著者
五十嵐 善哉 座波 健仁 田中 規夫 佐藤 創 鳥田 宏行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_229-I_234, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
17

防潮林は,津波に対して流体力低減や浮遊物捕捉などの効果を持つ.その一方で,樹木が破壊され流木化し家屋への被害を増長するリスクも有する.樹木が流木化せずその場にとどまる転倒破壊であれば,津波に対する抗力低減効果と捕捉効果は期待できる.樹木の胸高直径が太ければ破壊されにくくなるが,生育のためには定期的に密度を小さくする必要があり,間伐が行われる.本研究は,樹木破壊を高精度に取り入れたモデルを使用し,北海道のクロマツ間伐条件で生育した防潮林のデータにより,津波減勢効果と樹木破壊状況を評価することを目的とした.樹木破壊の観点では,間伐により樹木を十分に育てて胸高直径,枝下高を大きくした方が良いが,津波減勢の観点では,樹林帯の厚みが大きくなるように,ある程度密度があり,枝下が高くない条件が最もよい.
著者
鈴木 進吾 河田 恵昭 高橋 智幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_1346-I_1350, 2013 (Released:2013-11-12)
参考文献数
11

This research aims to analyze the characteristics of the tsunami that had stricken Osaka Bay Area in the initial Jomon period. The bathymetry of Osaka Bay and topography of Osaka Plain of 11,000 years before present are reproduced rigorously from boring data and acoustic profiling data for tsunami numerical simulation. Tsunami numerical simulations assuming ordinary level and maximum level of Nankai Trough earthquake tsunami are carried out with the water levels of every 1,000 years of initial Jomon period. It is found that tsunamis in early initial Jomon period were relatively low, and by contrast, tsunamis in late initial Jomon period were high. The area where high tsunami struck in the initial Jomon period were found from the simulation results.
著者
野志 保仁 宇多 高明 清水 達也 熊田 貴之 冨澤 和雄 川瀬 栄 下木 豪
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1209-I_1214, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
2

九十九里浜南端部に位置する一宮海岸は有名なサーフスポットのひとつである.とくに一宮海岸に設置されている7~10号ヘッドランド間では,夏季の南東からの入射条件下でサーフィンに都合のよい波が立つと言われている.本研究では,太東崎沖に発達する広大な岩礁帯(器械根)による屈折回折効果を波浪場の計算により検討することにより,当該区域のサーフスポットの成立理由を明らかにした.この結果,夏季には,沖合にある器械根による屈折・回折が著しいことから,一宮川河口から太東漁港までの全域でサーフィンに都合のよい波が立つことが分かった.
著者
内山 雄介 山西 琢文 津旨 大輔 宮澤 泰正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_571-I_575, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
12

Fluvial discharge from the rivers is viewed as a missing piece for the inventory of the radionuclides in the ocean during the accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. The land-derived input introduces a time lag behind the direct release through hydrological process because these radionuclides mostly attach to suspended particles (sediments) that are transported quite differently to the dissolved matter in the ocean. We therefore develop a regional sediment transport model consisting of a multi-class non-cohesive sediment transport module, a wave-enhanced bed boundary layer model and a stratigraphy model proposed by Blaas et al. (2007) based on ROMS.
著者
有賀 義明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.688-696, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
12

近い将来,東海地震,東南海·南海地震,首都圏直下地震等の発生が想定されている.これらの地震が想定されている本州太平洋側には,東京,横浜,名古屋,大阪などの大都市が分布しており,地下街,地下鉄等の利用が行われている.地下空間の基本特性は隔離性であり,この基本的特性から様々なメリットとデメリットが派生すると考えられる.人間の活動空間として地下を利用する場合,平時には問題が表面化することはないが,災害時には,空気,光,水,火,煙,有毒ガス等,人間の生命を脅かす危険要因が顕在化することが想定される.このような点を踏まえ,本研究では,人間の活動空間として地下空間を利用する場合を前提として,大都市の地下空間に要求される耐震性能を提案するとともに地震防災対策について考察した.
著者
金 利昭 鈴木 直記 寺島 忠良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.20, pp.691-701, 2003
被引用文献数
1

近年、より高いモビリティを求めて、あるいは高齢社会の到来、環境問題といった社会変化を背景に新しい交通手段が開発されつつあり、私的短距離交通手段の多様化が著しい。その特徴は、電動化と小型化である。これにより、諸元、性能、形状が近似し区別することが難しい境界上の交通手段が出現している。特に注意すべき交通手段は、超小型1人乗り電気自動車、電動原動機付自転車、電動三.四輪車、電動キックスケーターである。<BR>本研究は、多様化する私的短距離交通手段の動向とその問題点を把握した上で、共存する際の論点を提起している。
著者
五十里 洋行 後藤 仁志 吉年 英文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.46-50, 2009
被引用文献数
2

In order to simulate an occurrence process of tsunami induced by a slope failure due to an earthquake, it is required to treat an elastoplastic analysis for slope failure, fluid analysis and fluid-elastoplastic interaction in the numerical model. Therefore, in this study, by using the particle method which is suitable for an analysis on large deformation of soil and complicated water surface change, the fluid-elastoplastic hybrid model is developed to simulate a complicated process of a slope failure induced tsunami. In this model, an elastoplastic analysis including large deformation of soil and a fluid analysis are unified.
著者
柿沼 太郎 澤田 亮 山下 啓 入部 綱清
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_61-I_65, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Numerical simulation of tsunamis due to a landslide has been performed using a MPS method, where the water surface is indicated based on the spatial gradient of number density of particles. In comparison with the water surface displacements through hydraulic experiments, the calculation results are accurate when the inflow can be assumed as a fluid. The larger the initial potential energy of the inflow is, the larger the tsunami height becomes, although the tsunami height is not large when the initial position of inflow is below the water surface since the initial relative potential energy of the inflow is lower, as well as without impact of plunging. Due to the inflows of the assumed initial values for mass, shape, and velocity caused by a sector collapse of Sakurajima Island, the tsunami height shows more than ten meters in Kagoshima Bay.
著者
藤川 謙 福田 敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
no.14, pp.139-148, 1994

The experience on the infrastructure projects in the developing country will give us the enormous information so as to make a policy on the technical assistance for the other developing country, as well as in the developed country.<BR>From the said view point, this paper firstly briefed the history on the development of land transport networks and evidenced the role of foreign assistance which performed on the land transport development in Thailand from late 19 century, which is the one of most successful developing country in the world and has received a great amount of assistance.<BR>On the second part, the economical impact of the national highway development on the agriculture production was measured by applying the imputed value added model to the case of route 2 and 24 which have been developed with the foreign assistance such as USAID and connected the Northeast region to Bangkok. Also, the damages on the forest coursed by the highway development and regional development was analyzed as the case of one of disadvantage of land transport development.<BR>Finally, the problem on the transport project appraisal and the way of its assistance was discussed.
著者
新居 忠彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
no.11, pp.265-268, 1991
被引用文献数
1

大阪にある、仁徳陵、応神陵、履中陵、河内大塚古墳の全長300メートルを越す超巨大古墳について、この様な超巨大古墳を構築する為に必要な長年月と膨大な作業員。しかも超巨大古墳で4基、全長100メートルを越すものは数十基にも及び築造を可能ならしめた社会経済的構造を支えた技術。その中心的技術である土器製作技術、この技術の核心部分である土質工学的知識として可塑性の「のび」と「腰」。コンシステンシー限界の、液性限界、塑性限界、収縮限界などについて述べた。縄文時代の大阪としての「森ノ宮遺跡」及び弥生時代の大阪平野の稲作農業、土器製作に必要な窯の技術と金属製作。金属製作による農機具の鉄製化と、灌漑と稲作農業の発展が、超巨大古墳築造可能な経済の基礎作りになる事について述べた。
著者
富松 義晴 三輪 滋 濱田 政則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.63-73, 2012 (Released:2012-11-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本論文は,現在の土木を取り巻く閉塞的状況の根源を,土木事業と民衆とのかかわりの歴史の中に探り,土木の新しい展開の方向性を示したものである.まず,社会の土木事業に対する嫌悪感にも似た批判の原因として,日本の土木事業がどの時代においても権力者側の要求に沿って行われてきたこと,および民衆が共感し合意した公共の理念が形成されて来なかったことを述べる.また,明治以降,西欧的自然観のもと急速な社会基盤の整備が行われ,無制限に資源を採取し続けた結果,地球的規模での自然生態系の破壊が進行していることも土木に対する社会的評価の低下の要因として論述する.これらの閉塞的状況から土木が脱却するための方向として,土木技術者としての公共哲学の確立と西欧的自然観から日本人の自然観への回帰の必要性を示す.
著者
福田 崇紀 奥嶋 政嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_85-I_92, 2014
被引用文献数
2

本研究では,南海トラフ巨大地震発生時の津波被害が想定されている地方都市の沿岸平野部を対象に自動車利用避難シミュレーションを適用し,津波避難計画策定において自動車利用避難の問題点を明確にする.避難車両発生の推計結果より,滞留車両のピーク時点では来訪車両が地域内車両と同程度となった.また,楽観的な仮定にも関わらず,東北地方太平洋沖地震での被災地域での平均自動車利用避難率と同程度割合で避難車両が発生した場合には,多数の避難困難車両が発生することが明示された.自動車利用避難率が抑制された場合でも、主要区間の通行不能を仮定すると,多数の避難困難車両が発生することがわかった.一方,事業所からの自動車利用避難を抑制により,避難困難車両数を低減できることがわかった.
著者
藤本 廣 中澤 隆雄 瀬崎 満弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
no.18, pp.479-489, 1998

現在、宮崎市と宮崎県南那珂郡北郷町を結ぶ主要地方道宮崎北郷線の大部分は、天正-慶長年間 (1574-1615年) に当時の飫肥藩が飫肥城下より宮崎の赤江湊に至る最短距離の街道として開設した "旧飫肥街道" を、明治中期に宮崎県が整備した旧県道宮崎北郷線 (通称 "飫肥街道" の主要区間) からなっている。この旧県道のほぼ中央部の出仮屋峠に開鑿された "山仮屋トンネル" は、1891 (明治24) 年に着工され、1892 (明治25) 年に竣工した延長約56mの小規模トンネルで、現在、当該路線の改良により廃道区間となっているが、トンネル覆工には極めて良質の煉瓦巻工が施工され、今日に至るも殆ど損傷がなく、宮崎県北郷町所管の有形文化財として保存されていて、当時の地方部における道路トンネル築造の技術水準を推測するうえでの貴重な土木遺構となっている。本文はこの弱山仮塵トンネルを中心とした当該路線の一連の道路改良工事に関する技術吏的意義について、「宮崎県古公文書」を主にした文献学的考察と現地調査とで検討したものである。
著者
稲熊 祐介 林 博徳 辻本 陽琢 島谷 幸宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1297-I_1302, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

The Matsuura river, study site of present study, has three Unionoida species which are known as good indicator of river environment health. However Anodonta lauta, one of the three species, has been drastically decreasing in past decades. One of those reasons is change of flood water disturbance system against their habitats. Though this phenomenon is strongly related to hydraulic flow of the habitat and hydraulic characteristics of Unionoida mussels, relationship between hydraulic flow and hydraulic characteristics of Unionoida mussels are not known yet. If we can reveal that, conservation and restoration skills for river environment should be improved. In this study, we focus on hydraulic characteristics of three Unionoida species, and conducted a hydraulic experiment. As a result, Anodonta lauta had characteristic which was susceptible to the hydraulic flow. In addition, smaller sized mussels were settled slowly and easily influenced by flowing water.
著者
橋本 政子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.43-52, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
43

哈大道路は,満洲国において計画整備されたハルビン(哈爾濱)-大連間を結ぶ約1,000kmの高速道路である.本研究は,哈大道路の計画整備の経緯及び計画内容の特徴を明らかにするとともに,高速道路計画史における意義について考察することを目的としている.研究の結果,以下3点を導出した.1) 1938年から1945年にわたって推進された哈大道路の計画整備の経緯を明らかにした.2) 哈大道路は,戦前に日本人技術者らが計画整備を推進した最初期の高速道路事業として位置づけられる.3) 哈大道路の設計思想には,同時代に先行整備されていたアウトバーンと共通する内容が確認された.哈大道路は,日本人技術者によって計画整備された本格的アウトバーンとしての先駆をなすものであったといえる.
著者
柿沼 太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.191-195, 2006-10-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
9
被引用文献数
3

津波形成過程の流体運動に着目し, 津波地震による地変をA~Gの七つの形式に分類した. 非線形浅水波モデルを適用して, A, B及びE形式の想定地変に伴う津波の数値解析を行なった. A形式の, 一定領域における継続時間の長い地変の場合, 底面の隆起速度が遅いと, 伝播によって津波高さが抑制される. B形式の, 場所を変えて起きる地変の場合, 伝播津波が, その下方に現れる底面隆起の発生時刻, 隆起速度, 隆起進展幅, 進展時間及び進展速度に依存して成長する. E形式の, 地滑りによる地変の場合, 海底滑動部の前面が急勾配のとき, 比較的高波高で短波長の津波が発生し, 緩勾配のとき, 発生した長波長の津波が, 伝播中に底面の上昇を経験する.
著者
吉川 諒 柿沼 太郎 小山 彩 入部 綱清 米盛 庄一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_175-I_180, 2015 (Released:2015-11-10)
参考文献数
13

MPS法に基づく断面2次元数値モデルを適用し,地すべりや山体崩壊に伴う津波の数値シミュレーションを行なった.崩落する流体の初期位置が等しい場合,崩落体の密度が大きいほど津波高さが大きくなるが,変形して扁平となった流体が水中に突入する場合には,津波高さがあまり大きくならない.また,崩落体が剛体である場合,崩落体の初期位置エネルギーが大きいほど津波高さが大きくなるが,前方に巻き込む波が形成された後,波の前面に大規模渦を伴う津波が伝播する場合,津波高さがあまり大きくならない.更に,岸付近の津波高さは,崩落体が,比重が1の流体である場合には,沖側静水深が浅い場合に大きくなるが,崩落体が,比重が1より大きな剛体である場合には,沖側静水深が深い場合に大きくなる.
著者
五十畑 弘 鈴木 淳司 上野 淳人 尾栢 茂
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.96-106, 2012 (Released:2012-09-20)
参考文献数
18

旧江ヶ崎跨線橋200ftトラス(常磐線隅田川橋梁)は,錬鉄から鋼に切り替わった比較的初期の鋼橋である.鉄道橋から道路橋に転用され,もう一度道路橋に再生される過程で,鋼材性能等の調査がされた.イングランドのハンディサイドで製作され輸入されたことは,すでに知られていたが,再生加工中に,部材表面の陽刻から,鋼材はスコットランドの製鉄会社からのものであることが確認された. 本論文では,部材再利用を通じて得られた知見や,新たに入手した19世紀後半における錬鉄,鋼材,製作工場等に関する文献によって,錬鉄から鋼へ切り替えが進められた時期における初期の鋼橋技術について考察を行った.この結果,錬鉄から鋼へ切り替わる時期における構造材としての鋼に対する当時の認識や,切り替えにおける技術的判断の過程が明らかとなった.
著者
鎰谷 賢治 菊地 太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_30-I_39, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
7

トンネル点検業務の効率化や省力化を目的とした写真画像による点検支援技術が注目されている.この技術で変状の検出や測定などを高精度に行うためには,その撮影画像は変状の検出や測定などの後工程が要求する画像品質を満たす必要がある.この画像品質は,撮影条件や撮影システムの工学的性能だけでなく,撮影対象であるトンネル壁面や変状の状態からも大きな影響を受けるが,撮影されたトンネル壁面や変状の状態を定量的に取り扱うことはこれまで困難であった.本研究では,トンネル壁面や変状の状態を3種類のパラメータのみで定量的に取り扱う方法と,この方法を用いてシステムの性能を低コスト,短時間で合目的的かつ定量的にベンチマークすることができるトンネル点検用撮影画像のシミュレーション方法を開発し,その実用性について検討を行った.
著者
今井 龍一 神谷 大介 井上 晴可 田中 成典 藤井 琢哉 三村 健太郎 伊藤 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_58-I_66, 2021

<p> 建設現場における労働災害をゼロにするには,効果的な安全管理の対策の徹底が肝要である.安全管理の一方策として,ビデオカメラを用いて危険箇所への侵入や建機と接触する恐れのある作業者をリアルタイムに警告することが考えられるが,この場合,作業者の自動識別が必要となる.深層学習を用いた人物識別の既存研究では,顔認証,歩容認証や人物同定などで従来よりも高精度な成果を得ることが報告されているが,服装などが類似する作業者が往来する建設現場への適用は困難である.</p><p> 本研究は,建設現場の作業者が常に装着するヘルメットに着目し,深層学習の畳み込みニューラルネットワークに基づく人物の識別手法を提案した.そして,模様と符号の学習モデルに同手法の評価実験を実施し,建設現場における人物識別に適用できる可能性のある知見を得た.</p>