著者
加藤 隆 佐伯 昌子 宅間 三起 亀井 美砂 向田 茂 赤松 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.452, pp.25-30, 1999-11-19
被引用文献数
1

顔情報の微妙な違いに対する人の感受性について,認知的・感性的観点から検討を加えた.実験1では,個々の顔と平均顔をモーフィング合成する際にテクスチュア情報と形状情報の混合比率を独立に操作し,記憶ベースの類似性判断におけるテクスチュア情報と形状情報に対する感受性を検証した.その結果,テクスチュアの違いが顕著に表れない場合のみ,微妙な形状の違いを認知できることが示された.実験2では,顔の見え方(view)によって印象が異なるかを検証したところ,「やさしそう-こわそう」という顔の形態に依存する印象は見え方による影響をあまり受けないが,「たのしい-かなしい」という心の情動状態を表す印象は顔の見え方によって比較的強い影響を受けることが示された.
著者
真覚 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.525, pp.31-36, 2004-12-09

口唇裂・口蓋裂者の表情分析から、笑顔表出時には鼻の変形や口元の歪みが目立だなくなることが示された。このことを踏まえて、顔部品の検出において笑顔がどのような影響を及ぼすのか、大学生を被験者に3つの実験を行った。実験1では、単独提示される中立顔または笑顔中にドットがあるかないかの判断を被験者に求めた。実験2では、同時提示同異判断課題によって顔中のドットの検出における笑顔の影響について検討した。両実験とも顔中のドットの検出は笑順において遅くなることが示された。実験3では、目・鼻・口の拡大変化の検出における笑顔の影響を検討した。その結果、笑顔中では目の拡大変化が検出されにくくなることが示された。これらの結果から、顔部品の検出において笑顔は抑制的な影響を及ぼすと結論づけることができる。
著者
田中 彩乃 伊藤 裕之 須長 正治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.279, pp.87-91, 2010-11-06

立体視ディスプレイの技術革新により・テレビ放送・デジタルサイネージ等の広告媒体における立体表示の利用普及が予想される.そこで,手前と背景に提示される情報がそれぞれどのように認知されるのかを調べる必要があると考えた.本研究では,刺激を奥行きが異なる2つの面上に提示し,目標刺激と注視点の奥行きを変化させることで視認性の変化を調べた.その結果,提示時間と奥行きの関連性が認められた.提示時間が短い場合,手前の面から奥の面への順序での情報提示が,スムースな情報の把握に有利で,逆の順序では手前の情報の視認性が悪くなることがわかった.
著者
HILL Harold 蒲池 みゆき POLLICK Frank JOHNSTON Alan TROJE Nikolaus
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.534, pp.19-24, 2002-12-13
参考文献数
8

似顔絵作者が人の見かけを強調して描くことができるように,ものまね芸人は人々の会話や動きを強調することができる.本研究では,平均的な値からの差分を強調するという静止画の顔の強調で用いられる概念を利用して,顔の動きを空間,時間ともに強調した.知覚実験では,意図的な情動を選択的に強調する場合において空間的な強調がより効果的であることがわかった.空間的な強調は時間に依存しているが,時間を一定にした平均値に対して行われた強調よりもより効果的である.このことは,動きそれ自体よりも強調を行う際に重要となってくる.結果としては一般に表情が知覚されるタイミングの効果が現れ,怒りは短い提示時間,悲しみはより長い提示時間で効果が現れた.この効果は意図された情動以外にも見られた.結果は時間もしくは時空間というより,空間的な手がかりが課題には重要であることを示し,強調による効果は適切な平均値からの差分を増幅した場合にのみ得られることが明らかになった.
著者
佐藤 隆夫 赤木 章信 繁桝 博昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.98, no.276, pp.23-30, 1998-09-18
被引用文献数
3

視覚は人間のコミュニケーションにとって時に言語以上に重要な意味を持つ, 視線の知覚は, 相手が正対している時には驚くほど高い精度を持っているが, 顔が回転し, 「流し目」になると視線の移動量の過大視が起こり, 受け手から見ると視線が行き過ぎてしまう.この「頭部回転効果」は従来, 眼の偏移そのものの知覚の誤差であると考えられてきたが, 原理的には, 眼の偏移の他に, 頭部回転量の過小視も原因となりうる.こうした仮説のもとに, いくつかの実験を行い, 頭部回転の過小評価が頭部回転効果に大きく影響していることが明らかになった.
著者
大西 仁 望月 要
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.155, pp.51-55, 2011-07-16

機械インピーダンス(弾性、粘性、慣性)の質的な感じ分けのモデルを提案する。提案するモデルは、反力の時系列を予測するリカレントネットワークをモジュールとし、複数のモジュールが競合する自己組織化ネットワークからなる。提案するモデルを実装し、弾性、粘性、慣性の認識と機械インピーダンスの定量的予測を試みた。
著者
山本 吉伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.68, pp.295-300, 2014-05-22

学会のポスターセッションでは,ポスター発表者は何人ぐらいの聴講者にメッセージを伝えることができているのか.逆に,聴講者は何件ぐらいのポスターを見ているのか.将来の学会サービス向上にむけてこれらのデータを調査する方法を実施したので,その事例を紹介する.
著者
川上 貴文 廣瀬 敏也 春日 伸予 澤田 東一 小口 泰平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.582, pp.49-52, 2005-01-15
参考文献数
4

本研究は, 運転者の認知過程を考慮した追突防止システムの評価を検討したものである.システムは3種類を用意し, それぞれのシステムはブレーキランプに情報を提示するものである.その提示情報は(1)減速度, (2)制動力, (3)点滅による警報である.実験はドライビングシミュレータを用いて, システムを搭載した前走車の減速に伴い, 後続車の運転者が減速するものである.その結果, 制動力を提示したシステムは, 追突防止に効果が見られた.理由としては, システムが運転者の認知, 判断の時間を短縮していることが考えられる.
著者
半田 拓也 坂井 忠裕 清水 俊宏 篠田 裕之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.483, pp.13-16, 2013-03-06

筆者らは,3次元形状を視覚障害者にも触覚で伝えられる手法の開発を目指している.従来の点接触型力覚提示装置では,3次元形状の認知に重要な稜線や頂点の触察が困難であるという課題があった.そこで,稜線や頂点の認知のしやすさの向上を目指し,1本の指の腹に5点の刺激点を配置し,それぞれに3自由度の独立した力覚提示が可能な装置を試作した.本装置を用いて,力覚提示する刺激点(力覚刺激点)の数による物体の稜線と頂点のわかりやすさに関し,視覚障害者4名による主観評価を実施した.結果から,従来の1点による場合と比較して,力覚刺激点の数が2点以上で稜線と頂点のわかりやすさに有意な向上がみられ,今回の条件では,力覚刺激点の数が4点のときに稜線と頂点が最もわかりやすくなることが示唆された.
著者
石川 友哉 Wang Yu 加藤 ジェーン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.471, pp.389-394, 2010-03-08

現在,幼稚園に通う子供たちは非常に多く,1日の大半をそこで過ごしている.幼稚園は家庭とは全く異なる環境であるため,多くの保護者が幼稚園での子供の様子を気にかけている.そこで,幼稚園の日常生活を記録し特定園児の1日ダイジェストを自動生成する手法を提案し,検討する.複数台の監視カメラにより日常生活を記録し,無線タグを併用することで園児の位置情報を得た.そして,幼稚園の日常生活をいくつかのイベントに分け各断片映像がどのイベントを映したものかを識別し,各イベントから均等にダイジェストに加えた.イベントの識別は画像特徴と時間的依存性を利用した.本手法によるダイジェストと一定時間間隔の映像を取り出した単調なダイジェストを比較しイベント識別の有効性を確認した.また,これら2つのダイジェストを保護者に閲覧してもらい,アンケート調査により評価を得た.
著者
齋藤 康之 小谷 一孔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.96, no.499, pp.49-54, 1997-01-24

眼鏡を含む顔画像では, 眼鏡が目の部分を覆うために表情解析が難しい. しかしながら, 眼鏡をかけている人の人口に占める割合は少なくなく, 眼鏡顔の表情解析手法の検討が必要不可欠となっている. 本研究では, 顔の中に存在する眼鏡の位置および構造の特徴に基づいた眼鏡の抽出を行い, 眼鏡の輝度値を周囲の肌の輝度値で置換することで眼鏡の除去を行った. 眼鏡除去を行った顔画像について顔部品の領域抽出を行ったところ, 眼鏡の物理的影響を良好に回避することができた.
著者
小田 幸弘 廣瀬 信之 内田 誠一 森 周司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.60, pp.121-125, 2011-05-16

サッカーのペナルティキック時のゴールキーパーは,キッカーのボールを蹴る動作の違いに基づいて,シュートのコースを予測していると考えられている.本研究では,GKがPK動作中のどの時点,どの身体部位の情報をコースの予測に使用しているか調べるために,PKを想定したキッカーの動作をDPマッチングにより解析した.解析の結果,ボールを蹴る直前の軸足,腰などの動きがコースによって異なることが分かった.
著者
大沼 美由紀 木村 敦 佐々木 寛紀 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.46, pp.155-160, 2012-05-15

本研究はSNS利用が既存友人との対人トラブルに及ぼす影響について日本人青年男女を対象とした2つの調査により検討した.調査1ではSNS(mixi,Facebook,Twitter,その他)ユーザを対象とし,SNSでの既存友人との交流において対人トラブルを経験したことがあるかどうかについて,トラブルの種類,およびSNSのどのようなツール・機能がトラブルに関わったかを開放型質問を用いた調査により検討した(N=41).その結果,約70%のユーザがSNSで既存友人とのトラブルを経験したことがあると回答した.また,とくにmixiでの日記・つぶやきに記載された本人や友人に対する悪口が対人トラブルの原因となることが多いことが示唆された.調査2では,調査1で抽出された主要なSNS(mixi)での対人トラブルが,SNSでの交流に特有のものかどうかを定量的調査により検証した(N=92).その結果,気分を害するような否定的発言をする友人は対面時よりもSNSでより多くそのような否定的発言をすると感じる傾向が示された.
著者
矢崎 智浩 三須 俊枝 中田 洋平 本井 滋 小林 剛 松本 隆 八木 伸行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.471, pp.401-406, 2010-03-08
参考文献数
10

時系列データから興味のあるイベントを自動的に検出する問題は,信号処理やパターン認識,画像処理など,様々な分野に現れる.本研究グループでは,これまで,サッカー動画像データから抽出された選手位置情報に基づく時系列データをもとに,ベイズ隠れマルコフモデルによるイベント検出アルゴリズムを構築してきた.しかし,隠れマルコフモデルでは状態が滞留する確率として「幾何分布」が仮定されるため,必ずしもふさわしくない場合があった.隠れ状態の状態滞留確率を改善することでイベント検出性能に対する向上の余地があったため,本稿では,状態滞留確率をより柔軟に表現可能な「一般化隠れマルコフモデル」によるアルゴリズムを構築し,イベント予測性能の向上を目指す.また,提案アルゴリズムの効果をJリーグのサッカー動画像データを用いて検証する.
著者
下野 孝一 Tam Wa James Vazquez Carlos Speranza Filippo Renaud Ron
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.228, pp.57-62, 2010-10-07
参考文献数
14

本研究においてわれわれは,奥行き地図(depth map)を平滑化(smoothing)することによって,立体画像で観察される書割効果を減じることができることを報告した.われわれはまず,立体画像の左眼原画像から奥行き地図を計算し,さらに平滑化を行った後,DIBR(depth-image based rendering)法を使って右眼用の画像を作り,立体加工画像を作成した.観察者は立体原画像と立体加工画像を観察し,それぞれの画像の質,書割効果の程度,視覚的快適性の程度を評価した.16名の観察者の結果は、平滑化奥行き地図で作成した立体加工画像は、原画像と比較して画像の質はいくらか低下するけれども、書割り効果を減じうることが示された.
著者
近藤 あき 中越 明日香 山本 洋紀 田中 忠蔵 梅田 雅宏 江島 義道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.100, pp.13-18, 2004-05-21
参考文献数
6

色対比効果とは、同じ色でも周囲に存在する色に依存して異なる色に知覚される現象を指す。この効果は色を空間的に比較する脳過程の存在を示している。本研究では色の空間比較過程に関与する脳部位を、fMRIを用いて検討した。視覚刺激は等輝度のテスト刺激と周辺刺激であった。テスト刺激と周辺刺激の境界が隣接する条件と間隙がある条件(0.5°または1°)を設けた。テスト刺激と周辺刺激は実験を通して常に赤緑変調されたが、同じ位相で変化する条件と逆相で変化する条件が交互に提示された。この時、色対比が生じて、テスト刺激の物理的な色変調は一定であるにもかかわらず、見かけの色変調は逆相条件で強まった。この間の脳活動をfMRIで測定すると、間隙がない場合には、見かけの色変調に相関した脳活動が低次から高次に至る多くの視覚野で観察された。間隙が大きくなると、低次の領野では脳活動が激減したが、後頭の背側と腹側の特定の高次領野では有意な活動が残った。これらの結果から、色比較の空間範囲は視覚経路の階層が上がるにつれて広くなると考えられる。
著者
仁科 繁明 乾 敏郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.96, no.306, pp.7-12, 1996-10-17
参考文献数
14
被引用文献数
2

視点依存表現に基づく物体認識の理論では, 一つの物体に対していくつかの視点からのviewを記憶することによって任意の視点からの認識が達成されると考えられている. そこでは3次元的な構造情報の利用は全く考慮されていない. 本研究では2次元情報のみでは識別が困難であるように作成した刺激の組を用いて, 人間の物体認識システムが3次元構造情報をどのように利用しているかを検討した. 得られた結果はGRBF的な2次元的比較モジュールと3次元的比較モジュールの2つのモジュールが同時並行的に働いていることを示唆した. さらに, 試行を繰り返すことによって見いだせる学習の効果は特に3次元的比較プロセスで大きいことを示した.
著者
竹谷 隆司 河西 哲子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.283, pp.83-88, 2011-11-03
被引用文献数
1

物体ベースの注意選択は,物体あるいはゲシュタルト要因により群化した要素群全体に注意が誘導されるプロセスで達成される.本研究は左右視野に提示された刺激間の大きさ類似性と色類似性を直交させて操作し,2つの群化要因が同時に存在するときの注意誘導過程を,事象関連電位(event-related potential, ERP)を用いて検討した.注意視野の対側半球で増大するERPをその瞬間に注意する方向の指標とした.その結果,注意誘導は大きさ類似性によって刺激提示後約165-400 msで,色類似性によって約120-200 msで,独立に生じることがわかった.
著者
柴田 理瑛 河地 庸介 行場 次朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.410, pp.129-134, 2006-11-30

シーンを見ているとき、視覚系は特定の物理的手がかりに基づいて複数の視覚刺激を別々の物体としてではなく、一つのまとまりとして判断する。本研究では複数の視覚刺激が知覚的群化により一つの物体にされることを物体単一性(object singleness)の知覚と定義し、知覚的群化の要因(近接・閉合)が物体単一性の知覚をどのように制約するかについて、motion-induced blindness(MIB)を指標として検討した。本研究では、輪郭のみの正方形(外側ターゲット)の内部にさらに正方形(内側ターゲット)が配置され、回転する格子パタンに重ねられた。その結果、外側ターゲットの内向きと内側ターゲットの外向きのエッジ間の距離(gap distance)が0.51deg以内のときに、両ターゲットは一つのまとまりとして消失することがわかった(実験1A、B)。さらに、gap distanceが0.51deg以内であっても外側ターゲットの輪郭が閉合していない条件では、それらは別々に消失することがわかった(実験2)。これらの結果から、近接と閉合の要因は物体単一性の知覚にともに寄与し、視覚的アウェアネスを変容させることがわかった。
著者
岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.533, pp.39-46, 2002-12-12
参考文献数
18
被引用文献数
4

一般に、映画やテレビのような映像メディアは、映像だけでは成り立たない。必ず音を伴っている。映像に伴う音は、映像作品の一部と言っていいであろう。我々は、一連の印象評定実験により、音が映像の印象に、映像が音の印象に影響を及ぼすことを明らかにしてきた。実験結果は、視聴覚の処理レベルに応じた、様々な視覚と聴覚の相互作用の存在を示唆するものであった。また、音と映像の調和感には、構造的調和と意味的調和の2つの側面があることが確認できた。我々が得た知見は、新しいタイプの映像メディアにおける効果的な視聴覚コミュニケーションの構築に寄与するものと期待できる。