著者
齋藤 嘉克 佐藤 宏亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1424-1429, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
6
被引用文献数
1

「日本創生会議・人口減少問題検討分科会」は、2040年までに全国の市町村のうち約半数が消滅する恐れがあると発表した。移住定住促進を意図した政策により、近年国民の地方回帰意向が高まりその動きが注目されてきている。本研究では、奄美大島龍郷町秋名・幾里集落を対象地として研究を行なった。本研究対象地は奄美大島龍郷町20集落の中で、若年層のUターン者が多く、2008年から2018年の10年の間で急激に増加している。一般的に沖縄・奄美地域は帰還性が強く定年退職後のUターンについては離島研究の多くでも言及されてきた。しかし、若年層Uターン者の増加やその要因についての分析や報告も少なく、若者の回帰促進を考える上で回帰を促進する要因とその形成プロセスの究明は重要性が高い。
著者
遠藤 瞭太 後藤 春彦 山村 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1083-1088, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

昨今我が国を含めた先進諸国においては、社会の成熟とともに知識重視社会に向かいつつあり、教育インフラの重要性が高まっている。本研究では、サードプレイスで学習をする都市生活者を調査・分析したところ、以下の3点が結果として明らかになった。1)サードプレイスで学習する際の意思決定プロセスには、「学習を目的として場所を選択する場合」と「場所を選択する事を目的とする場合」の2種類がある。居住地や就学先周辺では、前者が多くみられた。2)サードプレイスで学習する理由には、物的な側面の動機と心的な側面の動機がある。このうち、心的な動機は、学習意欲に対して強い影響を与えている。3)サードプレイスで学習する人は「人がいる」「一人になれる」という2つの対極的な欲求を持っている。それを満たし、かつ求める物的環境の快適性を有する場所として、サードプレイスが利用されていた。以上のようにサードプレイスは都市における学習場所として価値を有していた。
著者
中澤 知己 杉田 早苗 土肥 真人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.962-967, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13

日本国内では2016年のヘイトスピーチ解消法後も、年間300を超えるヘイトスピーチが行われている。本研究では国内で初めてヘイトスピーチに対して罰則刑を定めた川崎市の条例の成立背景を明らかにすることを目的とする。 分析方法としては、川崎市の革新的な取組の背景を明らかにするために、市議会の議論に注目し、議事録からヘイトスピーチに関する発言、全1313件を抽出し、6つの論点に分類し、分析・考察した。また、条例に対する2万6千を超えるパブリックコメントを整理し、市民の意見を概観し、市議会での議論と比較し考察した。結論として、川崎市には外国人市民の抱える問題に対し、市民、市議会が協働して支援を拡充し、全国で初めての試みを行うなど、都市の中に多文化共生の意識が育っていること、止まらないヘイトスピーチに対して市民の訴えに市議会が応えたことで、全国で初めてのガイドラインや、条例などの対策が講じられたこと。都市の中に多文化共生の共通認識があったからこそ、全国初となる対策や支援を何度も実行できたこと、都市のビジョンを共有することは都市の態度を決め、都市問題に立ち向かう力になるということがわかった。
著者
松原 康介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.889-894, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
26

シリアのアレッポは、世界各地との交易を背景として多様性豊かな商業都市として発展した。20世紀に入ると高度な資本主義の発展の下で歴史的市街地に開発圧力が集中したが、その時の都市計画の理念と実態はいまだ明確ではない。そこで本研究では、仏委任統治領時代に始まるフランス都市計画のアレッポにおける変遷を考察し、近代都市計画の導入に伴う都市空間の変容を明らかにする。旧市街における道路計画はダンジェによる最初の都市計画に既に現れていた。エコシャールは古代遺跡局出身者の立場から歴史的建築の修復計画をこれに加える一方、道路計画に変更は加えなかった。独立後、ギュトンの計画はこれまでの道路計画を更に発展させ、具体的な街路線計画を残した。この計画が旧市街の破壊につながったと言われるが、ギュトンは計画の背景にアレッポ市側の要請があったことを示唆している。その後に都市計画を担当した番匠谷尭二は、旧市街に道路を貫通させない方針を明確に示し、ギュトン計画にあった道路の多くを削除した。それでもダンジェ以来の道路計画のいくつかが方針に反する形で採用されており、そこには商業都市アレッポの開発圧力があったものと考えられる。
著者
讃岐 亮 吉川 徹 饗庭 伸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.481-486, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

近年日本では、大規模商業施設が田園地域の真只中に立地している現象が多く見られる。本研究はこの現象に対する理論モデルを作成することを目的とする。そのため本研究では、2つの都市中心とその中間の地域における立地ポテンシャル優位性の逆転に焦点を当てた、商業施設の立地モデルを提示する。このモデルは自動車移動可能性と人口分布という2つの変数とするものである。立地ポテンシャルは二乗距離の指数関数によって表される。このモデルを、2001年開業の大規模ショッピングセンターが中間地域に立地する酒田市・鶴岡市の地域に適用し、適合性の高い結果が得られた。
著者
布川 悠介 伊藤 史子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.589-564, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
6

「グラフィティ」とは街に描かれる落書きのことである。本研究ではグラフィティ分布と都市要素との関係を分析し、ライターの行動特性に関する示唆を得ることを目的としている。高円寺駅を中心とした半径600m以内のグラフィティ分布の調査を行って得られた地点と数、種類のグラフィティ属性データを用いて空間分析を行った。駅距離とグラフィティ密度の関係から非線形回帰分析により密度関数を導出した。ライター間の敵対的な「Communication」地点と不特定多数に見せつけるための「Exposure」グラフィティの各分布が商業地域、駅南の商業地域に集中していることをKolmogorov-Smirnov検定、二項検定により示している。グラフィティを描く目的に着目して行った空間分析の結果より、ライターの行動特性は都市要素と関係していることがわかった。特に駅からの距離、用途地域はグラフィティを描く場所を決定する上での大きな要因となっている。これらの分析によって導かれた結果はライターの行動特性を空間的に捉える一つの指標になると考えられる。
著者
山田 あすか 讃岐 亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.881-887, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
12

放課後のこどもたちの活動の場である学童保育拠点は,就労支援や児童福祉の観点から,ますます拡充が求められている。その際,コストや整備期間の短縮といった観点からは地域資源の活用が有効であると考えられる。本研究では,都内の学童保育拠点の設置状況(単位面積あたり拠点数,1拠点あたり定員)が異なる3つの区を対象としたケーススタディとして,学童保育拠点の配置と,定員の過不足についての検証を行う。また,定員が不足する場合には拠点増設を想定し,[将来想定]条件での将来的なニーズの把握とそれに対応した拠点整備効果の検討を行った。拠点分布に偏りがある場合の利用圏域の調整など現有資源の有効活用,ならびに地域資源の活用を想定して拠点の圏域と定員の調整を行い,将来的な利用児の増加に対する対応可能性を示した。この成果は,高学年児童も受け入れる学童保育制度への移行や,1人あたり面積の拡充等に向けた道筋となる資料として一定の価値があると考える。
著者
飯田 晶子 大澤 啓志 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.319-324, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
21

本研究では、南洋群島の旧日本委任統治領、パラオ共和国バベルダオブ島の3つの流域で行われた農地開拓とボーキサイト採掘を事例に、開拓の実態と現代への影響を分析した。農地開拓では、島内に4つの指定開拓村が設置され、1940年には合計1671人が2255町歩の土地に暮らし、主にパイナップルやキャッサバが栽培された。一方で、日本人が撤退した後65年を経た現代においても、当時の森林伐採と土地収奪的な営農による植生への影響、および、移入種Falcataria moluccanaによる固有種への影響が見られる。ボーキサイト採掘地は、島内2カ所に合計106ha設置され、島の一大産業であった。開拓面積は小さいものの、表土を剥がしとったために、採掘当時は多量の土砂が流出し、湿地と沿岸域に堆積した。また、パラオ人集落でも、土砂の埋立てと集落移転、インフラ設備の再利用、産業遺産の観光化など、少なからず日本の影響が見られる。開拓はいずれも水系を軸として流域を単位に進められており、開拓の影響は沿岸の生態系やパラオ人集落など、流域内の自然や社会に対して広域、かつ長期にわたる影響を与えている。
著者
加藤 翔太 佐久間 康富
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.13-16, 2020 (Released:2020-07-25)
参考文献数
10

近年、民間事業者による都市公園の管理運営が進められてきている。本研究では、天王寺公園エントランスエリア「てんしば」を対象に、大阪市と近鉄不動産の公共性と収益性ならびに事業評価の実態を把握し、公共性と収益性の担保のあり方を目的としている。調査の結果、収益性よりも公共性を重視し、多くの利用者が利用する場所を確保するために芝生広場を維持管理していること、イベントやテナントの選定の際には誰もが利用しやすい環境を担保していることがわかった。公共性に配慮し公園機能を充実させることによって、集客力を向上させる。その結果、持続的な公園運営を可能にし、ひいては賑わいの拠点としてエリアの活性化が期待される。
著者
坪原 紳二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.84-95, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
27

オランダ・フローニンゲン市は1977年、交通循環計画(VCP)に基づき中心市街地を4セクターに分割し、車がセクター間を移動するには一度、環状線に出なければならないようにした。これによって中心市街地の自動車交通量は半減した。本論文はこのVCP導入の政治的プロセスを分析することで、環境にやさしい交通政策の実現にとって必要な民主主義について、示唆を与えることを目的とする。当時導入を主導したニューレフトは、リベラル・デモクラシーの実現手段である政治化、対極化、及び参加民主主義の実現手段である市民参加を、政治信条として掲げていた。ところが実際のVCPの導入プロセスにおいては、政治化と対極化は明確に見て取ることができたが、市民が参加する機会は極めて限られていた。このことは、環境にやさしい交通政策を実現するうえでは、参加民主主義よりもむしろリベラル・デモクラシーが有効であることを示唆している。
著者
長曽我部 まどか 谷本 圭志 森本 智喜
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.792-798, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
20

本論文では,2016年の鳥取県中部地震を事例として,被災者が災害ボランティアセンター(災害VC)に依頼したニーズを分析し,ニーズが発生する要因と発生するタイミングを明らかにした.被災者のニーズを専門的な作業が必要なニーズと一般のボランティアが対応できるニーズに分類し地区別に集計した上で,それぞれの発生要因について,地区の被害状況,災害VCまでの距離,高齢化率,自主防災組織の活動率を取り上げ,ポアソン障壁モデルを用いて推計を行った.その結果,依頼の有無については,専門ニーズは被害状況や距離が影響を及ぼす可能性が,一般ニーズは被害状況,距離,高齢化率,自主防災組織の活動率が影響を及ぼす可能性が示唆された.依頼のタイミングについては,距離を除く全ての変数が影響を及ぼす可能性が示された.更に,年齢と天候状況に着目した分析を行った結果,専門ニーズは高齢であるほど依頼するタイミングが早く,一般ニーズは,高齢であるほど遅いことが明らかになった.また天候が悪いと依頼をするタイミングが早まることが分かった.
著者
窪田 亜矢
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1358-1364, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
38

東日本大震災後に都市計画が適用された状況をふまえれば、都市計画において合理的な目標像を設定できたとはいえない。都市計画の再考が必要である。都市計画は、特定の都市や地域を対象に、今よりも良い状態が存在し、それを合理的な目標像として描き、規制と事業によって実現できるという信念に基づいている。現状からの変化を前提としているので、個人の移動の自由を制限することを原理的に包含している。しかし、個人の移動の自由とは、現状保障を基本とする居住や事業を営む場所に関するもので、個人の命や生活に関わる重大な自由である。そこで、現状の都市計画に、個人の移動の自由を尊重する規範を並立させる必要がある。
著者
明見 駿 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.436-443, 2023-12-11 (Released:2023-12-11)
参考文献数
28

本研究は、広域的な視点からの効率的な図書館配置に向けた条件を明らかにすることを目的とした。この施設配置分析では、公平に提供されるべき図書館サービスの評価指標値を設定した。さらに、複数の市町が連携して策定している立地適正化計画と、近隣市町の図書館へのアクセス利便性を考慮して4つの施設配置シナリオを作成した。その結果、効率的な図書館配置を実現するためには、都市機能誘区域への図書館移転が有効であることが明らかになった。そのため、市町村は、公共交通機関へのアクセスが便利な都市機能誘導区域内に図書館を移転した場合、他の市町村の図書館へのアクセシビリティが向上することを考慮した図書館配置計画を策定することが求められる。
著者
丸山 泰誠 轟 慎一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.494-500, 2023-12-11 (Released:2023-12-11)
参考文献数
20

近年、駅周辺でまちなかに賑わいを創出するために「居心地が良く歩きたくなる」空間づくりを促進し、ウォーカブルなまちを形成することが重要である。滋賀県の駅周辺でも様々な活動が行われている一方で、自然災害が頻発化・激甚化し、防災・減災への対応が必要である。そこで本研究では全国でも流域治水の先進事例として知られている滋賀県のJR駅周辺地域を対象に、水害リスクと地理地形的条件を踏まえた駅周辺評価の検討を行い、コンパクトなまちづくり実現に向けた分析考察を目的とする。滋賀県北部24駅の駅周辺1km圏の施設立地分析を行うとともに、駅周辺徒歩圏で市街化が可能なエリアを把握し、北部4市の地理地形的特徴と課題点を明らかにした。
著者
安達 友広 久保 勝裕 西森 雅広
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.546-552, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

明治期の北海道内陸部で建設されたグリッド市街地の多くは、「殖民地区画制度」に基づいて計画された。これらは合理的に農耕地を開拓するための原野区画と一体的に形成され、空間的には原野区画とその軸性が一致するのが特徴である。特に、原野区画の基準となった「基線」は、開拓道路として地域で最も早くに開削され、沿道に市街地が開設された場合が多いことから、市街地の空間構成を考える上でその性格を把握することは重要である。一般的に、北海道の空間計画における「基線」は、高燥地であること、勾配や凹凸が少ないこと、原野区画の基準線として当該原野を長く貫くこと、等の合理的な理由に基づくものとされてきた。しかし、基線上に山当ての現象が見られる等、それだけでは説明できない場合も指摘されている。本論では、歴史的資料を用いて原野の空間計画の考え方を分析すると同時に、羊蹄山周辺地域の事例分析から「基線」の設定と山当ての関係を考察し、それらが合理性だけではなく、デザイン的要素も加味した計画手法であったことを明らかにした。
著者
瀬川 遥子 島田 由美子 藤井 さやか
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1187-1194, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
20

筑波研究学園都市では、1980年の概成から40年が経ち、国家公務員宿舎の廃止や事業予定地の売却に伴う民間事業者による開発が相次ぎ、住宅地開発が加速している。従前の公務員宿舎地区では、エリア全体に適用される「計画標準」という開発ルールによって、空間デザインの統一や敷地間の連続性が図られ、研究学園都市の空間資源を創出していた。計画標準に代わる誘導策として、2010年より宿舎跡地に「地区計画」が策定されている。本研究ではこの地区計画に着目し、規定内容及び形成された空間の質に対する評価から、地区計画が研究学園都市の空間資源の継承に果たす役割と課題を明らかにすることを目的とする。地区計画作成内容、現地調査、規定項目と実際の開発状況の分析から、現行の地区計画では開発ボリュームの増大はコントロールできていないが、反対に、かきやさくの構成と緑については、一定の誘導効果をあげていることが明らかになった。
著者
梅川 智也 原 重一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.265-270, 1997-10-25 (Released:2018-05-01)
参考文献数
6

In 1997, ten years have elapsed since the Comprehensive Resort Area Development Act was enacted in 1987. From the view point of resort development, the past ten years is devided into 3 terms; a term of planning, planning-in-action, modification of policy. The act has some problems as follows, dependence on assumption of too short period to materialize plans, too much dependence on private sectors, and supporting plans for accommodations and residences, which are one of the basic items of resort area, were not enough. And also saying, it was the very fact that the know-hows and human-resources relating on resorts were absolutely want. We have to analyze and transmit to the future what we did in the past ten years for resort area development, not to repeat the same kinds of mistakes.
著者
五島 寧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1137-1144, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
97
被引用文献数
2 1

通説では,満州国の都邑計画法は,1968年の都市計画法全面改正を先取りし,1970年の建築基準法第五次改正を越えていたと説明されていますが,その根拠は法律の規定が似ているということです。本研究では,満州国都邑計画法の建築物の用途規制,形態規制および緑地区域について都市計画法や建築基準法と比較分析を通して,制度が継承されているのか考察しました。用途規制は細分化されていますが,満州国に多い新規市街地の統制に適していて,内地や朝鮮・台湾のような既成市街地へは適用しにくく,建築基準法とは異なる方向へ進化していました。また,緑地区域は制度化されたという点で画期的でしたが,要するに土地利用の規制のみに頼った制度の一つでした。1968年の都市計画法の市街化調整区域は,規制のみによる制度の弱点を踏まえて,人口圧力の吸収を考慮していましたので趣旨が異なります。法文上にも思想の違いが顕れていていました。
著者
福岡 孝則 加藤 禎久
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.423-429, 2019-03-07 (Released:2022-06-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

アジア・モンスーン気候下で,都市・国土スケールを対象として展開されるGI適用策の推進手法としてのシンガポールのABC Waters Design Guidelines(ABC-WDG)の内容と実態,及びガイドラインで認証された事例の動向・実効状況から得られた,GI適用策推進に向けた知見は以下の通りである。ABC-WDGは計画・設計や啓蒙のための媒体である一方で,認証制度や人材育成,認証プロジェクトの推進と市民への啓蒙までを3P(市民,行政,民間)で包括的に推進する戦略であることがわかる。シンガポールのABC-WDGは,都市・国土スケールにおけるGI適用策の推進手法としての一つのあり方を示している。
著者
菊地 淑人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.161-168, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
19

本稿では、ゴードン W・プランゲ文庫所蔵の終戦直後に各地で発行された観光関連新聞を対象に、これらに掲載された自然公園に関する記事の網羅的な収集とその検討から、国立公園を中心とする自然公園の指定や観光開発等をめぐる地域レベルの動向とその展開について明らかにすることを目的とする。戦後直後、国立公園指定推進運動は全国に広がり、指定推進のために多くの団体も設立された。こうした取組みに多くの観光関連団体も参加していたことは注目され、国立公園の指定に関する地元の期待は戦前と同様に高く、特に観光面での強い期待があったことが指摘できる。