著者
伊藤 圭子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

特別支援教育を成功させるために、応用行動分析学の理論を家庭科に導入する意義を検討し、家庭科と家庭とが連携した小学校家庭科における学習プログラムの開発を目的とする。応用行動分析学を用いた家庭科学習プログラムの枠組みの課題として、学校や行政機関による保護者を対象とした家庭科学習内容の実施、教師と保護者との連携強化の必要性、子どもの生活への主体的活用を促す学習教材の検討の3点が提起された。
著者
遠城 明雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、1910〜40年代の地方都市における地域住民組織の存立形態および再編成と、その組織を基盤とした民衆運動の特徴を明らかにすることにある。主なフィールドは福岡県の主要都市であるが、比較研究のため下関市と仙台市でも調査を実施した。得られた知見は以下の通りである。(1)1910年代初に、全国的に米価騰貴問題が発生した際に、既存の地域住民組織がその一時的救済に大きな役割を果した。またいくつかの都市では各種議員の選出に際して、住民組織が中心となって「予選」を実施しており、これらの点から、当該期では地域住民組織が社会秩序の維持において中心的役割を果したことが明らかとなった。(2)1920年代半に、地域住民組織をめぐって行政、政党・政派、住民の間で矛盾と葛藤が高まり、その再編成が生じた。その背景には、都市化に伴う住民の社会階層の変化、普選による民衆の政治参加の拡大、社会の不安定化への対策として行政による「都市共同体」の創出、といった複数の要因があったことが明らかになった。(3)この再編成によって生まれた地域住民組織が民衆運動の基盤となったことが明らかになった。特に、門司市が中心となった昭和初期の電灯・電車料金の値下げ運動において、市会議員や既成・無産政党と並んで、町総代を核とした地域住民が運動の担い手どなり、地域独占事業への批判を展開したことが明らかとなった。(4)1940年、地域住民組織は国家によって再構築されるが、本研究からも明らかなように、この組織を行政の末端組織としてのみ理解することは不十分である。本研究は、近代化と都市化という現象を、民衆の視点と経験、行動様式から明らかにした。これは歴史地理的事実の解明にとどまらず、都市住民を主体とした「公共性」および「共同性」のあり方を再考する上でも、多くの知見を提供するものである。
著者
八木 栄一
出版者
理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

金属中に重い稀ガス原子(Ar、Kr、Xe)を多量にイオン注入すると、室温でも高圧状態の稀ガズ原子固体が形成される。これは、しばしば固体バブルとも呼ばれる。面心立方および六方晶金属中では母体と同じ結晶構造を持ち、結晶方位は母体結晶と揃っている。このバブルが形成されると、電子顕微鏡、電子線回折法等で観察可能となり、その成長、移動、構造等が調べられているが、形成の初期段階(核形成)は観察できないため調べられていなかった。そこで、我々は、これまで、イオンチャネリング法により、面心立方金属につき、イオン注入後のここの稀ガズ原子の結晶格子内位置、および、それらの注入量に対する変化を調べることにより、バブル形成の初期段階(核形成の過程)を調べてきた。本研究では、体心立方結晶を取り上げ、イオンチャネリング法により、バブル形成の核形成の過程を調べ、面心立方金属についての結果と比較する。試料はFe単結晶で、これに150keVのXe^+を1×10^<14>、4×10^<14>、1×10^<15>、1×10^<16>Xe/cm^2の種々の量、イオン注入し、Xe原子の格子内位置を決定するため、1.5MeV He^+ビームを用い、後方散乱チャネリング実験を行った。Xe原子の大部分は格子置換(S)位置およびランダム(R)位置を占める。注入量が少ない時には、その割合は少ないが、格子間四面体(T)位置、格子点から<111>方向に0.085nmずれた(D)位置にも存在する。TおよびD位置占有はXe原子と注入の際形成された原子空孔(V)との相互作用の結果で、それぞれ、XeV_4複合体、および最近接格子点に空孔が存在する結果Xe原子が<111>方向にずれているXeV複合体と考えられる。R位置はさらに多くの空孔と複合体を形成しているXe原子に対応している。これまでに、メスバウアー効果の実験でもXe原子が内部磁場の異なる4種の位置に分布していることが報告されていたが、本実験結果を考慮すると、それらは内部磁場の小さくなる順にS,D,T,R位置に対応付られる。注入量の増加と共にS,TおよびD位置を占める割合は減少し、R位置を占める割合ば増加する。この結果は、注入の初期段階でXeV、XeV_4のようなXe原子と空孔との複合体が形成され、これが核となってXeバブルへと成長することを示唆している。Xeバブル形成のためにXe原子の移動が必要とされるが、その機構としてXeV_3の形での移動を提案した。一方、面心立方金属A1中のKrの場合は、体心立方金属の場合とは異なりKrV_4、KrV_6型の複合体が核となる。面心立方結晶中では稀ガス原子が母相と方位を揃えて結晶化するが、その機構を考慮すべく、現在、A1中のKrにつき注入量をさらに細かく変化させKr原子の格子内位置を調べている。
著者
角皆 宏 都築 正男 梅垣 敦紀 森山 知則 陸名 雄一 星 明考 小松 亨
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ガロア理論とは一言で言えば数の対称性の理論であり、中でも構成的ガロア理論は、狙った対称性を具体的明示的に作ることを主眼とする研究である。特に本研究課題では、非可換な対称性(ガロア群)を持つ場合を取り扱い、幾何的な対称性を利用する手法を中心として、主に5次・6次の多項式に関わる場合に対し、様々な特色ある対称性を持つ多項式を具体的に構成した。得られた多項式が簡潔な表示を持つことも意味があり、それにより幾らかの数論的性質も明らかにすることが出来た。
著者
増田 隆一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

北海道および環オホーツク海地域に分布するヒグマについてミトコンドリアDNA(mtDNA)の分子系統地理的解析を行った。その結果、北海道集団の三重構造(異なる3集団が道南、道央-道北、道東に分かれて分布)が他地域には見られない特異的な分布パターンであることが明らかとなった。さらに、極東の広い地域において道央-道北型のmtDNAが分布することが判明した。一方、ヒグマ考古標本の古代DNA分析法を開発し、オホーツク文化(紀元5〜12世紀)遺跡の北海道礼文島香深井A遺跡から発掘されたヒグマ頭骨の起源地を推定した。礼文島ヒグマ骨から解読された古代mtDNAは道央-道北型と道南型に分類された。さらに、道南型DNAをもつ礼文島ヒグマはすべて秋に死亡した1歳未満の幼獣であったのに対し、道央-道北型DNAをもつ古代ヒグマは春に死亡した成獣であった。道南型DNAをもつ幼獣はおそらく道南における続縄文または擦文文化人の春グマ猟で捕獲され半年余り飼育された後に礼文島にてクマ送り儀礼に用いられたと考えられる。また、道東サロマ湖周辺の遺跡出土のヒグマ骨からは、現生の道北-道央型DNA、および、このグループに含まれるが新しいDNAタイプも見出された。これらの古代道東ヒグマは、遺跡地点より北部の比較的近隣の地域で捕獲されたものであろうと推定された。また、現在見られないDNAタイプの発見は、当時のヒグマ集団がより豊富な遺伝的多様性を有していたことを示している。一方、道南の奥尻島遺跡から出土したヒグマ骨2例は現在の道南に分布する2つのDNAタイプと一致した。これは、奥尻島の遺跡から発掘された骨群が、少なくとも2個体のヒグマから成り、奥尻島の対岸地域(北海道本島)から持ち込まれたことを示唆している。
著者
青木 哲 角舎 輝典 青木 哲
出版者
岐阜工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)通気層の断熱性能に関わるパラメータとして、壁本体構造、方位(日射量)、通気層厚および開口率、室内温度、地域差(外気温度、日射量)を変数とした非定常計算を行い、通気壁の断熱性能を定量的に算出した。その結果、各パラメータが通気壁の断熱性能に与える影響を定量的に把握することが出来た。またパラメータによっては、それぞれ熱負荷計算に拠らない熱負荷の算出に可能性が見出された。(2)通気層の冷却効果を促進させる手法として、外装材の材料(熱物性)および表面処理方法(日射吸収率)の影響、通気層内側壁に低放射率材料を使用して放射抑制を行った場合の影響を検討した。その結果、外装材の材料、表面処理方法および通気層内の放射抑制は、通気壁の冷却効果を促進させる有効な手法であることを確認した。(3)日本各地の都市における通気壁の断熱性能の簡便な把握を試みた。その結果、壁本体の熱抵抗値と負荷軽減量の関係を用いて、熱負荷計算に拠らずに、壁本体構造から熱負荷軽減量の把握が出来ると思われた。また、壁本体構造以外のパラメータについても、東京一日データとアメダスデータの検討結果の関係を明らかにすることで、さらに高精度な断熱性能の把握が出来るものと期待された。(4)計算の効率化、計算時間の短縮を目指し、プログラムの簡略化するための新たな計算法の提案を行った。その結果、定常・非定常伝熱状態において、いずれの場合も十分な精度で計算できることを確認し、本計算方法は有効であると確認できた。
著者
郡司 敦子 木本 統
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

歯科医療従事者は、総義歯装着者の食生活は単純に義歯機能のみに大きく依存すると考えがちである。しかしながら、義歯機能の改善のみでは、食生活や栄養摂取状況の改善をする人は多くはない。本研究では、新義歯作製希望で来院した総義歯患者に、総義歯装着時に食事指導、調理指導をおこなうことで、無歯顎患者の食生活や栄養摂取状況の改善に果たす効果について検討を加えた。その結果、食事指導を行うことで被験者の食事の種類が増える傾向にあった。
著者
吉尾 卓 倉沢 和宏 出井 良明 岡本 完 廣畑 俊成 簑田 清次
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1.CNSループス出現頻度の検討(栃木県モデル)栃木県3医療機関で前向きに3年間、年度毎のSLE患者数、CNSループス発症頻度と症状内訳を調査研究した。SLE登録患者は開始時719例、終了時823例、栃木県人口に対するSLE患者有病率は0.041%であった。10年度12例、11年度16例、12年度15例がCNSループスの診断を受け、半数以上がSLE発症直後に出現し、症状内訳は約7割がループス精神病であった。2.CNS ループス診断に有用なCSFcytokine/chemokine (cy/ch)の検討SLE患者でCSFと血液採取が同時に行われた52例(CNSループス陽性群30例、陰性群22例)のCSFと血清の28種類cy/ch測定を行った。陽性群のCSFIL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、G-CSF濃度が血清の各々に比較して高値を示し、陽性群と陰性群でのこれらCSF濃度比較検討では陽性群が有意に高値を示した。特にIL-6の有意差が最も大きく、CSF IL-6濃度測定がCNSループスの診断に最も有用で
著者
伊藤 敬一 毛呂 真 月舘 敏栄
出版者
八戸工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1.北国の地方として釧路市、八戸市を取り上げ、両都市で過去100年間に発生した震度4以上の地震について、発生時期・時刻、および被害内容を調査した。その結果、震度4以上の地震が2年に1回の割合で生じていること、両都市にとってもっとも気象条件の厳しい12月から3月の冬期間において4割を超える地震が発生しており、被害の様相も異なることがわかった。このことより、防災システムは冬期間とその他の時期の2通りの発生条件をもとに検討していく必要があることが明らかになった。2.釧路市において1993年釧路沖地震、八戸市においては1994年三陸はるか沖地震を取り上げ、それらの地震における建物被害、水道被害の地域分布を調査した。同時に両都市において、市街地をメッシュにて区分し、それぞれの地区での地盤の微動測定を実施し卓越周期を推定した。その結果、地震被害分布と卓越周期の地域分布がよく対応することが確かめられ、地震被害想定をする場合の震度についての有効な知見を得た。3.冬期、夜間に発生した1993年釧路沖地震、1994年三陸はるか沖地震について、実際に発生した住民の避難行動に関連して避難施設の開設、管理・運営、および住民の意識について詳細な調査を行った。その結果、避難に関わる住民、行政、施設の管理者の行動は地震の発生条件が深く関与していることが解り、北国の都市の緊急行動についての防災上の要件が明らかになった。
著者
倉西 良一 岸本 亨 東城 幸治
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

河川の上流、特に源流部には独特な生物が棲息する。源流のみに生息する種は、生息地が局限されること、生物の環境要求がきびしいため地域個体群の絶滅が起こりやすい状況にある。このことから源流生息種は、国や地方自治体のレッドデータブックによく掲載されている。本研究では、河川の上流(源流)に生息する種の分布や生態の調査を行い基本的な知見を得ることを第一の目標とした。さらにカゲロウ、カワゲラ、トビケラといった水生昆虫の源流生息種について遺伝子解析を行い、個体群間の類縁度などから保全すべき個体群の推定を行った。河川上流に生息するさまざまな水生昆虫の中でもガガンボカゲロウ類、トワダカワゲラ類、ナガレトビケラ類のいくつかの種群の昆虫は河川源流域の冷たい湧水や細流のみに生息する。これまでに日本各地より採集された、ナガレトビケラ科12種、ガガンボカゲロウ2種、トワダカワゲラ科4種について遺伝子解析を行った。ガガンボカゲロウ属の2種は、全国で採集された個体群を比較したところ、地域固有の八プロタイプが多数認められた。これは生息環境が河川源流部に局限されること、成虫が活動的ではなく分散能力が低いことに起因すると考えられた。ガガンボカゲロウ属に関しては、地域間の遺伝子交流がほとんどないことから、それぞれの地域個体群が独立した存在であり、種レベルではなく地域ことに念入りな保全が望まれるごとが明らかとなった。これに対しトワダカワゲラは、成虫が無翅で飛翔力なく、分布が局所的であることなどから地域固有の遺伝子をもつ個体群が認識されるという仮説を持ってはいたが、本州から北海道にかけての個体群を解析したところ、個体群間の遺伝的変異は小さいことが明らかとなった。従来、原始的な形態をもつと考えられていたトワダカワゲラ科は、系統的にもそれほど古い昆虫ではなく、大陸起源であり朝鮮半島から日本に入り分布を広げ、種分化は比較的新しい時代に生じたと考えられた。ナガレトビケラ類は、解析できた地域個体群の数が少ないため種内の遺伝的変異の度合いはまだ解明の途上にあり、結果がまとまりしだい公開したいと考えている。
著者
長瀬 修 山崎 公士
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

研究期間に国連障害者の権利条約交渉は大きく進展した。平成16年度には、3回の特別委員会(第3回-第5回)、平成17年度には2回の特別委員会(第6回と第7回)が開催された。平成16年1月の作業部会でまとめられた作業部会草案に基づく交渉の成果は、平成17年10月に議長草案として実り、平成18年1月・2月に開催された第7回特別委員会では、その議長草案に修正が加えられたワーキングテキストがまとめられた。条約交渉は最終段階を迎えつつある。本研究の特色である障害学と国際人権法学両方からの分析が、障害者の権利条約の研究に欠かせないことが明らかになっている。障害学の(1)社会モデル(社会の障壁除去)、(2)文化モデル(障害者の生の承認)、(3)障害者自身の参画(「当事者」参画)、という主要な要素はこの条約に確実に反映されている。国際人権法学の観点からは、他の人権条約との比較対照の重要性も明らかである。とりわけ、女性差別撤廃条約と子どもの権利条約は本条約案の中でも、ジェンダー・女性と子どもが大きな論点となっていることからも、関連した考察が不可欠である。さらに、人権に関する国内・国際的システムの分析も並行して実施した。国際的人権条約の実施の要となる国内での実施体制に関する研究は欠かせない。本研究では、実際の交渉現場に立ち会うことで、ダイナミックな条約交渉、策定過程の報告・分析をほぼ同時進行の形で社会的な還元を行ってきたことも大きな成果である。国際人権法学会等の関連する学会等や、インターネットのウェブサイトでタイムリーに情報を提供してきた。今後も引き続き、大詰めを迎えた策定過程の分析を遅滞なく進めると共に、条約の採択に向かって、いっそう緻密な条約内容の分析そして、国内実施に向けての考察を進める必要がある。
著者
永広 昌之 鈴木 紀毅 山北 聡
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

北部北上帯は,タウハ帯や渡島帯と南部秩父帯をリンクする重要な位置にある.本研究では,葛巻地域から安家地域にいたる北部北上帯の北部地域の東西地殻断面を作成し,この地域の付加体の構造層序と付加年代を明らかにするために,詳細な野外調査と化石層序学的検討を行った.その結果,葛巻地域に後期石炭紀の海山玄武岩-石灰岩複合体由来の異地性岩体があること,安家地域の大鳥層が後期石炭紀チャートを含むことを明らかにし,北部北上帯付加体を構成する海洋地殻の年代が後期石炭紀に遡ることを確認した.また,大鳥層中に,東北日本では初めて,深海域ペルム紀-三畳紀境界に見られる黒色有機質泥岩層を発見し,初期三畳紀を示すコノドントHindeodus parvusの初産出層準直下の黒色炭質泥岩最下部で炭素同位体組成の急激なマイナスシフトを認めた.付加年代に関しては,大鳥層のそれが中期ジュラ紀Bajocian後期〜Bathonianであること,高屋敷層のそれが後期ジュラ紀Oxfordianであることを明らかにし,安家地域の付加体の地質構造が整然相を主体とするユニットの大規模褶曲構造で特徴づけられ,構造的下位が大局的には若い付加年代を示すことを確認した.これらのデータにもとづき,異地性岩体の年代構成にもとづく,北部北上帯の葛巻-釜石亜帯(西側)と安家-田野畑亜帯(東側)への細区分が北海道渡島帯にも延長できること,岩相や海洋プレート層序の類似から,大鳥層を中心とする安家地域西部の付加体が西南日本の柏木ユニットや大平山ユニットに対比されることを推論した.
著者
小松 優 藤永 薫
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本提案は環境に負荷を与えない事を考慮した有害金属イオン除去のシステムを開発する事を目的としている。平成18年度には、二酸化チタンおよび炭酸カリウムを原料として、フラックス(モリブデン酸カリウム)法により層状構造結晶質四チタン酸カリウム繊維の合成を試みた。この繊維の物理的性質を確認した後にカリウムイオンを水素イオンに組成変換し、イオン交換体として使用した。対象金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価遷移金属イオンを選択し、バッチ法でのイオン交換能を検討した。その結果、いずれの金属イオンでも高いイオン交換能を示した。平成19年度には、アルカリ金属イオン群(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン)、アルカリ土類金属イオン群(マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン)、および遷移金属イオン群(銅イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン)を選択し、無機イオン交換体として合成した結晶質四チタン酸繊維へのバッチ法でのデータに基づいて、カラム法でのイオン交換分離を試みた。その結果、カラム中に充填した結晶質四チタン酸のイオン交換能を活用するための流入液の水素イオン濃度を調整することにより、2種類の同族金属イオン間の分離を実現させた。以上の研究結果から、高レベル放射性溶液中に含まれる長寿命核種のセシウムイオンやストロンチウムイオンの分離、遷移金属イオン中のニッケルイオンの単離等が可能となり、廃棄物の減容化の目的が達成された。即ち、環境に負荷を与える有害金属イオンの分離が可能となった。
著者
谷村 雅子 大熊 加奈子 小板谷 典子
出版者
国立成育医療センター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

家族の生活時間記録から、家族間の生活行動の関係や家庭環境の関与等の多次元解析が可能なデータベースシステムの作成方法を考案し、1987年の1歳6カ月児416名と親の調査資料をデータベース化して、子どもの対人経験について解析した。核家族で父親の帰宅が遅いと、対人経験の時間も相手も物理的に減少することが示された。更に、20年後の調査で、対人経験を減少させる要因が増えていることが示唆された。
著者
大野 出
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度〜平成15年度における研究課題「日本近世における老荘思想の解釈に関する研究」の一つの到達点として、平成15年度、東方学会・国際東方学者会議のシンポジウム「林希逸『三子〓斎口義』と東アジア三国の近世文化」(代表・池田知久)の企画にChairpersonとして参画し、池田知久、小島毅、中野三敏、山城喜憲、周啓成、王廸、崔在穆、宮崎修多(以上敬称略.なお、周啓成氏については、中国におけるSARSの流行とこれによる出国手続の複雑化、長期化にともない来日できず、同氏の研究発表については代読がなされた)らとシンポジウムにおいて議論を行なったが、このシンポジウムにおける研究発表内容については、『国際東方学者会議・シンポジウムIII資料集』としてまとめられ、会議当日、会場(日本教育会館)において配布された。なお、同シンポジウムにおいて研究代表者(大野出)は午前の部(第I部)の司会を担当し、午後の部では「実学としての『老子〓斎口義』」と題する研究発表を行ない、午前の部に引き続き討論に参加した。この研究発表については、その要旨を中国語訳(王廸訳)とともに報告書に掲載した(英文による要約も加えた)。また、平成13年度以降にあっては、日本近世における老荘思想の受容という問題から、老荘思想および道教の受容へと視野を広げた研究に取り組んできた。その過程において、日本における霊籤の受容という問題の重要性を発見するに至った。このことが平成15年度までの当該研究から平成16年度の基盤研究(C)(2)「日本における霊籤の受容と展開に関する思想的研究」への発想が生まれる契機となった。
著者
宇沢 美子
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、19世紀から20世紀転換期のアメリカ文学における日本観の変遷を扱うことを目的とする。元祖黄禍はジンギスカン率いるモンゴル民族軍によるヨーロッパ侵略の形をとったが、その悪夢は、アジアからの移民の増加と日本の軍事力の増大により、19世紀から20世紀転換期にアメリカで再燃した。本研究は、東洋による西洋(領土/仕事/女性)の支配に対する懸念である黄禍論に対する異議申し立てを、西洋と東洋を相対化する視点を模索した(人種的/文化的)ユーラシアンたちの作品に見出そうとする。中国系カナダ人ウィニフレッド・リーヴ(オノト・ワタンナ)の日本小説は、蝶々夫人やお菊さんなどで定着しつつあった、西洋(男性)による東洋(女性)の支配というジェンダー/性で織りなされたオリエンタリズムの関係を脱し、世紀転換期にアメリカで取りざたされた「新しい女」の日本版を作り出し、国籍を超えた女性同士の「心」と「神経」による「シンパシー」を模索した。自身のユーラシア性を文化翻訳者に見出していたと思われるこの作家は、日本の浦島伝説を、西欧の人魚伝説とあわせ、浦島太郎ではなく、あとに残される乙姫の物語へと翻案し、出世作『日本鶯』を書いた。ヨネ・ノグチの朝顔嬢小説は、蝶々夫人やコミックオペラ「芸者」に対する批判を含み、ワタンナの日本小説に対するパロディとして意図されたものだが、あまりに過激なジャポニスムとの戯れゆえに、またゲンジロウ・エトウのジャポニスム装丁ゆえに、かえって出来の悪い日本小説として受容された。白人作家ウォラス・アーウィンが生み出したハシムラ東郷は、日露戦争後の黄禍論や東洋人排斥運動を直接的な背景とし登場した擬似日本人だが.幾度となく「黄禍」と呼ばれた賢い道化のスラップスティックは、黄禍論の(イ)ロジックのみならず、ジャポニスムや日本小説のウェットな感性をも完壁に笑いのめした。
著者
佐久間 みかよ
出版者
和洋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

19世紀のアメリカ人作家メルヴィル、エマソンを中心にして、その自然観を考察するため、作品の動物表象に着目し研究を行った。その結果、当時発達した自然科学の影響を受けた多様な生物への関心がまし、また植民化活動の活発化から派生した東洋の文化・思想の流入した結果、動物と人間の融合する自然観、世界観が作品に反映されていることが確認できた。これらは今日の動物の権利、エコロジー的思考へと向かう流れを形成していると思われる。
著者
大桑 哲男 直井 信
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成10年度はラットにおいて、一日の自由運動での走行距離は大きな個体差を認め、肝臓の水酸化ラジカルレベルは走行距離と負の相関関係を認めてきた(r=-0.533,p<0.05)。さらに水酸化ラジカルを除去する還元型グルタチオンは、肝臓、心臓および脳において、走行距離と有意な正の相関関係を認めてきた(肝臓ではr=0.532,p<0.05;心臓ではr=0.462,p<0.05;脳ではr=0.760,p<0.001)。平成11年度は、還元型グルタチオンは肝臓において、グルタチオン酸化還元酵素と高い相関関係があることを認めてきた。しかし、正規分布を逸脱する群では、有意な相関関係は認められなかった。さらに一日の運動量は、抗酸化能力と密接に関係していることが明らかとなった。今年度(平成12年度)は、成長期である5週齢ラットのWistar系ラットに3,6,12週間の自発的運動を課し、週齢と運動期間が抗酸化能に及ぼす影響について検討した。成長に伴い自発的運動量は11週まで増加した。しかし肝臓における水酸化ラジカル濃度は安静群と運動群ともに有意な変化は見られなかった。この水酸化ラジカルレベルに有意な変化が認められなかった理由として、成長と運動に伴い肝臓の還元型グルタチオン濃度が増加したことが考えられる。特に肝臓の還元型グルタチオン濃度の増大は、還元型グルタチオン生合成系酵素(γ-グルタミルトランスフェラーゼ、γ-グルタミルシステインシンターゼ)活性ではなく、還元型グルタチオン酸化還元系酵素活性(グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンリダクターゼ)が増加したことによることが示唆された。また、自発的運動を課することにより、成長期においてさらに抗酸化能の誘導が促進することが明らかとなった。さらに本年度では、人を対象にビタミンE投与が筋組織への損傷に及ぼす影響を明らかにした。4週間にわたるビタミンEの投与(1200IU/日)と、その後の6日間の激しい走行トレーニング(48.3±5.7km/日)中のビタミンEの投与は血清の過酸化脂質の生成を抑制した。激しい走行トレーニング群におけるビタミンE投与は、対照群(擬似薬群)に比べ、血清中のクレアチンキナーゼおよび乳酸脱水素酵素活性が低下した。これらの結果から、ビタミンE投与は、長期間の激しい走行トレーニングによって増大する活性酸素の生成を抑え、筋損傷を抑制したものと考えられる。
著者
樫原 修
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の基礎には、広島県神辺町の高橋家に伝わる北條・高橋家文書を中心とした調査がある。そうした調査をもとに、原資料と鴎外史伝の比較検討を次に行った。鴎外が見得なかった資料をも含めた原資料と、鴎外の参照した資料、引用した資料を多面的に比較検討する事によって、鴎外の拠った資料自体の傾向を明らかにするとともに、作品形成の筋道や特色を探り、『北條霞亭』を資料的基礎から検討していったのである。その結果であるが、鴎外の『北條霞亭』、鴎外が執筆に利用した資料(鴎外文庫蔵)、北條・高橋家文書の三者を比較すると、鴎外が作中で述べている以上に、北條・高橋家文書が執筆に寄与した度合いが高いことが分かった。鴎外は、おもに筆写された資料を見ているが、そこには二重の読みが介在するため、誤差も生じていることが確認できた。以上をふまえて、鴎外の考証のあり方を検討したが、鴎外の考証にはいくつかの問題点が含まれていることが確認できた。鴎外の考証は、一つ一つは合理的に行われているが、自己の考証相互に含まれる矛盾を十分顧慮していない場合があること、霞亭の書簡中の文言をあまりに字義通りに受け取ってしまった結果、誤った結論に導かれた例があること、正しい方向に導くべき資料を無視する結果に陥った例があること、などである。そこからして、的矢書牘のうち、霞亭の林崎時代に書かれた書簡の年代に関する鴎外の考証は、全面的に見直すべきであるとの結論も得た。しかし、だから鴎外の『北條霞亭』には意味がないというのではない。そのように分析して見えてくるのは、数々の矛盾に苦しみながら考証を重ねていく、鴎外の思考の過程であり、そこにこそこの作品のボディーがあると見られるのである。
著者
淺間 正通 堀内 裕晃 山下 巖
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、電子辞書に依存する英語学習者の読解ストラテジーに焦点を当て、未知語推測における手掛かり処理(ワードアタック)が旧来の印刷体辞書利用時における辞書引きプロセスに比すと、著しく短絡的方途によるものであろうことを仮説設定し、その証明を行うとともに、電子辞書に付随する種々の問題点の所在をあらためて明確にし、その結果に基づいての辞書引き矯正のためのプログラム開発を行った。