著者
堀田 真紀子 玄 武岩 西村 龍一 田邉 鉄 宇佐見 森吉 川嵜 義和 坂巻 正美 富田 俊明 常田 益代 竹中 のぞみ 原田 真見 浜井 祐三子 石橋 道大
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、文化の持つエンパワメント機能に注目し、地元北海道を中心に、小規模農業従事者、障害者、少数民族といった社会的、経済的弱者を主体にしたり、対象にした文化発信を研究。全員がイニシアティブを担える脱中心的な構造を持つものほど、当該者のエンパワメントにつながること、また地域の立場と、海外の類似事例の担い手との交流や、実践者と研究家の交流が、とくに効果的に働くことを明らかにすることができた。
著者
畠山 昌則 東 秀明
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

ヘリコバクター・ピロリ菌由来cagA遺伝子を胃上皮細胞に一過性導入・発現させる系を樹立した。発現されたCagAタンパク質は細胞内で細胞膜近傍に局在し、Srcファミリーキナーゼによりチロシンリン酸化を受けた。CagAはチロシンリン酸化依存的にSHP-2チロシンホスファターゼのSH2ドメインと特異的に結合し、この結合を介してSHP-2のホスファターゼ活性を増強した。また、CagA-SHP-2相互作用の結果、胃上皮細胞には細胞質の著しい進展で特徴付けられる形態的変化(hummingbird表現型)が誘導された。CagAのチロシンリン酸化に関わるEPIYAモチーフは単離される菌株ごとにその数ならびに周辺アミノ酸組成が変動する。欧米諸国で単離されるピロリ菌由来CagAのSHP-2結合活性ならびにhummingbird表現型誘導活性はEPIYAモチーフの数に比例した。一方、胃癌の多発する日本、韓国など東アジア諸国で単離されるピロリ菌CagAは、欧米型CagAと周辺アミノ酸を異にするEPIYAモチーフを有し、この東アジア特異的EPIYAモチーフは欧米型EPIYAモチーフに比べはるかに強いSHP-2結合能ならびにhummingbird表現型誘導活性を示した。CagAとチロシンリン酸化特異的に結合する第二の細胞性蛋白としてCskを同定した。CskはCagAとの結合により活性化され、Srcを抑制することによりCagAのリン酸化レベルを低下させた。CagAによるSHP-2の構成的活性化は胃上皮細胞のapoptosisを誘導することから、CagA-Csk相互作用はCagAの細胞毒性を現弱させるフィードバック制御に関与するものと推察された。
著者
福田 宏 大塚 直彦 藤井 健吉
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2003-02-21

北大125年史:論文・資料編、pp. 448-483、
著者
佐伯 有清
出版者
北海道大学
雑誌
北大百年史
巻号頁・発行日
vol.通説, pp.506-518, 1982-07-25
著者
天野 伸治郎
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

海洋環境汚染物質として有機スズに着目した。有機スズ(TBT)は船底の生物の付着を防ぎ船舶の燃費改善を目的に船底塗料として近年使用されてきた。しかし環境ホルモン様作用があることが明らかになって現在日本では使用が禁止されている。しかし近隣諸国ではいまだに使用されているため日本近海の汚染は依然として深刻である。健全な海域環境を維持することは海洋に囲まれた日本においては非常に重要な事項である。そこで生物の遺伝子発現プロファイルを確認することで海洋の有機スズ汚染をモニタリングすることを模索した。海産動物ホヤ類は脊策動物に分類され、無脊椎動物から脊椎動物への進化の過程上に存在する生物と考えられている。それゆえホヤの研究を通して脊椎動物における原始的かつ共通な生物学的システムの存在を明らかにできると予想される。また定着生物であることから遺伝子プロファイルにその海域の汚染状況を反映することが期待できる。現在、海産生物で大規模なマイクロアレイが開発されているのはカタユウレイボヤのみであることからカタユウレイボヤを用いた海洋汚染検出システムの構築を試みた。前年度までにTBT被曝により特異的に発現が亢進すると思われる遺伝子14個と抑制される遺伝子28個を確認した。それらの遺伝子がTBTの濃度及び被曝時間に関連してどのような発現変動が見られるかをRT-PCR法を用いて確認した。またそれらの遺伝子の組織特異性をWhole Mount in situ Hybridaization法を用いて確認した。さらに海水中の有機スズ濃度が高い韓国沿岸のホヤと日本沿岸のホヤの体内に残留する有機スズ濃度を比較してみたところ韓国産のホヤで明らかに高く、またそれに相関して発現が亢進しているとみられる遺伝子1個と抑制されている遺伝子1個を確認した。結果、これらの遺伝子を使用しての海洋の有機スズ汚染の検出の可能性が示唆された。
著者
石塚 真由美 DARWISH Abdallah DARWISH Abdallah DARWISH ABDALLAH
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

シトクロムP450の分子種のひとつCYPIA1は様々な発がん物質や変異原物質を代謝的に活性化し、化学物質の毒性を決定する重要な異物代謝酵素である。CYPIA1はAhR(アリルハイドロカーボン受容体)によって転写調節を受けており、CYPIA1の上流域のXRE (Xenobiotic Response Element)に結合してその転写を活性化することが知られている。最近、我々はカロテノイド類がAhRの機能に影響を及ぼすことを見出しており、カロテノイドがCYPIA1の生理的な動態の決定因子の一つである可能性を見出している。そこで、本研究では、カロテノイド類がAhRに及ぼす影響、およびその他のシトクロムP450分子種を制御する転写調節因子とのクロストークを明らかにし、カロテノイド類の新たな機能を明らかにすることを目的とする。本年度は、実際に産業動物などがどの程度の重金属類を蓄積しているのかを明らかにし、実施に環境中で人や動物が暴露されている範囲での金属暴露を細胞を用いて行った。H4IIE細胞、およびHepG2細胞を用いて実際に動物が暴露される可能性のある濃度で金属類及びカロテノイドの暴露が異物代謝酵素群にどのような影響を及ぼすのかについて調べた。金属類の曝露によりシトクロムP450、グルクロン酸抱合酵素等の発現量が減少した。メカニズムとして酸化ストレスの介在が考えられたが、同時に転写調節因子の発現量も減少していた。
著者
有村 博紀 宇野 毅明 湊 真一 平田 耕一 伊藤 公人 下薗 真一 喜田 拓也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,実世界と情報世界が融合した巨大な情報空間から有用な知識を効率よくとりだすための大規模半構造マイニング技術の確立を目指す.とくに,大規模規模知識基盤形成システムのための基礎技術として,超高速半構造マイニングエンジンと,時空間情報を用いた半構造マイニング技術の研究開発,周辺技術として,確率的情報スキーマの導入と,知識連係技術と知識索引技術の研究開発を行った.開発した技術の実装と最適化によりプロトタイプシステムの構築を行った.
著者
田村 紘基
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ダイオキシン,ハロメタン,その他環境ホルモンなどの有機物質による環境水の汚染が大きな問題になっている.これらの有機汚染物質は一般に水への溶解度が小さく濃度は低いが,その毒性は大きい.したがって,希薄溶液についてそれらを検出定量し,除去処理を実施するために高効率の濃縮,捕集が必要になる.近年,細孔材料のナノ空間が活性の大きい特異な反応場であることが明らかにされ,表面ポテンシャルの重畳場であることによるものとされている.本研究では,細孔材料の反応活性なナノ空間に有機分子を取り込み,電荷を持たない有機分子鎖間に働く水素結合やvan der Waals力などの引力相互作用を利用して吸着を促進,増幅することを着想した.ナノ細孔材料としては層状金属酸化物に着目した.この物質の酸化物相は,金属イオンによる正電荷と酸化物イオンによる負電荷が均衡しないため電荷を持ち,層として二次元的に発達する.層間には反対符号のイオンが位置して層電荷を中和し三次元結晶を形成する.層間イオンはイオン交換可能で,固体バルク成分として多量に存在するため交換容量がきわめて大きい.陽イオンを層間イオンとする層状酸化物として四チタン酸塩,バーネサイト,亜鉄酸塩,陰イオンを層間イオンとする層状酸化物としてハイドロタルサイトを選び,その合成条件を確立した.汚染有機物分子のモデルとしては,陽イオン性官能基を持つアルキルアミンと陰イオン性官能基を持つアデノシン三リン酸(ATP)を選び,イオン交換によるこれらの取り込み反応と反応生成物の性状について調べた.サイズの大きな有機分子が飽和容量まで取り込まれたことから,ナノ空間の活性の高いこと,ならびに取り込まれた有機分子間の引力相互作用により取り込み反応の増幅が起こることが確かめられた.また,層間距離が分子鎖長に相当する増加を示したことから,有機分子は吸着層面に対し直立していることが示唆された.荷電基は両層には接触しないので,層間に整列する分子鎖間の引力相互作用によって層構造が維持されるものと考えられた.
著者
早岡 英介 三上 直之 杉山 滋郎 藤吉 亮子 鳥羽 妙 川本 思心 郡 伸子 滝沢 麻理 池田 貴子 添田 孝史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原子力発電所の事故以降,主に放射能リスクをテーマとしたリスクコミュニケーションの取り組みが各地で進められてきた.だが,多くは啓蒙的な説明会にとどまっており,専門家と一般市民との間に十分な双方向の対話の場を生み出せていない.こうした状況を克服するためには,リスク情報を正確かつ受け手側に配慮しながら発信できるリスクコミュニケーターの育成が急務である.北海道大学CoSTEPにおける2014年度の実践から,リスクコミュニケーター人材育成においては「伝え方を工夫できるコンテンツの制作能力」「対話の場を生み出す能力」「問題設定を適切に設計できるフレーミング能力」の3つの能力が重要だと考察した.
著者
玄 武岩 渡邉 浩平 金 成玟 鈴木 弘貴 崔 銀姫 北見 幸一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、メディアコンテンツの流通における生産および受容の二つの側面から、東アジアにおける越境的な放送空間の構築について実践的に考察した。生産面においては、2001年に始まった「日韓中テレビ制作者フォーラム」に直接かかわりながら調査を行い、その意義と可能性を考察した。受容面においては、東アジアにおける大衆文化コンテンツの越境を、産業、文化、消費、歴史認識など包括的なアプローチをとおして考察し、その過程における排除と変容、現地化と再創造の文化的意味を明らかにした。
著者
小林 進太郎
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

オートファジーは細胞内タンパク質分解系の一つで、変性タンパク質の排除や感染微生物の排除等、様々な役割を持つ。ウエストナイル脳脊髄炎発症の原因の一つであることが予想されるウエストナイルウイルス感染によるオートファジーの抑制は、ウエストナイルウイルスの非構造タンパク質であるNS2B/3によって惹起されることが示唆された。また、オートファジーはウエストナイルウイルスのウイルスゲノム複製及び遺伝子発現過程を抑制し、ウイルス増殖を顕著に抑制することが明らかになった。
著者
安達 真由美 水上 尚典 半田 康 多賀 昌江
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

一般に、外部の音は子宮に届きにくいが250 Hz(真ん中のドあたり)以下の音は届く。本研究では、チェロの曲を用い、妊婦がヘッドフォンを通して聴いている時と、妊婦が波のような音を聴いている間にスピーカーを通して音楽が提示された時の胎動の様子を、聴覚システムが完成する以前(27週齢以前)と以降(28週齢以降)で、18組の妊婦と胎児を対象に縦断的に比較した。その結果、28週齢以降において、ヘッドフォン提示時よりもスピーカー提示時の方が、安静時よりも頻繁に四肢が動いていた。また、28週齢以降には、妊婦がヘッドフォンで楽しい音楽を聴取しているときよりも優しい音楽を聴取しているときの方がより動いていた。
著者
村田 勝幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1960年代以降、アメリカ合衆国、なかでも特にニューヨークへと渡ったハイチ人移民とその子孫を対象に、かれらの特殊な社会的な位置や、かれらと人種を同じくするアフリカ系アメリカ人との関係、さらには他の西インド諸島系住民との関係を、ディアスポラという概念を軸に多角的・学際的に分析することを目的としている。
著者
山本 眞史 植村 哲也 松田 健一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-05-31

本研究の目的は本質的に大きなスピン偏極率を有するハーフメタル材料のCo基ホイスラー合金と,高移動度半導体チャネル(Ge等)を融合する高品質エピタキシャルヘテロ構造の実現を通して,次世代半導体スピントロニクスの基盤を構築することである.平成24年度は,強磁性CoFe電極からMgOバリアを通したn-Geチャネルへのスピン注入の特性を実験的に詳細に検討し,以下の知見を明らかにした.CoFe/MgO/n-Ge接合に対して,2.25 nmから2.75 nm の範囲のMgOバリア厚み(t_MgO)に対して,室温で,3端子配置により明瞭なHanle信号(磁化は面内,磁場を面に垂直に印加)および逆Hanle信号(磁場を面内に印加)を観測した(スピン注入の方向: 強磁性体から半導体チャネルへのスピン注入).また,スピン信号ΔVの大きさ(Hanle信号と逆Hanle信号の和)から見積もったspin-RA積(ΔRsA=(ΔV/I_bias)A)は,例えばt_MgO=2.4 nmの接合に対して,半導体へのスピン注入の標準理論(Fert and Jaffres, 2001)の値の4桁大きな値であった.さらに,spin-RA積はt_MgOに対して指数関数的な依存性を示すことを見出した.一方,標準理論では,spin-RA積はt_MgOに対して依存性を示さない.このように,これらの実験結果は,観測されたHanle信号が半導体Geチャネルでのスピン蓄積によるというモデルでは説明できない.この結果を説明するため,トンネル接合界面に存在する局在状態での,磁場によるスピンの歳差運動によりスピン偏極率が低下し,このためフェルミレベルでのアップスピンとダウンスピンの波数が変化し,結果として,トンネル確率が磁場によって変調されるというモデルを提案した.