著者
兼岡 理恵
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の成果として、近世に本格的に始まった風土記研究について、播磨・出雲、それぞれの地域における写本伝播や研究活動の具体像を明らかにしたことがある。この研究成果を大学講義や市民講座において発表、活用するツールとしてGoogle Earthを活用した風土記デジタル地図を開発した。以上の業績が認められ、若手研究者を対象とする平成25年千葉大学先進科学賞を受賞した。さらにこれらの成果を『風土記の世界観(仮称)』として吉川弘文館より刊行予定である。
著者
三浦 一朗
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

史学史ないし史学思想史において従来空白期間として扱われてきた近世中期について、読本を視座として、歴史観より外延を広げた歴史意識という概念に基づいて再検討し、そこに、歴史や記録に残らない庶民の過酷な生に目を向けようとしたり、人間の生をめぐる理不尽さや不条理さを歴史の中に見出したりするような関心のあり方が窺えることを明らかにした。本研究ではその一端を示したに過ぎないが、こうした関心のあり方が、近世歴史意識に対する一般的な認識としてある鑑戒史観や皇国史観という枠に収まらないものであることは明らかである。本研究の成果は、そうした近世歴史意識に対する従来の見方を相対化し、修正するための第一歩として位置づけられる。
著者
近藤 俊明
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

オイルパームプランテーションの拡大によって東南アジアの熱帯林は急速に減少している。本研究では、プランテーションに媒介昆虫として導入されるアフリカ産のゾウムシ(外来種)と、断片化した熱帯林のネットワーク形成に寄与するプランテーション内の残存林に生息する昆虫種(自生種)について、パーム種子生産への貢献度を比較した。その結果、熱帯林が残存するプランテーションでは、自生種のコバエ類も種子生産に貢献していることなどが明らかとなった。つまり、残存生態系により提供される送粉サービスの活用が、断片化した熱帯林のネットワーク形成のみならず、安定的なオイルパーム種子の生産にも寄与することを示唆するものであった。
著者
藤浪 理恵子
出版者
日本女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

シダ植物小葉類は維管束植物の系統関係で最も基部に位置し、根と茎の形態進化を明らかにする上で重要なグループであると考えられる。本研究は、小葉類の根頂端分裂組織(RAM)の構造と、根と茎の分枝様式を解析し、真葉類(大葉類と種子植物)との比較から進化過程を明らかにすることを目的とした。その結果、小葉類のRAM構造は真葉類に匹敵するほど多様であり、根は小葉類と真葉類で平行的に進化したと推定された。また、小葉類の根の分枝様式は二又分枝であるのに対し、茎は二又分枝だけでなく単軸分枝ももつと示唆された。従って、小葉類の根と茎の分枝様式が違うことから、根と茎の起源は小葉類の時点で異なる可能性が推測される。
著者
小池 郁子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、アメリカ黒人の社会運動において、性(ジェンダーとセクシュアリティ)がどのように位置づけられてきたのかを、アフリカ由来の神々、オリシャを崇拝する運動を事例に考究した。そのうえで、「少数派のなかの少数派」として強調されることの多い黒人女性や、黒人の男性同性愛者が、オリシャ崇拝運動といかに関わってきたのかを文化人類学的視点から考察した。また、彼らが運動と関わることで、宗教文化の実践や運動の実践形態がいかに変容したのかを分析した。
著者
坂元 博昭
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、1滴の血液から高効率に血漿分離を行うことを目的とし、毛細管力のみを駆動力とした血漿分離チップの開発を行った。2μmの隙間を微細加工技術により形成させ赤血球と血漿を分離することを企図した。作製したマイクロデバイスへ血液を導入すると3分以内に200ナノリットルの血漿を得ることに成功した。本デバイスは、毛細管力を駆動力とするためシステム全体の小型化およびポータブル装置として最適である。
著者
菅原 琢
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本課題では、日本の国政選挙での有権者と候補者のそれぞれの過程における地元志向(選挙においてその地域の代表であることなどを重視する傾向)について研究を行っている。かつての衆院の中選挙区制では、強い地元志向が自民党の一党優位体制を生みだしていたが、参院選挙でもSNTVの理論予測であるM+1ルールを阻害することで自民党を利していた。また、新制度下では同一政党の公認候補同士の争いがなくなったことから選挙における地元志向は消えると考えられたが、政党の公認過程に地元志向の反映の場面が移動したという仮説を立てて分析を行っている。
著者
川越 大輔
出版者
小山工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

水酸カルシウムアパタイトは、生体親和性の高い材料として知れられており、人工骨の骨代替材料として注目されている。ここで水酸カルシウムアパタイトは、材料強度を生体骨に近づけること、より生体親和性を高めることの高機能化が必要であると考えた。本年度は1)放電プラズマ焼結法による水酸カルシウムアパタイト多孔体の作製、および2)水酸カルシウムアパタイト空隙傾斜材料の作製について検討した。1)放電プラズマ焼結法による水酸カルシウムアパタイト多孔体の作製としては、特定の径を持つアラミド繊維と水酸カルシウムアパタイトを混合し多孔体の作製を行った。具体的には、10μmφのアラミド繊維を混合した水酸カルシウムアパタイトの成形体を、400度、10min間、30MPa、真空中で放電プラズマ焼結し、多孔体を得た。得られた多孔体は、直径10μmの空隙で連通孔を持つ多孔体であった。2)水酸カルシウムアパタイト空隙傾斜材料の作製としては、仮焼条件の異なる粒子を積層させて放電プラズマ焼結することにより、強度と細胞の活動場を目的に応じてデザインすることが可能な空隙傾斜材料の作製を検討した。具体的には、まず900度1時間と1000度6時間で仮焼した粒子を準備し、これらの粉末を積層した10mmφの水酸カルシウムアパタイトの成形体を、800度、30MPa、10分間、真空中で放電プラズマ焼結することにより、空隙径の異なる焼結体を得た。以上より、より生体親和性の高い、また材料強度の高い人工骨の作製が可能になったと考える。
著者
北村 充
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

グアニジノジアゾニウム塩はグアニジンの電子供与性により強力に共鳴安定化されていると考えられる化合物であり,ジアゾニウム塩とアジドの両者に由来する特徴的な反応性を示すと期待される。そこで,本研究ではグアニジノジアゾニウム塩の合成と,これを用いる反応開発に取り組んだ。その結果,グアニジノジアゾニウム塩の調製法を開発することに成功し,また,グアニジノジアゾニウム塩がジアゾ化剤やアジド化剤として利用出来ることを明らかにした。
著者
小屋松 安子
出版者
(財)佐々木研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

婦人科悪性腫瘍の中で、増加傾向にある子宮体癌はtypel,2により予後的差異が大きいとされる。この違いを、マイクロサテライトの有無のみならず、組織型・組織分化度・進行期・ホルモンレセプターの有無等の因子別にマイクロアレイにより網羅的に遺伝子解析・比較し、従来推定されている既知の関連遺伝子以外の予後や治療にかかわる責任遺伝子の存在を検索し、また、それらの絞られた遺伝子におけるメチル化等の発癌機構に関わる変化を調べた。Type121例、type29例の計30例の子宮体部類内膜癌において、マイクロサテライトの不安定性は10例(33.3%)で体癌の約3割で認められた。マイクロサテライトの不安定性は消化器癌を含む家族性腫瘍でも報告されるが、子宮体癌ではマイクロサテライトマーカーはD2S123、D17S250、BAT25、BAT26に特異的に認められる傾向が判明し、hMLH1のメチル化に関しては、マイクロサテライトの不安定性に関わらず60%で確認された。この不安定性は子宮体癌type別による有意差は得られなかった。子宮体癌全体で顕著に遺伝子発現が増加したものは4遺伝子あり、低下したものは5遺伝子認められた。Type特異的には,予測どおりホルモンレセプターを含むtype1で57遺伝子、type2で21遺伝子が候補となり、特に顕著だったtype2におけるビメンチンの発現に関しては、さらに症例を増やし、特殊免疫染色・メチル化同定も行い、ターゲット遺伝子となるか、応用・開発の可能性を探っていく予定である。H19年度までに、目標遺伝子の絞込みが達成できた状況となった。
著者
平野 伸夫
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

温暖化対策の一つとして考えられているCO_2の地中貯留に関連して,秋田県奥奥八九郎温泉を対象に,現在でも活発に生じている炭酸カルシウム堆積物の 1)微生物代謝による生成2)溶液化学反応による生成 について検討した.その結果,1)に関しては微生物の存在は認められたものの,それが炭酸カルシウムの生成に結びついている確証は得られなかったが,2)に関しては温泉水中のFeイオンが炭酸カルシウムの生成に影響をおよぼしている可能性を見いだした.このFeおよび炭酸カルシウムに必要なCaはと地下の安山岩-玄武岩から供給されていると考えられ,このような岩質の場にCO_2貯留をおこなえば岩石化が促進される可能性がある.
著者
小寺 敦
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

出土資料に関する研究会・学会に参加し、新発見の出土文献の史料的性格に関する研究を進めた。日本国内外の研究機関を訪問し、遺跡調査や資料調査・収集を行った。これらの諸活動の成果として、「ゆずり」のような日常的行為が、王権を思想的に支える要素として取り込まれていく過程を明らかにした。これは家族のように「普通のもの」として認識されているものが、いかに「宗法制」という社会秩序に化するか解明することに繋がる。
著者
永野 智久
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

オープンスキル(競技中に環境が絶えず変化し予測が困難な状況で発揮される運動スキル)を要する特定のスポーツ状況において、競技者のパフォーマンスを左右する予測能力に重要な視覚的手がかり(Visual Cue)を明確にするためのフィールド実験を実施した。特にサッカーのペナルティーキック状況において、ゴールキーパーとキッカーの双方を被験者とし、同時に視線移動パターンを記述し、予測に重要な情報を特定した。
著者
池田 佳子
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、個人差に起因する要素の中でも、学習目的でないインフォーマルな学習実践、たとえば日々の生活の中や課外活動の中で偶発的に起こるインタラクションを通して実現する学習の有無、またその実践の具体的な内容が要因解明の鍵となると考え、その「個人差」の実態とありかの解明を目指すものである。さまざまなインフォーマルな学習者の相互行為場面を考察したが、その中でもICTを介して活動する場面、特にPBL(Project Based Learning)場面に着目し、その中で学習者らがどのような偶発的な学びを展開するのかを考察した。
著者
小松 秀和
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

①介護の経済効果、②高齢者住まい法改正による民間高齢者施設の再編、③民間高齢者施設の料金とサービス内容の関連性、について次の研究成果を得た。①産業連関分析によると、介護のような労働集約型産業では一次効果は公共事業等より低いものの追加効果を含めて考えればそれらを上回る経済効果をもつ場合がある。②サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登場で状況把握・生活相談が重要なサービスに位置付けられ、外部の介護サービスの利用次第ではサ高住が特定施設等の代替となり得る。③民間高齢者施設の料金は立地と人員配置と強い関連性が見られる。ただし、人員配置はあくまで標榜上の数値であり、それを担保する仕組みが必要である。
著者
松本 珠希
出版者
四天王寺国際仏教大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

【目的】月経前に周期的に種々の症状が自覚される月経前症侯群(PMS)は、種類や程度を問わなければ生殖年齢にある女性の大半が経験する。PMSの病態に関してはまだ明らかにされていないが、PMSを伴う女性の愁訴には自律神経系の機能異常を疑わせる症状が多いことが報告されている。平成13年度の研究において、PMSの自覚症状が比較的少ない若年女性でも、卵胞期と比較した場合、黄体後期において身体的・精神的不快症状が有意に上昇し、また安静時の自律神経活動が顕著に低下していることを発見した。本年度の研究では、PMSと自律神経活動動態との関連をさらに探求するため、卵胞期と黄体期における安静時自律神経活動だけでなく、生理的負荷刺激に対する自律神経反応性もあわせて検討した。【方法】内科的・婦人科的疾患を有しておらず、喫煙習慣のない39名の女性が参加した。日誌的な方法による即時的記録法「PMSメモリー」を用い、実験期間3ヶ月を含む6ヶ月間に亘り、参加者全員に基礎体温と月経に伴う不快症状の程度を毎日記録してもらった。被験者の健康状況を詳細に検討した結果、正常月経周期をもち、且つ黄体後期において常に不快症状が上昇する健康な非肥満女性16名(20.4±0.4歳)のデータを解析対象とした。測定は、卵胞期と黄体後期に各3回、午前中の同一時間帯に行った。被験者は、起床時に床の中で舌下温を測定し、早朝第1尿を採取した後、実験室に来室した。10分間安静を保持した後、胸部CM_5誘導の心電図を連続的に仰臥位で17分間、その直後立位にて5分間測定した。自律神経活動動態の評価には、心拍変動パワースペクトル解析を用いた。【結果】基礎体温(ρ,<0.01)、クレアチニンで補正した尿中卵巣ホルモン値(ρ<0.01)、体重及びBMI(ρ<0.05)は黄体期において有意に上昇した。安静時の自律神経活動は、心拍数、Total power、Low及びVery low成分が黄体期において顕著に低下した(ρ<0.05)。体位変換による自律神経活動の変化率に関しては、黄体期で低下傾向が観察されたが、両周期間で有意な差は認められなかった。PMSメモリーから評価した月経周期に伴う不定愁訴(身体的・精神的・社会的)は、いずれの項目においても黄体期においてより多くの症状が出現し、スコアーの総計も有意に上昇していた(ρ<0.01)。【考察】20代後半から30代の女性と比較すると、月経前症候群の頻度や程度が比較的少ないと報告されている健康な若年女性においても、即時的記録法を用いることにより、黄体後期において不定愁訴の程度が顕著に増加することが確認された。PMSの発生機序に関しては、様々な仮説が報告されているが、本研究結果を考慮すると、自律神経活動及び体温・熱産生調節機能の低下もまた、黄体後期特有の複雑多岐な症状の発現に関与する可能性が示唆された。欧米と比較し、我が国ではPMSに対する認識も低く、PMS改善も含めたヘルスケア対策も十分とはいえない。本研究結果は、PMSの病態だけでなく、女性性を考慮した健康支援プログラムを究明するうえで有意義であると思われた。
著者
尼崎 光洋
出版者
愛知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、青年期における性感染症の予防法としての男性用コンドーム(以下、コンドーム)の使用に至るまでの心理的プロセスにおいて、コンドーム使用に関連する環境要因の影響性について検討した。その結果、パートナーを始めとした人間関係といったコンドームの使用に関わる社会的な環境が、コンドームの使用を間接的に促進する要因であることが明らかとなった。一方で、コンドームの購入や所持に対する否定的な状況が、コンドームの使用を間接的に阻害する要因であることが示された。
著者
小布施 秀明
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

層状構造を持つ3次元弱いトポロジカル絶縁体における2次元表面状態は、層間の結合が均一な場合は不純物が存在しても局在しないが、不均質な結合がある場合、乱れが増加すると局在-非局在転移を生じ、そのユニバーサリティ・クラスは2次元symplecticクラスであることを明らかにした。また、2次元の量子ホール絶縁体転移におけるdescendant演算子のスケーリング次元を高精度に数値的に計算する手法を確立した。さらに、フロッケトポロジカル相を誘起する時間発展演算子に対する対称性やトポロジカル数を定義し、1次元量子ウォークにおける表面状態の不純物に対する安定性をトポロジカル相の観点から明らかにした。
著者
吉田 寛
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、コンパートメントモデルにおける薬物動態に対する解析手法の開発を行った。手法の特色として、通常のTime domain(時間tの空間)上ではなく、ラプラス空間上で反応定数を決定する事が挙げられる。これにより、従来のTime domain上では、複雑だった式が、ラプラス空間上では、簡潔かつ厳密に表された。本手法は、特に、観測できない、あるいは、したくない時系列データが存在し、そのデータの代替として目的部位以外の参照部位を観測した場合に、有効である。更に、コンパートメントモデルと非線形な酵素反応が絡む系においても、上記の手法を適用した。その結果、定常状態を仮定した上でミカエリス・メンテン型に変形して解析する従来の方法では扱えないような非平衡系における解析が可能となった。この系は、過少決定系であって、本質的に素イデアル分解が必要になった。このように、本手法は、コンパートメントモデルには収まらない薬理動態の解析を押し広げるものである。実応用として、マウスのDox動態において、Dox・TetR蛍光イメージング技術に適用した。
著者
浅岡 章一
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,覚醒時間延長中におけるエラー後の認知的処理機能に与える夜間の仮眠の影響について検討した.エラー後の認知的処理と関連する事象関連電位(ERN/NeおよびPe)の振幅を,深夜1:00~2:00まで仮眠をとった群と休憩のみをとった群において比較した.深夜に実施した認知課題における反応の正確性は,仮眠をとった群で高くなっていた.しかし, ERN/NeとPeの振幅に対しては仮眠の効果は認められなかった.