著者
船津 美智子
出版者
福岡女学院大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

1.つわり症状に影響がある因子は「人間関係関」、次に「身体状況」「周囲環境」「勤務状況」であった。2.ストレスを感じることでつわり症状に影響があった顕著な項目は出産の不安度、および周囲からの出産への期待度であった。出産の不安度と期待度はいずれも流産経験数と正の相関があり、出産への不安度が高い妊産婦ほど1日のつわり症状時間が長いことがわかった。周囲の相談者数、医療関係者数と出産の不安度には負の相関が認められ、人間関係では医療従事者とのコミュニケーションがつわり症状の緩和になることがわかった。2.つわりの顕著な症状の吐き気は色彩、臭気と関わりがあり、食事内容と関わっていた。78項目の食物嗜好調査結果では、60%以上の妊産婦が食べやすいとした食物の5位までが果物であり、食べにくいとしたのはいずれも臭いが強い食物であった。3.食物の色彩、臭い、味の関係を、つわり症状がある妊産婦についてつわり中と出産後の嗜好変化による環境評価の移行について追跡調査を行い、つわり症状の特性と緩和のための対応について検討を行った。つわり期と出産後の妊産婦の色彩嗜好変化で有意差が認められたのは、中明度、高彩度の紫、高明度、低彩度の青、白であった。紫はつわり期には嗜好性が高かったが、出産後には低下した。また、青、白はいずれも出産後には嗜好性が高くなった。食べものと色相の相関についてみた結果、嗜好性が高い色相の紫と食物のブドウ、また、嗜好性が低い色相の白と食べにくい白米に傾向はみられたが、相関は認められなかった。ブドウが好きな妊産婦は橙色の嗜好性が高かった。橙色には積極的な気分を与えるとする相関がみられた。4.つわり期と出産後のPOMSによる気分調査の6項目中では緊張と混乱の2項目には出産後には改善され、有意差が認められたが、怒り、抑うつに出産後の改善の有意差は認められなかった。つわり期における色彩と気分の相関では、彩度が高い赤、紫、黄緑などが「積極的な気分」「陽気な気持ち」「他人の役に立つ気がする」などの積極的な気分と正の相関が認められた。
著者
神岡 太郎 八幡 和彦 山本 秀男
出版者
一橋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では次の2つの方法によってCIO(Chief Information Officer)の役割に関するデータを収集し、それらに基づいて仮説検証とモデル化を行った。一つは大手企業に所属する22名のCIOに対するインタビューを行った。もう一つはCIOを評価できる立場にある情報システム部門及びユーザ部門に所属する主に大手企業に所属する社員、それぞれ309人を対象としたアンケートを行った。主な結果として(大手日本企業に属し、ジネスイノベーションに関心のあるCIOについて)次の3つが得られた。・CIOは企業において、i)ITの目的をビジネスイノベーションに仕向けること、ii)ITによるビジネスの変革、それに iii)ビジネスイノベーションを企業の成長に貢献させることにポジティブなインパクトを与えている。特にCIOが単に役員としてのポジションにあるだけでなく実際にCIOとして機能している場合にその傾向が強い・ビジネスイノベーションにおけるCIOの役割は、情報システム領域においてのみ変革を担うEnablerから、情報システム領域とビジネス領域の両方で変革を担うDriver、戦略に携わるStrategistへと移行する傾向が見られる・その中で当該CIOはStrategistの役割に属するというCIOが最も多いまた新たに、CIOは個々のビジネスイノベーションだけに責任を持つのではなく、そのイノベーションの基盤にまで関わるChief Innovation Officerの役割にも関わろうとしているという仮説が提示されている。これらの結果は、11.研究発表の項に記載した"CIO Roles in Business Innovation“(APCIM2009)等において発表されている。
著者
近藤 ふさえ 中島 亨 鈴木 麻美 田中 伸一郎
出版者
杏林大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

【目的】本研究は、携帯型身体活動測定器(Actigraph)と主観的睡眠調査票を用いて2型糖尿病患者の睡眠状態の特徴を明らかにすることを目的として、就労している外来通院中の2型糖尿病患者(以後T2DM・Ptと略)21名と健康成人11名を対象に行った。【方法】Actigraphを5日〜8日間連続装着し、その期間中はOSA睡眠調査票MA版(OSA-MA)を用いて主観的睡眠感を調査した。Actigraphより得られた記録から活動期(覚醒時)と非活動期(睡眠時)の判定を行い、非活動期の活動量と睡眠覚醒のタイミングを観測した。また、PSQIとHbA1_cとの相関関係および糖尿病歴、合併症の有無、HbA1_cと活動量との関連を分析した。【結果】T2DM-Ptの非活動期(睡眠期)における活動量mG=0は、健康成人と比べ低かった。睡PSQI-睡眠の質が高得点ほどHbA1_cの値が高い傾向にあった。また、糖尿病歴が長く、HbA1_cが高い人ほど非活動期(睡眠時)の活動量が多い傾向にあった。【考察】T2DM-Ptは健康成人より睡眠中の活動量が多いことが推察される。Actigraph上で入眠期と睡眠途中の活動量の増加を認めたことから、T2DM-Ptの主観的な良い睡眠を阻害する要因は早朝覚醒よりも入眠困難と中途覚醒と考える。また、主観的に良い睡眠が得られている人でも、Actigraph上では活動量が多く、睡眠覚醒のタイミングが不明瞭な傾向にあり、T2DM-Ptは「眠れない」と自覚する以前から睡眠の問題が潜在している可能性があると考える。糖尿病歴が長くHbA1。が高いT2DM-Ptに対しては、生活リズムや睡眠状態を聴取し、睡眠の問題が潜在していないかのアセスメントを行い、食事、運動と合わせ良く眠るための生活指導の必要性があると考える。
著者
沢木 勝茂 國田 寛 赤壁 弘康 岩城 秀樹 竹澤 直哉 徳永 俊史
出版者
南山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

澤木:本年度は、新株引受権、ロシアオプション、他社債転換社債、リアル・オプション、および仕組債の評価式の導出とその数値計算に関する研究を中心に実施した。これらの研究成果を国際会議(INFORMS、Bachelier Finance Society、日本ファイナンス学会、RASOR2007)および国内学会(日本オペレーションズ学会、日本ファイナンス学会、日本経営数学会、JAFEE等)において発表した。3年間の萌芽研究の成果を踏まえて、ワークショップの開催と科学研究費補助金研究成果報告書を作成した。また、研究代表者は日本オペレーションズ・リサーチ学会より学会賞(実施賞)を受賞した。本研究分担者の研究実績は以下の通りである。國田:"Jump diffusion processes and their average options", RASOR 2007,2007.3赤壁:「観光ブームの発生と消滅に関するもうひとつの力学モデル-角本論文に対するRejoinder-」,日本観光学会第94回全国大会,姫路獨協大学,2006.12、「遊園地・テーマパークの生残り策としてみた会計的手法-サンリオ「ピューロランド・ハーモニーランド」の事例を中心として-」,南山大学経営学部講師長谷川高則、同教授斎藤孝一との共同報告,日本観光学会第93回全国大会,奈良県立大学,2006.6、「高収益を稼ぎ出す投資ファンドのからくり〜リスクとリターンの関係から〜」,大学コンソーシアムせと,2006.10、「あなたもリスクに無関心ではいられない時代-資産運用とファイナンスを学ぶ意味-」,学科長が語る南山の現在第10回,2006.10岩城:"Speculation and stock prices -An analysis from the herding approach-",Workshop on Mathematical Finance and Stochastic Control,北海道大学,2006.9竹澤:本年度は、Lamberchetらのリアルオプションモデルを情報エントロピーへ応用した評価方法、部品調達戦略の柔軟性についての評価オプションなどについて、INFORMS、日本ファイナンス学会、日本リアルオプション学会などにおいて、研究報告を行なった。また、石油化学プラントのリアルオプション評価に関する著書および半導体子会社の調達契約に関するリアルオプション評価を用いたリスクヘッジに関する論文を出版した。なお、研究代表者および研究分担者の刊行論文については、次頁に記載した通りである。
著者
神山 潤
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

昨年度の3歳児における検討に引き続き、今年度は3歳以下の児でアクチウオッチによる行動量と起床時刻、就床時刻の関連、ならびに尿中のコルチゾール代謝物(17OHCS)とセロトニン代謝物(5HIAA)とこれら因子の関連を検討した。17OHCS,5HIAAの結果はまだ得られていないが、行動量に関しては貴重な結果を得ることができた。昨年度の3歳児での検討では行動量が多いほどその晩の就床時刻が早くなること、早寝早起きでは遅寝遅起きに比し、朝の尿中17OHCS濃度が高いことの2点を得たが、今年度は、6ヶ月から3歳の75名で検討した。その結果、(1)加齢ともに行動量は増加する、(2)男児が女児よりも行動量が多い、(3)起床時刻が早いほどその日の行動量が多くなる、(4)ある日の行動量はその晩の就床時刻には影響しない、の4点が現時点で確認されている。このうち(4)に関しては昨年度の3歳児における検討と相容れない結果ではある。これは今年度得た行動量が加齢とともに有意に増加する点を考慮すると、行動量が未だ十分に増していない若年層においては、起床・就床時刻よりも加齢が行動量の決定に大きな影響を与えることが想定された。しかし興味あることは、このような若年齢において起床時刻が早まるとその日の行動量が増加することが確認された点である。この所見は「起床時刻が遅れると内的脱同調をきたし、日中の行動量が低下する」という研究者自身の仮説を支持する知見として注目したい。
著者
高畑 雅一
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

アメリカウミザリガニHomarus americanusを実験動物とし、新たに開発したoperant chamberを用いて、レバー押し型のオペラント条件づけの可能性を実証するとともに、分化強化の可能性について検討した。動物を実験水槽に十分に慣れさせた後、水槽内の餌場に自発的に接近するようになるまで乾物ホタテ貝柱で誘導し、接近した場合に餌を与えた。この訓練が完了したのち、1セッションを30分としてレバーに対する自発的なはさみ行動の平均生起率(1セッションのはさみ回数/セッション数、以下BL値と呼ぶ)を確定した。次いでレバー押しに対して報酬を連合した。ここでは特に、1)セッションごとのはさみ回数の推移《獲得、消去、回復の傾向は観察されるか》および2)はさみ強度のスケジュール間比較《はさみ強度について分化強化手続きができるか》を調査した。強化閾値を変える前と後で、はさみ強度(各はさみ行動の最大応答値)の分布にどのような変化が現れるのか個体ごとに調べるに当たっては一般化線形モデル選択法を適用した。その結果、各セッションのはさみ回数は、獲得手続きではBL値以上で持続する傾向、消去手続きではBL値付近に徐々に近づく傾向、回復手続きではBL値以上で再び持続する傾向が、それぞれみられた。また、非随伴性強化ではBL値以上の割合は獲得手続きの場合以下であり、持続する傾向もみられなかった。これらの知見は、アメリカウミザリガニでオペラント学習が可能であることを実証している。また、強化閾値を上げたことに依存してはさみ強度が上昇し、強化閾値を変えない場合では、はさみ強度に変化はなかった。これらの結果は、分化強化が強化閾値の上昇に限って成立する可能性を示唆する。閾値下降については、新たな装置を開発して調査する必要がある。
著者
原野 悟
出版者
日本大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

初年度の調査に基づいて前年度に作成したホームページを公開した。同時にホームページの閲覧を促すアイキャッチャーとしてポスターを作成し学内に掲示した。ポスターの内容は直接的なものより、印象に訴えることを試みた。当初予定していた映像によるEnter-Edutamentの教材は構内放送設備の制限や予算の不足により中止の止むなきにいたった。ホームページ公開から6ヶ月のincubation timeを設けて、30名の学生を対象にfocus group interview法による質的研究を行った。この学生構成は男女、文系理系別で等しくした。その結果、ホームページを見たところ、成人麻疹に対する情報として設定したメッセージが理解され認識を変えたとする意見が多く、内容的にはほぼ妥当なものと考えられた。しかし、ホームページの存在はあまり知られておらず、ポスターを見て閲覧の動機となるという意見とイメージが先行して関心が惹起されないという意見に分かれた。このことより、インターネットを用いて健康コミュニケーションを実施する場合には、いかにホームページを見るように動機づけるかが大きな課題となることがわかった。その反面、インターネットを通じて提供される情報についてはあまり批判的ではなく受け入れられる可能性が高く、健康コミュニケーションで用いる有用性も示唆された。また、今回は受け取るメッセージを3つに限定してゴール設定をしたが、この限定が妥当なもので、情報量としての適切さが明らかとなった。本研究では開始時点から専門家によるプログラム開発としたが、より普及させるためには受け手である学生を計画時より参加させるSocial Learningの手法を用いたほうが適切であったことがわかり、今後の課題として残った。
著者
鬼木 俊次 加賀爪 優 双 喜
出版者
独立行政法人国際農林水産業研究センター
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本年度は、前年度までに行ったモンゴル国および中国内モンゴルのデータの整理と計量分析を行いつつ、モンゴル国において災害(干ばつ・寒雪害)後の牧民の移住と過放牧の関係について調査を行った。本年度の調査は、モンゴル国ゴビスンベル県、トゥブ県南部、およびドルノゴビ県北部で行った。現地の牧民および行政機関での聞き取り調査の後、ランダムサンプリングで牧畜家計の調査を実施した。この地域の災害のよる被害は、1999年冬〜2000年春に最も多く、その翌年にもかなり被害が出た。しかし、その後、多くの牧民は家畜を急速に増加させている。今年度の調査により、民主化以後のモンゴルには本来的に家畜を増加させる勢いがあることが分かった。消費を抑制して家畜を増加させる牧民もいるが、大多数はもともと消費が少なく、家畜ストックを増加させる強い性向を有している。一般に貧困世帯の場合、将来の所得よりも現在の所得を優先する割合(主観的割引率)が高く、将来の所得確保のために資産を増やすことが少ないと言われる。だが、モンゴルの場合は、家畜の自然増加率が高いため、ストック増加のインセンティブが強く、家畜の消費が抑制されるようである。自然災害の後は、草地の牧養力の限界に達するまで家畜が増加し続ける。また、牧民は財産として多くの馬を持つ傾向がある。馬は飼育のために必要な労働力が少なく労働生産性が高いが、価格が低いため土地生産性は低い。競馬用の馬以外は販売も消費も少なく、実際に必要な数以上の家畜を保有している。これは、モンゴル国では草地の利用がオープンで無料であるからであり、内モンゴルの場合は馬の頭数は最小限度に留まっている。モンゴルの家畜の増加インセンティブが高いということ、および労働生産性が高く土地生産性が低い家畜が過剰に放牧されやすいということは、従来の研究で見落とされてきた問題であり、今後、実証研究の積み重ねが望まれる。
著者
脇中 洋
出版者
花園大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成18年度末にかけて実施したピアサポータートレニングプログラムを受けたメンバーを中心とする20〜30代の当事者7名を対象に、ピアサポータートレーニングプログラム作成委員会を結成して月に1回のペース計11回集まり、研究協力者と(中塚圭子)ともにフィシリテーターを努めて将来のピアサポートに向けての都トレーニングプログラム練成を図った。また当事者家族の要請を受けて、家族向けピアサポータートレニングプログラムを平成19年9月から20年3月まで計8回実施した。これらの活動を経て当事者らがどのように障害を持つ自分自身の意識を変容させたかを検討できるようにビデオに録画した。こうした活動の合間に、これまで調査したカナダや、京都、福知山、大阪、奈良、神戸の当事者団体と可能な限り連絡を取り合い、当事者のあり方めぐって意見を交わしながら連携を図り、平成20年2月から3月にかけてカナダの当事者団体スタッフを招いて福知山、神戸、奈良で相談を開くとともに、当事者団体やピアサポーターらの協力を得て、花園大学においてフォーラムを開催した。以上の活動経過は当事者団体会報や「福祉と人間科学」に記し、発達心理学会で発表した。研究3年目の終わりに到達した課題は、以下の3点である。まず高次脳機能障害がリハビリ求められる会社適応に専心するのみならず、自己適応をも要すること。また「会社に向けて発信するピア」というモデルを得ることが、自己変容を推進すること。家族もまた適応およびピアというモデルを要していること。これら3つの観点は、当事者とその家族が会社との接点を得ていく上で、不可欠のものと思われる。
著者
澄川 耕二 三好 宏 冨安 志郎
出版者
長崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

視覚的に疱疹の程度を評価し、熱または機械的刺激に対する閾値の低下の程度とどのような相関があるのか評価を行った。ヘルペスゾスターウイルスを右下肢に皮下注し(ウイルスは10^6、10^7、10^8 plaque-forming unitを50μlに希釈して用いる)10日後のラットは疱疹の面積と機械的または熱刺激に対する閾値の低下は負の相関を示し、アロデイニアと痛覚過敏状態を呈した。しかし、現在作成している帯状疱疹後神経痛モデルラットは2週間ほど経過すると死に至ってしまい、急性痛の評価は可能であるが臨床的に大きな問題となっている慢性痛に対する評価は難しい。また、ウイルスの投与量が少なかったり、抗ウイルス薬を増量すれば長期生存はするが皮疹や痛覚過敏の発現をみず、疼痛モデルとして不適切なものとなってしまう。今後、現在のモデルにおける帯状疱疹後急性期の疼痛メカニズムを解析するより、現在のモデルを改良して帯状疱疹慢性期のメカニズムを検討できるモデルを作成するほうが臨床的に意義の高いことだと考え、ウイルスの量、抗ウイルス投与量とタイミング、疼痛反応測定の時期等を調整、もしくは何らかの新しい技術を導入し試行の予定である。
著者
千葉 則茂 原美 オサマ
出版者
岩手大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1. 自然物体・現象を可視化媒体としたレーザプロジェクション技術の開発降雪への投射や積雪への投射効果について実験を行い, 積雪はスクリーンとして, 降雪はビームの可視化媒体として十分に活用できることが分かった. また, 樹木(大木)への投射実験も行い, 投射側から観察するスクリーンとして活用可能であることも分かった. 防風林や街路樹の活用が期待できる.2. 天空でのグラフィックス技術の開発スクリーンを用いない投射では, 観察者側への反射が弱く認識が難しかった. また, 平行ビームの消失点により認識を容易にできることを期待し, 投射を試みたが, やはり良好な結果は得られなかった. ただし, レーザ強度にも依存すると思われるので, 結論を出すためには, さらなる検討が必要である. (購入したプロジェクタの強度300mWでは, 降雪や靄など可視化媒体密度が高くないと可視化されなかった.)3. 効率的で自由度の高いビーム投射技術の開発(1) タイミングを自動的に取るチューニング法レーザプロジェクタは電子的な要素と機械的な要素からなるため連続する描画コマンド間に適当な待ち時間をとらないと, ビームのon, offのタイミングや, 角の描画において, 描画データとの間に不一致が発生する. この待ち時間を自動的に取る手法を開発した.(2) ベクトルデータから効率的な一筆描きを構成する方法レーザプロジェクタでの描画は, 与えられたベクトルデータにビームをoffにして走査するブランクベクトルを加えて一筆描きをすることである. 最小数のブランクベクトルデータと描画に適する一筆描き順を求めるアルゴリズムを開発した.(3)並列投射を可能とするためのキャリブレーション法一般的な平面スクリーンではなく, 任意の可視化媒体(曲面スクリーン)を仮定し, 描画の歪みを補正し, 複数台のプロジェクタにより, 複雑度の高い描画を可能とする方法を開発した.
著者
安斎 ひとみ
出版者
目白大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

訪問看護に関する研究は多く報告されているものの、積雪寒冷地に居住する利用者宅に訪問する訪問看護の冬の問題と課題に焦点をあてた研究は報告が少ない。平成17年度および平成18年度の研究成果をもとに、平成19年度は積雪寒冷地における訪問看護ステーションの冬期の在宅支援方法と訪問のあり方を明らかにすることを目的とした。2008年2月に、東北地方の訪問看護ステーションを291か所の所長を対象に、自記式郵送法によるアンケート調査を行った。その結果、68名の回答があった。訪問看護ステーションが訪問している利用者は、冬に積雪などにより外出する機会が少なくなることがあり、筋力低下を予防するために室内体操やリハビリテーションを中心とした計画に切り替えているという事例があった。山間地で夜間凍結の危険がある地域の利用者を対象とするテレケアやパソコンを利用した遠隔地ケアシステムの導入は、予算的な問題があり難しいと答えた事業所が多かった。平成18年度研究結果を、学会で報告した。
著者
橋本 眞明
出版者
旭川医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

旭川市旭山動物園内屋外非展示エリアにおけるエゾタヌキのテレメトリーでは、冬季2〜3ケ月の絶食中でも体温の最大低下は2℃を超えず、巣篭もりも1日を超えるもが無かった。3月の再給餌までに体重はほぼ半減し、血中脂肪、総タンパク質量、尿素窒素など栄養状態の指標物質に減少が認められた以外には、現状では顕著な変化が捉えられていない。2007年8月末より同園第2子ども牧場建物内にて研究の展示をしている。内容は、冬眠とエゾタヌキの研究を概説したパネルと、テレメトリー送信機を腹腔内に留置したシリアン・ハムスターを冬眠に導入し、低温飼育装置内で冬眠を維持しつつ。その様子と共に体温、心電図のリアルタイム記録をコンピューターディスプレイにより展示した。展示を見た来園者にアンケートを依頼し、これまでに127名からの回答が得られている。主な質問項目の概要は1)内容は興味深かったか、2)生体の内部機構に興味がわいたか。3)展示を持続すべきか、とし、5段階評価(5が最大の同意を表す)を依頼した。来園者数に対し回答者数が少ないのは、同建物内の展示時間が1日1時間であることや、そもそも当施設に立ち寄る来園者が少なく、さらにアンケート回答にまで至る来園者が少ないためと思われる。内訳は小学生21、中学生6、高校生9、大学・専門学校生2、社会人38、学齢前5名(親の代筆)、年齢不詳46であった。年代別では10才未満13、10代35、20代20、30代16、40代5、50代4、60代0、70才以上1、年代不詳33であった。回答数が不十分な年代もあるため、全平均で見ると、それぞれの評点は質問1)4.3、2)4.0、3)4.5。概ね興味深い展示と受け取られ、体内の生理機構に対する興味も触発され、展示を発展的に継続してほしいとの結果であった。展示の表現法には工夫が必要との意見も多く、今後の課題も明らかになった。
著者
小林 祥泰 小黒 浩明 卜蔵 浩和 山口 修平
出版者
島根大学(医学部)
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

高齢者の転倒に重要な因子と考えられる歩行時の危険予知能力を、事象関連電位および機能的MRIで明らかにするために、昨年に引き続き以下の研究をおこなった。被験者が実際に歩いている感覚を持つような、仮想現実空間を実現した歩行動画ビデオを昨年の段階で完成した(ソフト開発会社との共同作成)。動画ビデオの中には、歩行を妨害する刺激、すなわち突然接近する自動車やボールなどの場面を音と共に挿入した。本年度はこの刺激を用いて事象関連電位P3の測定を行った。まず若年の健常者において基礎的な検討を行った。被験者は動画中の標的刺激(アニメの犬)に対してボタン押しを行い、課題実行中の事象関連電位を測定した。そして妨害刺激に対する事象関連電位も記録し、標的刺激の反応と比較した。脳波は頭皮上16カ所から記録し、事象関連電位の頭皮上の分布も検討した。その結果、標的刺激に対する事象関連電位P3は潜時301ms、振幅13.3μVで頭頂後頭部優位に出現した。一方、妨害刺激に対する事象関連電位P3は潜時320ms、振幅11.4μVで前頭部優位であった。予期しない新奇な刺激に対する生体の反応は、定位反応(orienting response)として知られており、事象関連電位では新奇性関連P3が出現する。今回の妨害刺激に対する事象関連電位P3は、その潜時や電位の頭皮上の分布の検討結果から、新奇性関連P3と同様の反応を見ていると考えられる。その後さらに、歩行障害を呈する種々の神経疾患患者(パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多発性脳梗塞等)での測定を行った。実際に歩行は行わないため、事象関連電位の測定は全例で可能であった。その結果、一部の患者で妨害刺激に対する事象関連電位の低下、遅延を認め、本システムによる測定が、歩行時の様々な危険物に対する認知能力の定量的評価に使用できる可能性が示唆された。今後さらに転倒の客観的指標との相関を検討することで、疾患との関連、脳内病変部位との関連、一般認知機能、特に前頭葉機能との関連、さらに歩行障害に対する治療の効果などの検討に応用が可能である。機能的MRIに上る検討も今後の課題であるが、妨害刺激に対する反応の脳内神経ネットワークの詳細が明らかになることが期待される。
著者
渡邊 洋
出版者
山形大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究の実績概要を以下に示す。研究初年度でもあり、雪氷物性の計測や使用機器の特性把握を目的とした雪密度計測を行った。・雪密度の制御に係る実験計測技術の獲得を目的として、雪に見立てた人工雪(大型製氷装置で製作したフレークアイスをアイススライサーで粉砕したもの)の雪氷物性値を1ヶ月に亘って連続観測した。その結果、この雪密度は概ね0.35〜04を推移し、比較的含水性の高い人工雪の生成が可能であることが判った。・加えて、室内実験に用いる低密度の人工雪は、冷凍庫で製作するブロックアイスをアイススライサーで粉砕することにより、雪密度0.25〜0.3程度の人工雪を生成できることが判った。・サンヨー製の大型製氷器に貯蔵されるフレークアイスは、生成直後の氷密度と時間経過を経た後の氷密度に相違があり、気温変化の過程にも依るが増加する傾向にあることが判明した。よって、実験用の人工雪の生成には注意(特に温度と密度の管理)が必要であることが判った。・力学的な加圧(約3kg/cm^2)による雪密度変化では、繰り返し載荷(8回程度)により、0.3程度の雪密度は0.8(氷板に相当)近くまで上昇することが判った。(ホイールトラッキング試験器による室内実験観測)・雪山で保存した雪の雪密度は、3ヶ月経過後の6月には0.6程度にまで自然上昇することが判った。本研究による雪密度制御では、0.7〜0.8程度の密度増加を目指す必要がある。
著者
宮本 比呂志
出版者
佐賀大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

今年度は歯性感染症患者10例の排膿を用い、遺伝子法と培養法で検出菌の比較を行った。唾液の菌叢解析には、基礎疾患がなく口腔内に疾患のない健常者10名の唾液を用いた。歯性感染症患者の排膿は、滅菌スワプもしくは穿刺吸引で膿汁を採取した。培養法には4種の培地(羊血液寒天,BTB,チョコレート寒天,ブルセラ半流動)を使用し、37℃,好気および嫌気条件で培養した。一方、遺伝子法は試料からDNAを抽出し,16S ribosomal RNA遺伝子の一部(約580b p)をPCR法で増幅した。得られたPCR産物を大腸菌にクローニングした後,塩基配列を決定した。決定した配列はBLASTを用いて相同性検索を行い,菌種を同定した。健常者の唾液はすべての被験者においてStreptococcus属が最も多く検出された。優占菌は、個人差はあるもののStreptococcus属,Neisseria属,Actinomyces属,Granulicatella属,Gemella属,Prevotella属であった。排膿では、培養法と遺伝子法とで検出菌が一致したのは10症例中1症例のみであった。培養法では10症例中4症例において起炎菌が同定できなかったが、遺伝子法ではすべての症例において起炎菌が推測できた。遺伝子法は、従来の培養法では検出困難とされるVBN菌も含めた試料中の細菌叢を網羅的にかつ短時間で検出可能であった。本研究で開発した方法が、口腔内という常在菌が多数存在する中から起炎菌を同定する際に有効であり、口腔常在菌の変動解析に十分使用できることが確認された。生活習慣病のリスクアセスメントツールが確立できた。
著者
渡部 潤一 青木 和光 河北 秀世
出版者
国立天文台
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

太陽系天体の中でも、低温で凍ったまま46億年間経過している彗星は原始太陽系の化石である。太陽に近づくと熱によりその成分を蒸発させることから、その成分分析によりどの程度の温度で氷結したかが推定できるが、一般に上限値に限られ、また揮発成分を失った短周期彗星には使えない。本研究では、低温領域で温度と明確な相関がある水素原子の核スピン状態の差:オルソ・パラ比によって彗星氷結温度を求めようとしたものである。水分子でこの方法を適用しようとすると、地球大気の水蒸気が邪魔となる欠点があったため、水素原子が三つあって彗星に含まれるアンモニアに注目した。アンモニアは蒸発後、光解離により、NH2という分子となって、母分子のアンモニアの情報を保ちながら、オルソ、パラそれぞれの輝線を発する。高分散分光で輝線分離ができれば、オルソ・パラ比を知ることができ、さらにはアンモニアのオルソ・パラ比を推定できる。平成16年度は、国立天文台ハワイ観測所の口径8mすばる望遠鏡の高分散分光器HDSを用いた観測結果をもとに、ヨーロッパのデータも用いながら、本研究のまとめを行った。これによって、7つの彗星についてのスピン温度がすべて30K前後に集中していることがはっきりした。この解釈としては、彗星が誕生した場所の温度を示しているという可能性の他に、元々アンモニア分子が誕生した原始太陽系星雲のもととなった分子雲の温度を示している可能性もある。これらの可能性のどちらが正しいかを検証するためには、アンモニア分子以外の観測を行う必要がある。そこでわれわれは急遽メタン分子のオルソ・パラ比を考慮に入れ、すばる望遠鏡などによる観測を行ったところ、これについてもアンモニア同様30Kの温度を示すことが判明した。現在、これらのデータを慎重に検討しているところであり、本研究によって、当初の目的よりも先に進んでしまったことは、望外の喜ばしい結果である。
著者
黒田 龍二
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

主要な調査は厳島神社及び宮島の門前町の調査とし、比較対象として愛媛県大三島の大山祇神社とその周辺を調査した。近世においては厳島神社周辺には門前町が発達し、非常に栄えていた。その様子は、いくつかの厳島図屏風によって具体的に知ることができる。厳島図屏風の検討を通じて、建築的な描写から信頼性が高いのは、松本山雪筆の厳島図屏風(東京国立博物館蔵)で、17世紀の作である。町は神社の東側に発達し、町屋ほ平入、板葺でウダツをもつ町屋形式である。厳島においては社殿、町の構成、寺院、社家の居住地と屋敷がいずれも江戸時代の形態をよく残し、町の地割に関しても中世末期の地割が残る可能性が高い。一方、大三島は中世から三島水軍の拠点として栄え、門前町も形成されている。しかし、中心社殿は中世の物が残っているが、その他は厳島のように江戸時代以前の景観を残していない。まず町並みは近代以降の建物がほとんどである。社家、社僧の居住地は伝承があるのみで、実体としてはなくなっている。この差異の生じた原因としては、江戸時代に厳島は大三島よりも庶民の観光の地として発達したことが大きく関係していると考えられる。今後は、このような庶民信仰の観光地として発達する要因は神社の性格と関係があるのか。大三島の社僧と厳島の神官、社僧は異なる性格のものなのか。厳島神社と大山祇神社の本殿形態は大きく異なるが、その原因は何か。厳島神社の建築史的研究は多いが、大山祇神社の研究はほとんど行われておらず、このような地方における大型本殿の研究を、社会のあり方などと関連させて深化させる必要があることが分かった。
著者
樋口 重和
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

冬季に日照量の少ない東北地方の積雪は光の反射や拡散機能を持っており,それによる光曝露量の増加は,冬季の生体リズムの遅れを改善する効果が期待できる.本研究は冬季の積雪の前後で,朝の光曝露量と生体リズムの位相の変化を調べることを目的とした.実験は日照量が少ないことで知られる秋田県で実施し,被験者はインフォームドコンセントを得た大学生13名(22.3±1.3歳)であった.積雪前の実験は平成16年12月に実施した.被験者は連続する17日間,光曝露量を含むアクチグラフの記録を行い,10日目と17日目に人工気象室で生体リズムの位相を調べるための実験に参加した.生体リズムの指標には,暗条件下でメラトニンの分泌が始まる時刻とした.実験期間中,被験者は普段の睡眠覚醒習慣に従って規則的な生活をおくり,午前9時までに通学するように指示が与えられた.積雪後の実験は平成17年1月に実施し,積雪前と同じ実験手順で行った.目に入ってくる明るさ(目の位置での鉛直面照度)が積雪によってどの程度違うかを同じ天候状態で比較したところ,積雪無しに比べて積雪有りでは約2倍の明るさになることが分かった.被験者が実際に早朝に曝露された明るさも積雪前よりも積雪後に有意に高かった.しかし,生体リズムの指標であるメラトニンの分泌開始時刻には積雪の前後で有意な差は認められなかった.本研究より,積雪後は光の反射や拡散によって光曝露量が増加することが明らかとなったが,今回用いた実験条件では,積雪による光曝露量の増加は生体リズムに影響を及ぼさなかった.この原因として,被験者が自然光に曝露される時間が通学時に限られており,曝露時間が短かったことがあげられる.今後,長い時間を屋外で過ごすような条件を想定して検討する必要があると思われる.
著者
ブランディ シェリル・リン 内藤 明子
出版者
愛知医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

1.今年度の調査期間:平成15年6月2.対象者及びデータ収集:今年度は、本研究の最終対象者である私立病院看護部長1名に面接調査を行った。前年度同様、電話連絡及び依頼文書を郵送し、了解を得た後、半構成面接を行った。面接はテープに録音され、研究者によりフィールドノートが記載された。約2年間の調査期間に合計16名の面接調査が終了し、データ飽和状態となり、調査を終了した。3.データ分析及び結果:シャッツマンのグラウンデッドセオリーテクニックをデータ分析に用い、複数のステップを経て中核次元を導いた。次いで、ディメンションの有する特性あるいは特徴について分析し、各次元と特性が、全体像を表す概念(その他すべてを説明しうる性質をもつ次元)になる要件を有すかどうか吟味した。最後の分析段階で、データを、内容、条件、行動、結果からなる説明表に整理した。各次元あるいは概念は、対象者からの実際のデータ、及び看護・管理・フェミニストの文献から詳細に説明可能、且つ支持可能である。本研究を代表する全体概念は「自己評価」及びその特性である「自信」であった。J.B.ミラーの「真実性(authenticity)」の概念が、本研究の全体概念の理解に最適であり、日本の女性看護管理者が、仕事へ取り組みながら真実性を見出した経緯を理解することが、今後の日本の看護管理実践と教育の向上に役立つと考えられる。4.研究成果の公表:本研究の初期の結果は、2003年11月3日に、カナダ・トロントで行われた第37回シグマ・セタ・タウ国際大会において、ポスター及び口演発表で報告された。最終結果については、2004年4月30日〜5月4日に、カナダ・バンフで行われる健康に関する質的研究学会において、口演発表される予定である。なお、米国の『看護管理学雑誌』への投稿準備中である。