著者
津田 悠人 吉田 郁政 中瀬 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00159, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
18

被害想定には大きな不確定性があり確定的に評価することは困難であるため,確率論的リスク評価が有効である.本研究では,落石対策のリスク評価に基づいた防護工の最適配置の意思決定のための支援手法の提案及びモデル地点の費用便益分析の例を示した.リスクは限界状態超過確率と影響度の積で定義した.実規模斜面落石実験より得られた到達位匿を対象に質点系解析による落石挙動の再現解析を実施し入力パラメタを決定し,落石の道路到達時のエネルギーに基づいた確率論的危険度評価を行った.防護工の初期建設費の総和に対する予算制約を設け,トータルコスト最小化に基づいた最適配置を示した.最後に,費用便益分析を行い,トータルコストが最小となる防護工の最適配置を示すだけではなく,予算制約内でリスク削減量を最大にする対策案を提示した.
著者
木下 尚宜 迫 美乃 福島 邦治 原 幹夫 吉武 勇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00122, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
9

ポストテンション方式PC橋におけるグラウト充填調査手法の一つとして広帯域超音波法(WUT)がしばしば用いられている.本研究ではWUTによるグラウト充填調査の精度向上のため,コンクリート中を伝播する弾性波の基礎的な特性を調べた.探触子から発信される波動の指向性を調べるため,三角柱状の供試体を用いて各種の実験を行った.その結果,指向角が20~45°の範囲では透過波が明瞭に確認されたが,45~90°の範囲では低減することがわかった.また,反射波のスペクトルピークは約60~90kHzであった.WUTによるグラウト充填調査に有意な反射波をとらえるためには,弾性波の基礎的伝播特性を踏まえ,指向角が45°以内となるような探触子間隔とする必要があることがわかった.
著者
藤田 素弘 篠原 将太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00050, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
11

本研究では,人口増加と人口減少が同時に進行している愛知県西部地域の名古屋市 20km 圏内のさまざまな都市において,子育て世代が満足する居住環境要因や必要とされる施策を検討するために,子育て世代を対象としたアンケート調査を行った.集計での満足度と重要度の分析では歩道の安全性が最も強い改善課題として挙げられた.重回帰分析の総合評価モデルからは地域の治安,歩道・公園の安全などが,地域の評判モデルからは街の景観が,転居意向モデルからは学校の教育レベル等の影響が大きいことがわかった.また人口指標や各評価項目の満足度による地域間比較では,社会増加率は満足度の交通利便性の項目と相関が高いが,出生率は自然の豊かさとの相関が高かった.以上のことはこの地域の今後の施策において配慮すべき事項として考えられた.
著者
清原 雄康 風間 基樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00303, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
23

火山灰質土であるしらすからなる野外盛土を2004年に作製してから2021年で18年が経過した.この間降雨時における体積含水率やサクションの変化,草木本類の有無が浸透挙動に及ぼす影響,貯留率や水分特性曲線による保水性の経年変化などを定量的に把握した.盛土表層付近では細粒分が顕著に減少,間隙比が増加し,内部でも植物根の侵入が生じていた.木本類が有る時の方が無い時より体積含水率は低めに推移し,降り始めから体積含水率が最大になるまでや表面流下が生じ始めるまでの所要時間,連続雨量は増加傾向で,葉面貯留の影響が生じた.断続的な降雨では表面流下に至るまでに時間を要した.盛土内部の貯留率は2018年以降で最大60%と2004年の最大80%より約20%低下し,水分特性曲線の履歴も保水性が低下する傾向に変化した.
著者
大場 雄登 松岡 馨 中西 克佳 岩波 基
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00286, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
20

都市部を中心に狭隘地での急速施工が要求される橋脚基礎工事があるが,従来工法では専有面積や工期の観点から実施が難しいのが現状である.そこで,上記に適した立坑構築技術の鋼製セグメント圧入工法を活用し,RC基礎を構築する工法に着目した.しかし,既存の鋼製セグメントは仮設地下壁の部材で,別途内部に本設RC基礎を構築する必要があり,合理化が望まれる構造であった.筆者らは,鋼製セグメントを本設RC基礎の本体構造における帯筋部材として評価する合成構造基礎とし,狭隘地に急速に基礎を構築する合理的な工法を提案した.本研究では,構造の具体化および,従来工法のRC基礎と提案した合成構造基礎の縮尺試験体を用いた正負交番載荷試験を実施し,従来工法のRC基礎と同等以上の耐震性能を合成構造基礎が有することを確認した.
著者
森河 由紀弘 佐藤 智範 前田 健一 篠田 裕重
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00208, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
41

今日まで多くの粘土瓦が使用されてきたが,近い将来には寿命を迎えた大量の廃棄瓦が発生する.また,粘土瓦を製造する際には不良品となる規格外瓦が一定量発生するが,これらの不要粘土瓦の再生原料以外のリサイクルはあまり進んでいない.そこで,本研究では規格外瓦を砕いたリサイクル材料である破砕瓦の構造物の裏込め材や裏埋め材としての適用性について,室内模型試験や実物大の現場試験により検討を行った.破砕瓦は軽量性や摩擦性が高いため,構造物に作用する水平土圧の低減効果を期待できることや,無補強でも高い支持力が期待できること,繊維補強材による支持力補強効果も期待できること,上載荷重の影響範囲は山砂とほぼ同様であることが明らかとなり,破砕瓦は裏込め材や裏埋め材として適用可能であることが分かった.
著者
向井 厚志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00152, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
7

福山港泊地において約2か月間の潮位観測を実施し,潮位変化に及ぼす局地気象学的な影響を調査した.福山港泊地は,瀬戸内海沿岸から内陸部に向けて約8.5km入り込んだ細長い水路である.この泊地では,局地気象学的な影響として,気圧変化に伴う吸い上げ効果の他,泊地奥方向の東風による吹き寄せ効果が観測された.台風接近時のような極端な気象条件の場合,これらの効果によって1mを超える海面上昇が生じる可能性がある.また,泊地では常時,周期42分程度の副振動が現れており,2021年9月の台風接近時には副振動によって約0.4mの海面上昇が生じた.これらのことから,満潮時に台風が接近する際には吸い上げ効果と吹き寄せ効果に加え,副振動による海面上昇が加わることで,平均海水面より潮位が3m以上上昇する可能性がある.
著者
伊藤 佳洋 山田 雅行 岡部 登 野津 厚 長尾 毅 高橋 宏彰 水谷 亮祐
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_401-I_407, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
30

海溝型巨大地震による強震動の波形,スペクトルなどを高精度で再現できる震源モデルとして野津らによりSPGAモデルが開発されている.このモデルで歴史地震の震度データを満足するように震源モデルの作成を行えば,歴史地震の再来を想定した被害予測などに適用することが可能となると考えられる. そこで本研究では,1703年元禄関東地震の実際の震度分布と整合するようなSPGAモデルを作成することを試みた.SPGAの位置,パラメータを,実際の震度と計算結果の震度の相関を見ながら選定した結果,概ね震度分布と整合するSPGAモデルを設定することができた.
著者
相馬 悠人 車谷 麻緒
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00256, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
25

本論文では,既往の研究で著者らが構築した鉄筋コンクリートの破壊シミュレーション手法の妥当性および適用性を検証するため,鉄筋とコンクリート間の付着挙動を対象とし,実験結果と解析結果を比較した.付着性能の異なる丸鋼と異形鉄筋の引抜き試験を実施し,実験結果と解析結果を比較した結果,構成モデルや材料パラメータを変えることなく,鉄筋の幾何形状のモデル化を変えるだけで,それぞれの付着挙動を精度よく再現できることを示した.さらに,軸方向鉄筋に丸鋼および異形鉄筋を用いたRCはりの4点曲げ試験を実施し,実験結果と解析結果を比較することで,せん断破壊と曲げ破壊の異なる破壊モードを再現できることや,鉄筋周りの応力状態が異なる試験条件下においても鉄筋の付着挙動を再現できることを示した.
著者
横関 耕一 横山 薫 冨永 知徳 三木 千壽
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00248, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
24

実働交通荷重下で生じる最も疲労に厳しい条件下での各種鋼床版の疲労耐久性を明らかにし,比較することを目的とし,FEAを用いて試験条件を検討したうえで定点載荷疲労試験を実施した.疲労試験の荷重位置は縦リブと横リブとの交差部に大きなホットスポット応力を発生させる位置とし,試験荷重範囲は実働交通荷重下でのホットスポット応力範囲を再現できるように割り増した.試験結果から,縦リブと横リブとの交差部で横リブにスリットを設けない交差部は疲労耐久性が高く,特に縦リブに平リブを用いた構造は,設計荷重の1.0×107回載荷以上に相当する疲労耐久性が得られることがわかった.
著者
立崎 理久 樊 柚岑 山川 優樹 河井 正 溝江 弘樹 室井 亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00228, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
29

強風等の過大荷重による部材変形や,地盤変状に起因する基礎の変位(脚部不同変位)により,送電鉄塔に損傷が生じる事例が確認されている.本研究では有限要素解析により,こうした外的作用による鉄塔の損傷挙動と損傷後の耐荷力低下程度を評価した.さらに,損傷を受けた鉄塔について部材交換や脚部不同変位除去等の修繕を模擬した解析を行い,修繕による耐荷力の回復程度を評価した.その結果,損傷形態や修繕方法によって修繕効果に顕著な相違が確認された.このことから,効果的な修繕を行うためには,損傷形態に応じて適切な修繕方法を選択することの重要性が示唆された.異なる方法で修繕を行った鉄塔に対して再載荷したときの部材力の発生様態を比較することにより,損傷形態や修繕方法によって修繕効果に違いがみられる要因を考察した.
著者
秀熊 佑哉 宮下 剛 髙森 敦也 奥山 雄介 大垣 賀津雄 長谷 俊彦 原田 拓也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00136, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
20

本研究では,鋼トラス橋の斜材や弦材に適用されている溶接箱形断面に着目し,溶接近傍の腐食が圧縮耐荷力低下に及ぼす影響の検討と,炭素繊維シート接着による圧縮耐荷力回復を目的とし,局部座屈先行の短柱と全体座屈先行の長柱を用いて圧縮試験を行った.その結果,溶接近傍の腐食であっても溶接ビードが残っていれば耐荷力は大きく低下しないものの,溶接切れを起こした場合は著しく耐荷力低下を起こすことが明らかとなった.しかし,溶接近傍の腐食および溶接切れを起こした場合であっても,軸方向に炭素繊維シート,周方向にアラミド繊維シートを貼り付けることにより,健全時に近い耐荷力まで回復することができた.また,溶接近傍の減厚や溶接切れ,補修後の耐荷力の評価方法について検討を行った.
著者
上坂 健一郎 時田 英夫 森 猛 内田 大介 島貫 広志 冨永 知徳 増井 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.121-131, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
19

首都高速道路は50年以上に渡り重交通下で供用されており,鋼I桁橋の横構ガセットプレートまわし溶接部に多くの疲労き裂が発生している.それらのほとんどは止端に留まっており,バーグラインダで切削除去することで補修を行っている.UITはこれまで止端から発生する疲労き裂の予防保全対策として用いられており,施工が容易で高度な技能を必要としない.本研究では,鋼I桁橋の横構ガセットプレートを想定し,止端から発生した疲労き裂に対するUITの補修効果についてモデル試験体の疲労試験を行うことにより検討した.そして,作用する応力範囲が65N/mm2以下であれば,止端に留まるき裂に対して打撃痕の深さが0.23mm以上となるようにUITを施工することで,疲労寿命は溶接ままの継手の2倍以上になるという結果を得た.
著者
松下 晃生 内山 雄介 高浦 育 小硲 大地
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_1003-I_1008, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
11

気候値海洋モデルを用いたLagrange粒子追跡実験により,南シナ海に河口を有する4本の大河川から放出される海洋マイクロプラスチック(以下 MP)の平年的な移流分散特性とその形成機構を解析した.MPの分散パターンにはモンスーンに伴う季節差が存在した.特に中国南部の2河川から放出された粒子は,南西モンスーンが卓越する春から夏にかけて台湾海峡を越えて東シナ海へと到達する割合が増加する傾向が見られたことなどから,南シナ海起源のMPが日本近海のMP汚染に大きく寄与している可能性が示された.さらにMP自身の重量密度にも着目し,海洋表層を漂う(軽い)MP,および浮力を持たない(中立密度)MPに分けて粒子追跡実験を行い,海洋での輸送傾向の違いを考察した.
著者
土屋 智史 渡邊 忠朋 斉藤 成彦 牧 剛史 石田 哲也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.13-29, 2022 (Released:2022-01-20)
参考文献数
26

プレテンションPC中空床版桁のウェブや下フランジ外面に,PC鋼材に沿って軸方向に進展するひび割れについて,材料と構造を連成したマルチスケール解析を適用する検討を行った.このようなひび割れは,一般に内部鋼材の発錆やアルカリシリカ反応,かぶり不足等により生じるとされるが,本検討によって,標準的な材料を用いて入念な養生・施工と適切な管理が行われた構造諸元であったとしても,温度と湿度の季節変動を受けることで,供用後10年~数十年後にひび割れが顕在化し得る可能性があることを示した.また,ひび割れの発生要因について考察するとともに,感度解析を通して各要因の関連度合いについて確認した.さらに,ひび割れが耐荷力に及ぼす影響は小さいことを示し,解析結果に基づいて,今後の対策についての提案を行った.
著者
河村 圭亮 中村 光 竹村 雅志 三浦 泰人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.179-196, 2022 (Released:2022-05-20)
参考文献数
35
被引用文献数
1

あと施工せん断補強筋(PHB)で補強したRC部材のせん断抵抗メカニズム解明のため,4つの条件に着目して3次元剛体バネモデルによる数値解析を実施した.1つ目に,PHBの幅方向配置間隔を狭くするとせん断補強効果が高まることを示した.2つ目に,PHBを用いた場合も断面高さの違いによる寸法効果は閉合型スターラップを用いた場合と同様であることを示した.3つ目に,せん断スパン比a/dの違いで破壊モードが異なる条件でも内部ひび割れや耐力への影響は同様であることを示した.最後に,面部材などで幅方向が一様に拘束された条件下では,PHB・閉合型スターラップを用いたいずれの場合もアーチ機構とトラス機構が増加して梁部材よりも耐力が大きく増加することを示した.本検討はa/d=2.86の条件を基本とし,1.71~4.00の範囲で同様の傾向を確認した.
著者
宮原 史 堤 盛人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.20-37, 2022 (Released:2022-03-20)
参考文献数
34

社会資本の整備や維持管理を支える土木技術者の力量,すなわち技術力は,学校教育や研修のみならず様々な業務上の経験を通じた学習によって向上すると考えられる.しかし,これまでのところ,土木技術者の技術力と“経験”の関係については十分な考察がなされていない.土木技術者の戦略的な人材育成を実現するためには,様々な経験の技術力向上効果を明らかにするとともに,経験を人材育成のシステムに組み込む方法を確立する必要がある.本研究ではその手始めとして,道路構造物を維持管理する技術力の向上を目的とした地方整備局職員の研究所への出向経験に着目し,インタビュー結果の分析に基づき経験を通じた学習内容と技術力向上効果を整理する.また,これらの整理を踏まえて,経験を人材育成のシステムに組み込む方法論を提示する.
著者
山下 奈穂 郭 静 白川 博章 谷川 寛樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.II_23-II_31, 2021 (Released:2022-02-09)
参考文献数
26

資源生産性は循環計画の大目標として掲げられている物質フロー指標であるが,本指標では物質フローを支える物質ストックの間接的な影響を評価できない点が課題であった.先行研究において,物質ストックを考慮した資源生産性の要因分解は行われているものの,物質ストックの価値はその用途や種類によって多様であることから,全ての物質ストックに一概に適用することは困難である.本研究では,提案型論文として日本の住宅を対象に要因分解式を試用し,住宅ストックの変化が資源生産性に及ぼす影響を明らかにした.分析の結果,2008年から2017年にかけてストックあたりのサービス発生効率の低下や空き家の増加による資源生産性への負の影響が明らかになった一方,住宅の長寿命化が資源生産性の向上に最も貢献していることが確認された.
著者
牧野 純也 矢吹 信喜 福田 知弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_22-I_32, 2022 (Released:2022-03-23)
参考文献数
24

東日本大震災により発生した指定廃棄物の輸送時には,種々の制約を満たす最適な輸送車両の運行計画を立てる必要があるが,組み合わせ爆発による計算時間の増大により,近似解を求めることに留まっている.本研究では,指定廃棄物の輸送計画を作成する際,必要な制約条件として挙げられる,就業時間内に輸送を完了させること,荷降施設への輸送車両の到着時刻重複を防ぐことに着目し,量子アニーリングにより最適な輸送計画案を導くための基礎的な定式化を行った.また,輸送計画の実行中に発生しうる遅延による計画の乱れの際,運行計画の再作成に用いるコスト関数の定式化を行い,平常時と遅延発生時を想定した輸送計画の最適化を行った.最適化の結果,適切なパラメータ値の設定により,様々な条件下で最適な運行計画表を出力することを確認した.
著者
竹田 京子 佐藤 靖彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.30-45, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2

せん断圧縮破壊に至るせん断補強筋を持たないRCはりのせん断抵抗機構とせん断疲労破壊機構の解明を目的として静的および疲労載荷試験を行った.サンプリングモアレ法による画像解析を用いて斜めひび割れ幅とずれ量を得ることで,既往のせん断伝達モデルによって骨材の噛み合わせによるせん断抵抗成分を算出するとともに,骨材の噛み合わせとコンクリート圧縮部によるせん断抵抗成分の分担割合の変化を示した.その結果,低サイクル疲労において,繰返し回数が増加しても骨材の噛み合わせによるせん断抵抗の損失は生じておらず,圧縮応力とせん断応力によるコンクリート圧縮部の疲労破壊がRCはりのせん断圧縮破壊を決定づけていると考えられることを実験的に明らかにした.