著者
小笠原 法子
出版者
東邦大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究は、ストーマ(人工肛門)を保有した人とその家族の「折り合い」を明らかにすることを目的とする。ストーマ保有者11名とその家族7名にインタビューを実施した。ストーマ保有者とその家族に共通していたのが「しょうがない」という言葉であった。「しょうがない」とは、他によい手段がないと思えることである。「折り合い」とは、諦め・妥協ではなく、ストーマ保有者とその家族が最も大切にしていることを守るためには他に手段がなかったと思えることである。
著者
本田 晃子
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究の目的は、1930年代から1950年代にかけて生じたソヴィエト・ロシア建築の全体主義化において、マスメディアの果たした役割を検証することにある。このような目的のもとに、スターリンの首都再開発計画ゲンプランによって激しい変化のさなかにあった首都モスクワをめぐる、建築批評のテクストおよび映画作品をとりあげた。そしてこれらのメディアによって媒介された言説・イメージの分析を通して、連邦の特権的中心としての首都モスクワという神話的建築空間が形成されていった過程を明らかにした。
著者
岡本 徹
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

日本脳炎ウイルス感染によってアポトーシスを抑制するタンパク質Mcl1が顕著にプロテアソームによって分解を受けることを示しCRISPR/Cas9を用いた遺伝子破壊技術を用いてヒトの肝癌由来細胞株であるHuh7で、Mcl1欠損細胞とBcl-x欠損細胞を作製し、各ウイルス感染における細胞死の変化を調べた。すると、日本脳炎ウイルス感染では、Bcl-x欠損細胞で顕著に細胞死が亢進したが、Mcl1欠損細胞では野生型のHuh7と同程度だった。Bcl-x欠損細胞では、その生存がMcl1に依存しているため、日本脳炎ウイルス感染によってMcl1が分解され、死に至ったと考えられた。
著者
高橋 康介
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は可視化データ認知におけるバイアスの発生機序の解明、及びバイアス除去のための学習法の確立を目指し、以下の3 つのテーマについて実験研究を行うものである。(1)グラフ理解課題時の眼球運動測定を行い、視線パターンのダイナミクスを同定する。(2)高次データ変換法を用いた認知課題により、グラフ理解におけるノービスとエキスパートの認知モデルを明らかにする。(3)可視化データ認知におけるバイアス除去のための学習法を開発し、効果を検証する。初年度は当初計画通り(2)の高次データ変換法を用いた認知実験を行った。高次データ変換法とは3次元以上からなるデータに対して部分次元の関係を複数のグラフで呈示し、それらを統合することで高次元データの把握を求めるという新規な手法である。予備的実験として当初予定の実験内容(グラフ作成課題)を実施した結果、課題難易度が非常に高く、エキスパートの被験者にとっても課題遂行が困難であった。このため実験課題を一部変更し、部分的に情報が欠落したグラフを完成させる課題に変更した。課題変更の結果、ノービスの被験者であっても課題を遂行できる程度の難易度に調整することが可能であった。実験の結果、試行を重ねるにつれて課題遂行時間や正答率において向上が認められた。また呈示する部分グラフ次元の空間関係による効果も認められた。今後、学習進行に応じたバイアスの減少等の詳細な分析を行う予定である。
著者
井上 雄介
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

体内埋込型の超小型顕微鏡装置の基礎的な開発を行い、倍率の異なる3種類の装置を開発した。ポリグリコール酸の不織布を足場として組み込むことで、安定した視野と解像度を確保した。完全人工心臓を用いて短期慢性動物実験を6度行った。最長121日間完全人工心臓で駆動し、その間継続して微小循環観察を続けた。駆出波形や運動負荷、薬物による微小循環への影響を長期的に数日間に分けて観察し、解析を行った。拍動流と連続流では微小循環に流れる血流量には差があることが確かめられた。
著者
鮫島 輝美
出版者
京都光華女子大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、「病院」という場を前提とした近代的人間観を見直し、在宅という場の多様性・複雑性をも視野に入れた「ナラティブモデル」の人間観を採用し、在宅ケア支援を総体的に捉えるために、関係論(状況論)的分析を試みた。その結果、以下の4点について成果を得た。(1)在宅医療をめぐる問題点の再整理(2)当事者・利用者が求めている在宅医療のあり方について「療養の場」としての在宅というキーワードからの再検討(3)2つのフィールドワークから、医療者・ヘルパーなどの関係性に注目した考察(4)在宅ケア支援モデルの提案。
著者
杉崎 哲子
出版者
静岡大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日常に生きる書写指導の確立をめざし、まず字形が乱れる場面や要因を明確にし、次に姿勢と持ち方による字形の変化を検証した。続いて「なぞり書き」と「空書」、それらを融合したタッチパネル上への指やペンでのなぞり書き(「空なぞり」)の効果を検証した。さらに、字形の乱れが著しい横書き速書きの平仮名について、文字と文字とのつながり部分に注目したトレーニングを考案し、中学校において実践を試みた。
著者
渡邉 功
出版者
京都府立医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

我が国において脳血管疾患は死亡原因の第4位であり、寝たきりの最大要因となっている。脳血管疾患は高血圧や糖尿病等の関連とともに無症候性脳出血との関連も報告されている。本研究において、無症候性脳出血発現とコラーゲン結合能をコードする遺伝子を有するStreptococcus mutansの関連を認めたが、認知機能との関連は明らかではなかった。口腔内常在菌と脳血管疾患の関連が示唆された。
著者
赤澤 真理
出版者
同志社女子大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は、平安時代の皇后・内親王が参加した行事に着目し、調度や装束による舗設を含めた催しの空間を明らかにする。特に、歌合及び御遊(楽奏)に着目し、『うつほ物語』『源氏物語』『栄花物語』等の王朝文学と古記録の記述を抽出した。皇后・内親王・女房は、寝殿の母屋及び廂に着座し、御簾・屏風・几帳・女房装束の打出により行事の空間を演出した。南廂及び渡殿に公卿が、簀子に殿上人が着座する。打出は、当初は、行事時に高貴な女性に仕える女房の座所周辺を装飾したものが、11世紀後半から12世紀には、公卿の儀礼空間や使者を迎える妻戸等に設置される。すなわち、打出の舗設としての機能や故実が院政期に確立した。
著者
前島 美保
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は、江戸時代の上方歌舞伎における音楽演出がどのように組み立てられていたかについて、台帳(台本)に基づき明らかにすることをめざしたものである。『歌舞伎台帳集成』を典拠に音楽演出(囃子名目等)を抽出・リスト化する作業を経てわかってきたことは、囃子名目の初出を遡る例や従前には知られていなかった演出技法など、極めて豊富かつ具体的な用例の数々である。本研究で得た基礎データの慎重な分析と解釈が、今後の課題となる。
著者
三宅 芙沙
出版者
名古屋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

樹木年輪の14C濃度や氷床コアの10Be濃度は過去の到来宇宙線量を記録していると考えられている。本研究では、年輪の14C濃度測定から発見された西暦775年と西暦994年の単年宇宙線イベントの原因を追究し、さらなる宇宙線イベントを探索することを目的としている。南極ドームふじ氷床コアの10Be濃度測定から、775年イベントの原因は大規模なSPE(Solar Proton Event)が妥当であることを示した。また、紀元前の年代の14C濃度測定を行い、775年イベントに匹敵するイベントが稀であることを示し、さらに異なるタイプの宇宙線増加イベントを発見した。
著者
末森 薫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

中国甘粛省の麦積山石窟および敦煌莫高窟の壁画を対象として、1)壁画彩色材料光学情報の可視化、2)壁画制作材料・技法の非破壊分析、3)千仏図描写法の解析を進めた。1)では、狭帯域LED光源を用いた光学調査法を確立し、壁画表面の光学情報の抽出に有用であることを明らかにした。2)では、X線回折分析、蛍光X線分析、顕微鏡観察により、麦積山石窟壁画片に用いられた彩色材料や技法を同定・推定した。3)では、敦煌莫高窟の北朝期(5~6世紀)に描かれた千仏図が持つ規則的な描写表現を解析し、石窟空間における千仏図の機能を明らかにするとともに、千仏図の変遷より北朝期の石窟造営の展開について一考を提示した。
著者
ウィルソン ドナルド
出版者
産業医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

我々の実験結果が示唆するには、二酸化チタン粒子の溶かし方及び分散方法は粒子の赤血球や他の細胞への毒性に影響を与える。だから、的確な、そして標準な分散方法を使用して、もっと安定した粒子懸濁液(suspension)を用意する必要がある。現在まで行って来た二酸化チタンによる溶血の実験の結果が示すのは、二酸化チタン粒子のどの種類も溶血を起こす。さらに認められたことは、ヒト赤血球の場合は、二酸化チタンの粒子サイズより結晶構造が細胞障害を起こすのに、もっと大きい要因であると考えられます。この溶血に酸化ストレスの関与を検討するにはグルタチオンの影響及び脂質の過酸化を調べたが酸化ストレスの関与は確定出来ていない。電気泳動の結果、赤血球膜上に存在している低分子タンパク、コフィリン、の発現が抑制されることが示唆されたが結果に終始一貫的な再現性が見れなかったため、コフィリンを含む膜タンパクの同定には至っていない。A549 肺胞上皮細胞に曝露させた二酸化チタンの2種類の微粒子は用量依存性にアポトーシスを誘発し、IL-8 mRNAとIL-8タンパクの遊離をがわずかながら増加し、NF-kB DNA 結合の変化はなかった。
著者
東野 正幸
出版者
鳥取大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究はモバイルエージェントのデバッグの困難性を軽減するシステムの構築を目的としている。モバイルエージェントとはネットワークに接続された計算機間を移動できる自律的なソフトウェア部品である。モバイルエージェントは、自律的に計算機間を移動可能であることから、自律性に基づいた柔軟なシステム構築が可能となる反面、ネットワークやソフトウェアの規模が大きくなるにつれて、どの計算機でどのような処理を行っているのかを把握すること難しくなり、バグの原因特定が困難となる課題がある。当該年度では、モバイルエージェントのバグ原因の特定を支援することを目的として、モバイルエージェントの軽量化と、モバイルエージェントに関連する様々なパラメータを組み合わせてシステム内からバグの疑いのあるモバイルエージェントを検索を行うシステムの構築を検討した。モバイルエージェントの軽量化に関して、モバイルエージェントは移動時にプログラムコードを持ち運ぶことから通信量や移動時間が増加し、そのオーバーヘッドが大きくなる場合がある。デバッグが困難となる環境、すなわちソフトウェアとネットワークの規模が大きい環境においては、モバイルエージェントのデバッグ時に必要な情報を収集する際にも、このオーバーヘッドがデバッグの効率上の問題となる。そこで、モバイルエージェントの移動時の通信量の削減手法を提案し、その効果を確かめた。また、モバイルエージェントが持つ特有の性質である移動性に着目して、モバイルエージェントの検索に必要となるパラメータを検討し、そのパラメータを用いて大規模なネットワーク内から効果的かつロバストに当該モバイルエージェントを見つけ出すための通信プロトコルの課題を分析した。また、提案デバッガのテストベッドとして、モバイルエージェントを用いた分散型e-Learningシステムなどの具体的なアプリケーションの試作を進めた。
著者
伊藤 亜聖
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究プロジェクトでは、中国沿海部に集中してきた製造業が、2000年代後半以降にどのような変化を遂げつつあるかを、産業立地に注目して検討した。地域・産業データを用いた分析の結果、沿海部の産業集積地での「集積の経済性」の発生と、労働集約的産業の内陸部への移転は同時に観察された。このことから、中国製造業は、沿海部での規模を維持しつつも、内陸部へと取引ネットワークと立地が拡散しつつあったと言える。地域別貿易データの分析からも、中国中西部の輸出額の急増が確認され、とりわけエレクトロニクス製品の組み立てを担うEMSの移転が大きなインパクトをもたらしていることが判明した。
著者
吉田 ゆか子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

モノをめぐるバリの信仰や禁忌、モノの物質的特徴、そしてバリから持ち込まれたという履歴が、バリを離れた土地においても、芸能実践に影響を与える。すべてのグループが、楽器や仮面へ供物を捧げる。人々の楽器、仮面、冠に対する愛着や敬意や神聖視するような態度は、モノの取り扱い方法を規定するだけでなく、彼らの活動を精神的に支えたり、バリ文化を味わう契機となったりしている。またバリから運ばれた楽器や仮面や衣装は、上演に真正性を付与する。他方、それらのモノは当該地で変化もこうむる。例えば現地の宗教的文脈のなかで、新たに意味づけられたりする。新たな技術や伝統的な工芸技術を取り入れた創作の試みも行われている。
著者
大石 直樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

加齢性難聴の病態を、有毛細胞が障害される感覚細胞障害型と、らせん神経節細胞死による神経障害型モデルに分け解析した。それぞれのモデル動物に対して、小胞体ストレスをブロックする薬剤TUDCAを長期投与した。その結果、感覚細胞障害型モデルではTUDCAの治療効果は認められなかった。一方、神経障害型モデルでは、TUDCA投与により難聴の進行が統計学的に有意に抑制される傾向を認めた。小胞体ストレスの予防が加齢性難聴の進行を抑制させる可能性について、意義のある結果が得られた。
著者
関根 亮二
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

申請者は、初期発生で重要な遺伝子発現パターンの非対称化がNodal-Leftyシグナル系のみで可能なのか、そのパターンの形成に重要な要素は何なのかという疑問をもった。本研究は、Nodal-Lefty系を培養細胞内へ再構成し、非対称パターン形成が再現できるかどうかの検証を通じて、その疑問に答えることを目的としている。申請者は、人工Nodal-Lefty系を培養細胞(HEK293細胞)に導入し、小さな高Nodal発現領域の自律的な形成を確認し、さらにNodal伝播の亢進によりより大きな発現領域の形成を実現した。さらに、Lefty2による抑制力の向上によるさらなるパターンの改善の糸口もつかんだ。
著者
久松 洋介
出版者
東京理科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

TRAILは、細胞膜上に発現するデスレセプター(DR)に結合し、がん細胞選択的にアポトーシスを誘導する。本研究では、Ir錯体にDR結合性ペプチドを導入した化合物を設計・合成し、がん細胞に対する細胞死誘導活性評価とイメージングを行った。その結果、Jurkat細胞を用いた染色実験で、DR5結合性ペプチドを導入したIr錯体由来の緑色発光が、DR5を発現する細胞膜上で観察された。さらに、フローサイトメーターを用いて、Jurkat細胞、Molt-4細胞、K562細胞に対するIr錯体の結合量を評価した結果、DR5発現量と相関性が示唆された。現在、細胞死誘導活性の向上を指向し、化合物の最適化を検討している。
著者
吉川 順子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

ジュディット・ゴーチエは19世紀後半から20世紀初頭に文学作品を通してフランスに日本文化を伝えた作家である。本研究はその日本関連作品の全体像を構築し、第一作小説『簒奪者』の生成過程の解明を進めた。その結果、日本に関連する行事に触発された執筆、日本の神話や文学への関心、同時代的な問題の投影、身近な資料の駆使といった特徴を見出すことができた。これにより、各作品の源泉調査および時代背景との関連性の考察を行っていくための基盤が作られた。