著者
井上 誠 山村 健介 山田 好秋
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、(1)咀嚼に関わる運動神経のプレモーターニューロンの神経生理学的特徴を調べる,(2)咀嚼運動に関わる中枢神経系の制御を受けている顎筋,舌筋,舌骨下筋に注目し,リズム性の顎運動が遂行される際に,これらの運動神経がどのような協調運動を行っているかを調べることであった.麻酔下の動物の大脳皮質咀嚼野を電気刺激してリズム性顎運動を誘発した後に上下歯根膜からの入力の変化が協調運動に与える影響を調べた.これらの結果は,閉口筋とともに,舌牽引筋である茎突舌筋は歯根膜からの入力を受けてその興奮性を高めることにより咀嚼時の顎舌協調運動を維持させて,食塊の形成・維持に関わることが明らかとなった.次に覚醒動物が食物を自由に咀嚼・嚥下するときの顎舌協調について,さまざまな物性をもつ食品を摂取したときの顎筋舌筋,舌骨上筋の筋電図を同時記録することにより評価した.その結果は歯根膜からの刺激が舌筋活動に大きな影響を与える可能性があることを示唆していた,しかし,試験食品のうち,最も硬い食品である生米を用いたときよりも飼料用のペレット咀嚼時のほうが茎突舌筋の活動は大きかった.このことは,顎筋のように歯根膜や閉口筋筋紡錘だけでなく,舌活動に大きな影響を与えている口腔粘膜や舌の受容器などのような他の末梢性入力の可能性が大いに考えられることを示唆している.咀嚼運動に関わると思われる顎口腔顔面領域の運動神経核に投射するプレモーターニューロンの神経生理学的性質を検索した結果では,末梢からの投射を受け,さらに複数の運動核に投射するプレモーターニューロンを見つけることができなかった.このことは,咀嚼運動に関わる制御機構は末梢の入力により変調は受けるものの,その制御は主にプレモーターよりも上の脳幹領域で行われ,それぞれの運動神経に出される指令は独立して行われていることを示唆するものである
著者
平川 澄子 中澤 眞
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、運営状況がきわめて対照的な、アメリカの女子プロサッカーリーグ(WUSA)と日本の女子サッカーリーグ(Lリーグ)の観戦者特性を明らかにすることによって、日本の女性スポーツリーグの発展に有効な知見を得ることを目的とした。調査は2001年6月から11月にかけて、WUSAとLリーグの各3会場において、観戦者を対象とした質問紙調査及びスタジアム内での観察調査を実施した。WUSA調査では、998票の有効回収票を得た。Lリーグ調査では、335票の有効回収票を得た。観戦者調査の比較分析から、(1)WUSAでは女性観戦者が62.1%を占めていたが、Lリーグでは男性観戦者が72.1%を占めていた、(2)WUSAでは94.2%が家族や友人と来場していたが、Lリーグでは40.2%が一人で来場していた、(3)WUSAではWWC99が女子サッカーファン増大の契機になり、女性観戦者の73.8%が女子サッカーを選好していた、ことなどが明らかになった。また、観戦行動に関わる杜会心理的要因として、「サッカーへの関心」「サッカー鑑賞」「ゲームのドラマ」「健全な環境」など、サッカーという種目に直接関わる要因の重要性では共通の傾向がみられた。しかし、WUSA観戦者では特に女性観戦者において「ロールモデル」「女性スポーツのサポート」が重要な要因となっていたのに対して、Lリーグ観戦者では「代理達成」「娯楽」「選手への関心」が重要な要因となっていた。以上の結果から、アメリカの女子サッカー人気の背景として、(1)WWC99の成功、(2)女性の機会均等を開拓するロールモデルとしてのスター選手の存在、(3)女性達による女性スポーツサポートの意識、(4)家族や友人と楽しむ健全な娯楽としてのスポーツ観戦、などが推察された。
著者
茂木 積雄 天木 秀一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

原発性胆汁性肝硬変(PBC)に特徴的な抗ミトコンドリア抗体(AMA)亜型である"M2"抗体はミトコンドリア内膜に存在する酵素である2-oxoacid dehydrogenase complex(2-OADC)ファミリーに属するpyruvate dehydrogenase(PDC),branched chainα-ketoacid dehydrogenase complex(BCOADC),2-oxoglutarate dehydrogenase complex(OGDC)を構成する5つのsubunit enzymes(PDC-E2,BCOADC-E2,OGDC-E2,protein X,PDC-E1α)を特異的に認識する。分子生物学的および遺伝子工学的手法を用いた研究により,M2抗体が認識する主要なミトコンドリア抗原であるPDC-E2,BCOADC-EおよびOGDC-E2上のlipoic acid binding resionであるリポイルドメイン上に主要な抗原エピトープが各々存在することが明らかになった。これらのエピトープマッピングの成績に基づき高感度AMA測定法の確立を試みた。すなわち,PDC-E2,BCOADC-E2およびOGDC-E2の各々のリポイルドメインをコードするcomplementary(c)DNAを同一のプラスミドベクターにサブクローニングすることによりHybrid cloneを確立した。Hybrid cloneおよび各々のE2 component cDNA cloneによって発現されたリコンビナント抗原をグルタチオンアガロースビーズを用いてアフィニティー精製した。イムノブロット法による検討で,これらの精製リコンビナントミトコンドリア抗原はPBC患者血清と特異的に反応し,自己免疫性肝炎やC型慢性肝炎などの対照疾患および健常人血清などとは反応しなかった。また,PBC 112例においてラット腎胃組織切片を抗原とした蛍光抗体法(IF)および市販の酵素抗体法(ELISA)によってAMAの検討を試みたところ9例はAMA陰性であったが,リコンビナントミトコンドリア抗原を用いた検討によってPDC-E2以外のM2抗原とのみ特異的に反応するPBC血清を明確に検出することが可能となった。
著者
北川 慶子 斎場 三十四
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は平成11年度-12年度の2年間の研究であるが、平成11年度においては、佐賀県下における特別養護老人ホーム(特養)と老人保健施設(老健)の要介護高齢者に対し、施設での生活水準と長期ケアへの適応を捉えるために、身体機能(FIM)、QOL(SF-36),生活満足度調査(LSQ)を実施し、施設生活の再評価を行った。特養では、FIMとSF-36の相関は見られず、身体機能は低いがSF-36の値は高く、それはさらに老健よりも高く、生活面を重視したケアが中心の特養の要介護高齢者が身体機能の回復を重視し、家庭復帰を目指す老健よりも適応度が高いという傾向が見られた。平成12年度における研究の重点は、平成12年4月1日から施行された介護保険法に注目し、介護保険施行後再認定の時期(10月)にversion upした調査を特養、老健で実施し、施設における生活水準とと適応について分析することであった。生活水準のLSQの生活部分は「特別養護老人ホーム・老人保健施設のサービス評価基準」に準拠しているため、介護保険前後の両施設における高齢者の調査結果を比較分析することによって生活水準の評価を行うことができた。平成12年の調査では、FIMによる身体機能は特養と老健の格差が縮まり、SF-36によるQOL評価では老健で高得点化傾向が見られた。施設への適応度は、介護保険以前においては特養が高く老健が低いと評価されたが本調査によって、介護保険施行後はそれぞれの特異な差が一段と縮小していくのではないかと推測することができる。それは、老健が長期ケア型にシフトし、長期ケアについては特養との差異が見られなくなりつつあることが大きな要素である。特養のみならず両施設共に、Helsonの「適応レベル説(adoption level theory)」がより顕著に現れてくるのではないかと考えられる。本調査においても適応レベル説が適用できる初期的段階が窺われ、要介護高齢者の施設における長期ケアへの適応は、SF-36、FIMで測定した身体機能以外の要因が強く働いているといるということが分かった。すなわち、HRQOLを規定する要因としてSF-36、FIMの結果はあまり影響を与えず、期間と生活環境がHRQOLを変化させ、従って適応レベルが健康期、要介護期さらに年齢生活環境によって変化してきているものであることが本研究により明らかにされた。生活水準の主要な規定要因は、意思の表明とその受容の程度であり、それは、施設ケアを受ける期間の長短との密接な関連があることも本研究により得られた成果である。
著者
熱田 裕司 後藤 英司 武田 直樹 松野 丈夫 佐藤 雅規 猪川 輪哉
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

今年度においてはin vivoにおいて神経根由来の異所性発火を観察できる実験モデルを作成し、以下に述べる2種類の検討を行った。実験にはラットを用い、除脳後に後枝腓腹神経より双極電極にて知覚神経を逆行する神経発火活動を導出記録した。この手法によって、腰部神経根が刺激されることに基づいて発生する異所性発火が評価できることを確認した。(1)実験1:髄核投与による異所性発火の発現ラットの第5、6腰部神経根を露出し、尾椎から摘出した髄核を留置した。その後1、2,4週において腓腹神経から異所性発火にもとづく自発性神経活動を導出し、発火頻度を測定した。無処置対照と比較していずれの時期においても発火頻度は有意に増大しており、2週で最大値をお示した。一方、馬尾刺激により坐骨神経で得られた誘発電位を用いて神経伝導速度を測定すると、その値に低下は見られなかった。これらのことから、髄核は神経根に作用して異所性発火を誘発するが、伝導障害を引き起こすことは無いと考えられた。(2)馬尾圧迫による一酸化窒素感受性変化ラット馬尾レべルにおいてシリコンチューブを脊柱管内に挿入し、1週間経過させた馬尾圧迫モデルを作成した。1週間後の観察において、腓腹神経の活動は有意に増大しており、異所性発火が発現していることが確認された。この動物において神経根に一酸化窒素やセロトニンを作用させると、著名な発火増大が見られた。このような変化は馬尾圧迫の無い動物では少なかった。以上の結果は坐骨神経痛の発生機序を理解する上で重要な、髄核の影響、ならびに物理的圧迫と化学的刺激の相互関係、を明らかとしたと考えられた。
著者
寺崎 文生 藤岡 重和 河村 慧四郎
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.研究成果:末期的拡大不全心に対する治療として左室部分切除術が開始された。心臓移植の機会の少ない我が国の現状に於いて本手術に対する期待は大きい。現在の課題は手術適応基準と予後の検討である。本研究では左室部分切除術を施行された拡張型心筋症患者の切除心筋標本を用いて、心筋 in situ での免疫組織細胞化学的、ウイルス学的解析を行った。その結果、一部の拡張型心筋症の心筋において活動性炎症とエンテロウイルス(EV)持続感染が認められ、慢性心筋炎が一部の拡張型心筋症の病因・病態に関与することが明らかにされた。また、サイクルシークエンス法によるEVゲノムの核酸塩基配列の決定により、殆どがコクサッキーB群ウイルスであることが明らかになった。さらに、拡張型心筋症における炎症やEVゲノムの存在は、左室部分切除術に際して術後早期予後不良の因子になる可能性が示唆された。2.今後の展望:我々は拡張型心筋症患者の切除心筋を多数保有している。これを用いてin situ hybridizationによりEVゲノムの心筋内での局在を検討することで、ウイルスによる心筋細胞障害機序を明らかにできる。また現在、左室部分切除術をうけた患者数が増加し、術後の長期成績を明らかにする時期にある。切除心筋の免疫組織化学的、分子生物学的検索を継続し、それらと術後長期予後や臨床諸検査指標とを比較検討することで、左室部分切除術の適応決定に価値ある情報を提供することが期待される。
著者
天野 晃 松田 哲也 水田 忍
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,臓器としての生物学的知見が豊富な心臓を対象として,近年急速に解明が進み実現されるようになった,タンパク分子機能に基づく精密な細胞モデルを元に,心筋細胞の配列,組織の微小循環,冠動脈血流,心筋組織の力学的特性に基づいた心臓の3次元拍動モデルの実現を目指した.まず,左心室3次元拍動モデルの編集ツールを実現し,シミュレーションアルゴリズムとして,心筋細胞のタンパク分子機能に基づいたモデルが生成する収縮力と,材料特性に基づく3次元形状の変形を精密に計算する連成シミュレーションアルゴリズムを提案した.次に,心臓拍動モデルの形式的記述と,実験プロトコルの形式的記述言語としてPSPMLを設計した.さらに,日々蓄積される生物学的知見を容易に導入し,有効性等を評価するシステムとして,形式的に記述された心筋細胞モデルを非専門家が安全に編集可能で,さらに実験プロトコルの修正も可能な編集システムを実現した.また,心臓拍動の精密な再現に不可欠な血管系のモデルとの連成計算を行うシステムを実現した.このシステムにより,様々な細胞モデル,左心室モデル,血管系を用いたシミュレーションにおいても,自由に組み合わせを変更して循環動態シミュレーションが可能となった.最後に,これらのシステムを用いて,左心室構造力学モデルにおける応力評価を行った.心臓は拍動に伴う能力や効率を最大化するため,収縮末期における応力分布が均等化するように細胞配列が最適化されているという仮説があるが,実際の心臓で心壁内部の応力が評価できないため,仮説の検証にはシミュレーションモデルが利用されるようになってきている.構築したシステムを用いて,収縮末期における心壁の応力分布を評価した.この結果,従来の報告で評価が困難であった心尖部において,明瞭な応力集中を確認できた.これは,バチスタ手術等の外科手術において,経験的に重要性が認識されている心尖部の重要性を示唆する結果であると考えることができる.
著者
黒澤 馨
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

放送型暗号系においては、センタは加入者に復号鍵を配布する。しかし、不正な加入者はそれらから海賊版の復号器を生成し、非加入者に与えてしまうかもsれない。n人の加入者のうち高々k人が結託して海賊版の復号器を作ったとしても、その海賊版の復号器から犯人を割出せる方式を(k,n)閾値追跡可能暗号系と呼ぶ。筆者は、Eurocrypt'98という国際会議において、鍵サイズ、暗号文サイズの下限を導出すると共に、これらの下限を等号で満たす最適な方式を提案した。この方式に対し、Stinson and Weiは、SAC'98という国際会議において線形攻撃と呼ばれる攻撃法を示した。本研究では、まず、筆者のEurocrypt'98の方式に対し、新しい犯人追跡アルゴリズムを開発し、このようにすればStinson and Weiの攻撃のみならず、全ての攻撃に対し安全であることを示した。一方、ペイテレビ等においてセンタは、N人の契約者の内、受信料未納のc人の契約者には見えない様に、コンテンツを暗号化して放送したい。この様に、N人中c人以下のユーザを排除できる放送型暗号系を、(c,N)閾値排除可能暗号系と呼ぶ。本研究では、次に、cover free familyという組合せデザインを使うと、(c,N)閾値排除可能暗号系が得られることを示した。また、almost strongly universal hash関数を利用したoverhead=O(c^2)となる(c,N)閾値排除可能暗号系の構成法を示した。最後に、本構成法により得られる(c,N)閾値排除可能暗号系は、追跡可能暗号系としても優れていることを示した。
著者
鬼木 甫
出版者
大阪学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、「既得権(vested interest)問題」を経済理論の立場から分析し、これを合理的に解決・処理するための経済システムを設計・提案することである。本研究ではまず、理論的基盤となるべき「既得権の経済モデル」を構築する。次いで具体的な分析対象として、多数種類の既得権のうち(1)電波利用、(2)土地所有と利用、(3)職位保持の3ケースそれぞれについて分析とシステム設計を行うこととした。前年度においては、上記のうち(1)電波利用にかかる既得権について研究成果を発表し、さらに(2)土地利用と所有にかかる既得権について文献調査をおこない、(3)労働者についての「職位保持」に関する制度の概要を調査した。これに引き続き、本年度においては、(4)電波利用に関する研究成果をさらに2件発表し(本様式p.2の#207、#210)、(2)土地所有に関する既得権について日本経済学会で招待講演をおこない(同上#210)、さらに(3)テレビ電波利用の既得権に関連して「アナログテレビ停止」についての研究を発表した(同上#211)。
著者
鈴木 秀美 山田 健太 砂川 浩慶 曽我部 真裕 西土 彰一郎 稲葉 一将 丸山 敦裕 杉原 周治 山本 博史 本橋 春紀 岩崎 貞明 笹田 佳宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本の放送法は, 放送事業者の自律を前提としているため, 放送事業者が政治的に偏った番組や虚偽の事実を放送して番組内容規制(番組編集準則)に違反しても, 放送法には制裁がなく, 電波法による無線局の運用停止や免許取消は強い規制であるためこれまでに適用されたことがない。結果として, 違反があると, 行政指導として, 実質的には行政処分である改善命令に近い措置がとられているが, このような手法には表現の自由の観点からみて重大な問題があることが明らかになった。日本では現在, 通信・放送の融合に対応するため通信・放送法制の総合的な見直しが行われている。本研究は, 現行法制が内包している憲法上の問題を新しい法制に積み残さないために, 問題点を整理・分析したうえで, ありうる改善策を提示した。
著者
朝尾 幸次郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)日本語と英語を対応させたテキストをデータとして、日本語から英語を、英語から日本語を検索するパラレル・コーパスを構築した。構築したコーパスは日本国憲法、教育基本法など著作権がない公的なもののほか、『朝日新聞』の「天声人語」と「社説」、『エヌ氏の遊園地』(星新一)、『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)など日英語でデータが得られるものである。(2)日英語で意味を対応させる方法として「最短一致の原則」を提案した。センテンスを単位に対応させてゆき、対応する意味のまとまりが最短になるように切り分ける方法である。(3)検索プログラムはコマンドラインから利用する研究用のものの他、Perl/CGIによりWebページから利用できる一般向けのものを開発した。テキストは両言語で対応がなされているものであれば、どのようなものでも利用可能な汎用パラレル・コーパス検索プログラムである。(4)パラレル・コーパスを用いた研究例として、「では」とthenの対応について調査を行った。「(それ)では」とthenは日英語で奇妙に入り組んでおり、これまでの辞書記述では十分でないことが知見として得られた。日本語で「(それ)では」と明示的に現れている場合でも英文テキストではそれが表に現れない場合が多い。英語でthenが用いられる場面ではそこに明確な根拠がある場合が多いようだ。(5)報告書ではパラレル・コーパス検索のさまざまな例を提示し、スクリプトを公開した。スクリプトには詳細な説明を付しており、改変を容易に行うことができる。報告書はスクリプトの解説と検索プログラムのマニュアルも兼ねている。(6)パラレル・コーパス関係で発表した成果を資料として添付した。
著者
石橋 尚平
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

2014年度中には、論文を英文ならびに和文、両者の時間的な修正バージョンを複数作成し、内外の学会発表を行い、日本語での論文発表を行った。また翌年度の研究につなげるために、データの収拾作業に取組始めた。今回のテーマはわが国の非伝統的な金融政策であるが、これはマクロ経済学的な観点から、非伝統的な金融政策による貸出金利への影響を分析したかったからである。手法は共和分検定など、時系列データの実証分析手法を用いた。
著者
佐藤 秀光 南 睦彦
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

悪性グリオーマの免疫療法の開発を行った。当初の目的の1つのテモゾロミドによる免疫抑制環境の改善の方は結果を伴わなかったが、もうひとつの目的である悪性グリオーマに対するCTLを誘導しうるペプチドを新たに3種類見出した。さらにHDAC阻害薬のHLA発現増強作用に着目し、CTLの抗腫瘍免疫を強化する研究を行った。HDAC阻害作用のあるバルプロ酸をグリオーマ細胞に作用させるとHLAが増強しCTL活性も上昇した。今後の発展性によっては免疫療法の選択肢が広がる可能性も示唆される意義深い結果となった。
著者
前田 晴良
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

北海道・上部白亜系中の菱鉄鉱ノジュールを産する貧酸素環境の層準等から, Sphenoceramus naumanniのセンサス群集を発見した.これらは合弁で,非常に薄く壊れやすい後耳が保存されており,当時の個体群がそのまま埋没・固定された可能性が高い.底生生物の活動に不適な環境下で,逆に生態情報を保ったままの化石群が保存されるという逆説的な結果は,今後のイノセラムス類の古生態復元の上で重要なヒントとなる.
著者
寺澤 敏夫 浅野 勝晃 天野 孝伸 羽田 亨 山崎 了
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、宇宙空間・宇宙の極限環境におけるさまざまな粒子加速機構について、最新の理論と観測結果を用いた研究を行い、長年の謎である宇宙線陽子・電子比決定メカニズムに迫った。中心的に扱われたのは衝撃波加速機構、乱流統計加速機構であり、それらを共通のキーワードとして、地球定在衝撃波から超新星衝撃波、ガンマ線バーストに伴う相対論的衝撃波まで、広範なパラメタ領域における加速機構の描像の最新化に寄与した。
著者
山木 邦比古 近藤 功 中村 秀夫
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

私達は当該の科学研究費の交付を受け、melanocyteの不溶性抗原の解析をおこなってきた。この中で、melanocyteに特異的に発現しているtyrosinase family proteinの免疫によって白色ラットに実験的Vogt-Koyanagi-Harada(VKH)病を惹起させることができることは既に報告したが、今回は有色ラットに実験的VKH(EVKH)を惹起させることができた。有色ラットのEVKHは臨床的にはVKH diseaseに特徴的とされる夕焼け状眼底を呈するものも認められた。組織学的にはやはりVKH diseaseに特徴的とされる著名な脈絡膜の肥厚、Dalen-Fucks noduleなど肉芽腫性の炎症も広範にみられ、EVKHが惹起されたものと考えられた。またVKH患者リンパ球を分離し、melanocyteの不溶性抗原を抗原としてlymphocyte proliferation assayを行った。この結果tyrosinase family proteinを含む複数の不溶性成分に対して、VKH患者リンパ球が反応性を有していることが判明した。またVKH患者リンパ球をclone化し、VKH病に関与している免疫反応について更に検索すべく実験を行っている。これらの結果は現在投稿準備中である。
著者
小松 春喜 國武 久登 國武 久登 小野 政輝
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまで顧みられなかった我が国自生のスノキ属野生種(ブルーベリーはスノキ属に属する)を園芸学的に評価した。その結果、野生種の果実は小さく品質も劣るが、機能性が高いことを明らかにした。また、野生種と栽培種のブルーベリーとの交雑を行い、種間雑種(種が異なる植物間の雑種)の獲得を試みた。得られた雑種の内、クロマメノキとの雑種については、形態的特性や果実の品質および機能性などを明らかにし、それらの雑種が我が国独自のブルーベリー品種の育成にとって貴重な素材となることを示した。
著者
高藪 縁 青梨 和正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、第一に衛星データを利用して降水システムの特性を統計的に表現する手法を開発すること。第二に、現実の熱帯域における気候条件と降水システム特性との関係を解析することによって、大規模場の気候条件が降水システム特性に及ぼす影響の解明を目指すことである。初年度の2003(平成15)年度には、熱帯降雨観測計画(TRMM)衛星の降雨レーダー(PR)データの統計解析を行い、PRによる降雨データから3ヶ月ごとの卓越降雨タイプ(夕立、大規模組織化システム等)分類を特定する手法の開発に成功した(第1章:片山・高薮)。2004(平成16)年度は、TRMMマイクロ波放射計(TMI)データから求めた海面水温と海上の降雨特性の関係を調べるとともに、熱帯積雲対流活動と大規模場との相互関係を、高層ゾンデ観測データを用いて解析した(第2章:横森・高薮)。また、「熱帯域の背の高い降雨の特性の海面水温依存性に関する研究」を行った(第3章:高薮)。一方、PRとTMIとのマッチアップデータを作成し、より多くのデータが得られるマイクロ波観測から降雨タイプ特定を可能にするための調査を行った。2005(平成17)年度は、「衛星搭載マイクロ波放射計データを使った降水タイプの特定の研究」においては、2003年度に降雨レーダーを用いて行った片山と高薮による降雨タイプ分けをTMIデータのみから行うための統計解析を行った。その結果TMIとPRとの降雨特性の顕著な対応を見出すことができ、TMIによる降水タイプ分類に見通しがたった(第4章:青梨)。また、2004年度に行った「熱帯積雲対流活動と大規模場との相互関係」についての解析結果を再検討し推敲して発表した(第2章:Takayabu他2006,学術誌発表)。以上の成果はすでに高精度降雨推定手法の開発に利用されている。
著者
高薮 縁 松井 一郎 杉本 伸夫 住 明正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

地上での雲の放射効果に関しては、GMS/TBB(気象衛星「ひまわり」相当黒体輻射温度)等の雲データと放射コードを用いた研究や精密な放射観測を用いた研究から、雲の鉛直分布特性の把握が必要であることが明らかであったが、雲底情報も含めた雲システム特性についての理解は十分でない。本研究では、ジャカルタおよび観測船「みらい」に設置した小型ミーライダー観測により雲底高度を算出し、衛星雲データ・降雨データおよび気象データを併用し、熱帯域の陸上・海上の雲降水システム特性を解析した。1.ジャカルタ設置のライダーによる雲の連続観測から雲底高度を算出した。またGMS/TBB、およびTRMM PR(熱帯降雨観測計画衛星降雨レーダー)、NOAA衛星の長波放射、高層観測データを収集・処理した。これらのデータを用いて雲底高度分布の特性と大規模大気循環との関係を解析すると共に、雲底分布・衛星からの雲頂情報・降雨の関係を日変化に着目して解析した。観測は1998年1-2月、6-7月、10-11月、12月-1999年3月、6-8月に行われ、湿循期と乾燥期に分けて解析した。湿潤期には、高度1km以下・約4.5km・約11kmの雲底の3層構造が明らかになった。1km以下の雲底は、12-18LTの陸上の境界層の発達で現れる夕立に伴い、乾燥機にも出現する。一方、4.5km高度の雲底は夕方〜朝方に観測され深夜00-03LTに卓越するもので湿潤期特有である。TBBデータやTRMM降雨データとの比較から、これは対流システムと組織化したアンビル雲の融解層高度に広がる雲底と解釈できる。2.「みらい」搭載のライダーによる観測から雲底高度を算出し、ジャカルタの結果と比較しながら熱帯海上での雲底高度分布の特性と気象場・雲頂・降雨の関係を日変化に着目して解析した。陸上との第一の相違は、1km以下の雲底を持つ雲が昼夜を問わず常に現れることである。やはり1km以下、約4.5km、約11kmの3層が顕著である。4.5kmのピークは03-09LTと15-18LTにあり、前者が大きい。夕方から夜明け前に上層11km付近のピークがあり、00-03LTに大きい。TRMM PRからは海上では03-09LTの早朝に対流雨と層状雨が組織化した降水の卓越が解析され、4.5kmのピークは組織化した雲システムのアンビルの早朝の発達を示す。これはジャカルタと同様、湿潤期特有の現象であった。
著者
小葉竹 重機 清水 義彦
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

森林が大気循環に果たす役割について、観測とその結果に基づくシミュレーションモデルの構築という2本の柱を中心に研究を進めた。観測は平成8年度は琵琶湖プロジェクトに参加し、平成9年度は埼玉大学、千葉大学、建設省土木研究所との共同観測に参加した。琵琶湖プロジェクトでの観測は、参加者が集中的に観測を行っていた水田の近傍で、もと天神様のお社があった30m【cross product】50m程度の大きさの孤立林で、林内の気温、湿度、風速、日射、地温の観測を行った。平成9年度の共同観測は、つくば市の土木研究所の近傍にある100m【cross product】200m程度の林で、林内の気温、湿度、風速、地温の鉛直分布および日射と、林外での気温、風速、日射の観測を行った。これらの観測を通じて得られた共通の結果は、日中は林外の方が気温が1〜2°C高いが、午後3時〜4時頃からは林内の方が気温が高くなり、その状態は翌朝の6時の日出まで続く。気温のピークの時差は30分程度であり、樹冠部で受けた日射が順次散乱、放射によって下方に伝達されていることが分かるが、一方、強い風を伴う夕立のような急激な気象変化は林内も林外と同様な気温変化となり、外部の変化がそのまま林内に持ち込まれている。つくばでの鉛直分布の観測結果からは、丁度、樹冠から樹冠上に相当する14m〜18mにかけて、気温、比湿ともに勾配が大きく、また14mの付近で極大値をとることが分かった。この結果から2点法を簡略化して時刻を固定して拡散係数を逆算し、その観測期間中の平均値を用いてフラックスの算定を行ってみたところ、顕熱、潜熱の値が熱収支から予想される値の2倍程度となった。したがって推定した拡散係数の値が大き過ぎることが分かるが、得られたフラックスの向き、傾向は従来の知見と矛盾がなく、気温、湿度、風速などの鉛直分布の観測が、正しく行われていることが確認できた。LESモデルを用いてシミュレーションを試みている。