著者
松井 孝典 池野 優子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.II_73-II_82, 2011 (Released:2012-03-16)
参考文献数
33

本研究では,自然生態系と人間システムを包含する共生システムが適切な状態を築く,すなわち,自然生態系のストックである気候条件や環境物,植物群集,動物群集とそれに対する人々の感覚器の反応や活動系が良好な共起状態を持つことで,文化的生態系サービスが持続的に享受できるという仮説の基で,その生態系サービスを得るための共生システムの構造を解析することを目的としている.具体的には,この文化的生態系サービスを受け取った教師信号が内包されていると考えられる事例ベースの一例として小倉百人一首を選定し,生態系サービスを介した共生システムの概念モデルの構築,それに基づいたコンポーネントの出現に関するコーディング,および自己組織化マップと階層クラスタリングによる構造解析を行った.これにより,共生システムのデザインを支援するための7つの文化的生態系サービスの生成および享受の構造に関する知見を得るとともに,(1)全体的には環境物を視覚することを基礎としながら,(2)文化的生態系サービスの享受には,動植物を感知する際の気候条件や気象現象や人間システム側の活動モードとの相互作用が存在する可能性があること,(3)自然物そのものだけでなく,自然素材から成るプロダクトも文化的生態系サービスの生成および享受の要因となり得る可能性があることが示された.
著者
中根 洋治 奥田 昌男 可児 幸彦 早川 清 松井 保
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.182-194, 2011
被引用文献数
1

本研究の事例に取り上げた矢作川流域のほとんどが花崗岩地帯であり,沖積平野の広範囲に砂が堆積している.近年,住宅や工場・道路などへの利用が多い旧河道や後背湿地では,地震時に堆積砂が液状化し,豪雨時に低湿地が浸水する被害を受けやすい.本研究では,矢作川の旧河道や後背湿地の生成過程と現状を歴史的文献・資料,地盤調査・工事資料,現地踏査などにより把握すると共に,浸水や液状化による災害に対する危険性を検討した.その結果,河床低下により矢作川本川の越水の危険性は減少傾向にあるが,支川の内水排除対策が今後の重要課題であり,また本川や各支川の旧河道及び低湿地における浸水や液状化に対する危険箇所が数多くあることを具体的に明らかにした.さらに,開発に伴う災害危険区域の増加傾向と共に遊水地の必要性も指摘した.
著者
田村 将太 田中 貴宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.172-180, 2019 (Released:2019-09-20)
参考文献数
21
被引用文献数
3

コンパクトシティ実現に向けた多くの計画では,サービス施設やコミュニティを維持するために人口密度が目標値として設定されているが,設定した人口密度が日常生活サービス施設を維持するための目標値として適切であるかについての検討は十分にはなされていない.本研究では,コンパクトシティ実現に向けた計画策定における拠点地域の人口密度設定の一助となる情報の提供を目的に,人口分布データと各施設の立地分布データを用いて,人口密度と各施設の立地との関連分析を行った.その結果,全29施設のうち25施設において人口密度と立地確率の間に比較的高い関連性が見られ,その立地傾向は人口密度の観点より,「10~20人/ha」,「20~60人/ha」,「60人/ha以上」の3つの人口密度区分に分類することができた.
著者
近藤 明雅 山田 健太郎 小野 彰之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.434-443, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
12

繰返し荷重を受ける耐候性鋼無塗装橋では,その疲労挙動が問題になる.本研究では,約25年間大気暴露した十字すみ肉溶接継手32体と面外ガセット溶接継手8体を疲労試験し,筆者らが,過去に行った無暴露材,2, 4, 10年大気暴露材の試験結果と比較した.十字すみ肉溶接継手のうち15体は,暴露前に疲労寿命の約25%の繰返し荷重を載荷した後に暴露したものである.その試験体で,比較的大きい疲労き裂が発生していたものは,無暴露材,2, 4, 10年暴露材の疲労強度から低下したが,疲労き裂が小さいか認められない場合には,疲労強度の低下はみられなかった.溶接したままで約25年間大気暴露した十字すみ肉試験体17体と面外ガセット溶接継手では,疲労強度の低下は見られなかった.
著者
小林 潔司 JAAFAR Mohamed Nazari Bin 尾形 誠一郎 塚井 誠人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.478-497, 2007

インドネシアのスマトラ島の森林火災は,周辺各国における日常的サービスの中断,呼吸器系疾患の多発等の深刻なヘイズ(煙害)災害をもたらしている.マレーシア政府は,大気中の汚染物質量をリアルタイムに観測し,ヘイズ警報を発令するシステムを開発している.ヘイズ警報を発令(解除)するためには,衛星情報と地上観測データに基づいて,将来時刻における大気汚染物質の滞留量を迅速に予測するような統計的予測モデルが有用である.本研究では,レジーム変化(regime switching)と長期記憶性を考慮した統計的時空間モデルを定式化するとともに,ヘイズ災害に関する危機管理情報を作成するための方法論を提案する.さらに,マレーシア半島部を対象としたケーススタディにより,本研究で提案した方法論の有効性を実証的に検証する.
著者
宮下 征士 今西 将文 宮田 真考 西山 哲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_92-I_108, 2017
被引用文献数
3

近年,落石事故が頻発しており,落石対策事業へ取り組む機運が高まっている.しかし,落石対策事業において精度の低い図面が使用されており,落石発生源の位置精度不良や調査漏れが発生し,安全性が問題視されている.問題点を解消するには,高精度な図面を使用して落石発生源を抽出する必要がある.<br> 本研究では,高密度航空レーザデータを使用して,傾斜量図+ウェーブレット解析図+等高線図を透過合成した微地形強調図を作成し,落石発生源を抽出する手法を提案する.夏季・冬季の航空レーザデータを検証した結果,冬季の道路縦断方向計測データを使用することにより,落石発生源(急崖)を抽出でき,本提案手法が有用であることを明らかにした.
著者
山本 吉道 中山 正広 岩井 健浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
no.21, pp.39-44, 2005
被引用文献数
1

The great earthquake of M9 was generated in the North Sumatra offing at 7: 58 on December 26th, 2004, and the serious tsunami calamity was produced in every coast of Indian Ocean. We report on the damage survey that we carried out from January 9th to 12th in Thai western coast where typical tsunami damage was produced.<BR>(1) The tsunami height of Khoa Lak coast was about 9m on the sea level, and almost all walls and pillars of buildings within 30m of coastal line were toppled. The flood region had reached to lkm or more inland.<BR>(2) The tsunami height of Patong beach was about 6m on the sea level, and almost all walls and pillars of buildings within 30m of coastal line were not toppled but the flood depth was about 2m.<BR>(3) The tsunami height of Phi Phi island is 6-7m on the sea level at the north side and 3.5-5m on the sea level at the south side.
著者
二井 昭佳 齋藤 潮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.182-189, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
20

本論文では,海図に記載の山アテにかかわる海上地名「~出シ」を対象として,「~出シ」とその周辺におけるアテ山の地景の変化に注目し,「~出シ」を特徴付けている地景,その地景が得られる場所と海底地形の対応関係について考察した.その結果,「~出シ」はアテ山の見かけの位置関係が変化するなかで,可視⇔不可視,相接⇔乖離に挟まれてオヤ山とシタ山が関係付けられる地景の持続領域に相当し,その領域が集魚効果の高い海底隆起部とおおむね対応することを示した.また,その領域が海底隆起部の大きさに依存せずおおむね350m以下になることから,数分の移動の間に認識されやすい地景の変化の存在が「~出シ」における山アテの特徴だと指摘した.加えて「~出シ」に対応する地景を12種類に分類した.
著者
平山 智樹 藤原 和也 日比野 剛 花岡 達也 増井 利彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.II_301-II_308, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
42

本研究では,積み上げ型技術選択モデルを用いて,インドの将来の温室効果ガスと一次生成の大気汚染物質,短寿命気候汚染物質(SLCP)の排出量と,対策導入コストを推計し,気候変動緩和策が大気汚染物質とSLCPの排出に及ぼす影響を評価した.その結果,125ドル/トンCO2の炭素価格で導入可能な気候変動緩和策による副次効果として,SO2,PM2.5,BCの排出を基準年比横ばい以下まで抑制できること,2050年までの累積GDPの0.12%に相当する大気汚染対策コストを削減できること等が示された.一方で,気候変動緩和策の推進がもたらすバイオマス利用の拡大が,大気汚染物質やSLCPの排出増をもたらす可能性があることも示された.温室効果ガスだけでなく,大気汚染物質やSLCPも含めた最適な排出パスを検討するためには,低炭素化のみならず,健康被害や気候変動の要素にも留意して検討を進める必要がある.
著者
三木 千壽 町田 文孝 伊藤 博章
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.283-293, 2011
被引用文献数
3

こガセット継手に生じる疲労き裂の応急補修対策および疲労き裂の発生を抑制するための応力改善対策について,大型の梁試験体を用いて検討した.ストップホール,ストップホールの高力ボルトによる締め付けおよび添接板補修をそれぞれ対策方 法とし,疲労き裂が発生した箇所に用いて,その効果を確認した.また,ガセット継手の疲労き裂の発生の抑制を目的として,当て板補強による応力改善についても検討した.疲労き裂の補修対策としては,疲労き裂先端にストップホールを明け,その孔を用いて添接板補修を行う対策が最も効果があること,ガセット継手部の当て板による応力改善では,応力集中部に高力ボルトが配置されることにより,応力の低減効果が上がることが確認された.
著者
石井 博典 藤野 陽三 水野 裕介 貝戸 清之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.44-61, 2008 (Released:2008-02-20)
参考文献数
21
被引用文献数
2 5

本研究では,主に合理的な維持管理を必要とする中小鉄道を対象として,高頻度な計測が可能な軌道モニタリングシステム(Train Intelligent Monitoring System:TIMS)の開発を行った.営業車両内に加速度計,GPSで構成される簡易な計測システムを設置し,走行中の車両振動から軌道の状態を常時監視するシステムを構築し,地方鉄道において継続的な実験を実施した.GPSセンサから得られる速度情報と,車両加速度を2回積分して得られる距離情報を補完しあうことにより,車両走行位置を検出する位置同定手法を開発した上で,車両の上下,左右方向の加速度の最大値,RMS値を管理することにより,軌道状態を高頻度で監視することが可能な軌道モニタリングシステム(TIMS)を構築した.
著者
堀井 茂毅 川口 充康 川本 義海 川上 洋司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.22, pp.677-684, 2005

本研究は, 2年余りの運行休止を経て「えちぜん鉄道」として運行再開した地方鉄道に焦点を当て, 鉄道の運行休止・再開が地域にもたらした影響・効果を把握すること, それらを踏まえて今後の利用促進の検討に資する知見を得ることを目的としたものである. 利用者および沿線住民アンケート調査結果にもとづき, 鉄道の運行有一無一有の3つの状況下における人々の交通行動・生活活動, 意識面の変化について分析した結果, 交通手段選択だけでなく, それを通して生活活動面にも多大な影響を及ぼしたこと, 利用者のみならず非利用者に対しても送迎機会の増減や心理面的負荷の増減といった面で影響を及ぼしたこと等を明らかにするとともに, 今後の利用促進に向けてのいくつかの提案を行っている.
著者
伊藤 将司 森本 章倫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_101-67_I_108, 2011
被引用文献数
1

本研究は,参加型の社会資本整備より,市民主体の継続活動に展開する要因を明らかにするものである.既往研究及び事例調査から,人(参加者とつながり),意識(目標と信頼関係),環境(適正な合意形成の場)の3つの要因を仮定し,詳細の事例分析によって検証を行った.<br>その結果,参加型の社会資本整備より,市民主体の継続活動に展開する流れを明らかにするとともに,その過程において,継続活動において3つの要因の形成が重要であることが明らかとなった.また,3つの要因に課題が生じた場合においては,継続活動が停滞する場合があることも分かった.
著者
荒木 昇吾
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.57A, pp.890-899, 2011 (Released:2011-08-01)

Durability of timber bridges is improved by using concrete decks, because it substitutes a roof. In this case, dead load is increased but this disadvantageous point is canceled by making the timber-concrete composite girder. In Japan, Design Criteria for this type of timber bridges have been developed in 2002 at Nagano Prefecture. And this bridge had been constructed for the first in 2003. In this paper, the improvement method for this type of timber bridge is suggested, that is to product a composition precast girder that has T-beam cross section with the web made of timber and the upper flange made of concrete. And the advantage is discussed from the viewpoints of cost reduction and labor saving.
著者
大庭 哲治 松中 亮治 中川 大 北村 将之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_405-I_414, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

長年にわたって地域の商業活動の中心を担ってきた商店街の衰退が進んでいる.衰退の原因は様々であるが,商店街は街の賑わいを生む場であり,他の商業施設にはない価値を有する.多様な特徴を持つ商店街の賑わいと土地利用及び業種構成の現在の関係に着目して,本研究は,京都市内86商店街の土地利用及び業種構成を現地調査によって詳細に把握した上で,賑わいとの関連性を定量的に分析した.その結果,小売業(食品系)の割合と歩行者密度は正の関連を有すること,駐車場・低未利用地の割合と歩行者密度や路線価には負の関連があること等,土地利用及び業種構成によって商店街の賑わいが異なることを明らかにした.
著者
木村 一裕 清水 浩志郎 伊藤 誉志広 呉 聲欣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.17, pp.973-980, 2000
被引用文献数
1

車いすの走行環境に関して, 縦断勾配や横断勾配, 段差など, 個別の課題に関する研究は行われているが, これらの多様な交通抵抗が連なっている実際の歩行空間に関する評価は行われていない。本研究では, 実際のルートにおいて車いす走行実験を行うことで, 車いす利用者にとって, 走行する時に縦断勾配などの物理的要因だけではなく, 道路横断などの心理的要因もかなり負担を感じていることを明らかにすることができた。また段差や縦断勾配, 横断勾配はその値が大きくなるにつれて負担ウェイトが指数的に増加することが明らかとなった。
著者
曽篠 恭裕 宮田 昭 柿本 竜治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_141-I_154, 2018

本研究では,海外の災害対応における,国際赤十字の仮設診療所資機材の輸送の改善に向けた示唆を得ることを目的として,災害の種類,被災地の地理的特徴,輸送の所要日数,診療活動の開始日,輸送された救援資機材の使用状況に注目して,過去の資機材輸送の比較分析を行った.その結果,突発災害対応において,救援資機材が到着する空港におけるボトルネックや,陸路の寸断による小型機,ヘリコプターを用いた優先する物資の輸送が発生していた.本研究を通じて,今後の資機材輸送の改善に向けて,災害の種類に応じた資機材輸送,梱包の小型軽量化,災害の種類に応じた資機材の選定,輸送資機材の標準化と事前備蓄,国際支援受入国による資機材輸送支援が課題であることが明らかとなった.
著者
田浦 扶充子 島谷 幸宏 小笠原 洋平 山下 三平 福永 真弓 渡辺 亮一 皆川 朋子 森山 聡之 吉冨 友恭 伊豫岡 宏樹 浜田 晃規 竹林 知樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_153-I_168, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

本研究は,都市の流域すべての場所で雨水の貯留・浸透を,良質な緑を増やしながら多世代が協力し,分散型水管理が実現される持続的な都市ビジョン「あまみず社会」を提案し,その有効性や実現可能性を検証するものである.そのため,都市の空間構成要素である個人住宅と中学校を取り上げ,安価で魅力的な貯留浸透の方法を考案,計画し,実装を試みた.「あまみず社会」の概念に基づいた魅力的な実装や要素技術は,治水・利水機能に加え,環境面,防災面,活動の広がりなど多面的な価値があることが明らかとなった.加えて,「あまみず社会」の実社会への普及に向け,多面的で重層的な働きかけを網羅的に試みることが有効であり,想定以上の広がりが得られることが確認された.
著者
三神 厚 神山 眞
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_133-I_138, 2018

東北地方太平洋沖地震によって,東北の太平洋岸の広い範囲で地盤が沈降し,多くの漁港で岸壁の嵩上げ工事が実施されたが,本震後の余効変動(隆起)が漁港施設に影響を及ぼしており,嵩下げ工事を実施する漁港も現れた.漁港の被災から復興に至る過程が高精度の地殻変動データとともに得られていることは過去にない特徴である.本研究では余効変動を伴う巨大海溝型地震による震災からの合理的な復興へ活かすための貴重な教訓を抽出すべく,東北の地震により漁港に生じた様々な不都合や,それに応じた関係機関の対応をヒアリング調査等から明らかにするとともに,地殻変動の推移とともに時系列で整理した.その結果,本震後,すぐに隆起に転じた地域では,漁業の継続性を確保するための段階的な復興工事が結果的に有益であったこと等が明らかになった.
著者
和田 健太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_21-I_39, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
83

本稿では,動的交通均衡配分モデルの解析理論の近年の進展について解説する.渋滞の時空間進展と利用者行動の相互作用から生じる,複雑な交通ネットワーク流の見通しのよい解析を可能とする移動座標系アプローチに対象を限定し,車両を流体近似する伝統的なモデルと最近進展している粒子型のモデルを対比的に紹介する.その中で得られる,それぞれのモデルの特徴や関係,均衡解の数理特性に関する成果を踏まえ,双方の優位性を活かした今後の発展の方向性について述べる.