著者
大島 誠 杉浦 実 上田 佳代
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.114-120, 2010-03-15 (Released:2010-05-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1 6

軽度脂質代謝異常を有する肥満男性26名に対し,β-クリプトキサンチンを強化させたウンシュウミカン果汁(強化果汁介入群)と通常量のβ-クリプトキサンチンを含有するウンシュウミカン果汁(対照果汁介入群)を1日160g,8週間連続摂取させ,介入前と介入4週間および8週間後の血清β-クリプトキサンチン濃度,脂質代謝および肝機能指標値の変化について検討した.果汁投与後の血清β-クリプトキサンチン濃度はいずれの群においても介入前に比べて有意に上昇し,この上昇は強化果汁投与群においてより顕著であった.強化果汁介入群における8週後の血中ALT値およびγ-GTP値は4週後に対して有意に低下していた.血清β-クリプトキサンチンと肝機能指標値との関連について横断的な解析を行ったところ,いずれの肝機能指標値も介入前には血清β-クリプトキサンチン濃度と有意な相関は認められなかったが,介入4週および8週後ではそれぞれ有意な負の相関が認められ,これらの負の相関は8週後においてより顕著であった.一方,強化果汁介入群では,投与8週後のHDLコレステロール値およびLDLコレステロール値の低下がみられたが,対照果汁介入群とは有意な差は認められなかった.これらの結果から,β-クリプトキサンチンを豊富に含むウンシュウミカン果汁の摂取は肝機能障害の改善に有効である可能性が示唆された.
著者
奚 印慈 山口 敏康 佐藤 実 竹内 昌昭
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.310-316, 1998-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
12
被引用文献数
8 15

ステビア茎粗抽出物は強い抗酸化活性を示した.その活性は抗酸化指数で葉に比べ5倍程度高く,現在ほとんど利用されていない茎の新たな利用価値を提示した.ステビア抽出末はマイワシ油およびリノール酸に対して100ppmの添加で抗酸化効果を発現した.その効果は同濃度のBHT,α-Tocに匹敵する強さを示した.ステビア抽出末はα-Tocおよびクエン酸を併用することにより抗酸化効果が増強された.ステビア抽出末の抗酸化有効成分は主として透析外液(分画分子量500)に存在した.外液濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー.薄層クロマトグラフィーで分画し,複数の有効画分を認めた.その多くは,ポリフェノール化合物であったが,最も強い効果を示した成分にはカリウムが高濃度で存在した.
著者
上﨑(堀越) 菜穂子 鮫島 隆 大森 康雄 府中 英孝 三明 清隆 森岡 豊 小谷 健二 小齊 喜一 後藤 清太郎 渡辺 至 中島 誠人 猪口 由美 西坂 嘉代子 五十君 靜信 新村 裕 服部 昭仁
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.347-356, 2013-07-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
34
被引用文献数
1

非加熱食肉製品である生ハムにおけるaWおよび乳酸ナトリウムによるL. monocytogenesの制御について5試験機関で検討した.(1) 血清型の異なるL. monocytogenesの増殖に対する乳酸ナトリウムの影響試験から,供試した菌株の乳酸ナトリウムに対する感受性は,4種の菌株間で差がないことが明らかとなった.(2) 試験用生ハムで,いずれの試験機関でもaW 0.93(0.930≤aW<0.940) では,L. monocytogenes (血清型4b,Scott A株) は,10℃で56日間保管した場合に増殖しなかった.このことから,生ハムではaW0.93であれば,原料肉のpHや食塩濃度,亜硝酸塩および低温保管(10℃) などの条件が相加,相乗的に作用して,L. monocytogenesの増殖が抑制されるものと推測された.(3) 今回の試験では,aW 0.94(0.940≤aW<0.950) であれば,2%の乳酸ナトリウムを添加することによってL. monocytogenesの増殖が抑制されることが示唆された.
著者
斉藤 絵里 岩附 聡 小出 醇 矢嶋 瑞夫 小島 靖
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.454-459, 2011-09-15 (Released:2011-10-12)
参考文献数
10

ペポカボ茶種子水抽出物の夜間頻尿改善作用を検討するため,脱脂ペポカボチャ種子粉末をティーバッグに入れ抽出したお茶を用いてヒト試験を行った.その結果,夜間排尿回数が摂取前期間と比較してペポカボ茶摂取1週目から有意に減少した.摂取前期間で平均2.23±0.77回であったのに対し,ペポカボ茶摂取3週目では1.30±0.51回と有意に減少した.また排尿時の排尿スピード,尿切れ,残尿感についても摂取前期間と比較して改善が認められた.さらに,睡眠についても改善が認められた.以上のことから,ペポカボ茶は夜間頻尿改善作用を有し,睡眠改善作用を持つ可能性が示唆された.我々のこの研究結果は,種子中の脂溶性成分以外の水抽出物に,排尿障害改善作用があることを明らかとした新しい知見である.
著者
蔦 瑞樹 杉山 純一 相良 泰行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.73-80, 2011-03-15 (Released:2011-04-21)
参考文献数
25
被引用文献数
3

A NIR spectral imaging apparatus was developed to obtain information on spectrally discriminated images and the location of material to be measured. The apparatus consisted mainly of a CCD camera, a liquid crystal tunable filter and a spectral illuminator, which consisted of a xenon lump as well as a grating spectrometer. The sample surface image could be captured at any wavelength from 400nm to 1100nm. To investigate the performance of the apparatus, it was employed in the measurement of sugar content distribution at the surface of a fresh green melon cut in half and in the detection of foreign materials among blueberries. The absorbance at 676nm was found to be highly correlated with the sugar content in fresh green melons. Next, the intensity of each pixel of the images was converted into sugar content. By assigning the sugar content to a linear color scale, the sugar distribution of the melon was visualized. The plant organs could be detected by the second derivative absorbance image at 680nm, which is an absorption band of chlorophyll. The second derivative absorbances for blueberries and plant organs were determined in the image. The positions of pixels judged as plant organs in the detection image were in good agreement with the actual locations where plant organs had been placed. The apparatus demonstrated that plant organs contaminating the raw blueberry materials could be detected using the proposed methodologies.
著者
中村 善行 高田 明子 藏之内 利和 増田 亮一 片山 健二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.62-69, 2014-02-15 (Released:2014-03-18)
参考文献数
24
被引用文献数
4 6

糊化温度が通常のサツマイモ品種・系統より著しく低いデンプンを含有する品種「クイックスイート」における加熱に伴うマルトース生成の機序を通常のサツマイモ品種「ベニアズマ」と比較検討した.50°Cから100°Cまで10°C毎に変えた温度で加熱した塊根から組織液を採取し,その糖度ならびにマルトースおよびスクロース含量を測定するとともに,同じ塊根から調製した粗酵素液の β-アミラーゼ活性を可溶性デンプンを基質として定量した.また,塊根組織細胞内のデンプン粒の形態を走査型電子顕微鏡で観察し,糊化度を β-アミラーゼ-プルラナーゼ法で調べた.「クイックスイート」では β-アミラーゼが高い活性を示す60°Cから塊根細胞内のデンプンが糊化した.また,デンプンが完全に糊化する80°Cにおいても β-アミラーゼの活性は維持されていた.他方,「ベニアズマ」では加熱温度が80°C以上からデンプン糊化が確認されたが,この温度域では β-アミラーゼ活性は大きく低下していた.両品種の β-アミラーゼに対する温度の直接的影響はほぼ同じであったことから,80°Cで加熱された「クイックスイート」塊根で β-アミラーゼ活性が未加熱塊根なみに維持されたことは当品種のデンプンが温度の低い加熱早期から糊化することと密接に関連すると推察される.すなわち,「クイックスイート」では「ベニアズマ」に比べ,より低い温度約60°Cから80°Cを超える高温に至るまでの広い温度域でマルトース生成が持続するため,「ベニアズマ」より糖度が高くなると考えられた.
著者
奥西 智哉 中村 健治 宮本 守 宮下 香苗
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.409-413, 2012-08-15 (Released:2012-09-30)
参考文献数
14
被引用文献数
6 3

加水量を変えたドウを作成し,ドウの評価を3つの機関において行った.これらの機関では,ドウミキシングのための機器が相互に異なり,ミキシング条件も異なるが,品質の良いドウを作成するための加水量は同じであった.このことから,米粉パンにおいて適正加水量はその組成に応じて固有の値があることが明らかになった.材料組成の異なる各種米粉パンを用いた試験により,適正加水量の決定手段はファリノグラフが適しており,400BUの最高粘度を与える加水量が適正であることが明らかになった.
著者
植村 邦彦 高橋 千栄子 金房 純代 小林 功
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.516-519, 2016-11-15 (Released:2016-12-23)
参考文献数
6
被引用文献数
1

0.75MPaの圧力下で4秒間の連続通電加熱することにより98℃まで味噌を昇温させた結果,味噌に添加した枯草菌を2.7対数減少させることが分かった.一方,100℃60分の通常加熱では,枯草菌芽胞は1.6対数しか減少しなかった.このとき,通電加熱前後では味噌の色変化が認められなかったのに対し,温浴加熱では褐変が認められ,明度が20ポイント低下した.したがって,連続通電加熱は,味噌を褐変することなく,味噌の中の枯草菌芽胞のような耐熱性細菌を失活可能なことが分かった.本研究で用いたモーノポンプは吐出圧の制限のため内圧を0.75MPa以上とすることができなかったが,吐出圧のさらに大きなポンプを利用することにより,味噌の温度を100℃以上に安定的に昇温できれば,さらに耐熱細菌の殺菌効果を高めることが可能になると考えられる.本研究で用いた連続通電加熱装置と同等の装置は既にフロンティアエンジニアリングから市販されており,実用規模のスケールアップは実現可能である.
著者
侯 歌川 藤川 皓江 荒川 健佑 宮本 拓
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.125-132, 2013-03-15 (Released:2013-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

GABA は,血圧降下作用やストレス緩和作用などの生理機能を有するタンパク質非構成アミノ酸である.本研究では,世界の発酵乳製品から分離した乳酸菌の中からGABA生産活性の高い菌株を選抜し,GABA 生産活性に及ぼす諸要因について調べた.その結果,GABA高生産乳酸菌として,Lc. lactis subsp. lactis KM,Lc. lactis subsp. lactis DH1およびLb. brevis 1056 の 3 菌株を選抜した.中でも1056 株は,GABA 生産活性が非常に高く,初発培地 pH 4.0-8.0 の広い範囲で安定して GABA を生産した.また,1056 株は,基質となるグルタミン酸ナトリウムの濃度に依存して高くなる GABA 生産性を示し,さらに,培養後比較的短時間で多量の GABA を生産することが明らかとなった.これらの特徴は,1056 株が GABA を富化した機能性食品の開発に有用であることを示している.1056 株で調製した鶏肉発酵調味液の GABA 含量(1.51 mg/mL)は,本菌株の食品利用への有用性をさらに支持するものであった.
著者
鷲家 勇紀 西川 友章 藤野 槌美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.394-404, 2016-09-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

市販のコーヒー焙煎豆には,通常エージング処理が施されており,この処理によって,コーヒー抽出液中の多くの香気成分が減少するだけでなく,機能性にも影響することが明らかになってきている.そこで本研究ではマウスにエージング処理をしていないコーヒー焙煎豆,または28°C,96時間エージング処理したコーヒー焙煎豆からそれぞれ抽出したコーヒー抽出液投与による抗不安効果を検証した.高架式十字迷路試験における抗不安効果を検証した結果,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆の抽出液の飲用は不安様行動を有意に減少することが示唆された.この抗不安効果には,硫黄化合物2成分,pyrolle類1成分,およびpyrazine類4成分がそれぞれ関与し,何れもエージング処理によって減少する成分であった.以上の結果から,焙煎直後のコーヒー焙煎豆の抽出液に認められた高い抗不安効果は,焙煎豆のエージング処理によって消失することが分かった.さらに,エージング処理していないコーヒーの抗不安作用に関するメディエーターを検証した結果,GABAA受容体,ドーパミンD1受容体の関与が示唆された.
著者
小川 正彦 林 克弘 冨森 聡子 小西 信幸 中山 治
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.282-287, 2002-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3

ストロファンチジン配糖体及びジキトキシゲニン配糖体について,モロヘイヤ種子,モロヘイヤ及びその加工品の実態を調査するとともに,モロヘイヤの生育過程,世代交代における変遷を調査し,結果を検討し以下の結果を得た.(1) モロヘイヤ種子20試料を測定した結果,全試料からストロファンチジン配糖体及びジキトキシゲニン配糖体が検出され,その濃度は5080~7520μg/g, 40~160μg/gであった.また,原産国によって結果に差はなかった.(2) モロヘイヤ生葉を生育地別に18試料入手し,これを測定したが,ストロファンチジン配糖体及びジキトキシゲニン配糖体は検出されなかった.(3) 市場に流通するモロヘイヤ加工品15試料を測定したが,ストロファンチジン配糖体及びジキトキシゲニン配糖体は検出されなかった.(4) 原産国が明確なモロヘイヤ種子を栽培し,生育過程でのストロファンチジン配糖体及びジキトキシゲニン配糖体の消長を測定したところ,モロヘイヤ生葉からは検出されなかった.種子の世代間の差もほとんどなく,種子に特有の成分であると推察された.ただ,加工し食用とする場合は,双葉及び淡緑色未成熟莢の混入には注意を要する.以上のことから種子(未成熟種子及び発芽種子を含む)を喫食しなければ,ストロファンチジン及びジキトキシゲニンについては,特に安全性に問題はないと判断された.
著者
佐﨑 元 サルバドール· ゼペダ 中坪 俊一 古川 義純
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.445-449, 2013-08-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
13

Molecular-level understanding of ice crystal surfaces holds the key to unlocking the secrets of various fields. To observe ice crystal surfaces at the molecular level, we developed an advanced optical microscope, and succeeded in visualizing individual elementary steps of 0.37nm in height on ice basal faces. Utilizing this microscope, we also attempted to visualize the surface melting processes of ice crystals. We found the presence of two types of surface liquid phases (quasi-liquid layer phases) that exhibit different morphologies and dynamics on ice basal faces.
著者
山﨑 民子 荒井 克仁 得字 圭彦 川原 美香 大庭 潔 木下 幹朗 大西 正男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.538-543, 2012-10-15 (Released:2012-11-30)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

十勝産ナガイモの成分組成,アミラーゼ力価およびO2‾消去活性を検討し,基幹作物である十勝産ジャガイモの既報の分析結果と比較した.その結果,十勝産ナガイモは水分とカルシウムが多く,ビタミン類についてはα -トコフェロールは多かったものの,ビタミンB1,ビタミンB6およびアスコルビン酸は少なかったが,ビタミンEの供給源としては期待できることが示された.また,食物繊維量は少ないが,その中で水溶性食物繊維の占める割合が高かった.デンプンは少なく,アミロースの割合は25%であった.一方,RSは多く含まれていた.遊離の糖類としては,ブドウ糖と果糖が多く,ショ糖が同程度であった.主要な構成アミノ酸はグルタミン酸とアルギニンであった.アミラーゼ力価は低レベルであったことから,ナガイモが生食できることとナガイモ自体のアミラーゼ活性は関係していないと推測される.また,水抽出物のO2‾消去能は70単位/gと少し低かったが,抗酸化成分の供給源として十分に期待できる値であった.以上より,十勝産ナガイモは十勝産ジャガイモと同様に基幹作物としての利用が大いに期待できる.
著者
堀内 久弥 杉山 純一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.242-249, 1999-04-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
11
被引用文献数
1

米飯粒間の粘着性と空隙との関係を検討するために,空隙の観察が容易な二次元粒状体モデルとして,硬い材質のポリエチレン(PE),および柔らかい材質のシリコンゴム(SR),フォームラバー(FR)各円柱集積体に対する2軸圧縮曲線と空隙量の変化を測定した.一定の側方荷重で支持した10×10cmの樹脂製の枠に,直径0.5および0.7cmの円柱を約350本を積み上げて上方から十分に遅い一定速度で圧縮した.同時に枠の後方からの光で円柱間の空隙を観察し,画像解析装置で経時的に空隙比を求めた.PEの最密充填集積体はV字形のずり割れ破壊面が表れた.ポリプロピレンストロー(PPS)で適宜,空隙を増した場合は,ストローが空隙を吸収しPE最密充填時の約2倍のひずみで破坏した.SRはPEの場合のような明確なV字形破坏は見られなかった.SRにストローを挿入した時にはPE+PPSの圧縮一変形曲線を拡大したような挙動が表れた.炊飯粒よりなお硬いと考えられるFRは集積体中央部が圧縮されて両側に空隙層が表れた.モール・クーロンの応力円の解析により供試材料の強度定数,摩擦角φと粘着性cを求めた.いずれの材料も集積体の間隙量が増えれば摩擦係数が低下することを示し,この論旨は米飯にも適用されると考えた.
著者
舩津 保浩 哥 明葉 島 里美 田中 彰 寺井 格 眞船 直樹
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.162-169, 2016

本研究では,II型糖尿病予防効果のある食品開発を目指し,道産黒千石大豆の機能性成分に着目し,ACとIFの含有量や化学組成を調査し,機能性を十分に活用したおにぎりの加工方法を検討した.その結果,黒千石大豆は他の黒大豆と同様にACやIFを豊富に含有していた.煮豆加工時にACが煮汁へ溶出したが,炊飯時に煮汁を利用することで,ACを有効活用することができ,黒千石大豆の機能性を活かしたおにぎりの加工方法が開発できた.<BR>糖質50g相当量のおにぎり摂取試験での血糖値とGI,昼食相当量のおにぎり摂取後の血糖値とインスリン値は,いずれも対照おにぎりと比較して黒千石大豆おにぎりで低値を示し,特に昼食相当量摂取試験では食後120分において有意に低値であった.したがって黒千石大豆おにぎりはタンパク質,脂質,食物繊維,ACおよびIFなどの単一,あるいは複合的作用により食後の血糖値の上昇を抑制し,その結果インスリンの過剰な分泌が不必要となり食後のインスリン値の上昇が抑制されたと考えられた.嗜好性試験では,対照おにぎりと比較して黒千石大豆おにぎりで調査した全ての項目で優れない結果となったが,今後,黒千石大豆の軟化や調理形態の工夫により嗜好性を高めることが考えられ,II型糖尿病予防食としての有用性が期待された.
著者
松尾 真砂子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.632-639, 1997-09-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
3 11

おから(豆腐粕)を食糧資源として活用するため,おからオンチョム(オンチョム,Neurospora intermediaでおからを発酵させたインドネシアの伝統食品)の科学的調製方法と成分特性を調べた.オンチョムはスポンジのように多孔質なブロックに固められており,その表面はN.internzediaのオレンジ色の胞子によって覆われていた.菌糸はおからの組織内まで浸透・繁茂し,大豆の細胞壁成分の一部を資化していた.オンチョムの基本的調製法は次のようであった.水分を60%含むおからを1.1g/cm2で加圧して厚さを2.5cmにし,121℃で20分間滅菌した後,N.intermediaの胞子を含むオンチョムスターターを均一に散布し,30℃で18時間保った.菌糸が発生したら培養容器の蓋を二重のナイロンガーゼ(30 denier,105×99/inch2)と交換し,湿度65%,25℃で約11時間培養した.胞子が発生したら培地の上下を反転し,新しい上面が淡いオレンジ色になってから更に12時間培養した.おからのオンチョム化による成分変化は次のようであった.タンパク質は22%から27%へ増加し,かっ低分子化していた.脂肪は15%から9%へ減少し,難水溶性食物繊維も減少していた.オンチョムは大豆臭が無く,口当たりが滑らかで,油で揚げると鶏肉の唐揚げのような味がした.オンチョムは新たな風味を持った低エネルギー食品素材として有用であろう.
著者
草壁 雄太 川井 清司 羽倉 義雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.323-331, 2013-07-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
24

本研究では,連続相に高粘度のヒドロゾル,分散相に揮発性のある精油のD-リモネンを用いて,蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションを調製した.本研究では,[1]蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションが調製されるメカニズム,[2]蒸気吹き込み法により調製したO/Wエマルションが安定化する条件,[3]蒸気吹き込み法の技術的可能性,以上の3項目について検討を行った.その結果,以下の事項が明らかとなった.(1) 図3に示すメカニズムで蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションが調製される. (2) 連続相の降伏応力と生成直後の分散粒子の投影面積当たりの浮力との圧力差ΔPが十分に大きい場合,生成直後の分散粒子が浮上することなく連続相中にトラップされ,エマルションの生成・安定化が可能になる.(3) ΔPは連続相の増粘剤濃度および温度に強く依存する.(4) 乳化条件の一つである蒸気吹き込み時間は,連続相温度や連続相の降伏応力に大きな影響を及ぼす可能性があり,蒸気吹き込み法によるO/Wエマルションの調製には,蒸気吹き込み時間の管理や連続相の十分な冷却が必要である.(5) 蒸気吹き込み法により分散粒子が微細かつ一峰性の粒子径分布を有するO/Wエマルションの調製が可能である.(6) 連続相の増粘剤濃度を適切に設定することにより,蒸気吹き込み法を用いてエマルションの分散粒子の粒子径および粒子径分布幅を制御できる可能性がある.(7) 連続相に超高粘度液体を用いた場合にも容易にエマルションの調製が可能であり,処理物(「油水混合物」又は「連続相と分散相」) の粘度上限は従来の一般的な乳化装置の1000倍以上である.
著者
美濃口 直和 中村 和久 木野 勝敏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.108-112, 2017-02-15 (Released:2017-03-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Eggs of the Nagoya breed of chickens are characterized by a bright cherry blossom-colored eggshell and a thick, full-flavored yolk. The eggshell is covered by white spots of calcium carbonate, while the yolk has a deep color and a higher ratio of yolk weight compared to that of White Leghorn chickens. As for nutritional characteristics, the lipid content of the yolk is significantly higher in Nagoya compared to that in White Leghorn. As for physical characteristics, the yolk viscosity of eggs is higher in Nagoya than that in White Leghorn. Recent findings using an artificial taste sensor revealed the high umami taste intensity of Nagoya egg yolk compared to that of White Leghorn. As for processing properties, the emulsifying ability of the yolk of Nagoya is superior to that of White Leghorn. The hardness and elastic modulus are high in the boiled eggs of Nagoya compared to those of White Leghorn. From these findings, Nagoya eggs are characterized by the yolk. Thus, it is proposed that this characteristic is one of factors responsible for the palatability of eggs of Nagoya chickens.
著者
河原 芳和 中村 真樹子 阪上 泉
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.827-832, 1999-12-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1

「無添加」ハムの品質の安定性向上を目的として,亜硝酸塩を添加しない塩漬液に2~3週間塩漬したハムを製造し,塩漬液と製品の理化学的および微生物的検査を行ったところ,次のような知見が得られた.(1) 亜硝酸塩無添加の塩漬液は塩漬前半は低温菌,後半は乳酸菌を中心に亜硝酸塩添加塩漬液に比べ菌数が高く,その影響を受けやすい.(2) 塩漬液の最終pHと製品の歩留まりの間に相関があり,塩漬液pHは製品の品質を予測する重要な指標となる.(3) Leuconostocを塩漬液に加えるとpHと製品の歩留まりが低下するが,Lactobacillus添加の影響は小さい.(4) 亜硝酸塩無添加塩漬液にはB.thermosphacta,グラム陽性球菌,グラム陰性桿菌,乳酸球菌,乳酸桿菌,など多様な菌種が存在するが,乳酸菌を添加すると加えた菌属と酵母を除き抑制される.
著者
蔦 瑞樹 相山 怜子 塚原 正俊 塚原 恵子 平良 英三
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.577-583, 2017
被引用文献数
1

<p>泡盛,4-ビニルグアイアコール(4-VG)およびバニリンの標準試薬の蛍光指紋を測定した.泡盛サンプルの蛍光指紋は,励起/蛍光波長が254.3/290.4,254.3/338.0および296.2/340.3nmの3つの蛍光ピークを有していた.後二者はサンプルの熟成期間の長いほど減少する傾向があった.励起波長300-350,蛍光波長400-450nm付近の蛍光強度は弱かったが,熟成期間の長いほど増加する傾向があった.蛍光指紋データの主成分分析により,新酒と古酒が主成分スコアプロット上で明確に分離された.一方,酒造所間の明確な差異は観察されなかった.減圧蒸留で製造されたサンプルは,熟成期間にかかわらず,常圧蒸留された新酒の近くに位置していた.泡盛,標準試薬の蛍光指紋とおよび主成分ローディングのピーク位置を比較すると,これらのピークは6つのグループに分類できることが明らかになった.そのうち,2つのグループは4-VGの,他の2つはバニリンの蛍光に由来することが分かった.これらの結果から,蛍光指紋により貯蔵期間等の泡盛品質を簡易かつ迅速に評価し,消費者への情報提供や工程管理に応用できる可能性が示唆された.</p>