著者
笠原 稔 宮町 宏樹 日置 幸介 中川 光弘 勝俣 啓 高橋 浩晃 中尾 茂 木股 文昭 加藤 照之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

ユーラシアプレートと北米プレートの衝突帯には、2つの巨大プレートとは独自の変動をするオホーツクプレートとアムールプレートの存在が提案されてきた。そこで、実際の観測の手薄な場所でもあったこの地域での境界域テクトニクスを検討するために、想定アムールプレート内のGPS観測により確認することと、この地域での地震観測の充実を意図して、この研究計画は進められた。1995年以来進めてきた日口科学技術協力の一環として、この地域での共同研究の推進に関するロシア科学アカデミーと日本側大学連合との合意を元に、2002年から2004年の計画で、GPSの可能な限りの多点化と連続観測を主として極東ロシアでの観測を進めてきた。また、地震観測は、サハリン島の衝突境界としての特徴を明らかにするために、南サハリン地域での高感度高密度観測を推進してきた。結果として、アムールプレートの動きは想定していたほど単純なものではなく、計画の3年間では結論付けられなかったが、その後の日口での観測継続の結果、サハリンでの短縮はかなり明瞭ながら、その原因をアムールプレートの東進とするには、まだ難しいということになっている。今後、ロシア側の観測網の充実が図られつつあり、その解決も時間の問題であろう。一方、サハリンを含む、日本海東縁部に相当する、2つのプレートの衝突帯と想定される場所での地震活動は高く、2000年8月のウグレゴルスク南方地震の後も、中越地震、留萌支庁南部地震、能登半島沖地震、そしてネベリスク地震、と引き続き、これらの地震発生帯が、2つのプレートの衝突境界域であることを示していると思われる。また、南サハリンでは、高感度高密度地震観測が続けられ、明瞭な南北延長の地震活動帯が認識できるようになってきた。これらは、北海道の地震活動帯の延長と考えられ、今後より一層、衝突帯のテクトニクスを考える上でのデータを提供できたものと評価できる。
著者
鈴木 邦明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

骨芽細胞様細胞株であるMC3T3-E1細胞は、コンフルエンス後石灰化基質を分泌し、石灰化部位形成時期にかけて蛋白質チロシンホスファターゼ(PTP)活性、蛋白質チロシンキナーゼ(PTK)活性、分子量263,224,29.5,28.2kDaの蛋白質のリン酸化チロシンレベルが上昇した。PTK,PTPは、細胞の増殖、分化に重要な役割を果たしているとされており、その中の石灰化過程におけるPTPの役割を調べるため、MC3T3-E1細胞のPTPの精製を試み、性質を調べた。MC3T3-E1細胞の細胞質画分から3種類のPTPを部分精製した。そのうち2種類はイムノブロッティング法により抗PTP1B,PTP1D抗体と反応し、PTP1B,PTP1Dと判明した。これらPTP1B,PTP1Dは細胞が増殖、分化し、基質を分泌し石灰化する過程で発現量が増加し、またオリゴマーとして存在していることが推測された。市販の抗体と反応しなかった他の1種類のPTPの精製を試み、カラムクロマトグラフィーにより全細胞ホモジネートに比較して、4779.1倍精製した標品を得た。この標品の分子量はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により33あるいは39kDaであり、またゲル濾過による見かけの分子量は933kDaであった。PTP活性の至適pHはpH6付近であった。活性は一般的なPTPの阻害剤であるバナジン酸、モリブデン酸、亜鉛によって阻害され、セリン/スレオニンホスファターゼの阻害剤であるオカダ酸によっては阻害されなかった。また、マグネシウムによって活性が増強され、EDTAによって活性が阻害された。以上の結果からPTPが石灰化過程においてMC3T3-E1細胞の細胞増殖、基質合成に深く関わっている可能性と、MC3T3-E1細胞が新種のPTPを有している可能性が示唆された。
著者
李 湘平
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.205-220, 2008-03-10

株式会社という経営形態は,巨万の富を急速に築き,多くの人に利益をもたらし,さらに一国の経済発展を促進する。しかし,大規模な株式会社は,一旦不正・不当な行為が発生すると,社会に非常に大きな衝撃を与えるものである。バブル崩壊以後,企業不祥事が相次ぎ,経営者を規律づける機能の強化といったコーポレート・ガバナンスの議論が沸騰してきた。現在,コーポレート・ガバナンスの議論は極めて複雑な状況にあるが,その中核は,不正・不当行為を防止するために,株主が経営者を制御するメカニズムであると考えられる。監査役は,株主が経営者を有効に規律づけるのに,「見張り」という役割を担うのである。昭和49年以後の商法改正の軌跡をみれば,法は監査役に大きな期待を寄せ,監査役制度を何度も強化してきたが,企業不祥事が依然として続発しており,監査役は十分に機能しているとはいい難い状況にある。 本稿では、監査役制度の歴史や特質を取り上げ,コーポレート・ガバナンスにおける監査役の役割と位置づけについて考察している。
著者
高島 郁夫 苅和 宏明 森田 公一 只野 昌之 竹上 勉 江下 優樹 水谷 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究において、日本に存在しているかまたは侵入の可能性のあるフラビウイルス感染症の流行予防のための診断法の開発、病原性の解明および蚊の調査に関する研究を実施して以下の成果を得た。1.診断法の開発1)ウエストナイル熱について、RT-PCR RFLP法、リアルタイムPCR法およびRT-LAMP法による遣伝子診断法を開発した。この方法によると簡便な設備により、ウエストナイルウイルスと日本脳炎ウイルスおよびウエストナイルウイルス株間の簡別診断が可能となった。2)ダニ媒介性脳炎の迅速な血清診断法として、ウイルス株粒子を用いたヒト用のIgGおよびIgM-ELISA法を開発した。2.病原性の解明1)ウエストナイルウイルスの神経侵襲性毒力がウイルスエンベロープ蛋白への糖鎖付加により決定されることを明らかにした。2)ダニ媒介性脳炎ウイルスの神経侵襲性毒力は、ウイルスエンベロープ蛋白の1個のアミノ酸の置換により電荷が陽性に変化することにより低下することが示された。3)ダニ媒介性脳炎ウイルスの感染性cDNAクローンを用いた解析により、NS5とエンベロープ蛋白における各々一ヶ所のアミノ酸変異が神経毒力の低下に相乗的に作用していることが示唆された。3.蚊の調査1)ウエストナイルウイルスに対する、日本産蚊4種アカイエカ、イナトミシオカ、ヒトスジシマカの感受性、およびアカイエカの媒介能を証明した。2)ウエストナイルウイルス・デングウイルス媒介蚊ヒトスジシマカのJNKタンパクの機能を解析した。
著者
近藤 誠司
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学農学部邦文紀要 (ISSN:03675726)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.192-233, 1987-01-20
著者
花井 一典 中澤 務
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

中世におけるギリシア哲学の複雑かつ微妙な受容過程を、多少なりとも明確な図式の中に描き出すことが、本研究の目的であった。この目的を達成するために、哲学史上の基本概念(「心」「理性」「本質」「意志」「認識」「言語」など)に焦点を当て、盛期スコラの哲学者達に至るまでの代表的な哲学者達に関して、その概念の理解と用法の変遷を洗い出し、どのような影響関係を持ちながら、問題の概念が受容されていったのかを調査し、このような基礎的研究をもとにして、中世スコラ哲学におけるヘレニズム・ヘブライズム統合の基本的な図式に関する総合的な見方を提示する試みを行った。この目的を実現するために、次のような基本的な作業を主に行った。(1)現有の『キリスト教著作家全集』、『アリストテレス全集』、『トマス・アクィナス全集』のテキストをCD-ROM版によって整理し、哲学上の基本概念に関して、その用法を網羅したインデックスを作成した。(2)以上の作業によって集められたデータをもとに、各分担者がそれぞれの専門分野から分析を行った。中澤はギリシャ研究の立場からアリストテレス的概念の中世における受容(ないし変容)形態を考察した。また、その後の中世独自の展開過程に関しては、花井が、詳細な調査・分析を試みた。本研究は、データベースを活用した、概念の歴史的な受容の姿を明確にする試みであり、研究も大部分は基礎的な調査に終始したが、より総合的な研究への足がかりとしての基盤作りは十分にできたのではないかと考えている。
著者
花井 一則 中澤 務
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

へブライズムによるギリシア哲学の受容・深化の様相を探り出す作業を通して西欧諸科学の母胎としてのスコラ学の成立過程を明らかにするという所期の目的を達成するために、平成9年度にはテキストデータベースの調査や最近の研究状況の調査などの基礎的研究を行ない、平成10年度にはこうした基礎的調査を整理し総合するとともに、具体的なテーマに即した個別的研究をおこなった。また、個別的研究を総合し、近世諸科学に対するスコラ学の概念的な影響に関して一定の見取り図を描き出す作業をおこなった。中澤はギリシア哲学研究の立場から、ギリシア哲学の基本概念がスコラ学の形成過程でどのような変容を受けたのかについて考察した。特に、ギリシア哲学における真理概念を、プラトンの『プロタゴラス』と『テアイテトス』を主なテキストとして分析する作業と、快楽概念をプラトンの『ピレボス』とアリストテレスを中心に分析する作業をおこなうとともに、スコラ学におけるこれらの概念の受容に関して、主要な哲学者のテキストの調査をおこなった。花井は、トマス・アクイナスにおける真理と善の概念を分析してその特徴を明らかにすると共に、その後世への影響について考察した。また、こうした研究成果をもとに、スコラ学の基礎的概念の独自性を総合的にまとめ、また、それが近代諸科学に与えた影響とその意義についてまとめた。その成果は、研究成果報告書に収録されている。
著者
鵜飼 重治 大貫 惣明 大塚 智史 皆藤 威二
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

9CrODSフェライト鋼は硬質相である残留フェライト相を含有する酸化物分散強化複合材料である。残留フェライト相の生成は酸化物粒子によるα/γ異相界面のピン止め作用に因ること、また残留フェライト相の硬質化は酸化物粒子の母相との整合性維持によるナノ粒子化に起因することを明らかにした。熱間圧延により焼戻しマルテンサイト相の一部をフェライト相に変態させることにより、高温強度と延性が著しく向上することを発見し、新たな先進ODS複合材料の製造プロセスを提示した。
著者
ITO GEN ICHIKAWA AKIHIKO
出版者
北海道大学
雑誌
Insecta matsumurana. Series entomology. New series : journal of the Faculty of Agriculture Hokkaido University (ISSN:00201804)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.55-65, 2003-12

Original label data associated with all extant known types of 28 Orthoptera species described by Shonen Matsumura are recorded. All the specimens examined are preserved in the Laboratory of Systematic Entomology, Faculty of Agriculture, Hokkaido University, Sapporo, Japan (SEHU) except four syntypes of four species preserved in the Department of Plant Pathology and Entomology, National Taiwan University, Taipei, Taiwan (ENTU). Xiphidium sasakiri Matsumura, 1904 and X. dimidiatum Matsumura et Shiraki, 1908 are synonymized with Conocephalus japonica (Redtenbacher, 1891) and C. maculatus (Le Guillou, 1841), respectively. Phaneroptera grandis Matsumura et Shiraki, 1908 is transferred to Elimaea. Conocephalus luteus Matsumura et Shiraki, 1908, recognized in Ruspolia by Baily (1975) is transferred to Palaeoagraecia.
著者
本田 実信
出版者
北海道大学
雑誌
北方文化研究 (ISSN:03856046)
巻号頁・発行日
no.2, pp.89-110, 1967-03
被引用文献数
2
著者
田村 圭一
出版者
北海道大学
雑誌
哲学 (ISSN:02872560)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.右137-右152, 2008-02-29
著者
八若 保孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

根管治療におけるリーミング・ファイリングは根管内壁にスメア層を形成する。本研究は、このスメア層を除去する根管洗浄方法の確立を目的とした。その結果、永久歯ではEDTAあるいはEDTAとNaOClを併用して超音波洗浄を行う方法が、スミヤー層を効果的に除去し、乳歯ではNaOClの超音波洗浄を行う方法がスミヤー層を除去することが示された。超音波の根管洗浄への使用は、水酸化物イオンの拡散に有効であることが示唆された。
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
no.134, pp.1-29[含 英語文要旨], 2011
著者
細田 典明 藤井 教公 吉水 清孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

インド哲学・仏教思想においてヨーガ・禅定の修習は重要な修行法であるが、その起源は必ずしも明確になっているとはいえない。本研究では最も成立の古い『ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド』第1・2章を解読し、その内容が、古ウパニシャッドにおける内観によるアートマンの認識を瞑想の問題として捉え得るものであり、他のウパニシャッドにも影響していることを明らかにし、研究発表を行った。仏教において四禅・四無色定と八解脱・八勝処、四念処をはじめとする三十七菩提分法、止観など様々な修行法が知られるが、それらはどのようにして体系化されたのかという問題について、阿含・ニカーヤの中で『雑阿含』「道品」を中心に考察し、三十七菩提分法による修行の体系化とともに、三学(戒・定・慧)の構成は禅定の意義が、修道の要であることを、律蔵文献や仏伝などを広く参照して解明し、研究発表を行った。本研究によって、従来不明であった『雑阿含』の禅定に関する漢訳語彙のサンスクリット原語やチベット訳語の多くが判明し、原始仏教研究の資料論に貢献した。以上、本研究は、古代インドにおける瞑想・禅定の問題点の解明に寄与したが、研究成果報告書の論文篇として、「『雑阿含』道品と『根本説一切有部毘奈耶薬事』」と、研究期間以前に公刊されたが、『雑阿含』「道品」の持つ様々な問題点を整理した「『雑阿含経』道品の考察 -失われた『雑阿含経』第25巻所収「正断相応」を中心に-」を参考として掲載する。さらに、資料篇として、『雑阿含』「道品」について、『瑜伽論』「摂事分」のチベット訳を入力し、玄奘訳と対照したものを提示し、今後の阿含研究の資料に供するとともに、データベースとして公開する準備を進めている。