著者
大隈 貞嗣
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2005-03-23

新制・課程博士
著者
有賀 哲也
出版者
京都大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は、固体表面上における「表面電位」の空間分布を、原子レベルの空間分解能で明らかにすることを目的として行った。実験は、申請者が最近開発した超高真空走査トンネル顕微鏡(STM)により行った。このSTMはいくつかの特徴を有するが、その一つは、きわめて低雑音(システム雑音〜1pA)なことである。トンネル電流一定(即ち、探針-試料間距離一定)の条件のもとで、探針を駆動するピエゾ素子の電圧に微小な変調を与え、ロックインアンプによる位相検波を行うことにより、d1nJ/dzすわち障壁高さを測定した。この方法の特徴は、常に探針-試料間隙が一定に保たれるため、熱ドリフトなどさまざまな実験的ゆらぎ要因の影響を無視できることである。また、トポグラフィ像と障壁高さ像を完全に同時に測定した。試料としては、超高真空下で清浄化したPd(100)表面を用いた。ステップ付近において大きなコントラストが観察された。コントラストは、探針-試料距離に依存することが判った。探針が十分遠くにあるときは、Smoluchovsky効果から予測される表面電位像が観察された。逆に探針が表面に近づくと、コントラストが反転した。これはトポグラフィカルな効果によるものであると結論した。
著者
佐藤 文隆 山田 良透
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

我々は、超新星エジェクタの中での物質混合の数値シミュレ-ションを軸対称及び三次元で行ってきた。この現象は細かい構造の形成が現象の定性的性質にも影響し、解像度の高い計算が要求される。従って、メッシュ数の少ない三次元計算よりも軸対称を仮定したメッシュ数の多い計算の方が信頼性の高い結果が得られている。本年度は軸対称計算のより多くの異なった初期揺らぎによる計算を行い、物質混合の程度の初期揺らぎによる依存性をしらべた。その結果からエジェクタ中で起こるの物質混合の程度についての定量的な評価を数値結果から解析的に得ることに成功した。エジェクタ中に大規模な物質混合が起こるかは密度分布に急激なとびがあることが本質的である。しかし、次の点で初期揺らぎの存在する位置が重要である。超新星のprogenitorモデルには二つの密度ギャップがあるが、内側の密度ギャップに初期揺らぎが存在しても外側の密度ギャップにブラストショックが衝突したときに発生するリバ-スショックが内側の揺らぎを抑えてしまう。これはRichtmeyerーMeshkov不安定性として知られている不安定性が逆に働いているとして定量的に説明可能である。従って、外側の密度ギャップに初期揺らぎが存在することが、観測されているエジェクタ中での大規模な物質混合を引き起こすために本質的であることが明らかにされた。
著者
佐藤 喬章
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

アーキアにおけるmyo-inositol kinaseの生理学的役割の解明を目的とし研究を進めた。まず、本酵素がinositolの6つのヒドロキシル基の内3位をリン酸化し、生成物がinositol 3-phosphateであることを同定した。また、本遺伝子の発現量が上昇する培養条件を同定した。さらに、超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisにおいてinositol kinase遺伝子の破壊株を作製・解析し、その増殖特性解析やメタボローム解析を行った。
著者
中島 裕美子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

既存の鉄(I)錯体である[FeBr(BPEP)](1)を用いて、新規の配位不飽和鉄(I)錯体[FeMes(BPEP)](3)の合成に成功した。錯体1とジアゾメタンRCHN2(R=Ph, Me3Si)との反応は室温で瞬時に進行し、ジアゾメタンのN-N結合切断を経て鉄(I)ニトリル錯体[FeBr(RCN)(BPEP)]および鉄(I)イミン錯体[FeBr(RCHNH)(BPEP)]が得られた。一方、錯体2とMe3SiCHN2との反応では、1, 2-トリメチルシリルエテンの生成が確認された。
著者
赤松 明彦
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2005-03

平成14-16年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書 課題番号:14510025 研究代表者:赤松明彦 (京都大学大学院文学研究科 教授)
著者
服部 正明
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.224_a-101_a, 1982-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
高梨 克也 坊農 真弓 原田 なをみ 高梨 克也 堀内 靖雄 片桐 恭弘 神田 和幸 細馬 宏通 原田 なをみ 堀内 靖雄 神田 和幸 細馬 宏通 坊農 真弓 城 綾実
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

対面コミュニケーションの基本的単位である「発話」の構造について, 実際に収録されたデータを用いて分析した. 「発話」は言語だけでなく, ジェスチャーや視線などの非言語表現も含んだマルチモーダルな複合体である. そのため, 本研究では, 聴覚モダリティを用いる音声言語と視覚モダリティによる手話を比較し, 各モダリティの特徴を解明した. また, 言語の文法構造がコミュニケーションのやり取りを形成する際にどのように利用されるかを解明した.
著者
川尻 洋平
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

今年度前半は、イタリア、ローマ大学のTorella教授の指導の下、研究を進めた。ローマ大学では、ウトパラデーヴァやアビナヴァグプタと同時代のヴィシュヌ教徒ヴァーマナダッタの『サンヴィットプラカーシャ』の授業に参加した他、学生たちとアビナヴァグプタの『パラマールタサーラ』を読む機会を得た。アビナヴァグプタ著『主宰神の再認識に関する反省的考察』認識章第五日課および第六日課の読解は終えたが、未出版注釈『主宰神の再認識に関する反省的考察注』については、写本の欠落等により、写本校訂および読解困難な箇所が残っている。また、部分的に現存するウトパラデーヴァ著『主宰神の再認識詳注』の断片を写本のマージンから回収している。これらの難読箇所の読解については、Acharya教授の協力を仰いだ。『主宰神の再認識詳注』の断片については帰国後、西日本インド学仏教学会学術大会およびJapan-Austria International Symposium on Transmission and Tradidonにおいて発表した。さらにウトパラデーヴァとアビナヴァグプタの関係についての発表をインド思想史学会で行った。これらの発表内容については、プロシーディングおよびJoumal of Indological Studiesに投稿予定である。またシヴァ教研究の世界的権威であるSanderson教授の授業にも参加する機会を得て、最先端のシヴァ教研究について新しい知見を得るとともに、『パラートリーシカー』の写本伝承などの情報を交換することが出来た。
著者
川本 徹
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究はジョン・フォードの監督作品を中心に、新旧のアメリカ映画を題材として20世紀のアメリカ文化社会のジェンダー表象を多面的、複合的に分析するものである。最終年度となる本年度は、昨年度までの研究成果を整理したうえで、それをより広範な問題領域に結び付けるための実験的、応用的考察をおこなった。前年度にひときわ重要なテーマとして再発見され、本研究の主要な考察課題として再規定されたのが、自然風景、ナショナリズム、ジェンダーという三項の複雑な相関関係である。本年度はここにテクノロジーの一項を付け加え、アメリカのジャンル映画の内部にこの四項の精妙なせめぎ合いが潜んでいることを、フォードの監督作品をはじめとする具体的なテクスト分析によって浮き彫りにした。またその過程においては、考察対象の選択範囲も20世紀中葉を中心としたものから、20世紀全体、さらには21世紀を射程に入れたものへと大幅に拡大した。より具体的な研究内容は以下の二点にまとめられる。1.ジョン・フォードのモニュメント・バレー表象(その内実については昨年度、『映画研究』掲載論文のなかで詳述した)を念頭に置きつつ、フォード以後のアメリカ映画作家たちのモニュメント・バレー表象(あるはそれに類するアメリカ西部の荒野表象)を比較考察した。2.以上の研究を遂行するなかで、アメリカ映画における自然とテクノロジーの関係を、後者にも力点を置いて考察する必要性が生じた。そこでフォードの監督作品を手がかりに、従前より多くの文化学者の関心を引きながらも、いまだ体系的な分析がなされてこなかった西部劇における列車の表象を、映画史初期から21世紀まで幅広く概観した。研究成果の一部はすでに公表が決定しているが、残りの部分についても早期に公表できるよう鋭意準備を進めている。
著者
北川 亘太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

ドイツの労働協約システムの再編過程を、①協約自治に対する政治的支援(干渉)の度合をめぐる対立 ②将来の分配と交渉力を左右しうる手続をめぐる対立 に注目ながら調査し、研究発表と論文公表を行った。本研究の意義は、様々な利害集団の交渉力の公平性を確保するうえで適正な交渉枠組み及び政治的支援の在り方とは何かについて、ドイツにおける社会的回答を明らかにする点である。具体的な調査項目と成果は以下の2点である。(1) 労働協約システムのアウトサイダーである派遣労働者の増加に対処する金属産業労組 金属産業労組による、派遣労働者の待遇改善の取組みに焦点を当てながら、伝統的に正規労働者志向の戦略を採用してきた当該組合が2000年代規制緩和後の労働環境に見合うアイデンティティーを再構築しようと試みてきたことを明らかにした。くわえて、当該組合が、企業が派遣労働を活用するというこの労働環境を所与としたうえで、雇用形態が多様化する中で求心力を高めようと試み、一定の成果を挙げたことを明らかにした。この研究を、『大原社会問題研究所雑誌』に査読論文として公開した。(2) 一般法定最低賃金導入までの論争 2013年連立協定において導入が決定した一般法定最低賃金をめぐる、過去20年間の社会運動と政策論争を概観した。論争での焦点は、①協約自治に対する政治的介入の度合 ②最低賃金の導入が雇用に与える影響 であった。本研究は、①について、政治的妥協の結果、代表的な2つの案の中間に帰結したこと、②について、経済研究機関の研究蓄積の結果、諸々の利害集団の見解が、雇用に対する大きな悪影響は考えにくいという認識に収斂したことを明らかにした。この研究を、Kyoto Economic Riviewに英文査読論文として公開した。
著者
里村 雄彦 松本 淳 森 修一 勝俣 昌己 荻野 慎也 横井 覚
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

多数のレーダーのエコー合成図を作成し、インドシナ半島上の台風の全体像を捕らえることができた。長寿命台風では半島上に降水に好都合な気象状況となっていることも示すことができた。数値実験では台風の中心位置が観測と良く一致する結果を得ることができた上、レーダーデータと共に上陸後の衰退期の台風構造を捕らえることにも成功した。また、半島東海岸中部では秋季に特に台風による降雨が多くなることやENSOの影響を強く受けていることも明らかにした。
著者
竹見 哲也
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

「台風はどこまで強くなり、想定される風水害はどの程度の規模なのか?」この問いに対して、様々な大気・海面水温の条件において発達する顕著な強度の台風を気象モデルによる数値シミュレーションにより再現し、顕著台風により想定される風水害を評価することを目的とした。実事例の再現シミュレーションとともに、仮に経路がずれた場合にどのような風水害が生じうるのかという観点から、台風の経路を操作したシミュレーションも実施した。関東地方・中部地方・近畿地方において過去に顕著な災害をもたらした事例、さらには2013年11月にフィリピンで大災害をもたらした事例を対象として台風による風水害のハザードを評価した。
著者
坂野 登
出版者
京都大学
雑誌
京都大学教育学部紀要 (ISSN:04547764)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.115-134, 1989
被引用文献数
1
著者
坂野 登
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

・研究1では、左右の前頭葉機能の個人差を測定する目的で開発された「順序性の記憶」に関する神経心理学的パフォ-マンス・テストバッテリ-を、ブックレット方式とカ-ド式によるテストとして作成し両者の比較を行った。課題は線画の中にひらがなが埋め込まれている、かくし図形の系列の記憶テストである。ブックレット方式によって十分にその目的を達成できることが明らかになったので、集団実験と個別実験結果を合わせてテストの妥当性を検討した。前頭葉機能の個人差と関係すると考えられる腕組みを指標にしたところ、腕組みで右腕が上の左前頭葉優位のタイプは文字の順序性の成績、左腕が上の右前頭葉優位のタイプは絵の順序性の成績と関係し、いずれのタイプでも分析性・抽象性の低い認知スタイルの被験者の成績がよいことが明らかになった。・研究2では、研究1と同一のテストの回答方式を空間認知テストに変更しその変化を見たが、その結果腕組みではなく、知覚・認知的機能の個人差と関係していると考えられる指組みによって、文字と絵認知の速さの個人内変動を弁別できた。すなわち、左半球での知覚・認知的機能と関係する右指上のタイプでは文字認知の変動が相対的に大きく、逆に右半球優位の左指上のタイプでは絵認知の変動が相対的に大きかった。・研究3では、様々な神経心理学的テストを遂行時の脳波パタ-ンの因子分析的研究を行い、左半球課題と右半球課題および個人差を分離することができた。・研究4では、研究1で用いた順序性の記憶テストを研究3の課題に追加して分析し、半球優位性と個人差について検討したところ、全般的には左半球優位的な課題ではあるが、しかし個人によってはそれが右半球優位の課題として用いられているという個人差を見いだすことができた。
著者
小森 悟 黒瀬 良一 高垣 直尚
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

風波水槽に界面活性剤を微量に混和させた溶液を満たし,その水面上に風を吹かせることにより,水面波の測定実験を行った.その結果,界面活性剤の影響は低風速域において特に顕著で,風波の発生を完全に抑制すること,また,砕波が生じる高風速域において界面活性剤は砕波を促進することが確認された.さらに,直接数値計算法を用いることにより,表面張力の低下は風波の波高を増加させること,このため界面活性剤による風波の抑制作用は表面張力の低下によるものではないことを明らかにした.また,粘性の変化も確認できなかったため,このような抑制作用は,マランゴニ効果によって引き起こされていると考えられる.
著者
牛首 文隆 成宮 周 吉田 進昭 平田 雅一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

8種類のプロスタノイド受容体遺伝子のエクソン内にネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだターゲティング・ベクターをそれぞれ129ola由来胚性幹細胞(ES細胞)に導入し、相同細換えを起こした。C57BL/6マウスの胚にES細胞を注入後、擬妊娠したICRマウスの子宮に戻してキメラマウスを作出した。キメラマウスをC57BL/6マウスと交配し、F1マウスを得た。組換えalleleをもつF1ヘテロ接合体同士を交配し、F2ホモ接合体を得た。結果、8種類の各プロスタノイド受容体欠損マウスが得られた。また、遺伝的背景を均一にする目的で、各プロスタノイド受容体欠損マウスをC57BL/6マウスに繰り返し交配する戻し交配を行った。現在、一部のプロスタノイド受容体欠場マウスで房し交配が完了し、他のものは継続中である。また、balb/cやDBA1マウスなどへの戻し交配も予定している。IP欠損マウスの解析により、PGI_2は心血管系での抗血栓作用以外に炎症反応の場での血管透過性の亢進や疼痛の伝達等非常に重要な役割を持つことが示された。FP欠損マウスの解析では、分娩時にPGF_<2α>がまず黄体退縮を引き起こし、これが血中プロゲステロン濃度を低下させ、続いて子宮でのオキシトシン受容体の発現を誘導するという一連の機構が解明された。EP4受容体欠場マウスの解析により、PGE_2はEP4受容体を介して出生直後の動脈管の閉鎖に重安な役割を果たすことが示された。以上、本研究によりプロスタノイド受容体欠損マウスの作成がなされ、その解析を通してプロスタノイドの重要な生理・病態生理的役割の一端が解明された。今後、これらの結果が各プロスタノイドの示す多彩な作用を選択的に制御する薬物の開発とその適用の指標に資することが期待される。
著者
東長 靖 濱田 正美 竹下 政孝 林 佳世子 三沢 伸生 仁子 寿晴
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、これまでほとんど研究されてこなかったオスマン朝期イスラーム思想を解明することを目指した。3年間にわたる共同研究により、スーフィズム、神学、論理学、歴史学、政治思想、近代思想の各分野を概説する書籍を編集し、刊行した。『オスマン朝思想文化研究』と題された本書は、上記各学問分野の概観と代表的思想家の説明に加え、その著作を対訳の形で含んでいる。ほかに、オスマン朝期イスラーム思想にとって中核となるスーフィズムについて、イブン・アラビー学派の文献目録、スーフィズム関連用語集などを作成・刊行した。