著者
森 哲 COOK S. P. COOK Simon Phillip
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度は、研究開始時期が冬季であったため、調査地と対象種の選定を主とした予備的調査を行った。亜熱帯域におけるトカゲ類の温度生理を温度環境の異なる地域間で比較し、また、温度選好性が異なると推測される複数種が存在する場所と、単一種のみが存在する場所を選び、それらの間でそれぞれの種の温度特性を比較することを目的として、適切な種と調査地の確定を行った。また、選定に際しては、京都大学理学研究科の戸田守助手と琉球大学熱帯生物圏研究センターの太田英利教授のアドバイスをあおいだ。まず、既存の文献データから琉球列島に生息するトカゲ類の分布域と選好環境の情報を調べ、対象種として、オキナワトカゲ、バーバートカゲ、および、ヘリグロヒメトカゲを選抜した。これをもとに、調査候補地として、沖縄北部の山原、伊江島、久米島、伊平屋島、伊是名島、および、奄美大島を選んた。本年度は、このうち沖縄島北部の山原と伊江島へ1月に赴いて実際の環境を巡察し、山原は上記3種が生息する環境として、伊江島はオキナワトカゲとヘリグロヒメトカゲが生息する環境として、調査対象にふさわしい場所であると判断した。他の地域へは、平成17年度の4月に赴く予定である。また、2月には、体温と逃走速度との関係を実験下で調べるための実験装置であるレーストラックの作成準備にとりかかった。この実験では、野外で捕獲してきたトカゲを様々な体温条件下で逃走させる必要があるが、既存のインキュベーターを用いてトカゲの体温を変化させることが可能であることを確認した。
著者
落合 恵美子 TOIVONEN T.H. TOIVONEN Tuukka
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

2010年度においては研究計画通り、論文執筆・出版に向けての書籍執筆や修正を中心に活動し、『A Sociology of Japanese Youth : From Returnees to NEETs』共著書籍の出版が決定(2011年夏)、『Getthing Japanese Youth Back to Work : Negotiating Policy in a Post-Industrial Society』をRoutledgeと出版契約を結ぶことができた(2011年末)。研究論文については、『Social Politics』ゲンダーと福祉政策の分野で著名な雑誌に投稿。また、同じく家族政策やワークライフバランスをテーマにIs There Life after Work for Japan? Political 'Work-Life Balance' Research Begins to Address the Hard Questionsをまとめた。また、6月に「若者問題」についてのワークショップを開催。心理学社と社会学者、そしてMichael Zielenzigerアメリカの著名な記者の討論により成果の多いイベントになった。http://www.tuukkatoivonen.com/Events_files/Workshop2010.pdf
著者
畑山 満則
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

災害のイメージを共有し,災害後の対応も含めたリスク・コミュニケーションを実現にするため,災害想定下での訓練として各地で盛んに行われている防災訓練が有効であると考える.現状の防災訓練では,災害想定自体が参加者にとってわかりにくいものであり,さらに長期にわたって固定化されている場合が多いため,有効なリスク・コミュニケーションにつながりにくい状況にある.本研究では,この災害想定から住民参加型で行うことを提案する.このためには動的なシミュレーションと,その時空間での分析が必要となる.そこで,従来のGISでは対象とされていなかった動的なオブジェクトの記述と,時空間での接続関係のハンドリングを可能にし,さらに,複数の災害想定をパラレルワールドとして書き込める時空間GISの開発を目的とし以下の研究を行った.1)時空間地理情報スキーマの定義と概念モデルの構築空間スキーマ,時間スキーマについては,国際標準化がすでになされているが,時空間スキーマに関しては未だ検討段階である.時空間スキーマの理論的考察を行い,時空間情報の概念モデルを構築した.2)時空間接続関係のデータベースへの記述形式とソフトウエアへの実装1)での研究結果をうけて,時空間スキーマを構成する重要な要素である時空間の接続関係について,課題抽出を行った.3)時空間地理情報データ構造:KIWI+に関する考察時空間GISを構築するためのデータ構造として,提案しているKIWI+フォーマットに関して,上記の1)2)の結果を踏まえた見直しを行い,実装上の課題に関する知見をまとめた.
著者
塩谷 雅人 河本 望 藤原 正智 JOACHIM Urban
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

成層圏における熱バランスやオゾン化学に対して決定的な影響を与える水蒸気の変動について調べた. 特に熱帯域に注目して, いくつかの衛星観測データと定点観測ながら精度の高い水蒸気ゾンデデータとの比較・検討をおこない, 衛星観測のデータ質についての知見を得た. さらに, 熱帯下部成層圏における水蒸気混合0比の過去約15年にわたる年々変動について見たところ, さまざまな変動要因は存在するものの, 全体としては増加傾向を示すことがわかった.
著者
井上 耕治
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レーザー3次元アトムプローブを用いて、MOS構造におけるドーパントの3次元空間分布やhigh-kゲート酸化膜構造について調べた。MOS構造やhigh-kゲート酸化膜構造の3次元アトムマップを得ることができた。ドーパントの種類による違い(ドーパントの偏析の有無やゲート酸化膜への侵入の有無)について明らかにした。high-kゲート酸化膜構造については傾斜構造を得ることができたが、今後詳細について検討していく。
著者
北山 兼弘 岡田 直紀 清野 達之 蔵治 光一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

赤道付近では、東西太平洋を結ぶ大気循環であるウォ-カ-循環によって、対流圏に沈降逆転層が形成される。沈降逆転層付近では気流の沈降による強い乾燥が生じ、植物に大きな乾燥ストレスを与える。本研究では、沈降逆転層の高度や乾燥の強さがどのように植物に影響を与えるのかを解明した。西太平洋ボルネオ島の熱帯高山では森林限界が高標高(3,300 m)に、東のガラパゴス諸島では森林限界が低標高(1,000 m)に出現した。また、森林限界は、どちらにおいても最も強い乾燥が生じる標高の下限と一致していた。このことから、ウォ-カ-循環における沈降逆転層の存在が森林限界の決定に強く関わっていることが示唆された。
著者
平田 聡 森村 成樹 山本 真也 明和 政子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ヒトの知性を進化的観点からとらえたとき、特に社会的知性の領域において著しく進化しているという主張がなされるようになった。この点について、ヒトに最も近縁なチンパンジーを対象とした比較研究によって検証した。アイトラッカーを用いた視線計測による研究である。その結果、世界の物理的な特徴認知に関してはヒトとチンパンジーとで大きな差はないが、他者の動作の背後にある意図の理解のような心的側面の認知においてはヒトとチンパンジーで顕著に異なることが示された。
著者
福嶋 亮大
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度の研究テーマは、20世紀前半において成立した中国の近代文学が、21世紀に入った今日の社会においていかに変容したかを探求するのに向けられた。もともと20世紀前半の段階で、胡適という学者が、過去の大衆文学の遺産を再利用するかたちで「白話文」で書くことを提唱し(文学革命)、その提唱が、それ以降の中国語の文体を大きく規定してきたことが知られている。しかし、21世紀に入ると、消費社会化が急速に進行するなかで、中国の外側の大衆文化が大量に押し寄せ、中国人の表現様式を大きく変えてしまった(グローバル化、あるいはポストモダン化)。そのなかで、従来の近代文学のある部分は生き残り、ある部分は衰退しつつある。今年度は、21世紀初頭の新しいタイプの中国文学を観察することによって、20世紀の時点で形成されていた文学性とは何だったかを照射することを心がけた。つまり、「中国近代文学成立期における白話の社会的位置」という研究テーマを、いわば搦め手から展開することを目指した。その問題意識の下で2本の論文を執筆するとともに、日本を含めた東アジアのサブカルチャーとネットカルチャーを主題とした著書を発表し、相応の評価を得ることができた。こうした脱領域的な研究アプローチは、世界的に見てもあまり例を見ない。グローバル化が進む社会の分析は、おそらく今後ますます重要性を増していくだろう。今年度はその分析のための礎石を築くことができたと思われる。
著者
大島 裕明
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本課題では、リアルタイムに知識発見を行う技術の開発を行った。主に、2つの異なる方向性を持つ構文パターンを用いてWeb検索を行い、その検索結果のテキストから効率的に目的の知識を獲得する手法を用いて、様々な知識発見手法を開発した。様々な種類の知識を発見するために、適切な構文パターンを発見する手法についても開発した。さらに、様々な知識発見手法を用いたアプリケーションの作成を行った。
著者
チョルパン アスリ
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

ビジネス・グループは、特に開発途上市場において、巨大企業の競争力の向上に大きな役割を果たし、それを通じて当該国の長期の経済成長に多大な貢献をしてきた。このビジネス・グループは非関連多角化を製品戦略として追求し、持株会社と子会社という組織構造を維持してきた。従来のビジネス・グループに関する研究が経済環境をその重要性の主要因と見なしてきたのとは異なり、本研究は企業内に蓄積された競争資源とその資源を動的に活用する能力に注目して、その要素がビジネス・グループを国際市場においても競争可能な経済主体に引き上げたことを議論した。これらの資源あるいは能力は、成熟工業経済における大企業が保有する製品に固有のものとは異なり、製品のカテゴリーを越えた、より機能的な要素、例えば金融・財務、人的資源、マーケティング、とりわけ組織マネジメントといった要素に関連するものであった。
著者
吉村 徹 栗原 達夫 江崎 信芳
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

近年、D-セリンが哺乳動物脳内のNMDAレセプターのアゴニストとして作用することが明らかとなり、動物におけるD-アミノ酸の機能が注目され始めている。また、アメリカザリガニを塩水に馴化させた場合D-アラニンが蓄積することや、D-チロシンなどのD-アミノ酸を高濃度含む培地中では出芽酵母の生育が阻害されることなどが報告され、D-アミノ酸と種々の生物の関わりに興味がもたれている。本研究では、海産性のエビの一種であるブラックタイガーにアラニンラセマーゼを見いだすとともに、同酵素によって生合成されるD-アラニンが、外界の塩濃度上昇に対する浸透圧調整剤として機能する可能性を明らかにした。本研究ではまた、カイコの幼虫、蛹にセリンラセマーゼが存在することを明らかにした。カイコ体内には遊離のD-セリンが存在し、その濃度は変態の時期に高まることから、D-セリンとカイコのdevelopmentの間に何らかの関係があることを示唆した。さらに本研究では、これまでほとんど知られていない分裂酵母でのD-アミノ酸代謝について明らかにし、D-アミノ酸の毒性とその除去の機構について考察した。本研究ではまたスペイン、コンプルテンセ大学のAlvaro M.del pozo博士の協力のもとに、イソギンチャクのアミノ酸ラセマーゼについても検討した。さらにD-アミノ酸と微生物の環境応答の関連を明らかにするため、アメリカ合衆国、オーストラリアの中北部の河川・湖沼において汽水域に生息する微生物のスクリーニングを行った。
著者
中村 素典
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

まずIPv6ネットワークの試験的利用環境を構築するために、学外のIPv6ネットワークとの接続を行なった。特に今後のマルチホーム環境に基づく通信の信頼性向上手法の開発および活用のため、WIDE、JGN、CKPをはじめとする複数のIPv6バックボーンネットワークとの接続を行い学内から利用できる環境を整えた。次に、キャンパス内で使用している電子メールサーバのIPv6への対応作業を実施した。学内で運用しているウィルスチェック機能つき電子メールサーバをIPv6対応にし、学内外とのメールのやりとりにIPv6も利用できるようにすることで、IPv6を利用しつつ安全な電子メール交換が可能となる。同時に、IPv4とIPv6を併用する際のDNSの管理方法について検討を行ない併用および移行の際の問題点の洗い出しを行なった。また、ネットワークの設定・運用状況を把握するための仕組みを構築し、キャンパスネットワークの日々の運用に利用できる体制を構築し評価を行なってきた。学内の1000台を越えるネットワーク機器の情報を集約して管理することで、各スイッチの管理運用状況を容易に把握できるようになった。さらに、近年頻度が増加している遠隔講義の安定化のための手法としてPath-Diversity技法に基づく方式を開発し、IPv4とIPv6の併用を含む複数の経路の同時活用によるネットワークの状況把握とストリーム伝送の安定化手法についても研究に取り組み、その有効性について確認した。
著者
守倉 正博 田野 哲 梅原 大祐
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究により基礎的なスロット付きアロハ方式を用いたネットワークコーディング技術による多段中継システムについて,送信権に関して優先度をつけることにより,スループットが最適化される事を計算機シミュレーションおよび理論的に明らかにした.さらに,物理レイヤの熱雑音や電波干渉が無線中継システムに与える影響について理論的に明らかにした.また広く用いられているIEEE 802. 11規格による無線LANを用いた場合の宅内無線中継システムにおいて, CWmin制御やAIFSN制御を用いた新しい考案方式により,ネットワークコーディングを用いた場合のスループット特性の改善や,音声信号に対するQoS制御が可能であることを計算機シミュレーションにより示した.
著者
佐々木 節 ANACLETOARROJA Frederico ANACLETO ARROJA Frederico
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は本研究計画のまとめとともに,これまでとは異なる視点から宇宙論的揺らぎの理論を展開し,非線形性や非ガウス性に関する考察を進めた。その主な成果を以下に記す。(1)近年のインフレーション宇宙の揺らぎの振る舞いに関する研究から,一般的な非正準的な運動項を持つスカラー場と断熱的完全流体との類似性が指摘されていたが,この点をより明確にするべく,これらの2つの場合が非線形揺らぎも含めて完全に一致するための条件を議論した。その結果,両者が非線形まで含めて完全に一致するのはいわゆる純粋なK-エッセンス理論の場合だけであることを証明した。これは,これまでの揺らぎの理論に新たな見方を提供する重要な成果であるだけでなく,これまでにあるモデルで得られた結果を対応する別のモデルに適用して直ちに解を得ることができる,という意味でも有用な成果である。(2)インフレーション理論に対するアプローチとして,最近,いわゆる有効場の理論的アプローチが注目を浴びている。しかし,これまでは単一のスカラー場の仮定のものに有効理論が展開されていた。そこで,これを複数場の場合に拡張した。特に,2階微分までの一般的有効作用の下で,複数スカラー場理論の高エネルギー極限の補正項の一般形を導出に成功した。この結果は近いうちに論文として発表予定である。(3)単一スカラー場の理論でも,ポテンシャルに急激な変化があるモデルではスローロール近似が破れることが知られている。この場合に発生する非ガウス揺らぎを解析的に評価することに成功した。この結果も近いうち論文として発表予定である。
著者
中北 英一 田中 賢治 坪木 和久 大石 哲 中川 勝広 鈴木 善晴 大石 哲 坪木 和久 鈴木 賢士 川村 誠治 高橋 劭 田中 賢治 中川 勝弘 市川 温 杉本 聡一郎 鈴木 善晴 出世 ゆかり 大東 忠保 山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

豪雨災害の軽減を目指して、次世代型偏波レーダーの降水量推定・降水予測への利用を目的に、偏波レーダーとビデオゾンデの同期集中観測を実施し、その結果、降水粒子の粒径と種類の推定手法を構築することに成功した。さらに、モデル予測への応用や現象の理解を深めることで降水量推定・降水予測の高度化を実現した。
著者
高田 正泰
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

原発性乳癌の予後因子である腋窩リンパ節転移の有無を治療開始前に予測する数理モデルの開発・評価を行った。国内2施設から291例の症例データを得て予測モデルを作成し、韓国ソウル大学病院の174例を用いて評価を行った。予測モデル作成は決定木アルゴリズムの一つであるAlternating Decision Tree(ADTree)を採用した。構築されたモデルは、学習用データでROC曲線下面積(AUC)=0.770、独立した評価用データでAUC=0.772と高い汎用性を示した。モデルによる予測確率20%以下をリンパ節転移低リスクと仮定すると偽陰性率は5.3%であった。また、ADTreeモデルはデータ欠損にも耐性を示した。さらに同一データでの精度比較では、既存モデルはADTreeモデルに及ぼなかった。本結果を国際学会にて報告し、現在論文投稿中である。さらに、Web上で予測確率を計算可能なサイトを作成し、多施設共同で前向き評価試験を遂行中である。術前化学療法による病理学的完全奏効(Pathological complete response,pCR)を治療開始前に予測する数理モデルの開発・評価を行った。国内のがんセンター・大学病院より得られた150例のデータを用いて予測モデルを作成し、臨床試験から得た173例のデータにより評価を行った。モデル作成にはADTreeアルゴリズムを用いた。ADTreeモデルは、学習用データでAUC=0.766,評価用データで0.787と高い予測精度を示した。予測確率20%以下をpCRの可能性が低い群と仮定した場合、偽陰性率は7.7%であった。ADTreeモデルはエストロゲン受容体(ER)陽性のluminal type乳癌においてAUC=0.779と高い予測精度を示した。一方、ER陰性HER2陰性のTriple negative乳癌では、AUC=0.531と予測精度改善が必要と考えられた。同一データでの精度比較では、既存モデルはADTreeモデルに及ばなかった。本結果を国際学会にて報告し、現在論文投稿中である。さらに、Web上で予測確率を計算可能なサイトを作成し、多施設共同で前向き評価試験を計画中である。閉経後ER陽性乳癌患者を対象としてアロマターゼ阻害剤(exemestane)による術前療法を行った臨床試験で、臨床的治療効果の予測因子を探索した。その結果、年齢、腫瘍径、ER発現度、増殖マーカー(Ki-67)と治療効果との関連が示唆された。さらに、Body mass index (BMI)が低値(BMI<22kg/m2)の群は、中間値(22≦BMI<25kg/m2)や高値(BMI≧25kg/m2)群に比較して、奏効率が低い事が示された(21.7%,56.0%,60.6%,p=0.01)。さらに多変量解析でもBMI低値は独立した効果不良の予測因子であった。この結果を論文報告し国際学会で発表した。
著者
阪上 孝 竹沢 泰子 八木 紀一郎 大東 祥孝 小林 博行 北垣 徹 山室 信一 上野 成利
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1859年のダーウィン『種の起源』以降、この書物がもたらした衝撃は計り知れない。それはまず、種の不変を信じて分類に終始していた博物学を抜けだし、生存闘争や自然選択などの原理を基礎とする、生命にかんするダイナミックな理解をもたらす。しかしそれは自然科学の一理論にはとどまらない。ダーウィン進化論は一つの思考様式として、哲学・法学・政治学・経済学・社会学・人類学といった人文・社会諸科学へも浸透し、新たな認識枠組を提供するのだ。またこの理論は制度的学問の枠組すら乗り越え、社会ダーウィニズムとして、国家や社会にかんする言説としても機能することになる。そしてさらには、神の摂理を説く宗教を打破して、既存の人間観・世界観をも揺さぶるだろう。本研究の主要な狙いは、進化論が社会にもたらすこうした広大な衝撃を探ることにあった。そのためにこの研究は多様な学問領域の専門家たちから組織され、また対象となる地域もヨーロッパからアメリカ、中国、そして日本を含む。研究を遂行していくなかで特に明らかになった点は、進化思想とは大いに多面性と揺らぎを孕むものだったということである。当時においてはダーウィンの他に、心理学や社会学を含む壮大な進化論体系を構築する同時代のスペンサーも大きな影響力をもっていた。またフランスのラマルクはダーウィンにおよそ半世紀先行して、獲得形質の遺伝や進化の内的な力という点を強調しつつ彼の進化論を展開している。さらには『種の起源』の作者はこの書のなかで、マルサスの『人口論』を引用しつつ、その政治経済学的発想に多くを負っていることはよく知られている。このように進化論はいくつかの思想が絡まって織りなされる錯綜した知の総体であり、そこで知はメタファやアナロジーを通して、異なる学問領域間で、また学問と政治・社会のあいだで往還運動を行う。このなかではときとして大きな誤解や逸脱も産まれており、それは進化論を受容する時期や地域によってさまざまなかたちをとる。本研究がとりわけ力を注いだのは、このような多様性を詳述することである。
著者
中北 英一
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ゲリラ豪雨を予測するために、レーダーで見えない赤ちゃん雲、ひいては卵の状態がどのようであったかを解析し、さらに豪雨発生の状態から元の卵の状態まで時間的に逆推定することで、何を新たに観測すれば予測が可能となるかを明らかにし、降雨予測手法の発展へと結びつけることを研究目的としている。平成22年度には、2010年7月より試験運用を開始した国土交通省のXバンドMPレーダネットワークを用いて以下の成果を得た。1)近畿地方で発生した22事例の積乱雲を対象にレーダー反射強度の3次元画像解析を行った結果、全ての事例において大気上空3-5km高度でその卵の発生を確認することができた。22事例を平均すると約3分ほど地上降水に先行して大気上空で卵が発生しており、レーダーによる3次元観測が極めて重要であることを示した。2)降水セルの3次元追跡手法を開発し、22事例中14事例(6割強)においては自動追跡が可能となった。3次元降水セル自動追跡結果から、エコートップ高度・降水セルの重心高度・降水セルの体積などの時間変化を解析できるようになり、将来的に豪雨をもたらす積乱雲の特徴付けとなりうる指標を作成した。3)発達する卵かどうかに関連して、ドップラー風速と発生高度に着目して解析した結果、積乱雲へと発生した事例においては、ドップラー風速に収束場や渦位を確認することができた。また、卵の発生高度に関して、偏波間相関係数を用いて融解層高度との関係性を調べたようとしたが、対流性雲では融解層高度の特定が困難であった。以上、3次元偏波レーダーデータを用いて、大気上空での卵の発生をとらえ、さらに自動追跡する手法を開発し、発達する事例においてはドップラー風速との関連陸を明らかにした。今後は解析事例を増やし、他の偏波レーダーパラメータやGPSによる水蒸気量などと卵の発達具合について解析を進めていく。