著者
田中 淳一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

沖縄沿岸のサンゴ礁トワイライトゾーンと呼ばれる水深40m以深の海底から底生生物を採集し、新規生理活性成分の探索を行った。海綿Suberites japonicusからは、強い細胞毒性成分としてseragamide A-Fと命名した一連のデプシペプチド類を見い出し、スペクトルデータの解析と誘導体作成などを通して化学構造を明らかにした。生理活性については、培養細胞の細胞質の分裂を阻害することからアクチンを標的にしていることが推定された。そこで、蛍光ラベル化したアクチンを使用した実験により、seragamide AのF-アクチン脱重合阻害作用とG-アクチン重合促進作用を確認した。次に海綿Dysidea dv.arenariaの毒性成分を検討したところ、spongian骨格を有する一連の新規ジテルペンを得た。構造はスペクトルデータの解析ならびに関連化合物との比較により決定した。また、この海綿については4つの場所で採集した標本について分析したが、含有しているspongian類に多様性が見られた。国頭村で採集したムチヤギEllisella sp.からもbriarane型ジテルペンを見い出し、それらの構造ならびに細胞質分裂阻害作用を報告した。この他にも沖縄本島恩納村沿岸でリブリーザーを使用して海洋生物資源(44種)の採集を行い、それらのスクリーニングを行った。現在までに強い細胞毒性を示し同定された化合物は、latrunculinなど既知の物質であるが、本研究期間終了後もこれらの生物から得たエキスの生理活性物質を分離しており、新しい物質を見い出せるものと期待している。また、これまでにサンゴ礁トワイライトゾーンを含めサンゴ礁生物から見い出したアクチン標的成分ならびにタンパク合成阻害成分の分子プローブ(研究試薬)としての活用を図った。
著者
仲村 春和
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

視神経繊維の大部分は視蓋の表層を走り、標的付近で内側に向きを変えシナプスを作るが、本研究により、最初から視蓋の深層を走る一過性の一群があることが明らかにされた。En2は視蓋の発生初期に後ろとしての位置価を与えるが、視神経が視蓋に到達した頃に、SGFS,g-j層で発現している。En2の強制発現により、En2発現細胞は視蓋の浅層に到達することはなかった。E1.5にEn2をトランスフェクトし、Doxによりその発現をE8.5に誘導すると、浅層でEn2を発現した細胞はi層に戻っていった。このことから、En2が視蓋総計性に深く関わっていることが示唆された。Neuropilin1(NRP1)がE8.5視蓋のIV,V層に、そのリガンドSema3AがVI層に発現している。IV,V層の細胞は接戦方向の移動をする細胞により構成されることが本研究により明らかとなった。その接戦方向の移動にSema-Neuropilinの反発系が関与していることが示唆された。Sema3Aを強制発現すると視蓋の層構造が乱れることから、semaphorin-neuropilinの反発系が視蓋の総計性に大きな役割を果たしていることが示唆された。
著者
平野 廣和 奥村 哲夫 丸岡 晃 奥村 哲夫 丸岡 晃
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

2003年9月に北海道で発生した平成15年十勝沖地震で浮屋根等を有する特定屋外貯蔵タンクにおいてスロッシング現象が生じ,浮屋根の破壊,沈没,火災発生といった事故が発生した.これを受けて,液面のスロッシングに伴う浮屋根の挙動の力学的特性についての検証が始まり,実規模レベルでのタンクによる検証を行うことが求められている.そこで,本研究では実際に使用されている実機浮屋根式タンクを用いて,ここにスロッシング現象を発生させる一つの実験方法を提案するものである.タンク内部に造波装置を設置し,エアシリンダーで造波装置をスロッシングの固有周波数に合わせて作動させることによりタンク内部の流体全体を動かし,これにより浮屋根にスロッシング現象を発生させることを試みるものである.この結果,実機タンクの浮屋根にスロッシング現象を発生させ,かつ妥当な減衰を得ることができた.
著者
尾上 篤生 岩波 基
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地震時の地盤の液状化による建物の傾斜と基礎の不同沈下、および使用限界の関係を調べた。液状化した地盤の地下水位について、季節変動量や降雨との関係を明らかにした。液状化によって大きな被害を受けた家屋と、液状化対策のお陰で被害を免れた家屋の数値解析的ケーススタディの援用を得て、地震時に地盤が液状化しないための地盤改良工法や、地盤が液状化しても建物が傾斜せず不同沈下しないための基礎の選定方法を提案した。
著者
高永 茂 小川 哲次 田口 則宏 田中 良治
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

医療面接について社会言語学的・語用論的な分析を行なった結果、相互行為空間の形成の仕方や発話内容の修復などが明らかになった。言語学の分野から社会言語学とポライトネス理論、発話行為論の知見を導入し、歯科医とSP(模擬患者)の意見を総合しながらコミュニケーションモデルを構築した。2006年度から3回にわたって「医療コミュニケーション教育研究セミナー」を開催し、医療とコミュニケーションに関わる各々の研究者が研究成果を持ち寄って知識と経験を共有することができた。
著者
登坂 宣好 遠藤 龍司
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究課題では、非破壊的立場から計算力学的に構造物の力学的挙動解析と補助情報量とによる確率ダイナミックシステムを構成し、そこに含まれる未知状態ベクトルを同定する為の構造損傷同定解析システムの構築を目指した基礎的な研究を展開してきた。特に、確率ダイナミックシステムにおける同定手法として必要なフィルタについての考察を重ねてきた。3種類のフィルタによるフィルタリングアルゴリズムを展開し、各フィルタの荷重伝達機構にもとづいた構造形式に対応する同定特性を明らかにすることによって同定解析システムの適用性を図ることが出来た。この同定解析システムの適用性を、各種の構造物(平面および立体トラス、塔状トラス、ブレース付きフレーム構造、大型浮遊式海洋構造)を対象とし、構造物のヘルスモニタリングデータとして固有振動数、固有モードを補助情報量として採用したときの損傷同定解析結果を蓄積し検討した。特に、固有振動数に関しては、計算力学的立場からの計算値と構造物の模型に対する実測値を採用した場合の同定結果の比較も行い、ヘルスモニタリングデータの統計的性状が同定結果に及ぼす影響も検討した。このことによって、構造物のヘルスモニタリングデータから構造物の損傷を同定するには、ノイズを含んだ計測データを補助清報量とした逆解析システムの構築が必要であることも明らかとなった。なお、3種類のフィルタのうち、パラメトリック射影フィルタに含まれている正則化パラメータについての考察から、一般的な可変的フィルタリングアルゴリズムを構築できる可能性を見出した。その新しいフィルタリングアルゴリズムの構築と展開は次年度からの研究課題としたい。
著者
藤永 卓司 板東 徹 陳 豊史 秋吉 一成 秋吉 一成
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ドナー肺の有効利用を可能にするため、吸入投与が不可能と思われる薬剤の新しいDrugdelivery systemの開発研究を行った。コレステロールプルランCHPを蛍光標識し、ラットに経静脈投与と吸入による投与を行ったところ、加アミノ基CHP(CHP-NH2)の吸入が肺組織へもっとも取り込まれた。さらに、ヒト心房利尿ペプチドをCHP-NH2に包埋させて吸入を行ったところ、薬剤単独吸入に比べ、肺血管拡張、肺組織中cGMPといった局所作用のみならず、全身血流にも薬剤が分布する可能性が示唆された。
著者
登坂 宣好 今川 憲英 遠藤 龍司
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

構造物の特性を非破壊的に把握することは, 昨今の耐震偽装問題を防ぐことのみならず, 大地震後の建築物の安全性を確認する意味において重要なテーマである. 本研究では限られた計測データを有効に活用することで高精度の同定解析を可能とするフィルタ理論(可変パラメトリック射影フィルタ)を構成した. その理論に基づき計算力学の立場からフィルタリングシステムを構成し, フレーム構造等に適用し, 有効性を検証した. 今後は, 構築したフィルタリングシステムを用いた利便性の向上と実用化を図りたい.
著者
井上 正一 黒田 保 吉野 公
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

海洋コンクリート構造物の耐疲労設計法を確立するために,コンクリート強度,主鉄筋量,せん断スパン/有効高比,せん断補強鉄筋量,等を要因に選んだ疲労試験を実施し,先ず,気中と水中における疲労破壊性状の相違と類似点を検討した。その結果,気中と水中での疲労破壊様式は異なり,気中では主鉄筋の疲労破断によって曲げ破壊するはりてあっても水中ではせん断破壊やコンクリート圧潰型の曲げ破壊になりやすいこと,せん断疲労破壊においてはスターラップの疲労破断を伴わないせん断破壊になりやすいこと,などを明らかにした。疲労寿命の予測手法に関しては,鉄筋やコンクリート材料の疲労性状(S-N線式)から部材の疲労寿命を予測する手法を検討した。その結果,水中でのせん断疲労寿命に関しては,せん断補強鉄筋量を多くしても疲労寿命は増加しないこと,コンクリート圧潰型の曲げ疲労寿命に関しては,土木学会「コンクリート標準示方書」の考え方は,疲労寿命予測の精度が悪く,より高精度の新たな予測式を開発する必要のあること,などを明らかにした。また,圧縮域のコンクリートやスターラップにひずみゲージを貼付し,水中における疲労破壊機構を検討した。その結果,スタラップの応力は極めて小さい値でせん断破壊し,スターラップか受け持つ分担せん断力は極めて小さい値で破壊していることを明らかにした。また,水中においてコンクリート圧潰型の破壊をしたはりにおける中立軸高さの変化は,繰返し載荷回数の増加に伴って減少する傾向にあることを明らかにした。損傷を受けたコンクリート構造物の疲労性状や損傷した構造物への新素材の適用による補強・延命効果を検討した研究によれば,コンクリート表面へのエポキシ樹脂塗膜,炭素繊維シートや炭素繊維補強板を適用することによって疲労寿命の延命効果があることを明らかにした。
著者
天野 仁一朗 里田 隆博
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々はラットの前交連尾側端レベルの線条体中央部に、微小電気刺激および徹小化学(受容体)刺激によって開口筋と舌突出筋には同側優位の顕著なEMG活動を誘発するが、閉口筋,舌後退筋または顔面筋には何の活動も誘発しない線条体顎領域striatal jaw regionを発見した(Neurosci. Lett.,253:79-82,1998;Brain Res.893:282-286,2001)。平成14年度は本研究課題の最終段階として、解剖学者と共同して線条体顎領域SJRニューロンの線維連絡について形態学的解析を行った。1本の電極で微小電気刺激と微量トレーサ注入が同時に行なえる微小シータガラス管電極(θ管電極;先端直径25〜65μm)で誘発EMG活動を指標にSJRを同定し、SJRにコレラトキシンサブユニット(CTb)を電気泳動的に注入した。CTbの注入部は、前交連の最尾側のレベルにおいて、線条体のほぼ中央部に限局していた。逆行性標識神経細胞体は、主として、(1)大脳皮質の運動野、体性感覚野、島皮質、(2)視床の内側中心核(NCM)と束傍核、(3)扁桃体外側基底核、(4)黒質緻密部に分布していた。大脳皮質からSJRへの投射線維は主としてV層とVI層から起り、その起始領域には二つの中心が認められた。すなわち、感覚運動野顔領域と島皮質領域である。これらの皮質領域は、連続刺激によってそれぞれ異なるタイプの連続顎運動が誘発される領域である。なお、順行性終末標識を淡蒼球外節、脚内核、黒質網様部に認めた。以上の生理学実験は研究代表者・天野一朗が担当し、解剖学実験は研究分担者・里田隆博(広島大学歯学部)が担当した。なお、研究結果はNeurosci. Lett.,322:9-12,2003に報告した。
著者
川口 由彦
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本年度は研究実施計画に書いたように、昨年度がら収集してきた資料を更に充実させるべく、群馬県立文書館に3回、京都府立総合資料館に2回、調査に赴いた。小作争議表、小作調停受理・結果報告書、自作農創設維持計画書、地主所蔵文書などを中心に、群馬と京都という二つの地械での地域での地主小作関係の現代的内容を考察するためである。今年度の科研費は、この調査にほとんど費やしたといっていい。ここからわかったのは、京都の場合、1927年頃から小作争議解決の方式とでもいうものが登場することで、小作調停条項であらかじめ検見対象地を決めておき、地主小作立会のもと、農会の技術者が厳密に収穫量を測定し、収穫量を前提に機械的に減免額を決定するという手続の設定にまでいたっているということである。地主小作立会のもとの検見というのは、それ自体としては、江戸時代からのムラ仕事としてなされる「ムラ決め」の延長線上といえなくもないが、これを調停条項として、法的強制力を持たせたところにこの時代の特徴がある。どりわけ、争議の際の「当事者間の合意」を制度的に排除してしまった点で、地主小作人間の対立が極限にいたり、ぎりぎりのところで小作関係を継続するためこのようなシステムが生まれたと思われるのである。農林省発行の「小作年報」所載の調停条項例で見ても、京都と新潟くらいでしか見られない特異なシステムである。これにくらべると、群馬では、そもそも京都のように小作料減額免除システムをあらかじめ決めておくという解決方法が少なく、一回きりの減額や土地返還を決めるものが圧倒的に多い。例外は、全国的に「無産村」として名をはせた新田郡強戸村と、隣村の山田郡毛里田村である。この2村では争議が激甚に戦われたが、これを反映して調停条項も、当該争議以降の減額免除規定を定めるものが多い。ただ、その内容を見ると、地主小作両者からなる「委員会」をつくってここで合意するとなっているものがよく見られ、京都のように合意の契機を排除するところまでいっていない。強戸村の場合、村政も小作側が握ってしまうという特異な事態があったにせよ、従来の「ムラ決め」的要素を引ぎずっているといっていい。この相違が、農地改革期にも現れ、京都の場合は、農地改革は自明のことで、次のステップが考えられていくのに、群馬では、農地改革自体に大きな力が注がれる。農地法下の農民のあり方もこれに規定されたものとなるのである。
著者
小荒井 衛 小松原 琢 黒木 貴一 岡谷 隆基 中埜 貴元
出版者
国土地理院・地理地殻活動研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

芋川流域で火山灰分析に基づく段丘編年を行った.芋川流域で最も高位の段丘から浅間草津火山灰(As-K)が検出されなかったことから,この段丘面は16,500年以降に形成された面と推察される.段丘形成年代から小松倉背斜の成長速度の見積もると,0.8~1.9×10^<-6>/年となり,西山丘陵の活褶曲の成長速度や小千谷地区の活褶曲の成長速度と,オーダー的には同程度である.長野県・新潟県県境付近の地震では,逆断層の上盤側で,地質,地質構造,既存活断層の分布等に支配される形で地盤災害が集中しており,今回の地震に伴い松之山背斜が成長した可能性が指摘できた.
著者
佐久間 康之
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

公立小学校での英語活動のみが英語の刺激として純粋に(近く)作用する教育環境の学校を対象に3年間にわたり縦断的かつ横断的調査を行った。主な研究成果は以下の4点である : (1) 学年別の児童英検の比較において学年が上がるにつれてリスニング力は高かった。(2) 中学年及び高学年の1年間の変容において, 児童英検によるリスニング力は全学年ともに向上したが, 心理的要因の結果は多種多様であった。(3) 中学年及び高学年のリスニングカと相関があった心理的要因の項目は自己評価(自分自身をみつめなおす)及び記憶方法(効率的な覚え方)であった。(4) 英語活動の実施時数の多さは中学1年時の音絹認知に正の影響を及ぼす可能性が見出された。
著者
登美 博之
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

工科系の学生がコンピュータ支援による演習を行うことによって、英語の能力の向上を図ることのできる教材「英文構造理解のための3つのアプローチによるライティング教材」を研究開発し、CALLやLANシステムなどによって教材として運用できるようにした。この教材は、3つの分野の英語を用いて、そしてまた「英語の文構造に対応した日本語の語句配列」を表示することによって、日本語と英語の2つの言語からアプローチするものである。
著者
米田 佐紀子 ギャビン リンチ クレイグ ウッズ クレイグ ウッズ
出版者
北陸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小学校英語で培われる英語力について国際的標準テスト(ケンブリッジ英検)によって客観的データを得るという目的に沿って研究を行った。検証では6年生でCEFR Pre A1レベルに到達する一方、長期的検証ではCEFR A1~B1という学力差の拡大と技能では文章力が課題であると示された。世界が求める実用的な英語力は語彙・文型・論理的一貫性のある文章力であることから、日本の英語教育の質の改善が必要な事が分かった。一方、社会的要因・生活用語の影響も大きい事が示された。研究結果は世界的・長期的展望に立った小学校から大学までの英語教育制度の確立と教育内容の見直しの必要性を示唆している。
著者
菊池 かな子 小宮根 真弓 門野 岳史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

皮膚の色素増強を起こす病態として、全身性強皮症がある。申請者は以前この病態で血清中のbasic fibroblast growth factor(bFGF)が増強していることを見いだした。bFGFはメラノサイトの増殖に促進的に作用するので、全身性強皮症における皮膚色素増強にはが関与している可能性もある。これに関連し、申請者は最近悪性腫瘍による強皮症類似病態において、全身性強皮症よりも高い血清中濃度について報告した。病変皮膚、原発の悪性腫瘍の一部でもbFGFの高発現が見いだされた。このbFGFは多くの皮膚疾患について関与が考えられる。申請者は皮膚型、および全身型の多発性動脈炎においてやはり血清bFGF濃度の上昇を報告した。やはり病変部の動脈周囲ではbFGFの発現も認められた。同様の手法を用いてより大型の血管の病変でも、bFGFやその他のサイトカインの発現を検討し、一部は発表済みである。色素脱失を来す尋常性白斑に対し、我々はnarrowband UVB療法を行っており、前後で皮膚生検を行いメラノサイト、表皮角化細胞におけるbFGFやその他のサイトカインの発現の変化を観察している。またメラノサイト特有の蛋白の発現も同時に観察中である。5S-cistenyl-dopa(5-S-CD)はメラノーマの血清マーカーとして知られている。我々は現在尋常性白斑、尋常性乾癬といったnarrowband UVB療法が有効である疾患で経時的に5-S-CDを計測し、発表した。またこの療法中に血清尿酸値の上昇も認められた。
著者
鈴井 正敏 川合 武司
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

【目的】NK細胞数及び活性(NKCA)は一過性の運動により影響を受けることが報告されている。本研究では継続的な強い運動(トレーニング)が安静時のNK細胞機能に影響するかを検討した。【方法】被検者は関東学生1部大学バレーボール部に所属する女性8名とし,トレーニングは秋季リーグ戦前の一ヶ月間にわたる強化練習(5時間/日×6日/週)とした。採血はトレーニング前,トレーニング中,トレーニング終了前,回復期の4回,早朝安静時に行った。測定項目は末梢血リンパ球のNK細胞数およびNKCA,血漿アドレナリン(Ad),ノルアドレナリン(Nad)濃度,コルチゾール濃度,CPK濃度,NK細胞上の接着分子CD11a,CD18,CD44,CD62Lの発現強度とした。データは安静値を基準に脱水補正を行った後,one-factor ANOVA(p<0.05)による分散分析を行った(StatView)。【結果と考察】NK細胞数およびリンパ球に占める比率はトレーニング期間を通して変化しなかった。NKCAと細胞当たりのLytic unitsはトレーニング終了前で有意(p<0.05)に低下した。Ad及びNad,コルチゾール濃度には変化が無く,CPK濃度はトレーニング終了前で有意(p<0.05)に増加した。NK細胞上のCD44はトレーニング終了時に増加し,,逆にCD62Lはトレーニング初期にCD18は回復期に低下した(p<0.05)。以上の結果より,強い運動の継続では一過性の運動で見られる変化とは異なることが明らかとなった。一過性の運動ではNKCAは個々の細胞の活性変化ではなく,細胞数の変化によって影響を受ける。これに対し,強度の高いトレーニングではNK細胞濃度の変化はなく,個々の細胞の活性が低下する可能性が示された。
著者
片岡 佳子 有持 秀喜
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

徳島大学病院皮膚科外来にて軽度のアトピー性皮膚炎と診断された患者の自然排泄便の菌叢をTerminal-Restriction Fragment Length Polymorphism法と培養法により解析した。食物摂取頻度調査票を用いて調べた被験患者の食生活には特に偏りはなかったが、菌叢のパターンは健常人とも潰瘍性大腸炎患者とも異なっていた。また、糞便中の総菌数、好気性菌の生菌数は健常人と同程度であり、潰瘍性大腸炎のような菌叢の多様性の減少は見られなかった。
著者
山尾 政博 島 秀典 濱田 英嗣 山下 東子 赤嶺 淳 鳥居 享司
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

東アジアに巨大な水産物消費市場圏ができつつあり、水産物貿易がダイナミックな動きをみせている。日本と韓国では、水産物消費の多様化・簡便化が進み、輸入水産物への依存がいっそう高まっている。日本では、輸入水産物に対する消費者意識、寿司の消費需要動向、回転寿司産業を事例に輸入マグロの利用実態、活魚の輸入、中国からの水産食品輸入の動向などを具体的に検討した。韓国でも中国からの水産物輸入が急増し、国内漁業の存立を脅かしていた。中国では、輸出志向型の水産食品産業が目覚ましい発展を遂げている。当初は対日輸出の割合が高かったが、現在では北米大陸・EU市場などにも水産食品を輸出している。ただ、中国国内での原料確保が容易ではなく、そのため、世界に原料を求めて輸入し,それを加工して再輸出するビジネスが盛んである。日系企業による委託加工が定着すると、日本の大型水揚げ地の中には、中国に原漁を輸出する動きが活発になった。北海道秋鮭の事例を検討したが、加工を必要とする漁業種類の今後のあり方を示すものとして注目される。一方、中国では、経済成長にともなって、水産物消費が急激に増加している。日本を含む周辺アジア各国は、中国を有望な輸入水産物市場として位置づけつつある。東南アジアでは中華食材の輸出が急増して、資源の減少・枯渇が深刻化し、ワシントン条約による規制の対象になる高級水産食材もある。日本の水産物輸入は、近いうちに、中国と競合すると予想される。東アジア消費市場圏の膨張が続くなかで、アジア諸国は水産業の持続的発展をはかるため、資源の有効利用が求められている。「責任ある漁業」の実現が提起され、それに連動する形で、「責任ある流通・加工」、「責任ある貿易」の具体化が迫られている。地域レベル、世界レベルでその行動綱領(Code of Conducts)を議論すべき時代に入った。
著者
田中 仁
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、次のような仮説を証明しようとして計画した。「香川景樹の創始した桂園派の和歌と歌論がひろく流布したのは、仏光寺を本山とする真宗仏光寺派の組織が基盤にあったことがその大きい要因であった」。資料としては主として次の二つを用いた。(1)本山仏光寺の日誌である『仏光寺御日記』(2)本山仏光寺と仏光寺派寺院、仏光寺派門徒とその関係者に伝えられている和歌関係資料。たとえば「香川景樹点随念上人ほか詠草」、『蓮光寺理山日記』、柳下清老関係資料、柏原正寿尼関係資料など(1)にもとづいて次のようなことが判明した。(1)香川景樹は仏光寺第23代門主随応上人、24代門主随念上人の時代に、門主をはじめ本山仏光寺に仕える僧俗、末寺の住職・門徒たちに、歌会、詠草点削、歌談などを通じて和歌を教授した。(2)同じく随応上人、随念上人の二代にわたり、御勧章の作成にかかわっていた。次の(2)からは、次のような事例があったことが判明した。(1)仏光寺派僧侶が景樹への入門を仲介した。(2)門主、仏光寺派寺院の住職、門徒などがともに集まり歌会を開催していた。以上のように、本山仏光寺と景樹との密接な関係を示す事柄と、桂園派の形成と展開に真宗仏光寺派とその関係者が密接に関与していたいくつかの事例を見いだすことができた。また、今後さらに多くの事例を発掘し、真宗仏光寺派の文化活動全般のなかでの桂園派の位置を見定める必要があることが明らかになった。真宗仏光寺派の文化活動は他宗派ともかかわって展開されているから、そのためには仏光寺派以外、真宗以外の宗派やその関係者への目配りも必要になってくるであろう。