著者
金子 大二郎 大西 政夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.235-244, 2003

本研究は, 中国・インドの巨大な人口増問題と新たな水資源制約時代を背景に, 現代における穀物需給の体制上の問題点と水資源不足の視点から, 穀物生産量の監視について, 現在の気温中心のモデルを発展させた光合成型のモニタリング法が必要であることを説いている.人口の巨大な両国における水制約の条件下では, 従来からの有効積算気温や植生現存量ばかりでなく, 日射と作物の水ストレスをも考慮した穀物生産指標を新たに開発することが必要である.本論文は, 世界気象データと衛星による植生指標を用い, 日射・有効気温・植生現存量・気孔開度を考慮した光合成型の穀物生産指標をモデル化し, 水資源不足時代における穀物生産量を早期に監視する方法を提案している.小麦・米・トウモロコシ等の穀物生産量の中で水稲を研究対象として最も重視する.その理由は, 水稲は食糧問題の中で単位面積当たりの収穫量が小麦より高いことから人口扶養力が大きく, また, 水資源を最も多く必要とし, 水配分の視点から重要な作物となっているからである.
著者
片田 敏孝 木村 秀治 児玉 真
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.498-508, 2007 (Released:2007-12-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2 1

近年,ハード対策のみによる防災施策の限界が認識されるようになり,住民の自発的な対応行動による被害軽減のあり方が重要視されるなか,住民の意識啓発の重要なツールとしてハザードマップが位置づけられるようになった.しかし現状は,公表されたハザードマップが住民に認知され,かつそこに表示される災害リスク情報が適切に理解されているとはいえない状況にある.本稿では,洪水ハザードマップを事例に,現状における洪水ハザードマップの運用に係る課題を,住民,行政それぞれの観点から整理した.また,地域防災力の向上には行政と住民とのリスク · コミュニケーションが必要不可欠との認識から,洪水ハザードマップをそのコミュニケーションのためのツールとして活用することの重要性と効果的な運用のあり方について提示した.
著者
谷口 綾子 奥山 有紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1133-I_1142, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,乳幼児連れの移動者による移動中のマナー・モラルの低下が指摘されている現状を受け,子連れ移動に対する意識における世代間ギャップの存在と,段差解消など物理的なバリアフリー化推進が人々の意識にもたらす副作用の可能性を明らかにすることを目的とした調査分析を行った.その結果,子連れでの外出頻度,子連れ可だと思う場所,子連れ外出可の時刻,夫の育児参加への意識など,子育てに関する意識や行動には世代間ギャップが存在すること,ならびに物理的バリアフリーにより慣れていると考えられる若年層かつ海外居住経験のある人ほど高い行政依存傾向,すなわち,施策が意図せざる副作用の可能性が示された.
著者
佐藤 馨一 五十嵐 日出夫 堂柿 栄輔 中岡 良司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.191-197, 1984

年表の作成は歴史の研究において最も基本的な、しかも重要なプロセスである。土木史研究においても明治以降については、「近代欝本土木年表」としてすでに発表されている。しかし明治以前については体系的に作られた土木史年表はなく、その編成が大きな研究課題として残されている。本文はこの点に着目し、小川博三著「日本土木史概説」から明治以前の主要土木史事項を抜きだし、明治以前日本土木史年表を試作したものである。この年表では明治以前を五つに区分し、各時代ごとに30~33の項目を取り上げた。<BR>本研究の最終目的は日本土木史年表の作成にあるが、本文ではとくに年表編集のプロセスにおいて、リレーショナル・データベースを用いて簡便に土木史史料を整理し、修正し削除する方法を開発した。すなわち本研究では大型電子計算機によらず、安価でかっ日本語入出力が可能なパーソナルコンピュータを用い、さらに入力した文章データを各種ファイルに再編集した。この結果、膨大な文書史料から必要事項を任意に検索、修正、削除することが可能となり、土木史史料の作成・整理・保管・再編集作業のシステム化、迅速化が図られることになった。
著者
及川 康 片田 敏孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.38-47, 2016

2013年3月に気象庁は,「災害イメージの固定化」を助長してしまうことが危惧されていた従前までの津波情報(津波注意報・津波警報・大津波警報)の運用ルールを改め,定量的表現を排して3段階の定性的表現のみとするなど,総じて概略化の方向での改定を行った.本稿では,このような改定が一般住民にどのように受け止められる可能性があるのかについてアンケート調査に基づき検証を行った.その結果,改定後の運用ルール下においては「災害イメージの固定化」を払拭して迅速な避難行動を促進し,人的被害の軽減に貢献できる可能性がより高まったこと,しかしそれに対する住民評価は否定的なものが大半を占めていること,その背景には「曖昧さを嫌って物事を二律背反的に捉える心理傾向」が影響を及ぼしている可能性があること,などが把握された.
著者
佐藤 翔輔 今村 文彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_1309-I_1314, 2020

<p> 極近地津波であった2019年6月18日山形県沖の地震にともなう津波からの避難行動について,山形県鶴岡市温海地区と新潟県村上市山北地区を対象にした質問紙調査とその分析を行い,当日の津波避難行動の傾向や課題を明らかにした.温海地区では約9割とほとんどの住民が津波避難行動を実施した.一方で,想定される津波到達時間よりも前に避難を完了できたのは,避難を実施した人のうち,温海地区で約3割,山北地区で約2割にとどまった.両地区で多くの住民が避難していたのは,津波情報(津波注意報)よりも,ゆれそのものから津波発生を想起したことと,50年以上前に地域で発生した津波よりも,近年発生した東日本大震災を契機にした意識の向上や備えの実施が関係していたことが明らかになった.</p>
著者
羽矢 洋 西村 昭彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.595, pp.127-140, 1998
被引用文献数
7

鉄道の基礎構造物設計基準では, 平成9年度に限界状態設計法が導入された. この中では, 地震力としてマグニチュード8, 震央距離40km程度の海洋型地震を想定しており, これにより設計震度は従来と比べ大きくなった. しかし, 平成7年1月に発生した兵庫県南部地震 (マグニチュード7.2の都市直下型巨大地震) の持つ地震力は, その値を大きく上回るものであり, 従って, このような大地震力を考慮した基礎の設計法の確立が急がれている. 本論文では, このような大地震力を念頭に, 基礎構造物のうち, 浅い剛体基礎として分類される「直接基礎」の設計法の確立を目的に行ってきた実験的研究および解析的研究の成果をまとめ,「大地震力を考慮した直接基礎の設計法」について提案を行った.
著者
竹内 大輝 山田 朋人 Farukh Murad Ahmed
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_263-I_269, 2014

2010年夏, パキスタンにて過去100年間で最も激しい豪雨が発生した.パキスタンを襲った同年の豪雨はロシア北西部におけるブロッキング現象とインドモンスーンの蛇行が主な原因と指摘されている.本研究ではモンスーンの蛇行パターンの分類を行い,パターンごとの大規模気象場の特徴を調べた.その結果,パキスタンに洪水をもたらしやすいモンスーンの蛇行パターンが存在し,その場合では中東全域における海面気圧の負の平年偏差及びロシア北西部広域での正の平年偏差が見られた.1982年から2012年の31年間では,パキスタン豪雨時に発生していたブロッキングの発生回数は6月から8月にかけて減少する一方,パキスタンに豪雨をもたらしやすいモンスーンの蛇行発生回数は増加する傾向にあった.
著者
金澤 健 牛渡 裕二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.15-24, 2021 (Released:2021-03-20)
参考文献数
34

極限解析の上界定理を用いて,凍害による材料劣化が生じたRC柱部材に対し,実験結果の回帰式等を用いずにせん断耐力を解析的に算定可能な力学モデルを構築した.構築したモデルは,実橋のコンクリートコアから取得した劣化深度に基づいて変位場を分割することで,劣化域のせん断耐力への寄与を評価することが可能である.凍結融解促進試験後にせん断破壊を生じた11体の実験結果との比較により,構築したモデルが±20%の算定精度を有していることを確認した.さらに,著しい凍害が顕在化した既設RC道路橋の橋脚のせん断解析を行い,劣化深度を指標とした力学的合理性のある健全度評価の可能性を示した.
著者
渡邊 保貴 小峯 秀雄 安原 一哉 村上 哲 ベ ジェヒョン 豊田 和弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.788-799, 2010

水道事業から排出される浄水汚泥を道路構成材料として有効利用する上で,浄水汚泥の排出量が少量であることから一般の土質材料と混合して利用することが検討されている.しかしながら,こうした混合利用の効果は力学的側面から検討されることが多く,環境負荷低減の側面からは十分に検討されていない.本研究では,最終処分量の削減や天然資材の保全の観点から浄水汚泥の環境価格を定義し,浄水汚泥を砂質土と混合利用したときの環境負荷低減効果を貨幣価値に換算した.その結果,浄水汚泥の混合利用は必ずしも環境負荷低減に結びつかず,浄水汚泥を単体で利用することが最も望ましいこと,そして,浄水汚泥を混合する場合には,混合する天然資材の量を減少させることが重要であることを示した.
著者
寺田 光宏 石垣 泰輔 尾崎 平 戸田 圭一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_1465-I_1470, 2018

東京,名古屋,大阪等,日本の低地の都市にはたくさんの地下鉄と地下駅が存在する.本論文では,数値解析を用い,大阪中心部の地下街,地下駅,15本の地下鉄路線を含む内水氾濫の解析を実施した.氾濫解析結果から,氾濫水が地下鉄トンネル内を迅速に広がることがわかった.特に,新路線のなにわ筋線において,梅田地区から新大阪駅へと氾濫水は広がることが確認できた.また,大野処理区では十三駅や新大阪駅周辺で浸水が発生することが確認できた.
著者
小山 誠稀 矢吹 信喜 福田 知弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_97-I_113, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
32

国土交通省は橋梁管理者に対して,5年に1度の定期点検を義務づけている.センサ類の小型化,低価格化に伴い,多数のセンサを橋梁に設置してモニタリングが可能になると考えられる.人間は,センサから得られる大量のセンシングデータとセンサの設置情報から橋梁の状態を判断する.人間と同じようにコンピュータが橋梁の状態を判断するためには,橋梁とセンサの関係とセンシングデータを合わせて処理する必要がある.そこで,本研究では橋梁とセンサの関係をデータベースで管理する手法を提案する.橋梁とセンサの関係をデータベースで管理することで,橋梁諸元情報とセンシングデータを一元的に処理できると考えられる.検証実験で,従来の図面や書類による情報管理手法と比較して,提案手法では人間の作業時間が3割以下となることを確認した.
著者
田中 陸人 矢吹 信喜 福田 知弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_114-I_123, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
27

就業中の作業姿勢の悪化は筋骨格系障害を始めとする労働災害の要因となるため,作業姿勢の定量的な評価を通じて姿勢の改善につなげる必要がある.既往研究では,機械式モーションキャプチャシステムが用いられているが,それらの機器は現場導入時のコスト増大が懸念される.そこで本研究では,建設現場での利用が開始されているヘルメット装着型端末を利用することで,コストの課題に配慮した上で,LSTM(Long Short-Term Memory)を用いた姿勢推定手法を提案する.また,検証実験では,OWAS(Ovako Working Posture Analyzing System)法による姿勢評価に対して,提案手法を適用することにより,鉄筋工作業員の身体負荷が大きい姿勢を再現率80%以上で推定できることを確認した.
著者
宮下 衛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-7, 2009 (Released:2009-02-20)
参考文献数
30

LED照明のゲンジボタルおよびヘイケボタルの幼虫の行動に対する光源の色と明るさの影響を調べた.試験は,プラスチック製の容器を光源のある側とない側の2つに区切り,幼虫を光源のある側に入れ,その後の幼虫の移動について調べた.その結果,白・青・緑色のLED照明については,両種の幼虫は,0.1lxの明るさの光を忌避することが認められた.黄色のLEDについてはヘイケボタル幼虫は5lx以上,ゲンジボタル幼虫は30∼40lx以上,また,赤色のLEDについては,ヘイケボタル幼虫は40lx以上,ゲンジボタル幼虫は60lx以上の照明を忌避することが認められた.以上の結果から,街灯や民家,車などの照明は,ホタルの幼虫の行動に影響を与えることが明らかにされた.
著者
兵頭 順一 一井 康二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.12-20, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
12

土木構造物の非線形地震応答解析の品質と信頼性を保証する枠組みは他分野ほど示されていない.数値解析の品質保証には,検証と妥当性確認がある.検証は非線形の問題では難しく,解析の品質保証の観点からは,主として,妥当性確認が多く行われてきた.本研究では,多重せん断機構モデルを導入した解析コードを用いて,杭の支持力モデルを対象に堀らの提唱する数値創成解の考え方を用いた検証の事例を紹介する.まず,杭の押込み試験の数値解析を行った.その際,杭頭への載荷を強制変位と強制荷重による載荷の2通りを実施し,検証が困難な事例と可能な事例を示した.次に,杭の繰返し載荷の数値解析に対して検討を実施し,強制変位と強制荷重による載荷が一致することを示し,杭の支持力モデルに関して解析コードの検証の検討を実施することができた.
著者
安野 浩一朗 岩塚 雄大 西畑 剛 古牧 大樹 森屋 陽一 伊野 同
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_90-I_95, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2011年3月11日に発生した東日本大震災は,今まで築き上げてきた構造物の設計における考え方や手法などの妥当性を根底から改める必要性を投げかけられるものであった.これまでは,一定の想定設計値に対する安全性を確保することのみを対象に構造物を設計してきたが,外力が想定を越えた場合の構造物の変形に関する知見は殆ど蓄積されておらず,それらに関する知見の構築は今後の重要な課題と考えられる.本研究では,外洋護岸に設置された消波ブロック群に着目した水理模型実験を行い,設計津波を越えた津波外力場におけるブロック群の大規模被災の形態,そのメカニズムや想定される周辺への影響などについて基礎的な知見を得ることを目的とした.
著者
堤 大三 藤田 正治 宮本 邦明 今泉 文寿 藤本 将光 国領 ひろし 泉山 寛明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_721-I_726, 2011 (Released:2012-03-14)
参考文献数
5

In August 2009, the Typhoon Morakot hit Taiwan and caused an extraordinary amount of rainfall. Due to the heavy rainfall, a large number of floods and sediment-related disasters occurred all over the island. In Shaolin Village, Kaohsiung County, a huge landslide occurred around 6 am August 9, destroyed the village completely and killed more than 500 people. After the landslide, authors visited the landslide site and investigated the landslide scour to collect information on factors affecting landslide occurrence such as exposed bedrock and soil layer conditions. GIS analysis using DEM data were also conducted to determine the sliding domain. According to the site investigation and GIS analysis, rainwater infiltration analysis and slope stability analysis were conducted. Results of the analysis suggested that the landslide domain, about 1,200 m long, 500 m wide and 80 m deep was collapsed by multi phased manner.
著者
吉田 護 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.510-527, 2011

本研究では,重要インフラに対するテロ攻撃を抑止するためのテロ防御策とその実施に関する情報開示戦略について主観的ゲーム理論を用いて分析する.政府にとってテロリストは「見えない相手」であり,政府のテロ防御策に関する意思決定は,テロリストの存在に関する信念に依存する.また,必ずしも政府とテロリストが共通のゲームを解いて戦略を決定しているとは限らない.このような観点から,本研究では,政府とテロリストの戦略が,各自の主観的ゲームの均衡解として導出されるような状況を定式化する.さらに,政府による警戒水準に関する情報開示策とテロ防御策の実施状況に関する情報開示策では,テロ防御策の実施状況に関する情報開示策を検討する場合の方が,政府の主観的な期待利得が高くなることを示す.
著者
有働 恵子 武田 百合子 横尾 善之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_799-I_804, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
17
被引用文献数
3 8

山地から河川,そして海岸までの土砂収支が砂浜侵食に及ぼす影響を評価するため,全国の土砂生産量,ダム堆砂量,砂利採取量,河床変動量,ならびに相対的海面水位変化と,1950年頃から1990年頃にかけての77沿岸区分別砂浜幅変化データを用いて,沿岸区分別流域における土砂収支が砂浜侵食に及ぼす影響を評価した.全国の土砂生産量,ダム堆砂量,ならびに川砂利採取量の1950年~1990年の積算値は,それぞれ560,000万m3程度,80,000万m3程度,ならびに160,000万m3程度と推定された.一方,海域では,砂浜からの消失土砂量および海砂利採取量は,それぞれ200,000万m3および70,000万m3と推定された.使用したデータのみでは流域の土砂収支を説明できないものの,川砂利採取により海岸への供給土砂が大幅に減少し,これが海岸侵食の一要因となった可能性が高いことを定量的に示した.
著者
石橋 知也 柴田 久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-15, 2014 (Released:2014-01-20)
参考文献数
147
被引用文献数
1

本研究は福岡市の都市形成に影響を与えたと考えられる1960年代に発表された施策(第一次・第二次福岡市総合計画)の変遷と当時の議論を整理しながら,都市戦略のあり方について考察することを目的とする.ここでは1958~1966年の福岡市議会での議論,1962年の西日本都市診断の新聞記事等を言説分析の対象とした.その結果,都市診断結果,政令指定都市北九州の誕生,大規模地方開発の指定が往時の都市戦略の方向性を決定付けるエポックとして抽出された.これより都市戦略のあり方における要点は,1)客観的な診断分析は都市発展の方向を決定付けることに寄与すること,2)都市の競争相手となる他者を認識することでその比較から都市の特徴を見出し得ること,3)第三者からの都市の性格付けによって相対的な位置付けが明確化されること,を指摘した.