著者
河越 龍方 水木 信久 大塚 正人
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ベーチェット病原因解明のための新規 HLA-B51 トランスジェニックマウスの作製に関する進捗および成果について: ベーチェット病の原因についてはいまだよくわかっていない。しかし、人種を越えて、ヒトの主要組織適合抗原である HLA(human leukocyte antigen)の特定のタイプ、HLA-B51と顕著に相関していることが知られている。しかし HLA-B51がどのように疾患に関わっているのかそのメカニズムは謎のままである。そこで今回、新規に HLA-B51 トランスジェニックマウスの作製をおこなった。
著者
本田 健
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ホスホランバン(PLN)は心筋小胞体膜に局在する蛋白質で心筋収縮を負に調節している。その小胞体への局在を制御できれば、心機能の改善ひいては新たな心不全治療に繋がる。本研究ではPLNの小胞体局在にC末端のアミノ酸配列が重要である示唆を得た。また、この部位に結合して「PLNの局在を制御する蛋白質」の探索を試みると同時に、その支援技術としてPLNに特異的に結合する新しい分子ツール・アプタマーを開発した。
著者
柏木 謙
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題では、周波数軸上での強度・位相変調による光パルス合成技術を利用して、ダークパルス、特にダークソリトンの合成とその非線形光学応用について検討を進めた。まずは、光パルス合成が可能な素子である光パルスシンセサイザを用いて、ダークパルスを高精度に生成する技術を開発した。続いて、光パルスシンセサイザで合成したダークソリトンを正常分散ファイバに伝搬させて、理論通りの光強度でソリトン伝搬することを実験的に示した。さらには、高強度では高次ソリトン圧縮によりパルス幅が減少すると共にスペクトルが拡大することを確認した。
著者
川原 靖弘
出版者
放送大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

PHS基地局の電界強度の利用のみでは探索が不可能な、紛失した輸送物を端末の電波を受信解析により探索する方法の考案と検証を行った。また、長期にわたり使用しない期間がある物流移動機器の測位において、移動機器の振動解析により移動停止判定を行うことで、PHS端末の消費電力及び通信コストの削減を実現する方法について、試作機を用い物流現場における有効性を評価した。
著者
木庭 康樹
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、21世紀の新たな教育文化の創造に向けて、まず、身体彫刻やボディアート,スポーツ映像や身体文学、伝統舞踊などの身体表現に見られる感性教育的効果を考察し、それらの身体文化が学習者の感情表現を豊かにするだけでなく、生活世界におけるポジティブな身体認識にも寄与することが明らかとなった。また、現在最もポピュラーな身体運動文化であるスポーツについては、スポーツ運動とスポーツ行為の区別およびスポーツ文化の教材化の方法について、それらの全体像を提示することができた。
著者
村田 潤
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

若年者と高齢者の手指感覚識別時の手指循環動態,および手指感覚閾値を測定し,加齢による手指循環調節能と手指感覚機能変化について検討した.その結果,手指の感覚情報処理にともなう手指血流量変動量が加齢により減少することを明らかにした.さらに,この手指血流変動の応答は感覚機能減弱にも関連していた.また,手指体積変動により手指感覚閾値が影響を受けることが判明したことから,感覚識別時の手指循環変動は手指体積変化に反映し,皮膚物性値に作用して体性感覚感度を変調させていることが示唆された.
著者
許 雷
出版者
東北工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

建物情報モデリング(BIM)の国際標準仕様であるIndustry Foundation Classes(IFC)に基づいて、建築意匠・設備設計が一体となる建築デジタル環境設計手法を提案した。まず、学生150名を対象として建物使用者・居住者がどのような建築情報を求めているのかをアンケート調査を行い、安全性・安心性、経済性が最も重要視されていることが確認した。次に3次元CAD ソフトArchiCAD を用いて建築のIFCデータを作成し、建物を構成する全ての要素、住所、建物、階情報、建物部位・部材(部屋、壁、スラブ、窓、ドアなど)を解析した。そしてASHRAEの負荷計算方法を参照したで空調負荷計算用建物のIFC情報を解析し、デジタル空調負荷計算ツールを構築した。Accessで作成された建材データベース、外部気象データなどとの連携により、空調負荷、年間エネルギー消費量、環境負荷及び省エネルギー計算を行った。今後では、建材環境性能データベースの改善・充実をしながら、開発した環境設計ツールを更に改良する予定である。
著者
豊田 太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,化学物質受容体やイオノフォアとして機能する膜タンパク質が,厚さ5nmの生体膜において如何に構造形成し,機能するかという非平衡系のダイナミクスを計測する手法の開発を目的とした.夾雑物のないモデル生体膜として袋状脂質二分子膜であるジャイアントベシクルに着目し,mRNAから膜タンパク質が合成される反応系の内封法を構築した.蛍光膜タンパク質の一つであるeGFP-BmOR1をGV内部で合成したところ、これが自発的に膜に組み込まれることを明らかにした.一方,厚み方向でナノメートルの分解能をもつ反射干渉顕微鏡を構築した.これにより,基板上に接着したジャイアントベシクル膜の非平衡状態における特異な変形を観測することができた.以上の成果は,生体模倣反応場であるジャイアントベシクルを用いて,膜タンパク質の形成過程や機能発現に分析化学的にアプローチできる要素技術として重要である.
著者
岩田 晃
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

肉離れ損傷の再発率の高さの要因が,損傷時の基底膜の変性にある,との仮説を立て,本研究を実施した。Wistar系ラットを用いて,電気刺激によって肉離れ損傷を誘発し,免疫組織染色法を用いて,基底膜の観察を行った。その結果,肉離れ損傷によって,基底膜の不整および肥厚が観察された。再生の主役である筋衛星細胞が,基底膜と形質膜の間に存在することを考慮すると,この基底膜の変性が不完全な再生につながり,再発率を高めている可能性が示唆された。
著者
横山 隆志
出版者
公益財団法人がん研究会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

Trib1とTrib2は過剰発現により急性骨髄性白血病 (AML) を誘導するが、私達はこのTrib1による白血病発症にはMEK1との直接結合を介したMAPキナーゼ経路の活性化とC/EBPαの分解が必須であることを報告している。一方でTrib1, Trib2共にホモノックアウト (KO) マウスには重篤な異常が見られず、正常組織における機能は不明な点が多い。本研究ではマウス13.5日胚と成体組織におけるTrib1/2の発現を調べ,両者の発現は一部重複するが多くの組織において両者の発現分布が異なることを示した。また造血においてはTrib1をノックアウトすると顆粒球分化の促進が見られ、C/EBPαとその標的である複数の分化制御遺伝子の発現が上昇することを明らかにした。このことからTrib1は正常造血においてC/EBPαの分解を介してその標的遺伝子を制御し、顆粒球分化を調節している可能性が考えられた。またTrib2 KOマウスでは分化の亢進は見られず、Trib1/2ダブルKOによってもTrib1シングルKOと同程度の顆粒球分化の促進しか見られなかった。正常骨髄におけるTrib1のmRNAを調べたところTrib2の約5倍発現量が多いことから。顆粒球分化の調節においてはTrib1がより優先的に機能していることが示された。
著者
堂免 隆浩
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、コミュニティ・ガバナンスによる都市集合財の持続可能な供給管理の有効性およびその条件を明らかにしている。1990年代以降、行政は住民自治組織に対する支援を減少させてきている。そのため、住民自治組織は、建築計画者と事前に協議し、違反者に対する説得を実施している。そして、住民自治組織の活動条件が、1)活動にかかるコストの抑制、2)活動に関する住民のコンセンサス、および、3)行政からの支援の拡充、であることが明らかとなった。
著者
青木 茂樹
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、公共施設などに設置された監視カメラ映像から、注視すべき映像を見落とさずに検出するための自動監視システムが注目されている。これまでの研究では、検出すべき行動やイベントなどのモデルデータを予め与え、モデルデータと合致する行動を検出する手法や、初めて観測された行動や観測頻度の低い行動を検出する手法が提案されている。これらの手法は特定の環境に依存した情報を学習しているため、学習結果を別の環境に適用できないことが課題となっていた。本研究課題では、複数の環境に共通の特徴に注目することによって、ある環境で学習した日常的な行動を基に、学習環境とは異なる環境で非日常状態を検出する手法を提案している。
著者
喜多村 真治
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

我々は、成体腎臓から得られた腎臓幹/前駆細胞を使用して三次元培養することにより腎臓の最小構成単位であるネフロン構造を試験管内で作成することに成功したが、遺伝子学的にも胎生腎臓との比較検討をすることにより、再生研究の基礎的な検討を行うものである。成体腎臓幹/前駆細胞から腎臓構造再構築と発生腎である胎生13日腎、胎生17日腎、成体腎との遺伝子発現についてDNAアレイにて解析を行った。遺伝子学的に発生腎とほぼ同じ程度の一致率が見いだされ、顕微鏡レベルの構築のみならず、遺伝子発現などにおいても発生と同様の遺伝子発現と近似していることが確認された。しかし、形態構築過程との相違もあり、更なる検討が必要と考える。
著者
片岡 香子
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

火山性の決壊洪水は、噴火が直接的に及ぶ範囲を超えてより下流域にインパクトを与えることがあり、甚大な災害を及ぼす可能性が非常に高い現象である。本研究では、カルデラ湖決壊に起因する過去の大規模な洪水について、堆積学的・地形学的アプローチと古水文学的解析からの復元を試み、その実体を明らかにし、今後の火山土砂災害の予測・対策・軽減に貢献できる基礎的、具体的データの構築を目指す。
著者
岡田 桂
出版者
関東学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

スポーツ文化と男性性の結びつきに関して、昨年度から引き続き、主に19世紀のイギリスおよび英語圏を中心に研究・考察した。具体的には、文献による先行研究の分析と、イギリスで調査・収集した資料と情報を元に考察を行い、いくつかの業績としてまとめた。なお、当初予定していたアメリカでの参与観察は、大学における授業期間と重複したため行うことができず、研究計画前半部分にあたる、スポーツと身体、ジェンダーの歴史社会的考察を中心としたものに修正した。上記の考察により、近代における文化としてのスポーツは、身体そのもののイメージを仲立ちとした強固な男性ジェンダー領域として成立し、現在もその価値観を色濃く反映したかたちで存続していることを明らかにした。また、スポーツが、身体による"行為"(実際の行為であれイメージとしての行為であれ)と強く結びついた数少ない文化領域であることから、スポーツ文化がジェンダーのみではなく、身体そのものと、そこから派生するセクシュアリティ自体のイメージに大きな規程力を及ぼしてきたことの一端も明らかにできた。これは、現在行われているスポーツ活動に担わされたジェンダーと身体のイメージの恣意性を客観化し、よりニュートラルなスポーツ活動参加を促す上での理論的な視座となるはずである。また、スポーツ的活動と身体イメージに関する問題意識のうち、19世紀末から20世紀初頭の事例に関しては、主に「身体文化(physical culture)」に関する考察としてまとめており、これらは従来の研究で看過されがちな領域であったため、スポーツ研究、身体研究双方に対して一定の研究貢献となると考えられる。
著者
荒井 弘和
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究1では、コレクティブ・エフィカシーを評価する尺度を開発し、信頼性・妥当性を確認した。研究2では、コレクティブ・エフィカシーの関連要因を検討した。探索的に実施した研究3では、ファシリテーションプログラムが、コレクティブ・エフィカシーを増強する可能性を確認した。追加で実施した、コレクティブ・エフィカシーの増強方略を収集した調査の成果も踏まえて、研究4では、コレクティブ・エフィカシーを増強するためのプログラムが備えるべき要素を提示した。
著者
内田 圭一
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

一般的に,漁業では狙った生物以外の生物が混獲されることがある。直接的に海面下の環境をモニタリングすることのできない漁業者は,種々の生物の混獲状況から漁場の環境変化を推し測っている。本研究では水温や底質に注目し,あなご筒漁業で漁獲される混獲生物の関係を調査した。その結果,混獲個体数が多かった種より,幅はあるものの混獲時の水温との関係が明らかになるとともに,これらの種は環境指標生物として有効とあることが示唆された。今回対象としたあなご筒漁では,飼育実験から水温と混獲の関係は,対象生物の摂餌行動に依存しているものと考えられた。
著者
布施 光代
出版者
明星大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,小学校の児童の積極的授業参加行動のうち授業に集中して聴き,教師の指示に従うなどの授業の基本となる行動である「注視・傾聴」行動に注目し,その行動を促進する要因,阻害する要因を検討した。また,実際の小学校の授業観察の結果から,「注視・傾聴」行動の多い児童,少ない児童の行動の特徴を描き出した。これらの結果をもとに,「注視・傾聴」行動を促進するためのプログラムを検討したい。
著者
宮田 秀介
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

フラッシュフラッドが発生しやすい山岳流域において現地水文観測および流出シミュレーションを行い,フラッシュフラッドに関連する各種発生要因の影響を検討し,現象把握と発生機構の解明を行った。試験流域は早い流出特性をもち,短時間に集中する降雨では特定の谷(支流)に集中した降雨だけでなく土壌層の薄い高標高地帯からの流出も急激な河川水位上昇をもたらすことが明らかとなった。火山流域において土砂濃度の高いフラッシュフラッドである土石流に流出シミュレーションを応用することで,流出過程を考慮した土石流発生基準を設けられる可能性を示した。
著者
谷口 将紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、戦後日本における価値変容を時系列的に分析する。経済発展は、直接民主政の安定をもたらすものではなく、市民文化の発達を媒介変数として相互関係にある。また、経済安定は人々の価値観を変え、物質主義的な価値に重きを置かない社会は低経済成長時代を迎えるという意味で、市民社会の価値観と経済もまた、相互関係にある。価値観研究は、現在に至るまでNPCなど新しい概念も生みながら、各国で繰り返し大規模比較調査が行われている、国際的な関心の高い研究分野である。短期間で大きな経済発展を遂げ、また新聞購読率が伝統的に高く、社会調査開始前に遡及した研究が可能な日本は、研究対象・方法の両面でもっとも本テーマに貢献しうるポジションにある。上記の問題意識に立脚して、本年度は以下の各項目について研究を行った。1.従来のワーキングペーパーを大幅に改訂の上、「戦後日本の価値観変化1945〜2000年--新聞社説を手がかりに」(小林良彰・任ヒョク=ひへん(火)に赤赤=伯編『市民社会における政治過程の日韓比較』慶應義塾大学出版会、2006年所収)として公刊した。同論文については、韓国語訳もまもなく刊行される予定である。2.これとは別に、英語論文"A Time Machine : New Evidence of Postmaterialist Value Change"を作成の上、米国・ワシントンDCで開催されたアメリカ政治学会(American Political Science Association)において研究発表を行った。3.学会発表・討論を通じて得られた知見をもとに、上記英語論文を改訂の上、現在海外の某学術雑誌に投稿中である。研究期間終了後速やかな公刊を期したい。以上の作業を通じ、国際比較を拡大させる一方で、研究開始時点以前に遡及できないという制約上従来不可能とされてきた時系列比較を可能ならしめたことにより、内外の価値観研究に新しい資料を提供できたものと思料する。