著者
近藤 健一郎 梶村 光郎 藤澤 健一 梶村 光郎 藤澤 健一 三島 わかな
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は以下の諸点において従来の近代沖縄教育史研究を発展させた。第一に標準語教育実践に関して、方言札の出現時期とその歴史的意義、また発音矯正が全県的な教育課題となる契機と過程を明らかにした。第二に宮良長包に関して、沖縄の音楽教師の系譜の中に位置づけ、また彼の作詞作曲した「発音唱歌」(1919年)の教育実践上の特質を明らかにした。第三に沖縄県初等教育研究会の討議内容を通史的に明らかにした。さらに、沖縄県教育会機関誌『沖縄教育』(1906~1944年)の悉皆的な収集においても成果を収めた。
著者
Tha KhinKhin 寺坂 俊介 工藤 與亮 山本 徹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

電流の流れやすさを示す指標である導電率は、体内臓器や組織系によって値が異なる。導電率を非侵襲的に測定できれば異なる組織の区別が可能となり、病的状態での組織系の予測診断の補助が期待できる。本研究は、脳MRIによる非侵襲的導電率イメージングを開発し、この方法による頭蓋内構造の導電率測定の正確性を明らかにすることを目的とした。脳MRIによる非侵襲的導電率測定法の正確性、非侵襲的導電率測定の有用性等について検討した。脳MRIによる非侵襲的導電率測定の再現性の高さ、電極を用いての組織の導電率測定結果との一致率の良さ、神経芽腫をより悪性度の低い神経膠腫から区別できること、等が示された。
著者
伊藤 敏彦
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は音声インターフェイスにおいて、対話のリズムが、ユーザの快適性や安全性にどれほどの影響を与えるか明らかにし、これらの要素を音声インターフェイスに導入するための新たな枠組みを提案することである。そこで、これらに関する対話リズムを生成するためのモデル化のさらなる改良と、音声対話システムへの実装、システム処理速度向上などを行った。結果、これまでの音声対話システムに比べ、人間らしさ、安心感などの評価を上げることができたが、制作システムの処理速度、タイミング認識精度、音声認識・言語理解精度などの不完全さにより、人間と同等の評価まで上げることはできなかった。
著者
宮内 泰介 古川 彰 布谷 知夫 菅 豊 牧野 厚史 関 礼子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、ヨシをはじめとするさまざまな半栽培植物(または半家畜の動物)に焦点を当て、かかわる人間の側のしくみ・制度を論じることにより、自然のあり方とそれに対応する人間社会のあり方を統一的に把握するモデルを提示することを目標としている。本研究の最終年度に当たる平成19年度は、(1)宮城県の北上川河口地域でヨシ(葦)(Phragmites australis)原の利用のしくみと変遷についての現地調査を継続し、まとめにかかる一方、(2)研究会を開いて多様な専門分野の研究者が集まり、本研究の総括的な議論を行った。その結果、(1)の北上川河口地域での調査では、ヨシ原が歴史的に大きく変遷しており、それと地域組織や人々の生活構造の変遷が大きくかかわっていることが明らかになった。自然環境-自然利用-社会組織の3者が、相互に関連しながら、変遷している様子が見られ、さらに、そこでは、強固なしくみと柔軟なしくみとが折り重なるように存在していることが分かった。また、(2)の総括では、(i)「半栽培」概念の幅広さが明らかになり、(a)domestication(馴化、栽培種化)、(b)生育環境(ハビタット)の改変、(c)人間の側の認知の改変、の3つの次元で考えることが妥当であり、さらには、さまざまなレベルの「半」(半所有、半管理.)と結びついていることが明らかにされた。(ii)また「半栽培」と「社会的しくみ」の間に連関があることは確かだが、その連関の詳細はモデル化しにくいこと、したがって、各地域の地域環境史を明らかにすることから個別の連関を明らかにしていくことが重要であることがわかった。 (iii)さらに、こうした半栽培の議論は今後の順応的管理の際に重要なポイントになってこと、これと関連して、欧米で議論され始めているadaptive governance概念が本研究にも適応できる概念ではないかということが分かった。本研究は、そうした総括を踏まえ、成果を商業出版する方向で進めている。
著者
岡田 弘 筒井 智樹 大島 弘光 宇井 忠英
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

フィリッピン・マヨン火山で1993年2月2日に発生した火砕流噴火は、事前の警告もなく70余名の犠牲者を出した。また、火山から6kmの永久居住禁止地区に加え、南東側では半径10km迄の数万人の地域住民が避難している。本研究班では、平成5年2月26日から3月5日の期間にフィリッピン火山地震研究所の協力を得て調査研究を実施した。地震記録、噴出物、過去の噴火記録などを手がかりに2月2日の火砕流の特性を解析した。爆発型で始まり、南東ガリーを崩落直進し屈曲点での破砕が、激しいサージと多数の死者の原因らしい。地震や空振の共同観測資料では、3月1〜4日にかけての火山灰噴出や小規模火砕流の実体を明らかにすることができた。マヨン火山はフィリッピンで最も活発な火山として噴火前から手引書の作成、観測所の整備、災害予測図の作成等注目する取り組みがなされていた。にもかかわらず、2月2日の噴火に先立ち直前前兆としての群発地震や徴動を時間・日単位で認めることは出来なかった。長期的には数ケ月単位の地震活動の衰勢、また顕著な前兆として周辺での井戸水位の低下があった。火山地震研究所は、二酸化硫黄放出量や地震徴動等の数値情報が盛り込まれた火山情報を発表し、5段階の警戒レベルを用いている。学ぶべき点も多い。避難所や大学での火山活動説明会や国際火山学会の映像ビデオの活用、更にマスメディアとの対応などに接する機会もあった。また、噴火直後から1ケ月間駐在し調査研究を行っていた米国の火山学者と、緊密な連絡をとると共に、調査における多大な授助を受けた。運転手付きの外交官車両や人工衛星通信設備の利用など、災害時の緊急調査研究の内容について、今後の教訓として得るものも多かった。
著者
横山 敦郎 安田 元昭 山本 悟 網塚 憲生
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

咬合に起因する微小動揺がオッセオインテグレーションに与える影響を明らかにすることを目的に、ラット上顎臼歯を抜歯後、チタンスクリューを即時埋入し、1週間後に咬合接触を付与し、咬合接触を与えないラットを対照群とし、組織化学的検索を行うとともに、マイクロアレイを用いて遺伝子発現の比較を行った。咬合接触を付与したラットにおいてはスクリュースレッド間の骨梁幅は有意に太くなり、スクレロスチン陽性骨細胞率は低下していた。遺伝子発現については、骨形成やBMP調整に関与する遺伝子が発現していた。これらの結果から、抜歯後即時埋入早期に与える適度の咬合負荷は、オッセオインテグレーションを早めることが示唆された。
著者
松村 洋子
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

【クビナガハムシ亜科の系統推定とオス・メス交尾器の詳細な形態観察から,交尾器の伸長現象と連動したオス・メスの複雑な共進化の全貌が解明されつつある】一般に繁殖に関わる形質は,他の形態形質では区別ができない種間でも,顕著な差異を示す例が多く知られる.交尾器特有の多様性を生む原動力は性淘汰・性的対立によると考えられ,行動生態学的な視点からの研究が行われてきた.一方で,その多様な形態をもつ交尾器の進化史はこれまであまり着目されてこなかった.さらにオス・メス交尾器の共進化の研究もサイズという一面しか捉えられてこなかった.形態形質の変化は個体発生の変更によってもたらされ,発生単位の構成要素間で連動した形態変化が起こることが十分に予想される.しかし,これまでにそういった発想で繁殖形質の網羅的な形態観察に基づく共進化史を推定した例はない.本研究では,これまで見落とされてきたサイズ以外の要素も含めたオス・メス交尾器の共進化の実態解明を目的とし,クビナガハムシ亜科に見られる交尾器の伸長現象を取上げた.これまで良く知られているように,オス・メス間の交尾器長の共変化に加え,メス側の構造に,オスの伸長部の有無と連動した以下の変化傾向があることが分かった:(1)交尾時にメス側の受入れ口となる部位に観察されるパッドの有無,(2)メス膣の表面に観察される剛毛のパッチの位置,(3)メスの精子貯蔵器官の複雑さ.さらに,オスの伸長部の長さがある閾値を越える否かで,オスの伸長部を取り巻く膜の表面構造が劇的に変化することが分かった.現在,形態観察に加えて本分類群の分子系統樹の構築を進めている.今後は,これを基に,交尾器の形質状態の祖先・子孫関係を決定し,オス・メス交尾器の共進化史を提示する.
著者
西村 欣也 三浦 徹 岸田 治 道前 洋史 北野 准
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

北海道の固有種であるエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、捕食者生物、餌生物、同種幼生の存在に呼応して生態学的機能を有する表現型可塑性を示す。そのため、進化生態学、発生生物学を融合する研究の優れたモデル生物である。本研究では、エゾサンショウウオ幼生が捕食者生物存在下、餌生物存在下で可塑的に発現される形態変化について、幾何学的形態解析法を用いて定量的に明らかにし、その分子発生学的メカニズムを調べる出発点として形態変化と関連するゲノム情報の探索を行った。さらに、生息域全域を網羅する5地域集団間で、表現型可塑性に伴う形態変化の反応規範と、遺伝マーカーの変異を調べた。
著者
小林 泰男 竹中 昭雄 三森 真琴 田島 清 松井 宏樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は草食動物消化管の未培養細菌群の生理・生態を明らかにし、繊維質の消化メカニズムも解明に近づこうとするものである。主に反芻家畜(ウシおよびヒツジ)のルーメン細菌に焦点を当て、これまでDNAレベルで存在のみ認識されていた菌群の分離・培養にチャレンジした。またウマやダチョウの大腸微生物の解析も手がけた。ルーメン内繊維付着性菌群U2は独自に開発したFISH法により牧草茎部に多く存在すること、それらはナイロンバック法で茎部をルーメンに浸漬することで容易に簡易集積できること、抗グラム陰性菌用の抗生物質を添加した液体培地内でさらに集積可能なことを明らかにした。その後PCRスクリーニングを活用することで多くの菌株の中からU2に属する2株の単離に初めて成功した。これらはいずれも繊維付着能を有し、マルラーゼは持たないがセロビオヒドロラーゼを、またキシラナーゼのほかに極めて高いアラビノフラノシダーゼ活性を有することをつきとめた。以上のことから、U2に属する細菌は、単独で繊維質を分解するのではなく、セルロース分解者の近傍に位置し、セルロース分解産物を利用すること、またセルロースを取り巻くヘミセルロース、とくにその側鎖を解離することに貢献しているものと推察された。大腸の細菌遺伝子ライブラリーから、ダチョウおよびウマは既知繊維分解菌の系統的近傍に未知の菌群を多く有していること、ウマは和種馬に特有の菌群が多く存在し、それらが和種馬の繊維分解に貢献している可能性があることを示唆できた。また和種馬は軽種馬にはほとんどみられない大型の繊維分解性プロトゾアを大腸に多く有していることを見つけた。これらの結果は、草食を規定する消化管微生物相の多様性とこの研究領域の奥深さを強く示唆するものであり、いっそうの解析の必要性が感じられる。
著者
河内 佑美
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

要素間の相互作用によって自ら構造変化を起こし機能を創発する"複雑適応ネットワーク"において,秩序形成や自己組織化の要因となる構成要素や関係性を特徴づける定量的・定性的な内在情報をとらえることで,本研究は,ネットワークの適応・創発に関する秩序形成メカニズムを解明する.特に,その状態が可観測であり事後検証可能なWWWを対象とし,ソフトウェア工学的側面から次世代の知的情報システム構築を目指す.そこでまず,実ネットワークの調査・解析を行うためにWWWから情報取得を行うシステムを構築し,Eコマースシステムや情報発信コミュニケーションシステムから取得したデータを,ユーザの評価機能や相互リンク機能,閲覧履歴等から形成される大規模ネットワークとして調査を行った.特に,大規模な実データとして日本国内のユーザ約12万人のウェブブラウザから収集された1か月間約3憶件のURLアクセスログを用いた.全ユーザのクリックストリームをネットワークとして重ね合わせるとWeb構造と同様に,その構造はスケールフリー特性を持つ複雑ネットワークであり,どの一時点においてもスケールフリーという構造特性は変わらないことがわかった.さらに,時間発展と共にクリックストリームは刻々と変化しているので,その移り変わりを明らかにするために単位時間におけるネットワーク構造の遷移をネットワーク間の類似度を用いて解析し,二次元上に可視化することで,ビヘイビアのダイナミクスを明らかにした.このように,大規模実データを扱うための解析手法の提案と,解析結果から得られたユーザビヘイビアのダイナミクスについて複雑系工学,複雑ネットワークの視点から議論を行い,論文として結実している.
著者
内田 純一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

観光地に存在する様々なアクターの諸力を総合するために、DMOやDMCと呼ばれる組織が、地域競争力を向上させるための活動を行っている。これらの組織はマーケティングやマネジメントのノウハウを持っているが、地域が提供するサービス品質を管理したりサービス・レベルを向上させようとするような視点は持っていなかった。本研究は、観光地においてサービス・イノベーションの創出を目指すには、製造業的なミクロ視点のイノベーション論だけではなく、地域イノベーション論的なマクロ視点を導入することが必要とし、実証研究を重ねることによって「地域サービス・プロフィットチェーン」の枠組みの有効性を提唱している点に意義がある。
著者
石井 吉之 平島 寛行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

降雨と融雪が重なって生じる河川洪水の発生メカニズムを解明するため、北海道母子里で行われた積雪上への模擬降雨散水実験の結果を、雪氷防災研究センターで開発された積雪水分移動モデルによって再現できるかどうかを検討した。その結果、積雪底面流出の出現に最も効くと考えていた層境界の粒径コントラストは、層境界で浸透水の滞留を引き起こすという面では重要であるが、底面流出の出現やその流出率は、層境界を通過した後の水みちの発達の仕方に強く依存することが分かった。水みちが鉛直下向きに発達すると顕著な底面流出が出現し、水みちが側面方向に傾くと底面流出が出現しないことが明らかになった。
著者
李 妍淑
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究では、中国において唯一公認された女性団体である婦女聯合会を素材に、ジェンダー政策推進過程における「婦聯」の役割を戦後台湾の女性政策と比較検討し、中国におけるジェンダー政策にみられる特徴の解明を試みた。中国の「婦聯」は、共産党の指導を前提としている組織として強い政治的性格を持ち、国家のジェンダー政策推進過程においては、党の「別働部隊」としての役割を果たしてきた。また、「婦聯」はジェンダー問題を女性固有の問題として捉え損ねているため性別役割分業を維持し、それが国家の政策とも共鳴することで、結果的に固定化されたジェンダー構造を生み出すことになった。
著者
肥前 洋一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

市町村合併の是非を問う住民投票の多くで、その成立要件として、投票率が予め定められた水準(多くの場合50%)を超えなければならないというルールが設けられた。本研究の目的は、この成立要件が有権者の投票行動に与える影響を理論と実験により明らかにすることである。今年度は、前年度の理論研究の成果を「Imposing a Lower Bound on Voter Turnout」と題して9月の日本経済学会秋季大会にて報告した。さらに、理論研究に基づいて実験研究を行い、その成果を論文Yoichi Hizen,"A Referendum Experiment with a Validity Condition on Voter Turnout,"mimeoにまとめた。ディスカッションペーパーにしたのち、学術誌に投稿する予定である。また、平成20年5月の日本選挙学会研究会・方法論部会II「実験と調査の間」にて「投票の成立要件が投票行動に与える影響-実験室実験による検証-」と題して報告することが決まっている。実験研究では、1セッション13人からなる住民投票実験を6セッション実施した。「投票前に見込まれる賛成派と反対派の人数比」と「最低投票率の水準」に応じて、どちらの派の有権者がどのくらい棄権するかを観察した。得られた結果は、各有権者は、多数派であることが見込まれる派に振り分けられた場合には最低投票率の水準にかかわらず投票する一方、少数派であることが見込まれる派に振り分けられた場合には、最低投票率が低ければ投票するが高いと棄権するというものであった。すなわち、最低投票率を高くしすぎると戦略的棄権が生じて不成立になりうることが確認された。
著者
仲 真紀子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

子どもが司法場面で情報提供を求められることは少なくない。本研究の目的は, 出来事の報告, 特に人物の記述と, 刑事事件でも民事事件でも問題になる感情・気持ちの表現に焦点を当て, 発達的変化を明らかにするとともに, 得られた資料を司法面接の開発に活かすことであった。成果は以下の3点となる。(1) 実験研究により, 語彙は限られているものの, 幼児による人物記述の度合いは人物の再認の正確さと関わっていること, 感情・気持ちについては, 特にネガティブな気持ちを表す語彙が学童期に増加することを示した。(2) 幼児の供述の信用性に関する大人の意識, 認識を検討し, 一般市民は子どもの供述の信用性を高く見積もりがちであることを示した。(3) これらの成果, 文献調査, 国外での調査などを踏まえ, 面接ガイドラインを提案した。
著者
及川 英秋 南 篤志 南 篤志 大栗 博毅
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

東北大五味教授との共同研究として5種のベクターが使用可能な栄養要求性麹菌変異株を用いた異種遺伝子発現系を活用した糸状菌由来の生物活性物質の全生合成を検討した。その過程で、遺伝子導入を短縮し、かつ限られたベクター数の効率の良い使用が問題となったが、一挙に4個の遺伝子を導入する(Tandem法)を考案し、化合物種に関係なく遺伝子数4-17個を使って、構造の複雑な天然物が自在に合成できるシステムを開発した。このほか抗腫瘍性物質や抗生物質を含む放線菌由来の骨格構築酵素の機能解析や構造多様化に向けたハイブリッド酵素系の開発を検討した。その結果、生合成酵素の複合体の精妙な制御系を見出した。
著者
立石 洋子
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

フルシチョフ期のソ連における自国史像の変遷を分析課題とした。なかでも歴史家の関心を集めた1)北カフカース史の描写をめぐる議論と、2)歴史家の論争の中心となった学術誌『歴史の諸問題』誌の活動を中心に検討を進めた。1)に関する研究成果まず、同時期の政治改革の過程では共産党史だけでなく自国史の解釈も大きな論争点となったこと、特に北カフカースを中心とする非ロシア人地域の歴史とロシア史との関係が歴史家の議論を集めたことを明らかにした。そのうえで、19世紀の北カフカースで起こった対ロシア蜂起であるシャミーリの反乱について、1953年のアゼルバイジャン共産党第一書記バギーロフの逮捕が歴史家の論争の始まりの契機となったこと、また1957年のチェチェン・イングーシ自治共和国の再建が、この史実に対する公式見解の方向性を決定づける重要な要因となったことを明らかにした。2)に関する研究成果『歴史の諸問題』誌の活動を、1953年に編集長となった歴史家パンクラ―トヴァの活動を中心に分析した。まず、1953年の編集部の改組が科学アカデミーの決定に基づくものであったことを指摘し、そのうえで同誌編集部が、読者会議の開催や討論用論文の掲載を通じて歴史家と社会の論争を促していった過程を分析した。これに加えて、共産党中央委員であり、最高会議代議員でもあったパンクラートヴァのもとには、スターリン時代に政治的抑圧を受けた多数の知識人の名誉回復と釈放を求める市民からの訴えが多数寄せられていたことを明らかにした。さらに、社会に対して公的歴史像の変遷を説明する役割を担った彼女が、スターリン期の歴史学の役割に対する社会からの批判と、政治指導部に対する市民の批判の高まりを警戒した党指導部による統制の狭間で苦悩するさまを跡付け、従来の研究が着目してこなかったソヴィエト体制下の知識人の一側面を指摘した。
著者
矢部 和夫
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学大学院環境科学研究科邦文紀要 (ISSN:09116176)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-49, 1989-03-25
被引用文献数
6

冷温帯〜暖温帯域での日本各地の低地湿原の推移を生態学的に比較・検討するため,暖温帯・千葉県茂原八積湿原,冷温帯中部・青森県小田野沢湿原と冷温帯北部・北海道美々湿原で,それぞれ植生型分布と土壌環境にっいて調べ,あわせて遷移系列の推定を行った。主な結果は以下の通りである。1.湿原植生の分布を規定する要因として,茂原八積湿原では(1)平均水位と(2)水位の変動性(SD),黒泥層の厚さと表層水のDOの2つの独立な要因群があげられた。美々湿原では(1)平均水位,表層水のpH,DOと流動性,および(2)SD,表層水の電導度,および泥炭の分解度と厚さがあげられた。茂原入積湿原と美々湿原では,pHとDOの他要因との関係が異なっていたが,これは地形-水系上の相違によるものである。緩い傾斜地形の美々湿原では,湿原表面のくぼ地に流路網が形成されているため,平均水位と表層水の流動性の間に相関が生じている。流動水は停滞水よりpHやDOが高い。このためpHとDOは表層水の流動性との相関により平均水位の要因群に含まれている。一方,平坦な茂原八積湿原では,表層水は停滞しており,pHは地域間で差がない。DOは微生物活性によって低下するため,有機物量の指標となる黒泥の厚さとの相関によりSDの要因群に含まれている。水位の連続測定の行われていない小田野沢湿原では,(1)水位と(2)黒泥層の厚さ,酸化還元電位と灼熱損量が重要な要因であった。この結果,湿原植生型の分布は(1)平均水位の要因群と(2)SDの要因群(土壌生成に関する要因群)という2つの独立な要因群によって規定されていることがわかった。茂原八積湿原と美々湿原では,統計的に,前者の要因群中最も重要な要因は平均水位であり,後者ではSDであった。2.水位のSDの要因群と異なる湿地土壌(水面上の土壌)の土壌型の生成の関係について考察した。暖温帯の茂原八積湿原では,水位の安定している(小さいSD値)地域では有機物の酸化的分解が抑制されるため,嫌気的黒泥が発達する。水位の不安定な地域では,有機物が速やかに分解されるため,酸化的無機質土壌が分布する。冷温帯の美々湿原では,水位が不安定で富栄養(高い電導値)な地域では,分解度が高いため圧密されて薄い泥炭が生成され,水位が安定しており貧栄養(低い電導度値)な地域では,泥炭は未分解なため圧密されておらず厚い。泥炭の酸化還元電位は前者の方が低い。2つの湿原の間に位置する小田野沢湿原では,嫌気性の黒泥地域と酸化的な泥炭地域が分布する。黒泥は泥炭より多量の無機質砂(低い灼熱損量)を含んでおり,無機物の混入により有機物の分解が促進され,黒泥が形成されたものと考えられる。3.このような湿原間での各要因の因果関係の相違の原因として,南北間の温度条件の違いが,有機物の分解速度に影響を与えるためであることが推察された。低温地方の湿地土壌は有機物が未分解なまま堆積した泥炭からなり,SDの要因群は,泥炭の分解度を変える。高温地方ではすみやかに有機物が分解されるため無機質土壌からなる。両者の移行帯では,泥炭,黒泥と無機質土壌が混在するが,移行帯内で南下する程,泥炭の分布面積が減少し,無機質土壌が増加する。3種の土壌型のうち,黒泥が最も強い嫌気性を示す。4.湿原植生型の地理的分布は,気温と直接対応しているのではなく,有機物の分解速度の違いによる異なる土壌型の生成を介して説明される;北方の美々湿原では酸化的な泥炭中にムジナスゲ群落が分布し,南方の茂原八積湿原では嫌気的な黒泥中にカモノハシ群落が分布する。中間の小田野沢湿原では,酸化的な泥炭中にムジナスゲ群落が,嫌気的な黒泥中にカモノハシ群落が分布する。5.湿原植生型の分布を規定するもうひとつの重要な要因である平均水位の勾配は,湿生遷移の直接的動因であった。湿生遷移は冷温帯でも暖温帯でも抽水植物群落→湿原(湿地草原)→湿地林という過程を経る。冷温帯から暖温帯にかけての湿生遷移の変化として,1)北方では有機質土壌型遷移が一般的であり,南下するにつれて無機質土壌型遷移の起こる地域が増加する。2)これに伴い北方では湿地化型泥炭の発達を伴うため遷移の自動性が高いが,南方では無機質堆積物の蓄積という他動要因によって遷移が進行する。6.北方では広大なハンノキ湿地林が厚い泥炭上に土壌極相林として湿生遷移の最終段階に成立する。南方では,ハンノキ湿地林は限定された地域に小規模しか分布せず,明瞭な土壌極相林は認められない。
著者
照本 勲
出版者
北海道大学
雑誌
低温科學. 生物篇 (ISSN:04393546)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-9, 1965-12-01
著者
金川 弘司
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

生物材料や受精卵の凍結用に冷却曲線を自動的にプログラムできる装置は数種類開発されているが、これらの装置は植氷時の制御が不十分であり、試料を入れてある冷凍室を開放して、外部から冷媒や冷体で刺激を加えたり、氷晶片を投入したりして植氷を行っているために、冷凍室の温度が変動する欠点がある。また、植氷に伴う著しい温度の上昇がみられるのが普通である。これらの温度変動が凍結しようとする受精卵に何らかの悪影響を与えるものと考えられる。今回の研究で開発した凍結装置は、恒温槽、温度制御盤および加圧式液体窒素容器からなっている。恒温槽は、断熱槽、液体窒素槽、ヘリウムスペースおよびフレオン槽からできている。フレオン槽は気相部および液相部(フレオン11)の2つに分かれ、両部の冷却は液体窒素の冷熱によって行われる。液体窒素槽からの冷熱はヘリウムスペースに密封されている熱交換用ヘリウムガスによって、一定速度でフレオン槽内に伝達される。この冷却とフレオン槽内ヒーターの作動は槽内の温度を測定するモニター用温度センサーからの読み取りを通じてヒーター電流をPID制御(比例積分微分動作制御)する温度制御盤のマイクロコンピューターによって制御され、設定した任意の温度と冷却速度が保持される。この温度と速度は数段階に分けてキー入力できるようにプログラミングされている。気相部には凝固点温度(植氷)を予め検知できるように温度測定センサーが付属されており、液相部は温度勾配がほとんどないように撹拌機によって常に撹拌されている。本凍結装置は、植氷時に工夫を加えて、冷凍室を開放したり、外部から操作することなしに植氷を行い、植氷に引続いて起る温度上昇を1.0°C以内に抑えることができた。また、下降時の温度も変動範囲が0.1°C以内に制御できた。本装置を使用して、耐凍剤としての各種糖類および急速凍結法の検討を行った。