著者
高橋 柊 菊地 悠 落合 桂一 深澤 佑介
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.1376-1386, 2017-08-15

近年,Twitterなどのマイクロブログに代表されるSNSサービスのユーザ数増加により,実世界における情報がリアルタイムにweb上にアップロードされるようになった.そのため,マイクロブログ上の情報をセンシングすることで,実世界における事象を検知する研究が活発となっている.本研究では,マイクロブログ上に投稿される犯罪関連投稿に着目する.マイクロブログより,リアルタイムな犯罪関連投稿を抽出することができれば,犯罪事象に対し短時間で適切な防犯対策が可能となる.また,警察官によるパトロールなど既存のセンシング手法では抽出困難であった犯罪事象がマイクロブログ固有の情報より抽出可能となる.マイクロブログにおける投稿抽出には投稿テキスト情報を利用する手法があるが,犯罪という希少な事象を投稿テキスト情報から抽出するのは困難である.提案手法ではユーザの投稿内容,投稿関連位置情報および関連ステータス情報を用いることで,投稿内容の希少性および影響力について特徴量を生成し,投稿者が経験あるいは目撃した犯罪関連投稿を抽出する.Twitterの日本語投稿データに対し提案手法を適用したところ,投稿テキスト情報のみを利用した既存手法(AUC=0.6146)に対し,提案手法(AUC=0.7183)ではより高精度な犯罪関連情報の抽出が可能となった.
著者
塩見 彰睦 喜多 辰臣 河合 和久 大岩 元
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.920-928, 1992-07-15

日本語2ストローク入力との併用に適した仮名漢字変換方式として 漢字混じり仮名漢字変換を提案し その実現について述べる日本語2ストローク入力と従来の仮名漢字変換入力を併用した場合 入力したい熟語を構成する漢字のうち 一つでもその漢字の2ストロークコードを入力できないときには すべての漢字をその読みで入力し 変換しなければならなかったこの欠点を解決するのが 漢字と読みが混じった文字列を熟語に変換する漢字混じり仮名漢字変換である本論文では 漢字混じり仮名漢字変換を行うための方式として 変換用辞谷の見出し語を漢字混じり語に拡張するものと 入力文字列に含まれる漢字をキーに辞書引きを行う漢和辞書を用いるものとを提案するさらに この二つの方式でパーソナル・コンピュータ上に漢字混じり仮名漢字変換システムを実現し その比較を行ったその結果 変換速度ならびにパーソナル・コンピュータ環境での実現性の点で 漢和辞書を用いる方式が優れていることが明らかになったまた 同方式はMSーDOS上のデバイス・ドライバとして実現され いくつかのエディタやデータベース 日本語ワープロなどの市販ソフトウェアに試用され 実用に供しうる日本語入力システムであることが確認された
著者
重村 哲至 古川 達也 相知政司 林 敏浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.3318-3327, 2007-09-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

電気・電子・情報系の学生にノイマン型コンピュータの動作原理を教えるために,実機を用いた機械語教育を行うことが提唱されてきた.しかし,現在のコンピュータ・システムは教育用には高度で複雑すぎる.そこで,筆者らは,高専や大学において,機械語教育に使用する演習用のマイコンを設計・開発した.開発したマイコンが備える,内部を2 進数で観察できるコンソールパネル,命令セットアーキテクチャ,入出力装置,クロス開発環境は,どれも教育用に配慮がされたものである.また,学生が個人で所有できるように小型・安価に実装した.実際に徳山工業高等専門学校の授業で4 年間使用し,教育効果があることが判明した.To teach students the principle of the von Neumann窶鍍ype computer, the machine language education with a real computer has been advocated conventionally. However, present computer systems are too advanced and complex to educate them. According to the demand for the higher education, the authors have designed and implemented an educational microcomputer system to satisfy the demand. The implemented computer has a console panel, that can be used to observe the inside, a set of instructions, I/O devices and cross development environments that are appropriate for education. Moreover, it has been implemented small size and at a low price so that the student might own it individually. It has been found out that there is a feasible education effect because of the practical usage in some classes for four years at Tokuyama College of Technology.
著者
山本 強 青木 由直
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1-8, 1990-07-15
被引用文献数
1

本論文では小型 高速のCommon Lisp処理系を実現するための記憶領域管理の方式を提案し それにもとづいた処理系 HCL (Hokkaido Common Lisp)について報告する.本論文で提案する単一ヒープ2領域法は一個の連続するヒープ領域を下向きに成長する可変長オブジェクト領域と上向きに成長する固定長オブジェクト領域に分割して管理するものである.本方式は領域の細分化を行わないためページ型の管理を行う処理系に見られるページ残量がオブジェクトサイズに満たない場合に生ずる無効領域が発生しない方式の一つである.またガーベジコレクションに関してアプリケーションプログラムの動的な特性解析を行った結果 一般にコンス領域が大食消費 大量回収の傾向があることが明らかになり その特性を考慮した新しいガーベジコレクションの制御法を提案し実装した.HCLにおいてそれを用いない単純な制御方式と比較した結果GC時間について15%程度の改善が可能であることが示された.
著者
江見 圭祐 乃村 能成 谷口 秀夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.486-495, 2018-02-15

ソフトウェア開発において,ソーシャルコーディングと呼ばれる手法が広がりつつある.ソーシャルコーディングで進められるプロジェクトには,様々なユーザからソースコードの改善に関する提案が寄せられる.これら提案の採否の判断には,提案の内容だけでなく,提案を発案したユーザの評判も影響を与えている.本論文では,ユーザの評判によるバイアスを排除した提案の良し悪しの指標を述べ,提案にまつわるユーザの行動から,その指標を算出する手法を示した.次に,本手法が算出する指標を評価し,指標が有効に機能することを示した.最後に,評価結果を分析し,実際の提案の採否の判断にユーザの評判によるバイアスが存在する可能性を確認した.
著者
安岡 孝一 ウィッテルン クリスティアン 守岡 知彦 池田 巧 山崎 直樹 二階堂 善弘 鈴木 慎吾 師 茂樹
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.323-331, 2018-02-15

古典中国語(漢文)の解析手法として,MeCabを用いた形態素解析手法を提案する.本手法では,漢文の動賓構造を表現すべく,4階層の「品詞」からなる新たな品詞体系を構築し,それに基づくMeCab漢文コーパスを設計した.合わせて,MeCab漢文コーパスを入力するための専用ツールとして,XEmacs CHISEをベースとしたコーパス入力ツールを開発した.また,MeCab漢文コーパスを効果的に管理し,さらには品詞体系のリファクタリングを行うべく,MeCab漢文コーパスのLinked Data化を行い,WWW上で公開した.さらに,MeCabを用いた漢文形態素解析の応用として,漢文における固有表現の自動抽出に挑戦した.結果として,地名の自動抽出は高精度に行うことができたが,官職・人名の自動抽出はそれぞれに課題が残った.A method to analyze classical Chinese texts is proposed. In the method, we use our original morphological analyzer based on MeCab. We propose a new four-level word-class system to represent the predicate-object structure of classical Chinese. In order to make a corpus for classical Chinese on MeCab, we have constructed a MeCab-corpus editor based on XEmacs CHISE. In order to control the corpus effectively, and to refactor our four-level word-class system, we have converted it into Linked Data on WWW. As an applied study for our morpholgical analysis of classical Chinese texts, we have tried to extract named entities: names of places, job titles, and names of people. As a result we are able to extract names of places from classical Chinese texts almost perfectly. But we have found some difficulties to extract job titles or names of people.
著者
加藤 修 飯塚 博幸 山本 雅人
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2354-2364, 2016-11-15

二人零和有限確定完全情報ゲームにおいてすでにAIは人間に匹敵する強さとなっており,最近では麻雀や人狼など,多人数ゲーム,不完全情報ゲーム,不確定ゲームが新たな研究対象として注目を集めている.そのような中で不確定ゲームとしてデジタルカーリングがある.デジタルカーリングはカーリングの二人用コンピュータゲームであり,AIどうしを競わせカーリングの戦略を解析することを目的とした不確定ゲームのテストベッドとして開発された.本研究ではデジタルカーリングにボードゲームの探索手法を適用し,投球目標座標と回転方向を候補手,盤面状態を局面としてデジタルカーリングにExpectimaxによるゲーム木探索を適用する手法を提案する.Expectimaxではゲーム木内で確率的に推移するノードを用いており,ゲームの不確定性を考慮した探索が可能となっている.提案手法の有効性を検証するため,不確定性を考慮する場合としない場合それぞれにおいて探索の深さを変化させ既存AIとの対戦実験を行った.その結果,提案手法による不確定性の考慮を行った場合に勝率が上昇し,また不確定性を考慮した場合のみ探索の深さを増やすことで勝率が上昇したことから,デジタルカーリングにおける提案手法による不確定性を考慮した先読みの有効性が明らかとなった.
著者
浅原 正幸 河原 一哉 大場 寧子 前川 喜久雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.299-305, 2018-02-15

国立国語研究所は言語研究に資する258億語規模のウェブコーパス『国語研ウェブコーパス』を構築した.コーパスの構築は,ページ収集・言語解析・保存・検索系の構築の4種類の部分工程からなる.本稿では,『国語研ウェブコーパス』を概説するとともに,その検索系である『梵天』の機能について紹介する.この検索系は100億語規模のテキストコーパスを文字列だけでなく,形態素列・係り受け部分木に基づく問合せが可能である.
著者
伊藤 淳子 東 孝行 宗森 純
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1528-1540, 2015-06-15

本研究では,発想のテーマに関する知識が乏しいユーザを対象とし,アイディア出しが停滞した際,テーマに関連した単語を提示して新たな連想のきっかけを与え,柔軟性と流暢性を向上させる発想支援システムを提案する.発想のテーマに関連したテキスト情報をウェブ上から事前に収集し,共起度をもとに単語をクラスタに分類する.システムは,ブレインストーミング中のユーザが入力したアイディアに含まれる単語がどのクラスタに含まれるかを検索し,共起度の低いクラスタから単語を選択し,ヒントとして提示する.就職活動に関するテーマを与えヒント提示機能のないシステムとの比較実験を行った結果,提案システムにおいてアイディアの数が1.28倍に増加した.また,実験で得られたアイディアを就職活動の進捗段階に基づき9項目に分類したところ,ヒント提示機能を利用した場合は7.7項目,利用しない場合は6.4項目においてアイディアが得られた.このことから,提案システムに多様な発想を促す可能性があることが確かめられた.
著者
松井 一乃 金高 一 加来 麻友美 池部 実 吉田 和幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.2498-2510, 2014-12-15

spam対策技術の1つであるgreylistingは「spam発信MTAは再送をしない」との仮説に基づき送信者に対して一時エラーのレスポンスコードを返し,再送をうながす対策手法である.greylistingはspam排除の効果は高いが,適用するすべてのメールに再送要求をするため,通常メールにも大きな配送遅延が生じる.我々が運用しているメールサーバにおいても通常メールを受信するまでに平均1時間15分の遅延が生じていた.通常メール送信者をwhitelistに登録すれば,そこからのメールの配送遅延は回避できる.しかしすべての通常メール送信者をwhitelistに登録するのは不可能である.そこで2012年2月にmilter managerを導入し,SPF,S25Rの判定結果を用いてgreylistingを適用するかを決定するメールシステムを構築した.SPF,S25Rを用いて通常メールとspamを分類することで,SPF,S25Rによる検査のみで受信できるメールが増え,greylistingによる再送を抑制できる.milter manager導入前と導入後の通常メールに対するgreylistingの再送要求割合を比較し,43.1%から17.0%まで減少していたことを確認した.このことから,milter managerを用いてmilterを組み合わせることで,通常メールに対する配送遅延を軽減することに成功した.Greylisting is a type of anti-spam measure. Greylisting works by assuming that contrary to legitimate MTA, a spam sender will not retry sending their junk mail after a temporary error. Greylisting is a low cost method with high detection rates, but it introduces a delay into legitimate mail delivery. In fact, the average delay of e-mail delivery was 1 hour and 15 minutes after sending in our mailing system. Although to put ham MTAs in whitelist reduces e-mail delivery delay, it seems impossible to register all ham MTAs. Therefore, we designed a new mail delivery system using milter manager in February 2012. The mail system uses the results of SPF and S25R in order to apply greylisting to mail classified as spam by either of those milters. As a result, legitimate mail is receivable without the delay from greylisting from before. We compared the retransmission request rates by greylisting before and after the introduction of the system. As a result, we have successfully reduced the retransmission request ratio of greylisting from 43.1% to 17.0% in our system. We succeeded in reducing the average delay of delivery of legitimate mail by the combination of the milters through milter manager.
著者
山下 直美 葛岡 英明 平田 圭二 工藤 喬 荒牧 英治 服部 一樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.981-993, 2017-05-15

本論文では,2つの調査に基づいて,うつ病患者の家族介護者を支援するための知見を述べる.1つ目の調査では,患者の気分の上下や予期せぬ振舞いなどに対処する家族介護者の介護活動の現状とニーズを把握する.その調査結果をふまえて介護記録Webアプリケーション「みまもメイト」を開発する.2つ目の調査では,家族介護者がみまもメイトを6週間にわたって利用することによって,家族介護者のうつ病患者に対する関わり方や患者との人間関係がどのような影響を受けたかを調べる.利用後のインタビュー調査から,家族介護者がみまもメイトを利用することによって,自身の介護活動を客観的に見つめ直す効果がある(第三者視点の導入)ことが分かった.さらに興味深いことに,みまもメイトは患者,病気,家族介護者の間の関係を変化させ,これによって,家族介護者とうつ病患者間のコミュニケーションを改善する効果があることも分かった.具体的には,みまもメイトを用いることによって,家族介護者単独で病気をかかえる患者に対処するという構図(家族介護者vs.患者+病気)から,患者と家族介護者が協調しながら病気に立ち向かうという構図(家族介護者+患者vs.病気)へと変化した.
著者
平澤 真大 小川 祐樹 諏訪 博彦 太田敏澄
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.214-222, 2013-01-15

ニコニコ動画等の動画共有サイトでは,多くの人が興味を持つ価値ある動画が日々蓄積されていく動画の中に埋もれていると考えられる.このような埋もれている動画の発見は,ユーザに新たな話題を提供し,ユーザ間のコミュニケーションを促進させると考える.そこで,先行研究におけるノベルティ(知らなかったが,推薦されて興味を持つ)の定義に基づき,本研究では,「社会(集団)的に未知であるが,推薦されて興味を持つ」動画をソーシャルノベルティ(Social-Novelty)のある動画と定義し,発見することを目的とする.我々は,分析により「もっと評価されるべき」タグがソーシャルノベルティのある動画の判定に活用できることを確認している.また,先行研究の整理により,動画を特徴付ける特性として,コメント特性,動画内容特性,視聴行動特性の3特性が存在していることを確認している.「もっと評価されるべき」タグが付けられた動画を集団にとってノベルティの高い動画であると考え,この3特性を特徴量として,ソーシャルノベルティのある動画をSupport Vector Regression(SVR)を用いて発見する手法を新たに提案する.評価実験を行った結果,多くの人が未知かつ興味を持つ動画を発見できること,高い興味を持つ動画を発見できることを確認した.In NicoNico Douga, many video contents that many people are very intersting is buried in increasing video contents. Discovery of such videos recommends users with new topic, and communication between users is more promoted. Then, based on the definition of the novelty (Not known, but interested) in precedence research, we define Social-Novelty as "In social not known, but intersted" and try to recommend users it. By analysis, we checked that the tag which "would be higher rated" can utilize for the judgment of Social-Novelty videos. Moreover, as the video characteristic, it checked that the 3 characteristics of the Comment-Characteristic, the Content-Characteristic, and Audience's behavior-Characteristic exist by arrangement of precedence research. We proposed that "would be higher rated" tag and the 3 characteristics in Support Vector Regression (SVR) can discover Social-Novelty videos. To evaluate our proposed algorithm, the results showed the videos were not known but were interesting by many people and higher levels of interseted videos.
著者
深山 覚 中妻 啓 酒向 慎司 西本 卓也 小野 順貴 嵯峨山 茂樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.1709-1720, 2013-05-15

日本語歌詞からユーザの意向を反映して多様な歌唱旋律を生成するための自動 作曲法があれば,歌のプレゼント,メールの歌い上げ,非専門家の創作支援な どが行える.本論文では初めに,自動作曲される旋律の多様性向上と音楽性の 保持の両立が難しいこ とを議論し,特に日本語歌詞から歌唱旋律を生成する際には,(1)音符数の変化 にかかわらず同じ印象を持つリズムの生成法と,(2)ユーザの意向,歌詞の韻律 と古典的な作曲法に基づ く制約条件を満たす音高列の生成法が必要であることを論じる.(1)については リズム木構造仮説に基づく方法,(2)については,動的計画法を用いた確率最大の音高系列 の探索により解決できることを示す.様々な制約条件のもと自動作曲した結果について専門家による評価を行ったと ころ,本手法によって古典的な歌唱旋律の作曲法からの逸脱の少ない旋律が生 成されることが示され,ユーザの意向を反映して多様な旋律を歌詞から生成す る方法として有効であることが分かった.
著者
三品 拓也 勝野 恭治 吉濱 佐知子 工藤 道治
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.3062-3073, 2008-09-15

提携・合併・買収・アウトソーシングといったビジネス環境の変化と,インターネットのような組織間通信経路の発達により,オフィス文書が組織や会社をまたいでやりとりされる機会が増えている.これにともない悪意のないユーザの誤操作による情報漏洩の可能性が増しており,実際に情報漏洩事故の報告が後を絶たない.このような事故を防ぐために,ユーザの注意力に頼ることなく機密性を確保することが求められている.既存技術であるマルチレベルセキュリティは厳密な情報フロー制御を実現可能であるが,メタ情報欠落問題・機密解除問題という2つの実用上の問題があり,オフィス文書管理システムに適用することは困難であった.そこで本論文ではメタ情報欠落問題を解決するため,オフィス文書の来歴を記録して文書に安全な形で添付する来歴封入と,そのデータ構造を提案する.またオフィス文書の機密解除問題を解決するため,文書よりも細かい文書要素の粒度でセキュリティラベルを付与し,セキュリティラベルに基づいて情報フロー制御を行う細粒度情報フロー制御機構を提案する.その際,ラベル付与は来歴に基づいて可能な限り自動化し,ラベル付与のコストを削減する.さらに,来歴封入と細粒度情報フロー制御機構のプロトタイプをそれぞれODF(Open Document Format)とOpenOffice.orgに実装してその実現可能性を示す.Current business situations require improved confidentiality and integrity for office documents. The Multi-level Security (MLS) model can provide an information flow control feature to content management systems, however, the meta-information lost problem and the declassification problem prohibit the use of the MLS. In this paper we propose a meta-data format called <i>sticky provenance</i> and a fine-grained information flow control system using the sticky provenance. The sticky provenance contains the change history and the labels of an office document in a secure form, and it ensures the confidentiality of the change history of the documents in distributed environments. The fine-grained information flow control system reduces the label creep problem of the information flow control models with the sticky provenance. In other words, the sticky provenance and the fine-grained information flow control system can introduce a practical fine-grained information flow control capability to office applications so that we can ensure the confidentiality of office documents.
著者
藤井 叙人 佐藤 祐一 若間 弘典 風井 浩志 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.1655-1664, 2014-07-15

ビデオゲームエージェント(ノンプレイヤキャラクタ:NPC)の振舞いの自動獲得において,「人間の熟達者に勝利する」という長年の目標を達成する日もそう遠くない.一方で,ユーザエクスペリエンスの向上策として,『人間らしい』NPCをどう構成するかが,ゲームAI領域の課題になりつつある.本研究では,人間らしい振舞いを表出するNPCを,開発者の経験に基づいて実現するのではなく,『人間の生物学的制約』を課した機械学習により,自動的に獲得することを目指す.人間の生物学的制約としては「身体的な制約:"ゆらぎ","遅れ","疲れ"」,「生き延びるために必要な欲求:"訓練と挑戦のバランス"」を定義する.人間の生物学的制約の導入対象として,アクションゲームの"Infinite Mario Bros."を採用し,本研究で獲得されたNPCが人間らしい振舞いを表出できているか検討する.最後に,獲得されたNPCの振舞いが人間らしいかどうかを主観評価実験により検証する.Designing the behavioral patterns of video game agents (Non Player Character: NPC) is a crucial aspect in developing video games. While various systems that have aimed at automatically acquiring behavioral patterns have been proposed and some have successfully obtained stronger patterns than human players, those patterns have looked mechanical. We propose the autonomous acquisition of video game agent behaviors, which emulate the behaviors of human players. Instead of implementing straightforward heuristics, the behaviors are acquired using techniques of reinforcement learning with Q-Learning, where biological constraints are imposed. Human-like behaviors that imply human cognitive processes were obtained by imposing sensory error, perceptual and motion delay, physical fatigue, and balancing between repetition and novelty as the biological constraints in computational simulations using "Infinite Mario Bros.". We evaluated human-like behavioral patterns through subjective assessments, and discuss the possibility of implementing the proposed system.
著者
稲村 勝樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2627-2640, 2016-12-15

近年,パスワードリスト攻撃など,ユーザの安易なパスワード設定を原因とする不正アクセスが多発している.そのため,パスワードとあわせて認証を行う方式の提案・実装が急務となっている.一方,CHAPはインターネット上のサービスにおいて認証方式のデファクトスタンダードの1つとなっている.したがって,CHAPから新しい認証方式に変更することは容易なことではない.そこで,本稿ではサーバやユーザ端末での処理方法を改良することで,CHAPの構造をそのまま活用しながらパスワードとそれ以外の認証を同時に行うことができる新しい認証方式を提案する.これにより,既存の認証プロトコルで多要素認証が実現可能となる.また,サービスの継続性を考慮したプロキシサーバ型改良方式も提案する.さらに提案方式のテストシステムを構築し,パフォーマンス測定による実装評価を行う.これにより,提案方式を使用することで低コストでパスワード認証と他の認証の併用が実現できることを示す.
著者
冨樫 雅文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.266-268, 1986-02-15

ワークステーションにおける主要な入力装置であるキーボードとマウスには操作上幾つかの問題点が挙げられる.現在のキーボードは過去の機械式タイプライタの形状を継承しているが 人間の手指や個人差への適合が必ずしもうまくいっていない.またマウスは キーボードと併用する場合に持ち替えの手間がかかり さらに機械式マウスでは姿勢変化の検出ができない.そこで キーボードを左右分離型とした上で左右の半鍵盤に各マウスを装着した新しい入力装置を考案し 市販のパーソナルコンピュータをターゲットマシンとして試作を行った.また機械式マウスに対しては 移動量検出用のトラッキングボールを2個にして姿勢の変化を検出できるようにした複球型機械式マウスを提案する.この新しい入力装置によれば 左右の手は半鍵盤を保持したままで文字入力と二つの独立なポインティング操作ができる.
著者
若井 一樹 佐々木 良一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.1817-1825, 2015-09-15

Twitterにおけるスパム行為となりすまし行為の検知手法を提案する.これらの検知手法はスパム行為となりすまし行為の様々な特徴から検知対象であるか判定する項目を複数個作成し,それらの項目を数量化理論の適用によって最適な項目の組合せを選定することによって検知するものである.またこれらの手法を実装するとともに,検知結果をユーザに分かりやすく提示するようTwitterの表示系を強化したアプリケーションLookUpperの開発と評価を行った.この結果,本検知手法ではスパム行為となりすまし行為どちらも90%以上の的中率で検知することが可能であった.LookUpperの開発と評価について,本検知手法を実装し検知結果を分かりやすく表示する機能を開発し,被験者10人によってなされたLookUpperのユーザビリティに関する実験結果から全体的に高い評価を得るとともに,今後LookUpperの改良を行っていくためのアイディアを導く種々のコメントが寄せられた.
著者
八田原 慎悟 藤井 叙人 古屋 晋一 風井浩志 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2782-2795, 2009-12-15

脳活動とテレビゲームの関係に注目した関連研究の多くで,テレビゲーム実施時の前頭前野活動の低下が報告されてきた.しかし,これらはゲーム初中級者を対象としたものに限られ,熟達者の脳活動の活動様相および熟達にともなう変化については未解明の点が多い.本研究では2名の熟達者が「未熟達のゲーム」に訓練を重ねて熟達していく過程で脳活動にどのような変化が起こるのかを運動技能とあわせて検討を行った.その結果,当該熟達者の前頭前野活動は,学習初期に上昇し,学習中期には低下し,学習後期には再び上昇するというU-shapeを示した.Previous studies have focused on the relation between playing video games and brain activity. Most of these studies have reported that the prefrontal cortex shows decrease in its activity during playing video games. However, it seems reasonable to assume that the effect of playing games on the brain activity is dependent on the player's mastery level. As an initial step to address this issue, we examined brain activity at the prefrontal cortex while two top-level game players ("masters") were learning to master video games using functional near-infrared spectroscopy (fNIRS). Results demonstrated that their prefrontal activity during playing the game varied with the stage of learning; it increased at the early stage of learning, then decreased, and increased again at the later stage. These findings imply that prefrontal activity during playing the game might change in relation to learning stage and expertise, presumably which would provide implication for designing and programming a novel video game.
著者
中村 聡史 小松 孝徳
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1402-1412, 2013-04-15

スポーツの試合の録画視聴を楽しみにしているユーザにとって,Web上で遭遇してしまう試合結果などのネタバレ情報は楽しみを減退させる忌むべきものである.本稿では,こうしたネタバレ情報との遭遇を防ぐための表現手法を4つ提案し,実装を行った.また,表現手法の有効性について評価実験をベースとして検討を行った.