著者
片上 かおり
出版者
鶴見大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

下顎骨頬舌側の副孔・栄養管、下顎管分枝など、下顎骨に分布する脈管神経構造のCT画像上の特徴を明らかにした。それらの画像所見の解剖学的、組織学的な裏付けを行うことにより、顎骨およびその周囲組織に分布する脈管神経の解剖構造を明らかにし、その臨床的意義を提示した。
著者
工藤 秀康
出版者
東邦大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年開発され、臨床的に利用されているflip angle可変型3D FSEは、比吸収率(SAR)を抑制することを実現した非常に画期的な撮像シークエンスである。2Dシークエンスと異なり、1mm以下の薄いスライス厚での評価が可能で、3次元的な任意の断面での観察することも可能である。ここでは薄層3次元再構成MRIと呼ぶ。こうした臨床利用は撮像パラメーターの調整が難しい面もあり、臨床利用が進んでいなかった。そこで我々は、膝関節を標的とし、3T MRIを用い、flip angle可変型3D FSEの利用を考え、撮像条件の検討を行った。撮像シークエンスは3D FSE SPACEで、1mm以下のスライス厚を考え、0.6mm程度が膝関節MRIにおいて最適なスライス厚との結果を得た。撮像パラメーターを調整し、6分台まで撮像時間を短縮できた。本研究では外側半月板後方支持組織という関節内微細構造の評価が目的であるため、関節内構造を対象に脂肪抑制プロトン密度強調画像とした。膝関節MRIで3D FSEを撮像し、外側半月板自体に異常が確認されなかった症例を対象として外側半月板後方支持組織について3D FSE、それをもとに再構成された再構成像で観察した。外側半月板後方支持組織としてmeniscofemoral ligaments、popliteomeniscal fasciclesを観察した。従来の2D FSEでの描出率よりも3D FSEでのほうがいずれの構造についても描出率は高かった。3D FSEでの観察は屍体膝を用いた過去の報告と一致していた。生体での評価方法としては、従来の2Dシークエンスによる評価方法に比べ、はるかに良い結果となった。さらに外側半月板後角の逸脱した症例ではpopliteomeniscal fasciclesの破綻があることが推測される結果となった。我々が考案した3D FSEを用いた薄層3次元再構成MRIは外側半月板後方支持組織の観察に有用で、外側半月板後角逸脱では外側半月板後方支持組織の破綻が推測される結果となった。
著者
齊藤 信夫
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

インフルエンザ流行防止策として学級閉鎖の効果を解析するため、閉鎖状況の情報収集を行ったが、解析に十分な閉鎖回数、期間がみられなかった。今後、他地域でも情報収集を行う必要がしめされた。流行防止対策として、最も重要であるワクチンの効果について解析を行った結果、ワクチンの発症防止効果は2011/2012~2013/2014シーズンでインフルエンザAに対して32%、Bに対して13%と低い防御効果であった。ワクチン効果が低い要因として、毎年、連続してワクチンを接種するとワクチン効果が用量依存的に下がるということを統計学的に示すことが世界で初めてでき、感染症領域で最も権威ある国際誌で発表した。
著者
渡辺 顕
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

母体血漿中に胎児由来のDNAが浮遊している事が報告されている。この胎児由来DNA量は妊娠中毒症や早産、また、胎児がDown症の症例で増加すると報告されている。今回、妊娠初期の胎児由来DNA量をY染色体特異的なDYS14遺伝子を定量することで評価した。302例の妊婦で検討したところ、男児妊娠例139例中135例でDYS14遺伝子を同定した。女児妊娠例ではDYS14遺伝子は検出されなかった。この胎児性別検査法のSensitivity:97.2%、Specificity:100%、Positive predictive value:100%、Negative predictive value:97.5%と精度の高い検査法であることがわかった。また、この検討で妊娠9-14週頃の症例が妊娠16週以降の症例に比較して胎児DNA量のばらつきが大きいことを見出した。妊娠9-14週で高値を示した症例について臨床的な背景、その後の妊娠合併症の発現について検討をおこなったが、妊娠中毒症や早産などとの関与はなかった。しかし、妊娠悪阻症状の強い患者が多かったことから、その関与について検討を行った。その結果、妊娠悪阻にて入院した症例は、妊娠悪阻症状を認めなかった症例にに比較し、有意に母体血漿中胎児DNA量が高値を示すことがわかった。また、母体血漿中beta-hCG濃度と胎児DNA濃度が有意に正の相関を示した。このことから、妊娠絨毛の活発な母体脱落膜への侵入などが母体の免疫系を刺激し、母児境界で両者の鬩ぎ合いが起こっていて、その結果として母体血漿中胎児DNA量が増加すると考えられた。この結果は妊娠のその病態を理解する上で重要な所見であると考えられた。
著者
村中 厚哉
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

円二色性(CD)と磁気円二色性(MCD)強度が共に強い有機分子を開発するために、卍形の分子構造を持つキラルなフタロシアニン系有機色素を新規に合成し、その光物理特性について調べました。このような分子は、新しい磁気光学効果である磁気キラル二色性(MChD)が観測されることが期待されています。卍形異性体が得られた化合物に関しては、光学分割を行い、CD・MCDスペクトルを測定し、量子化学計算を用いて絶対配置を帰属しました。
著者
中田 友明 菊山 榮 豊田 ふみよ 山岸 公子 横須賀 誠 蓮沼 至 中倉 敬 中西 功樹
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脊椎動物の性フェロモンの繁殖制御機序を解明するために、イモリの性フェロモンであるソデフリンの受容機序について分子・細胞・組織レベル、さらに個体群間において調べた。その結果、ソデフリンは繁殖期にプロラクチンとエストロジェンの影響で増加する鋤鼻器の感覚細胞で受容され、受容体は受容細胞に発現するGタンパク質から2型鋤鼻受容体であること、2つのシグナル伝達系を経て発生した性フェロモンの感覚信号は脳の副嗅球を一次感覚中枢として処理されることを見出した。また、フェロモンの構造と活性の発現には地域差があることが明らかになり、性フェロモンによる繁殖制御機序の一端が解明できた。
著者
大栗 隆行 文 昇大 矢原 勝哉 欅田 尚樹 法村 俊之 興梠 征典
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

温熱療法と高気圧酸素治療は、それぞれ抗癌剤の治療効果を増感することが確認されているが、両者を抗癌剤に併用した場合に治療効果の増感が得られるかの検討はなされていない。抗癌剤(カルボプラチン)に温熱療法および高気圧酸素療法の両者を併用した際の効果をマウスに移植した腫瘍を用いて検討した。結果としてカルボプラチン・温熱・高気圧の3者を併用した場合、最も腫瘍成長の遅延が生じる点が確認され、有効な治療法となる可能性が示された。
著者
加藤 寛之
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

以前の疫学調査の結果、アレルギー疾患罹患者かつ治療歴の長い患者は膵癌の発生は低いという報告がなされた。この報告から抗アレルギー薬には膵癌発生予防効果があるのではないかと考えハムスター膵発癌モデルを用いて実験を行った所、4種類の抗アレルギー薬からロイコトリエン受容体拮抗薬のみが有意な膵発癌予防効果が有ることが分かった。その機序として、膵星細胞内から分泌される物質を修飾する事により、Smad3経路を介して増殖抑制効果を来している事が推測された。
著者
河野 正充
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

乳幼児の免疫学的未成熟な期間における母体免疫の有効性について、従来より指摘されている移行抗体の役割のみではなく、免疫担当細胞の誘導や免疫学的メモリーの獲得等、乳幼児自身の免疫システム構築の側面から検討を行った。①肺炎球菌の表面共通蛋白抗原であるPspAを用いた母体免疫により、新生児マウスの脾臓において抗PspA特異的抗体産生細胞が非免疫群由来の新生児マウスと比較して有意に多く検出された。すなわち、母体免疫により新生児マウスの体内には経胎盤あるいは母乳を介した移行抗体のみではなく、肺炎球菌に対する免疫担当細胞が誘導されていることが確認された。②母体免疫により誘導された抗肺炎球菌特異的免疫能は、肺炎球菌感染症に対する予防効果を認めた。母体からの移行抗体が消失している5週齢前後の仔マウスにPspAを皮下接種し、抗肺炎球菌特異的抗体を誘導した後、肺炎球菌を全身感染させた。免疫群由来の仔マウスは非免疫群由来の仔マウスと比較し、生存期間の有意な延長を認めた。③母体免疫により、仔マウスは肺炎球菌抗原に対する長期的な免疫学的メモリーを獲得した。5週齢前後の仔マウスにPspAをアジュバントを用いずに皮下接種し、血清中に誘導される抗PspA特異的抗体を経時的に測定した。非免疫群由来の仔マウスでは抗体価の上昇は軽度であり、PspA皮下接種から2週間後に血清抗体価のピークを認めたのに対し、免疫群由来の仔マウスの血清中抗体価は接種後1週間後から有意な上昇を認め、2週目以降も抗体価の上昇を認めた。PspAを用いた母体免疫により、新生児マウスに抗肺炎球菌特異的免疫応答の持続的な誘導を行うことが示された。今後、免疫誘導の詳細な機構を解明することで、新たなワクチン開発における有用な情報が得られることが望まれる。
著者
篠原 新
出版者
広島修道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

これまでの日本社会党に関する研究ではイデオロギーや政党組織に注目が集まる一方で、社会党が行ってきた国会質問についてはほとんど注目されてこなかった。本研究では、政府への鋭い追及で「国会の爆弾男」と呼ばれた楢崎弥之助元衆議院議員の資料を分析し、社会党による国会質問を実証的に研究した。その結果、楢崎が外交安保だけでなく地方自治にも関心を抱いていたこと、さらには、非核三原則をめぐる国会質問で、楢崎が計画していた質問の全体構造やその後の政府方針の変化、さらには楢崎が計画はしていたが実際には言及できなかったことなどが明らかとなった。
著者
辻 かおる 小澤 理香 高林 純示
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、(1)花形質の雌雄差の解明の研究を雌雄異株植物ヒサカキを用いて行い、匂いと蜜成分について新知見を得た。また、(2)送粉者の観察と行動実験から、送粉者の反応が雌雄の花で異なることが明らかになった。具体的には、匂いの主成分のイオン強度(匂いの強さ)に有意な雌雄差はなかったが、微量成分は雄花で多く放出されていた。一方、花蜜に含まれる糖の主成分の濃度は雌花で有意に高かった。さらに、送粉者を用いた行動実験では、送粉者の花での滞在時間は雄花より雌花で長くなっていた。これらの結果から、花の雌雄差とそれに対応する送粉者の行動が新たに明らかになった。
著者
中村 肇
出版者
成城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は、自律的規範と他律的規範の関係につき、まず、合同行為に相当する団体法に関連して、組合員の組合からの脱退を制限する合意の効力が問題となった事案について、判例評釈を行った。かかる判断は、組合の団結権の保障よりも個々の組合員の団体選択の自由を保障することを優先するものであり、本研究テーマにとって興味深い。契約関係に関するものとしては、第71回日本私法学会において、「事情変更の顧慮とその妥当性」という表題で個別報告を行った。従来から行ってきた事情変更の原則論の淵源理論たるclausula rebus sic stantibus理論の展開につき、18世紀の法典編纂の時代の立法内容、それに関する学説・実務の展開を中心にして検討した。さらに、現在のドイツ法との比較を行うことで、古典的なclausula理論の中での議論が現在の議論と同様の問題意識を持っていたこと、そこでの議論が現在の視座にとっても有益であることをあきらかにすることを試みた。ほかに、山田卓生先生の古稀記念論文集に提出した論説において、ドイツの2002年債務法改正に際して立法化が見送られた「一時的不能」の問題について検討を加えた。一時的不能という給付障害法は、わが国でも従来議論されておらず、自律的決定の限界問題の一つとして、位置づけることが可能である。ドイツ法は、改正の際に当初は一時的不能の明文化を試みていたところ、議論の末、従来通り学説、判例に取扱いをゆだねることになっている。わが国での債務法改正の議論においても、同様の問題が起こる可能性があり、ドイツでの議論は参照に値しよう。その他に、自賠法に関して、自賠法に規定された支払基準の損害算定に際しての拘束力が問題となった事案について判例評釈を行ったこと、利息制限法違反の過払い利息の返還に関連する判例評釈を行ったことを付け加える。いずれも特別法に関連する事案であるが、特別法上の規定の解釈が問題となった場面であって、本研究テーマと関係するものである。
著者
杉田 和成
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

我々はナイアシンアンタゴニストおよびナイアシン欠乏食を用いて、ペラグラモデルマウスの作成を試みた。ナイアシンアンタゴニスト投与下でマウスに紫外線を照射すると、皮膚炎症が増強し、ドップラーエコーにより皮膚血流増加が観察された。興味深いことに、紫外線皮膚炎の増強に加え、体重減少と下痢も認めたことから、我々のマウスモデルはペラグラに特徴的な症状を伴った有用なモデルと考えられた。
著者
臺丸谷 美幸
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アメリカ合衆国市民として朝鮮戦争へ従軍した日系アメリカ人二世に焦点をあて、従軍が彼らの社会生活へもたらした影響をジェンダーとエスニシティの視点から解明した。カリフォルニア州出身者を対象とし、日系新聞の分析、退役軍人へのインタビュー調査、朝鮮戦争記念碑建設などにみる従軍経験の再記憶化の考察を行った。日系二世たちにとって従軍経験は退役後の社会参入を促し、進学や就職へ直結する生活基盤を築く契機となったが、この背景には1950年代の冷戦対立と国内の人種政策が密接に絡んでおり、これは合衆国における移民の排除と包摂を巡るポリティクスとして捉えることが可能であることを示した。
著者
土生川 光成
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

比較的急性期で薬剤未投与のPTSD患者10名(PTSD群)に対して治療前後で主観的および客観的睡眠評価を行った。主観的睡眠評価は自記式の睡眠日誌と夢日誌にて、客観的睡眠評価は睡眠ポリグラフ検査(PSG)とアクチグラフ・モニタリングにて行った。PTSD群の治療前のPSG所見と、PTSD群と年齢・性別を一致させた健常者10名のPSG所見を統計学的(ANOVA)に比較した。PTSD群では健常者に比べ、中途覚醒時間が有意に増加し(35.9±19.7分 v.s 11.1±6.6分, P<0.01)、睡眠効率が有意に減少していた(85.5±2.5% v.s 94.9±2.1%, P<0.0001)。睡眠構築においてはPTSD群でStage 1睡眠が有意に増加し(11.6±5.7% v.s 6.8±2.8%, P<0.05)、Stage 3+4の深睡眠が有意に減少していた(7.9±7.4% v.s 18.1±7.9%)。また悪夢の訴えの多いPTSD患者ではREM睡眠の中断(REM interruption)が特徴的で、Percentage of REM interruptionsは健常者に比べPTSD群で有意に増加していた(9.8±8.6% v.s 2.2±1.8%)。さらにPTSD群ではCAPS(PTSD臨床診断面接尺度)の下位項目である悪夢の得点(頻度+強度)と中途覚醒時間およびPercentage of REM interruptionsが正の相関を示した(各々、R=0.77,P<0.01,R=0.63,P<0.05)。また夢日誌とアクチグラフ・モニタリングの組み合わせにより、PTSD患者2名で外傷体験に直接関連した悪夢の出現後に30-40分に及ぶ中途覚醒(睡眠維持困難)を認めた。これらの結果より、PTSD患者での外傷体験に直接関連した悪夢は、中途覚醒時間の増加やREM睡眠機構の異常(REM interruption)を引き起こす重要な因子であることが明らかとなった。内分泌学的検査は船舶事故後にPTSDを発症した3例で24時間ホルモン採血を施行したが、健常者に比べ、11:00から20:00の間のコルチゾールが低下せず高値を示した。これはPTSD患者では健常者に比べ、朝起床後から夕方までストレスが持続していることを示唆する所見であった。薬物療法の効果の検討では、パロキセチン投与により7例のうち4例で悪夢が消失し、3例で悪夢が軽減した。またベンゾジアゼピン系睡眠薬では十分な睡眠確保が得られず、熟眠感が欠如しているような場合、クロルプロマジン投与が有効であり、5例中4例で深睡眠が増加し、熟眠感の欠如も改善した。
著者
松田 一徳
出版者
北見工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Koszul代数の概念は、標準的次数付き二次代数に対して定義されるものである。本研究課題の目的は、(1)Koszul代数と関連が深い環論的不変量の研究、(2)Koszul性と他の環論的性質との関係の研究、(3)Koszul代数の例の構成、の3つの視点からKoszul代数を多角的に研究することであった。主な研究成果は以下の通りである。1. 任意の正整数r、sに対しCastelnuovo-Mumford正則度がrかつh多項式の次数がsとなるKoszul代数が存在することを示した。2.剰余環がKoszul代数となることが知られているエッジイデアルに関して、いくつかの研究成果を挙げた。
著者
池上 めぐみ(朝戸めぐみ)
出版者
星薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

肥満はうつ病や認知症などの中枢神経系疾患の発症リスクを上昇させる可能性が示されているが、その詳細は不明である。肥満は慢性的な全身性炎症を伴うことが知られている。また、炎症性サイトカイン類の上昇は中枢神経系の機能や細胞の形態を変化させることが報告されていることから、肥満による炎症性サイトカインの上昇が中枢神経を障害し、脳高次機能を低下させる可能性が想定される。そこで本研究では、肥満による脳高次機能障害が脳での炎症性反応に起因するという観点の下、記憶や不快情動反応といった脳高次機能に関わる脳部位である海馬と扁桃体に着目し、脳内の炎症反応に重要な役割を果たすとされるアストロサイトおよびミクログリアの変化を検討した。実験には4週齢のC57BL/6J系雄性マウスを用いた。食餌誘発性肥満 (DIO) マウスは高脂肪食を16週間負荷することで作製した。対照マウスは通常飼料で16週間飼育した。DIOマウスの海馬におけるGFAP陽性アストロサイトとIba-1陽性ミクログリアの変化を免疫組織学的手法により検討したところ、GFAP陽性アストロサイト数ならびにIba-1陽性ミクログリア数はいずれもDIOマウスで減少していた。次に、扁桃体のGFAP陽性アストロサイトおよびIba-1陽性ミクログリアの変化を検討した。その結果、対照マウスおよびDIOマウスの扁桃体においてGFAP陽性アストロサイトの発現は認められなかった。一方、DIOマウスにおいてIba-1陽性ミクログリア数は対照マウスと比べて減少していた。以上の結果から、DIOマウスでは、海馬におけるアストロサイトとミクログリア、および扁桃体におけるミクログリアが減少し、脳内環境が変化していることが明らかとなった。今後さらなる検討が必要であるものの、肥満に伴うこれらの脳内環境の変化が脳高次機能障害をひき起こす可能性が示された。
著者
黒田 大介 御手洗 容子 小野 嘉則
出版者
鈴鹿工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

L-605合金はその優れた高温強度および高温耐酸化性から人工衛星に搭載される一液触媒式スラスタの構成材料として使用されている。しかしながら、本合金をN_2およびNH_3の存在する高温環境中に暴露した場合には著しい劣化が生じることが問題となっている。本研究では、Nを含む環境中で熱処理したL-605合金のミクロ組織、力学的特性などを評価し、L-605合金の劣化機構の解明を試みた。N_2ガス雰囲気中で1173Kの温度で86.4ks以上の熱処理を施したL-605合金では硬くて脆いCr窒化物およびW炭化物の析出が認められた。また、L-605合金の力学的特性は熱処理時間の増加にともない低下した。これらの結果から、L-605合金の劣化にはCr 窒化物だけでなくW炭化物が寄与していることを明らかにした。
著者
吉良 新太郎
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

オートファジーはヒトをはじめとした真核生物に見られる細胞内分解機構である。オートファジーは短時間の栄養飢餓で活発に起こるが、我々はオートファジーが長期の饑餓では停止することを見出した。オートファジー停止に関与する遺伝子の探索を行い、新規因子Tag1を同定した。Tag1の機能解析の結果、Tag1はAtg1プロテインキナーゼを介したAtg13タンパク質のリン酸化により、オートファジーを終結させることを明らかにした。
著者
瀬川 高弘
出版者
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

南極氷床ドームふじ基地でのアイスコア掘削により,南極氷床下の氷試料と岩盤由来の粒状物試料が得られた.これらは少なくとも72万年以上前に封じ込められた可能性が強く,南極氷床下の環境を推定されうる試料の中で,最も優れた試料の一つである.次世代シークエンサーによるメタゲノム解析をおこなった結果、DNAデーターベースや現在の南極の雪氷,土壌,湖沼等の分析結果とは高い相同性を示さない、既知のものとは大きく異なる配列を持つ微生物が検出された。