著者
原田 光明 佐野 岳 水上 昌文 居村 茂幸
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.609-611, 2009-08-20
被引用文献数
1

〔目的〕重症心身障害児(者)(以下,重症児(者))は長期間にわたり臥位姿勢で過ごす時間が多く,筋緊張の不均衡や重力の影響により,二次障害として側彎や胸郭の変形などを併発しやすい。また重度の側彎症に伴い胸郭の変形が非対称性に進行してくる等の報告がある。しかし,臨床上において胸郭変形は視診的評価が主であり,客観的評価がなされていないのが現状である。そこで本研究において胸郭扁平率を用いて胸郭変形を検討することを目的とした。〔対象〕重症児(者)17名(平均年齢42.12±9.82歳)と健常成人18名(平均年齢40.56±10.05歳)とした。〔方法〕本研究ではGoldsmithらが考案,今川らが提唱している定量的胸郭扁平率について検討した。〔結果〕胸郭扁平率の平均は,重症児(者):0.63±0.08,健常成人:0.72±0.06であり,重症児(者)にて有意に低値を示した。また重症児(者)の胸郭扁平率は体重との間に有意な相関が認められた(r=0.463)。しかし,身長,BMIとの間には相関は認められなかった。〔結語〕このように胸郭扁平率は健常者に比べて,重症児(者)で低下する傾向にあったことから,胸郭扁平率は胸部変形を反映する指標となりうる可能性が示唆された。また今後の研究課題として症例数の増加による胸郭扁平率の数値的意味の検討,拘束性換気障害との関連性の検討が必要と考えられた。<br>
著者
加藤 宏之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.7-12, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
20

脳卒中後に見られる片麻痺の回復の脳内機序の詳細は不明である。最近開発されたfunctional MRI(fMRI)や光トポグラフィー(NIRS)を用いると脳卒中患者の麻痺手運動時の脳活動を非侵襲的に画像化することができる。また,拡散テンソル・トラクトグラフィーにより錐体路を描出することもできる。これらの評価法により,片麻痺の回復には,既存の運動ネットワークの損傷の程度に応じて,可逆的障害からの回復や大脳皮質運動ネットワークの再構築を駆使して,運動機能を回復させることを示唆するデータが得られている。さらに,この機能回復には発症後1ないし2ヶ月の臨界期が存在することも示唆されている。
著者
大住 倫弘 草場 正彦 植田 耕造 中野 英樹 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.599-602, 2012 (Released:2012-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1

〔目的〕今回,幻肢痛患者の質的な評価を行い,皮膚受容感覚に関連する幻肢痛であると判断した2症例に対して,早期から触圧覚識別課題を実施した結果を報告する.〔対象〕2症例とも糖尿病性壊疽に陥り下腿切断を施行した後に,皮膚受容感覚に関連する幻肢痛が出現していた.〔方法〕断端部にクッションにより触圧覚が与えられる部位の識別を行った.〔結果〕課題開始当初は2症例とも触圧覚の部位を正確に識別することが困難であったが,課題を行っていくことで識別可能となっていき,幻肢痛も消失した.〔結語〕症例の幻肢痛がどのような病態なのかを質的に評価した上で,介入方法をできるだけ早期に決定していくことの重要性が示唆された.
著者
金子 秀雄 木庭 知美 徳永 理紗
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.799-804, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
30

〔目的〕本研究は,女子学生における非特異的慢性腰痛の有無による呼吸機能の違いを検証することを目的とした.〔対象と方法〕非特異的慢性腰痛のある女子学生17名(腰痛群)と健常な女子学生17名(健常群)を対象とした.呼吸機能として努力性肺活量(対標準努力性肺活量),呼吸筋力(最大吸気圧,最大呼気圧),胸腹部可動性(呼吸運動評価スケール)を測定した.〔結果〕腰痛群の努力性肺活量(対標準努力性肺活量),上部および下部胸郭スケールと下肢挙上位での腹部スケールは,健常群より有意に低値であった.〔結語〕女子学生における非特異的慢性腰痛は,胸腹部可動性に関連した努力性肺活量低下を招く可能性が示された.
著者
石坂 正大 石川 良太 伊藤 詩峰 遠藤 沙紀 君島 未紗 鯉沼 夢 佐藤 克己 関 健吾 田野 勝也 千明 龍太郎 淵田 悟
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.581-584, 2016

〔目的〕コンプレッションウェアの着用が酸素摂取量および心拍数に及ぼす影響を明らかにする.〔対象と方法〕対象は健常男性26名とした.対象者に対しトレッドミルでの心肺運動負荷試験を行い,裸とコンプレッションウェア着用の2つの着衣条件で酸素摂取量,心拍数,呼吸交換比,呼吸数を測定した.〔結果〕心肺運動負荷試験の運動前,中,後の心拍数(回/分)はそれぞれ,裸で84.4±11.8,156.9±12.3,110.2±22.1,着用時で81.2±11.9,151.7±14.7,102.0±10.4となり,後者の着衣条件で有意に低い値を示した.酸素摂取量,呼吸交換比,呼吸数では着衣条件間の有意な差がみられなかった.〔結語〕コンプレッションウェアの着用は酸素摂取量には影響しないが,運動時の心拍数を低下させる. <br>
著者
竹井 仁
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.49-54, 2000

顎関節症の治療は,その原因を明確にした上で実施することが大切である。理学療法の実施にあたっては,顎関節の解剖学や運動学を理解した上で評価が完全になされていることが重要となる。本論文では,欧米諸国の顎関節症の治療理論と実際をふまえながら,顎関節症の理学療法と生活指導について述べる。理学療法としては,物理療法の他に,マイオフェイシャルリリース,軟部組織モビライゼーション,アクティブ・ストレッチ,リラクセーション,下顎下制リリース,関節モビライゼーション,関節包内運動再教育訓練,筋力増強及び協調性訓練などについて概説する。
著者
村田 伸 村田 潤 津田 彰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.601-607, 2008-10-20
被引用文献数
5 3

〔目的〕高齢者女性の足把持力と胸椎後彎角との関連性を検討した。〔対象〕地域在住の高齢者女性37名(平均74.7±5.9歳)である。〔方法〕足把持力,胸椎後彎角,片足立ち保持時間などを測定し,相関分析や共分散分析を用いて検討した。〔結果〕足把持力と胸椎後彎角ならびに片足立ち保持時間の三者には互いに有意な相関が認められ,胸椎後彎角が大きいほど足把持力が弱く,片足立ち保持時間が短いという関係が認められた。さらに,胸椎後彎角高値群と低値群の2群間の比較から,年齢を調整しても胸椎後彎角と足把持力ならびに片足立ち保持時間との関連が示された。〔結語〕胸椎後彎角が大きい高齢者女性は足把持力が弱く,立位バランスが低下していることが示唆された。<br>
著者
中村 浩一 向野 義人 兒玉 隆之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.13-17, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

〔目的〕Individual Muscle Stretching(ID)が心身に及ぼす影響を検討した。〔対象〕健常男子学生60名60肢右脚とした。〔方法〕IDを施行する群(ID群),Static Stretchingを施行する群(SS群),ストレッチングを施行しない群(control群)に被験者を分け,群間及び各ストレッチング前後で,ゴニオメーター,サイベックス,アンケートを用いて比較検討した。〔結果〕柔軟性と筋出力において,ID群は介入後有意に柔軟性の向上と筋出力の低下を認めた。アンケートの結果,ID,SS群ともに,介入後,有意に身体的疲労及び気分の改善を示す結果を得た。〔結語〕IDは柔軟性向上,筋出力低下,精神心理の改善をもたらすことが示唆された。
著者
藤沢 千春 玉木 彰 帯刀 未来 生島 秀樹 常峰 紘子 吉岡 聡
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.629-632, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
15

〔目的〕対麻痺を呈した化学療法中の悪性リンパ腫症例に対して,ベルト電極式骨格筋電気刺激療法(B-SES)の廃用性筋萎縮の予防効果と安全性を検証した.〔対象と方法〕対象は悪性リンパ腫による脊髄損傷を呈した症例とした.B-SESによる廃用性筋萎縮予防の効果判定として初期,中間,最終に超音波診断装置による大腿四頭筋の筋厚測定とAmerican Spinal Injury Association運動機能評価(ASIA)を実施した.有害事象は有害事象共通用語基準を用いて評価した.〔結果〕骨格筋萎縮の予防は可能であったが,ASIAの改善は認められなかった.有害事象は全ての介入期間で認められなかった.〔結語〕B-SESは化学療法実施中の全ての介入期間で有害事象を生じず,廃用性筋萎縮の予防が可能であった.
著者
若尾 勝 福光 英彦 田中 勇治 徳村 拓哉 星 虎男 関根 義夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.509-513, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
12

〔目的〕Diagnosis Procedure Combination (DPC)導入前後での入院期間,理学療法開始時および終了時のBarthel Index (BI)への効果を分析すること.〔対象〕入院中に理学療法を実施した患者171名とした.〔方法〕DPC導入前後の,理学療法開始までの日数,理学療法実施日数,理学療法開始時および終了時のBIを比較した.さらにDPC導入と理学療法,それぞれの前後におけるBIの変化を,退院先別に分析した.〔結果〕DPC導入により,理学療法開始までの日数と理学療法実施日数の短縮,高いBIでの退院がみられた.また退院先四群間とそれぞれのBIで有意差を認めた.〔結語〕DPCが早期理学療法開始,入院期間短縮,高いBIでの退院につながり,さらに高いBIで理学療法を開始できれば,早い在宅復帰を見込むことができる.
著者
倉山 太一 渡部 杏奈 高本 みなみ 重田 奈実 長谷川 裕貴 山口 智史 小宮 全 吉田 奈津子 清水 栄司 影原 彰人 須賀 晴彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.929-933, 2009 (Released:2010-01-28)
参考文献数
23

〔目的〕通所リハにおける在宅脳卒中患者を対象としたCI療法の効果について検討した。〔対象〕当院通所リハを利用の片側上肢機能不全を有する脳卒中患者で適応基準を満たした6名であった。〔方法〕非麻痺側上肢の運動制限を行いながら,麻痺側上肢の集中的な課題遂行型介入を1日5時間,2週連続(平日の10日間)で実施した。評価項目は,Wolf motor function test(WMFT),Motor activity log(MAL),Fugl-Meyer assessment scale(FM)とし,CI療法の実施前後,3ヶ月,6ヶ月後に実施した。〔結果〕WFMTのtimeおよびMALにおいて,介入前後で,有意な改善を認めた。また,評価が可能であったすべての症例で,3ヶ月後,6ヶ月後においても介入効果が持続していた。〔結語〕通所リハにおいて,一般的な手法に従ったCI療法実施は可能であり,上肢の機能改善および実用性が向上することが示唆された。
著者
谷 浩明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.69-73, 2006-02-20
被引用文献数
2
著者
猪股 高志 平山 厚子 大久保 恵 三和 真人
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.195-198, 1998 (Released:2007-03-29)
参考文献数
7

理学療法臨床実習中の学生の身体面にどのような変化があるかを知るために,臨床実習直前及び直後の体重・体脂肪量・体水分量及び体力の指標としてのPWCI50を測定し,その変化及び臨床実習成績との関係について分析した。その結果,体重とPWCI50では臨床実習前後での変化は見られなかったが,体脂肪量は有意に増加し,体水分量は有意に減少した。また,これらの身体面の変化に加え,臨床実習成績と体水分量の変化に相関が認められたことから,現状の臨床実習が,特に成績によっては実習生の身体組成の変化のみならず,臨床実習中の体調にも何らかの影響を及ぼしうることが推察された。
著者
平野 幸伸 山本 武 櫻井 博紀 青田 安史
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.243-246, 2014

〔目的〕本研究の目的はハンドヘルドダイナモメーター(HHD)によるヒラメ筋筋力測定法の妥当性を検証することである.〔対象〕対象は健常成人14名28肢とした.〔方法〕測定指標は最大筋力および最大トルク値とした.測定方法は徒手抵抗によるHHD法,固定用ベルトを用いたHHD法,設置型筋力測定装置による等尺性足関節底屈筋力測定法,設置型筋力測定装置による等尺性ヒラメ筋筋力測定法,徒手筋力検査(MMT)の5種類とした.〔結果〕固定ベルトを用いて行うHHD法と設置型ヒラメ筋筋力測定装置との有意な相関が認められた.〔結語〕固定用ベルトを用いた方法は妥当性がある. <br>
著者
河西 理恵 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.203-208, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

〔目的〕本研究の目的はPBLの効果と学生因子の関係について検証することである。〔対象と方法〕対象はK大学理学療法学科の3年生19名であった。PBLの効果指標を,学生自身による自己評価とPBLにおける発言頻度とし,約2ヶ月のPBL実施後,学業成績,性格,自己学習習慣の有無,自己学習時間,テスト志向性およびPBLに対する満足度などの学生因子とPBLの学習効果の関係をSpearmanの順位相関係数により検討した。〔結果〕PBLに対する学生の自己評価と学業成績,性格,自己学習習慣の有無,PBL実施中の自己学習時間およびPBLに対する満足度の間に有意な相関が認められた。また,発言頻度と自己評価ならびに学業成績,PBL実施中の自己学習時間,PBLに対する満足度の間にも有意な相関が認められた。〔結語〕PBLの効果には複数の学生因子が関与することが示唆された。
著者
松田 雅弘 渡邉 修 来間 弘展 村上 仁之 渡邊 塁 妹尾 淳史 米本 恭三
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.117-122, 2011
被引用文献数
5

〔目的〕脳卒中により利き手側の片麻痺を呈した場合,利き手交換練習を行うことが多い。そのため健常者における非利き手での箸操作の運動時,イメージ時,模倣時の脳神経活動を明らかにした。〔対象〕神経学的な疾患の既往のない右利き健常成人5名(平均年齢20.7歳)とした。〔方法〕課題は,左手箸操作運動課題,左手箸操作イメージ課題,左手箸操作の映像をみながら箸操作運動課題(模倣課題)の3種類とし,その間の脳内活動を3.0T MRI装置にて撮像した。〔結果〕運動課題では左右感覚運動野・補足運動野・小脳・下頭頂小葉・基底核・右Brodmann area 44が賦活した。イメージ課題では,運動課題と比べ左感覚運動野・小脳の賦活が消失していた。模倣課題では,左右感覚運動野・補足運動野・上下頭頂小葉・Brodmann area 44が賦活した。〔結語〕イメージ課題と模倣課題には,運動課題時に賦活する領域を両課題とも補う傾向にあることから,箸操作訓練の際には運動課題のみではなく両者を取り入れて行う意味があることが示唆された。<br>
著者
武村 啓住 細 正博 由久保 弘明 井上 悟 兼盛 淑子 立野 勝彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.71-76, 2001 (Released:2001-12-27)
参考文献数
13
被引用文献数
7 7

目的 : ラット膝関節拘縮モデルを用い、関節構成体である関節包や関節軟骨がどのような変化を起こしているのかを組織学的に観察し、検討した。対象と方法 : 9週齢のWistar系雄ラット3匹の右後肢を股関節最大伸展、膝関節最大屈曲位、足関節最大低屈位、にて固定し固定群とした。左後肢は自由にし対照群とした。採取した膝関節をホルマリン液にて組織固定し、脱灰後パラフィン包埋し標本を作製した。染色はヘマトキシリン · エオジン染色とエラスチカ · ワンギーソン染色を行い、光学顕微鏡下にて関節包、関節軟骨の病理組織学的観察を行った。結果 : 固定群では対照群に比べて関節包の厚さが減少し、線維性結合織が粗性から密性へと質的に変化して弾性線維は減少していた。また固定群では関節軟骨表層の線維増生と考えられる変化が観察された。結論 : 以上の変化は関節構成体である関節包、関節軟骨の萎縮と考えられ、この概念提起が有効であれば、筋や骨と同様関節包、関節軟骨にも廃用性萎縮の概念が適用できる可能性が示唆された。
著者
加辺 憲人 黒澤 和生 西田 裕介 岸田 あゆみ 小林 聖美 田中 淑子 牧迫 飛雄馬 増田 幸泰 渡辺 観世子
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.199-204, 2002-08-20
被引用文献数
27 20

本研究の目的は,健常若年男性を対象に,水平面・垂直面での足趾が動的姿勢制御能に果たす役割と足趾把持筋力との関係を明らかにすることである。母趾,第2~5趾,全趾をそれぞれ免荷する足底板および足趾を免荷しない足底板を4種類作成し,前方Functional Reach時の足圧中心移動距離を測定した。また,垂直面における動的姿勢制御能の指標として,しゃがみ・立ちあがり動作時の重心動揺を測定した。その結果,水平面・垂直面ともに,母趾は偏位した体重心を支持する「支持作用」,第2~5趾は偏位した体重心を中心に戻す「中心に戻す作用」があり,水平面・垂直面での動的姿勢制御能において母趾・第2~5趾の役割を示唆する結果となった。足趾把持筋力は握力測定用の握力計を足趾用に改良し,母趾と第2~5趾とを分けて測定した。動的姿勢制御能と足趾把持筋力との関係を分析した結果,足趾把持筋力が動揺面積を減少させることも示唆され,足趾把持筋力の強弱が垂直面での動的姿勢制御能に関与し,足趾把持筋力強化により転倒の危険性を減少させる可能性があると考えられる。<br>
著者
松田 雅弘 渡邉 修 来間 弘展 津吹 桃子 村上 仁之 池田 由美 妹尾 淳史 米本 恭三
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.387-391, 2006 (Released:2007-01-11)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

手指対立運動時の感覚運動野(sensorimotor cortex: SMC)の賦活の左右差を,機能的MRIを用いて検討した。対象は右利きの健常成人12名で,1秒間に1回の速度で連続的に手指対立運動を自発的に行う課題を右手,左手各々において行った。右手,左手運動時の対側SMCの平均賦活信号強度は,右手運動より左手運動で有意に高かった(右手,左手,各々11.68,16.82, p<0.05)。さらに,右手運動時は対側SMCのみに賦活が見られたのに対して,左手運動時は両側SMCに賦活がみられた。以上の結果は,巧緻性の低い左手は右手に比べ、多くの神経活動を必要とすることを示唆している。
著者
藤田 浩之 中野 英樹 粕渕 賢志 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.199-204, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
27
被引用文献数
2

〔目的〕本研究は足底知覚トレーニングが後期高齢者の立位姿勢バランスの安定化に対しての有効性を検証した.〔対象〕介護老人保健施設に入所する後期高齢者19名とし,トレーニング群9名,コントロール群10名にそれぞれ無作為に振り分けた.〔方法〕トレーニング群には硬度の異なるスポンジマットを弁別させ,コントロール群には一定の硬度のスポンジマットにて立位姿勢を保持させ,10日間実施した.〔結果〕トレーニング群に立位重心動揺値の有意な減少が認められた.〔結語〕これらの結果より生理的に感覚機能が低下する後期高齢者においても,立位姿勢バランスの安定化に対して足底知覚課題が有効的に作用することが示唆された.