著者
山田 忠史 中村 昂雅 横山 大河 谷口 栄一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.272-284, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
45

本研究は,均衡制約付き数理計画問題の枠組みで,サプライチェーンネットワーク(SCN)と交通ネットワーク(TN)を統合したスーパーネットワークを対象に,TN上の離散設計変数の値を最適化するモデルを提案する.このモデルの上位レベルは,TN上のリンクの組み合わせ最適化問題に相当する.一方,下位レベルには,サプライチェーンとマルチモーダル交通のスーパーネットワーク均衡モデルを採用し,スーパーネットワーク上の各主体,すなわち,製造業者,卸売業者,小売業者,消費市場,物流業者,旅客の行動が記述される.このモデルを用いて,TN上のリンクの新設・改良によるSCNの効率性向上(TNの最適設計),および,リンクの途絶によるSCNの余剰低下(TNの脆弱性評価)について,基礎的検討を行う.
著者
矢吹 信喜 塚本 祥太 中山 一希 福田 知弘 道川 隆士
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_26-I_33, 2014 (Released:2015-04-08)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

近年,ビルや家庭に大量のセンサが環境中に設置されるようになりつつある.大量のセンサにより得られたデータを有効活用する手段としてデータマイニングがある.センサデータを用いたデータマイニングにおいては,センサデータ単体からのデータマイニングでは有用な知識の発見は難しく,センサの周辺情報などのコンテクスト情報を加味したデータマイニング手法が有効である.本研究では,コンテクストを活用し大量のデータから有用な知識を発見するためにコンテクストを用いたデータマイニング手法を開発し,さらにビルの省エネルギーに関する知識モデルを開発し,コンテクストを表現するオブジェクトモデルと知識を表現する知識モデルをそれぞれセンサデータモデルと統合した.さらに,統合化したモデルを用いてプロダクションシステムを作成し,建物の省エネルギーに関する知識データを作成した.さらに大阪大学において検証実験を行った.観測データ及び知識データは統合データモデルに従って保存し,データを用いて開発したシステムの検証を行った結果,データの知的処理を実行し,適切な知識が発見できることを確認した.
著者
柳川 篤志 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.I_351-I_368, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
37

現在わが国の人口は東京へ一極集中しており,世界の先進諸国と比較しても東京への集中度合いは非常に高い.人口の一極集中には地方の衰退,首都における災害等への脆弱性という弊害が存在しており,東京一極集中は是正されるべきであると考えられる.一極集中の是正へ向けてはその要因を検証していくことがまずもって必要である.国内外の既往研究においては,一極集中の要因を巡る研究がなされてきたが,定量的な分析に基づく実証研究は十分になされていない.そこで本研究では,鉄道整備が人口の一極集中に与える影響を明らかにすることを目的とし,国内外のデータを利用し実証的な分析を行った.その結果,鉄道インフラの偏在が人口移動に影響をもたらし,鉄道整備の東京圏への一極集中が,人口の東京圏への 一極集中をもたらす可能性が示唆された.
著者
殿山 俊吾 中村 恭志 井上 徹教
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_919-I_924, 2020 (Released:2021-11-30)
参考文献数
13

堰状構造物が水路底面上の人体の流下を阻止する過程とその際の条件について数値解析を基に検討した.流動とそれによる人体の姿勢変化を連立した人体−流動連成数値モデルを使用し,全幅堰を持つ平坦直線水路について異なる水深,流速,堰高を想定した複数の解析を実施した.人体が堰を越えて下流へ流下する形態には,水中に上昇し堰を越える浮遊形態と,堰に衝突した後に堰を越える転動形態の2種類があった.浮遊形態は堰高に関わらず凡そ1m/s以上の流速で生じ,流れによる抗力が人体の水中重量を超えると生じた.転動形態は比較的遅い流速0.5m/s以上で生じたが,腕や脚など体の一部が主流域に引き出されることが必要で,堰高が凡そ70cmより高く堰前面の渦に人体の全てが含まれる場合には同形態で堰を越えることは無かった.
著者
中澤 菜穂子 神山 千穂 齊藤 修 大黒 俊哉 武内 和彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.II_141-II_150, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
43
被引用文献数
3 4

天然のキノコ・山菜は特用林産物として古くから利用され,その採取活動は様々な生態系サービスと関係している.これらの林産物は市場を介さない自家消費が多く,これまで定量的な価値評価はあまり行われてこなかった.本研究は,石川県七尾市の釶打地区を対象地に聞き取り調査を実施し,採取活動の実態を定量的に明らかにすることで,それらの経済的,文化的価値の評価を試みた.市場価格から金銭換算した結果,天然のキノコ・山菜による供給サービスは比較的高い経済的価値を有していることがわかった.また,文化的サービスの観点からは,採取活動は,その贈答や食文化の継承を通して,地区内外の交流を深めるという社会的意義を担っていること,採取行動と加工処理の過程においても,経験や技術に裏付けられた文化的な価値を有することが示された.
著者
青木 伸一 水野 亮 岡本 光雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1036-1040, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
4
被引用文献数
3 5

夏期に底層で貧酸素化が著しく進行する猪鼻湖において, 長期間の継続的な観測に加えて, 自動昇降装置を用いて水温, 塩分, DOの鉛直分布の連続観測を行った. 期間中台風の来襲があり, 強風による密度成層の破壊と淡水流入による成層の再形成が交互に生じ, これに伴って底層の貧酸素水塊にも解消・再形成の過程が観測された. 本論文では, この変化過程を示し湖水の貧酸素水塊の消長と密度構造の変化の関係について論じている. 急激な鉛直混合と底層での速い酸素消費により貧酸素水塊がダイナミックに変動していることが示されている.
著者
猪熊 明 志村 満 小泉 力
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.119-125, 2014 (Released:2014-12-19)
参考文献数
7

日本を代表する企業である「トヨタ」の生産方式は,その生産性の高さから日本や海外の多くの企業で研究され導入されてきた.さらに海外では,この生産方式を「建設工事」に応用しており,「Lean Con-struction(LC)」と呼ばれ多くの現場で導入されている.しかし,この方式は日本の建設現場では普及せず,今日に至っても特段の実績を残していない. 本研究は,LCへの理解を進めるために,現在のトヨタ生産方式を踏まえた新しいLCの定義を提案した.またLCの普及の可能性を探るために,LCと認識せず土木分野に適用されている例などを調べ,LCの適用しやすい工種・条件などについて考察を加えた.
著者
岡本 健太郎 山本 潤 福田 光男 林田 健志 峰 寛明 大橋 正臣 田畑 真一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_388-I_393, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
6

著者らは,廃棄物を利用することで“ホタテ貝殻の人工礁”を開発した。貝殻礁は,貝殻の空隙に有機堆積物の捕食生物のための生息空間を作り,港内の有機汚染物質を除去するのに有効である.小型試験礁を用いて試した結果,設置後3年が経過しても浄化効果が持続することが確認された.そして,その過程は生態系モデルによって再現された.より大きな効果を得るため,大型ホタテ貝殻礁の設置を行った.蝟集生物量は減少していくが,それは貝殻礁中心部の海水交換不足のためと考えられた.そこで,通水孔を設けた“実用的ホタテ貝殻礁”を開発した.その結果,生物は中心部に集まり,その効果は証明された.
著者
福澤 樹 魚地 眞道 伊藤 壱記 桃谷 尚嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
インフラメンテナンス実践研究論文集 (ISSN:2436777X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.213-217, 2022 (Released:2022-03-14)
参考文献数
3

TC型省力化軌道は,まくらぎ下のバラストをセメント系てん充材で固定化した軌道構造であり,つき固め等の補修作業を必要としないことを目的に開発され,敷設が進められている.その多くが良好な軌道状態を保っているが,一部の箇所では軟弱な路盤上に敷設されており,高低変位(レール上下方向の変位)の進みが大きく,保守に苦慮している.そこで,てん充層下の路盤改良を目的とした,あとてん充工法を営業線で施工し,施工性および営業線条件下での基本性能について確認した.
著者
石原 佳奈 楊 曜華 長山 智則 中村 俊敬 蘇 迪
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.68A, pp.275-288, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
24

Rapid structural evaluation of bridges after earthquakes is imperative to recover quickly. While structural displacement is an essential indicator, direct measurement is difficult. Indirect estimation of displacement by numerical integration of measurement acceleration is inaccurate due to integration errors. In this research, estimation of displacement by only using acceleration measurements is proposed. Extended Kalman filter (EKF) assuming a simple non-linear hysteretic behavior and a genetic algorithm to identify parameters of the non-linearity are combined to achieve the displacement estimation. The displacement estimation capability of the proposed method is confirmed with simple models and a nonlinear RC pier model simulating an E-defense shaking table specimen.
著者
富山 恵介 田中 周平 森岡 たまき 小浜 暁子 李 文驕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.23-00028, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
10

近年,環境中のマイクロプラスチックファイバー(以下,MPFs)の存在が明らかになり,要因の一つに衣類の洗濯による排出が指摘されている.本研究では,洗濯による生地設計別のMPFsの排出特性を把握することを主目的とした.糸(長繊維・短繊維),編立(プレーン・メッシュ),加工(柔軟剤無し・柔軟剤有り)で設計を分けたポリエステル生地を8タイプ開発し,ドラム型洗濯機の標準コースで洗濯後,目開き10μmのプランクトンネットでMPFsを捕集した.目的変数をMPFs重量とした3元配置分散分析では,糸の寄与率74.5%,加工の寄与率18.7%となり排出量の主要因であることが示された.糸の長繊維は短繊維に対し中央値で42~45%小さく,加工の柔軟剤無しは柔軟剤有りに対し中央値で22~25%小さい結果となった.
著者
根本 拓哉 吉田 翔悟 千明 大樹 古木 宏和 小島 尚人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00273, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
15

本研究では,ハイパースペクトルデータ(HSデータ)の画像特徴強調・判読支援を目的として,繰り返しコントラストストレッチを取り入れた画像特徴強調カラー合成動画作成アルゴリズム(CCMアルゴリズム)を提案した.このアルゴリズムは,以下の4つのステップから成る.1) HSデータに対する主成分分析を通して,第1~第3主成分画像を作成.2) 主成分画像別に繰り返しコントラストストレッチを実施し,複数のストレッチ画像(s-PCC画像)を作成.3) 相関色温度により,s-PCC画像のRGBプレーンへの割り当てを決定.4) s-PCCカラー画像を繰り返し連続表示したCCM動画を作成.CCM動画を用いれば,コントラストストレッチの全過程を可視化・自動化でき,各種画像特徴の動的強調・判読支援に寄与できることを示した.
著者
寺井 康文 渡邊 法美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00178, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
21

多くの土木事業の基礎条件となる地質は,その不確実性のため重大なコスト損失をもたらすリスク因子である.事業に関わる担当者が地質リスクや事業を“我がこと”とする役割認識がリスクマネジメントにおいて重要とされるが,これまで役割認識の効果を明らかにした研究はない.本研究では,道路事業における地質調査~設計の過程で,事業者,地質技術者,設計者がどのような役割認識を有し,どのような妥当性でリスクの特定や評価が行われるかを整理した.その結果から事業コストの期待値を求めたところ,地質リスクを“我がこと”と認識する担当者と“他人ごと”と認識する担当者では10%以上の事業コストの差が生じるとともに,事業において地質リスクが存在しないケースは少数であることが示唆された.
著者
新谷 歳三 馬場 美智子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00163, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
10

災害時の基礎自治体への主な人的支援スキームは,「被災市区町村応援職員確保システム」として制度化された.加えて基礎自治体は,他の自治体間との応援協定の締結を進めているが,それらが災害時にどのように機能するかが十分に検討されているとは言えず,基礎自治体の受援計画が機能しない可能性が指摘されている.そこで本研究では,応援職員派遣と倉敷市の受援対応の状況を客観的に把握するために,平成30年7月豪雨で倉敷市が受け入れた応援職員やその支援業務の実態を分析し,(1) 人的支援スキーム毎に受援プロセスや特性が異なることを踏まえた運用,(2) 応援協定による事前の応援内容の協議,(3) 担当部署のマネジメント機能の確保が,基礎自治体の受援の観点から見た人的支援スキームに求められる要件と受援体制の課題であることを明らかにした.
著者
岩屋 遼 吉田 亮 橋本 忍 森河 由紀弘 太田 敏孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00335, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
16

本研究では,コンニャク石に可撓性や衝撃吸収性能をもたらすインターロッキング構造について,遊間をもち三次元にゆるく連結したブロック集合体として提案した.このブロック集合体は,3Dプリンティングにおける付加製造の特性を生かし,ブロックと遊間を同時に作製することで,組立てを不要とし,いかなる方向にも外れずに可動する単純な幾何モデルであり,可撓性や衝撃吸収性能が確認された.また,直接基礎として用いた振動試験においても,一体型のブロックに比べて,加速度を1/3程度まで低減する免振効果が確認できた.そして,このブロック集合体をコンクリートの打設によって製造するための施工方法についても考案した.
著者
伊藤 壱記 桃谷 尚嗣 景山 隆弘 中村 貴久 川中島 寛幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00265, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
18

整備新幹線におけるスラブ軌道用の土構造物は,列車速度 260km/h を前提とした設計が行われているが,将来的には整備新幹線の区間においても営業速度を向上させる可能性がある.スラブ軌道は列車荷重により沈下が生じると補修するのが容易ではないため,スラブ軌道を支持する土構造物の設計においては大きな沈下を生じさせないことが重要である.そこで,本研究では累積損傷度理論により,列車速度の影響を考慮して盛土の塑性沈下量を求める手法を提案することとした.はじめに,列車速度による盛土の動的応答の違いを有限要素解析で求め,その結果を考慮した載荷条件で実物大繰返し載荷試験を実施し,累積損傷度理論で求めた塑性沈下量の推定手法の妥当性を検証した.その上で累積損傷度理論を用いて列車速度を考慮した盛土の塑性沈下量を試算した.
著者
俵 道和 田中舘 悠登 本間 一也 呉 承寧
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00213, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
21

早強ポルトランドセメントおよび高炉スラグ微粉末を用いたペーストにCaO·2Al2O3を混和することによってセメント水和物である水酸化カルシウムが反応してハイドロカルマイト族の水和物を生成し,外部から浸透した塩化物イオンを化学的に固定化する効果と,細孔空隙率を小さくする物理的な浸透抑制効果が確認された.これによってペーストの塩化物イオンの見かけの拡散係数が大幅に低減された.この効果について初期養生温度が60℃の場合は低くなる傾向を示したが,中性化を受けた場合はほとんど変わらなかった.
著者
西山 哲 大西 有三 矢野 隆夫 高橋 学 吉村 公孝 安藤 賢一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.288-298, 2011 (Released:2011-06-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

弾性波の伝播速度および減衰の周波数依存性を利用して,地盤の透水特性あるいは間隙流体の特性を調査する手法が検討されている.Biot理論によって分散現象は説明できるが,地盤条件によって観測される分散現象がどの程度相違するのか,あるいは地盤の透水特性がどの程度分散現象に反映されるのかが明確にされていないという問題がある.本研究では岩石供試体を用いた室内実験の結果に基づき,堆積岩と花崗岩で観測される縦波の分散現象の違いとBiot理論の適用性を考察し,さらに分散現象から透水特性を推定することの可能性を検討することにより,分散現象を利用して地盤の透水特性を計測する手法の妥当性を,Squirt flowという局所的な間隙流体の挙動を考慮するBISQ理論の適用性と共に示した.
著者
岩本 一将
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00311, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

日本の近代港湾史における先駆的な事例である三国港突堤は,設計者であるEscherの図面が未発見であったことから,設計内容に関する詳細は不明だとされてきた.本稿では,Escherの設計図面を発見し,彼の設計を引き継いで事業を実施したDe Rijkeと古市公威の図面を含めた複数の一次史料を分析することで,設計内容の変遷および建設経緯の詳細を明らかにした.EscherとDe Rijkeによって設計・施工が先導された三国港突堤の建設事業は,明治13年の開港式時点で導流堤として十分に機能していた一方で,防波堤としては十分ではなかった.そのため,大波や暴風による被害を完全に防ぐことはできておらず,古市公威が設計に修正を加えたことで防波堤としての機能が補完され,完成に至っていたことが明らかとなった.