著者
鈴木 一人
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本年度は中国における宇宙開発を中心に研究を進める予定であったが、昨年度に引き続き、本年度の前半はアメリカ・プリンストン大学の国際地域研究所への長期出張が継続しており、現地で最新の国際政治学の研究に触れながら、グローバル・コモンズとしての宇宙空間のガバナンスについての研究を行った。しかし、本年度の途中で国際連合安全保障理事会の下にある1737委員会(通称イラン制裁委員会)の専門家パネルの専門家として任命されることとなり、やむなく本研究に対する補助金の廃止を申請することとなった。とはいえ、本年度も多くの研究成果が残すことが出来た。宇宙関連の政官学の主要人物が世界中から集まるアメリカのNational Space Symposiumで本研究の報告をすることが出来たほか、ヨーロッパ研究の世界最高峰と言われるEuropean Union Studies Associationで宇宙のグローバルガバナンスにおけるEUの役割について報告したほか、日本EU学会においても、共通論題の報告者として本研究の成果を発表した。また、インドのマニパル大学において、日印戦略対話の一環として、インドとの宇宙協力の問題について議論し、新興国であるインドと日本の関係について論じた。著作としては『国際安全保障』に「宇宙空間の軍事的重要性の高まりと宇宙安全保障」として、宇宙空間のガバナンス問題を取り上げ、途上国・新興国の台頭に伴うルール作りの必要性を論じた。また、外務省の外郭団体である国際問題研究所のグローバル・コモンズと日米同盟プロジェクトに参加し、その報告書の原稿(近刊予定)を執筆し、ミネルヴァ書房から出された『国際関係・安全保障用語辞典』の宇宙関連の項目を合計11項目担当した。
著者
伊福部 達 敦賀 健志 吉田 直樹 井野 秀一 吉永 泰 脇坂 裕一 上見 憲弘 和田 親宗 大西 敬三
出版者
北海道大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

本課題の目的は、水素吸蔵合金(MH)アクチュエータを改良して新たな介助機器やリハビリ機器を開発し、高齢社会および地域産業に貢献することである。具体的には、1.寝たきりを防ぐために,被介助者をベッドから車椅子および車椅子からベッドへの移乗する機器,2.脳卒中などによる手足の麻痺や骨折による筋-関節系の拘縮のための関節可動域訓練で必要となるリハビリ機器(CPM)のために利用する。1については,昨年度から引き続き,MHアクチュエータの小型化,高速化、および軽量化を行い,被介助者の生体特性を踏まえた実用性の高い移乗機器の第2号を試作した。さらに、日本製鋼室蘭製作所に隣接する日鋼記念病院で実際の被介助者を対象として移乗介助機器を使用し、現場からの高い評価を得た。2のCPMのためのアクチュエータとしては高分子材料をベローズとして利用することで,極めて小型軽量にすることができ,関節周りに柔軟に装着できるような構造を実現でき,しかも水素漏れは数十日で5%程度であり,金属ベローズに比べて桁違いに廉価にすることができた。今後は,CPMのための最適なヒューマンインタフェースを構築するとともに,使い捨てのCPMを想定し,製品化の道を探る予定である。以上の成果が評価され、福祉機器の開発と販売を行っている会社の協力を得て、この介助機器とCPMを実用化するための組織ができ、科学技術振興事業団からの支援により,来年度から製品化へ向けての具体的な作業に入ることとなった。さらに、この課題の総括として、どのMHアクチュエータがどのような場面で、どのような被介助者に有効であるかを明確にし、将来の需要を見込みながら、高齢社会と地域産業にどこまで貢献できるかを展望した。
著者
大場 康弘
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究では,星間分子雲における化学進化で重要な役割を担う星間塵表面反応による,アミノ酸の重水素濃集に関する研究をおこなった。もっとも単純なアミノ酸であるグリシンを超高真空反応チャンバー内に設置した反応基板(12K)に蒸着し,重水素原子と反応させた。FTIRやNMRで反応生成物を分析したところ,グリシンの重水素置換体の生成が確認された。反応には高い活性化エネルギーが存在するため,極低温での重水素置換体生成には量子力学的なトンネル効果が重要だと考えられる。本研究では,アミノ酸が星間分子雲における極低温表面原子反応によって重水素濃集可能であることを示した。
著者
堺 正太朗
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

土星内部磁気圏におけるダスト-プラズマ相互作用について, 過去の観測結果に基づきイオン速度が共回転速度から遅れる原因が調べられ. イオン速度はダスト密度が大きい, あるいはダスト層の厚さが厚い時に減少することが明らかとなった. また磁気圏イオン速度は電離圏電気伝導度にも強く依存することが明らかとなった. そこで本研究では電離圏電気伝導度を求めるために電離圏プラズマ密度, 速度, 温度を数値計算によって求めた. プラズマ密度は高度1200km付近で最大値10^<10>m^<-3>となった. 速度は高度10000km以下でプロトンのような軽いイオンは上向きの速度, 重いイオンは下向きの速度を持った. 特に上向き高速流イオンは土星系において初めて提案した結果である. これは遠心力及び分極電場による加速と重力によるバランスによるものと考えられる. 温度は従来の結果から極端に高くなった. 高度2000㎞付近で2000K, 高度10000kmで20000Kとなった. 低高度ではジュール加熱が, 高高度では磁気圏からの熱流が温度上昇に寄与していることが明らかとなった. 電離圏電気伝導度はローカルタイム依存性を示した. 昼間, 伝導度は最大となり明け方に最小となる. これは磁気圏イオン速度のローカルタイム依存性を示唆している. 以上の結果から, 土星内部磁気圏は強く電離圏と結合していることが分かった. これらの成果はまもなく論文投稿予定である.カッシーニ・ラングミュアプローブのデータ解析を行い, エンセラダスプリュームのプラズマ特性を調べた. 土星内部磁気圏ではプリュームが重要なパラメターである. 電子密度とイオン密度の比はエンセラダスに近い領域で0.01, 離れると0.4となった. これはプリューム内に大量の荷電ダストが存在していることに一致している. これらの結果も論文投稿準備中である.
著者
長野 克則 横山 真太郎 濱田 靖弘 絵内 正道 藤田 巧
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)調湿材料の選択とその吸放湿特性:種々の天然調湿材料を比較検討した結果、価格対調湿効果の点で、稚内層珪質頁岩が優れた特性を有することがわかり、この稚内層珪質頁岩を建材や塗料に混入させた場合の静的および動的特性について実験的に明らかにした。(2)調湿機能を有する内装材を設置した実証実験:床面積7.5m^2の部屋の内壁23.2m^2部分に、稚内層珪質頁岩を1.92kg/m^2含有する石膏ボードを設置した場合と、普通石膏ボード表面に稚内層珪質頁岩を0.68kg/m^2含有する人工漆喰を塗布した場合について、日単位で加湿、除湿を繰り返した時のパッシブ調湿作用について検討した結果、両条件とも普通石膏ボード仕上げの場合に比べて、顕著な調湿作用を示した。(3)室内調湿効果予測のためのシミュレーターの開発:室内仕上げ材に調湿機能を持つ建材を導入した時の室内湿度を予測するシミュレーターを開発した。調湿建材の使用により、たとえば東京では梅雨時期にかび発生の危険域と言われる相対湿度90%以上となる時間を10分の一以下に減少できることが示された。(4)各種ガス吸着、調湿作用がある物質のVOC吸着・脱着特性に関する実験的検討:容量20Lの密閉チャンバー内を一定温湿度に保ち、トルエン、アセトアルデヒド、標準VOC7成分のそれぞれに対して稚内層珪質頁岩の吸着量を測定した。いずれのガスに対しても、稚内層珪質頁岩は活性炭とほぼ同等の吸着性能を持つことがわかった。一方、高温・低湿度環境下において、一度吸着したガスの脱着について測定したところ、アセトアルデヒドに関しては明らかに脱着が確認されたものの、トルエン、VOC7成分に関しては活性炭と同様に脱着は見られなかった。さらに、悪臭成分のアンモニアに対する最大吸着量を調べた結果、高い吸湿性能を有する稚内層珪質頁岩は水溶性のアンモニアの吸着に優れており、最大吸着量は活性炭の30倍以上となることが明らかにされた。
著者
今内 覚 大橋 和彦 村田 史郎 田島 誉士
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

増加する牛白血病ウイルス(BLV)による地方病牛白血病は、現在、日本の畜産生産上深刻な問題となっている。本研究ではBLVに新規感染した牛の感染源と媒介昆虫対策による感染阻止効果について検討した。新規感染した牛のBLV遺伝子(env遺伝子)を解析した結果、BLV陽性牛群内でリンパ球増多症を呈するウイルス量が多い牛の遺伝子と一致し、BLVの感染伝播においてハイリスク要因であることが示唆された。一方、吸血昆虫対策を実施した結果、新規感染は認められなかった。このことから、高ウイルス保有牛は感染源になりやすいこと、および昆虫対策は感染伝播阻止に有効であることが示された。
著者
並木 由佳
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

MRL/MpJマウス精巣は減数分裂中期特異的にアポトーシスを引き起こす(msa)。以前の研究において、msaは第一染色体81. 9Cmに位置するExoI遺伝子の変異によるものだということを示した。そこで本研究において、(1) MRLマウス由来のmsaを持つB6の遺伝子背景を持ったコンジェニックマウス(Cg1)をさくせいした。また、(2) Cg1およびB6マウスの精巣(6週齢)からRNAを抽出し、マイクロアレイを行うことよりmRNAの発現を比較することにより、アポトーシスに関与する遺伝子を検出することを試みた。
著者
津田 一郎 西浦 廉政 大森 隆司 水原 啓暁 相原 威 乾 敏郎 金子 邦彦 山口 陽子 奥田 次郎 中村 克樹 橋本 敬 阪口 豊
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

領域の事後評価はAであり、その成果を冊子体の形で集約し、広く社会・国民に情報提供することには大きな意義がある。取りまとめ研究成果は以下のとおりである。1.成果報告書の冊子体での編集と製本を行った。計画班11、公募班44の全ての計画研究・公募研究の班員が、計画班各8ページ、公募班各4ページで執筆し、研究の狙いとその成果を文書と図でわかりやすくまとめた。これらを冊子として製本し、領域に参加する研究者と関係者に配布した。2.成果報告書のCDを作成し、冊子体に添付する形で配布した。3.本成果をWeb上のデータベースDynamic Brain Platformとして成果公開するための準備を完成させた。これまで当領域の成果報告の場として作成公開して来たホームページは、領域終了後に管理できなくなる。そこで、この領域ホームページをINCF 日本ノードDynamic Bain Platform (DB-PF)に移管した。また、成果報告書の電子版をDB-PFにアップロードするための準備を行った。本公開は、広範な分野の人々から永続的な閲覧を可能にするもので、成果を社会・国民に発信する方法として有効であると期待できる。
著者
山岸 俊男 結城 雅樹 神 信人 渡部 幹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の最大の成果は、自集団の成員を優遇する内集団ひいき現象を生みだす直接の心理機序が集団内部における自己の評判に対するセンシティビティーにあることを一連の最小条件集団実験を通して明らかにすることで、集団行動の進化的基盤に対する二つの説明原理である集団選択と間接互恵性の間の論争に対して、後者を支持する実証的知見を組織的に提供した点にある。
著者
大泰司 紀之 呉 家炎 (W5 J) 余 王群 高 耀亭 揚 慶紅 (Y .′ Y .′ Y O) 彭 基泰 (T%.′ J) 鈴木 正嗣 武田 雅哉 小泉 透 梶 光一 常田 邦彦 高槻 成紀 三浦 慎悟 庄武 孝義 YANG Qing-hong PENG Ji-tai GAO Yao-ting WU Jia-yan YU Yu-qun
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

《1.形態・系統学的研究》 年齢群別に標本の記載・検討を行う目的で年齢鑑定に関する研究を行い、第1切歯および第1大臼歯のセメント質組織標本により、正確な年齢鑑定ができること、および歯の萌出・交換・磨耗等によって、およその年齢鑑定ができることが判明した。体重は、2.5カ月〜3.5カ月の子鹿7例の平均の43kg、雄の場合1.5歳約70kg、2.5歳約180kg、7〜13歳の成獣は約205kg 、雌の6〜14歳では約124kgであった。胴長の平均は、成獣雄123.8cm、肩高はそれぞれ121.5、117.3cmであった。これまでに報告のない特微として、出生直後の子鹿にはニホンジカと同様の白班があり、生後2カ月、7月中旬頃には消失するることが挙げらでる。頭骨は他のCervus属の鹿に比べて鼻部顔面の幅が広く、眼下線窩が大きく深い。これは乾燥・寒冷地への適応、草原におけるcommunicationとの関係を推測させる。大臼歯のparasrastyle、mesostyleが発達していることは、固い草本を食べる食性に適応した結果と考え得る。角は車較伏の枝分かれをし、1歳で2〜3尖、2歳で3〜4尖、3歳以上で5〜7尖になるものと推定される。以上の結果などから、クチジロジカはアカシカに似るが、ルサジカより進化したものと考えられる。《2.地理的分布および生息環境》 チベット高原東部の海抜3000mから5000mにかけての高山荒漠・高山草甸草原・高山潅木草原に分布している。分布域は北緯29〜40度、東経92〜102度の範囲で、甘粛省中央部の南部、青海省東部、四川省西部、チベット自治区東北部および雲南省北部にまたがる。分布域の年降水量は200〜700mm、年平均気温は-5〜5℃、1月の平均気温は-20〜0℃、7月の平均気温は7〜20℃の間にある。森林限界は3500〜4000m、その上は高山草原であるが、4000〜4500m付近まではヤナギ類などの潅木がまばらに生えている。《3.生態と行動など》 主要な食物は草本類(カヤツリング科・禾本科・豆科)であり、冬期にはヤナギ類などの潅木の芽も食べる。胃内容や糞分析の結果では、クチジロジカはJarmanーBellの原理によると草食(Grazer)である。出産期は5月下旬から6月で、1産1子。初産は2歳または3歳で、毎年また隔年に通常12〜14歳まで出産する。最高寿命は、自然条件下では雄で12歳前後、雌はそれより長いものと推定される。群れは最大で200頭、平均35頭。雌と子および1歳の雄も加った雌群、雄群、および発情期にみられる雌雄の混群の3つの類型に分けられる。性比は2.2、100雌当りの子の数は29頭であった。夏期は標高い高山草原で過ごし、冬期は積雪の多い高山草原を避けて潅木林へ移動する。交尾期の最盛期は10月で、11月中旬に再び雄群・雌群に分かれる。妊娠期間は220〜230日と推定される。交尾期の社会組織はハレム型と交尾群型の2つがあり、ハレム型は雌が25頭以下の時にみられ、大きな角を持つ成獣雄が1頭だけ優位雄となって加わる。雌の個体数がそれより多くなると、複数の優位雄が参加する交尾群となる。音声行動には、うなり声と優位の雄が出す咆哮とがあり、特に咆哮は4〜5音節から構成される連続声で、クチジロジカ独特のものである。《4.保護管理について》 チベット高原のクチジロジカは、ヤク・ヒツジ牧業が同高原へもたらされた2000〜3000年前から、人類の影響を受け、「チベット解放」後は、家畜と人口が増えたこと、自動車道路が発達したこと、兵站が各地に出来て、銃が多数持ち込まれたことなどの直接・間接的な影響によって、分布域・生息数ともに大きく減少した。今後は、有蹄類の保護管理に従って、地域毎の適正頭数(密度)を算定したうえで、その頭数になるまでは哺護を禁止し、一定の密度に保つ必要がある。そのような体制の出来るまでの間は、各地に保護区を設定して減少傾向を止めることが最も現実的と考えられる。
著者
東條 安匡
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

建設混合廃棄物の選別残渣を中心に,硫酸イオンや石膏を含む材料を対象に一般環境中での利用を想定した硫化水素生成について検討した.選別残渣からの硫酸イオンの溶出傾向は,対象とした他材料と大きく変わらなかったが,有機物の溶出量は多く,長期間継続する傾向にあった.残渣からの溶出する有機炭素は,固体中の有機炭素の約1%であり,固相有機物の多くは難溶出性であった.選別残渣からの硫化水素生成はpHが高く維持されれば阻害され,再生砕石との混合が有効であった.
著者
石井 吉之 小林 大二
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇. 資料集 (ISSN:03853683)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.11-20, 1995-03

北海道北部の母子里試験地の山腹斜面において地温の連続観測を行なった。1991年11月から1994年8月までの期間に,南西向き及び北西向き斜面の各々4地点で50cm, 100cm, 200cm深の地温を観測した。融雪期には全ての地点で顕著な地温低下が観測されたが,温度変化は 200cm深で最も大きく,50cm深で最小であった。一方,夏の大雨時には50cm深で最大の温度上昇が起きた。こうした変化は土壌水の圧力水頭の変化傾向と一致し,水頭変化の顕著な場所で大きな地温変化が生じている。
著者
佐藤 圭史
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究は、南オセチアとアブハジアの「非承認国家問題」と、その他の、非承認国家問題に至らなかった類似のケースを比較検証するという、先行研究では見られない新たな分析角度を学界に提起することに成功した。2年間のプロジェクトで、国際学会発表が5件、国内学会発表が1件、海外招待講演が2件、査読付き雑誌への論文発表が1件、その他論文発表が2件と、十分な研究成果を出した。
著者
押切 友也
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では、局在表面プラズモン共鳴を利用した光電極を用いて、窒素の固定化によるアンモニアの光電気化学合成に関する研究について推進してきた。チタン酸ストロンチウム単結晶基板を用い、金ナノ粒子の担持により局在表面プラズモン共鳴による光捕集効果を付与し、さらに助触媒としてルテニウムを用いた電極を用いて可視光の照射により窒素を還元してアンモニアを得ることに成功した。さらに、反応の選択性及び活性向上のため、既報の計算化学による予測を基に原子の吸着エネルギーに着目し、助触媒として窒素吸着しやすい遷移金属を用いたところ、反応活性は6倍程度増大し、またほぼ選択的にアンモニアが得られた。
著者
セレスタ アジャヤラム
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

siRNAの標的薬剤送達システムとしてantibody-nucleic acid conjugate (ANAC)の設計や合成を行うこととした。抗体に核酸を搭載するために毒性の少ないデンドリマーであるポリアミドアミン(PAMAM)を検討した。PAMAMにsiRNAを静電的結合し抗体とのコンジュゲートを目指した。しかし、得られANACはsurface plasmon resonance (SPR)や細胞assayではノンスペシフィックな結合が主であった。今後PAMAMの表面にあるアミノ基の保護基の導入やPAMAM1分子当たりのsiRNAの数などの検討が重要であると考えられた。
著者
西川 克之
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

観光は社会の近代化によってもたらされた諸条件を前提としてはじめて成立したものである。多様な観光現象の分析を試みる際には、そうした諸条件への参照に常に立ち返る必要があると思われる。本研究課題では、近代社会が本格的に展開し始めた時代のイギリスにおいて、絵画というメディアによって誘発され、そこに描かれたイメージを手本として自然景観に美的感興を見出していこうとする観光行動に、近代観光のひとつの原型的なモデルがあるとの仮定に立ち、またそうしたあり方が観光の大衆化とそれへの反発というジレンマとも密接に関連していたという枠組みのもとで、実際の観光現象の分析に応用することを試みた。
著者
実山 豊
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

ダイズの湿害は農業上重要な障害だが、その発生メカニズムには不明な点が多い。本研究では、水耕栽培法により過湿土壌の一様態「低酸素」を人工的に再現し、経験的に圃場耐湿性が既知な多種ダイズ品種を1ヶ月間栽培、その反応性を詳細に調査した。その結果、低酸素反応性と圃場耐湿性とに密接な関係性を検出し、湿害発生の主な理由の1つが低酸素であることを確認した。更に圃場耐湿性が弱い品種の中には、低酸素環境によって葉面積や細根の減少、根における吸水能力の減衰などの特徴的な反応を見出した。
著者
佐々木 浩一 越崎 直人
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

液相レーザーアブレーションを固相(ターゲット),液相(アブレーション媒質),気相(キャビテーションバブル),および超臨界相(アブレーションプラズマ)の多相混在プラズマを生成する方法と位置づけ,そこにおいてナノ粒子が生み出される過程に関係する学理を探求した。ターゲットから放出された原子群が液相からキャビテーションバブル内の気相に輸送され,凝集によりナノ粒子化する過程に関して学術的成果が得られた。また,キャビテーションバブルの制御を通じてナノ粒子の構造に影響を与えられることを示した。応用創出面では,ブルッカイト型チタニアの合成およびサブミクロンサイズ球状粒子の合成において成果が得られた。
著者
小野寺 康之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ホウレンソウからは,雄株および雌株の他に雌雄双方の機能を備えた間性株も見出される.これらの多様な「性」はホウレンソウにおける効率的F1採種に必要な受粉制御技術を確立する上で重要な形質である.本研究では,性決定遺伝子座の構造解析を試みた.先ず,Y遺伝子座の解析からは,この遺伝子座を含む周辺領域は減数分裂期の相同組み換えが抑制された雄特異的領域であることが示唆され,この領域は少なくとも840 kbp以上である可能性が示された.さらに,この領域の一部の配列を決定した結果,大部分が新規のレトロエレメントで占められていた.その一方で,タンパク質コード候補遺伝子は僅かに4個しか見出されなかった.