著者
根本 清次 古家 明子
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

経管栄養患者はその療養上の方針から自ら味わうことなく食事を行うが、食に対する拒絶感、絶望感を抱きやすく、食の満足とはほど遠い位置にある。本研究では患者と共に意見を交えながら食事に対するニードを調査し、残存する機能を利用して食のQOLを向上する方法を開発してきた。平成15年度には視覚に訴える目的で写真製の食事カタログを作成し、同時に口腔内に用いて食事の匂いと味覚を与える食感ピースの原型を開発した。食感ピースは燕下することなく破棄されるものであり、味覚を付与するものである。材料について選定した結果、発泡マンナンが、これに適していることが明らかになった。すなわち、万が一の燕下の際でも無毒であること。燕下しにくい素材であること。多孔質であり、通気性を有することなどが評価の要因となった。平成17年度には視覚や味覚的に食感を付与する"場"として経管栄養患者のための食事会を企画し試行した。この際の患者インタビューの結果より、食感ピースについての微調整をおこない、大きさ、堅さ、味の濃さなどを調整する工夫をおこなった。さらに患者の意見により嗅覚成分について着目する必要が明らかになった。これは流動性を有するミキサー食が食材の混合であるため独特の臭気を有し、不快感につながるとの意見による。したがって香料による香りの調整が必要であることが明らかになった。嗅覚刺激の有用性については食の観点だけでなく、気分や感覚についての有用性が次第に明確化されつつあり、食のにおいと環境臭の関係についても今後明らかにしたい。現在まで食事会を行ってきた患者のアンケートの精細な分析によれば、経管栄養単独の場合と比較して、食満足度の向上を示す結果が示されたものの、経管栄養時の不快感、不安感には効果を有しないことが判明した。これらの結果については順次公表予定である。
著者
内田 直 堀野 博幸 矢島 忠明 泰羅 雅登 渡邉 丈夫 宮崎 真
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

成果をまとめる。○スポーツに使われる脳機能を形態学的研究により行った。この研究は、機能的に発達した皮質の部位が肥大することを根拠に、皮質各部位の大きさを比較する研究である。この研究からは、バレーボール選手では両側楔部・楔前部の灰白質が大きいことが示された。これは視空間的注意・処理、運動技能を、長期間に渡って獲得・反復することに適応して生じた構造の変化を表していると考えられた。○手足の屈伸運動を運動習熟者、非習熟者にfMRI撮影中に行わせ、脳の賦活部位を調べた。その結果、補足運動野、運動前野などの皮質部位は非習熟者で、大脳基底核は習熟者でより賦活が見られ、日常的運動でも習熟者では運動学習が進んだ脳機能を用いていることが想像された。○Go/No-Go課題によるソフトボール選手と非アスリートの脳機能の比較では、ソフトボール選手でNo-Go課題の際に両側前頭前野の賦活が有意に強く見られた。これは、ソフトボール選手ではより強い運動の抑制があるということを示しており、実際のバッティングの場面でも、より強い抑制が選球に関連している可能性を示唆していた。○サッカーなどでは、しばしば2次元⇔3次元の認知的置き換えを行っている。このような置き換えに使われる脳機能について明らかにした。コンピュータグラフィックスを用い円筒の配置を2次元⇔3次元で置き換える課題を用いた。これにより、3D→2Dでは上頭頂小葉、下頭頂小葉、前頭前野、右海馬傍回、左小脳後葉の賦活が見られた。2D→3Dにおいて、上頭頂小葉、下頭頂小葉、前頭前野、右海馬傍回、左小脳後葉の賦活が見られた。以上、多くの成果を得たが、今後さらに競技スポーツだけでなく健康スポーツという視点からも、運動と脳機能の関連についての研究を発展させてゆきたいと考えている。
著者
岩城 裕之 友定 賢治 日高 貢一郎 今村 かほる
出版者
呉工業高等専門学校
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

1 医療現場での方言をめぐる問題に地域差がみられること各地でのアンケートや臨地調査によって、方言を巡る問題に地域差があることが明らかとなった。具体的には、富山の場合、県内のごく狭い範囲で、体調を表す重要な語について使用・不使用があったり、意味が異なる場合が存在することが分かった。一方、青森では多くの語が難解であり、医療場面で想定されるすべての語彙、表現の記述が必要となることが明らかとなった。2 方言データベースの作成と公開青森、広島、富山、飛騨のデータを収録した方言データベースを作成、公開した。いわゆる聞き取りにくい方言について、検索する際に想定されるいくつかの入力パターンを調査し、いずれのパターンでも適切な候補を表示できるようなシステムを構築した。方言研究者であれば一定のルールの中で記述するが、医療関係者などの非方言研究者は、必ずしもそうではないことに配慮したためである。結果的に、使いやすい方言辞書を追求することとなった。また、現地で収録した音声を加工し、データベースの多くの語や一部の文例について、クリックすることで音声を聞くことができるようになった。揺れのある入カパターンから適切な候補を見つけ出すことのできる方言辞書やデータベースは、ほとんど前例がなく、ユニークな成果であると思われる。3 コミュニケーションマニュアルの作成青森県津軽において、いくつかの定型的問診場面を取り上げ、方言による対話例を作成した。しかし、共通語の問診と異なり、いわゆる日常の挨拶や雑談をはさむことが「方言的」であったため、マニュアルにはなじまないと考えられ、今後も研究を重ねていく必要があると思われる。
著者
下村 匠 細山田 得三
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、飛来塩分環境下におかれた構造物が受ける環境作用を実験室内において再現する装置を作製することを目的としている。平成19年度より製作に着手した実験装置が、平成20年度に完成し、予定通りの性能を発揮することが確認され、有効な実験を行うことができた。実験装置は、断面1m×1m、一周約10mの風洞の中に、プロペラ、塩水粒子発生装置を組み込んだもので、風洞内に設置したコンクリート供試体に、設定された量の飛来塩分を連続的に作用させることができる。このことにより、実環境下ではさまざまな不確定要因の影響を受けるため精度のよいデータの取得が困難であったコンクリートに到達する飛来塩分量とコンクリート内部へ浸透する塩分量との関係が、理想的な条件下で測定することができる。合理的で実現象をよく表す塩分浸透の境界条件の形式の検討、理想的な飛来塩分環境下におけるコンクリート中の拡散係数など、この装置により明らかになることは多いと期待される。水セメント比が40、50、60%のコンクリート供試体に、本装置により継続的に飛来塩分を作用させ、定期的に供試体内部の塩分量の分布を測定した結果から、ボルツマン変換を用いてコンクリート中の塩分拡散係数を塩分濃度の関数として求めた。塩分濃度が増加するにつれて拡散係数が小さくなる結果が得られた。塩分拡散係数のより的確な表現方法の検討は、本装置を用いた今後の継続研究課題である。また平成20年度には、本装置を用いた応用研究として、飛来塩分にさらされたコンクリート構造物の表面を高圧水で洗浄することにより塩分侵入抑制効果が得られるかどうかを実験的に検討した。洗浄頻度が多いほど、内部への塩分侵入を抑制する効果が認められた。
著者
藤田 正範 島田 昌之
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

【目的】乳牛では乾乳の初期に古い乳腺細胞が脱離し、新しい細胞に更新される。しかし、暑熱の影響によりこの更新が進まないときには秋季における乳生産が抑制されることが知られている。本研究では、乳生産に及ぼす暑熱の影響を理解する研究の一環として、乳腺細胞の機能性に及ぼす暑熱の影響を解析することを目的とした。このために,夏季乾乳・夏季泌乳牛と秋季乾乳・秋季泌乳牛の生乳中乳腺細胞のプロラクチン負荷に対する乳腺細胞プロテインキナーゼ活性などの比較調査を行った。【方法】ホルスタイン種夏季泌乳牛8頭(試験期間内日平均気温;23。3℃)、秋季泌乳牛8頭(試験期間内日平均気温;10。9℃)を用いた。分娩1日と10日の14時に乳房静脈から採血し、分娩10日の8時に生乳を採取した。血漿中エストラジオール17-β濃度を高速液体クロマトグラフィーUV検出法で、血漿中プロラクチン濃度をEIA法で測定した。プロラクチン負荷に対する乳腺細胞のプロテインキナーゼ発現量の測定では、生乳から乳腺細胞を分離し、10^3個前後の乳腺細胞に100、500および1000ng/ml濃度のプロラクチンを添加培養後にプロテインキナーゼ活性を酵素法で測定した。【結果】夏季泌乳牛のTDN摂取量と泌乳量は、秋季泌乳牛よりも低い傾向にあった。分娩1日における血漿中エストラジオール17-β濃度は夏季泌乳牛で低い傾向にあり、分娩10日における血漿中プロラクチン濃度は夏季泌乳牛で低い傾向にあった。乳腺細胞のプロテインキナーゼ発現量は3段階のプロラクチン添加のいずれにおいても夏季泌乳牛で有意に高い値であった。以上の結果、プロラクチンの血中放出は暑熱により抑制される傾向にあるものの、乳腺細胞内のプロテインキナーゼ活性などの代謝機能性が亢進することにより、泌乳牛は暑さに対応して乳生産の機能性を維持するものと考えられた。
著者
A Cardenas 加藤 隆浩
出版者
南山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究の課題は、メキシコの多文化主義的教育を教条的になぞることではなく、その実践のなかに見え隠れする「綻び」の原因を明らかにすることであった。そこで、研究代表者らは初年度には、教育現場で使われる教科書の分析を多文化主義、多文化共生に注目して行い、2年目には先住民文化と国民文化とがどのように関係づけられ、それがインディヘニスモに裏づけられたメキシコ版多文化主義を基盤とする国民国家の形成にどのような形でかかわるかを公立小中学校の教員からの聞き取り調査をもとに見てきた。その結果、生徒と最も接触の多い教員に注目すると、彼らの語る多文化教育の理念と実践との問に大きな乖離があり、それは教育環境を整えるための財政支援不足ゆえのことであるという認識があることが分かった。研究期間のうちの2年を教育現場を中心に調査研究を進めてきたが、最終年度の今年は、その問題を国がどのように認識しているかを教育行政に直接携わり、自ら政策を立案し実践していく国民教育省(SEP)の官僚からの聞き取りにより調査した。そこで明らかになったのは、これまでに幾度となく多文化教育の理念を練り直され、それが啓蒙活動に利用できるような形で冊子、著作として纏められ教員や保護者に無料配布されてきたこと、またその理念に合わせたさまざまな副教材が作成され、教育現場で使用されていること、しかし、そうした実践のための膨大な人的・財政負担(近年、減少傾向にはあるが)にもかかわらず、期待されるような結果が出ていないという厳しい現状があること、その原因は、然るべき教授法を身につけた教員がほとんどいないという点を教育省の官僚らが認めていることなどであった。要するに、「綻び」は教育現場でも官庁でも共通に認識されているが、前者では予算不足を原因とし、後者では現場の教員に責任を転嫁しているように見える。もちろん「綻び」の責任の所在がどこにあるかが問題ではなく、それにどのように対処すべきかが重要である。そのためには、立場を超え、多文化教育の「綻び」に真摯に向き合う必要と思われる。本研究を実施する中で研究代表者らにとって驚きであったのは、多文化教育の理念に関する研究は膨大にあるのに、その「綻び」に関してはほとんどなかった、という点である。この問題の分析は、まだ始まったばかりということである。なお本研究では、家庭教育にも注目し、家庭学習用として安価で売り出されているモノグラフィアにも注目した。
著者
松田 博幸 大森 豊裕 難波 義郎 井原 辰彦 毛谷村 英治
出版者
近畿大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本調査研究は、欧米型のハワイとアジア型のプーケットの事例から、歴史の中で海洋リゾートが成熟してきた過程とその手法を明らかにし、日本との比較(沖縄県)を通して、差異の要因を検討し、我が国の海洋リゾート整備の方向を検討することを目的としている。本年度は、観察調査を中心に行った。調査は、(1)ハワイのホノルル・ワイキキのリゾート整備、(2)沖縄本島・東シナ海側のリゾート整備、(3)タイ・プーケットのリゾートホテルの3つを対象に行った。(1)ハワイのホノルルについては、リゾートとして整備された歴史・問題点などを検討した。トロリー電車はモアナ・ホテルの前のカラカウア通りを走り、ワイキキ中心にハレクラニ・ホテル、ロイヤル・ハワイアン・ホテルが開業した。トロリーの開通をきっかけに、今までダウンタウンに宿泊していた観光客がワイキキへと宿泊するようになった。商業施設はインターナショナル・マーケット・プレイスが1957年に開業して、観光客の増加と共にホテルや商業施設がワイキキ中心に円状にホテル・商業施設の開業ラッシュが始まった。ショッピングスポットがワイキキ中心に開業したことでワイキキの魅力として、ショッピングがあげられる。ワイキキには、高層ビルのホテルが建ち並びワイキキだけでも多くの観光客が定住できるようになり、ワイキキのビーチやワイキキの中心に集まっている商業施設を利用しやすくした。(2)沖縄本島・東シナ海側のリゾート整備については、欧米型に近い遊地を目的とした開発がなされてきた。近年では、温泉ブームのようにくつろぎや安らぎのアジア型が求められており、今後、アジア型を取り入れた癒しやくつろぎを追求したリゾート開発が求められている。(3)パトンビーチを中心にリゾート開発をしてきたプーケットは、プーケットならではの産業を利用してきた。ビーチ沿いには、エビ、カニをメインとしたシーフードレストランや露店などが建ち並んでいる。観光客の脚となる交通はスボローで、軽トラックの荷台を客席用に改造していおり、交渉次第で料金は変化する。くつろぎを目的としているアジア型のリゾート開発は、ホテルは、低層の造りでホテルの敷地は広くくつろぎを与える。
著者
高橋 実 小海 節海 藤脇 千洋 平沼 博将 上田 順子
出版者
福山市立女子短期大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

7月に短期大学保育科の学生約100人に対し、90分のダンスセラピーを実施し、その前後の血圧、脈拍、身体イメージアンケート、ストレスの自覚症状アンケート、身体、精神状態、仲間との交流に対する気づきの記入を依頼した。そして、9月には、子育て中の母親に対してガイダンスの後3回のダンスセラピーを実施し、今年度からは、保育ボランティアによる別の場所での保育を行い、母親の身体が十分ほぐれた後に最後の後半のみに親子のセッションをおこなった。その際、研究分担者、藤脇教授によるピアノの即興演奏によるBGMをいれて実施した。すべてのダンスセラピーのセッションの前後で、血圧、脈拍、七夕の歌をブレスなしで歌っての持続フレーズ、発声時間を測定した。その結果、血圧については、学生のセッションのみで、セッション後に有意な低下がみられ、脈拍については、学生でも母親グループでも有意な低下がみられた。また身体イメージの調査では、芙二式ダンスセラピーの実施することで「評価性」「活動性」「快活性」という三つの尺度で身体イメージに変化(改善)が見られた。特に「活動性」については、静的で落ち着く方向に身体イメージが変化した。また自覚症状においても有意な軽減がみられた。また母親グループの歌の持続時間については、セッション後に伸びる方向で傾向差が、発声時間については、5%水準で有意に伸長することが見いだされた。気づき記入においては、両グループとも「身体が軽い感じ」「頭がすっきりした」「やる気がおきた」「気分的に明るくなった」「相手を感じることで1つになれた」など多様な効果が記述された。芙二式ダンスセラピーは、生理学的にも精神的にも、交流関係においても静的で落ち着き、気分が前向きになり、他者との一体感が得られるという効果がみられることが実証された。
著者
斎藤 隆文 品野 勇治 金子 敬一 宮村 浩子
出版者
東京農工大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は,離散構造データの幾何的配置変動が引き起こす複雑かつ大域的な位相構造変化について,理論的ならびに実験的に追究し,諸問題に共通するメカニズムを明らかにすることを目的としている.本年度は,階層的クラスタリングを対象とした安定性評価に関する検討と,CG,可視化,形状処理の各分野における関連課題の検討を行った.階層的クラスタリングの位相構造変化を見る新しい考え方である「仮想要素追加法」を初年度に考案した.当初はクラスタリングを行った結果の階層構造の各ノードに対してだけ,適用していたため,実際には近接した配置であっても,階層構造として離れた位置にあるクラスタ同士の安定性はわからなかった.本年度は,このような場合の安定度の算出方法と,その可視化方法について検討した.その結果,構造全体におけるクラスタ構造の安定性を可視化することに成功した.CG,可視化,形状処理の各分野において,種々の問題に取り組み,関連する課題を検討した.その過程において,人物の顔を撮影した動画像を,実時間でイラスト風に処理する手法や,固定カメラで撮影された長時間にわたる時系列画像をもとに,有効情報を可視化する手法などを提案,発表した.
著者
井上 哲夫 森 篤史 柳谷 伸一郎 鈴木 良尚
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

平成18年度はPbS(赤外線検出素子)、ZnS(発光材料)、CuCl(シンチレーター)、タンパク質をゲル成長させ、磁場の影響について研究した。ゲル成長を行う場合、そのプロセスは大きく二つに分けられる。一つは成長の場となるゲルの作成段階(プロセス1)、もう一つはゲルの中で実際に結晶を育成する段階(プロセス2)である。そこで磁場の印加時期も、プロセス1においてのみ(Case 1)とプロセス2のみ(Case 2)、およびプロセス1と2の全プロセスに亘って印加する場合(Case 3)の3種類を試みた。また磁場下でゲルを作成したとき磁場がゲル構造に及ぼす効果を計算機シミュレーションにより研究した。得られた結果は以下のようである。1.PbS:無磁場下では正8面体であったのが、磁場印加(Case 1)すると、八方に角の生えた形状(骸晶)になった。またCase2の場合には球晶となった。2.ZnS:磁場の有無にかかわらず、球晶が成長した。しかし球晶のサイズは磁場印加(Case 3)により大きくなった。透過電子顕微鏡(TEM)によると、球晶は5nm位のナノ球晶から構成されていることがわかった。これらの球晶の光吸収スペクトルの短波長端はバルク結晶よりも短波長側へシフトしており、サイズ効果が観察された、3.CuCl:無磁場下では正四面体であったのが、磁場印加(Case3)すると、長い針状結晶へと変化した。4.タンパク質(リゾチーム):リゾチームの配行に磁場が影響することがわかった。無磁場下ではランダムに配向するが、磁場下ではc軸が磁場に平行に配行する傾向があった。しかし、この傾向はリゾチームの濃度が高くなるにつれ弱くなった。また磁場効果として核精製頻度や成長速度を抑制することが分かった。5.計算機シミュレーション:磁場が強くなるにつれ、ゲルネットワークは平行方向に長く伸びる(セルの形状が細長くなる)傾向があった。
著者
小林 圭 山田 啓文 桑島 修一郎
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は、カンチレバーを用いた周波数検出型バイオセンサーにおいて、その最小検出質量を決定する周波数ノイズを定量的に予測するモデルを考案し、また実際にノイズ評価を行うことで、その妥当性を評価した。従来、カンチレバーの共振周波数を検出する周波数検出型のバイオセンサーでは、その変位を検出する変位検出系のノイズによって周波数ノイズが決定されると考えられてきた。つまり、周波数変調(FM)通信と同様に取り扱われてきたのである。しかしながら、実際にバイオセンサーで用いられるカンチレバーの機械的Q値は非常に低く、しばしば10以下となるため、そうした取り扱いが妥当であるかについては疑問視されてきた。我々は、変位検出系のノイズが自励発振ループ内で発生することを考慮に入れた、カンチレバーの周波数ノイズを定量的に予測するモデルを考案した。これにより、低Q値のカンチレバーの周波数ノイズも正確に予測することができるようになった。また、この妥当性を実際に液中で自励発振させたカンチレバーの周波数ノイズを計測することにより確認した。一方、カンチレバーの変位検出系の低ノイズ化対策をさらに進め、10fm/√Hz以下を達成した。また、このように十分に変位検出系を用いた場合、カンチレバーの変位をセンサー出力とする変位検出型のバイオセンサーにおいて、本研究課題で提案した多重反射方式のカンチレバーセンサーは平行レーザ光を用いれば、感度の向上に大きく寄与できることを示すことができた。
著者
矢口 祐人 廣部 泉
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

平成19年度は18年度に引き続き、現地調査を通してアメリカのキリスト教原理主義団体に関する情報を収集した。夏季に矢口がサウスダコタ州を訪れ、キリスト教原理主義団体が展開する中絶反対運動の調査を行った。教会内のみならず、教育やコミュニティ活動を通して、中絶問題を巧妙に政治化する様子がみられた。また前年度に引き続き、コロラド大学のトーマス・ザイラー教授と意見交換を行った。さらに研究に必要な保守キリスト教団体関連の書籍・DVDなどを購入して、資料の充実を図るとともに、矢口と廣部で継続的に情報交換を続けた。廣部はそれをもとにキリスト教宣教の有効性を考察する論文を執筆し、発表した。平成20年に入ると、キリスト教原理主義団体の政治活動で注目すべき動きがみられた。同年11月のアメリカ合衆国大統領選挙の共和党候補として立候補したバプテスト派牧師で、前アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーが、大方の予想を覆し、1月のアイオワ州予備選挙で勝利をおさめたのである。キリスト教原理主義団体の文化活動がアメリカの政治にどのような影響を及ぼしているかを、教会での活動のみならず、メディアや教育の場などにも注目して研究するためには、ハッカビーの選挙戦略とその効果を調査する必要が生まれた。インターネットなどで情報を収集するとともに、関連資料を購入し、米国キリスト教原理主義団体の文化戦略事業の実体と今後の展開について考察をすすめた。ハッカビーは最終的に敗北したものの、その支持基盤であるキリスト教原理主義の動きは活発であり、最終的に共和党候補となったマケインの戦略にも大きな影響を与えた。その意味では選挙戦を通して、キリスト教原理主義団体の文化戦略の理解を深めることができた。
著者
橋本 健史 岡田 泰昌
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

【目的】:下肢組織をin vitroで保存するための条件を発見し、電気刺激実験系を確立することを本研究の目的とした。【対象と方法】対象は、幼若ラット群(9日齢)5例、若齢ラット群(16日齢)5例、成熟ラット群(生後3ヶ月以上)3例とした。麻酔下に開胸および開腹を行い、大動脈経由で人工的に下肢を灌流・維持できるようにした。自発呼吸活動をモニターした。標本を22℃〜36℃の様々な温度条件下で、至適灌流条件を検索するとともに、灌流液を室内気平衡条件下と高酸素平衡条件下とした場合の標本生存性を比較検討した。成熟ラット群については、腸骨動脈内へカテーテルを挿入し、下肢のみの人工的灌流を行うとともに、至適灌流条件についての検討も行った。吸引電極を用いて足部の各種の遠心性末梢神経の電気刺激を行うことによりin vitroにおいて様々な足運動を再現させることを試みた。【結果】幼若ラット群、若齢ラット群では、適当な条件下では長時間にわたって神経活動を維持・確認しえた。灌流温度としては28-32℃が適していると思われた。また、灌流液組成としては、ブドウ糖30mM,塩化ナトリウム126mM,塩化カリウム5mM、重炭酸ナトリウム26mM、硫酸マグネシウム2mM、塩化カルシウム2mM,燐酸二水素ナトリワム1mMとしそれを、それを酸素95%,二酸化炭素5%で平衡させた条件(pH=7.4)で、満足しうる標本維持結果を得ることができた。【結論】今回の結果から、28-32℃の灌流温度と一定の灌流液組成および至適pH=7.4で摘出下肢組織標本を経動脈的に灌流・維持することにより、神経の電気刺激にも十分、反応するin vitro実験系を確立することができた。これらの成果は、第30回日本足の外科学会と第3回国際足の外科学会で発表予定である。
著者
彼末 一之
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

温度に関係した感覚は「熱い・冷たい」という温度感覚と、「暑い・寒い」という温熱的快・不快感(快適感)に区別され、またそれぞれ全身の感覚と局所感覚がある。本年度は皮膚温と温熱的感覚の関係性を調べることを目的として、まず皮膚温、局所的温度感覚・快適感をコンピュータの人体模型上に再現するシステム(データ可視化システム)を開発した。全身50箇所から皮膚温を熱電対にて、25箇所から熱流量を熱流センサーにて30秒毎に測定した.一方全身的温度感覚・快適感、局所的温度感覚・快適感(25箇所)はスライダックの並んだパネル板(Fig.2)を使って随時被験者に申告させた。データ可視化システムではこのようにして得られた皮膚温、局所的感覚のデータをコンピューター上の人体模型に色を用いて表示した(Fig.3)。本システムの有用性を確かめるため、環境温を23℃(80分)→28℃(80分)→33℃(80分)と変化させ被験者男性3名、女性3名による実験を行った。環境温23℃の時、皮膚温は末梢において著明に低下し、冷たさによる不快感は特に足部において強かった。環境温を33℃にすると末梢と体幹部における皮膚温の差は小さくなった。頭部と体幹部の皮膚温の変化はよく似ていたが、暑さによる不快感は体幹部よりも頭部において強かった。このような皮膚温・感覚の全身分布、その変化を把握する上でデータ可視化システムは非常に有用であった。全身の皮膚温分布を調べるためにサーモグラフィーが用いられることが多いが、露出していない部位やカメラが正面からとらえられない部位の皮膚温は正しく測定できない。データ可視化システムは衣服着用下でも全身の正確な皮膚温を人体モデル上に再現することができ、また同じ人体モデル上に感覚のデータも示すことが可能である。
著者
村上 征勝 古瀬 順一
出版者
同志社大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、精神的活動の変化を文体の変化として数量的に把握し、それによって精神的疾患や痴呆症の早期発見など、精神医学に役立てることが目的である。そのため、精神的疾患が原因で自殺したと考えられる作家、川端康成(S46.4.16,ガス自殺)、芥川龍之介(S2,7.24,睡眠薬服用)、三島由紀夫(S45.6.4,割腹)の3人の文章のデータベース化を試みた。特に、データベース化がある程度進んでいた川端康成に関し、彼の執筆活動の全時期にわたる文章の経年変化を調べることが必要と考え、「ちよ」(1919)、「篝火」(1924)、「浅草紅団」(1929),「名人」(1942),「古都」(1959)「隅田川」(1965)の6作品を新たに入力し、計量分析に必要となる単語認定、品詞認定等の作業を行った。この作業は16年度末までに終了できる見通しが立たなかったため、・読点の直前の文字の出現率・平均文長・会話文平均文長・全文に対する会話文の比率・ひらがな、カタカナの出現率の情報を用い、昨年までに入力済みの「伊豆の踊り子」(1926)などの7作品とあわせ、計13作品で分析を試みた。その結果、読点の直前の文字の出現率には、比較的早い時期の「篝火」,「浅草紅団」,「伊豆の踊り子」の3作品と、その後の作品にある程度違いが見られたものの、文章の変化を確認するには品詞情報などのほかの情報の分析が必要であることが判明した。そのため、本研究の研究期間内には行えなかったが、川端康成の13作品の品詞認定等の作業が終了次第、再分析を試みる。また、芥川龍之介、三島由紀夫の作品についてもデータベース化の作業を続け、川端康成と同様に計量分析する予定。
著者
那須 保友 公文 裕巳 雑賀 隆史 賀来 春紀 小武家 誠 江原 伸
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は前立腺癌、中皮腫を対象にin vivoにおける実験とくに、われわれが独自に突き止めた、癌抑制遺伝子REICを用いた治療実験を実施した。ヒト前立腺癌細胞PC-3を用いて皮下腫瘍を作成しREIC発現プラスミッド封入ポリマーを腫瘍内に直接投与(計4回)し対照群との腫瘍体積の変化を比較した。腫瘍の消失を伴った治療効果を認め、REIC遺伝子発現アデノウイルスベクターを使用した治療効果とほぼ同等の効果が得られた。中皮腫については、同所移植モデルを用いて 胸腔内投与をおこなったが、腫瘍の消失は認めないものの一定の治療効果を認めた。またREIC遺伝子に関してはそのアポトーシス誘導機能ドメインはわれわれの研究において突き止められており、その結果を応用し機能ドメインを発現したポリマーによるアポトーシス誘導作用も前立腺癌、中皮腫細胞を対象として確認を行った。すなわち機能ドメインのみのフラグメント(フラグメント2)を作成し同じくポリマーに封入した試料を作成し同様の実験系を用いて治療実験をin vitro, in vivoにおいて実施した。その結果、全長のものを用いた場合とほぼ同等の効果を認めた。体重減少を指標とした安全性については特に異常をみとめなっかた。以上の研究より、ポリマーを用いた治療はアデノウイルスベクターを用いた治療とほぼ同等の安全性と治療効果を認めた。アデノウイルスベクターという生物製剤に替わる、新たなドラッグデリバリーを見出すことができた。このことは将来の実用化における汎用性すなわち取り扱いの容易さ、定量性の容易さという点においてきわめて有利な点といえる。今後さらに研究を発展させるに値する研究成果であると考えられる。
著者
山本 博章
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は五感と色素細胞機能の連携を探索することを目的としている。今年度は、聴覚や視覚への影響に加え、臭覚と味覚に関しても解析しようと計画していたが、飼育室の空調のせいか、ケージを置くラックの位置によって、給水瓶の残存水量が大きく異なることに気づいた。室内の微気候を整えようと、加湿器の調整また扇風機による送風を試みたが改善されなかった。そこで空調のダクト工事により、風量を下げ、より均一な温湿度を保とうとしたが、それでも十分改善されなかったため(ケージの場所によって、給水瓶残存水量が数倍異る場合があった)、今回も聴覚に関する解析を優先することにした。このような飼育室の微気候改善に試行錯誤しているうちに、聴覚において興味ある現象に気づいた。脊椎動物特異的な神経冠より発生する色素細胞を欠損すると、白毛色となり、内耳に移動する色素細胞も無くなるため聴覚を失うことが知られている。我々が維持するblack-eyed whiteと呼ばれる変異体で、Mitf (Microphthalmia-associated transcription factor)遺伝子座にアリルMitf^<mi-bw>をホモに持つと、やはり全身白毛色で遺伝的な難聴を示すが、これらの集団中に、高い音に反応する個体がある割合で検出できることに気づいた。当該の系統は一時期絶滅の危機に直面し、それまでの遺伝的背景であるC57BL/6J(コンジェニック系統)から、元々の系統であるC3Hに変更してレスキューした経緯がある。前者の遺伝的背景では詳細な解析結果が残されているが、全て難聴を示すことが報告されている。現在飼育中の変異体は4〜5世代C3Hに掛け合わせ、それからクローズドコロニーとして維持を続けてきた。従って、現時点では、C3Hに由来するある遺伝子(群)が、内耳色素細胞が保障する聴覚に何らかの影響を与えていることを発見したのではないかと期待している。
著者
田巻 義孝 小松 伸一 永松 裕希 原田 謙 今田 里佳 高橋 知音
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

Manly, Robertson, Anderson, & Nimmo-Smith(1999)が開発したTest of Everyday Attention for Children(以下,TEA-Chと略す)を参考とし,(1)注意が単一ではなく複数の機能から構成されているとみなす理論的枠組みに立脚し,(2)児童・生徒に親しみやすい刺激材料や課題を使用し,検査の生態学的妥当性に配慮している集団式注意機能検査バッテリーを作成した。検査バッテリーは,4種の下位検査(地図探し,音数え,指示動作,二重課題)から成っており,それぞれ異なる注意機能(つまり,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割)の査定を意図している。この検査バッテリーを小集団トレーニングプログラムに参加を希望したADHD児童に実施したところ、どの児童にも共通して平均より劣っているのは持続的注意の指標であった。このことから,小集団トレーニングプログラムでは,持続的な注意の改善を基本の目標に据え、行動管理の原則を用いるとととした。バークレー(2002)では、AD/HDを有する子どもの行動管理の原則として、即時的で頻繁なフィードバックと目立つ結果、否定の前の肯定、一貫性の保持を挙げている。このプログラムでも、これらの行動管理の原則を守り,子どもが学習や遊びの場面でつまずいた時に担当者がすぐに対応し、できないことを叱るのではなくできたことを誉めるようにし、がんばってシールをためると誉めてもらってご褒美がもらえるよう設定した。小集団トレーニング開始時と終了時の行動観察(生起頻度の評定)から,児童の立ち歩く回数が減り衝動的に発話することが減っていったことが確認された。また開始時と終了時および終了後2ヶ月の保護者の行動評定から,話し合いの態度や協調性,望まない状況での対処や決めたことへの取り組みが以前よりできるようになり効果が維持されたことが明らかになった。
著者
佐竹 正夫 大東 一郎 東田 啓作 柳瀬 明彦 斉藤 崇 松八重 一代
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は最終年度であるので、各自の研究成果の公開とこの課題に関心を持っている若手研究者との交流を目的として、以下のような活動を行った。1. 公開シンポジウム平成20年9月16日(東北大学)発表者東田啓作"The Determinants of International Trade in Recyclable Materials and the Effects on Welfare-Theory and Evidence-"斉藤崇「国際資源循環と国内廃棄物処理・リサイクル制度」中谷隼*「使用済ペットボトルの国内リサイクルと日中間リサイクルの比較分析」*東京大学工学研究科助教2. 研究会平成21年2月2日(明治大学)この課題に関心を有している若手研究者*を招いて、特に理論の面での研究会を開催した。*栗田郁真(京都大学大学院生)、赤石秀之(法政大学大学院生)、南部和音(明治大学非常勤講師)、菊地徹(神戸大学准教授)、山重芳子(成城大学准教授)3. 成果発表会平成21年3月13日(東北大学)新熊隆嘉関西大学教授を招いて、公開の研究会を中に入れて、最終の成果報告会を開いた。研究成果は5月に報告書を発刊する予定である。4. 研究会、シンポジウムなどへの参加この課題はまだ結論が出るような問題ではないので、引き続き他の研究機関が開催する研究会などに積極的に参加すると同時に自治体や企業への聴き取りを行った。参加したシンポジウムは次のようなものである。・廃棄物処理等科研費研究班主催「PETボトルのリサイクル効果に関する公開セミナー」・国立環境研究所研究会主催「適正な国際資源循環を構築するための枠組みについて」・廃棄物学会主催「資源確保競争下での国際資源循環のあり方を考える」
著者
佐藤 悦子 遠藤 みどり
出版者
山梨県立看護大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2000

平成14年度研究目標:平成12・13年の研究から「在宅療養者および訪問看護師の在宅でケアされること、ケアすることの体験には『ずれ』が生じている」ことが明らかになった。さらに対象を広げ、その信頼性を高める。研究方法:1)研究対象:本研究の趣旨を了解し協力が得られた在宅療養者9名訪問看護師8名2)データ収集方法:半構成的面接法を用いインタビューを1名に対し2回行なった。在宅療養者には「訪問看護を受けていること」を、訪問看護師には「看護を提供していること」をそれぞれ自由に語ってもらった。承諾を得てメモやテープレコーダーに記録し、それをデータとした。3)データ分析方法:データから体験している世界をできる限り忠実に読み取り、研究者が読み取ったものを再度対象者に返し、それを新たなデータに加え分析することで客観性を高めた。研究結果および考察:在宅療養者全員が、「来てくれることで安心」という体験をし、訪問看護師も「訪問が安心感をもたらしている」という体験をしていた。また、ストーマ造設療養者は「細かなところまで教えてもらっている」という体験や疼痛のある療養者は「痛くないように援助してもらっている」という体験をしていた。訪問看護師は療養者が語った看護ケアを提供している体験に加え、変調を予測した予防的な看護ケアやよりよい生活を思考し提供している看護の具体的なケアについての体験もあったが、在宅療養者から語られることはなく、そこに「体験のずれ」があった。目に見える医療処置や疼痛への専門的看護技術の提供は、両者の体験として語られ、両者の明確な自已決定の一致が存在する。しかし、「体験のずれ」は両者の自己決定のずれを表し、それは、看護職者が提供している自己の看護ケアの意味を在宅療養者に語ることの不足に起因していると考える。