著者
木村 理恵子
出版者
栃木県立美術館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、研究代表者がこれまで『ダンス!20世紀初頭の美術と舞踊』展(2003年)の企画・編集、「崔承喜の「朝鮮舞踊」をめぐって」(国際シンポジウム「戦争と表象/美術 20世紀以後」平成17年度科研費 研究成果公開促進費(A)及び『戦争と表象/美術20世紀以後』(美学出版、2007年刊))などを通して培ってきた、美術と演劇・舞踊に関する研究を更に深めることを目的としている。今年度は、1931年と1934年に来日公演を行い、石井漠など日本の舞踊家たちに大きな影響を与えた舞踊家アレクサンダー・サハロフに注目し、美術と舞踊の一つの交錯を明らかにすることに努めた。サンロフの舞踊家としてのデビューの契機は、ミュンヘンで「青騎士」グループを形成する美術家ヴァシリー・カンディンスキーやアレクセイ・ヤウレンスキーとの交遊であった。カンディンスキーの芸術活動の中で、その初期に熱心に取り組まれた舞台作品は、彼の綜合芸術の理念との関連から重要な意味をもつものであったことは知られているが、その舞台作品に舞踊家として協力したのが若き日のサハロフである。そこで、1910年前後のミュンヘンにおけるサンロフとカンディンスキーら美術家たちとの交遊を明らかにし、石井漠におけるサハロフへの興味と受容を調べ、またサハロフ来日時を中心に日本の同時代の批評家たちの反応について文献調査をすすめた。また、日本でのカンディンスキー受容についての先行研究に多くを学びながら、彼の舞台美術の受容のなかにサンロフの影響が見られるかどうかについても調査した。
著者
宮地 朝子
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題は、日本語構文構造史の一として、形式名詞・格助詞・副助詞として言語化される意味機能(比較・程度・限定)と、係助詞として体現する意味機能(其他否定)の関わり、当該の意味機能にかかる文法化を可能にする言語内・外的条件を考察するものである。最終年度は形式名詞の文法化という観点からの歴史的・理論的考察を中心に行った。まず前年度のシンポジウムの成果を論文化し、形式名詞の比較・程度から限定のとりたて助詞へ、あるいはモダリティの助動詞へといった文法機能への用法拡大を考えるためには、名詞句としての特性からの分析が必要かつ有効であることを主張し、係助詞化には否定のスコープの再解釈が要因となるという説を支持した(青木編『日本語の構造変化と文法化』所収論文)。ここには形式名詞による範疇化という操作そのものの意味的文法的特性を追究する必要性の主張も含む。これに基づく具体的実践として、モダリティの助動詞へ対象を広げ、口頭発表「筈からハズへ、訳からワケへ-名詞が文法化するとき」(名古屋大学文学研究科シンポジウム「拡張し変容する日本語」H19.3.3)を行った。ここでは名詞述語文および日本語の名詞の指示の文脈依存性という普遍の構造的前提と、名詞ハズ・ワケの形式化、個別具体から一般抽象へという語用論的再解釈が「助動詞」的用法の獲得につながっていると主張した。また今年度は本研究課題を含む10年来の研究成果として『日本語助詞シカの構文構造史的研究』を上梓した。ここまでに得られた成果と視点・試みの精緻化・発展を目的とし今後は「名詞の文法化」という包括的な新課題に着手する。形式名詞の文法機能への体系的な参画は、古代語と近現代語の顕著な相違である。この発展的課題への着手は、動態としての日本語構文構造の追究という根本的な問題へのアプローチとなるだろう。本研究課題から発した大きな成果と位置づける。
著者
餅原 尚子
出版者
鹿児島純心女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.平成15年度に引き続き、新たに、警察官854名、救急救命士200名を対象に、災害ストレス(PTSD、CIS)、そしてその緩和要因等に関するアンケート調査を実施した(久留一郎氏の協力による)。その結果を、消防職員356名、海上保安官80名の結果とともにSPSSを用いて、以下の視点を中心に、統計処理を行った。その結果、警察官に比較し、消防職員や海上保安官、救急救命士のストレスが高いことが明らかになった。また、救援者全体のクロス集計においては、惨事状況によって、直後にあらわれるストレス(CIS)、しばらく経ってから現れるストレス(PTSD)、直後およびしばらく経過してから現れるストレスが明らかになった。また、そのストレスを予防、あるいは緩和する要因として、自分自身でできること、職場や家庭でできることなどを抽出することができた。2.アンケート調査の結果をもとに、災害ストレスを緩和(予防)するためのガイドラインを作成した。その際、研究協力者(災害ストレス研究〔PTSDなど〕の第一人者である久留一郎氏〔日本臨床心理士会被害者支援専門委員〕)からの支援をもらうことができた。ガイドラインは、本人や職場の同僚、家族等がポケットに入れられるサイズで作成(三つ折り)し、常時携帯できるよう工夫した。また、救援者のみならず、彼らの上司・同僚を含めた全職員、そして家族等へガイドラインを配布し、今後の救援活動に役立てられるよう配慮した。3.今回の結果を冊子にまとめ、調査対象者(消防職員、海上保安官、警察官、救急救命士)へフィードバックした。また、研究会や研修会等で、本研究の報告・発表をし、啓発を行った。
著者
菊地 夏野
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

外国籍(フィリピン)女性の当事者コミュニテイ活動について継続的にフィールドワーク調査を行った。必要に応じてインタビュー調査を行い、当事者の経歴、ライフコースや意識を探った。とくに、当事者たちの法廷闘争に着目し、画期的な判決を出した国籍法改正裁判について調査した。当事者(原告の母)たちのインタビュー調査と、支援団体(NGO)のインタビュー調査を行い、裁判の経緯を調べた。その上で、この闘争が持った社会的意義を考察した。
著者
和田 俊憲
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中止犯における任意性要件は自由意思の問題ではない。自由意思に関わるのは、中止故意、中止の自発性および中止意思である。中止故意については、予防メカニズムにおける自由意思の意義を検討する必要があり、それで足りる。自発性については、制度ごとに相対的な法的概念として位置づければ足りる。脳科学から見た自由意思が直接影響を及ぼすのは中止意思であるが、反省・悔悟が事実的自由意思の不存在を凌駕する要素となりうるため、反省・悔悟の法的意義を解明することが"自由意思の危機"を解決する糸口となる。
著者
東城 幸治
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

昆虫類の高次系統を考察するべく,比較発生学的アプローチによる研究を展開した。特に,カカトアルキ目昆虫類を中心とした研究を行った。前年度までに採取・確保したサンプルを基に,胚発生や卵形態に関する知見を蓄積させ,原始的有翅昆虫類(直翅系昆虫類や旧翅類昆虫類)における発生プロセスとの比較検討を実施した。系統解析において鍵となるような発生形質:胚発生における胚の陥入anatrepsis,胚反転katatrepsisといった胚運動blastokinesisのシステムに関しては,初年度および18年度より知見を深め,この他,卵形成や卵形態(特に卵門micropyleなどの微細構造)の比較から,カカトアルキ目とガロアムシ目の類縁性を議論してきた。典型的な短胚型発生をし,はじめは卵内に浅く陥入し,その後に平行的に卵内に潜り込み,卵中央に定位することなど,ガロアムシ目との共通性が強く認められた。一方で,胚反転前のステージでありながらも,胚体としては孵化直前のレベルに近いほどによく形態形成が進んでいること(遅延的な胚反転)など,他の昆虫類の胚発生には認められない,本目独自の形質も認められた。この特殊性は,長く厳しい乾季を凌ぐ上で重要な形質であると考えられると共に,カカトアルキ目の単系統性を示唆する重要な形質の一つと言える。これらの研究成果は,海外の研究グループによる頭部形態や精子形成,分子系統解析などの研究からの考察とも矛盾なく,本研究における成果の妥当性が示唆される。これらの知見を,20年度に開催される国際昆虫学会で発表する予定である。また,本研究の成果のうち,既に学術誌への公表の済んだ内容に関しては,出版社からの依頼により,19年11月に書籍として出版した。
著者
滝口 昇
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は、マウスのにおい識別ルールの解明をさらに進め、バイオプロセスへの適用をおこなうために、昨年度の結果をふまえた上で以下の内容を実施した。(1)難易度の高い課題において見られる個体差を解析するために、Y字迷路に適用可能なビデオイメージング解析法を構築した。この方法により各種行動パラメータに基づいた個体差のクラスタ解析が可能となり、個体差とアテンションとの関係を検討する基盤を確立することが出来た。(2)脳内の各部位における情報の伝達量が、学習によりどのように変容しているのかをMAPK(ERK1/2)のリン酸化を指標にDotBlqttingを用いて調べた。その結果、複合臭刺激に対してにおい情報の入ロである嗅球では情報伝達量が増大しているのに対し、嗅皮質に伝達される段階もしくは嗅皮質において不必要な情報が削減されていた。この結果は、嗅球から嗅皮質への情報の伝達過程においてアテンションが存在する事を示唆している。(3)また、嗅球および嗅皮質前方部の活動についてより詳細に調べるため、神経可塑性関連遺伝子であるc-fosにより発現するタンパク質を免疫染色により解析した。単一におい物質に対する学習前後での嗅球糸球体の反応パターン変化を調べたところ、パターンの変化が単純な簡略化ではないことが明かとなった。(4)におい識別情報処理系のモデル化と新規プロセス制御系構築のために、マウス嗅覚情報処理系の物理的構造に基づいたコンピュータモデルの検討をおこなった。まなにおい識別情報処理系の培養バイオプロセスへの適用のため、pH、温度、DO、撹拝速度をモニターする制御系への組み込みを試みた。このようなデータの結果をふまえ、今後は、個体差について行動解析だけではなく、飼育環境やグループ内の順位等を手がかりに解析するとともに、アテンション形成との関連性についても解析していく。またにおい識別情報処理系の培養バイオプロセスへの適用についてさらに検討を進めたい。
著者
木下 央
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

<調査活動>年度前半は予備的調査を行うと同時に研究の枠組みの検討を行った。年度半ばには、前年度の調査旅行時の資料収集でカバーしきれなかった図面資料を追加すべく、Victoria & Albert Museum及びBritish Libraryにおいて資料収集を行い成果をあげた。またヴァンブラの代表作であるカッスル・ハワードを訪れランドスケープ調査および建築の調査を行った。さらに現地での調査及び資料収集で得た研究材料に加え、国内からも積極的に資料収集を行った。<分析・研究>以上の活動より得られた研究資料をもとに、ヴァンブラの建築作品に見られる平面の構成手法に関する分析を行い、成果を上げた。その一部は日本建築学会大会で発表した。また追加調査により得られた図面資料を使用した分析を行い併せて論文集に投稿を準備している。本年度は特に建築図面を用いた研究に加え、ヴァンブラの喜劇作品の分析およびヴァンブラと修道士ジェレミー・コリヤーとの論争を分析し、そこに見られる古典主義への依拠を確認した。また古典という概念と田園の風景という物が分かちがたく結びついており、古典の概念がヴァンブラをピクチャレスク建築の構想へと導いたということが推察された。更に今後の課題としてヴァンブラの建築・喜劇作品における都市と田園という位相とヴァンブラがかつて滞在したインドのスラトにおける都市計画の関係について今後一層の調査研究を行う予定である。
著者
朴 正洙
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、近年日系企業の課題となっている反日感情の重要性と実態について、敵対心と消費者エスノセントリズム研究を踏まえたうえ仮説モデルを構築し、日本の主要輸出相手国(アメリカ・中国・韓国・台湾)の消費者を対象に大規模な国際比較調査を実施した。その主要な研究成果として、反日感情に関連した諸概念の再構築が行われるとともに、日本の主要輸出相手国の消費者観点から反日感情の実態確認、そして反日感情モデルの信頼性と妥当性をアメリカ・中国・韓国・台湾の消費者を対象に検証したことによって、反日感情のメカニズムが明らかにされた。
著者
渡部 淳
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

中国本土・香港を中心としたフィールドワークや、国際学会への参加・発表・交流などで以下のことが明らかになった。改革解放後の中国においては、それまで全ての組織が党・政府・国家の一部であったものが、急激な社会経済変化に伴って、様々な新しい問題や社会状況を生み出している。土地、不動産などの私有財産の所有と、業界団体の権限の増加により、党・政府の外側に多様な社会団体を生み出した。これらの新しい社会団体は、直接あるいはメディアなどを通して間接的に、政府の方針と必ずしも一致しない意見を主張し、その数と影響力は増してきている。国内のNGOは環境、貧困救済、人権といった、経済成長の歪みに関する現場の知識・情報を生かしながら、これらの社会的問題の解決を助けたり、あるいは政府に抗議・提言などを行ったりしている。NGOのように新しい組織力や知識を持った団体が政府に行政訴訟で勝訴することが多くなっている。海外からの国際NGOもこの動きに参画して、活動も多様化している。中国と韓国では、社会的議論の惹起にマスメディアが果たす役割が大きいが、特に中国ではマスメディアが社会批判や社会改善の議論のプラットフォームとなって、学者、専門家、政府のシンクタンクの研究員などの知識・思想を社会に伝達している。このマスメディアの機能は、北東アジアの社会変化のキーとなっているが、国際関係において特定の見方やトピックに偏った報道によって、北東アジア諸国のお互いのイメージを損ない歪曲する否定的な面も、中国でのサッカーでの暴動や、反日デモの報道などで確認された。日中韓の各社会には、国際協力を希求する知的センターが存在し、潜在的に地域的なネットワークやコミュニティーを形成する能力を持ち、またそのような意図を内包している。これらの知識力の地域レベルでのネットワーキングは始まったばかりであるが、将来的に影響を増すことが予想される。
著者
佐藤 隆之
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

わが国では、被疑者取調べをめぐって、これまで、被疑者の黙秘権に焦点を当て、その侵害の有無によって、その適否を判定する方法が採用されてきた。しかしながら、どのような場合に被疑者の意思が圧迫され、また、緊張・疲労の結果、供述に関する意思決定が歪められたといえるか自体、必ずしも判断が容易ではなく、他方で、裁判例に対しては、明示的に取調べを拒否しなければ、被疑者の同意があるとされているのではないか、という批判も向けられるなど、被疑者の権利・自由の現実的な侵害のみに基づく従来のアプローチが、十分機能していない状況にあったといえるように思われる。本研究は、そのような状況を踏まえ、被疑者取調べの適正さを確保するために、取調べの方法・条件を客観的な準則として明確化し、それからの逸脱の有無・程度を基準にして、その適法性を判定する手法を採用する可能性を探ることを目的とするものである。この点、本年度の研究では、在宅被疑者の取調べに着目して、被疑者の同意がある場合にも、その取調べに応ずるか否か、供述をするか否かを決定する自由に対する配慮という観点から、その限界が導かれ得ることを示した。従来、宿泊を伴う取調べや徹夜の取調べに関する最高裁判例は、被疑者の供述の自由を、捜査上の必要と比較可能な利益と捉えていると批判されてきたが、取調べに応じるという被疑者の同意が有効である場合にも、なお取調べを規律する余地があることを認めているという新たな理解を提示できたことは、取調べ準則制定の可能性を拓く重要な基礎と位置づけることが可能だと思われる(被疑者の意思の自由に対する配慮という観点は、逮捕・勾留されている被疑者の取調べの場合にも同様に妥当すると考えられる)。
著者
荒井 洋一
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては、通常は2つ、もしくは有限個の値をとると考えられる政策変数が連続の値をとる場合における政策評価の計量理論の研究を行った。また、従来の政策評価の計量理論においてはクロスセクションのデータのみを対象としているが、本研究においてはそれを時系列データも対象とできるように理論を拡張した。また、提案された計量時系列分析の理論を用いて外国為替市場における為替介入の効果の分析を行った。
著者
田中 正弘
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

イギリスの新しい授業料・奨学金制度の効果と問題点を整理し,その成果を基にした日本モデル構築の可能性について,学会発表および学術論文の形式で公表した。例えば,新しい制度に期待できる効果の一つとして,生活給付金の増加や生涯賃金が低い場合の残債務の消滅により,最貧層の学生が生涯にわたって最も経済的な利益を得る可能性が高いことを示し,大学卒業によって得られる実益が低い場合の社会保障になりうることを論じた。ただし問題点として,新しい制度は学生への巧みな増税といえること,および従来の方法より財政面で効率的なのか明らかでないことなども述べた。
著者
新井 洋輔
出版者
東京福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

NPO団体におけるスキル継承過程を検討することを目的に、2件の面接調査と質問紙調査を行った。調査の結果、(1)リーダーの継承がNPO 団体の存続にとって重要であること(2)リーダー自身の交代の予期、交代時期の決定、交代方法の決定が、リーダー交代時の継承内容の決定に必要であること(3)効率的な継承には、運営方法の明文化とともに、後継者との共同作業が求められることなどが明らかにされた。
著者
トウイディ イアン
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

当初の研究計画はアイルランドの現代詩および現代劇における古典文学の影響を究明することであった。但し、アイルランドとイギリスの現代詩は互いに影響を及ぼして活性化しているところがあるので、両者における古典文学の影響に焦点を当てるのがより生産的なものになると思われた。この研究成果は3点あり、ひとつは国際会議で数多く口頭発表したこと、さらに査読付き学術誌に論文が掲載されたこと、くわえて研究書を出版できたことである。
著者
浅岡 陽一 佐々木 真人
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、全天監視高解像度望遠鏡Ashraの性能を最大限に活用し近傍宇宙における重力崩壊型超新星発生頻度を測定することによって、天文学の分野における基礎物理量である星生成率を直接決定することを目的としている。2007年度から、観測地への検出器の設置・データ収集系・モニター系の開発を行い、広視野長期安定観測を開始した。2009年度末までで、実観測時間が計2774時間に到達している。実績として、93%の好天率と99%以上の稼働率を達成しており、超新星探索に必須の長期安定観測が行えている。超新星探索解析に関しては、Ashra光学観測の基本性能といえる限界等級の算出を行った。現在はそれを基に超新星探索システムと感度評価システムの構築を目指して解析を進めている。
著者
西村 雄一郎
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ラオスの首都ヴィエンチャン近郊の農村地域で住民参加型GISを導入・利用し,村民・現地の研究者とともに継続的・長期的な生活環境・自然環境に関わるデータを取得することを可能にする新しい方法の開発を行った.村民の日常生活行動と周辺の環境に関わるデータを長期的に取得し,日.季節などのサイクル的な変化と都市化や開発などによる直線的な変化の両者を継続的に住民自身・現地研究者・申請者の三者で収集・分析を行うことができるしくみを作った.
著者
福本 泰之
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

亜硝酸蓄積に起因する亜酸化窒素(N_2O)発生を抑制する亜硝酸酸化促進法の適応可能範囲を決定するため、ウシ、豚、鶏糞の堆肥化処理における窒素遷移と硝化細菌の動態を調査した。豚糞堆肥化では亜硝酸蓄積が生じ、亜硝酸酸化促進法によって効果的にN_2O発生量を削減できた。一方、牛糞では堆肥化の過程で完全な硝化が速やかに回復し、また、鶏糞では硝化作用自体が起こらず、そのため亜硝酸酸化促進法を適応してもこれらの家畜糞堆肥化ではN_2O抑制効果は小さいと考えられた。
著者
新津 富央 伊豫 雅臣 橋本 謙二 橋本 佐 佐々木 剛 小田 靖典 木村 敦史 畑 達記 井手本 啓太
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

注意障害を伴う精神疾患(気分障害、注意欠如/多動性障害:ADHD)患者を対象に、生体サンプル採取と注意機能測定とを行い、血液中のグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)濃度と注意機能との関連を探索した。その結果、血清中GDNFは成人ADHDにおける注意障害の病態に関連している可能性が示唆された。また、血清中GDNFはうつ病と双極性障害における臨床的重症度と関連していた。血清中GDNFは、ADHDや気分障害のバイオマーカーになる可能性が示唆された。
著者
谷 正人
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、かつて徒弟制の中で実践されてきたイラン音楽の教育観や知識観が、五線譜や練習曲を用いる近代教育的観点の導入によって如何に変容したのかを考察したものである。従来イランでは音楽は口頭で伝承されてきた。しかし『タール教本』(1921)のような教則本の登場によって、それまでのただひたすら師匠の模倣に専念するなかか自ら問いを立て学ぶというような徒弟制的教育に、より具体的で体系的な指導という近代教育的な知識の伝授段階をもたらされたことを指摘した。