著者
石井 正己
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

『遠野物語』の話し手であった佐々木喜善は、その後、時代の最先端を行く学問を進めていた。ザシキワラシの研究はその始めであったが、今回はカードや書簡などの資料を翻刻して分析した。昔話の研究では、男性の語る昔話と女性の語る昔話に着目し、動物昔話や笑い話の中に込められた精神性を追究していたことが明らかになった。それだけでなく、現代伝説や都市伝説という視点をもって、新しい研究に臨んでいたことがはっきりした。
著者
大杉 満 門脇 孝 植木 浩二郎 窪田 直人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)膵β細胞のIRS-2量調節では、グルコース刺激が重要である。(2)グルコース刺激がCaMK-4、CREBを介してIRS-2を調節している。(3)db/dbマウスなどの膵β細胞代償不全モデルでは、グルコース・センシングに重要なグルコキナーゼ、Glut2の発現低下が見られ、糖流入が減ることにより、IRS-2が低下し、膵β細胞の保護システムが破綻すると考えられる。
著者
浅井 紀久夫 大西 仁 大澤 範高
出版者
独立行政法人メディア教育開発センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、三次元仮想物体の操作感覚を向上させて存在感を増すための触覚インタラクション技法を開発し、視覚・聴覚・触覚によるマルチモーダル情報可視化システムを構築した。仮想物体との接触感を提示するデバイスとして振動子付き手袋を利用し、インタラクション・システムに実装するための仕組みを構成した。現実物体を触ることにより仮想物体を操作する手法について被験者実験による評価を行った。その結果、触知インタラクションが仮想物体の操作性向上に寄与することが示唆された。
著者
有光 秀行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

これまで積み重ねてきた「ネイション・アドレス」研究を最終構築段階に入れるべく、国内で参照不可能な地方史関係刊行物、さらにイングランド司教文書・ノルマン朝国王文書・12世紀を中心とした教皇庁文書などのうち、これまで未検討であった史料にあたって分析を行ない、とくに「文書形式」そのものの伝播・継承・変化についてデータを充実させ、総合的な像の構築をこころみた。同時に、地域の実情(「ノルマン人」の定着度)とのかかわりについても考察した。
著者
向坂 保雄
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、超徹泣子の計測に静電分級器(DMA)と凝縮核計数器(CNC)もしくはエレクトロメータ(EM)を用いて、ナノメータサイズのエアロゾル粒子およびイオンクラスターの動力学的挙動について研究を行い、次の成果を得た。初年度では、DMAによって超微粒子を分級するときにおこる電気移動度のシフトについて理論的・実験的検討を行い、(1)異なる粒子径をもつ粒子のブラウン拡散による混合効果、および(2)帯電泣子によって発生する空間電界の存在によってシフトが生じることを明らかにした。またその結果、(1)平均粒径よりも小さい粒子は真の粒子径よりも小さく測定される、(2)平均粒径よりも大きい粒子は真の粒径より大きく測定される、(3)粒子個数濃度が高い方が電気移動度のシフトは大きくなる、(4)低い個数濃度の場合でもブラウン拡散の影響によって電気移動度のシフトはおこる、(S)電気移動度のシフトは一段目のDMAについてのみ重要で、二段目のDMAでは無視できることを指摘した。次年度では、初年度の研究成果に基づき、タンデムDMAシステムを用いてモビリティシフトを考慮した正確な粒子径を求めることにより、ナノメータサイズ粒子のワイヤスクリーンと層流円管内の透過特性について検討を行い、(1)粒子の電荷は透過特性に影響を及ぼさない、(2)Cheng-YehとGormley-Kennedyの既存の理論はStokesーEinsteinの式で粒径換算した2nmまで良く一致する、(3)金属表面での跳ね返りはなく、金属表面に衝突した粒子はすべて沈着することを明らかにした。さらに、両極拡散荷電効率について実験的検討を行い、粒径が3nm以上では、イオンの電気移動度については実測値、質量については既往の文献値を用いることによりFuchsの理論とよく一致するが、3nm以下では理論より小さい値になることを明らかにした。
著者
日野 正輝
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

札幌,仙台,広島,福岡の4広域中心都市はこれまで中心性および成長力の点で類似した都市として認識されてきた.しかし,1980年代後半以降,4都市間の成長の差が顕在化してきた.本研究はこの点を主に4都市の雇用者数の動向に焦点を当てて検証した.その結果,下記の諸点が明らかになった.(1)広島の人口および従業者の増加率は1980年代後半以降他の3都市に比べて継続して低位にある.この広島の成長率の低位は主に流通産業の成長の鈍化に求められる.広島の支店集積量は福岡の1/2程度の規模しかない.また,1980年代以降の成長産業である情報サービス業の集積においても,広島は4都市のなかで最も低位にある.(2)福岡と仙台の成長は最も良好であった.しかし,仙台の成長は1990年代においても域外企業の事業所の集積に依存し,地元企業の成長による従業者の増加は相対的に小さい状態にある.それに対して,福岡の従業者の増加は,域外企業の進出に依存すると同時に,地元企業の成長による部分が仙台に比べると絶対的にも,また相対的にも大きい.(3)札幌は,東京企業などの支店集積量では仙台と同規模にあって,福岡に比べると小さい.そのため,支店集積による従業者の増加も相対的に少ない.しかし,札幌では地元企業の従業者の増加数が大きい.この点は,情報サービス業においても同様の傾向にある.
著者
内藤 真理子 庄子 幹郎
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

歯周病原菌であるポルフィロモナス ジンジバリス菌は我々の研究により菌株ごとにゲノム構造の多様性を持つことが明らかになった。本研究では転移因子の一つであるConjugative transposon (CTn)が実際に菌株間、だけでなく他の菌種の間で遺伝子を受け渡している事を明らかにした。この結果から、歯周病原菌は遺伝子情報のやり取りを通じて多様性と口腔内環境への適応性を獲得していると考えられる。
著者
犬伏 雅一
出版者
大阪芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ピクトリアリズムの再吟味によって、それが多層的な運動であり、様々な要素から形成されていることが明白になった。その一つの要素が、たとえばストレートフォトグラフィーに依るスティーグリッツの写真行為と深く関わっていることは確かであるにしても、この運動が、たとえば、F・H・デイの写真行為のような別の系、可能性を内包していたことも明白にされた。彼の印画形成のポエティクスに対する分析は、他のピクトリアリストの写真行為の再考を要請するが、より重要なことは、近代の視覚体制の危機に関する新しい研究の可能性が開かれたことである。
著者
柳川 浩二
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Nagel と Reiner の結果を発展させ, Borel fixed ideal の 非標準的 polarization を研究し, その極小自由分解を構成した(岡崎亮太氏との共著)。この自由分解は, 正則なCW複体を台とするが, この現象は Welker らが構築した枠組内で, 離散モース理論を用いて「解釈」できる。また, 半正規なアファイン半群環や toric face ring の双対化複体も研究した。Bruns, Nguyen らの結果を, 導来圏を用いて見直し, 改良している。
著者
斎藤 哲
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究はヴァイマル時代のドイツ共産党と、第2次世界大戦後の東ドイツにおける社会主義統一党に代表される、20世紀ドイツの共産主義運動の歴虫的な特徴を両性関係に焦点を当てて解明することを目的としていた。この目的を達成するために、次の課題を設定した。1)ドイツ共産党によって女性に対して行われた働きかけを主として担った男性党員たちは、どのような姿勢で女性の抱える問題に向かいあったのか。また、女性たちはそれに対してどのように反応したのか。2)戦後東ドイツにおける消費生活の変化にあわせて、職場や家庭における両性関係に変化が生じたのか。3)ヴァイマル時代から1960年代末に至るまでの時期に、ドイツ人の家庭生活の中で両性関係に根本的な変化は生じていたのか。これらの課題に関する成果は以下の通りである。1)ドイツ共産党の男性党員は一般に、女性は政治に関わるべきではなく、家事と育児に専念すべきであると考え、その点でドイツ社会一般の通念に従っていた。2)ヴァイマル時代のプロレタリア女性にとって、共産党の主張する女性の解放と、女性たちの求める解放との間には大きな齟齬があった。3)以上1)〜2)のような状況は、第2次世界大戦後の東ドイツにおいても見られた。社会主義統一党と東ドイツ政府は家庭や職業における女性の負担を軽減するために、女性に配慮した消費政策の展開を含めて様々な措置を執ったが、女性が家事と育児を担うべきであるという点、社会生活の決定権は男性が握るという点では、きわめて保守的であった。4)ヴァイマル時代及び第2次世界大戦後の東西両ドイツにおける消費生活の発展は、家事に関する限りで、女性の家庭内での地位を強めたように見えたが、それは男女の性別役割分担を廃棄するものではなかった。1)〜3)に述べたようなドイツ共産主義運動における男性中心主義的な特徴は、このようなドイツ社会一般のあり方を反映していた。
著者
黒川 雅代子 恒藤 暁 坂口 幸弘 恒藤 暁 坂口 幸弘
出版者
龍谷大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、平成18年度より3年間の計画で、第3次救急医療施設において、患者の治療中から死後までの継続した家族・遺族支援をおこなうための実践モデルを開発することを目的として実施した。主な研究成果は、第3次救急医療施設に心肺停止状態で搬送され、入院に至らずに亡くなった患者家族に対して現状調査を量的・質的に実施した。結果、救急医療施設における家族・遺族の現状及びニーズを明らかにした。また本研究と並行し、研究協力病院スタッフにより、看護師、医師、事務職員の家族・遺族支援についての現状調査が実施され、救急外来における医療従事者の対応について検討がなされた。これらの研究結果を踏まえて、現在「救急医療における遺族支援のための実践モデル」を試案作成し検討中である。
著者
杉田 治男
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アユ、ワカサギおよびキンギョの腸管内におけるAHL生産細菌の多くはAeromonas細菌であった。また、Shewanella属はAHLを分解する細菌としてキンギョから分離された。これらの結果は、AHLを分解するShewanella属細菌をプロバイオティクスとして利用することでAeromonas属細菌による日和見感染症が防除できる可能性が示唆された。
著者
田中 孝夫 荻田 太 田巻 弘之 浜岡 隆文
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【目的】本研究は、一流競泳選手を対象とし、泳成績と生理的、力学的指標との関係からパフォーマンスの規定要因を解明し、さらに年間トレーニングにおける各指標の変化と泳成績の変化との関連性や、技術要因の数値化を試み、国際競技力向上に資するための実践的資料を得ることを目的とした。【方法】被検者は、オリンピック、アジア大会、ユニバーシアードなどの国際大会出場選手を含むインカレ3連覇中のチームに属する女子競泳選手であった。本研究では、生理的指標として最大酸素摂取量、最大血中乳酸濃度、OBLAが、力学的指標として抵抗-泳速関係、抵抗係数・指数、最大推進パワー、および推進効率が計測され、各距離種目の泳成績との関係、縦断的変化が検討された。力学的指標の測定は、本学で開発されたMAD(Measurement of Active Drag)システムを用いて行われた。【結果及び考察】一流選手における各距離種目の泳成績と、生理的および力学的指標との関係を検討した結果、体力の代表指標とされてきた最大酸素摂取量とは必ずしも相関はなく、短距離種目ではより大きな機械的パワー発揮と無酸素性エネルギー供給能力、さらにはそれを生み出すための大きな筋量(体格)が、長距離種目では低い乳酸蓄積と、抵抗係数を小さくする泳技術が重要な要因であることが示唆された。また、縦断的に同一選手の測定を行い、そのときの泳記録の変化との関係を検討した結果、記録の向上は最大努力泳時の抵抗の低下のみと有意な相関が得られ、エリート選手における記録の更新は、体力要因の維持向上はもちろんであるが、特に抵抗を軽減させるような泳技術の改善に起因していたことが示唆された。また、一流選手における規定要因については、年間のトレーニングを通じて有意差が出るほど顕著な変化が得られないこと、さらに本被検者における推進効率は73.2±8.3%であり、これまで報告されている値よりも高く、非常に優れた技術を有していることも明らかとなった。
著者
蛇穴 治夫
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、動物園を活用した授業案と教材を作成し、学校現場に提供することを目的とした。授業案作成においては、「実物観察の重要性」、「進化の概念を意識させることの重要性」、「目的を持った観察の重要性」に特に留意した。教材としては、エゾシカとライオンの頭骨レプリカ、ブタ小腸の消化管プラスティネーション、ニワトリの手羽先骨格標本、イヌ・ライオン・ウシの足形レプリカ、脊椎動物の移動方法を比較できるビデオ教材を作製した。これらを用いて、「動物の体のつくりと働き」、「動物のなかま」における授業案を作成した。授業案においては、食性や脊椎動物の移動方法の違いに基づく動物の適応形に着目させるようにして、動物が共通の祖先から進化してきたことを理解させるようにした。そのことを通して、全ての動物には系統的なつながりがあることを実感させ、更には生命の連続性から生命尊重の意識を育てることをねらった。また、観察に目的意識を持たせるために、仮説から演繹的に推論させ、それを観察で確かめるという授業構成にした。一部は附属中学校において実践し、その有効性について検証を加えた。学校現場への研究成果の還元及び教材の普及活動のために、旭山動物園教育研究会の立ち上げと現職教員スキルアップ研修活動を実施し、さらに、平成17〜19年度の教員10年経験者研修を利用した。旭山動物園教育研究会では、動物園スタッフ、小・中学校の教員(現在約45名)と共に年2回のワークショップを行い、ニューズレターの発行も行っている。スキルアップ研修では、物理・化学・地学・理科教育の大学教員と共に、19年度に市内の教員向けの研修を各教科ごとに年1回ずつ開催した。以上の研究により、生物の学習並びに生命尊重の意識を育てることに必須となる、生物を進化という観点から見たり考えたりする力を育てる教材の開発とその普及を行うことができたと考える。
著者
谷田 創
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

近年「食育」の重要性が指摘されるようになり、全国各地で乳幼児から高齢者まで様々な年齢層を対象とした食育が試みられている。米作り、イモ掘り、野菜の栽培など、農業体験を通して子ども達に食生産の大切さを学ばせる試みは以前から行われており、小中高の学校教育に「総合的な学習の時間」が取り入れられたことで再び脚光を浴びているが、これらは一過性の体験に留まっており、体系的な教育とはなっていないのが現状である。また、子ども達が生きた家畜に触れたり、見たりする機会は大幅に減少している。広島大学附属農場では、遠足や社会見学など地域の幼児及び児童を広く受け入れているが、家畜に触りたがったり、餌をやりたがったりする子どもがいる一方で、触りたいけれども恐くて手が出せなかったり、牛の大きさに驚いて泣き出してしまったり、畜舎に入ろうとしない子どもなど、家畜を見る体験が初めてという行動を取る園児がほとんどであり、「農」や「家畜」との分離を目の当たりにしている。本研究は、食材から食事までを扱う「食育」に加え、家畜を介在した教育を効果的に組み合わせることで、幼児に「食」「食材」「食を支える家畜」の関係性を認識させることを目的とし、そのための基礎的データを収集した。その結果、幼児に対する家畜を介在させた食農教育(家畜介在型食農教育プログラム)を実践することで、一般社会の食農リテラシーを高めることが可能となり、人と家畜との関係性も向上することが示唆された。今後は、様々な教育機関で実践可能な家畜介在型食農教育プログラムを開発することで、人及び家畜の福祉の向上、食の安全性の向上につながるものと考えられた。
著者
名久井 孝義
出版者
仙台電波工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この報告書では,研究課題に関して以下の観点から日本の明治期における女性スポーツ(主にボールゲーム,体操,柔道,戸外運動<アウトドア・スポーツ>)の性差について歴史的事実の掘り起こしと言説分析を行った.その1つは,生物学的性や性差を形成してきた医学・衛生学的言説と女性性や性差の社会規範を形成してきた社会・教育的言説の対峙性と相補性に着目した.2つ目は,体操を含めた欧米スポーツと日本的スポーツ,さらに国内外の戸外運動と女性性・性差の創造や変革との関連性に着目した.しかもその分析は,制度的資料以上にスポーツする側の女性が立ち現れる教育現場(ローカルな資料)の資料に基づいた.この論文では,既存の制度史研究での知見を補う女性スポーツの歴史的展開を提示した.研究の結果,女性スポーツにおける女性性や性差の創造と変革には,医学・衛生学的言説(科学的知)と社会・教育的言説(思想・実践的知)が時系列的に対立物の統一となって立ち現れた.しかも社会・教育的言説による女性性・性差(いわばジェンダー)の変革の転機は,前世紀初頭の国民国家形成期に胎動し,高等女学校の制度化と連動していた.明治期の女性スポーツでは,欧米女性スポーツと日本的スポーツが,「稽古の思想」「技術化の思想」という形で発見・創造され,両者が文化習合するなかで女性性を「品性=淑女=レディ」を育む教育方法として位置づけられて展開した.加えて,女性の自転車乗り(サイクリング)・登山(遠足を含む)などの戸外運動がステータス・シンボルとなり,女性へのスポーツ解放を促進した.
著者
三俣 昌子 江角 眞理子 楠美 嘉晃 安孫子 宜光 東 浩介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

第一に血流下における内皮の増殖と粥状硬化発症の関連を検討した。層流性ずり応力に比べ乱流性ずり応力は内皮の増殖と単球接着を増加させた。内皮の増殖を抑制するp21^<Sdi/Cip/Waf1>(p21)は乱流による単球接着増加、内皮のTXNIP,VCAM-1,CCL5,CXCL10,L-selectin発現を抑制した。血流下でp21は単独で、または内皮の増殖抑制を介して、内皮のレドックスバランスを抗酸化状態へ導き、接着や遊走因子発現を阻止し、単球接着を抑制して抗粥状硬化性に作用すると思われる。第二に、粥状硬化発症への歯周病菌(Pg)の関与を検討した。ヒト大動脈のAtheromaのマクロファージにPg由来r40kDa蛋白が存在し、Fatty streak,DIT、冠動脈のAtheromaには認めなかった。Pg由来LPSで刺激した単球の培養上清は内皮のTLR2 mRNAを発現させ好炎症性に作用した。
著者
廣島 文生 伊東 恵一 寺本 恵昭 島田 伸一 廣川 真男 松井 卓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度-19年度科学研究費申請時に掲げた研究目標(a)-(e)にそって研究成果の概要を述べる.(a)基底状態の縮退度の評価:埋蔵固有値の縮退度の上からの評価を与える一般的な方法を構築した.またスピンを含む場合には対称性から基底状態の縮退度が少なくとも2以上であることを示した.スピンを含むハミルトニアンが生成する熱半群を「スカラーな積分核」で表現し,新しいエネルギー不等式を発見した.(b)基底状態の高次regularityと非存在:新井,廣川との共同研究で任意次数のregularityを示した.また赤外発散があるときには個数作用素の1/2乗の定義域に含まれる基底状態が存在しないことを示した.(c)Gibbs測度の確率論的解析:確率2重積分を含む連続パス空間上の確率測度の族のtightnessをV.Betzとの共同研究で示した.(d)くりこみ理論:場の理論の模型には有効質量が定義される.結合定数で展開したときの係数の発散のオーダーの物理的な予想は対数発散であるが伊東との共同研究で多項式的に発散することを示した.(e)全運動量を固定した模型の解析:ハミルトニアンを汎関数積分表示して解析した.全運動量=ゼロでの基底状態の存在が知られている.我々はこの基底状態が一意的であることを証明した.スピンがある場合には非連続なパス空間上の測度をつかった汎関数積分表示をJ.Lorincziとの共同研究で得た.その結果ある種のエネルギー不等式を示した.またその応用としてスピン-ボゾン模型の基底状態の一意性を廣川と共同で示すことが出来た.
著者
石井 健一朗 杉村 芳樹
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究により、TGFβ/BMPシグナルの活性化が前立腺間質において筋線維芽細胞様の分化誘導に働くことを示した。よって、TGFβ阻害剤により筋線維芽細胞への分化誘導を阻止することが出来れば、肥大症結節の発生や癌細胞の悪性化を抑える新たな治療法や分子標的薬剤の開発に結びつくと考えられた。
著者
秋山 弘之 山口 富美夫
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1) 屋久島の蘚苔類相については, 新種2種を含む, 蘚類44科160属, 355種1亜種18変種2品種, 苔類37科87属304種2亜種2変種, ツノゴケ類1科5属6種が屋久島から報告されていることを確認した.我々の調査手法により, 68年ぶりに生育を確認されたフウチョウゴケに代表されるように, 多数の絶滅危惧植物の屋久島における分布状況が把握された. その一方, 20年前には豊富に産していた葉上着生苔類の減少が著しいことが明らかと成った.(2) 屋久島における蘚苔類の種多様性は, 淀川小屋周辺の林内にあることがわかった. 一方, 屋久島低地亜熱帯林から報告されている種については, 今回の調査でも確認することができない種が少なくなく, この地域での保全活動が緊急であることが示された.(3) 屋久島産ケゼニゴケには, 2倍体と3倍体の集団があり, それぞれ低地と高地にすみわけを行っていた.また, 屋久島3倍体は本州の3倍体集団に較べ, 琉球地域の2倍体集団に遺伝的により近いことがわかった.