著者
安藤 貞 西田 武弘 石田 元彦 河智 義弘 加味 亜希子 瀬 寿美子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.142-145, 2001-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12
被引用文献数
3 10

乳牛の飼料にシナモン,バジル(ハーブミックス1)及びキャラウエイ,ローズマーリー(ハーブミックス2)からなるハーブミックスを乳牛に給与したところ,1期では牛乳中へハーブ成分の移行が確認され,ハーブミックス1では牛乳臭が低下するなどの風味の改善がみられたが,ハーブミックス2では風味の改善がみられなかった.2期では牛乳中へハーブ成分の移行が確認されなかった.
著者
江口 智美 北元 憲利 鈴木 道隆 小河 拓也 吉村 美紀
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.711-717, 2013-12-15 (Released:2014-01-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

水挽条件のクリアランス20~60μm程度,回転数40~800rpmの範囲で9種の白玉粉を調製し,白玉粉の粒子の特性および分散糊液の特性を比較検討した.その結果,一般成分と損傷澱粉率にほとんど差がなく,MV 4.8~12.1,スパン1.5~3.5で,粒形態の異なる白玉粉が調製され,経験的に選択された現状の製品調製条件が粘弾性の制御に最適な水挽条件であったことが示唆された.現状の調製条件では,粒子径のばらつきが少なく,澱粉単粒が分散した白玉粉が得られ,その分散糊液は,澱粉濃度の低下に伴い粘弾性が減少する傾向にあったことから,澱粉濃度の調整による粘弾性の制御が容易であることが示唆された.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 米田 千恵 風見 由香利 西成 勝好 中村 好宏 馬場 康維 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.488-502, 2007-11-15 (Released:2007-12-31)
参考文献数
19
被引用文献数
4 8

前報2)の調査データを用いて,性別,年齢層別,調査地点別に消費者のテクスチャー語彙およびその中核となる用語を求めた.また,ロジスティック回帰分析によって用語の認知度に及ぼす人の属性の影響を調べた.その結果,以下の結果を得た.(1)各属性の各区分における消費者のテクスチャー語彙およびその中核となる用語を得た.(2)日本語テクスチャー用語445語について,用語の認知度に及ぼす人の属性の影響が明らかになった.(3)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,男性よりも女性の方が多かった.女性の方がテクスチャーを表現する語彙が豊富であることが示唆された.女性の方が認知度の高い用語には“もそもそ”,“もったり”等がみられた.(4)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,高い年齢層の方が低い年齢層に比べて多かった.時代による影響と世代による影響が考えられた.年齢層の高い方が認知度の高い用語には“かゆ状の”,“ぶりんぶりん”等,一方,年齢層の低い方が認知度の高い用語には“ぷにぷに”,“シュワシュワ”等がみられた.(5)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,首都圏の方が多かった.首都圏の方が認知度の高い用語には,“ぼそぼそ”,“ぽくぽく”等,一方,京阪神地区の方が認知度の高い用語には“にちゃにちゃ”,“もろもろ”等がみられた.これらには方言の影響が推察された.以上の結果は,消費者を対象とした官能評価,質問紙調査および面接調査の設計の際に,また,消費者への情報発信を計画する際に重要な情報を提供する.さらに,食嗜好調査や食文化研究の考察の際にも有用な知見であると考えられる.
著者
菅原 悦子 米倉 裕一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.323-329, 1998-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
13
被引用文献数
3 10

味噌は原料麹の種類や,味,色の濃淡によって区別され,それぞれ特徴的な香気を持っている.そこで,大豆と米から製造される3種類の米味噌,赤色辛口系米味噌・淡色辛口系米味噌・米甘味噌と,大豆と大麦から製造される麦味噌,大豆のみから製造される豆味噌の香気成分の組成を明らかにし,5種類の味噌の香気形成への原料や製造工程の影響について検討した.香気濃縮物は5種類の味噌,それぞれ8点ずつ合計40点から調製し,ガスクロマトグラフとガスクロマトグラフーマススペクトロメトリーを用いて分析し各香気成分の濃度を算出した.求めた濃度を変数として,統計的に処理した.(1) 5種類の味噌間のガスクロマトグラムのパターン類似率は赤色辛口系米味噌,淡色辛口系米味噌,麦味噌の3種間では極めて高かった.しかし,これら3種類の味噌と豆味噌,米甘味噌の類似率は低かった.(2)赤色辛口系米味噌と淡色辛口系米味噌の比較では有意差が認められた香気成分は1種類のみで両者は極めて類似した香気組成をもつことが判明した.米甘味噌と赤色辛口系との比較では12種類の香気成分で有意差があった.米麹を用いて製造される味噌では,特に発酵過程の有無が香気の特徴を大きく左右することが示唆された.(3) 赤色辛口系米味噌では麦味噌,豆味噌よりフェノール化合物とピラジン化合物の濃度が有意に低かった.豆味噌では赤色辛口系米味噌や麦味噌よりHEMFなどの酵母によって発酵過程で形成される香気成分の濃度が有意に低かった.原料とする麹の種類によって形成される香気成分の種類に差が生じることが示唆された.(4) 4-ethylguaiacolは麹の違いによる,米味噌と豆味噌・麦味噌の香気を判別するのに重要な成分であり,HEMFとmethionolは酵母による発酵の過程を示す重要な成分であることが示唆された.それぞれ特徴的な香気を有するこれら3成分の組み合わせと濃度が各種味噌の香気特性に大きな影響を与えると判断された.
著者
逢阪 江理 田中 八壽子 武士末 純夫 開 俊夫 西村 理子 玉井 敬久
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.521-526, 2015-11-15 (Released:2015-12-31)
参考文献数
16
被引用文献数
3

大麦の一種であるはだか麦(マンネンボシ)を使ったパンの開発を行った.はだか麦をピンミルにて粉砕し0.2mmの篩を通してはだか麦粉を調製し,その特性と製パン性についての評価を行った.製パン試験では,はだか麦粉をグルテンと8 : 2で混合し,製パン性を評価した.その結果, (1)はだか麦粉の特徴として,強力粉と比較して,粘度が高いこと,吸水量が多いことが挙げられた.また,これらの特性ははだか麦中の食物繊維に由来することが示唆された. (2)はだか麦粉とグルテンを用いて製パン試験をしたところ,はだか麦の製パン性を低下させる原因として食物繊維が考えられた.そこで,セルラーゼ(セルロシンAC40)を添加したところ,強力粉のパンと同様の比容積と柔らかさを持つパンを作製することが可能となった. (3)開発したはだか麦パンは食物繊維が小麦パンの約1.5倍含まれており,日常の食生活で食物繊維を取り入れる効果的な手段になることが分かった.
著者
高橋 義宣 河原崎 正貴 星野 躍介 本多 裕陽 江成 宏之
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.428-431, 2008-09-15 (Released:2008-10-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4

アンセリンは回遊魚や渡り鳥など持久力を必要とする動物の筋肉に多く存在することが知られており,マウスの強制遊泳試験によりその抗疲労効果が確認されている.サケ肉より抽出したアンセリン含有サケエキス(SEAns)を用いてヒト臨床試験を行い,疲労の低減に関する効果を検証した.SEAns摂取群は対照群と比較して,筋肉疲労の血中マーカーであるクレアチンホスホキナーゼおよび精神ストレスの血中マーカーであるコルチゾールの有意な減少,さらに運動継続時間の減少を抑制する傾向も確認された.以上の結果より,SEAnsには筋肉疲労,及び疲労感(精神ストレス)を低減する効果があると考えられた.
著者
大久 長範 堀金 明美 大能 俊久 吉田 充
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.522-527, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

1) 稲庭うどん, ナンバーワンひやむぎ, 讃岐うどんの圧縮強度 (低圧縮H1, 高圧縮H2) 及びその比 (H2/H1) を求めた.2) 茹で30分後のH2は, ナンバーワンひやむぎで1.9N, 讃岐うどんで2.5Nでに対し, 稲庭うどんでは4N~7Nと大きな値であった. 時間の経過とともにH1とH2は変化するものもあったが, H2/H1比はほぼ一定の値となり, No1ひやむぎが約10, 讃岐うどん約8, 稲庭うどんが13~18であった.3) 茹でた稲庭うどんをMRIにより観察したところ, 空隙があり, 空隙には水が進入していない状態が6時間に渡り維持された. ナンバーワンひやむぎや讃岐うどんにはこのような空隙が観察されなかった.
著者
三輪 章志 黒田 晃 織田 秀晴 高谷 友久 西成 勝好
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.32-39, 2002-01-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1 4

品種別米の食味を簡易に評価する方法として,精米の吸水率測定法の検討を行った.(1) 官能試験の評価が異なる9品種の精米を含水率調整したのち,7通りの浸漬時間(10, 20, 30, 40, 50, 60, 120分)で15℃の水に浸漬して吸水率を測定し,官能試験と比較したところ,官能試験の各項目との相関が最も高かったのは60分浸漬吸水率であった.(2) 60分浸漬吸水率は,3年間いずれの年でも官能試験の各項目との相関が0.1%水準で有意であり,9品種の被害・未熟粒を含んだ試料および整粒100%の試料の吸水率と官能試験各項目との相関においても,整粒歩合に関わらず高い相関を示した.(3) 90%と70%精米をそれぞれ6通りの浸漬時間で吸水試験を行った吸水曲線を比較すると,90%精米で認められる10分浸漬時の品種による吸水率の差が70%精米では認められなかった.この結果より短時間浸漬した品種別吸水率の違いは,90%精米の外側の層(70~90%)に含まれる成分及び組織構造に影響されていると示唆された.(4) 米の理化学特性(タンパク質含量,Mg/K・N,アミロース含量,粗脂肪含量,アミログラフのブレークダウン値)の60分浸漬吸水率への影響を検討したところ,アミロース含量が少ない品種ほど高い60分浸漬吸水率を示す傾向が認められた.以上のことから,60分浸漬吸水率は,品種ごとの吸水特性を明確・安定的に測定でき,米飯の食味評価法として利用可能な方法である.
著者
広瀬 直人 前田 剛希 恩田 聡 正田 守幸 宮城 一菜 和田 浩二 太田 英明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.81-89, 2017
被引用文献数
6

<p>シークワシャー搾汁残渣を原料として,市販シークワシャー果汁と同程度の7.5mg/100mLのノビレチンを含有するシークワシャー抽出酢の製造条件を開発した.</p><p> (1)搾汁残渣より種子とじょうのう膜を除去して搾汁果皮を調製し,乾燥処理を行わずに醸造酢で抽出すると,ポリメトキシフラボン類を含有し,リモニンが少なく苦味が弱い抽出酢が得られた.</p><p> (2)搾汁果皮20% (w/w)と醸造酢80% (w/w)を用いると,ノビレチンを7.5mg/100mL含有する抽出酢が得られた.抽出処理の破砕回数は10秒間で4∼5回が適した.</p><p> (3)抽出酢を常温保存すると,ポリメトキシフラボン類は安定であったが,モノテルペン類は急激に減少し,モノテルペンアルコール類は緩やかに減少した.</p>
著者
古谷 規行 小川 昂志 藤井 千晃 川添 禎浩
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.35-43, 2016-01-25 (Released:2016-03-01)
参考文献数
35

高イソフラボン含有黒大豆 ‘高イソ黒65号’ は市場評価の高い ‘新丹波黒’ のイソフラボン含量を向上させた品種である.‘高イソ黒65号’ の煮豆や豆腐などを調製して,加工品のイソフラボンおよびアントシアニン含量を調査した.さらに子実や加工品の抗酸化能を調査した.‘高イソ黒65号’ は子実のイソフラボン含量が532.4 mg/100g-DWで,‘新丹波黒’ の2倍以上であった.‘高イソ黒65号’ の加工品のイソフラボン含量は ‘新丹波黒’ の2倍以上で有意に高かった.調理によりマロニル化配糖体が減少しグリコシドが増加した.調製方法により加工品のイソフラボン含量や組成が異なり,蒸し豆はイソフラボンの損失が抑えられ,豆腐ではアグリコンの生成量が多くなった.また,アントシアニン含量は子実や加工品で ‘新丹波黒’ と遜色ない結果であった.‘高イソ黒65号’ の子実や加工品の機能性は子実およびいずれの加工品においても ‘新丹波黒’ よりH-ORAC値が高くなった.このように丹波黒大豆系品種 ‘高イソ黒65号’ は,イソフラボンおよびアントシアニン含量が高く,機能性が高い大粒黒大豆で,その特性を生かす加工品として蒸し豆や豆腐が有望と考えられた.
著者
飯山 悟 池田 知宏 都甲 潔 八尋 美希
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.615-622, 1997-09-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

日本古来の調味料である醤油の味の客観的評価を目指し,味覚センサを用いた醤油の測定を行った.(1) 合成基準液を作ることにより,識別能力ならびに再現性のよい測定法を確立することができた.(2) 各地から集めた25種の醤油を測定したところ,濃い口,うす口,さしみの3種に分類できなかったが,同一メーカーの醤油は味が比較的似ていることを示唆する結果が得られた.(3) 同一メーカーの醤油の類似性は,アミノ酸分析や官能検査でも確かめることができた.それぞれの醤油メーカーの味の独自性が強いのは醤油製造の伝統に基づくものと考えられる.今後,味覚センサを用いて醤油の製造工程の管理や最終製品の品質管理の簡易迅速化が可能になるものと期待される.
著者
小林 佳祐 中村 卓
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.412-417, 2013-08-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究ではデュラム澱粉にパスタ乾燥条件をモデルとした高湿加熱処理を行った.加熱温度80°C,相対湿度70%以上の高湿加熱処理によってデュラム澱粉の糊化特性が変化すること,澱粉ゲルの力学物性と食感が変化することを明らかにした.高湿加熱処理によりDSCの糊化ピーク温度の上昇,融解エンタルピーの減少,X線回折の総結晶化度の減少,RVAの最高粘度が減少した.これらの変化は湿熱処理と同様の変化であることから高湿加熱処理は湿熱処理と同様の構造変化を澱粉粒に引き起こすと考えられる.さらに,澱粉粒表面の凹凸が消失し,澱粉糊化度が増加したことから澱粉が部分糊化したと考えられる.澱粉ゲルの官能評価にて高湿加熱処理の加熱温度,相対湿度が高い方がかたさ,歯切れのスコアが高くなり,付着性のスコアが低くなった.本研究の結果からパスタ乾燥工程は乾燥だけでなく,澱粉自体が加工(膨潤抑制) される場である可能性が示された.また,超高温乾燥パスタが硬くなる原因として従来報告されているタンパク質の高分子量化だけでなく,澱粉自体の膨潤抑制も寄与している可能性が示された.
著者
大久 長範 大能 俊久 森 勝美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.316-318, 2003-07-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
12
被引用文献数
7 16

(1) 玄米,発芽玄米及び籾発芽玄米の遊離アミノ酸含量とγ-アミノ酪酸含量には正の相関(r=0.928)が認められた.(2) あきたこまちを原料とした試料がγ-アミノ酪酸含量が高く,ミルキークイーンの玄米を原料とした試料はアラニン含量が高いという傾向があった.(3) 籾発芽した種子を,50°Cと60°Cで処理したこころ,遊離グルタミン酸が減少し,遊離アラニンが増加した.
著者
大澤 克己 松井 淳一 丸田 正治 森田 祐子 斉藤 信博
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.585-590, 2015-12-15 (Released:2016-01-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

長野県木曽地域の伝統食品である無塩乳酸発酵漬物すんきから植物由来乳酸菌を分離し,ヨーグルト製造に適した乳酸菌を選抜を行い,その乳酸菌を用いたヨーグルトが開発できた.初発菌数1.0×108cfu/ml,発酵時間24時間以内で良好なカードが形成でき,牛乳以外に他の乳酸菌増殖用添加物を使用しないで商業ベースでヨーグルトを製造することを可能にした.
著者
任 恵峰 包 航 遠藤 英明 林 哲仁
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.246-252, 2001-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
6 15

水溶性キトサンを用いて土壌改良を行うと共に,希釈水溶液を葉面散布剤として用いた,無農薬有機栽培野菜の抗酸化性・抗菌性およびフラボノイド含量について検討した.1) 抗酸化性:8種の無農薬野菜のうち,ホウレンソウ,コマツナ,チンゲンサイ,キャベツ,ネギ,およびプロッコリの6種では,一般野菜と比べてt検定の危険率5%で有意差が認められた.2) 抗菌性:コマツナはサルモネラに対して,キャベツおよびダイコンは腸炎ビブリオに対して,一般野菜より強い抗菌性を持っていた.3) フラボノイド:ミリセチン,ケルシトリン,ヘスペリチンの3種は,いずれも2種以上の野菜で無農薬栽培品における濃度の方が高かった.中でもケルシトリンはキャベツ,ブロッコリー,ダイコン以外の全検体から検出され,しかも総て無農薬栽培野菜の方が1.3倍-10.4倍高く,95%の信頼限界で有意差が認められた.
著者
恩田 匠 乙黒 親男 飯野 修一 後藤 昭二
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.407-417, 1997-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
29
被引用文献数
3

酵母により変敗した梅加工品の品質変化を調べ,さらに酵母汚染試料から酵母の分離を行い,得られた酵母菌株の同定と,その各種食塩濃度および各種pHにおける生育挙動ついて検討し,以下の結果を得た.(1) 酵母汚染した梅加工品は,主要成分である有機酸が減少しており,それに伴いpHが上昇していた.また,酵母汚染した梅漬は,硬度低下,あるいは組織崩壊を起こし,硬さを左右する構成ペクチンの分解が認められた.このペクチン分解にも産膜酵母が関与していることが考えられた.(2) 産膜汚染試料から分離した酵母25菌株は,Debaryomyces hansenii 4菌株,Pichia anomala 1菌株,Pichia membranaefaciens 3菌株,Torulaspora delbrueckii 1菌株,Candida jamata 1菌株,Candida krusei 3菌株,Candida pelliculosa 3菌株,Kloeckera apiculata2菌株,以下未同定の3菌種Candida sp. UME-A 2菌株,Candidasp. UME-B3菌株,Candida sp. UME-C 2菌株の5属11種に同定された.(3) 分離酵母の各種食塩濃度および各種pHにおける生育を検討した結果,P. anomala, C. famata, Candtda sp. UME-AおよびCandida sp. UME-Bと同定された菌株は食塩濃度20%のYM液体培地に良好に生育が可能な著しい耐塩性(中等度好塩性)とpH 2.0の梅酢液にも生育良好な低pH耐性を示した.(4) 低pH耐性を示す菌株,特にCandida sp. UME-B YITC 114株は,梅酢液中で高い有機酸の資化能を示した.これらの有機酸資化能の強い酵母が,梅漬類における主要産膜酵母であると思われた.
著者
小田原 誠 荻野 裕司 瀧澤 佳津枝 木村 守 中村 訓男 木元 幸一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.81-86, 2008-03-15 (Released:2008-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

大麦黒酢,大麦糖化液,酢酸を高血圧自然発症ラット(SHR)に与え,大麦黒酢が血圧に与える影響について調べた.その作用機序の検討としてin vitroにおけるアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性の測定を行った.また,酸度とエキス分を等しくした大麦黒酢と米黒酢について,SHRを用いた単回投与試験を行い,血圧降下作用を比較した.(1)単回投与試験,連続投与試験のいずれにおいても,大麦黒酢は蒸留水(対照)と比較して有意に血圧を降下させることが示された.これにより,大麦黒酢は血圧降下作用を有することが明らかとなった.(2)連続投与試験において,酢酸だけでなく大麦糖化液においても血圧降下作用が認められたことから,大麦黒酢の血圧降下作用は,酢酸と大麦由来の成分の両方によるものと考えられた.(3)大麦糖化液ならびに中和した大麦黒酢においてACE阻害活性が認められたことから,大麦黒酢には大麦由来の血圧降下作用物質が含まれ,ACEを阻害することで血圧上昇を抑制していることが示された.(4)酸度とエキス分が等しくなるように調製した大麦黒酢と米黒酢について,SHRを用いた単回投与試験を行った.大麦黒酢と米黒酢はどちらも対照と比較して有意に血圧が降下しており,今回の実験では大麦黒酢の方が血圧降下の程度が高かった.このことから,大麦黒酢は米黒酢と同等以上の血圧降下作用を有することが示された.
著者
小関 成樹 伊藤 和彦
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.907-913, 2000-12-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
3 9

強酸性電解水によるカット野菜(キャベツ,レタスおよびキュウリ)の殺菌において,強アルカリ性電解水を前洗浄に用いた場合の影響について検討した結果,以下の知見が得られた.(1) キャベツおよびレタスを対象にした場合,強酸性電解水による殺菌が1分間のときには,強アルカリ性電解水で前洗浄することによって強酸性電解水による単独5分間の殺菌効果と同等以上の効果が示された.このことから強アルカリ性電解水の利用により処理時間の短縮が可能であることが示唆された.(2) カットキャベッおよびカットキュウリを対象にした場合,強酸性電解水による殺菌において,強アルカリ性電解水などで前洗浄をすることにより,殺菌時の強酸性電解水の性能低下(ORP,ACCの低下)を抑制することが示された.

1 0 0 0 OA ナイシンA

著者
島 純
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.37-37, 2008-01-15 (Released:2008-02-29)
参考文献数
3
被引用文献数
1

ナイシンAは,バクテリオシンと総称される抗菌性ペプチドの1種であり,乳酸球菌Lactococcus lactisにより生産される.2005年にCotterらが提唱した分類に従うと,バクテリオシンは抗菌特性や化学構造からクラスIおよびクラスIIに分類される.ナイシンAが含まれるクラスIバクテリオシンは,ランチビオティクと呼ばれる細胞膜攻撃性の耐熱性低分子ペプチド(<5kDa)である.ランチビオティクの特徴は,デヒドロアラニン,デヒドロブチリン等の修飾アミノ酸を含むことである.また,デヒドロアラニン,デヒドロブチリンの一部は,システインとの分子内縮合によりモノスルフィド結合を有するランチオニンや3-メチルランチオニンを形成する.ナイシンAの抗菌スペクトルは,他のクラスのバクテリオシンと比較して広く,他種乳酸菌やグラム陽性の食中毒細菌の多くに抗菌活性を示す.また,ナイシンAと部分的に構造が異なる天然類縁体であるナイシンZ及びナイシンQの存在が報告されている.ナイシンAの化学構造を模式的に図1に示した.一方,クラスIIバクテリオシンは,ランチオニン等の修飾アミノ酸を含まない低分子ペプチド構造を有するバクテリオシンの全てを包括するとされている.乳酸菌の生産するバクテリオシンが注目される大きな理由は,バイオプリザベーションへの応用の可能性が大きいことにある.有害食品微生物の制御の代表的手法は加熱であるが,全ての食品素材に加熱処理を適用することは出来ない.その場合には,食品保存料の使用が必要となるが,消費者の安全性指向の高まりにともない,化学合成された食品保存料の使用を敬遠する傾向にある.このようなことから,生物由来の安全な抗菌作用を有する天然抗菌物質を活用して,有害食品微生物を制御しようとするバイオプリザーベーション技術の開発が期待されている.バイオプリザーベーションに用いる保存料はバイオプリザバティブと呼ばれ,食経験が十分にあることや有害作用がないことが確認されている必要がある.ナイシンA等を生産する乳酸菌は,ヨーグルトやチーズ等の発酵乳製品や味噌,醤油等の発酵食品の製造に用いられてきており,長年に及ぶ食経験を有していることから,安全が確保されているGRAS(Generally recognized as safe)微生物と認識されている.そのような観点から考えて,ナイシンAをはじめとする乳酸菌バクテリオシンは,バイオプリザバティブとして最適な条件が揃っていると言える.バクテリオシンの食品への利用には,様々な手法が考えられる.1つは,精製したバクテリオシンを食品添加物として利用する手法である.また,バクテリオシン生産菌を発酵食品のスターターとして用いることで,発酵を行いながらバクテリオシンを生産させて有害細菌の増殖を防ぐ手法も考えられる.これらの方法ばかりでなく,食品の種類や形態等に合わせて,多様なバイオプリザベーション手法の構築が可能である.ナイシンAを代表とするクラスIバクテリオシンは,バイオプリザバティブとしての活用が最も期待されている天然抗菌物質であると思われる.実際に,ナイシンAは世界50カ国以上で既に食品保存料として使用されている.我が国においては,現段階ではナイシンAの食品添加物としての使用は認可されていないが,食品安全委員会においてナイシンAに係る食品健康影響評価が進められており,今後の動向が注目される.バクテリオシン生産能を含めた乳酸菌の潜在機能を有効活用することにより,食品の安全性向上が強く期待できる.