著者
中川 晋一 八尾 武憲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.633-640, 2009-07-15
参考文献数
7

私(中川)が2008年の10月13日に心筋梗塞を発症して4月で6カ月が経過した.幸運にも心臓カテーテルで処置のできる医療機関がいくつもある東京都の市部で,休日の午後8時前後という最も人的リソースのある時間帯で発症したため,難を逃れることができた.錆びついてはいるが10年ほど前まで,医師として救命救急の最前線での業務をこなしていたこともあり,知識のまったくない一般人ではなかったこともリテラシーとして役立った.しかし,意識下で情報通信の研究者として経験したことは,インターネットを用いた遠隔医療に関する技術開発1),2)を行ってきた者として,最近若干感じていたネットワーク技術や今回のライフログなどの関連技術が,いかに「研究者寄り」のものであり,急激に発症した一患者の生命を救うためには無力なものであるかを実感させた.今回のライフログ特集に寄せて,患者経験のある医師免許を持つ情報処理研究者として感じた経験を述べ,ライフログの実用化について検討したい.
著者
深山 鷹一 水澤 純一 野村 亮
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.130, pp.33-39, 2006-12-09
被引用文献数
2

当研究室では昨年度迄、作問学習を用いた単語学習システム(AGU-TechTerm)を作成し、学部2年の授業「計算機概論」にて2年間運用した。当該システムは学習に対し効果があったが、学生に対し指定されたキーワードで自由に作問させていたことにより、指定キーワード内において作問の偏りが見られた。また、学生が作問をする上で勘違いやケアレスミスにより誤作問が発生してしまう可能性があり、検証するために厖大な労力が必要となり。対策として学生への問題の割り当て方式、誤作問の自動検出システムを提案する。またオープンソース化に対しての取り組みについても紹介する。My laboratory has been operating AGU-TechTerm system 3 years for the lecture "Introduction for Computer Technologies". The lecture has more than 150 undergraduate students in a large class room where LAN is available during the lecture. A professor asks students to access the system with their notebook PCs while hi is lecturing. AGU-TechTerm is a newly developed lecturing assist tool that let students to make questions relates to the meaning of computer terminologies. Students are expected to be familiar with computer terminologies through making questions and also operating notebook PCs in a classroom. This paper discusses the issues and measures based on our last three years AGU-TechTerm operation.
著者
寺島 芳樹 安本 慶一 東野 輝夫 安倍 広多 松浦 敏雄 谷口 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.116-125, 2001-02-15
参考文献数
13

本論文では,種々の機能拡張に柔軟に対応できるQoS制御機構の実装法を提案し,SMILへの適用例を示す.提案手法では,仕様記述言語E-LOTOSのサブクラス(時間拡張LOTOSと呼ぶ)を中間言語として用いる.QoS制御機能は,システムを動画,音声の再生動作などを記述した主プロセスと,メディアスケーリング,メディア同期など追加したい機能のみを記述した制約プロセスとで構成し,それらを並列に同期実行させるという,制約指向スタイルを利用して実現する.またSMILに動的メディアスケーリング,メディア同期の精度指定の機構を追加したQOS-SMILを定義し,実装方法の適用例として示す.QOS-SMIL記述は対応する時間拡張LOTOS仕様に変換され,我々が開発している時間拡張LOTOSコンパイラを用いて実行される.いくつかの実験結果から,提案手法はQoS制御機能の開発コストに優れ,実行効率の点でも十分な性能を持っていることを確かめた.In this paper, we propose a flexible implementation technique forQoS control mechanisms and apply it to SMIL language.In the proposed technique, we use a subclass of E-LOTOS (calledreal-time LOTOS).We implement QoS control mechanisms using the constraint orientedstyle where a system is composed of a main process(e.g., video/audio playback) and several constraint processes (e.g.,media scaling, inter-media synchronization and so on). Usingthe multi-way synchronization mechanism of real-timeLOTOS, those processes run in parallel satisfying the specifiedconstraints.We define QOS-SMIL as an example extension of SMILwhere it has dynamic media scalingand explicit inter-media synchronization amongobjects, and show the applicability of our implementation technique.QOS-SMIL documents are converted to executable programs with ourreal-time LOTOS compiler. Through some experiments, we have confirmedthat the proposed technique has some advantages w.r.t. developmentcost for QoS control mechanisms and the derived programs haverelatively good performance for practical use.
著者
尺長健
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.2308-2319, 1994-11-15
参考文献数
15
被引用文献数
8

3次元物体の幾何モデルが与えられたときに、単眼視画像から物体の姿勢を推定する間題について、位相幾何レベルでの解析結果を述べる。一般に姿勢推定問題は回転推定と並進権定に分離できるが、本稿では、より本質的である回転推定に議諭を限定する。取り扱う物体は、剛体を抽象化した概念であるベクトル剛体と、回転自由度1の関節を抽象化した概念である関節ベクトルから構成される任意の物体とする。ベクトル剛体は1組のベクトル集合で定義され、また、関節ベクトルは回転軸に対応するベクトルで定義される。各ベクトル剛体内では接続する関節ベクトルを含めて、角度関係がすべて既知であるものとする。このモデル記述により、物体はベクトル剛体と関節ベクトルで構成されるベクトル拘束グラフと呼ぷグラフで表現でき、従って、1枚の画像から各ベクトル剛体の姿勢を推定する問題も同様の記法で表現できることを述べる。次に、ベクトル拘束グラフで表された姿勢推定問題が可解であるか否かの判定法と、極小かつ可解な問題(基本問題と呼ぷ)を同定する方法を示す。さらに、具体的な基本問題を幾つかの例について示すとともに、基本問題相互の関係を一般的に論じる。特に、実用面から重要なサブクラスである(既知ベクトルを含まない)木構造問題について、すべての墓本問題が1つの置換定理によって関連付けられることを示す。また、既知ベクトルを含む基本問題、木構造以外の基本問題についても同様の議論を行う。
著者
太田 賢 渡辺 尚 水野 忠則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.35, pp.141-146, 1997-04-24
被引用文献数
4

モーバイルコンピューティング環境、ワイヤレス通信環境でもマルチメディアを利用したいという要求が高まっている.ワイヤレス通信環境は帯域幅が狭く、バースト誤り、移動時のハンドオフにより転送の途切れが生じるという問題があり、比較的大容量の帯域幅とスムーズな転送を必要とするマルチメディア通信の扱いは難しい。本研究は狭帯域環境において効率的にマルチメディア情報にアクセスする選択的マルチメディア通信方式を提案する.マルチメディア情報の内容を考慮してそのシーンごとに優先度を与えるシーン優先度と、フレームの種類、音声ブロックの音量によって機械的に付けられるユニット優先度という2つの優先度を導入する。利用可能帯域幅の範囲で、優先度に基づいた選択的なマルチメディア転送が行われ、重要なシーンは比較的高品質な再生を行うことができる。さらに、高優先度の情報の先読みにより、転送の途切れが生じても再生を続行させる手法、キャッシングにより巻きもどし時のマルチメディア再生の品質を向上させる手法について提案する。選択的マルチメディア通信方式の実装についても述べる。The realization of multimedia communication in mobile computing environment can lead developments of various attractive applications. However, there are following problems when using wireless link. In general, wireless link doesn't have bandwidth enough to accmodate multimedia communication. A transport service may be interrupted during carrying continuous media such as video and audio by a burst-error and a hand-off. We propose a priority-based multimedia communication protocol for wireless communication: SMAP(Selective Multimedia Access Protocol). It adopts the selective transport service accoring to priority of a video fame and an audio block, and the prefetching and the caching multimedia data with high priority. Authors or providers of multimedia data assign priority to important scenes in the multimedia data so that the selective transport service allocates them more bandwidth than trivial scenes. The prefetching allows a multimedia application to continue to playback even when a burst error or a hand-off occurs. The caching can improve quality of contents of multimedia data when a user rewinds the playback.
著者
帰山 敏之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.655-660, 2000-06-15
参考文献数
5

映画は,白黒フィルムによる無声映画に始まり,トーキー化,カラー化の革命により発展してきた.そして今,映画の歴史において新たな革命が起きている.それは,映像メディア業界に急速に進むデジタル化への電子技術革新により,映画の撮影から配信,上映に至るまでまったくフィルムを使わない映画が実現してきたことである.
著者
櫻井 快勢 河合 直樹 北岡 伸也 小林 秀章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. CVIM, [コンピュータビジョンとイメージメディア] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.9, pp.1-6, 2015-01-15

本研究では,食品のおいしそうな印象を意味する 「シズル感」 に注目し,シズル感のある画像の生成法を模索する.まず,画像の印象は,画像中の色の分布に影響することが知られていることから,シズル感も色の分布に依存すると仮定する.シズル感の感度と色の分布を定量的に示す画像統計量を知覚実験にて評価する.結果,仮説は棄却され,感度は画像統計量には依存しないことが明らかになる.次に,光沢が感度に影響する可能性があるため,画像に光沢を付与し,評価する.光沢の付与は,画像に存在する鏡面反射成分を強調することで達成する.結果,光沢を付与できた画像で,シズル感の向上を確認する.全ての知覚実験は,被験者に強制選択法にて 「りんご」 と 「ご飯」,「ステーキ」 の 3 画像群に対して最もシズル感を知覚する画像を選択させる.
著者
義久 智樹 金澤 正憲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.3296-3307, 2006-12-15
参考文献数
13
被引用文献数
8

近年のデジタル放送の普及にともない,音声や映像といった連続メディアデータの放送型配信において,ユーザがコンテンツを選択して視聴する選択型コンテンツに対する注目が高まっている.たとえば,2 択クイズ番組で,ユーザが回答を選択し,その回答に対する映像を視聴するといったことが考えられる.サーバは,ユーザの嗜好に応じた番組を提供できるが,選択肢となるいくつかのコンテンツを同時に放送するため,途切れのない再生に必要な帯域幅が大きくなる.しかし,コンテンツの視聴順序を考慮して効率的にスケジューリングして放送することで,必要な帯域幅を削減できる.本稿では,選択型コンテンツの放送配信において,帯域幅削減のためのスケジューリング手法を提案する.提案手法では,選択型コンテンツの状態遷移グラフから放送スケジュールを作成することで,途切れのない再生に必要な帯域幅を削減する.Due to the recent popularization of digital broadcasting systems, selective contents, i.e., users watch their selected contents, have attracted great attention. For example, in a quiz program, a user selects his answer and watch the video content againt the answer. Although the server can deliver programs according to users' preference, the necessary bandwidth to play contents without any interruption gets larger because the server has to broadcast several selective contents concurrently. However, by scheduling them effectively considering the order of contents and broadcasting them, the necessary bandwidth can be reduced. In this paper, we propose a scheduling method for broadcasting selective contents. In our proposed method, by producing a broadcast schedule from a state transition graph, the necessary bandwidth is reduced.
著者
野池 賢二 平田 圭二 片寄 晴弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.48, pp.45-50, 2003-05-16
被引用文献数
4

蓮根(Performance Rendering Contest)の演奏コンテストに参加するための"Rencon エントリキット第 1 版"の仕様について述べる."Rencon エントリキット"に含まれる,共通の土俵上でシステムを評価するための学習用データのファイル形式,提供するツールの機能について述べる.This paper reports a Rencon-Kit for Performance Rendering Contest. In this paper, we are going to examine an environment on which, the performance of the rendering systems are compared and evaluated. We illustrate the file format to describe the score and performance data and some tools, aiming at the competition of the Performance Rendering systems, which are equipped with learning or reasoning functions.
著者
笹田 耕一 佐藤未来子 河原 章二 加藤義人 大和 仁典 中條拓伯 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.215-225, 2003-08-15
参考文献数
11
被引用文献数
10

近年,マルチスレッドプロセッサアーキテクチャの研究が盛んである.このアーキテクチャの性能を引き出すためには,システムソフトウェアのサポートが不可欠であるが,従来のモデルでは,カーネルが計算実体を管理するため,このアーキテクチャの利点を十分に活用することができなかった.そこで本研究では,マルチスレッドアーキテクチャ上で効率的に機能するユーザレベルスレッドライブラリの実現方法を検討し,実際に作成した.ライブラリは,1チップが複数持つ実スレッドを管理し,スレッドの並列実行をサポートすることで性能を向上させる.また,プロセッサのスレッド制御命令を利用することで,高速なスレッド制御を可能にする.ユーザレベルでスレッドを管理するうえで困難な問題はOSと協調動作することで解決する.シミュレータによる評価の結果,スレッドの並列実行により最大1.5倍の性能向上を確認した.また,軽量なスレッド制御を実現した.Recently, there are many studies on multithreaded processor architecture. In order to get the higher performance of this architecture, support of system software is indispensable. However, from the view of performance, the advantage of the architecture has not been utilized enough without kernel supports for Architecture (Physical) Threads. In this research, we have designed and developed a thread library that works efficiently on a multithread architecture. Architecture Threads of a processor are managed on a user level library supports to parallelize threads and improve performance. Using the thread control instructions of the processor enables high-speed thread control. Inefficiency when managing threads on a user level would be improved by cooperation with OS. As a result of simulation based evaluation, up to 1.5 times higher performance has been gained by parallel execution. Moreover, we have accomplished a lightweight thread control.
著者
岸 晃司 坂本 啓 坂本 泰久
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.22, pp.1-6, 1998-03-13
参考文献数
9
被引用文献数
1

最近ウェブを広告媒体として捉える企業が増えている。それを受けて、ウェブ広告の代表であるバナー広告に関して、広告効果を高める方法に関する研究がいくつかなされている。そこで注目されているのは、広告の表現方法や露出場所等の広告自身の要因である。それらに加えて、ブラウザのボタンをクリックするなどのユーザ行動に関する要因が、広告効果に与える影響を調べることも重要である。そこで本研究では被験者を集めて観察実験を行い、ユーザのどのような行動が広告効果に影響を与えるのかについて調べた。その結果、注目した3つの要因のうち2つが統計的に有意な影響を持つことが確かめられた。Recently many firms get to consider WWW as media for advertising. Several studies on improving effectiveness of banner advertising, the most popular type of WWW ads, have been done. However, most of studies deal with creative factors, such as expression of them or placement of them on a WWW page, from an advertiser's viewpoint. We think it is also important to focus on user behavior, such as pushing the button of a web browser, from a user's viewpoint. So we investigated an influence on ad effects by user behavior through close observations on panels. As a result, we found that two factors in user behavior affected advertising effectiveness.
著者
蓮実梢 石田貴士 秋山泰
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.34, pp.1-7, 2014-06-18

標的となるタンパク質を定めて行う薬剤開発において,薬剤標的タンパク質の選定はとても重要となる.この標的タンパク質探索には,既に病原体のゲノム情報等を利用して探索を行うための統合的なデータベースシステムが提案されてきたが,その生化学経路情報については統合の対象とされていなかった.しかし,この情報を用いることであるタンパク質が病原体の生命維持に対して致命的であるかという議論が可能となるため,生化学経路情報の統合は標的タンパク質の探索のために有用であると考えられる.そこで本研究では,顧みられない熱帯病の新薬の標的タンパク質を探索するための統合データベースシステム iNTRODB に,トリパノソーマ科寄生原虫に関する生化学経路情報を追加し,またそこにゲノム等に関連する情報を表示するインタフェースを開発することで,標的タンパク質の探索の更なる効率化を目指した.In structure based-drug design, selecting a drug target protein is very important. For the target protein selection, several database systems integrating various related information, such as genomic information of pathogens and phenotypic information, have been proposed. However, biological pathway information, which may facilitate understanding the importance of proteins, has not been integrated. In this research, we integrated the biological pathway information about Trypanosomatidae family, protozoans parasites into a database system iNTRODB, which has been developed for selecting drug target protein of neglected tropical diseases. We also developed an interface to display pathway information with genome and protein information to improve the search process of drug target proteins.
著者
石井 亮登 森田 ひろみ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1784-1793, 2013-06-15

スクロール表示は,狭い領域に多量の情報を提示するために用いられる.本論文では,横書きの文章が下から上へと流れる縦スクロール表示について,その基本的な読み特性を調べることにより,携帯端末などのデザインに資することを目的とする.実験1ではスクロール表示の読みの基本的評価指標の1つとされる快適速度(読み手が快適に読めると感じる速度)と,移動単位(スクロールする際に1度に移動する距離,ここでは1ピクセルまたは1行)や表示枠サイズ(表示行数および1行内の表示文字数)の関係を調べた.その結果,移動単位が1ピクセルの条件の方が快適速度が速いこと,また表示行数および表示文字数の増加にともない快適速度が速くなること,表示枠内の広さが同じであれば,行数を犠牲にして行内の文字数を多くとる方が快適速度が速くなることが示された.実験2では,読み最中の眼球運動を測定した結果,移動単位により読み方が異なることが分かった.ピクセル単位のスクロール表示を読む場合は,1行を読み終えたら速やかに次の行の行頭に視線移動するのに対し,行単位のスクロール表示を読む場合,1行を読み終えてもそのまま行末で行送りを待つ読み方をする.また,移動単位によらず読み手は表示枠内の最下行に視線を向けて読むことが多いことが分かった.結果から,移動単位により異なる縦スクロール表示の読みモデルを提案する.Scrolling text is a useful way for presenting a large volume of materials within a limited display area. To investigate the basic characteristics of vertical text scrolling in terms of readability, we measured the rate of scrolling when one reads comfortably (Experiment 1), and eye movements during reading (Experiment 2). The comfortable reading rate was higher when text was scrolled by pixel (per-pixel scrolling) rather than by line (per-line scrolling), and increased as more lines or more characters per line were presented in the window. It was also found that if the display area is limited, increasing the number of characters per line rather and decreasing the number of lines is effective for improving comfortable scrolling rate. Eye movement data indicated that the lower comfortable scrolling rate for per-line scrolling was mainly due to longer fixation duration at the end of the bottom line. This is probably because readers tend to waits for the next line to appear from the bottom of the window, whereas in the per-pixel scrolling case, they immediately move their eyes to the beginning of a new line.
著者
西村 涼 大田 康人 渡辺 靖彦 村田 真樹 岡田 至弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.67, pp.85-90, 2008-07-10
参考文献数
12

メールの文章は他の文書なら改段落しない場合でも、「見やすさ」、「読みやすさ」 を重視して改段落をする場合がある。こうした過剰で不要な段落わけは、メールの機械処理にとって問題である。そこで、メールの文章における段落間の接続の強さを機械学習によって推定する方法を提案し、過剰な段落わけを検出できることを示す。In order to improve the readability, we often segment mail text into smaller paragraphs than necessary. However, this oversegmentation is a problem of e-mail text processing. In this paper, we proposed an estimation method of connectivity between paragraphs in mails using machiene learning technieques, and showed that paragraphs which should be one paragraph can be found by detecting strong connectivity.
著者
高塚 光幸 向井 剛平 多田 真崇 佐々木 良一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.16, pp.25-30, 2007-03-01

近年、インターネットや情報技術の発達に伴ってあらゆる情報が電子化されてきている。情報の電子化に伴い、デジタルデータの証拠性を確保するデジタル・フォレンジック技術が重要になってきている。さらに近年、デジタル・フォレンジック技術において電子開示手続きである E-Discovery 技術が重要になってきている。今後は文書の証拠性を確保するだけでなく、情報を適切に開示することが必要になってくると考えられている。そこで、本稿では蓄積されている文書の証拠性と開示文書の正当性を保証する E-Discovery システムの提案を行う。Recently, almost all information has been computerized with development of Internet and an information technology. With computerization of information, digital forensics technique for getting evidence of digital data becomes important. Especially, E-Discovery technique to obtain an electronic disclosure procedure, which is one of the digital forensics techniques, becomes important. In future, the method not only to get evidence of a document but to guarantee the integrity of disclosed information. Thus we propose an E-Discovery system guaranteeing evidence and legitimacy of a disclosure document of an accumulated document with this report.
著者
大山敬三 神門 典子 佐藤真一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.57, pp.33-40, 1999-07-16
被引用文献数
1

学協会や大学などの学術機関から刊行されている学術雑誌のオンラインジャーナル化を支援するためには,多様な編集の体制や工程,投稿方式,文書ファイル形式,計算機環境などに対応できる柔軟な編集システムを構築する必要がある。著者らは,管理業務に関わる編集管理システムと,原稿自体を扱う文書処理システムをサブシステムとして構成する方式を提案して実現した。この文書処理システムでは,個別の文書ファイル形式,工程ごとの文書処理ツール,文書のバージョン,ファイル実体などの管理,および文書処理ツールの起動・監視などの機能をカプセル化し,異なる文書ファイル形式の混在や新しい文書処理ツールの導入などが容易にできるようになっている。In order to support academic institutions (e. g. academic societies and universities) to publish their scholarly journals on-line, it is necessary to develop a flexible editing system that can adapt to variety of editing organizations and flows, submission methods, document formats, and computer environments. The authors proposed and implemented a system configuration consisting of two independent subsystems, an editing management subsystem and a document processing subsystem. The document processing subsystem encapsulates the management of document file formats, processing tools, document version control, and physical location of document files. It enables editing of heterogencous documents and easy introduction of new tools.
著者
荻原 佑輔 尾下 真樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.109, pp.43-48, 2008-10-31
参考文献数
7

近年の映画やテレビゲームでは,数千人単位の大規模な戦闘シーンや街中のシーンにおいて,群集モデルを用いて生成された群集アニメーションが利用されている.群集モデルとは,一定のルールによってエージェントを独立に操作する手法である.しかし,群集モデルを用いてアニメーションを生成するためには,エージェントの移動速度,他のエージェントとの距離といった群集パラメタを手作業で設定する必要があり,利用者の望むようなアニメーションの生成には手間がかかる問題がある.そこで,本研究ではマウスやペンタブレットを用いて,利用者が数本の軌道を入力するだけで,移動経路,移動速度,エージェント同士の標準距離,距離の補正量などの群集パラメタを自動的に決定し,群集アニメーションを生成する手法を開発した.Recently, crowd animation based on an agent model has been used for making a scene of large-scale battles and a scene in a town for movies and video games. Agent model is a method to operate each agent independently based on specific rules. In order to use an agent model, however, a user should specify crowd parameters such as path, velocity and distance manually. It is difficult for a user to specify appropriate for generating an animation that the user wants. In this paper, we propose a technique to set crowd parameters such as path, velocity, standard distance among agents and variation of distance automatically based on few trajectories that are given by a user using a mouse or a pen-tablet.
著者
来間啓伸 本位田真一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.1593-1602, 2004-06-15
参考文献数
10

Webサービスを仲介するシステムをクローズドな仲介システムの緩やかな連合によって実装する際には,次の3点が課題となる.(1)連合によって個々の要素が受ける影響の局所化,(2)連合関係の変化への柔軟な適応,(3)連合によって不具合が起こらないことの検証.本稿では仲介システムを介して結ばれる要素の集まりをコミュニティと考え,要素間の静的なアクセス関係をポリシとして,コミュニティの連合を規定するためのポリシの枠組みを導入した.この枠組みに基づいて,連合によって組み合わされたポリシを実現するためのコミュニティ・モデルを示した.コミュニティ・モデル上では,コミュニティ間の協調のためのインタラクションとコミュニティ内のインタラクションを階層的に表現することで(1)と(2)が,ポリシとインタラクションが形式的に対応することで(3)が解決される.一方,コミュニティ・モデル記述にメタ階層に基づく言語を用いているため,実装との対応は明確ではない.ポリシとして表現する対象の拡大と,コミュニティ・モデルから実装への過程の明確化が,今後の課題である.The service mediation system on the Web could be constructed as a federation of service communities, in which each community provides and mediates limited number of services. In implementing the federation, (1) scalability of each community, (2) flexibility to the change of federation relation, and (3) verifiability of policy compliance should be considered. In this paper, we introduce a notion of policy of community based on access control among players and show a community model that is aimed at representing communications between players compliant with policy. The community model represents communications for the cooperation of communities separately from the communications for service request, mediation, and provision. As the result, it (1) represents communications between players in a modular way, (2) encapsulates the dependencies on partner communities, and (3) provides a basis for verification of policy compliance. The future work is to extend our notion of policy and to establish the implementation method based on the community model.
著者
向井 理朗 山下 浩生 岡 隆一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.79, pp.9-16, 1998-09-17
参考文献数
6
被引用文献数
7

人間の身振りを計算機システムにいかに理解させ,より円滑で自然な対話を支援するかは重要な課題である.こうしたジェスチャー認識システムの開発を進めるための共通的な基盤となる人間の身振りのデータベース整備はその対象となる身振りが非常に多様であることやデータ整備自身についての知見の不足からこれまで十分には行われてこなかった.そこで我々はジェスチャーデータベースの企画,仕様決定,作成を行ったので,データベースの収録方法,収録データ等についてを報告し,今後のデータベース整備の概要を報告する.In this paper, we describe about Gesture Database. It is important to be understood human gesture by computer. A common database is necessary to develop gesture recognition system. We developed gesture database. We used sign language as a gesture. Sign language includes a rule of movement. Therefore, we use sign language as the data which don't depend on recognition system. We describe specification and recording method of database and describe preparation of future database. And, we intend to show this database to a general researcher.
著者
小林 良太郎 小川 行宏 岩田 充晃 安藤 秀樹 島田 俊夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.349-366, 2001-02-15
参考文献数
25
被引用文献数
7

近年のマイクロプロセッサは,スーパスカラ・アーキテクチャにより,より多くの命令レベル並列(ILP: Instruction-Level Parallelism)をプログラムより引き出し高性能化を図ってきた.しかし,この方法は,スーパスカラ・プロセッサが引き出すことのできる命令レベル並列の限界や,ハードウェアの複雑さの増加により,限界が見え始めてきた.これを解決する1つの方法は,ILPに加えスレッド・レベル並列(TLP: Thread-Level Parallelism)を利用することである.本論文では,レジスタ値の同期/通信機能を備え,複数のスレッドを並列に実行するSKYと呼ぶマルチプロセッサ・アーキテクチャを提案する.SKYは,非数値計算応用で高い性能を達成することを目的としている.このためには,細粒度のTLPを低オーバヘッドで利用することが要求され,SKYでは,命令ウィンドウ・ベースの同期/通信機構と呼ぶ機構を新たに導入した.この機構は,従来のレジスタ・ベースの同期/通信機構と異なり,受信待ちの命令に後続する命令の実行を可能にするノンブロッキング同期を実現している.これにより,TLPとILPを同時に最大限利用することを可能とする.SPECint95を用いた評価により,8命令発行の2つのスーパスカラ・プロセッサにより構成したSKYは,16命令発行のスーパスカラ・プロセッサに対して,最大46.1%,平均21.8%の高い性能を達成できることを確認した.Current microprocessors have improved performance by exploiting more amount of instruction-level parallelism (ILP) from a program through superscalar architectures.This approach, however,is reaching its limit because of the limited ILP available to superscalar processors and the growth of their hardware complexity.Another approach that solves those problems is to exploit thread-level parallelism (TLP) in addition to ILP.This paper proposes a multiprocessor architecture, called SKY,which executes multiple threads in parallel with a register-value communication and synchronization mechanism.The objective of SKY is to achieve high performance in non-numerical applications.For this purpose, it is required to exploit fine-grain TLP with low overhead.To meet this requirement,SKY introduces an instruction-window-based communication and synchronization mechanism.This mechanism allows subsequent instructions to waiting instructions for receiving registers to be executed unlike previously proposed register-based mechanisms.This capability enables fully exploiting both TLP and ILP.The evaluation results show that SKY with two eight-issue superscalar processors achieves a speedup of up to 46.1% or an average of 21.8% over a 16-issue superscalar processor.