著者
大平 祐一
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

従来の研究によれば、近世の糺問主義のもとでの刑事裁判では、奉行所で無罪を宣告するのは奉行の恥辱であるので、そうならぬよう奉行所の裁判にかける前に下吟味においてふるいにかけ、有罪と思料されるものだけを奉行所に送った。そして、一たん奉行所で裁判をすることになると、そこでは「吟味詰の口書」をとること、即ち、有罪宣告のための供述調書をとることが終局目標とされ、そのため自白が執拗に追求された。即ち、有罪確保をめざして徳川幕府の刑事裁判は進行していった、といっても過言ではない。しかし、この見解からは「無罪」の姿が浮かび上がってこない。糺問主義の刑事裁判では裁判役所での事実認定は有罪の事実認定だけが追求されたのであろうか。「無罪」の事実認定はなされなかったのであろうか。本研究では、こうした問題関心のもとに、江戸幕府刑事裁判における「無罪」に焦点をあて、近世(江戸時代)前半期の長崎奉行所の裁判では奉行所での審理(吟味)の結果、「無罪」を申し渡した事例が多かったことを明らかにした。特に注目すべきことは、奉行所での審理の結果、犯罪の事実は認定されなかったという事例が極めて多かったことである。「犯罪事実が存在しなかった」、「罪を犯す意思がなかった」などの理由で「無罪」を申し渡された事例が少なくなかった。その背景には、捜査と公判の手続が未分離であったこと、下吟味でのスクーリングがゆるやかであったことが想定される。近世の糺問主義手続のもとでの刑事裁判において「無罪」判決が多数みられ、しかも、そこには、一たん奉行所で審理を開始したからには何としても有罪にもちこむ、といった有罪確保へのこだわりが見られなかったということは、従来の有罪確保主義的な刑事裁判像に修正を迫ることになろう。また、有罪確保主義を江戸時代からの伝統と見る精密司法論に対しても問題を投げかけることになろう。
著者
渡辺 〓修
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

我が国では、犯罪現象と人権意識の変化にもかかわらず、「自白をとるか、とられないか」という次元での争いが、捜査から公判そして学界における主たる関心になっている。刑事手続における「55年体制」的思考である。本研究は、刑事手続のかかる運用と理論を克服し、新たな犯罪情勢に対応する捜査権限のあり方、起訴の基準、公判手続のありかた、有罪・無罪の認定基準、そして、これらに対応した被疑者・被告人の防御権の充実を模索することを目的として行った。その結果、次の点について研究をまとめることができた。(1)違法収集証拠排除法則の適用のありかた。(2)外国人被告人事件の公判廷の運用開演。(3)聴覚障害者事件と刑事裁率の限界を明確にすること。(4)事実認定の適正化。(5)検察官上訴権の制限による刑事裁判の全体としての適正化。
著者
泉水 文雄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

市場支配的事業者規制、とりわけ私的独占、それに至らない不公正な取引方法、優越的地位の濫用に対する規制について解釈論、課徴金導入に関係する立法論を提言した。また市場支配的事業者を形成、強化等するおそれのある企業結合規制の分析方法、ネットワークに関係する市場における競争上の規制の比較法研究の成果を公表した。さらに、モバイル市場の競争のあり方等の事業法と競争法の交錯について研究成果を公表した。
著者
阿閉 義一 高山 進 河崎 道夫 渡辺 守 新居 淳二 田中 晶善
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

【1】インターネットスクール「三重仮想大学:http://www-press.hep.phen.mie-u.ac.jp/mievu」の開設(1)インターネットスクールで開講している講座・中学生向けの「自然と人間」…………………………………………………同/shizen/index.html・大学生向けの「宇宙・地球の誕生と自然の構造」……………………………同/uchuu/index.html・市民向けの「量子と宇宙」……………………………………同/ryoushiuchuu/index.html・市民向けの「量子と波」…………………………………………同/ryoushinami/index.html・市民向けの「量子・宇宙・ひも」……………………………………………………同/qus/index.html・大学生および院生向けの「あべちゃんの物理学講座」…………同/ryoushiuchuu/index.html・大学院生向けの「Introduction to High Energy Physics」………………同/ryoushiuchuu/index.html・研究者向けの「Topics on High Energy Physics」…………………………同/topics/index.html・研究会報告「非摂動論的弦模型と世代構造」…………………………………………………同/research01/index.html(2)インターネットスクールにおける「動画:同/movie/index.html」の放映・芦原すなお講演「小説とぼく」…………………………………………………1997年の三重大学学術文化祭から・共通教育シンポジウム「新しい教養教育を考える」…………………………1997年の三重大学学術文化祭から・1997年の三重大学生物資源学部公開講座…………………………林拙郎講演「三重の水と森林」他9つの映像・2000年度三重大学総合科目「宇宙・地球の誕生と自然の構造」で実施した6イベント中の3映像【2】高等・中等教育における教育実践研究(1)毎年度(1998〜2000年度)三重大学共通教育総合科目「宇宙・地球の誕生と自然の構造」を開講(2)2001年2月に三重大学教育学部附属中学校1年「総合的な学習」の時間に「自然と人間」を開講(3)1998年8月に3日間の「高校生のインターネット講座」を開講(4)1999年8月および2000年8月にそれぞれ3日間の「中学生のインターネット講座」を開講
著者
両角 達男 荻原 文弘
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,スパイラルを重視した数学的活動による学校代数の単元を開発するとともに,その単元における学習過程を質的に分析することから,代数学習の深化について考察した.開発した単元は,平方根,式と証明,数列,数列の極限,球の体積・表面積であり,学校代数の系統性と単元どうしのつながりをふまえている.これらの単元を通して,無理数に関する理解が深まるなど,代数学習の深化と学習方法の改善がみられた.
著者
亀井 譲 鳥山 和宏 八木 俊路朗 佐藤 秀吉 鳥居 修平
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

形成外科領域では、筋弁や筋皮弁による感染創の治療が多く行われている。われわれの臨床経験と以前の基礎実験から、大網のほうが筋弁・筋皮弁よりも抗感染作用が強いと考えている。しかし、大網の抗感染効果を実験的に詳細に報告した例はない。そこで、まずマウスで感染創モデルを作成後に大網および筋弁の感染創に対する反応の差異を観察した。次いでマウス大網からリンパ球、血管内皮細胞や間葉系幹細胞が豊富な分画を抽出して、感染創に局所注射し抗感染作用を検討した。感染創モデルでは、液体培地に寒天を追加し半流動状にして黄色ブドウ球菌を混和することで、寒天が局所に残存して安定した感染創が得られた。感染創に大網と筋弁を移植する実験では、筋弁が局所で反応が乏しいのに対して、大網は周囲組織と癒着して大量の炎症性細胞を供給して明かな抗感染採用を示した。マウス大網由来の細胞の感染創への移植実験では、移植した細胞は血管新生を伴い生着しその周囲に炎症性細胞の豊富な層ができた。以上より、感染創に対して大網は筋弁により抗感染採用が強いことが示唆され、また大網由来の細胞による感染創の治療の可能性が示された。
著者
千葉 芳明 本田 亮 神田 展行 永田 英治
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

われわれ身の回りには光に関する現象が数多くある。しかし、初等、中等教育の現場でその理論的背景を説明するには工夫が必要である。本研究では、偏光現象を用いた着色現象に注目して光と物質の相互作用に関する教材を創案し、光や色についての本質を学ぶプログラムを提案した。主な研究内容を記す。1.偏光現象から始める光と物質の相互作用教材の研究偏光板の間に高分子のシートを挟むと色が現れる。つぎに、偏光子、または偏光子を回転すると色が変わる。、2枚の偏光板の偏光軸が平行の場合の透過光の色と、垂直な場合に現れる色は互いに補色の関係である。なぜ、このような現象が現れるか、容易に説明できる実験教材を開発研究を行った。具体的には、偏光によって、互いに補色の関係にある2つの色が現れることに着目し、偏光の状態によって光が吸収されることを追究する学習教材の検討を行った。この関係をわかりやすく説明するために実験教材と学習方法について研究した。2.偏光による着色現象の本質を理解するためには、物質中で光の位相速度が変わる(屈折の法則)の理解を深める必要がある。その屈折の法則を演示す教材を創案した。本装置を用いると、入射角を変えたとき、屈折角がどのように変わるか、視覚的に理解できる。さらに、屈折の法則で保存される量は何かを考察することができる。3.光と磁気の相互作用を理解する学習教材の開発大学におけるファラデー効果の実験教材を開発した。試料となるガラス素材には、市販されいるガラス素材のなかで、ベルデ定数がもっとも大きいTb高濃度ガラスを用いた。ガラス素材の長さを大きく(8cm)とすることで大きな回転角が得られ、磁場によって、光の偏光面が回転する様子を確認できた。次に、ファラデー回転の回転角度の大きさが、光の振動数に依存することに着目する。光源に白色光源を用いると透過光のスペクトルを変えることができる。磁場によって物質の色が変わるので、磁場と光の相互作用のデモ実験として有効である。4.電磁波教材に発展させるためのに、磁石とリニアーモーターを理解させるための学習プログラムのついての研究をおこなった。
著者
榊原 保志
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,都市表面形状が夜間ヒートアイランドに与える影響について検討したものである.まず,都市モデルと郊外モデルを用いたスケールモデル実験とヒートアイランドの調査資料を基に,長波放射収支量の都市内外の違いに関与する天空率が夜間ヒートアイランドとの関係を検討した.スケールモデル実験の結果,都市の天空率が大きいとこの効果は小さく,都市内外の気温差にあまり影響を与えないことが分かった.つぎに,都市表面パラメータによって高層住宅地と低層住宅地を比べると,天空率,緑被率,建蔽率では両住宅地の違いは小さいが,高層住宅地の容積率やラフネスパラメータは低層住宅地よりはるかに大きくなった.そこで,当地域に共存する高層住宅地と低層住宅地の夜間のヒートアイランド強度ΔTu-rと風速の関係を検討したところ,どちらの住宅地でも風速が大きくなるにつれてΔTu-rは少しずつ小さくなるのに対し,その上限値は単純に小さくなるのではなく,ある風速を頂点とする山型になった.さらにこの最大値が生じる風速は高層住宅地では風速1.4m/sであるのに対し,低層住宅地では0.8m/sと小さかった.これらのことから,都市表面の大きなラフネスによる機械的混合が夜間ヒートアイランド形成原因に有力であることが示唆された.小都市における建蔽率,容積率,天空率,ラフネスパラメータ等の地表面パラメータの分布について調べた.その結果によると,いずれの地表面パラメータも都市が高く都市を中心とする同心円状の等値線が得られた.そして地表面パラメータはいずれも0.8程度の気温偏差との相関が見られた.
著者
中谷 伸生
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本の近世絵画において、これまでほとんど研究がなされなかった大坂の戯画を採り上げ、江戸時代絵画史の重要な一領域を研究した。耳鳥齋(1751年以前-1803年頃、俗名松屋平三郎)は、江戸時代中期、商人の町として賑わう大坂で戯画作者として名をはせた画家である。京町堀で商いをする傍ら、絵画や浄瑠璃を嗜み、とりわけ戯画の世界で異才を放った。京都や江戸に比べ、大坂はアカデミズムとは一線を画す土地柄であるが、商人の町ならではの自由闊達な気風は、狩野派などの職業画家とは一味違う多彩な画家を輩出した。そして、耳鳥齋もまた、大坂的趣味を戯画で表現した、いわば「笑いの奇才」である。芝居絵から風俗画、あるいは版本に至るまで、作品は略筆ながらも当意即妙というべき適確さと「おかしみ」とを合わせもち、「世界ハ是レ即チ一ツノ大戯場」と堅苦しい世間を批判した。この研究では、美術館・個人所蔵家を徹底して調査し、真贋の問題を解明しながら資料整理を進め、耳鳥齋と大坂の戯画について新知見を得ることに成功した。また、東アジアにおける戯画の状況を把握するため、中国に調査に出かけ、版本など多くの比較資料を収集することができた。今回は、代表作「別世界巻」や「仮名手本忠臣蔵」などの肉筆画に、『絵本水や空』といった版本を加え、その画業の全貌を調査研究した。また、中村芳中や月岡雪鼎らによる人物戯画、さらには漫画の元租ともいえる鳥羽絵をも交えて大坂の戯画の系譜を浮き彫りにした。以上、きわめて独創的な研究成果が上がったと考えられる。
著者
岩崎 博之
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

31年間AMeDASデータと高層気象データを利用して,近年,北関東山岳域の南側で日没後の豪雨(25mm/hr)が増加し,かつ,大気中の水蒸気量も増加していることを示した.また,数値モデルの結果から,大気中の水蒸気量が増加すると,この領域での日没後の積乱雲活動が活発することが示された.近年の水蒸気量の増加が,北関東山岳域の南側での積乱雲活動の活発化に寄与している可能性が示唆された.
著者
松尾 七重
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は我が国における就学前教育と小学校低学年教育の接続を考慮した幼児・児童のための連携図形教育プログラムを確立することである。そのために,図形教育に関する問題点を解明するための調査を実施し,その結果及びアメリカ合衆国の就学前教育の研究プロジェクトの成果を踏まえ,就学前の幼児及び小学校低学年の児童を対象とした図形に関する指導の内容,配列及び方法を構想した。また,その指導の一部を実施し,その前後で質問紙調査等を行い,その効果を検証し,その結果を基に,幼児と児童を対象とした連携図形教育プログラムを提案した。
著者
久保田 啓一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

近世中期の堂上派武家歌壇では、幕臣や諸大名が京の公家に和歌の指導を仰ぐことが本格化したが、彼らは社会的経済的にむしろ公家を凌ぎ、公家たちの指導振りを俎上に載せて評価し、彼らを競わせた上で、懇切丁寧な指導を行う方を選ぶ姿勢を見せるようになった。江戸の地で多くの門人を持った冷泉家と日野家の競争は、その典型的な事例である。本研究では、享保から宝暦に至る幕臣文化圏の実態、及び天明期以降の松平定信を信奉する層の意識・動向を資料に即して分析し、和歌和文を愛好する武士たちの表現意識が堂上公家を敬いつつも江戸の地に即した詠作の意義を自得するに至る様子を考察した。
著者
浜西 千秋 福田 寛二 野中 藤吾 森 成志 山崎 顕二
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

外部環境の変化により生じる機械的刺激に対して,細胞が種々の応答を行うことにより,生体はその変化に適応してきた.このような生命の神秘を解明し,ティッシュエンジニアリングいう最新の工学手技を利用して,治療に応用しようとするのが本研究の目的である.脚延長術は骨や筋肉・血管といった軟部組織を伸張して、組織を増殖・改変させる技術である.そこで骨芽細胞を対象に,脚延長時と同じ牽引負荷におけるフリーラジカル産生の有無をin vitroで検討することを第1の目的とした.また脚延長仮骨をin vivoのモデルとして使用し、生体内での調節機構を検討することを第2の目的とした.平成16年度にはFlexercell strain unit(FX-3000)を用いて骨芽細胞に周期的牽引負荷を加え,フリーラジカル産生を検討した.牽引負荷によりフリーラジカルおよびその中和剤であるSODの産生亢進を認めた.このことは,骨芽細胞に対する機械的刺激がフリーラジカルという調節因子を介して何らかの細胞応答に変換されている可能性を示唆している.平成17年度はこの調節機構mRNAレベルでの確認した.さらに,細胞内のフリーラジカルを速やかに増加させる薬剤であるパラコートを使用して,細胞内でのレドックス制御を検討した.これにより,細胞内フリーラジカルがSOD活性を自己調節しているという興味深い知見を得た.平成18年度はこれらの所見を総合し,機械的ストレスによって誘導される活性酸素およびSOD誘導の機構について解析した.細胞膜透過性のSOD存在下で骨芽細胞に機械的牽引負荷を加えたところ,フリーラジカルの産生が抑制されるとともに,SOD活性も抑制された.このSOD活性の抑制はmRNAレベルでも明らかであった.したがって,骨芽細胞に対する機械的刺激が,細胞内のフリーラジカル増加を介してSOD誘導を調整していることが証明された.
著者
竹越 孝 遠藤 雅裕 藤田 益子 遠藤 雅裕 竹越 孝
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、近世中国語の信頼できるコーパスを構築し、それを存分に活用した研究を行うことにあった。我々がその対象として選んだのは、李氏朝鮮時代における中国語会話教科書『老乞大』の代表的版本と、清代後期を代表する白話小説『兒女英雄傳』である。これらを組み合わせることによって、元代から清代末期に至る北京語の通時的変化が一望できると考えたためである。スタート時にはプレーンテキストの入力はもとより、品詞情報・構文情報など種々の文法タグを付し、語彙表を作成するところまでを射程に入れていたが、実際に取りかかってみると、各版本を吟味し信頼に足る底本を選定するまでの段階で多くの時間が費やされることとなった。こうした文献学的研究によって我々の視野は格段に広がったものの、本格的な計量言語学的研究の領域にまで踏み込む余裕がなかったことは残念である。今後の課題としたい。研究成果報告書は資料編と論考編からなる。資料編には今回の研究資源の一つである竹越孝編「老乞大四種対照テキスト」を収めた。論考編には我々がコーパスの作成過程でなした文献学的研究と、コーパスを活用して行った語彙・語法研究を収めた。具体的には、遠藤雅裕「『老乞大』各版本中所見的「將」「把」「拿」-并論元明清的處置句-」、遠藤雅裕「《老乞大》四種版本裡所見的人稱代詞系統以及複數詞尾」、竹越孝「今本系《老乞大》四本的異同點」、竹越孝「論介詞"着"的功能縮小-以《老乞大》、《朴通事》的修訂為例」、藤田益子「関於『児女英雄傳』的鈔本-従詞彙方面的考察-」、藤田益子「関於在《児女英雄伝》中出現的"把"字句-"把"的賓語帯量詞"箇"」の6篇である。
著者
森野 忠夫 尾形 直則
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

シリコンと非接触型レーザー血流計を用いて、ラット脊髄圧迫時の脊髄血流と虚血の影響を調査した。20gの重さで脊髄は完全虚血となり、20分間の圧迫では運動障害は可逆性であるが、40gでは非可逆性であった。そのメカニズムとして、圧迫部位での虚血は、マイクログリア増殖を含む炎症、神経細胞やオリゴデンドロサイトのapoptosisを引き起こし、さらに血液脊髄関門が破壊されるためと考えられた。
著者
吉見 宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、国際監査基準が民間部門に適用されたことに鑑み、これが将来的にわが国の公監査基準にいかなるインパクトを与えるかを検討した。その結果、いくつかの無形資産、監査人の倫理、財務諸表外情報等のいくつかの要素が重要であることを示した。さらには、国際基準の観点から、現在の地方公共団体の監査制度の保証としての性格を検討し、問題点を示した。これらを通じて、一般的な公監査基準のモデルのあり方が示された。
著者
大平 栄子
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

現在までに出版されている分離独立文学テクスト、関連する映画・テレビドラマ、民謡などを網羅的に収集し、分析し、分離独立文学の全体像を把握した。これにより、分離独立文学が、インド英語文学全体の中において極めて重要な位置を占めることを確認し、インド英語文学の体系的把握に向けた第一歩を踏み出すことができた。また、分離独立文学研究書を網羅的に収集し、研究史の整理、および研究動向の分析・評価を行なった。同課題に関連するインドの研究者や、同テーマを素材とする映画監督との意見交換、および分離独立体験者の家族からの聞き取り調査などを行い、課題に関する総合的理解を深めた。また、分離独立に関する最新の歴史研究を検討し、争点を検討し、従来の見解がどのように変更されているかを確認した。分離独立文学は女性と社会的弱者に甚大な被害をもたらすことになったため、ジェンダー研究の視点から分離独立文学研究の深化を図った。暴力の被害者としての女性というイメージを反復するテクストとは異なる、宗教紛争を超克するジェンダーの視点をもつヴィジョンが提示されているテクストの存在を探ることにより、分離独立をめぐる多様な視点を浮き彫りにした。
著者
岩垣 丞恒 新居 利広
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

長距離選手の持久性能力の指標は最大酸素摂取量とされるが、一流選手になるほどperformanceとこの関係が成立していない。この背景を血液中の赤血球指標(RBC、MCV、MCHなど)に求め、赤血球指標の特徴との関係を検討した。先ず、大きな矛盾点が見出された。4年間に亘る長距離選手の赤血球指標を縦断的に測定すると、持久性トレーニングに伴い、赤血球数(RBC)が低下し、血液粘性も低下してくることであった。これらの低下は酸素摂取量の立場から見ると、負の条件下になるが、現実的には、このような変化のなかで自己のperformanceが亢進していた。この背景を赤血球指標としてのMCV、MCHで見ると、RBC低下にしたがってMCV、MCHの代償的増加が出現していた。MCVのこのような変化は少なくともplasma lipidsとの間の生化学的要因にあると予測した。リン脂質を多く含むplasma HDLには赤血球膜脂質を構成する物質が多い。そこで、MCVとplasma HDLとの相互関係を調べると、有意な相関係数を示す群とこれらの関係が成立しない群に分かれ、それぞれおよそ50%づつであった。赤血球膜PCとplasma PCとの間にはLCATを介した相互関係が存在することから、plasma PCとplasma HDLとの関係を調べると、これらの関係は直線的な比例関係にはなかった。MCVとplasma HDLとの関係が成立しない群では、plasma PCが有意に低かった。すなわち、MCVとplasma HDL関係の成立には、plasma PC量の存在があった。これらの結果から、持久性トレーニングに伴う代償的なMCVの増大にはplasma PC量が関係し、LCATの働きは赤血球膜PCを増加させることになり、赤血球膜PCの増加は膜の流動性、しいては変形能を高め、赤血球を柔らかくしていることになる。そこで、これらのmechanismについて、exhaustion exercise、カテコールアミン、機械的刺激による要因について再検討した。その結果、運動に関するこれらの因子すべてが、赤血球PCを増加させ、赤血球膜の流動性を高めていた。これらの結果から、運動やトレーニングの必要性は赤血球膜機能の宿命に存在していることが考えられた。
著者
宮宅 潔
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、張家山漢簡「二年律令」をはじめとした新出法制史料を中心としつつ、中国辺境地域から出土した木簡史料にも依拠して、秦漢時代の刑罰制度、爵制、地方統治制度などに改めて考察を加えた。刑罰制度については、主に労役刑制度に焦点を絞り、数種類の無期労役刑が労役の強度という単一の基準によって段階づけられていたのではなく、家族・財産の没収の有無、刑徒の地位が子孫に継承されるか否か、といった複数の条件の相違によってそれらの軽重が定められていたことを明らかにした。同時に、没収制度が前漢文帝期に廃止されていることに着目し、この時代に無期労役刑が消滅し、すべての労役刑に刑期が設けられたことの背景、意味についても新たな見方を提示した。文帝期はまた、漢帝国の地方制度にも変革が起こった時代、具体的には諸侯王に対する締め付けが強化され、郡県制を通した全領土の直轄統治に向けて舵がきられた時代と考えられてきた。だが「二年律令」に見える諸侯王関連の規定は、必ずしも皇帝と諸侯王たちとの、不断の緊張関係が存在したことを明示するものではない。少なくとも文帝期には、諸侯王国の存在を前提とした地方統治が志向されていたものと考えられる。爵制に関していえば、「二年律令」には有爵者の特権を規定した条文が数多く含まれる。従来の爵制研究では、中国での研究は特権の存在を自明のこととして捉える傾向にあった一方で、我が国においては爵の持つ本質的な意義はそれら特権とは別の部分にあるとの所説が有力であった。改めて「二年律令」の諸規定を検討すると、確かにその中には実効性のない、やがては空文化したであろう特権も含まれるものの、いくつかの特権は確かに存在していた。それらが有爵者の社会的地位を規定し、君主への求心力を生み出していたと考えるべきである。
著者
山本 教人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

2年度間に、「九州一周駅伝」を報じた西日本新聞の記事をテキストに、新聞がどのようなやり方で駅伝を社会的に意味ある出来事して物語ってきたのかの検討を行った。また、駅伝についてのメディア・テキストを物語としてとらえ、その構造を分析する研究を行った。結果として、今日の新聞の駅伝記事は、主張を明確に表明せず、結論を曖昧にするような書き方で構成されていることが明らかとなった。このような記事の有する曖昧さは、今日の駅伝記事が個人情報を中心に構成されているということとともに、多様な解釈を読み手にもたらすことになると考えられた。また、九州一周駅伝の物語は、語りの多様性を限りなく広げていくようなやり方と、逆にそれに制限を課すようなやり方、そして制限された語りにさらに多様性をもたらすようなやり方で構造化されていた。こうした駅伝記事の物語としての構造が、読み手の多様な関心を引きつけることのできるひとつの要因であると考えられた。このような結果から、読者の「能動的な読み」とは、実はテキストの構造自体が可能とするものであるということができ、近年必ずしも評判が芳しいとはいえないメディア・メッセージの内容分析の意義が改めて確認された。