著者
宮田 仁 井上 毅 三宮 真智子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,小学生,中学生,高校生を対象として,論理的思考力を育成する考え方学習を取り入れたWebベースの情報安全教育学習教材を開発し,学習者用ワークシート,教師用ガイドブックを作成することである。指導項目の中から,(1)著作権の尊重,(2)個人情報の保護,(3)ネットワーク利用上のエチケット,(4)セキュリティの遵守,(5)サイバーセイフティに関するWeb教材を開発した。小学校12校,中学校10校,高等学校5校で開発したweb教材の授業実践を行った結果,本Web教材の有効性が認められた。
著者
山村 一誠
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、有効温度が極めて低く、恒星と惑星の中間状態にある褐色矮星大気の物理的・化学的状態を、赤外線天文衛星「あかり」によって世界で初めて得られた近赤外線分光観測データの解析によって理解しようとする試みである。本研究によって(1) 一酸化炭素、二酸化炭素の量が通常の理論では説明出来ないこと、(2) 褐色矮星の元素組成にばらつきがあるらしいこと、(3) 世界で初めて褐色矮星の半径について議論できたこと、などの成果が得られた。
著者
高橋 理
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

中枢神経系の主要な興奮性伝達物質であるグルタミン酸の脳内分布については、従来おもにその合成酵素であるglutaminaseを免疫組織化学的に同定することにより解析が進められてきた。本研究はグルタミン酸に対するポリクロナール抗体を用いて、三叉神経運動核と三叉神経感覚群におけるグルタミン作動性の神経細胞体と神経終末を同時に検出し解析することを目的とした。実験には雌Wistar系ラットを用いた。実験動物を2.0%パラホルムアルデヒドと0.25%グルタールアルデヒドの混合溶液にて灌流固定を施した後に、脳幹部の凍結連続切片を作製し、免疫組織化学的にグルタミン酸様免疫活性を示す神経細胞体と神経終末についてそれぞれFITCを用いて標識し、蛍光顕微鏡下に観察した。実験の結果、グルタミン酸免疫陽性の神経線維と終末は、解剖学的に定義される三叉神経運動核の周囲の小細胞性網様体には少数が観察されるものの、同核内においては運動ニューロンの細胞体と近位樹状突起に接してごく少数しか認められなかった。これに対してグルタミン酸免疫陽性の神経細胞体は三叉神経主感覚核に多数、三叉神経脊髄路核の吻側亜核背内側部と腹外側部に少数、そして同中位亜核に多数が観察された。これら三叉神経感覚核群の内側に接する橋・延髄の小細胞性網様体には免疫陽性の神経細胞体と神経線維が多数観察された。これらの結果より、従来報告されてきた、三叉神経運動核に対するグルタミン酸作働性の前運動ニューロンは、三叉神経運動ニューロンの細胞体や近位樹状突起というよりはむしろ、同核内において遠位樹状突起上にシナプス結合する事が示唆された。今後、この部位において免疫電顕を用いたシナプスの構造解析が重要と考えられる。
著者
佐藤 一郎
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

テクスト読解上困難の多いことで知られるスピノザの『神、人間とそのさいわいについての短論文』(以下『短論文』と略)について、原典写本のマイクロフィルムを入手し、写本を参照しながらのテクスト解読と諸版の校合という文献学的研究を行なった。従来から進めていた『短論文』の翻訳作業とも併行して、研究史の把握と諸解釈の批判的整理という基礎的研究にもとづいて、分析的読解を進めながら、『エチカ』、『知性改善論』との関係を探る哲学的研究を行なった。また、スピノザの初期哲学の形成過程という視野から、『短論文』の成立事情と時期、著述の原形態に関して歴史的な知識解明につとめた。その結果、おおよそ以下のような成果を得ることができた。1.『短論文』が当初どのような作品として受けとめられていたかという点から、完成形態である『エチカ』との関係も含めて、この作品にまつわる歴史的な特殊事情をある程度明らかにすることができた。2.現在スピノザ研究において、その初期哲学に特に注目されるようになっているが、そこには未完の『知性改善論』と『短論文』の先後関係という非常に大きな問題がある。しかしこの問題の歴史的な解明は哲学内容上の解明と切り離すことができない。そのことが、研究期間後半において主にたずさわった「真理」をめぐるスピノザの哲学の追跡を通して、具体的に明らかになった。特に、未完の『知性改善論』が、なぜ未完になったのかという点も含めて、スピノザの哲学形成を考える上で、重要な意義をもつという知見に至った。3.付随的には、研究期間に、補助金によりオランダとイタリアに出張して、思想史的研究と歴史的・文献学的研究において主導的な位置を占める学者から研究課題に関してレビューを受けることができたのも、研究の幅と視野を広げる意味で、大変有意義であった。
著者
寺田 良一
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1998年の「NPO法」の施行以来、日本においても、小規模な任意団体が主であった環境運動組織が環境NPOとして組織化、制度化され、政策決定に対する影響力や圧力行使、対抗的政策提言活動等を行う基盤が遅れ馳せながら整備された。本研究においては、環境NPOの公式的な組織化、制度化以降の環境運動組織の機能変容、政策提言(アドボカシー)能力や社会的影響力の増大等を、主として定性的に明らかにすることがめざされた。比較的NPOとしての公式化、制度化が進んだアドボカシー型環境NPOを中心として聞き取り調査を広範に進めた結果、以下のようないくつかの知見が得られた。第1に、NPOとしての組織化の経緯から、a)海外の既存の環境NPOの日本支部的に発展してきたもの、b)国内のおいて比較的長期間環境運動や消費者運動としての活動実績を持ち、NPO制度の確立とともにそれへと組織化されたもの、c)比較的最近の環境問題に対応して活動を開始し、当初から環境NPOの形態を採っているもの、といった類型が得られた。全体として、税制優遇や寄付控除制度等を欠いた日本の不十分なNPO制度ゆえに、財政基盤は脆弱であり、政策提言や政治的影響力行使に必要な専門的力量や人材も不十分である。しかしながら、こうした基盤の弱さにもかかわらず、NPOとして公式組織化しえたことで、自治体や企業セクターとのパートナーシップ形成は著しく進展した。事業化や活動の独自性を打ち出し、NPOとしての独自のニッチを見出す努力も見られる。たとえば、海外に本部を持つ既存の環境NPOや新興環境NPOで国際的な活動や国連等をアリーナとした活動が特徴的であったり、草の根的基盤を持っ環境NPOが地域レベルの政策提言等に関与する傾向などが見られる。
著者
小谷 通泰 山中 英生 秋田 直也 田中 康仁
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、貨物車に搭載したプローブ機器(GPSとデータ記録用のロガー)から得られたデータをもとに、貨物車の基礎的な運行挙動を把握するとともに、これらの運行挙動を組み込んだ環境制約下における配送計画モデルを定式化する。そして、複数の運行形態の貨物車を対象として最適配送計画を提案し運行コストの削減と都市環境の改善の両面からその効果を評価することを目的としている。得られた主たる成果は以下の通りである。まず、貨物車の運行挙動については、取得したプローブデータにもとづき、貨物車の走行時間や荷さばき時間にみられる不確実性を考慮し、指定時間がある配送地点への出発時刻の決定行動や複数の配送先への巡回経路の選択行動をモデル化した。また同様にプローブデータをもとに、高速道路と一般道との間における大型貨物車(海上コンテナ輸送トラック)による走行経路の選択要因を抽出した上で、経路選択モデル(非集計行動モデル)の構築を行った。さらに明らかになった運行挙動を踏まえて、一般の貨物車(宅配貨物輸送トラック)と大型貨物車(海上コンテナ輸送トラック)の2通りを取り上げて、環境制約下における配送計画を作成した。宅配トラックについては、貨物輸送需要を与件としてデポ、集配拠点の最適配置計画を提案し、貨物車の運行効率の向上と環境改善効果の視点からそれらを評価した。また海上コンテナ輸送トラックについては、構築した貨物車の経路選択行動モデルを用いて、市街地の環境改善を図るため通行料金格差の導入や賦課金徴収を行った場合の、貨物車の市街地から湾岸部の高速道路への迂回誘導効果を評価した。
著者
本田 由紀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、高校における「特色ある学科」、中でも「特色ある専門学科」の有効性を明らかにすることを目的とする。平成15年度には「特色ある学科」を開設している専門高校6校に対するインタビュー調査を実施した。翌16年度には「特色ある学科」を開設している全国74校の高校に対して質問紙調査を実施した結果、9401通という大量の回収調査票が得られた。平成17年度には調査データの入力・クリーニングを行うとともに、今回の調査データを東京大学社会科学研究所が前年に実施したほぼ同じ内容の高校生調査と合体させることにより、「特色ある学科」に在籍する生徒とそれ以外の生徒との比較を可能にするデータセットを作成した。この合体データの分析結果から、主に以下の諸点が明らかになった。1)「特色ある専門学科」に在籍する生徒には、同じ分野の従来型の学科に在籍する生徒と比較して、性別の偏りが是正されていること、進学志望が増大していること、将来の職業志望や学習動機が明確である傾向があることなど、いくつかの望ましい特徴が観察される。2)「特色ある専門学科」全体で見ると進路先の決定が従来型の学科と比べてよりスムーズになっているとは言えないが、分野別に見ると、特に農業・水産系の分野において、就職先の内定獲得や専門学校進学先決定に関して、従来型の学科よりも成功率が高まっている。3)ただし、生徒の登校回避行動(遅刻、授業をさぼるなど)は「特色ある専門学科」の方が従来型の専門学科よりもむしろ頻度が高く、また教育内容の面白さややりがい、教育内容と将来の職業が関連していると感じる度合いなどについては「特色」の有無による違いがほとんどみられないなど、「特色ある専門学科」の効果が明確に現れていない側面も見出される。ここから、専門学科における「特色」の導入は一定の有効性をもつが、その教育内容については改善の余地がまだ存在するといえる。
著者
堀井 俊章
出版者
国立大学法人横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は青年期における不登校傾向の測定に関する調査研究である。主な結果は次の通りである。すなわち、青年期の不登校傾向を客観的に測定する有用な尺度が開発された。尺度は心理測定尺度として一定水準以上の信頼性と妥当性を備えていることが確認された。また、新たに開発された不登校傾向尺度を用い、不登校傾向の規定要因が検討され、その結果に基づき、青年期における不登校問題を予防・支援するための指針が提示された。
著者
鈴木 紀明 三宅 正武 西尾 昌治 下村 勝孝 石毛 和弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では互いに関連する3つの課題を取り扱った.(1)熱方程式の平均値の性質,(2)放物型ベルグマン空間の構造,(3)熱方程式の多項式解,である.(1)熱方程式の平均値の性質については,有界な密度関数の存在,ディリクレ正則性との関連などについて考察した.それらの結果はN.A.Watsonとの共著でColloq.Math.98(2003),87-98に発表した.(2)上半空間上の放物型作用素に関するベルグマン空間を定義し,Huygens property,基本解の評価,双対空間の特徴付け,再生核の具体的表示などの基本的結果をまとめた(Osaka Mathematical Journal,42(2005),106-133).また,空間次元が2以上という技術的な条件を調和測度の回転普遍性に注目して取り除くことに成功し,帯状領域におけるベルグマン核の評価を行った.それらの結果は2004年8月に島根大学で開かれたIWPT in Matueで講演発表するとともに,2006年に発行予定のASPMに寄稿した.最終年度は放物型ベルグマン空間におけるGleason問題およびCarleson測度とToeplitz作用素の有界性などについての結果を整理した.(3)熱方程式の境界値問題では多項式の解が常に存在する領域についての考察を進めた.2次元で境界が多項式によって定められている場合に,その多項式の次数が3以下の場合を解決し,次数が4以上の場合に,エルミート多項式の零点の分布との関係を調べた.この結果は2005年8月の第2回International Conference of Applied Mathematics (Plovdiv, Bulgaria)で講演発表し,講義録として出版もした.
著者
阪田 省二郎 栗原 正純
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、本研究代表者が以前から行ってきた代数幾何符号の高速復号法の研究を発展させつつ、「与えられた入出力系列対を許容する線形帰還シフトレジスタの合成問題」を高速に解くアルゴリズムを確立することが最大の目的である。従来よく研究されてきた「与えられた系列を出力する線形帰還シフトレジスタの合成問題」は、代数的符号、特にReed-Solomon符号やBCH符号のような実用上も重要な誤り訂正符号、さらには、次世代誤り訂正符号として有望視されている代数幾何符号等の高速復号法と関係が深く、情報通信工学において重要な意味を有しているのに対し、本研究課題は、テプリッツ、および、ブロック・テプリッツ型の非同次連立1次方程式の高速解法に対応しており、拡張した問題を扱っている。これは、代数的符号の高速復号法と離れても、線形システムに対するWiener-Hoph方程式の高速解法として、それ自身、重要な意義を有する。本研究では、まず1次元入出力系列対の場合について、本問題を解く高速アルゴリズムを与え、実際に、その高速性を計算機シミュレーションにより確認した。このアルゴリズムの理論面については、2002年6月、スイスのLausanneにおいて開催されたISIT-2002(2002年IEEE国際情報理論Symposium)で発表した。次に、この結果を、Reed-Solomon符号やBCH符号のリスト復号の第2段階における有理関数体上での因数分解の高速解法に応用できることを明らかにした。さらに、多次元(2次元以上)の入出力系列対の場合にアルゴリズムを拡張し、それを代数幾何符号のリスト復号の第2段階における代数関数体上での因数分解の高速解法に応用可能であることを理論的に示した。これらの成果を、2002年6月末から7月初めに、安房鴨川と横浜において引き続き開催されたAEWIT-2003(2003年アジア・ヨーロッパ情報理論研究ワークショップ)、および、ISIT-2003(2003年IEEE国際情報理論Symposium)において発表した。当初、代数的誤り訂正符号のより高精度の復号という最終的な研究目標への前段階として、システム理論的な問題の形で本研究課題を設定したが、その目標にほぼ沿った形で、Reed-Solomon符号や代数幾何符号のリスト復号への応用が可能であることを明らかにした。また、関連する研究として、代数曲線符号の並列複号、複合誤り訂正符号についての成果を、電子情報通信学会論文誌に共著論文として出版した。
著者
山田 雅博 石渡 哲哉 愛木 豊彦 竹内 茂 米田 力生 下村 哲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,テプリッツ作用素の有界性に関する研究を行った。特に,${\bf R}^{n}$の上半平面で定義された調和バーグマン空間におけるテープリッツ作用素の有界性に関連したカールソン不等式の解析を行った。テープリッツ作用素の可逆性に関する研究に関連して,調和ベルグマン空間における接導関数と非接導関数との関連性に関する研究を行い,それらの関数のノルムが同値となることを示した。また,カールソン不等式と呼ばれる積分不等式の性質の解析を行い,申請者が過去に行った研究結果を含んだより一般的な結果を得た。ここでは,考えるベルグマン空間も調和関数によって作られるバナッハ空間とし,そこにおける$(A_{p})$条件に相当する新しい概念を導入した。具体的には,$n-$次元ユークリッド空間の上半平面で$P-$乗可積分な調和ベルグマン空間を考える。一方の測度の任意の調和関数の$p-$乗積分が他方の測度の調和関数の$p-$乗積分で上から押さえられるための必要十分条件を,他方の測度が$(A_{p})_{\partial}$条件を満足するときに特徴付けた。$\alpha$--ベルグマン空間という新たな概念が提示され,通常のベルグマン空間を放物型作用素の解空間の一種と見なし,より統一的にベルグマン空間を研究するという方向が示された。これに関連して$\alpha$--ベルグマン空間上のカールソン不等式を考察し,カールソン不等式が成立するための特徴付けを行った。この特徴付けは,ある種の微分方程式の基本解をもとに構成した再生核を用いて行った。また,その際に必要十分条件を記述するため,$\alpha$--カールソンボックスという概念を導入し,再生核の境界挙動や評価を行い,その性質を明らかにした。
著者
岩見 哲夫
出版者
東京家政学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ナンキョクカジカ亜目8科56種について,閉顎筋および鰓弓周辺の一部の筋肉群について,詳細なアトラスを作製した。また,8科16種について,閉顎筋と関連の深い神経ramus mandibularis trigeminusの位置関係について明らかにした。これらの形質を解析した結果,ナンキョクカジカ科の中で従来の分類体系とは異なるクレードの設定が必要と思われる形質分布が確認された。特に,南極大陸沿岸域に分布の中心をもつトレマトムス亜科と外部形態では高い類似性を示すNototheniinaeの間では重要な差異が認められた。また,本科の中で原的なグループとされていたPatagonotothen属について,筋肉系からはその傾向を支持する形質が認められなかったことは,本属の系統的位置を推定する上で重要な新知見と判断された。カモグチウオ科とコオリウオ科の近縁性は従来の骨学的データおよび近年増加しつつある分子生物学的データからも支持されているが,筋肉系からも同様の結果が得られた。しかしながら,カモグチウオ科の一種キバゴチGymnodraco acuticepsについては,ナンキョクカジカ亜目全体の中でも極めて特異な形質状態を呈することが確認された。キバゴチに認められた形質を,稚魚期の個体の全身横断面切片を作製し解析したところ,閉顎筋1と2の融合は,稚魚期では認められず,成魚におけるこの形質は明らかに派生形質であることが確認できた。また,本種が内鼻腔構造を持つとされる問題についても,稚魚期には鼻腔と口腔が連絡していないことが確認され,この点についてはさらに検討を進めている。
著者
西尾 昌治 小松 孝 佐官 謙一 正岡 弘照 鈴木 紀明 下村 勝孝 竹内 敦司 山田 雅博 佐官 謙一 正岡 弘照 鈴木 紀明 下村 勝孝 竹内 敦司
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

熱方程式などの放物型方程式に対し,その解空間の構造および,底空間の幾何学的状況などとの関係を解の積分表示などポテンシャル論的手法を用いた詳細な解析を行った.方程式としては,ラプラシアンの分数ベキを含んだ微分積分方程式などを取り扱い,放物型ベルグマン空間の研究では,時間変数に関する分数ベキ微分を用いる新しい手法によって,トエプリッツ作用素や調和双対に関する結果が得られた.
著者
鈴木 紀明 西尾 昌治 下村 勝孝 山田 雅博 西尾 昌治 下村 勝孝 山田 雅博
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

Laplace作用素と熱作用素を統一的に取り扱う目的で,上半空間に放物型作用素を導入し,その作用素が作るBergman空間を定義した.この空間に作用する様々な線形作用素を解析し,特に,Carleson埋め込みとToeplitz作用素の有界性とコンパクト性を示した.
著者
吉永 安俊 酒井 一人 仲村渠 将 赤嶺 光
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ウッドチップを充填した浸透トレンチによる赤土流出防止対策を開発した.実験期間中の降雨条件下において圃場外への赤土流出量は70%以上削減され,高い対策効果が認められた.試験地の土壌条件下において浸透トレンチの貯水は速やかに地下浸透するため,浸透トレンチの貯水は作物栽培に影響しないと考えられた.浸透トレンチの維持管理や営農作業を考慮すると,圃場の末端部のみに大容量で設置する方がよいと考えられた.
著者
原 研二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究においては,19世紀オーストリアの主要な小説の分析を通じて,この時期のオーストリア小説に描かれた個人が,はじめから安定した単位ではなく,むしろつねに不安を抱え込んでいたものであることが明らかにされた。シールズフィールドから,グリルパルツァー,シュティフタ-,アンツェングルーバー,エーブナ-=エッシェンバッハ,そしてさらに世紀転換期の作家の作品に至るまで,繰り返し人間の自我が実体を欠いている様子と,その欠落を暴力的に埋めようとする文学的な試みが行われたことが明らかにされた。これは特殊オーストリア的な問題として理解されるだけではなく,ゲーテ以来の近代ドイツ小説の展開それ自体と密接な関係を持つ問題である。特に,従来正当な評価を受けることのなかったシールズフィールドとエーブナ-=エッシェンバッハについて詳細な検討を試み,彼らの作品を抜きにして,近代オーストリア小説,またドイツ小説の歴史の正当な評価があり得ないことを論証した。成果の一部は,日本独文学会において口頭で発表され,日本語の論文としてまとめられただけではなく,海外の研究者との交流の便を考えドイツ語の二編の論文にまとめられた。世紀転換期にマッハによって端的に指摘されのちの近代オーストリア小説のきわめて重要な課題となる「救いがたい自我」の問題が,19世紀においてすでにきわめて変化に富んだかたちで顕在化したことが,これらの論文で明らかにされている。さらに今後,こうした成果に基づき,今世紀の前半に至る近代ドイツ小説の流れが,新しい視点から書き直されることが期待される。
著者
上原 清子
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

脾洞内皮細胞の血球通過機構を解明する一環として、内皮細胞の微細構造を透過型電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、computerを用いて調べ、脾洞内皮の収縮機構を微細構造学的に検討した。脾洞内皮細胞の細胞間結合と透過性について、freeze fracture法、細胞質抽出法、細胞間標識tracer法を用いて透過型電子顕微鏡で調べた。細胞基底側にtight junctionが観察された。それらは不連続でreplica上でtight junctionのstrandsは数も少なく、頂部-基底方向に走り、閉鎖していなかった。トレーサーの硝酸ランタンは電子密度の高い物質として細胞間隙やtight junctionを通過した部位に観察される。脾洞内皮細胞間ではtight junctionのある膜の癒合部以外はどこの細胞間隙にも存在していた。脾洞内皮でのtight junctionのfence機能、gate機能は弱いと考えられた。脾洞内皮細胞内の開放小管系の存在を細胞外標識tracer法用いた微細構造の観察とその結果をcomputerで3次元的に証明した。これまで開放小管系は血小板にしか存在の報告がない。tracerを用いて内皮細胞内に見られる小胞系のあるものは細胞膜から連続した細い開放小管系であることを証明した。また、computerで3次元的解析を行い、開放小管系が細胞内を分岐吻合しながらnetworkを作り、stress fiberやキャベオラに密接して走っていることが解った。内皮細胞には数多くのcaveolaeが存在する。caveolaeを構成するcaveolinにはcaveolin-1,-2,-3があり、このうちcaveolin-3は筋に特異的に発現する事が解っている。脾洞内皮細胞にcaveolin-3が存在することを共焦点レーザー顕微鏡と免疫電子顕微鏡法を用いて明らかにした。caveolin-3は細胞質の頂部、側部、底部いづれにも観察された。細胞質内の小胞様の構造にも反応が見られた。
著者
大町 真一郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

テンプレートマッチング法による幾何学的変形を受けた画像の高速な探索を実現することを目的とし、画像を多項式で近似し、指定された位置とアスペクト比の部分画像のみを対象とすることで高速な探索を実現できる手法を開発した。また、本研究課題の応用として、実時間で画像を取得しながら物体を探索するシステムを構築した。具体的には高度道路交通システムへの応用を想定し、交通信号の自動検出および識別のためのシステムを構築した。
著者
石井 直人 佐々木 裕里子
出版者
白百合女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、冨田博之氏(1922-1994)が収集した日本の児童演劇・演劇教育に関する膨大な文書資料(データ件数7,837件)および新聞記事(データ件数12,317件)を整理した。これらの資料は、児童文化史の変遷を調査する一次資料として広く研究に役立てられることが期待される。データベースの作成、資料の再分類により、コレクションの全体像を明らかにし、その歴史的価値を再確認することができた。
著者
中村 正人
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究課題は、儒教思想に由来する清律の刑罰減免制度を考察対象に取り上げ、主として清代の刑案(判例)史料を用いた実証的研究を通じて、当時の法実務家官僚達が、儒教的な「衿恤の意」を実現しようとする法の理念と、社会の治安維持という現実の要請との間で、如何にして折り合いをつけていたかを解明し、その対応の時代的変遷のパターンを他の王朝のそれと比較検討することによって、清朝法制度の特質の一端を明らかにすることを目的としている。本研究では、主として「誤殺」と「自首」を対象に選び、条例や判例によって制度の変遷過程について考察を行った。その結果、「誤殺」については、特に親族関係の存在を認識できずに犯行に及んだ「犯時不知」の場合において、親族関係の錯誤に関して広く刑の軽減を認めていた清朝初期の状況が、乾隆朝を境として次第に刑の軽減範囲が狭められ、嘉慶24年以降には極めて限定的な場面においてのみしか減刑が認められなくなって行ったことが明らかとなった。また「自首」に関しても、主として強盗犯の自首において、それ以前は強盗犯の自首についても広:く減免が行われていたものが、次第に自首が認められなくなる、あるいは認められたとしても刑の軽減の度合いが低下する等、やはり同様に乾隆朝辺りを境として犯人にとって不利益な方向での変更が行われていたことが明らかとなった。これはかつて「留養」制度に関して筆者が明らかにしたのと同様のパターンであり、この乾隆朝を境とした厳罰化というのが清朝の法制度上の特質として浮かび上がってきた。