著者
三浦 佳世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.261, pp.41-46, 2009-10-22
被引用文献数
2

実写なのに模型を写したように見える写真作品がある。こうした作品は、三つの観点で興味深い。ひとつには、大きさ-距離判断という知覚の観点からである。どのような知覚要因が判断の誤りに関与しているのだろうか?二つめには、リアリティ判断の観点からである。私たちは何に基づき、リアルな実体という判断を下すのだろうか?三つめには、こうした作品が注目される社会的背景からである。写真の記録性が技術的には高まる一方、それを否定する写真が楽しまれる背景に何があるのだろうか?ここでは1番目の知覚的観点に焦点をあて、撮影俯角、ぼけ、色彩、線遠近法などの視覚要因を中心に、ミニチュア効果について考える。また、リアリティ判断ならびに社会的背景についても触れることとする。アイステーシスとは広義の「知覚」を意味する古代ギリシャ語で、感覚から感性まで、また、生理学から文化までを含む概念である。模型のように見える実写の作品を通して、「知覚」を多層的に捉えてみたい。
著者
鷲澤 輝芳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.96, no.499, pp.13-18, 1997-01-24

眼球運動を伴う視覚的注意に対する数学モデルを提案した. モデルは初期視覚, 視覚メモリ, 注意マップから構成される. 初期視覚では, 入力画像を多重解像度部分空間(SubMRR)で表現する. 視覚メモリでは, 認識対象に関する知識を確率セルオートマトン(PCA)で表現する. PCAはSubMRRの離散パラメタと同じセル空間を持ち, セルの確率分布は条件付き確率で結びつけられている. 注意マップはPCAのセル空間と同様に配置されたノードより構成され, それぞれのノードには, 対応するセルに関する平均相互情報量が割り当てられている. この平均相互情報量によって次のFOAが決定される. シミュレーション実験では, 周辺視と事前知識(文脈)の影響がモデルで表現されているかどうかを検証した.
著者
三好 孝典 今村 孝 小山 慎哉 大場 譲 市村 智康 沢口 義人 北川 秀夫 青木 悠祐 兼重 明宏 上木 諭 河合 康典 斉藤 徹 高久 有一 上 泰 川田 昌克 内堀 晃彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.501, pp.11-16, 2014-03-10

インターネットにより生み出されるソーシャルコミュニケーションは,何万人・何億人もの人々がお互いに映像や音声を共有し合う人類が経験したことのないコミュニケーションを実現している.しかしながら,これまでに世界中の人々がお互いの力覚を同時に共有し,コミュニケーションを行った例はほとんど報告されていない.本報告では,マルチラテラル遠隔制御を応用し,全国8ヶ所での仮想綱引き実験による力覚共有を報告すると共に,従来行われてきた手法との比較,検討を行う.
著者
松井 靖浩 石井 雅博 山下 和也 唐 政
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.332, pp.23-26, 2007-11-12

視覚からもたらされる情報は他の感覚からもたらされる情報に優先して働く.しかし,最近の研究において視覚優位が崩れることがあることが知られるようになってきた.空間的な課題の場合は確かに視覚優位であるが,時間的な課題の場合は聴覚が優位に働くというのである.このことから,空間的であり,また時間的でもある運動の課題を提示した場合はどちらが優先するかという疑問が生まれる.そこで,本研究ではフラッシュラグ効果を発生させる際に聴覚刺激を提示することによって錯視量に与える影響を調べた.
著者
小嶋 秀樹 仲川 こころ 矢野 博之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.472, pp.25-29, 2002-11-14
被引用文献数
2

ヒューマン=コミュニケーションは,互いに「心」の存在を想定し,「心」の状態を推定しあうことによって,互いに行動を予測・制御し,調整しあう営みである.本発表では,乳児と養育者のインタラクション発達を手がかりに,「心」の存在を感じる・感じさせるメカニズムとして,身体動作のリズムや方向性にもとづいて注意や活動の時空間的な配分を相互調整することを考察する.
著者
三浦 佳世 上村 俊介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.356, pp.59-64, 2008-12-11
被引用文献数
2

対象の運動や速度感を伝える絵画的手法にモーション・ラインがある。とりわけ,マンガで多用されるこの技法は,オノマトペ(擬音語・擬態語)と併用されて,より効果的に用いられることが多い。本研究では,様々なモーション・ライン(絵画情報)と,モーション・ラインから喚起されるオノマトペに対し,マグニチュード・エスティメーション法を用いて,それぞれの速度感を測定し,「表現」と「印象」との関係を分析するとともに,絵画情報と言語情報という異なる処理経路に基づく感性表現の関係性について考察した。その結果,直線のモーション・ラインは擬音語と対応し,速度感を正確に伝えるのに有効であるのに対し,正弦波状のモーション・ラインは擬態語と対応し,運動対象の軌跡や様態を伝えるのに有効であることが示された。また,直線のモーション・ラインでは,本数が増えるにしたがい速度感の増大することも示された。モーション・ラインが表現技法にとどまらず視覚系での運動情報処理を反映していると考えると,本数の効果は示唆的である。
著者
吉岡 勇太 和田 俊和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.471, pp.241-246, 2010-03-08

画像を用いたトラッキングや物体認識,複数画像の張り合わせなどに,SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)などの局所特徴量がよく用いられる.これは,SIFTが照明の変化や回転,拡大・伸縮などに対して比較的安定な特徴を生成するためである.しかし,SIFTの計算量は多いため,現在の汎用CPUではビデオレートで計算をすることはできない.このことは,より高速な計算が可能な局所特徴量SURF(Speed Up Robust Features)でも同様である.本報告では,SURFアルゴリズムを,ソフトウエア的な論理回路合成が可能なFPGA(Filed Programmable Gate Array)上で実装し,データ並列とタスク並列によって,ビデオレートで計算する方法を示す.
著者
近藤 崇 角所 考 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.40, pp.23-30, 1999-05-13
参考文献数
6
被引用文献数
2

遠隔地間のコミュニケーションなどにおいて表情情報を送る際、匿名性を保ちたい場合や複数の大きな実画像の表示が困難な場合、ユーザの表情を合成顔画像で送る必要が生じる。しかし、顔の造作や各部位の変化には個人差があるため、実画像のユーザの表情変化に忠実に顔画像を合成してもユーザの意図した合成顔画像と必ずしも一致しない。このだめ、ユーザの表情の実画像と合成顔画像との対応を定める表情表現モデルが必要となる。本研究では、合成顔画像に対してユーザが実際に表出する客観的な表情画像の事例をユーザとのインタラクションを通じて対話的に獲得し、得られた事例集合を利用して、この表情表現モデルを作成する。
著者
佐藤 高弘 中川 匡弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.534, pp.13-18, 2002-12-13
参考文献数
6
被引用文献数
34

「怒り」,「悲しみ」,「喜び」,「リラックス」などの4種類程度の感情に対応した10ch.程度の脳波信号を基準とし,フラクタル次元解析を用いた信号処理と認識処理によって各感性を定量的に評価する手法として,感性フラクタル次元解析法を提案する.頭部に配置したn個の電極間の電位差に対するフラクタル次元解析により得られる_nC_2個の変数の組を感情の特徴量として用い,これに線形写像などによる簡単な認識処理を適用することにより,各感情の強度を定量的に評価する.提案手法では,武者ら[l]による従来手法に比べ,認識に用いる感性の特徴量の数を同条件下で1/3に,同認識率下では1/9程度にまで抑えることが可能である.また,認識手法として線形写像を用いて行った評価実験では,学習時に用いていない脳波データに対する認識率の比較において,従来手法に比べて平均約30%の認識率向上がみられた.
著者
加藤 隆 神崎 利佳 東倉 洋一 赤松 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.95, no.167, pp.43-48, 1995-07-21
参考文献数
3

本研究では、顔と声を同時に記憶する際の文脈情報の効果について検討した。まず顔と声を対提示して記憶させ、その後、顔と声それぞれの再認テストを行った。テストには記銘時と同じ刺激が文脈情報として与えられる条件、異なる刺激が文脈情報として与えられる条件、全く文脈情報が与えられない条件の3条件があった。顔、声ともに同一文脈による再認の促進効果は認められなかったが、異なる文脈情報が与えられると再認が抑制された。一方、記銘時に提示されなかった顔はいずれの文脈でも見ていないと正しく反応できたが、声は文脈情報が与えられないと提示されていなくても聞いたと反応する傾向があった。実験の結果を顔と声の記憶における情報統合の観点から考察した。
著者
上田 祥行 齋木 潤
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.332, pp.33-37, 2007-11-12
参考文献数
7

視知覚は聴覚入力によって変容することが広く知られている。その一方で、聴覚以外の感覚からの入力が視知覚に与える影響についてはあまり報告されていない。そこで本研究では心理学的逆相関法を用いて、触覚に入力された刺激が視知覚に与える影響を検討した。実験では、視覚に光点刺激を2度呈示し、それと同時に触覚に反力刺激を与えた。実験協力者の課題は、2度呈示された光点刺激のどちらが明るいのかを判断することだった。光点刺激と反力刺激の強さは無相関であることがあらかじめ教示されていたにも関わらず、触覚に強い反力刺激が入力されると、協力者は光点刺激の明るさを実際より有意に強く知覚した。この結果は触覚の入力によって視知覚が変化することを示唆している。
著者
川出 雅人 細井 聖 田畑 尚弘 秋間 正道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.97, no.117, pp.33-40, 1997-06-20
被引用文献数
10 1

自然なヒューマン・マシン・インタフェースを目指して、われわれは視覚による頗の意味理解技術、および顔の表現技術の研究開発を進めている。この技術の応用例として、似顔絵クリエーション技術を開発した。コンピュータビジョン技術により様々な人種や顔・髪の種類に対してロバストに特徴抽出し、ファジィ推論による部品選択・部品配置・部品変形ルールにより複数の似顔絵画家・イラストレータや漫画家などのタッチ(画風)で似顔絵を自動的に描画することができる。喜怒哀楽などの表情の付加や、胴体・背景・メガネ・アクセサリなどとの違和感の無い合成なども実現した。ヒューマン・マシン・インタフェースやアミューズメント分野などへの応用が可能である。
著者
呉 美京 齋藤 洋典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.450, pp.41-46, 2004-11-12

近年,第二言語(L2)としての日本語の習得では,L2が利用される社会的文脈を理解し,L2を適切に使用するための社会言語的能力の養成に力が注がれている.本稿では,アニメーション伝達課題を用いて,発話言語(L1 韓国語,L2 日本語)と,それらの発話環境(韓国,日本)との組合せからなる発話負荷が,自発的ジェスチャーの生起頻度に及ぼす影響を検討した.実験の結果,L1韓国語による発話に伴う自発的ジェスチャーの生起頻度は,発話環境の影響を受け,韓国よりも日本で低下するが,L2日本語の発話に伴う自発的ジェスチャーの生起頻度は,発話環境の影響を受けないことが確認された.
著者
上田 紀之 中西 泰人 真鍋 陸太郎 本江 正茂 松川 昌平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.39, pp.71-76, 2003-05-02
被引用文献数
6

コミュニティ内での情報提供や支援が円滑に行うことができるという点から,WebGISに注目し,活用する情報コミュニティが出現している.しかし,現在のWebGISは必ずしも使い勝手の良いシステムとはいえない.本研究では,「時空間ポエマー」と「カキコまっぷ」の両システムを統合するという形でGPSカメラケータイを用いたWebGISを構築し,現在のWebGISが抱えている様々な問題の解決を試みた.
著者
今本 健児 加藤 博一 川本 佳代 橘 啓八郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.594, pp.31-36, 2002-01-17
被引用文献数
3

本報告ではHMD装着型の拡張現実感システムにおける共同作業について, ユーザ間のコミュニケーションの観点から検討を行った.一般的には, HMD装着ユーザの表情が視認できない, HMD非装着者が状況を認識できない, 仮想物体と実物体の隠蔽関係の逆転現象が生じるなどの問題が発生する.これらの点に関して, 我々が今回試作した複数人用の仮想物体操作システムを用いて共同作業がなされる.際に, どのような問題がコミュニケーションに影響を与えるのかについて議論した.また, 簡単な評価実験からは, 隠蔽関係の逆転現象, および非立体視での映像提示方式が, ユーザの指差し行為を大きく阻害するということがわかった.
著者
望月 理香 中村 竜也 趙 晋輝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.610, pp.1-6, 2007-03-16
被引用文献数
4

式弱者が知覚する色は推定できないため,今まで,色弱補正は客観的な基準が無く原理的に難しいものと考えられてきた.また,色弱の度合いは個人そして色刺激により変化するため,個人差や自然画像への対応が難しく,有効な補正法は見当たらない.本研究では,まず「式弱者の色弁別閾値が,すべての色について健常者と同様となること」という新しい補正基準を提案する.そして,「色弱度」というパラメータで式弱者の色覚域を表現し,それに基き工学的に実現しやすい補正法を示している.さらに,心理学実験による色弁別閾値と色弱度の測定を行い補正効果を確認している.
著者
松永 理恵 阿部 純一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.279, pp.53-58, 2010-11-06
参考文献数
10

人間には,単純な基本振動数比の音程ほど協和性を感じる聴神経機能が生得的に備わっている。このことから,音階の中心音となるドとより単純な振動数比の関係にある"ソ"や"ファ"を含む音階が世界中に遍在していると考えられる。本研究では,ソやファを含むかどうかによって,音階(調性スキーマ)の学習のしやすさに違いが生じるかどうかを検討した。実験1の結果は,ソとファの両方を含む音階は,どちらか片方のみしか含まない音階やどちらも含まない音階よりも学習しやすいことを示した。実験2と3では,実験1の結果が,既学習の西洋全音階への同化のしやすさによるものではないことを確認した。これらの結果は,ソとファの両方を含む音階の学習しやすさは環境的な要因よりも生得的な要因によるところが大きいことを示唆する。
著者
齋藤 牧子 潮田 浩 和田 裕一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.369, pp.73-78, 2007-11-29
参考文献数
12

ペットボトル緑茶飲料のパッケージカラーがその味覚印象に及ぼす効果について検討した。実験1では、パッケージカラーとして9色(赤、橙、黄、緑、青、紫、茶、黒、白)を提示し、味覚印象(甘み、渋み、まろやかさ、爽快感、うまみ、味の濃さ、飲みやすさ、香りのよさ、嗜好)の評定を求めた。その結果、これらのすべての味覚印象に対する評価は色によって変化することが示された。実験2では、評定者がどのようにして色の選好評価をしているかを調べるために、AHP(階層化意思決定法)を用いた検討を行った。AHPにおける評価項目として、甘さ、濃さ、飲みやすさの3つを設定した。分析の結果、緑はすべての評価項目において最も好ましさを感じさせるパッケージカラーであることが明らかとなった。
著者
大森 馨子 五十嵐 由夏 和氣 洋美 厳島 行雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.432, pp.7-10, 2012-02-02
参考文献数
6

痴漢場面で触られることの多い身体背面部に提示された触覚情報の判断とその回答に対する確信度について,手のひらに提示された場合との比較検討を行った。さらに,触覚情報の動きの有無によって触判断や確信度が異なるのか検討した。その結果,手のひらで触判断を行う場合にくらべ,身体背面部における触判断の正確性および確信度は低下することが明らかとなり,触覚情報のみで判別することは難しい可能性が示唆された。また,動きの有無によって正答率に差は見られないが,確信度については動きがある場合に高まることから,動けばそれが何であるか分るはずだといった思い込みによって,誤認が増加している可能性が示唆された。
著者
上原 依子 青柳 肇 釘原 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.60, pp.195-200, 2011-05-16
参考文献数
12

他者の援助が必要な困窮状態にあるとき,適切に援助を要請出来ないことは,不都合な結果を招きかねない.本研究では,援助要請を抑制する心理的要因の一つとして,対人感受性の高さ,および一般的信頼の低さに起因する,他者の行動に対しての評価判断の慎重化を扱った.とりわけ,低信頼者かつ対人感受性高群において,「他者の心的状態を察知する判断能力はあるものの,信頼出来るという決定的な判断や信頼行動に踏み切れない」という,従来の信頼研究では見過ごされてきたパターンの実証を試みた.本研究では大学生470名に対して質問紙調査を実施し,評価者の一般的信頼と対人感受性に関する尺度得点が,いじめの相談場面における教師への評価におよぼす影響を検討した.その結果,低信頼者は感受性が高く,高信頼者は感受性が低いときに,苦境場面におけるサポート者をより好意的に判断するという相補的な結果が得られた.よって,援助要請が必要となる苦境場面において,対人感受性の強さがサポート者に対しての印象評価にネガティブな影響をおよぼすという予測は高信頼者においてのみ実証され,低信頼者においては予測とは真逆の結果となった.