著者
山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

豪雨災害の軽減を目指して、様々な雲微物理量の推定による降雨予測精度の向上を目的に、偏波レーダーから推定される降水粒子種類情報、および水蒸気量をデータ同化することで、降雨予測手法の高度化を実現した。また、偏波レーダーを用いて降水粒子の形成過程を通して水蒸気量を推定できる可能性があるという概念を示した。
著者
大山 修一 小崎 隆 堀 信行
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

西アフリカ・サハラ砂漠の南縁に位置するサヘル地域では毎年、雨季になると、農耕民と牧畜民(フラニ、トゥアレグ)が放牧地をめぐって各地で衝突を繰り返している。ときに武力衝突によって、双方に死傷者が出ることもある。本研究計画は、農耕民と牧畜民のあいだで武力衝突が起きる要因を明らかにし、武力衝突を避けるための方策を提案することを目的としている。本年度に実施した現地調査の成果は、以下の通りである。牧畜民は雨季のあいだ、トウジンビエ畑の作物に対して食害を与えないよう、トウジンビエ畑を避けて、台地上の放牧キャンプに住み込んでいる。耕作地の拡大と荒廃地の発生にともなって、牧畜民が利用しうる放牧地が不足しており、牧畜民が放牧できる草地が新たに必要であること、そして牧畜民の管理する家畜が夜間に動き出し、畑のトウジンビエを採食することによって、農耕民と牧畜民が賠償金をめぐって口論した末、武力をともなう争いに発展するプロセスが浮かび上がってきた。フラニに聞き取りをしたところ、台地上やその周辺部に鉄製フェンスで囲いを作り、夜間の家畜囲いをつくることによって、夜間の家畜管理が容易になること、そして、その家畜囲いにおいて家畜が休息できるよう、生ゴミをまくことによって、砂を捕捉し、草地を再生させることが衝突予防のひとつの手がかりになるという知見を得た。生ゴミ施用にともなう緑化の有効性については圃場実験によって検証している。家畜囲いの面積は40m四方で十分であり、囲いを利用するのは、草本の生育する雨季の終盤が適していること、その草本は家畜の飼料となる一方で、夜間の野営によって家畜の糞が供給され、その糞が次年度に草本が生育する肥料となることが示唆された。ハウサの農村にも家畜囲いをつくることにも同意が得られ、この提案は、フラニ牧夫に高い評価を得た。周辺のフラニから鉄製フェンスとゴミ施用の要望が多く寄せられ、農耕民と牧畜民の衝突を回避する一つの有効な手段となる可能性が示唆された。
著者
安部 琢哉 KIRTIBUTR N SLAYTOR M KAMBHAMPATI S THORNE B BIGNELL D.E HOLT J 杉本 敦子 武田 博清 山村 則男 東 正彦 松本 忠夫 SLAYTOR Michael THOME Barbara L HOLT John A SLAYTOR M. KIRTIBUTR N. KAMBHAMPATI エス THORNE B. BIGNELL D.E. HOLT J. GRIMARDI D.
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、熱帯陸上生態系で植物遺体の分解に大きな役割を果たしてシロアリが、地球規模で適応放散による多様化を遂げた道筋と機構を明らかにすることを目的とする。シロアリにおける(1)微生物との共生による植物遺体の利用、(2)社会性の発達、(3)食物貯蔵・加工の3過程に注目し、これらに系統進化(DNA解析による分子系統や形態や共生微生物に基づく系統進化)および生物地理に重ね、それに理論的な検討を加えた。特にシロアリの多様化の鍵を握る(1)下等シロアリから高等シロアリへの進化、(2)キノコを栽培するシロアリの起源、(3)社会性の進化と多様性について仮説を提出すると共に、(1)空中窒素固定とセルロース・ヘミセルロース分解、(2)土を食べるシロアリの適応放散、(3)シロアリが地球上でのメタン生成に果たす役割について質の高いデータの提出を目指した。(1)下等シロアリから高等シロアリへの進化中生代白亜紀の遺存森林であるオーストラリアのクイーンスランドの熱帯林とそれに隣接する、第三紀に発達したサバンナにおいてシロアリ種組成を比較した。その結果、前者では下等シロアリが、後者では高等シロアリが卓越していた。このことから、高等シロアリが森林でなくサバンナで進化して熱帯林とサバンナで適応放散を遂げたとの新しい仮説の提出しつつある。(2)キノコを栽培するシロアリの起源シロアリ主要グループの分子系統樹を作成して、キノコシロアリが高等シロアリの中で最も古い時代に分化し、下等シロアリのミゾガシラシロアリ科と近縁であることを明らかにすると共に、キノコシロアリ巣内のキノコ培養基とミゾガシラシロアリ科のイエシロアリの巣内構造物の化学組成を特にリグニン含量を比較することにより、シロアリにおける糞食とキノコ栽培の起源に迫りつつある。(3)シロアリにおける社会性の進化と多様性シロアリ地球規模での多様化を微生物との共生と社会性の進化に注目して検討し,これをT.Abe,S.A.Levin & M.Higashi編(1997):Biodiversity(Springer)中で展開した。(4)空中窒素固定、セルロース・ヘミセルロース分解材を食べるコウシュンシロアリでは体を構成する窒素の50%が空中窒素起源であること、しかし土を食べるシロアリでは空中窒素固定能が低いこと、また下等シロアリでも共生原生動物だけでなくシロアリ自身もセルロースやヘミセルロースを分解する酵素を作ることなど、これまでの常識をくつがえすデータを次々を提出した。(5)土を食べるシロアリの適応放散過程カメルーンの熱帯林で土壌食シロアリの安定同位体分析と腸内容物分析を行い、土食いへの指標として安定同位体比が有効であることを明らかにした。次いでオーストラリアでシロアリ亜科のシロアリの土食いへの進化過程を安定同位体分析、セルロースが分解酵素の活性分析、ミトコンドリアDNAを用いた系統解析から解明し、Termesグループで土食いへの進化が一回起こったことを示した。またTermesグループがアメーバと共生関係を持つことを明らかにした。(6)生態系におけるシロアリの役割シロアリの代表的なグループにおけるメタン生成のデータを実験室で集めると共に、タイの森林で野外調査を行った。シロアリが地球上でのメタン生成に果たす役割についての精度の高い答えを出しつつある。(7)「シロアリの多様化プロセス」ワークショップ世界中の関連分野の研究者を招き、シロアリ研究の現在までの成果をまとめた教科書を編集する目的で国際ワークショップを1997年3月に開催した。
著者
向川 均 黒田 友二 黒田 友二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

2010年夏季にロシア上空で出現した長寿命のブロッキング高気圧の維持メカニズムと予測可能性について解析を行った。その結果、このブロッキング高気圧の維持には、次の2つの異なるメカニズムが重要であることが明らかになった。まず、ブロッキングの予測精度が明瞭に悪化した7月下旬では、ブロッキングの上流側に存在した気圧の谷に伴う対流圏上層での水平発散が最も重要であった。一方、8月初旬では、ユーラシア大陸西部の対流圏上層に存在する気候学的な水平収束場に高気圧性偏差が重畳することで生ずる渦度強制が重要であった。これらの2つの維持メカニズムは、このブロッキングに特有のものであることも示された。
著者
丹羽 節
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

銀(II)錯体は古くからその合成例が知られ、酸化剤として有機合成への利用が試みられていた。通常官能基化が困難な炭素-水素結合の酸化など特徴的な反応性が見いだされてきた一方で、実際の合成に用いられることはほとんどなかった。その要因として、銀(II)錯体を大過剰量必要とする点、またほとんどの有機溶媒に不溶な点が挙げられる。申請者が当該年度に研究を行ったハーバード大学Ritter教授のグループでは、銀(II)錯体が中間体として示唆される興味深い芳香族フッ素化反応を見いだしている。本反応では強力な酸化剤である求電子的フッ素化剤により銀(II)二核錯体を経由し、さらに他の遷移金属では進行しにくいとされる炭素-フッ素結合の還元的脱離を経ていると考えられている。これらの知見より、適切な配位子と酸化剤を用いることで、銀(II)錯体特有の反応性を活かした触媒的酸化反応の開発を行えると考え研究を行った。その結果、3座ピリジン配位子を有する銀(I)錯体に酸化剤を組み合わせることで、芳香族化合物のベンジル位の酸化反応、ベンジルアルコールの酸化反応、またスチレン化合物の二量化反応が触媒的に進行することを見いだした。今後これらの反応の反応機構解析を行うことで、本反応の最適化、実際的な応用を行う。炭素-水素結合の官能基化など、銀(II)錯体の反応性は他の遷移金属と比べ一線を画しており、従来多用されてきたパラジウム錯体などで実現困難だった変換を開発できる可能性があり期待される。
著者
岡部 寿男 宮崎 修一 廣瀬 勝一
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

物理的に離れた場所にいるプレイヤがネットワーク上で対戦ゲームを行う環境構築の基盤を作ることが本研究の目標である。信頼できるサーバを用意することにより容易に実現できるが、サーバ自身の不正やサーバの負荷を考え、サーバなしのいわゆるpeer-to-peer型の環境を対象とする。そのような条件下で、対戦相手の不正を如何に防御するかを考察するのが、本研究の目的である。これまでの研究において、順序機械を用いてゲームを形式的に定義し、その定式化の汎用性を示すとともに、具体的ゲーム(軍人将棋)に対して計算量の削減を行いJaval.4を使って実装した。本年度は、その関連研究として、プライバシーを確保したまま二者間で情報をやりとりし、所望の計算結果(主に認証、認可)を得るためのプロトコルの研究を行った。本研究では、基盤となる認証体系としてShibbolethを仮定し、その上で「マジックプロトコル」と呼ばれる暗号技術を利用して所望のプロトコルを実現する方法を提案した。以下に例を2つ挙げる。例えば、年齢制限のあるWebコンテンツの閲覧の為には、利用者は制限年齢より上であることを証明すれば良く、自分の年齢そのものはできるだけ公開したくない。また、サービス提供側も、年齢制限がどこにあるのかを公開したくない場合がある。このような状況で、お互いに自分の秘密情報を公開しないまま、結果となる判定だけは正しく行いたいという要求が生じるが、これを、Yaoの金持ち比べプロトコル(2人の参加者が、自分の所持金を相手に知らせずに、どちらが金持ちかを正しく判定するプロトコル)を用いて解決した。また、例えば、会社の採用の条件として、大学時代に科目Aの単位を取得しているという条件を課している場合、会社はそれがどの科目であるかを明かさずに、また、大学側は、その科目A以外の単位取得状況は知らせずに、学生が科目Aの単位を取得しているか否かのみを、会社が知るという要求が考えられる。この問題は、紛失通信というプロトコルを応用することにより解決した。
著者
伊藤 紳三郎 YANG Jian
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究は、ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造内における高分子鎖のコンホメーションを単一分子レベルで観察することにより、ブロック鎖の特異な形態について明らかにすることを目的としている。本年度は、ブロック共重合体のミクロ相分離構造内に混合したホモポリマー成分のコンホメーションをSNOMによる直接観察によって評価した。試料として、ポリスチレン(PS)-ポリメチルメタクリレート(PMMA)のブロック共重合体を用いた。それぞれのブロック成分の重合度は8350および8570であり、対称な構造を有する。これに蛍光ラベルされたPMMAホモポリマーを微量に混合し、成膜後、クロロホルム蒸気雰囲気下にてアニーリングを行った。ここで、ブロックポリマー中のPMMAセグメントはフルオレセインにより、ホモポリマーPMMAはペリレンによって蛍光ラベルされており、それぞれの成分のみを選択的に観察することが可能である。フルオレセイン蛍光観察によって、ミクロ相分離構造の観察を行ったところ、PS-PMMAは156nmの間隔のラメラ状相分離構造を呈した。同一視野においてペリレン蛍光を検出することで、PMMAホモポリマー鎖の選択観察を行ったところ、ホモPMMAはすべてミクロ相分離構造内のPMMAドメイン内に局在していることが明らかとなった。ラメラPMMAドメイン内におけるホモPMMAの重心位置とそのコンホメーションとの相関について詳細に検討したところ、ラメラドメイン中央に存在するホモPMMA鎖は、ラメラ層に平行に配向していることが明らかとなった。一方、PS-PMMA相の界面付近に存在するホモPMMA鎖は、相界面に対して垂直に配向する傾向があることが分かった。ミクロ相分離構造の界面においてブロックポリマー鎖は界面近傍において特に強く配向していると考えられ、このブロックポリマー鎖の配向に依存して界面近傍に存在するホモPMMA鎖も界面に垂直方向に配向するものと思われる。
著者
池野 旬 島田 周平 荒木 茂 池上 甲一 半澤 和夫 児玉谷 史朗 上田 元 高根 務 武内 進一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

東南部アフリカの農村においては、多様な生業が同時並行的に展開されて、究極的な目的である安定的な食糧確保が目指されてきた。1980年代以降の国家の政治・経済・行政改革に伴うマクロ・レベルの社会経済変動に対して、生計戦略を変容させながら農村世帯は巧みに対応してきた。本研究では、主として農村での実態調査に基づき、多様な生計戦略と食糧確保の方策、ならびにそれらの背景にある規定要因について、実証的に分析した。成果の内容は、数冊の単行書(和文)、英文論文等として公表している。
著者
春木 奈美子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

人類学の多くの資料や、文学的天才の作品が教えるように、贈与について考えるとき、セクシュアリティの問題をそこから切り離すことはできない。贈与に解き難く付随するこの問題系は、レヴィ=ストロースが記述する女性の交換にはじまり、ピエール・クロソウスキーの『歓待の掟』における倒錯的な贈与に至るまで、例に事欠かない。ところで、フランスの精神分析家ジャック・ラカンは晩年のセミネール20巻『アンコール』のなかで、セクシュアリティについて独特な議論を展開している。彼はそこで、性別の公式と呼ばれる論理式を提示し、さらに「女なるものは存在しない」と定式化した。このテーゼは、ラカンの男性中心主義と曲解され、多くのフェミニストから批判を受けることになる。しかし詳細にセミネール20巻を読み進めれば、これを男性中心主義と解することがほとんど不可能であることが分かる。贈与という概念をひとつの手がかりとして、心理臨床を再考察する研究の最終年は、セクシュアリティをめぐるラカンの言説を導きの糸として、絶対的な「贈与」に関わる神話の分析を行い、更にそこで得られた知見から新たな治療論を展望した。フロイトが『終わりある分析と終わりなき分析』で記したように、心理臨床において、治療の終わりは議論の絶えない主題である。フロイトは分析治療がどうしてもそこから先には進まない「岩盤」=去勢コンプレクスを前に、ある種のためらいをみせるが(生物学への傾斜)、ラカンはそこに留まることなく、「幻想の横断」、後には「症状への同一化」という考えを前面に打ち出す。本研究は後者の概念を贈与そしてセクシュアリティの問題と併せて再考することで、そこに含まれる治療的意義を示した。
著者
松本 紘 BOUGERET Jea ANDERSON Rog 小嶋 浩嗣 GURNETT Dona 村田 健史 笠原 禎也 八木谷 聡 臼井 英之 大村 善治 岡田 敏美 筒井 稔 橋本 弘蔵 長野 勇 木村 磐根 BOUGRET Jean-Louis ANDERSON Roger r. GURNETT D.A. BOUGERET J.L ANDERSON R.R
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成7年度には、GEOTAIL衛星は、地球から30Re付近の近地球軌道にあり、WIND衛星も主に、昼間側の太陽風の定常観測状態にあった。一方、同年度8月には、ロシアの衛星INTERBALLが、3月には、米国の衛星POLARが打ち上げられ、ISTP衛星による磁気圏の総合観測体制がほぼ整ったといえる。これらの衛星のうち、INTERBALL、POLAR衛星は、打ち上げ後、まもないということで、具体的な共同観測については、来年度に行われる予定であり、本年度は、主に、WIND衛星との共同観測を昨年度までのAKEBONO、Freja,ULYSSES衛星との共同観測に加えて重点的に行った。以下に、交付申請書の調査研究実施計画の項目に従って研究成果を列挙する。1.まず、惑星間衝撃波の観測でGEOTAILとWIND衛星で同時に観測を行った例において、WIND衛星で観測された磁場やプラズマの変化とそのGEOTAILでのある時間遅れでの観測、そしてそれに対応するプラズマ波動の強度の変化について解析を行った。その中には、衝撃波の到来とともにGEOTAILがバウショックを何度もよぎる現象がみられるものがあり、惑星間衝撃波の影響によりバウショックの位置が変化している様子を観測することができた。2.磁気圏昼間側のショック領域全面で発生しているといわれている2fpエミッションの観測をWIND、GEOTAIL両衛星を用いて行い、その発生時間や周波数変化の時間差から、その発生領域がやはりショック全面にあることが確認された。現在その位置的な偏りについても、より多くのデータを集めて解析を行っている。3.GEOTAILによって磁気圏内部で観測された「振幅変調をうけた電子プラズマ波」と同様な波形がWIND衛星によって太陽風中でも観測されていることがわかった。GEOTAILでの観測では、その波動の伝搬方向は外部磁場に対して平行、垂直の両者があることがわかっていたが、現在までのところWINDの方では平行伝搬のみがみつかっている。4.POLAR衛星の打ち上げに伴う共同観測体制を整えるための情報交換をアイオワ大学と行っている。5.POLAR衛星の打ち上げが遅れて本年度の3月になったため、具体的な共同観測は来年に執り行われることになる。6.本研究課題に関連して投稿された論文リストは、本報告書の研究発表欄に列挙する。以上が、交付申請書に書かれていた計画に対応する報告であるが、上述の他に、以下の項目についても共同研究を行った。1.極域で観測されるイオンサイクロトロン波とイオンコニックス分布との相関をAKEBONO衛星とFreja衛星の共同観測で明らかにした。2.極域で観測されるAKRの観測をGEOTAIL、WIND衛星で共同して行い、その観測が衛星の位置によってどのように変化してみられるかの評価をを行い、AKRの伝搬特性についての解析をおこなっている。3.太陽バースト伝搬をGEOTAIL、WIND衛星で同時に観測し、その強度を比較することにより、両者の受信機の較正を行った。
著者
石川 義孝 宮澤 仁 竹ノ下 弘久 中谷 友樹 西原 純 千葉 立也 神谷 浩夫 杜 国慶 山本 健兒 高畑 幸 竹下 修子 片岡 博美 花岡 和聖 是川 夕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

わが国在住の外国人による人口減少国日本への具体的貢献の方法や程度は、彼らの国籍、在留資格などに応じて多様であるうえ、国内での地域差も大きい。しかも、外国人は多岐にわたる職業に従事しており、現代日本に対する彼らの貢献は必ずしも顕著とは言えない。また、外国人女性や国際結婚カップル女性による出生率は、日本人女性の出生率と同程度か、より低い水準にある。一部の地方自治体による地道な支援施策が注目される一方、国による社会統合策は不十分であり前進が望まれる。
著者
河田 惠昭 林 春男 柄谷 友香 寶 馨 中川 一 越村 俊一 佐藤 寛 渡辺 正幸 角田 宇子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

フィリッピンのイロコス・ノルテ州を流れるラオアグ川を対象として,発展途上国の開発と防災戦略の事例研究を実施した.この州とラオアグ市にとってはコンクリート製の連続堤防はいくつかの点で歓迎すべき構造物である.それは,台風のたびに発生していた洪水や浸水から開放されること,第二に旧河道や氾濫原において氾濫を」前提としない開発が可能になること,第三に頻繁な維持管理を必要としない構造物は,行政の維持管理能力の低さを補うことができることである.しかし,異常な想定外の外力が働いた場合,氾濫を前提としない開発や生活が被災し,未曾有になる恐れがある.援助側の技術者は,非構造物対策,すなわち,1)構造物を長期にわたって維持管理するための対策,2)住民の防災意識を高めるための対策,3)気象情報の収集と伝達,危険地域の把握,避難勧告など被害抑止のための対策,4)救援活動など被害軽減のための対策が含まれることを知らなければならない.すべての対策において,援助が何らかの役割を果たすためには,まず行政や住民の災害への対応の現状と過去を知る必要がある.調査期間中,台風が来襲し,堤防が決壊し被害が発生した.その原因としては,堤防建設技術の未熟さが指摘でき,防災構造物建設のための必要な知識や技術の取得と移転,実際の建設時における遵守など,構造物を根付かせるための対策も援助側は考えなければならないことがわかった.援助側の技術者は,非構造物対策を考慮に入れた上で,どのような構造物が地域に根付くかを計画する必要がある.そのためには社会を研究している専門家の参加を得て,地域の履歴を知ることは開発援助ではとくに重要である.それは,1)記憶の蓄積と共有化,2)被災者像,3)防災意識の向上の過程,4)防災対策の有無,5)被災者の生活・生計を誰が助けたのか,6)復旧における住民の労働力提供の有無を調べることは価値がある.
著者
牧野 俊郎 若林 英信
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は,熱工学の立場から人間の生活環境と地球の自然環境のほどよい共生を図ることをめざす萌芽的な研究である.人間の生活環境の改善はわれわれの当然の希望であり,とりわけ日本の蒸し暑い夏を快適に過ごすための努力はあってよい.ところが,その生活環境の快適さを実現するために空気調和機器(エアコン)をもってすれば,その使用電力分が地球大気に熱として放出され,さらにその電力生産にともなう熱が大気に放出されて,地球の温暖化を促進する.すなわち,エアコンに頼って快適さを追求しつづける限り,生活環境と地球環境との共生は難しい.本研究の要点は,(1)壁によるふく射冷却と(2)水蒸気を呼吸する壁である.電力よりは自然の自律制御機能に依存して人間の快適さを追及することである.本研究では,夏に涼しく冬に暖かい生活・暮らしの実現に貢献できる技術の開発のために,ふく射伝熱と水蒸気を呼吸する高熱伝導性の多孔質体に注目する.自律的な生活環境制御機能をもつ生活空間の壁をバイオマスの暖かさをもって実現することをめざす.このような人間生活と自然現象を見つめる熱工学研究の萌芽が育つことの社会的意義は大きいと考える.平成19年度(初年度)は,室内の生活空間における伝導伝熱・対流伝熱・ふく射伝熱・相変化をともなう熱・ふく射・物質輸送(heat, radiation and mass transfer)現象を考察し,その現象をよりよく制御するための生活環境自律制御型の高熱伝導性・高吸湿性の室内壁ユニット(第一壁)の開発を行った.すなわち,まず,計10種の第一壁の試料を作製した.次に,測定装置を作製し,第一壁の(有効)熱伝導率・(全垂直)放射率・平衡(質量)含水率を測定した.
著者
稲垣 恭子 竹内 洋 佐藤 卓己 植村 和秀 福間 良明 井上 義和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1920〜30年代におけるアカデミズムとジャーナリズムを中心とする「知識人的公共圏」について、2ヶ月に1度のペースで研究会を開催し、それぞれのテーマについて報告した。そのなかで各自の研究成果の土台をつくると同時に、共同研究としての共通の方向性と知見を集約していった。その成果は『日本主義的教養の時代』(柏書房2006年)として刊行している。また、本研究グループと京都大学社会学環との共同開催による公開シンポジウム、および各自の研究論文、著書として発表している。シンポジウム、各自の著書は以下の通りである*公開シンポジウム「大学批判の古層-『日本主義的教養の時代』から」(平成17年6月21日京都大学時計台記念館)竹内洋『大学という病-東大紛擾と教授群像』中公文庫2007年佐藤卓己『テレビ的教養-一億総博知化への系譜』NTT出版2008年稲垣恭子『女学校と女学生』中公新書2007年佐藤八寿子『ミッション・スクール』中公新書2006年福間良明『殉国と反逆-「特攻」の語りの戦後吏』青弓社2007年植村和秀『「日本」への問いをめぐる闘争-京都学派と原理日本社』柏書房2007年石田あゆう『ミッチーブーム』文春新書2006年井上義和他(解題)『日本主義的学生思想運動資料集成I雑誌篇(全9巻)』柏書房2007
著者
松柳 研一 MICHEL NIcolas Lucien Jean MICHEL Nicolas Lucien Jean
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

ヒルベルト空間を複素エネルギー面に拡張し、共鳴状態をGamow基底を用いて記述するGamow-HFB理論の定式化、その数値計算プログラムの開発、典型的な現象への適用を行った.中性子ドリップ線近傍のNi84-Ni90に対する適用では、通常の予想と異なり、ドリップ線に近づく従って対相関が増大するという大変興味深い結果を得ている。これは弱束縛状態、共鳴状態おとび散乱状態にたたがる中性子ペアーのコヒーレントな運動の結果であり、ドリップ線近傍の不安定核でユニークな特徴をもった対相関が生じることを示唆している。更に、散乱の境界条件を厳密に考慮して解いたGamow-HFB理論による結果とBox境界条件のより連続状態を離散化してHFB方程式を解いた結果とを比較し、両者が非常に良く一致することも示した。これは実座標空間を格子に切りBox境界条件の下で連続状態を離散化してHFB方程式を解くアプローチを正当化するものである。この研究の過程でHFB方程式の新しい有用な解法を見つけた。これはPoschl-Teller-Ginocchio(PTG)ポテンシャルと呼ばれる固有関数を解析的に求めることのできる基底を用いてHFB準粒子波動関数を展開する方法である。この方法は変形ポテンシャルへの拡張も容易なので、変形した弱束縛原子核に対する非常に有用な方法になると期待される。Gamow-HFB理論のもう一つの魅力は準粒子の逃散幅も計算できることである。ドリップ近傍の不安定核では低いエネルギーの準粒子状態でも連続エネルギー状態となる.したがって、これらの準粒子励起のコヒーレントな重ね合わせによって形成される低い集団励起状態も連続状態になり逃散幅をもつ。今年度開発したGamow-HFB平均場基底を用いて、ドリップする限界に近い不安定核に特有なソフト集団モードが出現する可能性をself-cinsistent準粒子RPA計算のよって計算する準備を進めている。
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男 亀田 弘行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、時間帯ごとの総数死者数および負傷者数の時間変化については、NHKの生活活動調査結果による在宅率などを用い、かつ阪神・淡路大震災のデータを適用して、6つの原因によるものを推定した。その結果、各原因別に時間帯ごとのピークが見出せたほか、被害者総数としては、午前8時前後に最大のピークがあるほか、昼食時や夕方のラッシュアワー時にも大きくなることが見出され、また、兵庫県南部地震が起こった午前5時46分は決して幸運な時間帯でないことが明らかとなった。ついで、被害極限の方法については、間接被害に大きく分けて経済被害と人的被害があり、後者は人命の社会的価値の喪失として位置付けられることを示し、総被害学の評価方法を提案することができた。まず、経済被害としては、阪神・淡路大震災による兵庫県の電力使用料とGRPとの関係から、およそ2兆円と推定され、現象的には復興がすでに終わっていることを示した。また、人的被害の定量化では、平均寿命とGRPとの相関と交通事故による死者、重傷者、軽傷者への保険金支払いなどのコストの比較を用いて、阪神・淡路大震災を解析したところ、およそ2兆円になり、かつこの瞬間的な影響が18年間継続し、その間の総被害額がおよそ10兆円に達することを見出した。したがって、人的被害を軽減することが総被害額を大きく減らすことにつながるという論理が証明され、被害極限には自主防災組織による人命救助の役割が大きいことを見出した。これらのデータをGISに載せ解析することを可能としたが、これまでの町丁目単位ではなく各家屋単位での計算が可能なように次世代GISを開発することを試み、その構築に成功した。これによって、被害者数などを推定しようとすれば、現状の地震動による地盤のゆれの特性(加速度や速度)の評価がまだまだ改良の余地があることを見出した。
著者
荒牧 英治
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

近年,電子カルテやインターネットに接続可能な健康器具により大量の医療データが利用可能になりつつあり,これらを活用することで,過去例を見ない大規模な統計的研究や,大規模データに基づいた医療支援システムを実現可能であるとして大きな期待がよせられています. しかし,現状では,電子化された言語データを処理する枠組みがないため,データは活用されるどころか,情報過多を起こし現場の医療者の負担をさらに増しているケースさえあります.以上の背景のもと,本プロジェクトでは, カルテ文章に記述される疾患表現の表記ゆれを吸収する技術を開発します.
著者
木津 祐子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、中国の規範言語とみなされてきた「官話」が、中国とその周縁地域においていかなる位相を呈していたかを、琉球を手がかりに明らかにしようとするものである。研究は以下の点から実施した。(1)明清期の琉球で、誰が「官話」を用いたか、(2)各使用者がどのように「官話」を用いたか、(3)その「官話」位相にどのような特徴が見えるか。基礎となる史料は、沖縄県立博物館、県立図書館、さらに石垣市立八重山博物館などで収集し、次の成果をあげることが出来た。(a)八重山士族の家譜は、官話による記事を多く含む。その多くは、中国人及び琉球人の黄海での漂流を、極めて特徴ある文体で綴ったものであった。その中でも最大の収穫は、中国江蘇省通州の商人姚恆順の陳述書を付す家譜の発見で、乾隆年間の官話学習とその使用を探る大きな手がかりとなった。(b)沖縄県立図書館には、官話で記されたイギリス聖公会の宣教師ベッテルハイムと琉球の通事(中国語通訳)間の書簡が所蔵され、官話や日本語などの語学学習について論じた内容も含まれる。(c)琉球から中国に漂着した難民の呈文(沖縄県立博物館や八重山博物館、また琉球大学の所蔵)には、中国の役人(通事を介す)との訊問の会話記録など、興味深い記事が見られた。これらの「官話」に関する諸史料は、中国東南海域に位置する琉球列島に、「官話」が境界を超えて広く受容され、かつ多様な受容形態を見せていたことを示す。まさに境界を超える「境界性中国語」(vehicle language)として、「官話」は単に規範言語であっただけではなく、口頭また書記の場でも、現実的なコミュニケーションツールであったことが見て取れる。このように、八重山という琉球のさらなる周縁での事例から、「官話」の境界言語としての一側面を明らかにすることができた。