著者
平手 小太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1.「防災意識」に関する既往研究、代表的事業の事例の分析本研究の基礎資料として、地方自治体等が実施した既往研究の代表例を収集・分析し、行政が市民の「防災意識」をどのように捉えているかを整理した。また、全国主要自治体における防災担当課を対象としたアンケート調査を行い、最近の防災啓発事業の事例を収集した。これらのうち住民参加型事業の代表例を調べた結果、その対象者は、行政からの呼びかけで参加した市民(町内会役員等)が非常に多く、その属性に一定の偏りがあることがわかった。2.「防災意識」に関するアンケート調査の実施1.の結果を考慮して「防災意識」に関するアンケート調査を2回実施した。対象者は、最初の調査では公立の小学校へ通う児童のいる世帯、次の調査では協力の得られた地域の居住者および対象自治体の全町内会長とした。主な対象地域は東京都北区である。3.調査結果の分析1-個人属性の影響アンケート調査結果より個人属性と「防災意識」との関連を検討した。個人属性の指標は、年齢、性別、「家族に町内会役員がいるか否か」の3種とした。この結果、性別以外では一定の傾向がみられることがわかった。4.調査結果の分析2-グラフィカルモデリングを用いた意識構造の検討次に、「防災意識」の一般的な構造を把握するために、グラフィカルモデリング等、統計的因果分析の手法を用いて調査項目間の直接的な関連を抽出し「防災意識」の因果モデルを作成した。この結果、地縁的組織に属するか(町内会役員であるか等)ではなく、「近所づきあいの程度」や「地域に愛着を感じるか」等が「防災意識」と直接関連することがわかった。5.結論以上の結果を統合して、多様な市民層を効果的に取り込むことのできる防災啓発事業のアプローチのあり方をまとめた。
著者
岩田 彩志
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

英語における音声放出動詞の移動用法には、motion-describingタイプとmotion-inducedタイプの2種類があることが判明した。motion-describingタイプでは、動詞の表わす事象と移動事象の因果関係は移動様態動詞と根本的に同じである。一方motion-inducedタイプでは、経路が動詞の意味に含意されており、enterのような経路融合動詞と同じ特性を持つ。
著者
山本 和重
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、戦時応召者とその家族への処遇について、アジア太平洋戦争期を対象に検討を行った。日中戦争期にその特権性が問題となっていた応召官公吏等に対する職場からの給与補給は、当該期には人事及び経理での位置づけが明確になるなど、特権性がより強化されたことが明らかになった。また一般応召者に対する軍事扶助法による扶助については、地域の「軍事扶助台帳」の分析から、アジア太平洋戦争末期に扶助対象が制度上の「家」から現実の家族生活に劇的に移行している事実が明らかになった。
著者
境野 直樹
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

当初は近世英国都市喜劇群のコンテクストを補強する目的で開始された研究であったが、中世宗教劇にみられる神と人との契約、信仰の問題を離れ、人間相互の契約に潜む暴力的収奪の構図の来歴をさぐるうちに、「犯罪者」「秩序の攪乱者」がバラッド、パンフレットに繰り返し表象されつつも「外部からの侵入者」「他者」の記号を纏わされることで、巧みに共同体共通の敵として排除される構図が骨太に浮上してきた。そこでPedlers Frenchと呼ばれる犯罪者の隠語や、罪状に応じた犯罪者の呼称を記したパンフレットの夥しい再版の経緯をたどりつつ、そうしたローカルで些末なはずの出版物がやがてホリンシェッドの『年代記』を構成するにいたる過程に犯罪者を他者として排除する力の介在を、またバラッドがその性格上、古い世界の宗教的モラルに依拠しつつもスキャンダラスな同時代の出来事を記述することで、倫理観に生ずる揺らぎ、さらには演劇におけるpedlerがrite of misruleの司祭として、あるいはwise foolの系譜に連なる登場人物として機能するさまに、時代の動揺とバランスを模索する状況を確認した。さらに、諺を累積することで成立している物語詩が、バラッド同様その性格上古いモラルに収斂するかに見えて、新しい社会の価値観に揺れるさまをも確認することができた。本研究の鍵となる記号Pedlerは、本来物々交換の媒介者として古い経済体制を、そしてface to faceの人間関係の媒介者であったはずだ。そのpedlerが巨大な、それゆえ顔の見えない資本主義という怪物の棲む近世の大都会と出会うとき、彼が出会うのは、一斉に神に顔を向けるエヴリマンではありえない。そこには互いに反目し収奪しあう近代の人間たちの世界が待ち受けているのであり、そのすべての汚辱と悪を、外部からの攪乱者のレッテルとともに、彼は背負わされるのである。
著者
首藤 重幸
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

カリフォルニア州に進出した日本企業(牧揚経営)がおこした水質管理法違反の事件を素材にして、次の点を検討した。検討素材とした日本の親会社の基本認識は、子会社を設立する国や州の環境関係法令(本件の場合は、水質管理関係法令)を知らないままに、法律で禁止されている汚染物質を地表に散布し、民事的課徴金と刑事責任を追及されるということのようである。企業の海外進出には多額の投資を必要とし、様々な経営上のリスクが発生することについては十分な研究をして進出するのであろうが、進出場所での日本とは異なる環境法的規制の調査が不十分な場合に、どのような経営責任を追求されることになるかを、この事件は示している。そこから日本企業が海外に進出した際に発生するかも知れない環境汚染をめぐる様々なトラブル(これを環境行政リスクという)に対して、どのように予防的対策を講じるべきかの、日本企業が海外進出するさいの環境行政リスク管理ともいうべきものの必要性と内容が理解されることになる。さらに、上記の諸点の検討と並んで、日本人の役員、アメリカ白人のマネージャー、そしてメキシコ人の現場労働者という組織構成から、これらの間でのコミュニケーションの困難が、それが環境関連法規違反を導いたという事実があり、上記の環境行政リスク管理という観点からは、企業スタッフ間のコミュニケーションという点にも注目せざるを得ない。
著者
本田 逸夫
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

丸山眞男の青年期=反動化の時代の経験、つまり彼の収監等の受難と同時代の「自由主義」的知識人の「実践的無力」は、日本の国家と思想の言わば病根を示すものだった。すなわち、「国体」は疑問の提出自体を許さない「直接的」「即自的」「統一」であると共に無際限に「精神の内面」へ侵入する権力であり、知識人の思想も表面の(外来)イデオロギー体系と深層の呪術的な(無)意識との乖離から、異端排撃への同調・屈服とその自己正当化に陥りがちだった。これらの問題性の克服の志向こそ、丸山の思想・学問の形成と展開を主導していた。そしてそこで特に重要な役割を演じたのが、--自由主義の批判者でありながらも、「大転向」の時代に良心に基き「時潮と凄絶に対決」すると同時に他者への寛容をも示した--師、南原繁との持続的な(思想的)対話であった。丸山は、(「古層」論等に至る所の)「存在拘束性」の徹底した追究を通じて日本思想の深層の問題を剔抉し、あわせて(おそらく南原を含む)日清戦後世代の知識人の国家観や天皇観の脱神話化につとめた。更に晩年の彼は、「伝統」や「正統」の研究が示す通り、超(むしろ長)歴史的な価値(=個性的人格・良心等)の「客観的」存在を唱える南原の思想に近づいていった。自由主義論に即していえば、その作業は、相対主義にも不寛容にも陥らぬ自由主義を支える(そして、主体形成の前提を成す「思想的な座標軸」でもある)所の「絶対的価値」ないし「見えない権威」--その歴史的な探求と重なっていたのである。
著者
篠田 太郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

雲解像モデルCReSSを用いた数値実験によって、中国華中域平野部上における日中の大気境界層の発達過程を示した。この過程において、乾燥対流境界層からforced cumulus境界層→、そしてactive cumulus境界層への遷移過程を示した。Active cumulusの発生は自由対流高度の急激な低下の時刻と一致していた。自由対流高度の低下は、地上付近の相当温位の増加と逆転層下端の飽和相当温位の極小値の減少によるものであることを示した。また、組織的な感度実験の結果から、初期条件において水蒸気量が多い場合、大気の安定度が小さい(不安定な)場合、地表面が湿っている場合にactive cumulusの発生時刻が早くなることを示した。Active cumulusによる水蒸気の鉛直輸送により、大気境界層は厚くなり、その上層における水蒸気量が増加することも示した。
著者
中谷 敏昭
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,中高年者や高齢者の健康づくりとしてトレーニング施設ではなく,自宅(イン・ハウス)で効果的なトレーニングを実施させるためのシステムの開発と実践をおこなった.まず,定期的なトレーニングを専門家の指導の元に3ケ月あるいは6ケ月(週に2回あるいは1回の計24回)行わせ,その後に運動継続を目的としたフォロー教室と健康づくりのための情報誌を作成して体力の変化を検討した.その後,イン・ハウスで行う筋力トレーニングのための活動筋の自覚的疲労感を指標とした強度スケールを開発し,生理学的強度との関係を若年男性と中年女性を対象に検討した.その結果,アームカール運動をもちた筋力トレーニング時の強度スケールは若年男性および中年女性とも,運動回数の進行とともに増加し筋電図仕事量でみた生理学的強度やBorg-RPEスケールとも強い相関関係をしました.その後,中年女性を対象に自宅で週に3回のアームカール運動(「かなり効いてきた」と感じる回数まで)を2〜3ケ月間行わせたところ,等尺性肘屈曲力と「限界」と感じる回数が増加し,筋力と筋持久力の改善に効果的な方法であることが明らかにできた.また,本研究の片側アームカール運動のトレーニングでは,反対側(非トレーニング側)の筋力と筋持久力が改善されcross-education効果を生じさせた.以上のことから,本研究のイン・ハウスの筋力トレーニングで利用するための活動筋の自覚的疲労感を指標とした強度スケールは筋力と筋持久力を改善させる指標としては安全で効果的な内容であることが示された.
著者
木内 徹 福島 昇
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

英米の演劇に登場するアフリカ系およびアフリカ系アメリカ人の登場人物、英米のアフリカ系およびアフリカ系アメリカ人劇作家の作品、英米の演劇におけるアフリカ的要素などを精査し、その共通の特徴、あるいはその差異と各劇作品の主要テーマとの関連を検証する。黒人の演劇における影響の範囲は幅広く、文学を初めてとして、歴史、奴隷制度、音楽、などを調査しなければならない。
著者
高塚 直能 長瀬 清
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、乳がん手術の待機期間に影響する要因について検討した。病期分類3の場合、病期分類0、1 、2に比べて待機期間の最大値が短く、我が国では重症例に対し先延ばしにしないという傾向を示唆するものであった。ただし、多変量解析では病期について有意な係数は得られなかった。また待ち行列理論の適用しモデル化を試みたが、流入率が流出率を上回ることがあり、流入率が流出率を上回らないとする理論から逸脱するため、適用は断念した。
著者
渡部 泰明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

中世和歌の形成に多大の功績を果たした歌人藤原俊成に対し、その撰集『千載和歌集』の配列構成に新知見をもたらし、またその歌論上の主著『古来風躰抄』の注釈を、最新の成果を盛り込みつつ完成させ、また源実朝・頓阿・宗祇(古今伝授)など、中世和歌の重要歌人・課題について、新たな視点を提示した。いずれも、従来の研究史において不足していた、和歌史的な視座のもとに新たに位置付け直す点に特徴がある。
著者
J クスマノ
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、大学の授業にヨガを導入することの先駆的な試みとして、その精神生理学的な効果と被験者(学生)の主観的な反応を調べることを目的とした。被験者は本学心理学専攻学生53名(男子13名、女子40名)であり、全員が必修科目の中でヨガを体験した。手続きは、脈拍と血圧についてヨガ実施前に3回のベースラインを測定した後、ヨガ実行中および終了後に合計3回の測定を行った。また、ヨガ終了後はその時点での気分とリラックスの度合いを評定させた。ハタヨガの実施時間は約1時間15分であった。その結果、ヨガ実施前と実施後の脈拍の平均値をt検定で比較したところ、有意にヨガ実施後の低下が見とめられた。血圧や、各変数間の相関では有意な結果は得られなかった。このことより、授業という状況の中でヨガを実行することによる身体的な効果はある程度認められたと考えることができる。これは、ほとんどが初心者で、しかもヨガに対する動機づけが必ずしも高くないという状況であっても、ヨガによる変化を体験することができることを示している。但し、授業の中での実践はあくまでヨガの紹介やきっかけ作りという側面が強いため、本研究を踏まえて、今後はより継続的な実践のための長期的なプログラムを検討していく必要があると思われる。
著者
末柄 豊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

室町時代の中後期に活躍した飛鳥井雅親・雅康という兄弟を中心に、和歌と蹴鞠を家業とした同家の活動について史料を収集するとともに、その史料に関する基礎的な研究をおこなった。とくに、室町時代の公家日記における飛鳥井家の者の所見5000件以上を索引形式でまとめて公表した。また、室町時代の和歌史の史料として注目すべきものでありながら、従来文学研究者によって注目されることの少なかった諸史料について、史料紹介を行った。
著者
北川 敏一 平井 克幸 岡崎 隆男
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

三重項カルベンは、中性2配位の炭素原子に2個の不対電子をもつ有機分子種であり、安定化が困難な活性種の一つである。本研究では、三重項カルベンの長寿命化を目的として、その前駆体を我々が開発した剛直な「分子三脚」を用いてAu基板表面に自己組織化単分子膜として固定した。膜上への光照射により発生したカルベンは基板上への束縛をうけて2分子的分解反応を起こさないため、溶液中で発生させた場合と比べて安定化することが確認できた。
著者
岡崎 隆男
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

新材料の有機合成や体内での代謝反応や機能発現機構には、カルボカチオンが関与する反応が重要である。そこで、超強酸を使って多環式芳香族スーパー求電子化合物の効率的な発生方法を開発し、直接NMR観測とDFT計算による電子構造の解明と有機合成反応への応用を検討した。Benzo[ b, d] furan, benzo[ b] naphtho[ 1, 2-d] furan, benzo[ b] naphtho[ 2, 3-d] furan, benzo[ b] naphtho-[ 2, 1-d] furan, dinaphtho[ 2, 1-b : 1', 2'-d] furan, benzo[ b] naphtho[ 1, 8-de] pyran, dibenzo[ d, d'] benzo-[ 1, 2-b : 4, 3-b'] difuran, dibenzo[ d, d'] benzo[ 1, 2-b : 4, 5-b'] difuran, naphtho[ 2, 1-b : 3, 4-b'] bisbenzofuran, benzo[ 2, 3][ 1] benzofuro[ 4, 5, 6-kl] xanthene, 9, 9-dimethyl-9H-9-silafluoreneを脱ジアゾ環化反応等によって合成した。超強酸を用いてカルボカチオンを発生させ、NMR観測した。プロトン化カルボカチオンの陽電荷は酸素原子が隣接したベンゼン環への非局在化に限られていた。また、NICS値からフラン環の芳香族性が高いほどカルボカチオンになりやすいことが示唆された。
著者
長谷川 まどか 加藤 茂夫 田中 雄一
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,携帯デバイスを対象としたマルチセンソリー認証方式の開発を目的としている.現在,携帯デバイスでの認証には暗証番号やパスワードが多用されているが,覗き見への耐性の面で問題がある.本研究では,画像などの視覚情報,音声などの音響情報,振動などの触覚情報といった複数の知覚要素を組み合わせて認証に利用することで,覗き見への耐性が高く,かつ,ユーザが使いやすい認証方式の検討を行った.さらに,携帯端末を振る動作や空中描画動作などの行動的特徴を認証に利用する方式についても検討を行った.
著者
西村 眞
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究課題として取り組んだ経済モデルは(1)国民の環境改善、省エネに対するコンセンサス(2)長期的な規制(3)規制と調和するインセンティブ(4)地域間の競争を組み合わせたモデルであるという仮説を同研究の集大成として纏めた論文『低炭素経済実現のためのビジネスモデル』が、中国、ドイツ、アメリカ、韓国、日本における20に及ぶ学会報告でこの分野の有識者の賛同を得られたことでほぼ実証された。この論文の中で、2009年より日本において進行した地上デジタル放送への移行が規制として働き、偶然同時期に導入されたエコ・ポイントが組み合わされ、非常に大きな効用が得られたテレビが他のどの環境対応商品よりも抜きんでて販売を伸ばしたという事実が上記仮説を裏付けることとなり、学会での承認に繋がった。但し、当初予定した具体的な技術による中国における実証実験は、天津Smart Cityに目標が絞られたが、知財保全の保障の壁が破れず、北京大学、清華大学、ハルビン工業大学等の中国のこの分野の研究者の支援や、三菱地所、協和機設他日本企業の協力が得られたにも拘わらず、知財保全という壁が越えられず、実証実験には至らなかった。しかし、昨年度忠南大学(韓国太田)及び明治大学において開催された学会においては、天津大学、西南交通大学、南開大学、武漢大学の代表が上述の経済モデルに強い関心を示し、それぞれの地域で実施している廃棄物の回収や省エネの活動に同様の経済モデルの有効性が見られることや、理論化されたモデルを積極的に取り入れて行く意向を示したことは、本研究の成果として上げることが出来る。
著者
石田 智恵美 久米 弘
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

学部生の講義・演習・実習において,専門基礎科目のルールが判断基準として活用されていることが確認された。特に4年生の「統合実習」では,複数の患者を受け持った際の看護実践時に複数のルールが適用されていた。また, 1年次から4年次に行われる看護学演習・実習において,異なる場面で同じルールを適用させることを試みた。授業終了後のレポートでルールが活用されていたことから,ラセン型カリキュラムの思考方略の有効性が確認された。卒後1年目, 2年目の思考トレーニングの研修では,記録物,終了後のアンケート調査により,研修課題の適切性と,受講生の判断基準の獲得および拡大が確認された。
著者
池上 佳助
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.歴史事象としての冷戦が完結したことにより、現在、改めて冷戦史研究の現代的意義が問い直されている。それは「冷戦期の冷戦研究」から「冷戦後の冷戦史研究」への脱却とも言えるものであるが、そこで論議される新しい冷戦史研究は、これまでのヨーロッパを主舞台とした米ソ両陣営のパワーをめぐる対立構造の分析を中心にしたものから、旧ソ連・東側諸国の新史料を活用しつつ、冷戦とヨーロッパ周辺部あるいは第三世界の変容との関係や冷戦が政治・軍事分野にとどまらず経済・社会・文化全般に与えた影響をグローバルかつトータルな視点から捉えようするものに変容しつつある。2.本研究は、欧州冷戦史でも余り取上げられない欧州北辺の北極圏を取上げ、この地域が冷戦構造にどう組み込まれてきたのかをマルチアーカイバルなアプローチを用いて実証的に解明することを主目的としていた。具体的には北極海にあるノルウェー領スヴァールバル諸島、デンマーク領グリーンランド及びアイスランドを包含した北極圏地域を設定し、44年から47年にかけてのいわば冷戦の「萌芽期」に米ソの戦後秩序構想の中にどう位置付けられ、それが欧州中央との関係の中でどのような影響を及ぼし、あるいは受けてきたのかを調査・分析してきた。3.研究成果の概略を述べれば以下のとおりである。44年に入ると、米ソ両政府部内では近い将来のドイツ降伏を見据えた戦後構想の検討に取り掛かった。その中で、米国は第二次大戦当初よりナチスからの防衛を目的に軍事駐留していたグリーランドやアイスランドに対し、米本土の安全保障の観点から戦後も駐留の継続、長期基地貸与を強く要求するようになった。一方、ほぼ同時期にソ連は北部ノルウェーの解放・占領に続き、軍事戦略、補給航路の確保の必要からノルウェー領スヴァールバル諸島の共同統治を提案。しかし、デンマーク、ノルウェーは未だナチスの占領下にあり、アイスランド政府やノルウェー亡命政府(ロンドン)にとっては米ソの要求は余りに唐突で、45年中に極秘裏に進められた交渉は北欧側の反発・不安もあり難航した。一方、米ソ両国は相互に相手側の北極圏への動きを表面上は批判しながらも積極的な介入の意思は示さなかった。このことは欧州中央で展開されていた「勢力圏分割」が欧州北辺の北極海でも暗黙裡に展開されていたといえるのではないか。
著者
梅田 素博
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、総合的学習のための表現教育の教材の開発にある。先ず、表現教育に関する音楽教育、美術教育(造形教育)、映像教育のカリキュラムと教材を資料として、収集した。そして、具体的な表現教育の教材を研究した。手順は次の通りである。1.音楽教育と美術教育最初に、色彩と形態を用いて音楽を表現した。PCCSのトーンを使って、オクターブと色彩の両者の関係を作成することによって、色彩における楽譜との相関を行った。それは、一つのオクターブの中の12音と12色相との適用である。また7つのオクターブと7つの色彩トーンを適用させた。次に、音と形態との関連において、音の長短と形や線の広さを相関させた。この結果、音楽と美術を照応することによって独創的な表現を表すことを立証した。2.映像教育(光)映像教育では、光を素材とした。そして上記1の結果に基づき、ルミノグラフ・パターンを研究した。光は、重要な造形要素の一つである。デジタルカメラ、カラーフィルター(赤・黄・緑・青の4原色)、原図(点・線・面)、特殊効果フィルターなどを用いて実験した。その結果、空間、リズム、緊張、コントラスト、バランス、ハーモニー、コンポジション等の表現効果が得られた。以上の結果、音楽と美術(色彩・形態)と映像(光)の関連するシステムの存在を明白にした。具体的には、「蠱惑の世界」シリーズ及び「月光の宇宙」シリーズである。そして将来にわたり表現教育において、新しい教材の開発を可能とした。