著者
金丸 雄介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.62_3-63, 2016

<p> 演者はこれまで全日本男子強化コーチを8年間務めた。また、所属する実業団柔道部のコーチを務め、世界選手権やオリンピックのメダリストを輩出した。コーチとしての情報活用を振り返ると、膨大な試合データの中から、選手が必要とする真の情報(結果論)を抽出し、分かりやすく伝えることは想像以上に難しかった。しかし、この部分がコーチの感性(実践知)が最も必要とされるところであり、コーチの技量が試されたところだと考える。</p><p> 2012年ロンドンオリンピックでは、男子チームが金メダル0という結果に終わり、歴史的敗戦となった。その後、井上康生男子新監督の指揮のもと、情報戦略の充実が強化プランの一つに挙げられた。2013年から情報戦略部隊が外国人選手の試合を撮影・収集するだけでなく、試合内容を詳細に分析し、数値化した。この情報をコーチが持つ情報と擦り合わせながら、各大会で活用した。また、柔道のための試合分析ツールが構築され、コーチは自身で簡単に試合分析ができるようになった。これにより、コーチ特有の分析も可能になった。</p><p> 本シンポジウムでは、世界で戦う最前線での「情報活用」の一端を事例として、今後の課題解決に向けて議論を深めてみたい。</p>
著者
土肥 照典 加藤 謙一 秋元 寛次
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.457-469, 2004-09-10 (Released:2017-09-27)
被引用文献数
1

A study was conducted to clarify the effects of running long jump practice in physical education classes for 11-or 12-year-old elementary school children. The subjects were divided into two groups: a training group (9 boys and 8 girls) and a control group (10 boys and 12 girls). The training group performed long jump practice over a period of 2 weeks (5 physical education classes), while the control group performed gymnastics practice. The jumping distance and 50-m sprint time were measured in both groups to clarify the performance before and after the corresponding period. In addition, the training group underwent measurement of approach running distance, approach running speed, take-off leg and jumping motion by angular kinematics. It was found that the jumping distance of the training group increased significantly for both boys and girls. However, no significant changes were found in the control group. After training, the approach running distance in the training group decreased significantly for both boys and girls. After training, there were significant positive correlations between the change in jumping distance and the change in approach running speed in the training group in the sections from 5 to 0 m before take-off in both boys and girls. In addition to the girls, there were significant positive correlations between change in the jumping distance and the change in approach running speed in the sections from 15 to 10 m and from 10 to 5 m before take-off. For boys in the training group, the relationship between the increase in jumping distance and the speed at touch down was significantly positively correlated with take-off. For girls in the training group, there was a significant positive correlation between the increase in jumping distance and the speed at touch down. From these results, it is suggested that long jump practice for 2 weeks (5 times) would improve the jumping distance of sixth-grade elementary school children.
著者
堀内 元 桜井 伸二
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.147_1, 2017 (Released:2018-02-15)

野球のバッティング動作では、左右の股関節が力学的エネルギーの主な発生源であることが示唆されている。そこで、本研究の目的は、股関節で発生する力学的エネルギーに関連する動作および力の発揮について検討することであった。男子アマチュア野球選手98名のバッティング動作を記録し、バットヘッドスピードと股関節角度および股関節で生成された力学的エネルギーの相関係数を算出した。その結果、いずれの時点での股関節角度においても、バットヘッドスピードとの間に有意な相関関係は認められなかった。また、捕手側の股関節では伸展トルクによる力学的エネルギーの発生がほとんどで、バットヘッドスピードと有意な相関関係が認められた。加えて、投手側の股関節では屈曲トルクおよび内転トルクによって発生した力学的エネルギーの割合が大きかった。これらのことから、野球のバッティング動作では、バットヘッドスピードの大きさによって股関節角度に差異はなく、左右の股関節の非対称な力の発揮によって力学的エネルギーが生成されていることが明らかになった。加えて、捕手側の股関節における伸展トルクの発揮能力がバットヘッドスピードに関連することが示唆された。
著者
勝亦 陽一 山田 亜沙妃 池田 達昭
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.205_3, 2016

<p> 本研究は、日本人一流競技者における小学生期の競技種目実施状況を明らかにすることを目的とした。対象は、14&ndash;55歳の日本人一流競技者790名(男性394名、女性396名)であった。対象の競技は、2000年以降のオリンピック競技種目とした。対象者には、専門競技および専門競技以外の競技経験(競技開始年齢、練習頻度)を質問紙に記入するよう指示した。本研究の結果、未就学期および小学生期に専門競技を開始したのは、男性が250名(63%)、女性が238名(60%)であった。小学生期に専門競技および専門競技以外の競技を実施していたのは、男性では69名(18%)女性では81名(20%)であった。専門競技以外の実施は、男性では水泳が40名、サッカーが34名、野球が26名と多かった。一方、女性では、水泳が44名、体操競技が7名と多かった。本研究で対象とした日本人一流競技者の多くは、小学生期に複数の競技を経験することによって多面的に運動能力を発達させたのではなく、専門種目のみを長期間に渡り実践することで種目特有の運動能力を発達させたと考えられる。</p>
著者
木村 和希 青柳 領
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.264_3, 2016

<p> バスケットボールの試合では、毎回試合内容を記録した統計値(STATS)が公開され、観客の興味を引くと同時に、試合分析にも利用されてきた。しかし、試合結果に影響するSTATSは多様で、競技水準、性、地域差に影響を受けると考えられる。そこで、本研究は試合結果に及ぼす影響を競技水準、性、地域差別にSTATSにより検討する。対象はアジアおよびアフリカ大会の男女、ジュニアおよびシニアの計6大会である。STATSは2点シュート試行数、3点シュート試行数、リバウンド数、ターンオーバー数などの14項目と、それらの比率14項目の計28個目である。そして、これらを独立変数とし、得失点差を基準変数として重回帰分析、および勝敗を基準変数とした判別分析を行った。結果、本数を独立変数にした女子のアフリカ大会の判別関数による結果が有意でなかった以外はすべて1%水準で有意差が見られた。得失点差および勝敗ともに2点シュート試行数、アシスト数、リバウド数、ターンオーバー数など8項目で両者に有意な関連をしていた。また、リバウンド数やリバウンド支配率は得失点差には有意な関連を示したが、勝敗には有意な関連を示さなかった。</p>
著者
栗原 俊之 伊坂 忠夫 岡本 直輝
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.221_1, 2017

<p> 全米プロバスケットボール協会(NBA)や日本プロバスケットボールリーグ(Bリーグ)は、各試合の内容を記録した統計値(STATS)を公開している。本研究は試合結果に関係するSTATS項目が日米のプロリーグで異なるかを検討することを目的とし、2016–17年シーズン全試合(NBA 1230試合、B1 540試合)のSTATSを使って統計解析を行った。一般的なSTATS項目(前後半得点、シュート、フリースローの試投数・成功数・成功率、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、ファウル、スティール、ブロック)に加え、攻撃回数、攻撃効率、防御効率および両チーム間の各項目の差を独立変数とし、得失点差を従属変数とした重回帰分析、勝敗を基準変数とした判別分析を行った。結果、重回帰分析では日米ともに攻撃効率、防御効率、シュート成功率、フリースロー成功数の差が選択され、NBAでは3点シュート成功数の差、Bリーグではファウル数の差が選択された。判別分析ではほとんどすべての項目が関与したがNBAでは3点シュートに関する項目が、Bリーグではリバウンドに関する項目が勝敗に大きく関係していた。</p>
著者
波多野 義郎 中村 精男
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.177-187, 1981-12-01 (Released:2017-09-27)
被引用文献数
4

In order to investigate the processes of unfavorable attitude formation against physical activities among young people, twenty-four male and female students who, out of a sample of 613 college students, indicated such a negative attitude in a questionnaire survey were interviewed. Each interview, average time length being 50 minutes, constituted a case study. The interview revealed various contributing factors, in terms of cause-result relationship, in forming unfavorable attitude against physical activities. General tendencies among the extracted backgrounds why they had come to form such unfavorable attitude may be summarized as followds: 1. Strong inferiority complex due to uncoordination and the lack of efficient sports skills prevailed. 2. Being afraid of possible failures resulting from quiet and passive personality was often a fertile bed in promoting negative attitude against physical activities. 3. Distrustful experiences in the previously involved school physical education programs, especially complaints against neglection of individual differences by the physical educators, were frequently pointed out. 4. Rigid philosophy of the physical education teachers that only faster, higher and stronger performances deserve for favorable evaluation invited strong criticism. 5. Few among interviewed had ever experienced happiness of own physical movement. Although individual right and freedom should be highly respected, negative environment against the promotion of physical education and sports among young people, such as contributing elements to produce those who unfavor physical activities must be removed from homes and schools.
著者
川上 諒子 澤田 亨 岡 浩一朗 坂本 静男 樋口 満
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.310_3, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究は、野球場におけるプロ野球観戦が特定の応援チームを持たない高齢者の感情や主観的幸福感にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。参加者は65歳以上の男女16人であった。プロ野球観戦の日を3日間設け、野球場でプロ野球を1日観戦するよう依頼した。質問紙を用いて、平常時および観戦直前、観戦直後の感情と主観的幸福感を調査した。感情の調査には一般感情尺度を、主観的幸福感の調査には日本版Subjective Happiness Scaleを用いた。解析の結果、観戦直前では平常時よりも安静状態を示す「ゆったりした」(P<0.01)や「平穏な」(P=0.04)という感情が有意に高まった。一方、観戦直後には主観的幸福感が平常時よりも有意に高値を示した(P=0.02)。また、試合結果の違いによる感情や主観的幸福感への影響についても検討したが、試合の勝敗と感情や主観的幸福感の変化との間に関連は示されなかった。以上の結果より、高齢者が野球場まで出掛けて行きプロ野球を観戦することによって、観戦直前には安静状態が高まり、観戦直後には主観的幸福感が高まる可能性が示唆された。
著者
兄井 彰
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.95_1, 2017 (Released:2018-02-15)

野球では、重いバットで素振りをした後、通常使っているバットを振るとバットが軽く感じる筋運動感覚残効が生じることが知られている。そこで、重いバットを振った後の筋運動感覚残効の大きさの特定とバットのスイングスピードに及ぼす影響を明らかにするために実験を行った。実験1では、基準試行として900gのバットで素振りをした後、介入試行で900g、1050g、1200gのバットで素振りを行い、さらに、後続試行として840gから1000gまで、20g刻み、14種類のいずれかのバットで素振りを行わせた。その際、基準試行と後続試行でのバットの重さを比較させ、重いか軽いかの判断を参加者に求めた。その判断から主観的等価点を求めた結果、1200gのバットで素振りを行った後では、40g程バットを軽く感じる筋運動感覚残効が生じていた。実験2では、1200gのバットで素振りをした後、900gのバットで素振りを行わせた際のスイングスピードを測定した。その結果、バットをフルスイングする条件では、スイングスピードに差は見られなかったが、ボールを打つイメージでスイングさせる条件では、有意にスイングスピードが速かった。
著者
内山 治樹 池田 英治 吉田 健司 町田 洋介 網野 友雄 柏倉 秀徳
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.605-622, 2018-12-10 (Released:2018-12-20)
参考文献数
66

The purpose of this study was to clarify the causal relationship between the “flow of a game” in basketball, defined as “the situation in which 4 periods, which consist of a division time of 10 minutes, advance gradually while having an influence on each other”, and its outcome, focusing on the interrelationships of the 4 periods. For this purpose, a hypothesis was established that the “flow of a game,” in which “factors causing changes in conditions” cannot be overlooked, consists of 4 periods, each creating opportunities that finally affect the outcome. In order to test this hypothesis, an analysis was performed of 1044 periods in 261 games in Japan’s strongest university league, the Kanto Men’s First Division League, based on the following 3 perspectives: (1) the importance of each period; (2) the mutual dependency among the periods; and (3) the relationship between the difference in cumulative scoring and outcome. The results were subjected to logistic regression analysis and covariance structure analysis, and the following 3 points were clarified: (1) Periods that influenced the outcome were the first, third and fourth, ranked in importance as third > first > fourth > second. (2) With regard to mutual dependency among the periods, the points difference in the preceding period in the sequence “first → second (cumulative),” “second (cumulative) → third (cumulative), “third (cumulative) →“fourth” created an opportunity in the following period. (3) A cumulative score difference of less than 8 points by the end of the third period was associated with a high potential for coming back to win. These findings should be applicable to coaching in various games under the official rules of the FIBA as new practical guidelines for closely analyzing the causal relationships between the unique “flow of a game” and outcomes in basketball that take place over 4 periods.
著者
來田 享子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.45, 2016

<p> 本報告では、1920年代後半から1930年代にかけ、メディアとオリンピックが結びつく中での女性選手たちとメディアとの関係をたどってみたい。この報告における問題関心は次の2点である。</p><p> 人見絹枝は1926年国際女子競技大会での活躍を描かれる側であると同時に、新聞記者として描く側でもあった。1934年第4回国際女子競技大会に出場した4名の選手たちは、海外から日本に向け、ラジオを通じ直接語りかけた。オリンピックがメディアによって/メディアのイベント化(浜田、2016)される中で、彼女たちは表象の対象であると同時に自らを表象する者でもあった。そこにはどのような意味を見出すことができるだろうか。</p><p> 人見絹枝が銀メダルを得たレースは、800m以上の距離が女性には激しすぎる走競技だとされたが、その判断にはメディアが大きな影響を与えていた(來田、2015)。1936年ベルリン大会で初の日本人女性金メダリストとなった前畑秀子の帰国時の写真には「次は結婚か」の見出しが添えられていた。メディアが彼女たちにジェンダーを刻印することは、オリンピックのイベント化にどのように作用したのだろうか。</p>
著者
稲垣 良介 岸 俊行
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.280_2, 2017

<p> 本研究は、学校体育における水難事故の未然防止に資する指導内容について検討するため、海水浴場の旗に対する理解の仕方や知識、注意の程度について調査した。調査対象者は、F大学の1年生145人であった。調査項目は、①旗の色の意味に関する項目、②遊泳に関する注意の程度に関する項目、③旗が示す意味の理解の有無を問う項目、④旗に関する学習経験に関する項目から構成された。回答は、度数を集計した後、χ二乗検定を行った(項目①③④)。注意の程度を問う項目は、VASを用いたため平均値と標準偏差値を算出した(項目②)。①について集計したところ、赤白両旗は、遊泳可20名(12.0%)、遊泳注意99名(59.3%)、遊泳禁止48名(28.7%)であった。③旗の色が示す意味を理解していた学生は3名(2.1%)であった。④旗の意味を学習した経験のある学生は3名(2.1%)であった。これら結果より、海水浴場における旗に対しては、情報を受信する側の認識は必ずしも十分でないことが示唆された。水難事故に対しては、事後対応的な学習だけでなく、未然防止に資する教育を充実させることが肝要であり、学習機会の充実を図る必要があることが示唆された。</p>