著者
上野 真理子 寺島 晃也 多田 耕太郎 山口 静子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.118-127, 2007-03-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

富山県の伝統食品かぶらずしの品質と食味特性の関係を明らかにするため,県下の代表的な10社の市販品の理化学的分析と官能評価を行い,主成分分析による総合的な解析を行った.市販品は微生物数から推察される発酵状況や有機酸,糖組成に差があり,発酵を主とする伝統的製法タイプ,発酵度合い不十分タイプ,甘味添加を主とする食味調整タイプの3つに大別された.さらに,理化学特性と官能特性を総合した主成分分析の結果,消費者には 2つの価値観が同等の重みを持って存在することが明らかになった.1つは甘味中心に調整された食味を高く評価する価値観で,もう1つは伝統的製法に基づき熟成された食味を高く評価する価値観であり,少なくともいずれかの価値観を満たさない食味は消費者嗜好に適合しないことが示唆された
著者
佐藤 秀美 畑江 恵子 島田 淳子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.904-909, 1996-08-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
6
被引用文献数
1

食パンを赤外線ヒータで加熱した時の内部の水分分布が経時的にどのように変化するかを,特にクラムに着目し,調べるとともに,この水分分布の変化に及ぼすヒータの放射波長特性の違いの影響を検討した.その結果,以下のことが明らかになった.(1) 上下2層に分けて測定したクラムの水分含量はともに,加熱直後に一旦低下し最低値をとった後,加熱前の水分含量よりも高くなった.この加熱過程において,上層の方が下層よりも水分含量は早く,しかも大きく変化した.(2) ヒータの放射波長特性は食パン内部の水分分布に影響を及ぼした.長波長領域の赤外線を放射するヒータで加熱した場合ほど,食パンの部位により,水分含量は大きく異なった.
著者
相良 泰行
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.429-443, 2009-08 (Released:2011-03-05)
著者
柴田 真理朗 杉山 純一 蔡 佳瓴 蔦 瑞樹 藤田 かおり 粉川 美踏 荒木 徹也
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.196-201, 2011-05-15 (Released:2011-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
6 3 6

糊化させた米のパンの品質への影響を評価するため,小麦粉パン,米粉パンに加え,糊化させた米粉を添加したパン(糊化米粉パン),お粥を加えたパン(お粥パン)を調製し,それぞれの形状,粘弾性係数,および気泡パラメータを計測した.(1) お粥パンが最も膨張し,糊化米粉パンも小麦粉と同等に膨張したことから,糊化処理した米の添加によってパンの膨張が促進されることが分かった.(2) 糊化させた米を添加したパンは,小麦粉,米粉パンより粘弾性が低い,つまり柔らかいことがわかった.(3) 4種類のパン試料の気泡構造は同一であったことから,粘弾性の差は気泡壁(固相)の違いに依るものと推察された.以上より,糊化処理をした米粉または米の配合が15%の場合,グルテンなどの品質改良剤や,特別な前処理なしで従来の小麦粉100%のパン,または米粉パンより膨張性が良く,柔らかい食感を持つパンを調製することが可能であることが確認された.
著者
岩附 聡 木島 佳子 塩野谷 博
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.236-244, 2011-06-15 (Released:2011-07-31)
参考文献数
44
被引用文献数
2 3

ヒト病原菌に対する抗体の摂取により,腸内細菌叢の改善が期待できるが,その情報は乏しい.我々は,ヒト病原菌に対するミルク由来の自然抗体を多く含む乳清蛋白を中高年健常人ボランティアに投与し,糞便細菌叢の変化をT-RFLP法とFISH法により解析した.T-RFLP法では,腸内細菌は29のOTU(菌の分類群)に分けられ,ミルク抗体の3週間の摂取により減少した菌はOTU369(クロストリジウムクラスターIV),OTU469(バクテロイデス),OTU853(バクテロイデス)であった.また,増加した菌はOTU366(バクテロイデス),OTU443(菌名未定),OTU995(クロストリジウムサブクラスターXIVa)で,ビフィズス菌,乳酸桿菌その他には影響が見られなかった.FISH法による解析は,ミルク抗体の影響を8週にわたり行った.全細菌数およびビフィズス菌には影響しなかった.大腸菌,ディフィシル菌,ウエルシュ菌は減少したのに対し,バクテロイデスとプレボテーラ,フラジリス菌,乳酸桿菌は増加した.ミルク抗体の糞便中への回収を測定すると,摂取したミルク抗体320mgの800μg (0.24%)が糞便中に回収された.ミルク抗体による腸内細菌叢への影響をエンドトキシンのトランスロケーション,関節リウマチの改善作用との関係について考察した.本研究を行うにあたり,WPCの自然抗体の研究にご協力いただきました女子栄養大学衛生学教室桑原祥浩教授・上田成子教授,本論文の作成にご助言いただきましたChondrex Inc. 寺戸国昭博士,また,本研究に参加していただいたボランティアの皆様に感謝申し上げます.
著者
石川 健一 加藤 丈雄 小宮 孝志
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.361-364, 2003-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1

発酵漬物の製造において,乳酸菌を添加した漬物を検討した.スターターカルチャー用乳酸菌の選択と発酵条件について,以下のような結果を得た.(1) 36株の乳酸菌から発酵漬物に適したものを検索したところ,生育速度が速いこと,好ましい酸味や香りを生産することなどから,8菌株を選択した.(2) 最も好ましい香気を生成した,Leuconostoc paramesenteroides DA-1株について性質を検討した結果,最適発酵温度は10°Cで,食塩0∼3%,グルコース無添加のモデル漬物中でよく発酵した.(3) 大根を用いて低食塩の漬物を調製した結果,Leuc.DA-1株を接種することで,腐敗や変色がおこらず,梅酢様の良好な香気,うま味を生成した.
著者
塚越 芳樹
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.548-551, 2014

平成23年度の生産工程プロ参加試験室に対して技能試験を行い,その回答結果を得た.多くの場合は試験結果のzスコアは満足であったが,疑わしいまたは不満足であった試験室もあった.そのような参加者は,初めて参加する試験者にも多かったが,連続して同一の試験室が外す場合や,前年度は満足な結果が得られたにも拘わらず翌年度の結果のzスコアは疑わしいまたは不満足であるなど,その様子は様々であることが明らかになった.また,細菌数と大腸菌群数では報告値の分布が異なっており,zスコアの算出のもとの<i>σ</i><sub>p</sub>として,NIQR法によるロバスト推定量とFEPASが採用している経験則により固定する場合を比較すると,大腸菌群数ではほぼ同様のzスコアになるが,細菌数では大きく異なることが分かった.本技能試験では試料の保存について細かい条件を置かなかったため,安定性を担保している技能試験に比べて<i>σ</i>が大きくなっている可能性があるが,その他の技能試験と比べて結果に大きな差異はなかった.技能試験は,研究成果および試験結果の信頼性確保のために有用であったことと共に,その継続が必要であることが確認された.
著者
柴原 裕亮 岡 道弘 富永 桂 猪井 俊敬 梅田 衛 畝尾 規子 阿部 晃久 大橋 英治 潮 秀樹 塩見 一雄
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.280-286, 2007-06-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
16
被引用文献数
7 15

ブラックタイガー由来精製トロポミオシンを免疫原として,甲殻類トロポミオシンに特異的に反応するモノクローナル抗体を作製し,甲殻類トロポミオシン測定用のサンドイッチELISA法を確立した.本法では,甲殻類に分類されるえび類,かに類,やどかり類,おきあみ類のトロポミオシンとは交差率82~102%と全般的に反応したが,軟体動物に分類されるいか類,たこ類,貝類トロポミオシンとの交差率は0.1%未満であった.また,食品全般においても甲殻類以外で反応は認められなかった.検出感度は甲殻類由来総タンパク質として0.16ppmであり,食品表示に求められる数ppmレベルの測定に十分な感度であった.再現性もCV値10%未満であったことから,精度よく測定できると考えられた.さらに,食品由来成分の存在下においてもマトリックスの影響を受けないこと,加熱により変性を受けた場合にも測定可能なことを確認した.したがって,本法は甲殻類由来トロポミオシンに対して特異的であり,加工食品における甲殻類検知法として使用可能であると考えられた.
著者
山田 貴子 飯田 哲郎 林 範子 大賀 浩史 大隈 一裕 何森 健
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.263-267, 2010-06 (Released:2011-03-28)

D-プシコースの体脂肪蓄積抑制効果に関して、ラットを用いて検討した。4週齢Wistar系雄性ラットに異性化糖食または異性化糖食にD-プシコースを1.3%、2.6%、3.9%、5.2%添加した飼料を5週間自由摂取させた。体重、摂餌量、脂肪重量および各種血液生化学的指標に及ぼす影響を検討した結果、D-プシコースを5.2%摂取した群は、異性化糖食と比較して、体重において有意な低値を示した。腎周囲脂肪および脂肪組織重量に関しては、用量依存的な低下が認められた。これらのことから、D-プシコースは異性化糖に対しても体脂肪蓄積抑制効果を示すと考えられた。
著者
山岸 賢治 老田 茂 木村 俊之 岩下 恵子 新本 洋士
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.456-458, 2007-10-15 (Released:2007-11-30)
参考文献数
9

生キクラゲ水抽出液の50~70%硫安沈殿物は,マウス前駆脂肪細胞3T3-L1のトリグリセライド蓄積を阻害した.さらに陰イオン交換カラムクロマトグラフィーで部分精製した画分は,3T3-L1の分化を抑制した.この活性画分には,分子量10000以上のタンパク質が複数認められた.
著者
平良 淳誠 大嶺 和可奈 大見 のり子 平良 和代 永田 純一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.295-300, 2012-06-15 (Released:2012-08-04)
参考文献数
22
被引用文献数
1

沖縄在来系統由来9品種と比較品種系統2品種のカンショ茎葉について,LPS刺激したRAW264.7細胞より誘導される一酸化窒素ラジカル(NO)産生に対する抑制作用を評価した.全品種のカンショ茎葉抽出物にNO産生抑制作用が認められ,同様の葉野菜であるホウレンソウやエンサイよりも比較的高活性であった.NO発生剤NOR3を用いて,カンショ茎葉抽出物のNO消去活性を検討したところ,その主要ポリフェノールであるカフェオイルキナ酸誘導体の総含量と正相関したことから,NO産生抑制メカニズムとしてNO消去作用が寄与している可能性が示唆された.本研究からカンショ茎葉は,過剰なNO産生に伴う様々な炎症性疾患の予防機能性食品として有用食素材になることが示された.
著者
中田 勇二 下田 満哉 筬島 豊
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.848-854, 1997-12-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
7
被引用文献数
1

市販品,及び試作品の中からフレーバー特性の異なる29種類のごま油の官能評価を行い,得られた結果を主成分分析により解析し,各々のごま油のフレーバーを客観的に特徴付けた.(1) ごま油のフレーバーを特徴付ける用語として抽象的用語37語,具体的用語26語,計63語が挙げられた.(2) ごま油フレーバーの評価用語として適正であるかどうかみる為にアンケート調査を行い,さらには専門パネルによる実試料の評価に基づいた評価用語のスクリーニングと新たな評価用語の追加を行った結果,香ばしい,劣化した,強い,苦い,軽い,複雑な,後に残る,まろやかな,渋い,ナッツ様の10語をごま油フレーバーの評価用語として選択した.(3) 29種類のサンプルについて,専門パネルにて評価用語10語について6段階で官能評価を行った.得られた評価データを主成分分析で解析したところ,29種類のごま油はそのフレーバー特性に基づいて9つのグループに分けることができた.(4) 熱風焙煎試作品は苦い,渋い,後に残るという共通の特徴を有しており,焙煎強度が高いほど,その傾向が強かった.遠赤外線焙煎試作品は,軽い,まろやかな,ナッツ様,複雑な,香ばしい特徴を有しており,焙煎強度が高いほど,複雑な,香ばしい風味が増し,低いほど軽い,まろやかな風味が増した.
著者
進藤 久美子 安井 明美 大澤 良 堀田 博 鈴木 東子 金子 勝芳 鈴木 建夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.449-452, 2001-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

玄ソバについて古くから行われている寒ざらし処理が,ソバ殻を除いた可食部の成分組成に与える影響を検討し,そば切りの品質向上効果にかかわる伝承の実証を試みた.(1) 寒ざらし処理後も,タンパク質,脂質,炭水化物,灰分,無機質,食物繊維およびルチンについては,ほとんど溶出していなかった.(2) 寒ざらし処理により,全ポリフェノール量の低下および遊離アミノ酸組成の変動が認められ,遊離アミノ酸の中ではγ-アミノ酪酸(GABA)が2倍に増加していた.(3) 成分含有量に大きな変化は見られなかったが,ポリフェノール量と遊離アミノ酸組成の変化は,そば切りの品質向上の可能性を示していると考えられた.
著者
川上 いずみ 村山 伸樹 川崎 貞道 伊賀崎 伴彦 林田 祐樹
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.559-565, 2008-11-15 (Released:2008-12-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1 10

本研究ではそばの風味とテクスチャーに与える,保存温度の影響を官能評価と機器分析により確認し,食味保持に適した保存温度の確認と機器分析による客観的手法の確立を行った.石臼挽きソバ粉をクラフト包材に7日間異なる温度で保存し,官能評価と機器分析,味覚認識装置(味覚センサ),GC-MSクロマトグラフィ,テクスチャーアナライザによる分析で次のような知見が得られた.(1)官能評価では保存温度が高いと食味が低下し,苦味の増加が起こることが明らかとなった.しかしながら,保管温度5℃では苦味が強く異なる傾向を示しており,結露による水分変化により食味が変化することが明らかとなった.(2) 機器分析では味覚認識装置(味覚センサ),GC-MSクロマトグラフィ,テクスチャーアナライザによるいずれの分析でも,保存温度の違いによる食味の変化を確認できた.味覚センサでは保存温度による「苦味」,「酸味」,「渋味」を示唆するセンサ出力の変化が確認され(P<0.05)5℃保存サンプルでは「苦味」,「渋味」を示唆するセンサ出力で異なる挙動が確認できた.GC-MS分析では「そばの香り」と定義した香気成分は保存温度が高いほど減少し,保存温度が低い方が香りは保持されることが示唆された.テクスチャーアナライザでも5℃保存サンプルが最も食感がやわらかくなり,−18℃では硬さがあることが確認できた.(3) 官能評価と機器分析値との相関は,味覚認識装置(味覚センサ),テクスチャーアナライザで確認され,これらの方法がそばの食味の客観的分析法として有効であることが示唆された.テクスチャーアナライザの「抗張力」と食感「硬さ」との間で相関の可能性が示唆された.官能評価「酸味」は味覚センサの3chと0.63,4chと0.70,2chと0.74,5chと0.88という相関が確認できた.試料数nを増やし相関の精度を向上することで,味覚センサでそばの味の違いを判別できる可能性が示唆された.(4) そばの食味を維持するには保存温度が低い方が適していることか明らかとなり,クラフト包材で保存する場合5℃温度では結露の問題があることから−18℃の低温が適していることがわかった.
著者
鈴木 彌生子 國分 敦子 絵面 智宏 中山 和美
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-10, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2 3

本研究では,三陸産(45検体)·鳴門産(64検体)·中国(54検体)·韓国(46検体)において産地の明確な湯通し塩蔵ワカメを浜単位で入手し,炭素·窒素·酸素安定同位体比を用いて,産地判別の可能性を検証した.鳴門産については,炭素·窒素同位体比ともに,個体内変動·季節変動·地域変動が小さく,全般的に値が安定した傾向が見られた.また,鳴門産の窒素同位体比は10.7±1.1‰(平均値±標準偏差)となり,三陸産(1.4±1.9‰)·韓国産(0.5±1.6‰)·中国産(3.0±2.5‰)よりも有意に高い傾向が得られた.一部中国産については,炭素同位体比が低く,窒素同位体比が高くなる傾向が得られた.酸素同位体比は,韓国産が比較的高い値を示したが,日本·中国·韓国の平均値の差は2.1‰となり,地域差は小さかった.炭素·窒素同位体比の結果を用いて,鳴門産とその他(三陸·中国·韓国)の2群について判別分析を行った結果,判別関数を構築した試料について,正答率を計算すると,鳴門産は98.4% (64点中),その他産は99.4% (145点中)となった.交差検証法を用いて判別関数の精度を検証した結果,96.8%の鳴門産が正しく分類された.年変動といった検証が必要であるが,炭素·窒素同位体比によって,鳴門産を判別できる可能性が高いと考えられる.
著者
沢村 信一 原口 康弘 池田 博子 園田 純子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.304-309, 2010-07-15 (Released:2010-09-01)
参考文献数
8
被引用文献数
3 9 3

(1) 石臼抹茶,ボールミル抹茶,粗粉抹茶の中位径は,15~20μm,最大径は50μm以上であり,微粉抹茶,ジェットミル抹茶の中位径は,5μm以下,最大径は10μm以下であった.(2) ジェットミル抹茶の円形度は,石臼抹茶,ボールミル抹茶と比較して高く,円形度の違いが伸展性試験や流動性に影響を及ぼしていると推測された.(3) 伸展性試験は,粒度の微細なジェットミル抹茶の伸展性が粗い粒度の粗粉抹茶と比較して2倍以上良かった.また,触感においては,伸展性試験の結果以上に,微細さや粗さを感じた.(4) ジェットミル抹茶の流動性は,流動開始振動加速度が一定しており,流動速度や流量も一定であった.これに対して,微粉抹茶は流動開始振動加速度が一定せず,流動速度や流量も一定でなかった.これは,円形度が高いことに起因すると考えられる.(5) 微粉抹茶の起泡性は,粗粉抹茶と比べて非常に優れていた.泡沫の起泡性向上や安定化には,粒子が微細であるとこが重要であることが分かった.
著者
大澤 俊彦
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.728-735, 1995-09-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
北岡 桃子 岡村 暢子 一瀬 博文 後藤 雅宏
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.164-169, 2008-04-15 (Released:2008-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

FRIP法は,DNA中の既知のSNPsを検出する技術である.1つの品種に対して1組の蛍光ドナー/アクセプタープローブを用いることで,特定の種であるか否かを判別可能であり,解析時間も短く,高精度で解析できる特徴を持つ.本研究では,2色の蛍光プローブを用いたFRIP法により,太平洋産および大西洋産クロマグロの同時種判別技術を開発した.FITC標識した太平洋産クロマグロ識別用プローブおよびTAMRA標識した大西洋産クロマグロ識別用プローブを同一溶液中に混合した.6種のマグロサンプルからそれぞれ転写RNAを調製し,プローブとのハイブリダイゼーション反応を行ったところ,すべてのサンプルにおいて,一旦FRETによる蛍光の消光が確認された.さらに得られたDNA : RNAハイブリッド溶液にRNase Aを添加すると,ミスマッチの有無に応答して蛍光強度に変化が生じ,精度良く種を判別できた.同様の結果は,UV光を励起光として用いた目視判別用の濃縮反応液においても確認された.FRIP法は,簡易,迅速,高精度で安価な分析法として,様々な場面で利用されるものと期待される.
著者
伊藤 智広 伊藤 裕子 水谷 峰雄 藤城 克久 古市 幸生 小宮 孝志 樋廻 博重
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.339-344, 2002-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
24
被引用文献数
3 15

アズキ熱水抽出物(アズキ煮汁)の抗腫瘍活性及びその作用機構の一つであるアポトーシス誘導について検討を行った.アズキ熱水抽出物をDIAION HP-20で処理した後,蒸留水,40%エタノール,60%エタノール,80%エタノールと順に溶出溶媒を切り換え,各溶出画分を得た.これらの溶出画分を用いてヒト胃癌細胞(KATO III cells)の形態学的変化,増殖抑制作用及びアポトーシス誘導により生じるDNAフラグメントの検出を行った.その結果,40%エタノール溶出画分に小球状のアポトーシス小体が観察され,さらにアポトーシス誘導により生じるDNAの断片化を示した.また,40%エタノール溶出画分によるアポトーシス誘導についてDNA断片化の濃度及び培養時間依存性に関して検討した.その結果,アポトーシス誘導は濃度及び培養時間依存的であることが判明した.また,40%エタノール溶出画分によるヒト正常細胞に対する影響は観察されなかった.以上より,40%エタノール溶出物による抗腫瘍活性機構にはアポトーシス誘導が関与していることが示唆された.
著者
村田 道代 安藤 正史 坂口 守彦
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.462-468, 1995-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
27
被引用文献数
1 12