著者
中西 航
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.24-33, 2022 (Released:2022-03-20)
参考文献数
19

道路ネットワークの性能評価においてFundamental Diagram (FD)は重要な役割を果たす.FDは原理的に場所ごとに異なるため,実データに基づいた任意地点でのFD推定が望まれる.そこで本研究では,全車両軌跡データを前提として,相互に異なるFDに従う区間を特定したうえで,各区間のFDを推定する.具体的には,軌跡データが与えられた連続空間に対して,スパースモデリングを用いることで区間分割とFD推定とを同時に実行できるモデルを定式化した.これにより,分析者の先験的な知識を必要とせず,統計的もしくは実用的に適した区間数を設定可能とした.提案手法を阪神高速道路における実データに適用し,推定結果の妥当性を示した.
著者
木下 果穂 牛田 貴士 津野 究 細田 暁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F1(トンネル工学) (ISSN:21856575)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.88-101, 2022 (Released:2022-09-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

臨海部や感潮河川付近に位置する鉄道シールドトンネルでは,RCセグメントに塩化物イオンの影響による鋼材腐食が見られることがある.本研究では,まず,腐食促進実験による塩化物イオン浸透状況の観察により,継手付近に特徴的な塩分浸透特性を把握した.次に,塩害劣化を想定したセグメント覆工模型の載荷実験を行い,継手鋼材の腐食により継手部の回転剛性が低下する等,力学的挙動への影響を確認した.さらに,継手鋼材の腐食の影響を考慮できる有限要素解析法を提案するとともに,三次元FEMによる解析結果を実験結果により検証し,手法の妥当性を確認した.
著者
青木 康貴 秋山 充良 石橋 寛樹 小島 貴之 越村 俊一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.1-16, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
52

断層パラメータの不確定性を考慮した津波伝播解析により,詳細な地形情報等を踏まえて各地点の津波ハザードの大きさと頻度の関係を低頻度な領域にまで算定するためには,一般に膨大な数の繰り返し計算を必要とする.本研究で提案する手法は,計算負荷の大きい津波数値解析をRBFネットワークを用いた近似関数で表現し,準モンテカルロ法を用いた計算を行うことで,低頻度で発生する浸水深の大きさまでを短時間で評価する確率論的津波ハザード解析手法である.南海トラフ地震により生じる津波を想定し,三重県沿岸部を対象に提案手法を適用することで得られる津波ハザードを従来のモンテカルロ法に基づく結果と比較することで,その妥当性と有効性を確認した.さらに,南海トラフ地震により生じる津波災害廃棄物量のリスク評価に提案手法を適用した.
著者
吉城 秀治 辰巳 浩 堤 香代子 奥村 友利愛 長友 陸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.I_721-I_733, 2022 (Released:2022-05-18)
参考文献数
27

人々にとって身近な移動手段である路線バスは誰にでも使いやすいものであることが望まれる.しかし多くの場合,基本的な情報が利用者にわかりやすい形で提供されておらず,そのため乗る際の心理的抵抗が大きいと指摘されるような状況にある.そこで本研究では,バス利用に関わる案内の中でも路線図に着目し,特にバス路線図の変形(デフォルメ)の実態と,デフォルメが人々の「わかりやすさ」に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,評価実験を行った.そのために,まず全国の 202 件の路線図に対してクラスター分析による類型化を行い 6 パターンに分類した.そして,各パターンの路線図に対して経路探索による評価実験を行い,路線図を見る際の人の挙動と意識の面からわかりやすさに関する要因について明らかにした.
著者
北村 友一 阿部 翔太 服部 啓太 山下 洋正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_121-III_130, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
22

本研究では,二次処理水を用いてゼブラフィッシュの胚・仔魚期の曝露試験を行い,ふ化率,生存率と網羅的遺伝子発現への影響,さらに,希釈およびオゾン処理による遺伝子発現影響の低減効果を調査した.二次処理水,オゾン処理水の曝露による遺伝子発現への影響レベルは,河川水の同様の曝露結果と比較した.その結果,二次処理水最大濃度(80%)においてもふ化率や生存率に影響は見られなかったが,遺伝子発現への影響は見られた.二次処理水の割合が減少するに従い,発現変動遺伝子数も少なくなることが確認された.二次処理水曝露により免疫,代謝,ストレス応答,シグナル伝達など様々な影響を受けていることが示唆された.二次処理水は10倍希釈,または,オゾン処理により,遺伝子発現への影響を河川水レベルまで低減できることがわかった.
著者
坂井 一雄 谷 卓也 青木 智幸 岸田 潔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F1(トンネル工学) (ISSN:21856575)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.76-91, 2021 (Released:2021-09-20)
参考文献数
49

山岳トンネルの安全かつ経済的な施工には,切羽前方の地山状況を精度よく予測して,必要に応じて予防保全的な対策工を講じる事が重要である.これまでに筆者らは,日常の施工管理の一環として,簡易に実施できるトンネル天端部の傾斜計測によって,切羽前方地山の硬軟変化を予測する手法を考案し,数値解析や現場計測試験で妥当性と有効性を確認してきた.本論文では,提案手法によって切羽前方地山予測を実現できる条件を明確化する目的で,土被りや地山剛性をパラメータとした感度解析を実施した.また,傾斜計測による地山状況予測結果を,変形余裕量の設定や補助工法の検討に対して実務的に活用することを目指して,傾斜角度から天端沈下量を定量的に推定する方法を検討し,現場実装試験の事後評価で有効性を確認した.
著者
天谷 公彦 角田 貴也 高谷 哲 山本 貴士
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.72-89, 2022 (Released:2022-03-20)
参考文献数
21

プレキャスト工法の適用範囲の拡大を目的とし,プレテンション部材から延びたPC鋼材を再度緊張し接続部材にプレストレスを導入して一体化を図る「ハイブリッドPC(HPC)構造」の開発を進めている.本研究では,コンクリート強度とPC鋼材のエポキシ樹脂被覆の有無をパラメータとした定着実験と再緊張実験を実施し,プレストレス導入時および再緊張時のPC鋼材の付着機構について考察した.さらに,実験で得られた付着応力-すべり量関係を非線形FEM解析に導入し,PC鋼材の挙動の再現を試みた.検討の結果,プレストレス導入時と再緊張時で,またPC鋼材のエポキシ被覆の有無で付着特性が異なり,HPC構造には高強度のコンクリートが適していることが分かった.さらに,FEM解析にてPC鋼材の付着挙動を一定の精度で再現できた.
著者
冨田 佑一 古関 潤一 龍岡 文夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.197-209, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
13

盛土の設計に三軸圧縮試験を活用する場合,供試体は室内で側方を拘束したモールド内で一様に突き固めて作製される.一方,現場締固め土は剛な振動ローラーを地盤上で走行させるため,各締固め層内で乾燥密度ρdは深さ方向に減少し,また表層が局所的に乱され,非一様である.本研究では大型鋼製土槽内で小型締固め機械を用いて締め固めた砂質土の試験盛土から乱れの少ない供試体を採取し,不飽和状態,湿潤・飽和状態で排水三軸圧縮試験を行い,同一試料を締め固めた室内作製供試体等と比較した.その結果,強度・剛性を,締固めの方法とエネルギーに関わらずρdの増加関数と飽和度Srの減少関数の積を基本に,現場盛土表層のせん断破壊の影響と湿潤化・飽和化による影響を加えた経験式で表現し,最適飽和度状態が適切な現場締固め目標となることを示した.
著者
松岡 弘大 川埼 恭平 田中 博文 常本 瑞樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.146-164, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
58
被引用文献数
3 6

列車通過時に共振が生じる橋梁(共振橋梁)は,乗り心地や付帯構造物への悪影響のほか,対策を要する場合もあり,適切に検知する必要がある.本研究は,走行列車の先頭車両と最後尾車両で計測した車体上下加速度を利用し,膨大な数の橋梁から共振橋梁を網羅的かつ効率的に検知する手法を検討した.共振橋梁に特有の振動成分について理論的に分析したうえで,フィルタ・包絡線処理と先頭および最後尾車両の差分処理で構成される車上計測データによる共振橋梁の検知手法を提案した.数値解析により検知精度を検証したうえで,実路線の営業車両で計測された車体上下加速度に提案手法を適用し,共振橋梁を抽出するとともに,抽出した橋梁の共振状態を地上計測により検証した.
著者
大保 直人 古谷 俊 高松 健
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.609-612, 1999 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6

地形・地盤急変部を横切る地下構造物の地震時挙動の解明は、地下構造物の耐震設計にいて重要な課題である。近年、シールドトンネルが断層を横断して施工される事例も多くなり、耐震設計を行う上で地震時挙動の把握の必要性が議論されつつある。本論文では、武山断層を欄新して施工された共同溝 (シールドトンネル) のトンネル軸方向で観測された地震波と解析結果の報告に引き続き、トンネル断面方向の地震波の解析と解析モデルを作成し、断層から10m-20m離れた位置でのトンネル断面方向の地震時挙動を解明、さらにトンネル断面方向の応答性状を明らかにした。
著者
保田 尚俊 塚田 和彦 朝倉 俊弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F1(トンネル工学) (ISSN:21856575)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-14, 2014 (Released:2014-01-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

山岳トンネルの地震被害メカニズムを理解するための基礎として,調和振動の平面波がトンネル軸に対して斜めに入射した場合の円形トンネルの変形挙動を3次元弾性波動論に基づいて解析した.地震波で想定される周波数範囲では,トンネル横断方向の挙動は地盤と覆工の相対的な剛性の比で決まり,入射波の波長の影響をほとんど受けないが,トンネル縦断方向の挙動は剛性比に加え,入射波のトンネル軸方向に生じる見かけの波長の影響を受ける.そのため,トンネル横断面内に変位成分を持つS波だけでなく,トンネル軸を含む縦断面内に変位成分を持つS波でも被害が生じる可能性があることが明らかとなった.また,実際の被害においてもトンネル軸を含む縦断面内に変位成分を持つS波が被害要因の一つと考えられる事例のあることが確認された.
著者
平井 節生 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.96-114, 2022 (Released:2022-11-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本論文は,関東大震災の復興橋梁群のデザインのレベルの高さに鑑み,それを実現し得た背景として,明治・大正期の造船及び鉄道橋製作の技術の進化があったのではないかという仮定に基づき,産業史的・技術史的視点で各業界の歴史をレビューするとともに,造船,鉄道橋梁,道路橋の各日本人技術者の最初の交差点となったと思われる1887(明治20)年竣工の吾妻橋を取り上げ,官・民で担当した技術者達に焦点を当てる.
著者
甲斐 慎一朗 和田 健太郎 堀口 良太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.I_963-I_971, 2023 (Released:2023-05-12)
参考文献数
21

本研究は,高速道路サグ部における Capacity Drop (CD)現象を内生的に表現可能かつ操作性が高いミクロシミュレーションの開発を目的として,IDM+ (Intelligent Driver Model+)をベースとした 2 つの追従モデルを分析する.1 つは,近年の CD の理論に基づく安全車間時間を地点によって変化させるモデルであり,もう 1 つは,勾配項を追加する従来型のモデルである.具体的には,これらのモデルについて,CD 現象が発生するか否かを,モデルパラメータを網羅的に変化させたシミュレーション実験により検証する.そして,適切にパラメータを選べば,どちらのモデルにおいても CD 現象が再現できることを示す.
著者
金崎 圭吾 和田 健太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.I_911-I_918, 2023 (Released:2023-05-12)
参考文献数
20

本研究は,高速道路サグ・トンネル部における Capacity Drop (CD) 現象を内生的に記述する連続体交通流モデルに基づく待ち行列モデルを構築し,渋滞発生確率の特性を解析する.構築するモデルは,CD 現象の考慮に加え,到着需要のゆらぎと交通容量のゆらぎを区別して 2 段階で渋滞発生確率を記述するものである.それぞれの段階についてモンテカルロ・シミュレーションを行い,(i) CD 現象は渋滞発生確率の分布をより需要が低い範囲にシフトさせること,(ii) 渋滞発生確率の分布形状を主に決めるのは交通容量のゆらぎであること,を示す.
著者
和田 健太郎 岩見 悠太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.I_899-I_909, 2023 (Released:2023-05-12)
参考文献数
26

本稿は,都市における通勤ラッシュに関わる時間集積の経済・不経済にテレワークが与える影響を分析する.具体的には,時間集積の経済・不経済を扱う Takayama1) の通勤均衡モデルをテレワーク(特に在宅勤務)を含むモデルへと拡張し,その均衡状態と社会的最適状態を理論的・数値的に分析する.そして,(i) テレワークの普及は始業時刻の集積を引き起こす(時差出勤と整合しない)こと,(ii) テレワーク導入により各企業・個人の生産性が向上する状況では社会全体の厚生が導入前より低下しうること,を明らかにする.
著者
長崎 滉大 中西 航 朝倉 康夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.I_825-I_831, 2023 (Released:2023-05-12)
参考文献数
10

道路の一地点を通過する交通量は一日の間で時間によって変動する.地点交通量の確率分布を推定することにより,路側での観測が容易な交通量データからドライバーの行動の時間変動を知ることができる可能性がある.また,交通量の時間変動のように24時間単位で繰り返されている現象に対しては,角度を扱う方向統計学を適用し,0時と24時を同一と見なして分析することが適切である.本研究では,方向統計学における確率分布である円周分布を混合した分布を用いて,高速道路の複数地点で観測された地点交通量の分布のパラメータ推定を行った.分布の推定により,交通量の時間変動を朝の出勤と夕方の帰宅の分布に分離することができた.また,朝の分布は左に歪んだ立ち上がりの速い分布であり,後者の分布は緩やかな分布であることがわかった.
著者
内藤 直人 前田 健一 山口 悟 牛渡 裕二 鈴木 健太郎 川瀬 良司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_361-I_370, 2013 (Released:2014-03-14)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Cushioning materials, such as sand cushion placed on rock sheds, are attracting attention as construction devices that can effectively disperse and reduce rock fall energy before rocks collide with rock fall protection works. To support performance-based designs for rock fall countermeasures, the present study estimated rock fall behaviors and impact forces using 2D discrete element method (2D-DEM). As one of the typical behaviors, propagated impact force can exceed impact force of falling mass. We conducted two numerical analysis focused on this phenomenon; monotonic penetration test controlling under constant penetration velocity, and removing falling mass during penetration process for any time. In addition, the effects based on some condition of sand cushion, weight of falling mass and its velocity are examined from the view point of impact force-penetration relationship of sand cushion.
著者
宇多 高明 五十嵐 竜行 立石 賢吾 繁原 俊弘 芹沢 真澄 宮原 志帆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_745-I_750, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

既往研究によれば,森戸川河口に隣接する西湘PA沖の-100 m付近には海底谷谷頭部を縁取るほぼ垂直に切り立った崖があり,また,森戸川河口沖の海底谷の西端と東端の急斜面上には海底谷へと続く流跡模様が残され,その状況から海底面を土砂が滑り落ち,海底を侵食しつつ流れ下っていると推定された.しかしこれらと海岸から深海への土砂落ち込みとの因果関係は明らかでなかった.本研究では,BGモデルを用いた数値計算により,海底谷谷頭部では急勾配斜面を経た沖合への土砂落ち込みが起こり得ることを示した.
著者
中澤 高師 Trencher Gregory 辰巳 智行 長谷川 公一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00254, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
22

本稿の目的は,日本における二酸化炭素排出実質ゼロ宣言の波及過程を明らかにし,気候変動政策の転換を引き起こしたメカニズムの一端を解明することである.政策波及研究の知見に基づき,国と自治体の双方向の垂直的な影響,自治体間の水平的な波及過程,国際都市ネットワークからの波及,その他の促進/阻害要因を,日本政府を含む全国的な波及過程研究と神奈川県の事例研究から明らかにする.半構造化インタビューと文献資料調査の結果,まず国際都市ネットワークに繋がる先進的自治体が宣言し,それに注目した国が自治体へ宣言を呼びかけ,宣言自治体の増加が国によるゼロ宣言の一因となり,自治体の宣言がさらに促進されていくという,垂直的波及と水平的波及の連鎖過程が明らかになった.