著者
土肥 秀行
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

初年度に行ったローマ国立図書館や国内における資料収集によって、テーマであるイタリアの短詩形における日本の詩の影響に関して、重要な役割を演じたのが下位春吉であることを確認した。その結果は「イタリア図書」誌上における2度の連載にあらわれている。今後、出版を目指していく下位についての単行本において、日本の詩の影響についてまとめられるだろう。初年度より継続して行ってきた、イタリアにおいてもっとも有名な歌人である与謝野晶子の受容についての調査は、その成果が論考「近代歌曲の詩人たち」にまとめられた。前衛である日本の詩歌の音楽との親和性について触れた論となった。年次計画に記したとおり、フィレンツェ大学の日本文献学講座の主任である鷺山郁子教授との共同研究「日本・イタリア詩の韻律の比較」(2001年より実施)の最終成果を、11月にボローニャ大で行われた国際シンポジウムの折に、鷺山教授の発表に協力するかたちで実現することができた。この国際シンポジウムでの発表において、パゾリーニの日本での受容を紹介するだけでなく、20世紀初頭から訳されてきた日本文学の少なからぬ恩恵をパゾリーニが受けたことを示せた。よってパゾリーニという特定の作家研究だけでなく、現代イタリア文学史の広い範囲に影響する重要な指摘としてイタリアの研究者に受けとめられた。また日本文学史家であるローマ大学のオルシ教授、マストランジェロ教授とは、11月のローマ大学でのワークショップの際に、下位の文学活動の実際の影響力について貴重な意見交換ができた。短詩形をもっとも革新的に用いた詩人ウンガレッティについての資料の精査は、これから一連の論考として発表していくが、まずは1月の口頭発表「初期ウンガレッティとハイク」に成果の一部が紹介された。2月にはボローニャ大学イタリア文学科にて、ステファノ・コランジェロ教授との共同研究の成果発表の場として、20世紀文学における翻訳の問題についての特別講義を行った。専門家の評価だけでなく学生の関心も高く、今後も継続してボローニャ大研究者との共同研究を続けていくことになった。
著者
片岡 崇 TOLA EIKamil TOLA ElKamil
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,不耕起播種のための精密播種方法の確立である。平成19年度も,ロータリ耕うん機で耕うんしたほ場と2通りの硬さで締め固めた不耕起相当の計3ほ場を準備し,各ほ場における作物生育状況を観察,計測した。栽培した作物は,大豆(品種:テイスティ)とビート(品種:スコーネ)である。また,不耕起栽培に適した播種溝の形状を検討した。播種深さをアクティブ制御できる機構を播種機に取り付けた。1.作物栽培大豆について,1個体当たりの莢数と豆数は,耕起ほ場と比べて,不耕起ほ場の方では少なかった。しかし,単位面積当たりの収穫量(質量)には,ほ場間の統計的な有意差は認められなかった。ビートについて,根部の重量は,平均値では耕起ほ場が良かった。しかし,ほ揚間に重量,長さ,糖度に統計的な有意差は認められなかった。生育状況の視覚的観察では,明らかに両作物とも耕起ほ場の方が生育が良かった。平成19年は,暑い夏であり,作物の生長が良い年であった。このため,収穫量に差が現れなかったと考えられる。この観察と統計処理の結果の違いに関しては,今後検討する。2.不耕起用播種溝形成機構の評価供試した溝切り機は,ディスク型,ホー型,タイン型の3種類である。土壌を不耕起状態のように調整して,溝切り実験を行った。形成された溝の形状を,レーザーラインスキャナーで計測し,3次元表示した。結果,タイン型の溝切り機が,土壌硬度,溝切り深さに関係なく安定した溝の形を形成した。3.播種深さ制御システムの開発不耕起ほ場に播種をする際,ほ場表面の凹凸が作業性能に影響する。このために播種機構部分に油圧シリンダーを取り付け,ほ場表面の凹凸に対してアクティブに高さ方向の位置制御を行う機構を構築した。
著者
土光 智子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は2ヵ年で首都圏近郊に位置しながら大型野生ほ乳類が生息する富士丹沢地域において、ツキノワグマ(Ursus thibetanus)を対象種にエコロジカルネットワークの策定を提案することを目標とした。具体的には、1.丹沢地域のツキノワグマのニアリアルタイム衛星追跡実験、2.移動経路・障害物などの解析およびエコロジカルネットワークの策定と評価、3.WebGIS技術を応用した地域政策立案システムの構築という3つの段階に準じて研究を進めた。第1段階においては、昨年度と同様に、2010年10月に丹沢清川村にてツキノワグマの雌個体1頭へ衛星追跡装置であるGPS付ARGOSを装着し、本研究課題では計2頭のクマの追跡ができた。また、自動撮影カメラによって、最低でも4頭のツキノワグマを判別できた。第2段階では、今年度は、昨年度に得られた追跡データを解析し、ツキノワグマによる沢の頻繁な使用と車両規制がある道路の横断が観察された。生態的回廊の最適な位置を空間的に把握するため、最小コスト経路分析という空間分析手法を用いて高解像度な縮尺(100mメッシュ)でモデリングし、1582km^2のコアエリア、182km^2の生態的回廊、618km^2の緩衝帯から成るエコロジカルネットワークを提案した。一方、既往研究の追跡(14頭)の結果を踏まえて、ツキノワグマの生息確率予測モデル開発により、地域個体群ごとの生息頭数を推定し、ギャップ分析に基づき、当地区におけるクマの生息パッチと潜在的生態的回廊を特定した。この内容は、査読付原著論文として国際誌に発表した。当地区のクマの総個体数から、富士丹沢地域個体群は絶滅が危惧されることが明らかになり、エコロジカルネットワークによりこの2つの地域個体群が内的に繋がったとしても、適切な個体数規模が維持されることは極めて難しいと結論づけられた。
著者
朝田 隆二
出版者
金沢大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

1.粘土-微生物相互作用粘土鉱物を含む培地を作成して、微生物の生育について実験を行った。培地の栄養塩を制限したとき、粘土を入れた方は入れなかった場合に比べて、分裂開始時刻が早まった。また、無酸素状態で、微生物を培養した場合、粘土を入れた方は、入れなかったものに比べてより長期間生き続けることが明らかとなった(R.ASADA, et al.,2004)。このような結果は、粘土鉱物表面が細胞の分裂を促進する効果を持つことや粘土鉱物が無酸素状態において酸素の代わりに最終電子受容体になることが示唆される。このことは、極限環境である熱水中の粘土粒子と微生物、また、地下生物圏における粘土鉱物と微生物、の相互作用を考える上で有益な情報となる。2.粘土-重油-微生物相互作用重油で汚染された環境のバイオレメディエーションシステムの開発のために、実際に汚染された現場からの有用細菌の単離、および実験室での粘土鉱物を使った実験を行った。単離された細菌は1997年の日本海重油流失事故で被害にあった日本海側沿いの3つの海岸から得られた。それらは、長鎖の飽和炭化水素を効率よく分解し、重油の中でもよく育つことがわかった(Chaerun S.K., Tazaki K., Asada R., and Kogure K. 2004)。また、これらの細菌を重油だけでなく、海岸に普遍的に存在する粘土鉱物を混ぜて培養実験を行ったところ、混ぜない場合に比べてより細胞分裂が促進されることが明らかとなった(Chaerun S.K., Tazaki K., Asada R., and Kogure K. 2005)。さらに、培地の中の粘土-重油-微生物の複合体の透過型電子顕微鏡観察により、粘土表面および端部への重油や細菌の吸着過程が明らかとなった。これは、粘土-重油-微生物相互作用によるバイオレメディエーションのプロセスを示している。
著者
竹村 明洋 RAHMAN Saydur Md. RAHMAN M. S.
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

サンゴ礁魚類に特徴的に多い月齢同調性産卵現象の生理学的側面からの解明で、魚が月からの情報をどのように体内リズムに転換しているかについて主に研究を行った。いくつかある月が地球に及ぼす環境変化のうち、特に月光に焦点をあてて以下の研究を行った。月光変化に伴うメラトニン受容体発現量の変化ゴマアイゴ(Siganus guttatus)の脳からメラトニン受容体遺伝子(MR1)をクローニングし、その発現量変化(日周変化と月周変化)をRT-PCR法で調べた。その結果、松果体を含む視葉部位にMR1遺伝子発現量の顕著な変動が見られ、明期に高く暗期に低くなった。また満月時(0時)のMR1遺伝子発現量が新月時(0時)より高くなった。これらの結果から、メラトニン受容体遺伝子発現量に変化のあった部位に月齢認識に関わる処理部位があると考えられた。メラトニンの生殖活性への関与ゴマアイゴの卵巣でのステロイドホルモン合成能に及ぼすメラトニンの効果を調べた。卵巣片をメラトニンとヒト繊毛性ゴナドトロピンと共に培養したところ、卵黄形成前期においてはEstradiol-17βとTestosteroneの産生量は増加した。高濃度のメラトニンは卵黄形成後期において性ホルモン産生を阻害した。以上のことからメラトニンが生殖活性の制御に関わっている可能性があった.。
著者
野田 智子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

古代インドの宗教儀礼であるシュラウタ祭式の新月満月祭(DP)の歴史的発展の跡を辿り、その背景にある宗教思想の変化を明らかにするべく、ヴェーダ文献を以下のように分析した。学会誌に投稿する予定である。1.DP一般に関して新月祭満月祭ともにその主要供物は二つのケーキである。新月祭においてはサーンナーイヤという乳製品の供物が献じられる場合もある。このサーンナーイヤは、これまで酸乳と加熱された乳の混合物であると定義されてきた。しかし、この語の祭式綱要書での用例を検討し、混合物という説明が不適切であることを明らかにした。サーンナーイヤとは酸乳と加熱された乳を供物として飽くまで概念上合わせたものであり、またその準備段階の生乳をも意味し、混合前の状態でサーンナーイヤと呼ばれていることを示した。さらに新月祭においてこのサーンナーイヤが献じられる場合には、それは二つ目のケーキの代わりに献じられるというのが学会の定説であるが、それは少なくとも古層、中層の祭式綱要書においては誤りである。サーンナーイヤの有無に関わらず新月祭においてケーキの数は二つであり、サーンナーイヤが献じられる場合にはそれは二つのケーキに加えて献じられるのである。2.ヴァードゥーラ派の新月満月祭について祭式綱要書を研究することによって、同派のDPに固有の特徴を見いだした。まず「低声の献供」と呼ばれる献供の際に飯を供物とする点、アグニホートラ祭の規定を取り入れている点、雨乞いの儀礼を取り入れている点、他派においては祭式要素と見なされている荷車を用いない点等が特異である。さらに主要献供規定の整合性に欠ける点も注目される。3.DP規定から見える各学派の影響関係各文献のDPに関する規定及び用いられるマントラを比較することによって、学派間の影響関係を考察した。
著者
上原 剛 MD.SIRAJUL Islam ISLAM Md.Sirajul
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究期間2年の初年度(平成16年度)は、主として沖縄島のフタバカクガニ(Perisesarma bidens, Pb)の雌雄の生殖巣の発達の程度を生きた状態で光学顕微鏡下で月ごとに1年間しらべたが、成熟未受精卵と生理的成熟精子がとれず、人工受精実験はできなかった。初年度の観察結果とこれまでの経験から生殖シーズンが5月-12月である事が予測できたので、最終年度(平成17年度)は、特に満月・新月の頃に、交尾行動を示した雌雄のペアーの個体を採集して実験室に持ち帰り野外に近い環境条件に近いコンテナで飼育して、雌雄の交尾前行動と交尾時間を観察した。このような飼育下での交尾時間はおよそ6時間で、その後雌雄を別々にして、特に雌において、受精がいつ、どこで、どのようにおこなわれるかを調べた。交尾を終えた後、およそ46時間後に腹側に出てきた成熟未受精卵を集めて80%海水に移し保存した。他方精子については、未受精卵が体内から腹部(abdominal cavity)に出た後すぐに雌を切開して体内から貯精のうを取り出し80%海水に移し保存した。しばらくして、同じく80%海水下で両者をゆっくりと混ぜ(人工媒精)、水温25度で70ml容器で飼育観察した。未受精卵の様子、媒精後の卵の形態変化(外被膜の形成)から観察例は少ないけれども、人工受精が成功したものと確信している。そのことは、その後の卵割の様子や、胞胚期・のう胚期をえて孵化前の第1ゾエア期、孵化後の各ゾエア期をおえてFirst-crabまですべて健康に育ったことによっても示唆される。別の言葉で言うと、この種では完全な体内受精ではなく、腹部のabdominal cavityで受精が起き、この状態で受精卵から孵化するまでの幼生期がおよそ16日間維持されていることがわかった。このことから、この種では完全な体外受精でもない両者の間にある受精様式と発生方式を獲得していて、今後マングローブ域の環境に適応したカニ類を全容を明らかにする上でも興味深い。受精からその後の発生の全容は光学顕微鏡レベルではほぼ明らかになり、2005年11月に開かれた第43回日本甲殻類学会(奈良女子大学)で発表した、しかし、受精の詳細な観察と人工授精についてもまだ十分とは言えない。幸いにも研究期間の間、実験補助として手伝ってくれたDr.MD.Moniruzzaman Sarker(本学の外国人特別研究員)が興味を持ってくれているので、足りない分のデータを追加し、平成18年度内には論文にする予定である。
著者
永川 桂大
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

金や銀のナノ粒子に光を照射すると表面プラズモンと共鳴し、局所的な電場が発生する。特にそのサイズに依存した光学特性が注目され、細胞内への遺伝子薬剤の送達キャリヤーあるいは腫瘍組織に対する治療ツールとしての研究が盛んに行われている。本研究は申請者がこれまでに作製してきたウイルスカプセル表面での金ナノ粒子の三次元配列化と同時に、多様なタンパク質と金属ナノ粒子の複合体形成とその応用展開を目的とした。今年度の研究実施計画は、昨年度作製した金ナノ粒子内包型ウイルス構造体の特徴に着目した。本研究で取り扱うJC virusの感染能に注目すると、ウイルスタンパク質VP1の感染能が付与された金ナノ粒子は効率よく細胞内へ導入されることが期待される。さらに金属ナノ粒子の持つ光熱変換能を利用する事で、光刺激による細胞死の誘発というがん細胞における光温熱療法への応用が可能となる。そこでVP1を用いた金属ナノ粒子内包型ウイルス構造体の作製を検討した。ウイルスタンパク質のアミノ酸残基の分布に着目すると、内側表面のシステイン残基97番目のみが溶媒と接していることが予想された。金ナノ粒子とVP1を共存条件におくことで、金ナノ粒子表面にシステインと金原子の結合に起因したVP1の集合化が観察された。VP1被覆金ナノ粒子の細胞内導入において、粒径40nmの金ナノ粒子で最も効率よく取り込まれ、細胞に強い光を照射すると金属ナノ粒子由来の熱発散によって照射スポット内における細胞死誘導が見出された。以上の結果から、ウイルスタンパク質と金属ナノ粒子の複合体は各々の特徴を組み合わせることで光温熱療法の薬剤へ応用できることを示した。本研究の成果は今後の生物医学における金属ナノ粒子の利用に有用な知見を与えるものである。
著者
手塚 太郎
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

昨年度に引き続き、ウェブからの包括的な地域情報抽出の枠組みの開発を進めている。ウェブ文書から抽出されたランドマーク情報をカーナビゲーションシステムの地図表示に利用する研究を進めた。認知的に顕著なランドマークの情報の抽出し、地理情報システム(GIS)の情報と結合させることによって、既存のGISが持たなかった新しい情報を付け加えている。さらに、近年、利用が拡大しているウェブ上のローカル情報検索インタフェースにおける地図表示にランドマーク情報を統合し、より見やすい地図の表示を実現した。本年度はウェブからのランドマーク情報の抽出手法を発展させた他、取得されたデータに基づく実用的なアプリケーションの実装を行った。また、これらの成果を国際会議ならびに国内外のワークショップにて発表した。さらに、海外において関連する研究を進めている研究者グループと積極的な情報交換を行い、国際シンポジウムの開催に着手した。本研究の成果として、地域情報の受動的閲覧インタフェース「車窓」の開発を進めた。これは、従来、ユーザ側からの積極的な情報入力を必要としてきた既存のウェブ地域情報閲覧システムを発展させたものとして、最小限の操作で地域情報を閲覧できるようにしているシステムであり、幼少者やコンピュータ操作に不慣れなユーザ、あるいは娯楽として地域情報の閲覧を行いたいユーザの使用を想定している。このシステムを京都市内の小学校において、「総合的学習の時間」の授業に導入し、修学旅行のプラニングに使用した。
著者
中島 正愛 MCCORMICK Jason Paul
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

性能の明示を謳う性能耐震設計では、代表性能指標としてもっぱら最大層間変形角を使っているが、扉の開閉傷害に起因する避難経路の遮断、構造躯体の修復性、内装材、外装材等非構造部材の補修性等、地震終了時に建物が被る残留変形(角)も無視しえない性能評価指標となる。本課題では、鋼構造建物は、(A)大地震下でどれぐらいの残留変形を被るのか、(B)どこまでの残留変形が許容できるか、(C)残留変形をどのように制御できるかを、明らかにすることを目的とし、特に、(A)残留変形の実態調査、(B)非構造部材の損傷同定、(C)残留変形制御機構の開発、に取り組む。本研究の二年度である今年度では、上記(A)〜(C)のうち下記を実施した。(A、B)残留変形の実態調査と許容残留変形:建築後約40年を経た5階建て建物の残留変形を、床の傾斜と柱の傾斜という指標から調べ、その平均値はいずれの傾斜も1/500以下にとどまっていることを明らかにした。また当該建物への居住者へのヒアリングから、1/500程度の傾斜は生活や仕事に影響がないことも判明した。さらに心理学分野への文献調査とヒアリング結果等も踏まえ、1/200が、心理面、機能面、安全面いずれにおいても許容しうる残留変形(傾斜)であることを突き止めた。(C)残留変形の制御:残留変形最小化システムとして、柱脚部に原点復帰性を持たせる機構を考案し、それによって得られる残留変形低減効果を数値解析から明らかにした。また柱脚部原点復帰性を実現する具体的方法として、形状記憶合金をテンドンとして利用する方法と、鋼とコンクリートの間の摩擦係数が大きいことを利用した無緊結柱脚を用いる方法を提案し、後者についてはその妥当性を一連の振動台実験から検証した。
著者
池永 昌容
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

研究では,研究計画として3項目を設しそれぞれを並行して施している.3つの枠組みとは「セルフセンタリング柱脚(以下SC柱脚)の特性評価と設計法」,「新たなSC柱脚の開発」,「許容残留変形の定量化」であり,20年度は,19年度の研究経過を受けて前2項目に関して研究を実施した.研究状況は以下の通りである.1.SC柱脚の開発申請者が過去に実施したSC柱脚の開発,そして前年度に実施したSC柱脚の特性評価と設計法における研究成果をもとに,既存のSC柱脚の保有性能の増強と,多軸方向載荷への対応が可能となるように改良を加えたSC柱脚を開発した.そして2/3スケールの試験体を作成し,2軸同時載荷が可能な静的載荷装置を用いてその性能を確認した.その結果,保有性能の増強には成功し,また誤差20%未満で評価が可能な評価法を提案することができた.しかしながら,多軸方向載荷に対しては想定とは異なる挙動が見られるとともに改良点も明らかになり,今後の課題となった.2.SC柱脚の特性評価と設計法前年度の研究で明らかにした鋼とモルタル面の摩擦特性を利用した,「置くだけの柱脚」を利用した鋼構造骨組の特性を時刻歴応答解析で評価した.2層と3層の鋼構造骨組の側柱をSC柱脚,軸力変動がない中柱を「置くだけの柱脚」として,最大層間変形と残留層間変形を評価した.比較対象として,SC柱脚をすべての柱脚に用いた場合の,鋼構造骨組を考える.検討の結果,3層骨組では柱脚を併用することで,併用しない場合と比べて両応答ともに増大した.一方で2層骨組では,柱脚を併用しても,SC柱脚のみを使用した場合と同程度,もしくは最大層間変形は同程度であり残留層間変形は若干減少する傾向が見られた.この結果は,2層程度の鋼構造骨組では柱を基礎上に置くだけでも耐震上問題がないことを不しており,従来の柱脚工法と比べて施工性が格段にあがる新工法の可能性を示唆している.
著者
藤原 信行
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

1.研究者(以後「私」とする)はまず,日常生活世界における自殺現象の統制・合理化活動の根幹をなす動機付与活動を,エスノメソドロジーにおける「カテゴリー分析」を参照に再検討した.その結果として当該活動が「再帰性」「文脈依存性」を特徴とする再現性のない「個性的な」活動であること,そしてその活動において「因果的説明」と「責任帰属」は相互補完的な関係にあり,分析上両者は不可分であることを確認した.2.次に私は近年自殺現象の統制・合理化活動に大きな影響を与えていると考えられる,自殺とその予防をめぐる精神医学的知識を「医療化」の観点から検討した.その際,当該年度においてはさしあたり,自殺対策のために公的機関が公表・発行している印刷物およびウェブ上での情報を検討の対象とした.その結果として,それらは「自殺対策の医療化」を象徴する印刷物・情報であること,そして自殺をめぐる責任帰属をより明確にし,それをめぐる争いを不可避なものとさせうる潜勢力を有している--誰が,いかような過失・不作為を犯したかを詳らかにする「マニュアル」としてはたらく--ことが明らかとなった.3.さらに私は,うつ病患者家族2名へのインタビュー調査も実施した.いずれの対象者も自殺とその危険因子であるとされるうつ病にかんする知識を欠いていた.当該知識の欠如は,自殺予防のためのうつ病患者の「見守り」にかんする負担をめぐる争いにおいて,当該知識を少しでも有する--精神保健専門職からみて「適切」か否かはともかく--者の状況定義や利害が優先される結果を招来していた.
著者
高橋 大輔
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、土地利用型農業の再生のための農業政策を立案するための実証的分析、特に米政策と農地政策についての分析を行うことで、日本農業の発展について国民経済的視点から検討を行うことである。また、日本の土地利用型農業の存在意義となる食料安全保障政策についても分析を行う。今年度の研究成果は以下のとおりである。まず、米政策の影響を評価する独自の数理モデルを構築した上で、1986年から2010年までの米政策の経済効果を分析した。分析結果からは、政府が生産調整を中心としたポリシーミックスを採用してきたことがわかり、その背景にある政府の行動様式が示唆された。分析結果は国際ジャーナルに投稿され、レフリーのコメントを受けた改訂を終えたところである。また、現行の価格政策を中心とした農業政策から、環境支払いを中心とした農業政策へ転換するための理論的考察を行うとともに、オークション型環境支払いに関する実証研究を行った。農地政策については、昨年度に刊行されて日本農業経済学会学会誌賞を受けた研究論文を英文化し、数理モデルに改善を行った論文が同学会の英文誌に受理された。また、2010年農林業センサスの公表を受けて、近年において農地流動化や経営規模拡大などの構造変化が急速に進んだ要因を統計分析から明らかにした。さらに、食料安全保障政策との関連で、日系食品関連産業による海外進出と撤退の動向を整理した論文が学会論文集に受理された。また、食品関連産業の海外進出と食品輸入の関連性についての計量分析を行い、日本農業経済学会大会にて口頭報告を行った。分析結果からは、食品関連産業の海外進出と食:品輸入の関連性が弱まっていることがわかり、国内において一定の水準で土地利用型農業を維持する必要性が示唆された。
著者
佐野 浩孝
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は、大きさ数μm程度の、いわゆるメゾスコピック超伝導体における渦糸状態について調べるものである。特に本年度は微小な正方形試料において発生が予想されている反渦糸の観測に焦点を絞って実験をおこなった。反渦糸の観測のためには局所的な磁場分布の測定が不可欠である。そのための手法として、本研究ではHall magnetometryを採用した。これは、半導体2次元電子系基板より作製したHall cross上に微小超伝導体試料を作製し、試料直下での磁場の変化をHall crossのHall抵抗の変化として観測するというものである。特に本研究では、磁場測定の空間分解能を高めるため、Hall crossの端子を細分化した多端子Hall crossを用いた。また、個々の渦糸をより判別しやすくするため、正方形の四隅に微細孔をあけた試料を用いた。正方形試料直下での磁場分布の変化から試料内部での渦糸分布について調べた。その結果、試料に渦糸が出入りする様子を、その位置まで含めて観測することができた。その結果から試料内部における渦糸分布の同定に成功した。しかし、当初の目的であった反渦糸の観測には成功しなかった。これはおそらく反渦糸が生成していなかったためと考えられる。以上の成果について、海外での学会で2件、国内の学会で1件の発表をおこなった。そして、今年度中にさらにもう1件国内の学会で発表をおこなう。海外での学会での発表のうちの1件については会議録の形で論文として公表されることが決定している。また、昨年度までおこなっていた超伝導ネットワークに関する論文が本年度初めに出版された。現在は新たに論文を執筆中であり、完成し次第投稿予定である。本年度は大学院博士課程の最終年度にあたるため、上記の研究成果も含めて博士論文を作成した。審査の結果、3月23日付で東京大学より博士(理学)の学位が授与されることとなった。
著者
菅野 学
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

アキラル芳香族分子に円偏光レーザーパルスを照射してπ電子の芳香環に沿った回転を誘起できる。このときのπ電子の回転方向は円偏光レーザーの角運動量(偏光軸の回転方向)で一意に決定される。これに対し、採用第1,2年度目において、角運動量を持たない直線偏光レーザーパルスによってキラル芳香族分子のπ電子回転を実現できることを示した。このときのπ電子の回転方向は分子の空間的配置に対する直線偏光レーザーの偏光方向に依存して分子内座標系で決定される。π電子回転が分子の振動周期と同程度の数10fsほど持続すると、π電子回転と分子振動が互いに影響を及ぼし合う可能性がある。そこで、採用第3年度目において、直線偏光レーザーパルスと相互作用するキラル芳香族分子のモデル2,5-dichloropyrazine(DCP)を用いた非断熱核波束動力学シミュレーションを行った。DCPは厳密にはキラルでないが、π電子の感じるポテンシャルが環に沿った回転方向に依存するために直線偏光レーザーパルスによるπ電子回転制御が可能である。DCPは最適構造において点群C_<2h>に属し、光学許容擬縮退^1Bu励起状態を持つ。この^1Bu状態の線形結合がπ電子回転の近似的角運動量固有状態|+>と|->を与える。|+>または|->の一方を支配的に生成すればπ電子は芳香環を回転する。^1Bu状態を結合させる既約表現A_gの基準振動モードである環呼吸振動と環変形振動のモードを自由度とした2次元ポテンシャル曲面上の非断熱核波束動力学シミュレーションにより、分子振動の振幅がπ電子の回転方向に著しく依存することを明らかにした。また、この振幅の違いが断熱ポテンシャル曲面の間の非断熱遷移過程における核波束の干渉効果に起因することを示した。この結果から、フェムト秒スケールの分子振動を分光学的に観測することでアト秒スケールのπ電子の回転方向を特定できると期待される。
著者
名取 理嗣
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

これまでの研究により,極低炭素ラスマルテンサイト鋼は,焼戻し時に不均一回復が生じて,隣接する二つの結晶粒を挟む粒界が,両粒の転位密度の差に駆動されて張り出しを生じることで再結晶粒が生成される,いわゆる粒界バルジング型の再結晶が生じることを見出した.また,張り出す粒界が易動度の大きい旧オーステナイト粒界の一部に限られるため,得られる再結晶粒は粗大になることを明らかにした.そこで,本年度では,出発組織をフェライト組織とラスマルテンサイト組織に調整した極低炭素鋼に冷間圧延-焼鈍を施し,冷間圧延組織および焼鈍時の再結晶挙動に及ぼす出発組織の違いの影響を調査した.冷間圧延した極低炭素ラスマルテンサイト鋼の再結晶機構は,焼入れまま無加工材で生じた粒界バルジング型再結晶とは異なり,冷間圧延したフェライト鋼と同様に転位セル組織から再結晶組織が生成される機構が主体となることを明らかにした.また,圧下率が小さい場合はラスマルテンサイト鋼の方がフェライト鋼に比べて再結晶粒が微細となり,出発組織をラスマルテンサイトにすることの有効性を見出した.これは,ラスマルテンサイト組織がパケットやブロック組織からなる微細組織であることのほかに,焼入れ時に可動転位が多量に導入されているため,わずかな圧延でも容易に転位セル組織を形成するためであることを明らかにした.さらに炭素量を0.1%含んだ低炭素鋼を用いて,焼入れままのラスマルテンサイト鋼および加工性を向上させるために前焼戻しを施したラスマルテンサイト鋼を用いて冷間圧延およびその後の焼鈍に伴う再結晶挙動を調査し,冷間圧延前の焼戻しの影響について考察した.そして,焼戻しラスマルテンサイト鋼は焼入れラスマルテンサイト鋼に比べて再結晶が抑制され,再結晶粒は粗大になることを明らかにした.これは冷間圧延前の焼戻しにより基地中の固溶炭素が減少することで蓄積ひずみエネルギーが減少すること,冷間圧延時の変形帯の形成が抑制されたことが原因であることが示唆された.
著者
福田 治久
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

医療界では安全水準を測定することが極めて困難であるために,安全活動の効果の検証もまた至難な状況下にある.本研究は,航空業界・化学業界・製造業界を対象にヒューマンエラーの未然防止の上で高い効果が期待できる安全活動についてヒアリングし,その活動を医療界に応用することを目的に調査を行った.その結果,インシデント報告に対する非懲罰化,報告の簡素化を進めることで報告件数が増加する傾向にあることが確認された.しかしながら,調査対象企業においては,安全活動の効果を検証可能な余地を認めたものの,定量的な実証には未だ至っておらず,今後さらなる研究を進めることの必要性が見出された.一方で,病院感染領域では,病院感染の発生を不安全な状態と捉え,感染による追加的治療コストの測定が可能である.また,当該コスト推計値は,感染対策の重要性を訴求する根拠として,さらに,感染防止方策の経済評価研究の参照値として活用可能なデータにもなりうる.しかしながら,当該コストの推計値は推計方法に大きく依存するという問題がある.そのため,第三者が活用する際には,報告された推計値の自施設・自国における外挿可能性を考慮する必要性が生じ,その検証には推計方法の正確性や推計結果の透明性の視点が不可欠となる.本研究は,2000年〜2006年に報告された英語原著論文を対象に,病院感染による治療コストを推計した論文を抽出し,平成19年度に開発したフレームワークに基づいて推計値の質を評価した.その結果,病院感染による追加的治療コストを推計した研究は50論文が確認され,そのうちわずか7報のみが,透明性・正確性を共に備えた推計値を報告していた.当該コスト研究は,感染対策に向けた資源配分の意思決定を大きく左右するために,第三者が転用可能な結果を報告することが極めて重要になる.本研究は,経済評価研究の新たな視点を呈示するものである.
著者
多田 隆治 SUN Youbin
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

中国内陸乾燥域から飛来する風成塵は、北半球の気候や北太平洋域の生物生産に大きく影響している。こうした影響を評価する上で、風成塵の発生,運搬、堆積過程を知る事は重要であり、そのためには風成塵の供給源を知る必要がある。そこで、風成塵の鉱物・化学組成を利用し供給源を推定する試みが行われてきたが、未だに有効な手段は確立されていない。我々は、その原因が、鉱物・化学組成の粒度依存性や、風化・変質の影響が十分考慮されていない事にあると考え、風成塵の主要構成鉱物であり、風化・変質にも強い石英に的を絞り、その形成年代、晶出温度/速度という2つの指標で特徴づける事を考えた。石英の電子スピン共鳴(ESR)信号強度は母岩の形成年代を反映し、結晶化度(CI)は晶出温度や速度を反映する。そこでまず、中国、モンゴルの9砂漠について表層試料を採集し、5つの粒度区分に分画して、各粒度区分中の石英のESR信号強度とCIを測定した。その結果、16μm以下、32-64μ、64μm以上の3つの粒度区分が、それぞれ異なるESR信号強度とCIで特徴付けられ、異なる運搬様式に対応する事がわかった。特に16μm以下は、風による高高度運搬によると考えられた。そこで、9砂漠から採取された37試料について、特に、16μm以下の石英についてESR信号強度とCIを測定し、ESR信号強度対CI図上にプロットした結果、9砂漠全てが図上の異なる領域にプロットされ、明確に識別出来る事が明らかになった。全データは、タクラマカン、テンガー、グルバンチュンギュット、ゴビ(モンゴル)の4砂漠に対応する領域を結んだ4角形の中にプロットされるが、これら4砂漠はそれぞれクンルン、キリアン、アラタウ、アルタイ山脈の麓に位置し、それら山脈から供給された土砂を起源とすると考えられる。それに対し、他の5砂漠は、これら4砂漠起源の砕屑粒子の混合で説明出来る。
著者
高岸 治人
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

2010年度は6月に京都市内にある私立小学校にて、小学生を対象とした分配ゲーム(独裁者ゲーム)を実施し、他者が見ている状況と他者が見ていない状況という2つの状況における分配行動を比較するという実験を行った。参加者は2年生から6年生までの児童約210名であり、自身とお友達の間で10枚のコインチョコレートをどのように分けるかという課題を行った。その結果、他者から見られている状況では、男女ともに学年が上がるにつれて友達への分配個数が増加するというパタンを見せた。特に、小学校低学年では、他者が見ている状況でも友達にお菓子を渡さない傾向が見られたが、小学校中学年以降では、友達にお菓子を渡す傾向が見られた。しかし、他者が見ていない状況では、女児は他者が見ている状況と同様のパタンを示したが、男児はいずれの学年においても友達に対してお菓子を渡さない傾向を示した。これらの結果は、他者が見ている状況では、小学校中学年以降になると他者の目を意識するようになるために、友達に対して利他的になること、そして、少なくとも男児においては他者が見ていない状況では、友達に対して利他的にはならないことが明らかになった。この結果を踏まえて、現在、何故、利他行動における他者の監視の効果に性差が見られたのかを調べる実験、そして、利他行動における他者の監視の効果を支える認知発達的な基盤(例えば心の理論の発達)を調べる追加実験を計画している。
著者
山中 真人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

素粒子物理・宇宙物理には説明困難な問題が残されており、それに伴い標準模型を超える模型が多数提唱されてきた。本研究の目的として、【標準模型を超える新模型の特定】、並びに、【その新模型が持つパラメーター値の決定】の2点を掲げる。本研究では、目的達成に向け、宇宙論的観測量と理論予測の整合性を課すことで直接的に、また、レプトンフレーバー数非保存過程に関する実験結果と理論予測の整合性の観点から間接的に攻めてきた。さらに、LHCにおける各模型の特徴的信号についても議論してきた。こういった統合的かっ相補的アプローチにより、異なる模型がもたらす同一実験結果が招く混乱等を回避し、新模型のパラメーター値の決定や、模型の確立を進めた。2009年度に行なった研究は、大きく分けて2つである。1つ目は、昨年末、CDMS実験により報告された暗黒物質の直接検出と思われるシグナルに応じた研究である。研究を通じ、CDMS実験の結果が超対称性模型、及び、模型における暗黒物質の性質にもたらす示唆を明らかにした。2つ目は、荷電レプトンフレーバー数非保存過程を通じた、標準模型を超える模型の探索である。我々は、荷電レプトンフレーバー数非保存を伴い、かつ、将来実験で十分な精度をもたらすことができる新たな反応【ミューオニック原子中におけるmu^-e^-->e^-e^-】を提案した。本反応の探索実験の実現化へ向け、今後も研究を進めていく予定である。