦彦 今井 重孝 西平 直 西村 拓生 永田 佳之 井藤 元
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1)日本各地の全てのシュタイナー学校(8校)のフィールドワーク調査による現状把握。2)範例な実践事例の収集および学習指導要領との対照における分析・考察。3)ユネスコスクール認定のシュタイナー学校におけるESD実践事例の研究。4) NPO法人立シュタイナー学校における社会的制度的認知プロセスに関するアクションリサーチ。5)シュタイナー学校の卒業生に関する欧米の先行調査の紹介と日本での調査実施の準備。
著者
門田 充司 難波 和彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

農産物の生育環境から品質に至るまでの一貫したトレーサビリティを構築するために,収穫と同時に品質評価を行うロボットシステムを開発した。ロボットの操縦と果実収穫は人間が行い,果実の品質評価をロボットに搭載されたマシンビジョンで行う。各株に装着されたICタグの番号から果実収穫が行われた株の特定を行い,品質評価結果と共に保存される。これにより,生産者にとっての情報となる圃場内の果実品質や収穫量に関するマップが生成される。
著者
片山 麻美子
出版者
大阪経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

グレイが1750年代に執筆した論文「カンブリア」における、(1) ウェールズの詩法の研究(2) ドルイドとバルドに関する好古的知識について考察した。特に近年の民族学や考古学の研究成果を取り入れ、18世紀のケルト民族起源論と国民意識に関する言説に焦点をあて、グレイがウェールズにおける古詩復活とバルドの伝統復活のなかで果たした役割を明らかにした。成果として、当時の好古研究の進展状況とケルト再発見の議論を検討し、グレイやメイソンの古詩研究と好古家の相互にわたる影響関係を跡付けて発表した。
著者
宮下 敏恵 北島 正人 森 慶輔 西村 昭徳
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

小・中学校教師におけるバーンアウト尺度の因子構造については、小学校、中学校ともに3因子構造が適切ではないかという結果がみられた。小学校、中学校の教諭においては、個人的達成感の後退が著しく進んでおり、脱人格化得点もやや高いという結果が得られた。学校現場においてメンタルヘルスの悪化は深刻だといえるだろう。その中でも小学校よりも中学の教諭の方がバーンアウト得点は高いという結果がみられた。また教職経験年数により、バーンアウトの進行が異なるという可能性が示唆された。若手教師は情緒的消耗感から進行し、脱人格化、個人的達成感の後退というプロセスを進むという結果が示された。中堅以降の教師は個人的達成感の後退がバーンアウトプロセスの始発点になり、脱人格化、情緒的消耗感と進むという結果が示された。バーンアウトの予防を考える際には教職経験年数を考慮に入れたモデルを考える必要があるといえる。バーンアウト予防の介入のためには、教職経験年数に応じて、教師自身が多忙な中で自分自身の状態をチェックし、どう対応したらよいか振り返ることが必要ではないかと考えられる。バーンアウト低減のためにパソコン上で簡単にチェックでき、結果を振り返ることができる予備的プログラムを作成した。本研究は小・中学校のバーンアウト尺度の因子構造を明らかにし、教師におけるバーンアウトのプロセスを明らかにしたという点が画期的である。さらにバーンアウト予防の介入のために、予備的プログラムを作成したことから、今後バーンアウトのプロセスモデルを精緻化していくことによって、バーンアウトの予防が可能になると言える
著者
安田 加代子 古賀 明美 佐藤 和子 檜垣 靖樹 山地 洋子 黒木 智子 川上 千普美
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

虚血性心疾患患者の自己管理行動の継続支援として、携帯型の測定機器(ライフコーダEX)を用いた身体活動に伴う心負荷の程度等を調査した。対象者の多くが軽度の運動(Mets≦3)であり、1日あたりの歩数の平均は6764.5±3521.0歩、運動量の平均は161.5±100.9kcalであった。息苦しさや動悸などの自覚症状のあった人ほど軽い運動であることが多く、基礎疾患に虚血性心疾患がない人よりも、虚血性心疾患を有する患者のほうが1日あたりの歩数が多かった(P<0.05)。自覚症状の出現頻度とQOLには有意な関連性を認めなかった。
著者
松田 直 山西 哲郎 岩崎 清隆 金澤 貴之
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,県内の企業と学校関係者,障害者本人,保護者間の連携により,社会調査,実際の就労場面を用いた評価,改善案の提示,再評価を行い,その結果を養護学校での就労支援を中心とした個別移行支援計画の構築に反映させることで,知的障害者の就労が定着しにくいという問題の具体的な改善を図るために,以下のような形で研究を進めた。初年度は,1)就労支援に専門的に関わる関係者へのインタビュー,2)県内の養護学校教員,保護者,福祉行政担当者,作業所職員などによる検討会の実施(3年間継続して月1回程度実施),3)就労場面のビデオ分析を行い,県内の障害者就労の状況の把握やコミュニケーションが障害者の職場定着を促す可能性を示唆することができた。二年目は,1)養護学校卒業後,中度知的障害をもちながら一般就労しているモデルケース1名への長期的な参与観察,2)知的障害者と共に働く職場職員に対するアンケート調査,3)知的障害者雇用企業へのインタビュー調査を行った。わかりやすい指示の仕方や知的障害者の行動特性を職員に伝えることの必要性や,知的障害をもつ職員と他の職員とをつなぐ支援の必要性などが示唆された。また,心地よい職場環境や社長との信頼関係が職場定着の要因の一つとなることや,作業台の配置によって近くで仕事をする職員がすぐに手助けできる体制が作業効率を上げていることが示唆された。三年目は,養護学校高等部での現場実習において,モデルケース1名について参与観察を行い,支援方法の検討を行った。その際に,二年目に行ったモデルケースと,上記ケースとの比較をすることによって,一般就労と現場実習においての同僚職員との関係構築過程の違いを探った。これらの結果をふまえ,三年間の成果をまとめた報告書を作成した。
著者
溝井 和夫 笹嶋 寿郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

脳神経外科領域において、これまで手術ナビゲーションシステムは脳腫瘍摘出術、定位的脳手術、電極刺入術などに用いられて来たが、その応用範囲は限られている。本研究では、手術ナビゲーションシステムの応用範囲を脳血管外科の分野にも拡大することを目指した。まず、3次元CT血管撮影(3D-CTA)、3次元回転血管撮影(3D-RA)、3次元超音波血管撮影(3D-UA)などの3次元脳血管画像情報を手術ナビゲーションシステムに導入する基礎技術を開発し、ファントム実験や臨床例において位置表示の精度を3次元的に計測した。その結果、位置の誤差は1~2mmであり、十分に臨床使用が可能な精度と考えられた。更に3D-CTA、3D-RA、3D-UAを統合したリアルタイムアップデートの可能な3 次元脳血管画像誘導手術法を開発し、その精度評価を行った。その結果、位置の誤差は2mm程度であり、これも十分に臨床使用が可能な精度と考えられた。
著者
坂尾 誠一郎 巽 浩一郎 笠原 靖紀
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

慢性血栓塞栓性肺高血圧症における血栓内膜摘出術検体より分離した肉腫様細胞は、肺動脈原発血管内肉腫(intimalsarcoma)に非常に近い特徴を有することが示された。また肉腫様細胞ではmatrixmethalloproteinase(MMPs)遺伝子発現が著名に上昇していたため、抑制実験としてMMPs阻害薬のbatimastatの投与実験を施行した。その結果invitro、invivo共に腫瘍細胞増殖抑制効果を示し、以上からbatimastatによるintimalsarcomaへの臨床応用の可能性が示唆された。しかし、当初の目的である摘出血栓からの造血幹細胞分離・臨床応用に関してはさらなる検討が必要である。
著者
中村 滝雄 横田 勝 今淵 純子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本における刃物製品は貴重な鉄で製作されてきたと同時に、経済性、機能性や耐久性などが要求されることから、軟鋼に高炭素鋼をつけるツケハガネ(鍛接)といわれる伝統的な製作方法が用いられている。そのことによって鉄に柔軟性と強靭性を与え、優れた刃物製品を製作することができたのである。本研究で取り上げた種子鋏は、伝統的な鍛冶技能を有した刀鍛冶師が多く居住し、良質の砂鉄が豊富に産出していた種子島において製作が始められたツケハガネによる道具である。現在、種子島において全て手打ちで製作している牧瀬氏が製作する種子鋏は、伝統的な鍛冶技術で製作さているのが特徴的であり、優れた切れ味とともに品質も高く美しい形態をしている。本研究および調査結果の概要は次のとおりである。(1)種子鋏製作における作業環境や道具の調査を詳細に行って、牧瀬氏が製作した独特な道具と特徴を持った鋏の形態や機能の関係を考察した。(2)映像によって製作工程の記録を行うと同時に、伝統的なツケハガネ方法で製作された種子鋏の構造と機能的な特徴を解明した。(3)製品おける鋼の組織や硬度など顕微鏡観察によって材料工学的な解析を行うと同時に、他産地の製品と熱処理による硬さの比較検討を行った。その結果、種子鋏独自の性質を出現させていることが分かった。これらは徒弟制度の中で牧瀬氏が勘と経験によって修得したものであり、伝承されてきた種子鋏製作技術や伝統的な鍛冶技術の保存という点で貴重な資料となった。また、種子島における砂鉄の調査や技術の伝承方法の推察も予備的に行った。
著者
森 隆司
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

生体の顆頭安定位での骨関節隙を,CT画像から再構築した顎関節の全体について3次元的に計測して,顆頭安定位の形態的な適合性を検討することが本研究の目的である。結果の概要を,以下に示す。1.顎関節骨形態の3次元再構築法:CT画像の下顎窩と下顎頭の形態の2次元座標を計測し,その座標値を3次のスプライン関数で補間する。次いで,形態輪郭線上の1画素ごとに,新たにサンプリングした2次元座標値を積み重ねて上下方向の点列を作成する。この点列を補間して曲線化し,矢状面の骨の輪郭線を描画した後に,曲線の始点から終点までを5画素ごとに2次元座標をサンプリングし,約0.25mm間隔で3次元構築のための構成点の座標値を抽出する。そして,この座標値から顎関節の骨形態を再構築した。2.骨関節隙の計測法:下顎窩を構築する構成点の一つから,すべての下顎頭の構成点への3次元的距離を算出し,その距離が最短となる下顎頭の構成点を選び出して,この距離を選出した構成点での下顎窩-下顎頭間距離とする。そして,骨関節隙の量は隣接する3個の構成点での下顎窩-下顎頭間距離を平均した値とする。骨関節隙の様相は,隣接する3個の構成点で規定される部位の面積の総和を算出することで検討した。3.顆頭安定位での形態的適合性:下顎窩と下顎頭が2mm以内で近接する部位が占める面積の割合の平均は,下顎頭の外側前方部:56.4%,同じく外側後方部:36.0%,中央前方部:45.4%,中央後方部:31.1%,内側前方部:38.7%,内側後方部:18.9%であった。すなわち,外側部では,下顎頭と下顎窩とが2mm以下のわずかな間隙を介して対向している部位が多いことになる。これは,下顎窩と下顎頭の形態は,咬頭嵌合位(中心咬合位)では外側部がより適合していることを意味していて,顆頭安定位での形態的特徴の一つであると考える。
著者
佐藤 亮一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、地震で崩壊した建築物領域の識別を可能とするために、散乱電力分解法の一つであるNNED(Non-Negative Eigenvalue Decomposition)と偏波回転補正を組み合わせる手法を提案した。PolSARデータの画像解析結果より、提案手法が有効であることを示した。また、NNEDで生じる「余り電力」も、補助指標として有効活用できることも示した。さらに、円偏波相関係数と正規化した相関係数の組み合わせは、積雪時かつ様々な方向に配置された被災住宅の観測に有効であることも明らかにした。
著者
松尾 秀哉
出版者
聖学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

政権形成交渉に要する「時間」は、(1)国家元首の権限および行動、(2)政党システムの破片化の程度によって決定され、さらにその政権形成交渉期間にどの程度、連立の焦点となったイシューを具体的政策案として提示しうるか、が新首相のイメージを形成し、その後のリーダーシップに影響を及ぼして命運を決する。ベルギーの首相(2008年3月~)イブ・ルテルムは(首相在任中)「扇動者」のイメージが付きまとい、そのため短命政権で終わったのである。
著者
香川 せつ子
出版者
西九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、19世紀後半から20世紀初頭に、イギリスの高等教育機関を修了した女性の卒業後のキャリア形成について考察した。この時期に女性の高等教育機会は急速に拡大し、1930年にはイギリスの大学に在籍する学生の4分の1が女性であった。その大半が卒業後に教職の道を歩んでいる。他方では女性の医学教育機会の獲得と医師職への進出が実現し、女性医師数も着実に増加した。本研究では、この二つの職種に注目し、医師についてはロンドン女子医学校、教職についてはケンブリッジ大学ガートン・カレッジを事例にとりあげて、入学生の社会的出自とプロフィール、卒業生のキャリア形成を検討した。ガートン・カレッジに関しては、その同窓会名簿の記載事項を分析した結果、(1)初期の卒業性にとって職業と結婚とは二者択一の関係にあり、19世紀末まで後者の数が前者を上回った、(2)職業の大半は教職であり、1910年まで卒業生の半数以上、就業者の4人に3人までが教職に就いた。教職の中でのキャリア形成の様相は年代とともに変化している、(3)教職以外では、有職無職様々な形をとりながらアカデミズムの世界で生きた女性、卒業後に医学校等に進学し医師となった女性、結婚後ボランティアなど社会活動で活躍したことが明らかとなった。ロンドン女子医学校に関しては、その年報と校内誌から教育課程や学生生活の実態を探るとともに、女性医師数の動向を検討し、卒業生の主たる活躍の場が、女性と子どもを対象とした病院や、植民地医療にあったことを明らかにした。
著者
本田 純久 野村 亜由美 今村 芳博
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

スマトラ沖地震による津波に被災したスリランカ南部において行った調査により、家族や友人・知人の死亡、家族や本人の負傷、家屋や家財の被害、生計の喪失、年齢、性別、主観的健康感といった要因とGHQ-12項目得点、IES-R得点との間に関連がみられた。津波による被災体験や被災時の状況が、心的外傷後ストレス障害をはじめとする精神的健康状態に影響することが示唆された。
著者
上田 晴彦 林 信太郎 林 良雄 林信 太郎 林良 雄
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

秋田大学教育文化学部内にウェブサーバーを設置し, バーチャル天文館を開設した。そしてその教育効果を調べるために, バーチャル天文館内のデジタルコンテンツを利用した教育実践を県内の小・中学校の教育現場でおこなった。その結果, バーチャル天文館内のデジタルコンテンツは教育的有効性があることが分かった。また特別な知識を持たなくても作成可能な本格的なデジタルコンテンツについての研究も, あわせておこなった。
著者
大原 興太郎 富岡 昌雄 波多野 豪
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

リサイクル社会は、(1)使用済みの物質をすべて回収するのは事実上不可能である、(2)リサイクルによって物質が劣化するのは避けられない、(3)物質のリサイクルを駆動するにはエネルギーが必要である、という三つの制約をもっているが、微生物やミネラル、そして生物自身のエネルギーによって循環が促進される生物系の資源循環は持続可能な社会を創っていく上で極めて重要である。特に、環境中から採取した資源は十分に利用しつくし、最終的な廃物は自然の循環機能を損なわない形で廃棄することが重要である。生物系廃棄物の循環にとって大きな可能性をもっている堆肥化も物質を循環させる人のネットワークと新しい技術の開発が課題である。この点で、大規模複合経営を行っているY農事組合法人の牛糞堆肥・乾燥鶏糞を周辺の稲作農家の藁との交換により、有機栽培米を生産している事例では、試行錯誤の末、化学肥料に頼らずに慣行農法以上の品質・収量を上げる技術が創られつつあり、農薬も用いるとしても最低除草剤一回とする技術を確立した。Y法人の若者達が牛糞堆肥はマニュアルスプレッダーで、鶏糞堆肥はライムソワーを改良したもので機械散布する技術を確立したとにより、高齢農業者の業者のクループが行う稲作を支える役割も果たしている。このような堆肥化システムに有機農家を取り込むことは、良質の堆肥を産出するノウハウの蓄積を促す。実際に白山町の農家では、共同利用型のコンポスターによる堆肥化だけでなく、強制加熱や発酵菌の添加が不要で、取り扱いの容易な個別処理型の堆肥化方法も確立している。また、集合型コンポスターを利用するには、一定規模の利用者の確保、生ゴミ排出時のモラルを維持すること、それらによって投入量の大幅な変動と異物の混入を避け、微生物発酵の円滑な進行を保つこと、その際、利用グループの形成・リーダーの育成とその維持運営方法に関する問題の解決が課題となる。総じて、資源循環技術を社会システムに組み込むノウハウの確立の重要性を改めて指摘できる。
著者
吉田 忠
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

(1) 全国各地の図書館において関連文献の調査・収集につとめたが、殊に大谷大学図書館、国立天文台図書館、横浜市立大学図書館などにおいて関係資料を採訪した結果、内通、円煕、介石以後の論者たちの文献を調査・収集することができた。(2) 幕末の神道家賀茂規清が有名な天文学者間重富から聞いた話では、円通は老齢になっても須弥山説の講釈を行っていたという。事実彼が1817年三重県津市一身田専修寺で行った講釈の記録ノートが現存している。そこでは孔子君子の暦法が仏暦と同じだと述べているが、こうした表現は一般大衆の共感を喚ぶにきわめて有効な言い回しであったろう。(3) こうした講義記録は、円通の弟子達、たとえば2大弟子である信暁(1837,1855)、環中(1854,2点)、また円煕のそれが残っている。しかし、どういうわけか、円通の場合も含めて、『立世阿毘曇論日月行品』に対する講義が多くを占めているのは注目してよい。(4) 幕末から明治初年の護法運動は、中国伝道プロテスタント宣教師たちの書物による地球概念と地動説の普及を警戒し、須弥山宇宙論の観点から批判した。佐田介石らの運動も、この一連のコンテクストの中で考える必要があることを明らかにした。(5) 介石らの努力にもかかわらず、須弥山説運動が明治中期に衰退するのは、明治の学校制度の整備による科学知識の普及の結果、これが仏教関係者の間だけの論争に終わったことによることを指摘した。
著者
大豆生田 啓友 佐伯 胖 小林 紀子 高嶋 景子
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は「保育の場における子育て支援の質に関する研究」として、幼稚園や保育所、子育て支援施設における子育て支援の実践的な視点に立った質的な研究を行ってきた。本研究の中心となったのは、3年間継続して行ってきた幼稚園でのフィールド研究である。このフィールド研究では、幼児の園での姿を追うことと平行して、その保護者のインタビュー調査を行ってきた。1そこから、子どもの変化と、保護者の変化、保育者の変化が関連するものであることを明らかにしてきた。そして、園が保護者に開かれ、保育者が日常的に子どもの姿を保護者に伝えていくことが、保護者の変容に大きく結びついていくことが浮き彫りとなった。また、子どもの姿を意味の脈絡としてのエピソードとして伝えることを通して、保育者自身の変化にも関連があることを明らかにしてきた。第二には、公私立の幼稚園、保育所の保育者の子育て支援に関する意識調査としてアンケート調査を実施した。このアンケート調査では、「子育て支援」という概念自体が自明ではないのではないかという問題意識に立ち、子育て支援意識の多様な実態を明らかにし、そこから子育て支援を再構築するための手がかりを得ることを目的に実施したものである。具体的には、子育て支援が本研究で行ってきた「参加」型としての支援ではなく、「サービス提供」型の支援として捉えられていることを明らかにした。さらに、保育所および幼稚園での子育て支援の捉え方、公立と私立での捉え方、あるいは経験年数での捉え方、等々の相違点についても明らかにした。
著者
花岡 和則 北村 邦夫 内山 孝司
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1) Lbeホモローグ遺伝子Lbx1の遺伝子ターゲッティングマウスの作出Lbx1タンパク質コード領域をネオマイシン耐性遺伝子に置換したノックアウトベクターを作製し、相同組み換えを利用して胚性幹細胞に導入した。4クローンの相同組換え体細胞株をもとにキメラマウスを作製した。そのうち1クローンにおいて生殖系列への伝達が確認された。現在、このキメラマウスに由来する個体どうしを交配し、Lbx1のホモ変異個体を得る段階に至っている。また、Lbx1の発現解析をしてゆく過程で、マウス後部後脳から神経管での発現に加えて、一部の体節の側方部、すなわち将来の肢芽筋肉を形成する領域に発現していることが判明した。そこで、この領域でのLbx1の機能を解明するためにトランスジェニックマウスによる解析を行った。Myogeninプロモーターの下流にLbxl遺伝子を結合したトランスジェニックベクターを、あらかじめLacZ遺伝子を導入してある胚性幹細胞(以下LacZ胚性幹細胞)のゲノムに組み込んだ。このLacZ胚性幹細胞(合計11クローン)と正常胞胚とでキメラマウスを作出した。このうち一つの細胞株を用いて作成したキメラマウス胚(11.5日)でLbx1の発現部位を解析したところ、肢芽領域以外の筋節にもLbx1の異所的な発現が確認され(10個体中5個体)、さらにキメラマウスの出生後、骨格筋の組織学的解析を行ったところ、X-gal染色によってES細胞由来の細胞が含まれていると確認された前肢骨格筋(2個体中2個体)及び、背筋(3個体中3個体)で、筋組織の萎縮などの明らかな異常が観察された。2) ニワトリLbx1ホモローグ単離の試みニワトリLbx1ホモローグ単離する過程で、相同性のあるcHox11L2が単離できた。胚での発現パターンを解析したところ、神経冠細胞由来のニューロンである脳神経節、脊髄神経節、交感神経節、腸管神経節で発現が確認された。未分化な神経冠細胞では認められなかった。