著者
岩井 雪乃
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、アフリカゾウによる農作物被害が発生している地域で、地域住民がゾウといかに共存できるのかを「被害認識の緩和」の視点から実証的に明らかにすることを試みた。研究の過程では、タンザニアのセレンゲティ国立公園に隣接する村落において、被害対策(車による追払い・養蜂箱の設置)を実践し、多様な関係者(県・地元NGO・国際NGO・観光企業・日本人ボランティアなど)が連携する場をつくった。その結果、被害対策において多義的な関係性を創出することが、被害認識の緩和につながる可能性が示唆された。
著者
氏家 清和
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

近年、食品安全問題が頻発する中で,食品安全を担保する消費者行政の拡充が求められている.そこで本研究では,(1)食品の品質情報についての非対称性への対応策として,食品ラベル制度の消費者評価(2)食品安全事故による外部経済性,について分析をおこなった.本研究の分析は次のとおりであった.まず『無知の費用』の概念に基づいた食品表示制度による消費者便益の分布を推定し,社会的合意形成のあり方によっては,表示内容のオーバースペックを誘引してしまう可能性を指摘した.また,冷凍食品を題材とし,実際に起こった食品安全事故前後の消費動向を分析し,責任企業以外にも事故の影響が広がっていることを指摘し,安全事故の外部経済性の存在を示した.
著者
辻野 泰之
出版者
徳島県立博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

タイプ標本は、種を定義する上で基礎的な資料であり、学術的に重要である。しかしながら、日本の古生物学分野において、タイプ標本の所有者や保管場所の情報は、記載論文以降、更新されていない。その後、タイプ標本が行方不明になったケースや、収蔵場所が変更になったケースも少なくない。また、タイプ標本の観察は、主に分類学において不可欠であるが、タイプ標本の閲覧が容易でないため、若手研究者が分類学を敬遠する原因にもなっている。そこで本研究は,日本産白亜紀アンモナイトを例に古生物タイプ標本の所在を確認するとともに、3Dスキャニングを行い、タイプ標本の3Dデジタルデータベースの構築を試みた。
著者
長井 栄子
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

認知症高齢者を対象としてユニットケアを実施している施設における安全なケア提供についての実態を知るため、2009年度に施設スタッフおよび管理者を対象にインタヴュー調査を実施した。2010年度は2009年度の調査で得られた結果をもとに質問紙を作成し、無作為抽出した全国の高齢者施設の管理者・看護師・介護士に対し、質問紙調査(郵送法)を実施した。因子分析を行った結果、「安全なケア提供への工夫と困難」として、"全入居者の安全確保因子"、"職員の資質向上因子"、"多職種間での情報共有・支援因子"などの25の因子が抽出できた。さらに、施設群ごとの因子得点(平均値)を多重比較したところ、ユニットケア実施施設と非実施施設間における有意差は認めなかった。しかしながら、各因子を構成する項目ごとには有意差を認めるものがあるため、今後さらに分析を進め、認知症高齢者を対象としてユニットケアを実施している施設でのケアの特徴を見出す必要がある。
著者
松谷 満
出版者
桐蔭横浜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、大都市部で圧倒的な支持を得るようなポピュリズム政治が台頭しているという状況に着目し、石原東京都知事、橋下大阪府知事について有権者意識調査からその支持構造を実証的に明らかにした。両者はナショナリズムとネオリベラリズムという共通の支持要因があり、さらに政治不信の強い人々をも取り込んでいるがゆえに幅広い支持を得られることがわかった。また、その支持層は均質ではなく、多様な社会層が異なる論理にもとづいて支持をしていることもわかった。
著者
林 申也
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

p21 knockoutマウスを用いて変形性関節症モデルマウスを作成したところ、p21が細胞外基質であるアグリカンと、メタロプロテアーゼであるMMP13の発現を調整することがわかった。軟骨のhomeostasisを維持する働きがあることがわかった。これに関して整形外科関連での国内学会1回、国際学会で5回発表。現在英語論文を投稿中である。概ね初期の目標は達成されたと考えている。
著者
佐藤 光秀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

光合成と粒子食の両方を同一生物がおこなう混合栄養は海洋プランクトンにおいては極めて普遍的な現象である。本研究は、種々の手法を用いて研究例の少なかった外洋における混合栄養性プランクトンを定量した。古典的な蛍光標識細菌添加法、および食胞の染色とフローサイトメトリーの組み合わせによる結果は互いによく相関しており、後者の有用性が明らかになった。また、混合栄養生物は貧栄養な亜熱帯海域で相対的な重要性が高まっており、栄養獲得戦略として粒子食が有効にはたらいてる可能性がある。また、同位体標識した餌生物を取り込ませ、超高解像度二次イオン質量分析で観察することにより混合栄養生物を定量する条件を検討した。
著者
河角 直美
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、近代の災害を対象とし、被災地がどのようにして復旧されてきたのか、その一端を明らかにしようとした。課税台帳である土地台帳には、災害で被災した土地が免租地となったことが記されており、その免租地の記録を基に被災地域を詳細に示し、さらに免租期間から復旧にかかる時間を想定した。その結果、昭和三陸津波や濃尾地震など災害で被災した土地が一筆毎に復原され、それぞれの土地で復旧期間が異なっていたことが明らかとなった。
著者
加藤 京里
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「温罨法」の効果について統合的文献レビューと実験研究によるエビデンスの集積を行った。「温罨法」は気持ちの良い眠気と交感神経の低下を生じさせることが示唆された。この結果をもとに、臨床において入院患者への介入評価研究を行った。就寝前に後頚部温罨法を実施すると、入院患者は気持ちよさを感じた。ストレスが減少することで唾液アミラーゼの値が低下し、末梢の皮膚温は上昇した。さらには後頚部温罨法は夜間の睡眠を促すことが明らかになった。
著者
佐藤 隆太
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,実際の数値制御工作機械の送り駆動系をモデル化し,送り駆動系の運動誤差を考慮して加工面をシミュレーションするための方法を開発した.送り駆動系の運動誤差が加工面に及ぼす影響について,実験とシミュレーションの両面から検討したところ,同じ運動誤差が生じていても工具経路によって加工面に及ぼす影響が異なることが明らかとなり,工作機械の運動特性を考慮した知能化CAMシステムの実現に向けた重要な知見を得ることができた.
著者
設楽 将之
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

胸腺扁平上皮癌12例に対して、次世代シーケンサーを用いたターゲットシーケンスによって、癌関連409遺伝子の網羅的解析を行った。Ingenuity Variant Analysis、SHIFT、PolyPhen-2、PROVEANによってフィルタリングを行い、胸腺癌10例から24遺伝子、25変異が候補遺伝子変異として決定された。明らかな胸腺癌に共通する遺伝子変異は認めなかったが、個々の症例においてKIT, DDR2, PDGFRA, ROS1, IGF1Rなどのチロシンキナーゼ遺伝子に変異を認めた。
著者
佐々木 淳
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究成果より、ブロイラーの野外例では2週齢時にはすでに脊椎膿瘍を発病している個体が存在することが判明した。多くの病鶏では第六胸椎の関節部に出血を伴う亀裂が生じており、本症の初発病変と考えられた。病変部より大腸菌群やSalmonella Infantisなどのサルモネラ属菌が分離された。2週齢前後では胸椎の椎体に気嚢がみられないことから、本症の感染経路は経気道感染よりも血行性感染が強く疑われた。
著者
三神 史彦
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,紫外レーザ光による干渉縞の微細な明暗パターンを,紫外線によって発色するフォトクロミック染料に照射することによって,マイクロスケール流れの中に,煙線ノズルを用いたような微細な流脈を生成する方法を開発した.本年度は,1.タイムラインを併用した可視,2.微小物体まわりのヘレ・ショウ流れの可視化,を行った.1.タイムラインを併用した可視化速度2成分を画像から定量的に算出するため,オプティカルチョッパを用いて繰り返し周波数40〜50Hzの擬似的なパルス波を生成し,流脈にタイムラインを重ね合わせた.内径590μmの石英毛細管内の流れを対象とし,数ms間隔の2枚の可視化画像をCCDカメラで撮影した.得られた画像から,一本の流脈に沿って明暗のパターンが下流に移動する様子が確かめられたが,相互相関法PIVを適用した結果には過誤ベクトルが多く含まれ,タイムライン間隔などの設定に課題が残された.2.微小物体まわりのヘレ・ショウ流れの可視化一般にヘレ・ショウ流れは速度ポテンシャルをもつ流れとして扱うことができるが,マイクロスケールの物体まわりの流れに対して有効であるか実験では確認されていない.そこで,100〜200μmの大きさの物体が置かれたヘレ・ショウセルを,スライドガラスおよびシリコン樹脂製マイクロ流体チップで作成し,流れのようすを可視化した.ヘレ・ショウセル内の流れは薄いシート状のため,いずれの場合も非常に明瞭な流脈画像が得られた.これをパネル法によって計算したポテンシャル流れの流脈パターンと比較した結果,完全に一致することがわかった.このことから,本手法が微小物体まわり流れの可視化に有効であり,またヘレ・シヨウ流れとなる条件では,マイクロ流体チップ内の流れをポテンシヤル流れとして予測できることがわかった.
著者
安田 真
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

口腔外科手術時に頻用される静脈内鎮静法には、誤嚥のリスクがつきまとう。これまで、各種静脈麻酔薬が咳反射の反射経路を抑制させるのかは不明であった。そこで、咳反射と同様に延髄を介する副交感神経反射である、口腔領域の反射性血管拡張反応をモデルに検討を行った。その結果、反射中枢へのGABA,GABA_A・GABA_B受容体作動薬の微量注入により、舌神経電気刺激により生じる口腔領域の反射性血管拡張反応は有意に抑制され、各受容体拮抗薬により拮抗された。
著者
平岡 美紀
出版者
奈良県農業総合センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

バイオマスの水熱処理による燃料化技術は、現在、化石燃料に比べ高コストとなることが課題である。このコスト負担は、消費者にとっても分担可能なものかを検討した。次の想定でバイオ燃料を活用して製造された食品に対する消費者の購買行動について調査を実施した。豆腐油揚げ製造工程で出る「おから」や廃食油を、バイオ燃料として変換して製造工程で再利用し、化石燃料由来のCO2排出を30%削減する工場において製造される豆腐(CO2排出抑制豆腐)を対象とした。主に奈良県内在住者を対象に調査票配布により実施した(有効回答数228、回収率45.6%)。豆腐の持つ特徴を3属性【原料産地(外国、国内、県内)、CO2排出抑制の有無、価格(100〜160円)】の組み合わせで表現、提示し、購買意思を問う選択型コンジョイント分析により消費者の支払い意思額と購買確率を推定した。結果、バイオ燃料利用によりCO2排出を抑制することに対し、20.1円に相当する価値があると評価された(支払い意思額)。つまり、通常製法の豆腐より20.1円評価が高まり、通常品と同価格であれば購入確率が高まると解釈できた。これは、原料大豆の産地に対する評価(国内産使用なら160,8円等)に比べて小さい額であるが、環境配慮に対して少なからず支払い意思を表明していることになる。なお、性別、年齢、居住地や日頃の環境行動といった個人特性の違いによる価格評価の差については、統計上、次の点のみ関連が見いだせた。日頃の生活で「リサイクル、省資源化、エコドライブ」などの行動頻度が高い人、また、「食品購入時の原産地表示確認や、有機農産物等の購入」頻度の高い人は、CO2排出抑制製品に対し、さらに高い評価を行っていた。反対に、70歳代以上の人は否定的な評価を行っていた。
著者
神原 啓介
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、オノマトペを用いた新しいヒューマンコンピュータインタラクション手法を提案し、それを実現する複数のシステムを作成、評価、発表した。オノマトペとは「ざわざわ」「ぐるぐる」といった擬音語・擬態語のことで、日常的な会話や文章の中で多く用いられている。オノマトペは、ものの様子や動き、感覚、感情を活き活きと表現できることや、柔らかく親しみやすい表現といったことが特徴となっている。このオノマトペをインタフェースに採り入れることで、コンピュータが苦手としてきた「感覚的」で「親しみやすい」インタフェースを実現することが本研究の目的である。そこで本研究では「オノマトペを声に出しながらポインティングすることで、そのオノマトペに応じた操作を行える」というマルチモーダルインタラクション手法を提案し、具体的な応用として、ペイントシステムとゲーム操作に本提案手法を適用した。また、これらのシステムをユーザテストによって評価した後、国内および国際学会で発表した。
著者
眞野 美穂
出版者
関西看護医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

状態文の統語構造の通言語的な解明を目指し、叙述の類型という観点から日韓英語の分析を行った。その結果、各言語において状態文は一律の性質を持つわけではなく、叙述の類型つまり文の意味機能により様々な統語現象での差異が観察されることが明らかになった。状態文の統語的特性は述語の意味だけではなく、生じる構文の機能の違いにより決定されること、また状態文と出来事文の関係についても類型的な観点から新たな知見を得た。
著者
則包 恭央
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

近年、有機材料を種々の電子デバイスに活用し、有機エレクトロルミネッセンス、有機薄膜太陽電池や有機薄膜トランジスタ(TFT)等の開発研究が行われている。これらの有機電子デバイスの特徴は、既存の無機材料ベースのデバイスよりも軽く柔軟性があり、しかも蒸着等の真空プロセスに替わって印刷技術を用いて作成でき、低コストで低環境負荷であると期待されることである。このようなデバイスの実現には、新材料の開発に加え、適した印刷プロセスの開発が求められている。そこで本研究では、上記課題を解決するため、フォトクロミック反応を活用した新しい印刷方法を構築することを目的とし、そのための基盤的研究を実施した。
著者
西村 正秀
出版者
滋賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、「視知覚において個別的対象はどのように表象されるのか」という問題に答えた。成果は次の三点に要約できる。(1)枠組みとして使用されるべき知覚理論はバージ的単称志向説である。(2)知覚における対象の表象は、従来の因果・情報論的表象理論を統計学の道具立てによって修正した、アッシャー/エリアスミス流の「相互情報量理論」で説明される。(3)知覚経験の現象的性格は知覚指示に寄与しない。
著者
尾形 邦裕
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

脳の障害によって身体に麻痺を持つ場合,リハビリテーションによる運動機能獲得が重要となる.そこで,これをロボット工学の技術によって支援することを目指す.本研究では装着型のロボットを開発し,運動誘導に関する基礎的な検討を行い,上肢の運動誘導が可能であることを確かめた.下肢及び全身では赤外線を利用したカメラを用いることで足裏にかかる反力を推定し,可視化する技術を開発し,その有効性を確認した.