著者
高橋 応明 伊藤 公一 齊藤 一幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,インプランタブルアンテナを体内に植え込んだ時に,埋め込み部位の組織構造がアンテナの特性へ与える影響について検討を行った。周波数400MHzおよび950MHz,2.45GHzにおいて,胸部,腕部の組織構造を表現した高精細人体ファントムを用いて解析し,従来の均一組織での検討では適切でないこと,層構造の解析が必要であることを確認した。また,それぞれの周波数に適したインプランタブルアンテナの提案を行った。
著者
杉崎 範英
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、発達度が疾走パフォーマンスにおける個人差に関与する下肢筋を特定すること、およびその筋のトレーニング法を検討することを目的とした。下肢各筋群の筋体積を測定し、疾走タイムとの関係を検討したところ、相対的に大殿筋およびハムストリングが大きい選手ほど疾走タイムに優れることが明らかとなった。またスクワットトレーニングを行う場合、バーベルを用いた低速度で行う場合よりも、自体重のみによる全力での跳躍を行う方が、大殿筋の大きな活動を引き出すことができることが示された。
著者
渚 勝 伊藤 隆 小高 一則 松井 宏樹 杉山 健一 吉田 英信 久我 健一 石村 隆一 宮本 育子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

多様体の非可換化として作用素環論の研究をすすめるという目標で、(1)無理数回転環をモデルとする帰納極限の環の構造解析、(2)幾何学的データとしてKー理論、次元の果たす役割、(3)より非可換な対象として作用素空間の構造を調べる、という3つの視点からのアプローチを試みた。まだまだ多くの問題を抱え、今後の研究課題として残ることは多いが、それぞれの視点から一応の成果を得ることができた。帰納極限の環の構造解析として、松井によるカントール集合上の力学系からできる環の解析が進展し、既にK-理論を用いて力学系の状態を把握する結果が得られていたが、その結果の不備と、更なるK-群の情報が必要であることなど緻密な関係がわかってきている。直接的に帰納極限の環ではないが、それに関連して核型でない環の中でも対象を絞ることによりK-群が環の同型を与えるクラスを方波見ー渚によって構成ができた。次元については、渚ー大坂ーPhillipsによって一応の結果を得ているが、K-群、次元の期待した直接的な成果は今後になる。より非可換な量子化としてハーゲラップテンソル積、環の自由積への実現などの作用素空間の話題がある。この方面は最近、成書の発行が多く、形が出来上がりつつ理論に見えるが、伊藤ー渚の研究によるハーゲラップテンソル積の拡張、シュアー写像との関連によって新しい視点が与えられたと自負している。今後の展開として自由群環のノルムの話題もこれに関係してくるが、これらの計算(自由確率論を用いる)の中で可逆元での近似が大きな意味を持つ事実があり、安定次元1などの次元概念との関係が見える。
著者
中神 潤一 蔵野 正美 安田 正實 吉田 祐治 田栗 正章 種村 秀紀 辻 尚史
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ファジー推移のマルコフ決定過程への導入は千葉大学計画数学グループ[蔵野正美、安田正實、中神潤一、吉田祐治(北九州市立大学)]の主要研究課題で1991年より始められている。本研究課題は、動的ファジーシステムの最適構造についてファジー演算から導出される数学構造の意味付けを深めることにより、最適停止問題・ゲーム理論等に応用できる具体例の作成を通じて、ファジー理論の本来の要請である頑健性構造の解明に研究を拡大することを目標とした。科研費の内示当初より、共同研究者である吉田祐治教授(北九州市立大学)と共同の本格的な科研費研究集会を千葉2回九州2回と交互に4年間に渡って毎年開催する運びとなった。13年度は北九州市立大学、14年度は千葉大学、15年度は千葉大学、最終年度の16年度は北九州市立大学で科研費研究集会「不確実性下での数理決定とその展望」を開催、18件の発表が好評のうちに行われた。最新の研究成果の発表に対する討論と貴重な情報の交換が得られ大変有意義であった。このような交流は境界領域としての学問を進めていく上でぜひ必要と考えている。本研究課題において、裏面に記載した研究成果を含む10編の査読付き論文を作成した。国際Proceedings及び報告論文は17編、国内外の研究発表は29件になった。以上の研究成果は、今後の研究の発展と共に、国際シンポジウム等で積極的に発表し、国際的に評価された学術専門誌に投稿しその評価を受ける予定である。最近ザデーが提唱しているパーセプション(認知)の概念をファジー集合の新しい解釈として、ファジー値をもつ最適停止問題に適用した論文を発表した。これに続く論文としてマルコフ決定過程に適用した論文を作成中である。またファジー選好順序を動的決定過程に取り入れて、人間的決定を考慮した人工知能等の定式化を試みている。次年度以降の研究目標の一つとしたい。また、最後になりましたが、計算機・図書関係の整備等への補助金の支給に感謝致します。
著者
百原 新 工藤 雄一郎 沖津 進
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

最終氷期から現在までの栽培植物を含む植物群の分布域変遷におよぼした人為的影響を明らかにすることを目的に,全国の遺跡調査報告書に記載されている種実類や葉などの大型植物遺体出土記録をデータベース化した.国立歴史民俗博物館に収蔵されている,全国の遺跡発掘報告書を閲覧・入力し,約63,000件の大型植物遺体データが得られた.その結果,カジノキなどの栽培植物やコナギなどの雑草類の大陸から日本への伝播時期や,スギやイチイガシ等の有用樹種の日本の中での地理分布変遷が明らかになった.
著者
綾野 雄幸
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.29-34, 1965-12-31

牛肉,豚肉を加熱条件(温度・時間)を変えて水煮した場合,加熱が蛋白質の消化に如何に影響するかについて,ペプシンによる人工消化試験を行なった.(1)生肉および加熱肉(120℃,1時間処理)ともpH 1.4で最もよい消化率を示した.pH 2.0になると加熱肉の場合,急速に消化率が低下した.(2) 60℃または100℃で1時間加熱した肉は生肉とほとんど同じように消化したが120℃に1時間加熱したものはその消化率が低下した.特に肝臓部はもも部や背部の肉にくらべて著しく低下した.(3) 120℃で加熱時間を増すと,消化率は時間の経過にともない低下した.もも部や背部はほとんど同程度に消化率が低下したが,肝臓部の場合は他の二者より著しかった.本実験には幸治孝明,西康隆両君の助力を得た.ここに記して感謝の意を表す.
著者
岡ノ谷 一夫
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

ヒトでは音声の産出と知覚に関して大脳の左半球が優位である。申請者のこれまでの研究で、鳴鳥類の一種であるジュウシマツでは、音声の産出において大脳の左半球が優位であることがわかっている。今回申請した研究では、知覚における大脳の優位半球を特定し、それが種に特有な音声に限るのかどうか、生物学的に無意味な音の知覚にも脳の左右差があるのかどうかを検討した。実験にはオスのジュウシマツ4羽を使った。まず、これらの被検体から「地鳴き」と「歌」とを録音し、その後、鳥類大脳における音声産出の最高中枢であるHVCの左右のどちらかを破壊した。この際、被検体を脳定位固定装置で3次元的に定位し、HVCの3次元座標にもとづきラジオ周波数を放射する電極によりHVCとその周辺の組織を熱電気破壊した。回復をまって、オペラント条件付けによりGO/NOGOパラダイムで音声を弁別するように被験体を訓練した。弁別訓練に用いた音声刺激は、3kHz、200ミリ砂の純音と、同じ長さの白色雑音である。これと同時に、定期的に音声を録音し、歌の産出への影響も調べた。歌の産出に関しては、左のHVCを破壊された個体では歌の構成と音声構造が大きく変化し、ノイズ状の歌に変化してしまった。右のHVCを破壊された個体では手術後しばらく歌が変化したが、変化の度合は左の場合に比べ軽微であった。この結果は、申請者の先行研究と一致する。人工音声の弁別に関しては、4個体とも10セッション前後で弁別を学習し、HVCの破壊側による差はなかった。これらの結果と、申請者の先行研究とを総合して考察すると、鳥類のHVCは自種の音声と他種の音声とを弁別する際には左が優位だが、人工的な音刺激を弁別するには左右差がない、または必要がない、と考えられる。このことは、鳥類の左HVDは、人間のブロカ領とウエルニケ領とを総合したような働きを持つことを示唆する。
著者
丸 光惠 田中 千代 倉山 英昭 藤澤 洋子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.49-57, 1998-03
被引用文献数
2

慢性腎疾患をもつ青年期患児37名を対象に,喫煙飲酒の実態とそれに関連する要因を明らかにする目的で,質問紙と面接による調査を行った.質問容は1)人口統計学的データ,2)自覚的健康度,3)学校・社会生活,4)現在行っている治療・処方の内容,5)療養行動,6)病気や治療に関する気持ち,7)両親,きょうだい,友人の喫煙行動,および8)飲酒・喫煙行動,であった.過去一ヶ月間で20本以上喫煙した者は4名で,喫煙は習慣化していた.過去1ヶ月に飲酒したと答えた者は19名(男11名,女8名),過去1週間では12名(男7名,女5名)であった.週飲酒者は一週間に外食する頻度と有意に多かった.病気に関連した気持ちでは,「食事のきまりを守ることはむずかしい」.「人から外見で判断されている」と「血尿やタンパク尿がいつもより多くでるのではないかと気になる」でCramer's Vが0.3以上を示した.喫煙する友人がいる場合では,カイ二乗検定で有意に週・月飲酒経験が多かった.喫煙・飲酒ともに病識,健康観,療養行動,友人関係,親の関わり,との関連が示唆された.
著者
佐々木 陽一郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学経済研究 (ISSN:09127216)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.333-352, 1998-12-02

Economic historians must always pay much attention to the first-hand materials or primary sources. These are basically documents of the contemporary people : diaries, account books of merchants, and notes of rent collections by landlords. As an economic demographer of Tokugawa period, I have been heavily involved in reading the Shumon-ninbetsu-cho, or the ledgers of religious denominations of villagers of each village. These ledgers had been compiled by lower bureaucracies annually and kept well. By comparing the data of a certain year's document with another year's, you can surmise and finally determine the local transformations of population. According to my investigation of Takayama district of Hida prefecture, I concluded that the poor people there did not belong to those who had more children than richer ones.佐々木陽一郎先生退官記念号Collected Papers on the Occasion of the Retirement of Professor Yoichiro Sasaki
著者
中澤 潤 八木 龍浩 小野 美紀 中澤 小百合 菅 治子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第1部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.213-227, 1987-02-26
被引用文献数
1

幼児期の「話しことば」及びそれに関わる要因の発達過程を458名の幼稚園児を対象に分析した。「話しことば」に関わる基礎的要因として,語い,性格,交友関係,知識・表現をとりあげた。年齢に伴い,語い年齢,知識・表現は当然のことながら上昇した。保育年数が増加するにつれ,孤立児は減少し,また知識・表現も上昇した。性差は性格にみられ,男児は女児より「活動性大」「反抗的」で,女児は男児より「あたたか」であった。「話しことば」の行動評定の結果は,年齢にともなってほとんどの項目で評定段階が上昇すること,また,一部の項目で男女差,保育年数による差のあることを示した。「話しことば」の行動評定を因子分析したところ,5歳児では「遊びの中のことば」「意志・意見の表明」「教師への話しかけ」「しつけられることば」の4因子,4歳児では「遊びの中のことば」「教師への話しかけ」「しつけられることば」の3因子,3歳児では「子ども同士の会話」「教師への働きかけ」の2因子が抽出され,発達に伴い「話しことば」は分化していった。5歳児で抽出された4因子に基づいて因子得点を算出した。「意志・意見の表明」以外の3因子で5歳は4歳より高く,「遊びの中のことば」「しつけられることば」は保育年数が多い程高かった。「意志・意見の表明」は性格検査の「反抗的」と負相関,「教師への話しかけ」が「あたたかさ」と正相関を示した。さらに社会的地位指数と「遊びの中でのことば」は正相関,「意志・意見の表明」と負相関であった。これらの大まかな発達傾向について日常の保育との連携の中で,さらに詳細に検討を行う。
著者
白 志星 藤井 英二郎 仲 隆裕 浅野 二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.203-213, 1992-03-25
被引用文献数
2

李朝における宮闕は中国周代からの宮闕制度に従うかたちをとりながら,一方では周りの地勢を重視する風水地理の思想が加わったかたちで構成されている.この宮闕に見られる宮苑における植栽は象徴性と装飾性,それから実用性を念頭に置きながら配植されている.外朝は宮闕のアプローチの空間であり,重要な見せ場として扱われ,ここでは多彩な植栽がなされている.治朝では行事に伴う機能的な面が重視された空間造りがなされ,植栽が排除される.
著者
笠井 孝久
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. I, 教育科学編 (ISSN:13427407)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.181-189, 2001-02-28

不登校児童生徒の不登校の状態やそのきっかけは様々であり,彼らに対する援助的関わりには,個別的アプローチが必要となる。児童生徒個々の発達状況や置かれている環境によって,乗り越えるべき課題が異なると考えられているためである。不登校を理解する視点の1つとして,発達課題の視点がある。例えば,中学生には,新しい価値基準の獲得といった,その時期特有の課題があり(笠井,2000他),それが不登校のきっかけや原因になったりするという視点である。確かに,それぞれの発達課題は容易に達成できるものではなく,課題への取り組みの困難さや達成の失敗をきっかけに不登校になることも少なくない。不登校児を理解・援助する際に,発達課題の視点は,非常に有用である。ところが筆者が出会った不登校児の中には,実年齢以前の発達課題でつまずき,その課題は達成されないままの状態になっている子どもも少なくない。既に中学生の年齢になっているのに,対人関係の技術が実年齢の子ども遂に比べ,著しく未熟だったり,興味・関心が小学校低学年程度の生徒は,とても同年代の仲間集団には適応できないだろう。ある時期の発達課題の未達成が,後の発達段階で問題を生じさせるものと考えられる.故に,実年齢の発達課題についての視点,すなわち横断的に発達をとらえる視点だけではなく,それまでの発達課題で達成できていないものは何か,不登校になったために本来なら体験すべき教育経験や対人関係が限定されてしまい,本人の実年齢に即した発達が阻害されてしまったのではないか等を考慮して不登校児に対する理解・援助を行う必要がある。不登校により阻害された経験が,学校復帰への妨げになることは,不登校による学業の遅れを考えると容易に理解できる。不登校児童生徒が,いざ学校へ復帰しようとしたときに,学業の遅れが気になって,登校行動が妨げられることも少なくない。近年,不登校児童生徒への援助的関わりとしてに,グループ体験や野外体験活動が多く行われている(国立オリンピック記念青少年総合センター1998,笠井, 1999)。これらの活動は,集団生活の中で傷ついた不登校児童生徒に,緩やかなペースの小集団活動を通して,自己信頼感や自信,集団で活動する楽しさ等を取り戻させる機能だけでなく,不登校をしていたがために阻害された経験や対人関係を補う機能も有している。この経験補足的な視点は,これまであまり着目されていなかったように思われるが,不登校児童生徒が再び学校へ復帰する場合に,同学年の集団への適応をより円滑に行うためには,非常に有効な関わりであると考えられる。そのような関わりを行うためには,まず,児童生徒が不登校という経験から,どのような影響を受けているかを明らかにする必要がある。そこで本研究では,不登校児童生徒が担任や友人に期待する関わりについて,現在の年齢という視点に加え,不登校になった時期や不登校の長さ等を分析の観点に加えて検討する.それによって,不登校をしている間に阻害された経験や,反対に不登校だからこそできる他の児童生徒が経験することができない経験を検討することが,現時点での不登校児に対する適切な援助のあり方についての有用な視点となる可能性について検討する。
著者
角南 祐子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.313-321, 1992-12-01

胸部エックス線写真の大動脈弓部石灰化所見は,一般に動脈硬化の指標として広く認められている。そこで今回大動脈弓部石灰化の年齢別変化を調べ,かつ今後の検診の参考にするため,住民検診時の間接写真を利用して大動脈弓部石灰化の年齢別分布,性差,地域差について検討した。さらに動脈硬化の諸要因と石灰化との関係も調べた。大動脈弓部石灰化出現率(以下石灰化率)は年齢とともに高率となり,高齢者では男性に比し女性の石灰化率が高かった。男女の石灰化出現のオッズ比(相対危険度)を算出すると,男性の女性に対する石灰化出現の危険性は有意に低かった。地域別に石灰化率をみると,農村部で最も高率で,漁村部,都市部の順に低率となり,その差は高齢者ほど顕著であった。動脈硬化の危険因子のうち,高コレステロール血症群,拡張期血圧高値群,喫煙群の三因子正常群に対する石灰化出現のオッズ比を性年齢別に算出したところ,女性では危険因子を有する群で有意に石灰化出現の危険性が高かった。石灰化の危険因子が単一の場合に比し,重複するとさらに石灰化出現の危険性が高くなる傾向が認められた。地域別に高血圧性疾患,虚血性心疾患,脳出血,脳梗塞等の動脈硬化性疾患の訂正死亡率をみると,都市部では他の地域に比し石灰化率と同様死亡率が低く,これらの関連が示唆された。石灰化出現は,大動脈系の内膜変化および動脈硬化性疾患の存在を示唆する所見であり,集団検診より診断できる所見として重要と考えられた。
著者
三島 孔明 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.201-207, 1991-03-01
被引用文献数
2

植物のもつ心理的効果について調べるために,植物の視覚的構成要素の一つである色と脳波の関係について分析した.視覚対象として色布を用い,黄,緑,白,青,黒,赤,紫,灰の順に被験者に呈示し,それぞれの対象物をみているときのα波,β波,θ波の発生量を比較検討した.その結果,ほとんどの色においてα波とβ波,α波とθ波の間には比例的関係がみられた.このことは,ある色を見たときの脳波を構成するα波とβ波,ないしはα波とθ波の割合が多くの人でほぼ一定であることを意味している.各色におけるα波とβ波,θ波の相関係数を検討すると,黄では男女ともにそれらの相関係数が高く,逆に灰ではα波とθ波の相関係数が男女とも低くなった.このことは,黄を見たときのα波とβ波,θ波の割合が男女それぞれにおいて被験者間にばらつきが少なく反応に個人差が少ないことを意味しており,逆に灰をみたときは男女ともα波とθ波の割合に個人差が大きいことを意味している.次にα波に対するβ波,α波に対するθ波の回帰直線の傾きについてみると,ほとんどの色で男女ともα波に対するβ波の傾きがα波に対するθ波の傾きに比べて大きくなった.このことは,α波はβ波が増加してもあまり増えないがθ波が増加すると大きく増えるようになることを示しており,α波はβ波が多く出ている状態では出にくく,θ波が多い状態で出やすいことを意味している.青,白,緑ではα波に対するβ波の傾きが女性で大きく,男性で小さくなった.また,α波に対するθ波の傾きは黄,白,黒で男性が大きく,女性が小さくなった.黄,白,黒については,現時点でθ波の意味やα波とθ波の関係がほとんど研究されていないことからさらにその意味を考察することは困難である.しかし,緑と青でみられた性差については,α波やβ波の一般的傾向を合わせ考えると,これらの色をみたとき男性は女性に比べてより緊張感が少ない状態にあるものと考えられる。
著者
阪口 雅弘 増田 健一 蔵田 圭吾 辻元 元 五十君 静信
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

犬においてアレルギー疾患が多く報告されている。その中でもスギ花粉症の犬はアレルギー全体の10%程度を占め、ダニアレルギーに次いで重要なアレルギー疾患である。アレルギー治療研究の分野において乳酸菌が注目され、乳酸菌におけるTh1誘導能およびIgE産生抑制効果が示されている。本研究においてスギ花粉症に対する抗原特異的な免疫療法として、安価に製造可能なスギ花粉アレルゲン遺伝子組換え乳酸菌を用いたワクチンを開発することを目的としている。ベクターとして、乳酸菌:Lactobacillus casei(ATCC393)を用いた。L.. caseiにおける発現に成功しているLLOとの融合タンパクとして発現されるようにデザインしたプラスミドベクターを作製し、ム.oε5θグに導入した。本研究では、 N末端から158-329番目のアミノ酸を含むスギ花粉アレルゲンであるCry j 1(Cry j 1_<158-329>;約20 kDa)を用いた。このCry j 1はヒトおよびBALB/cマウスのCD4+T細胞が認識するT細胞エピトープを含んでいる。 LLOは、Listeria monocytonegesの菌体由来タンパクであり、LLO白体にマウスの脾臓細胞からTh1サイトカインを誘導することが明らかとなっている。 LLOは溶血毒性を有するため、本研究では、溶血毒性をもたらすドメインを欠損させた変異LLOを用いた。抗LLO抗体を用いたウェスタンブロット法では、 Cry j 1_<158-329>-LLO導入株で約60kDaのバンドを、LLO導入株では約40kDaのバンドを検出した。この分子量の違いはCry j 1_<158-329>(20kDa)の分子量と一致することから、導入したCry j 1_<158-329>は発現していると予想される。また、LLOからCry j 1_<158-329>にわたるシークエンスを増幅するようにデザインされたプライマーペアを用いたRT-PCRによって、Cry j 1_<158-329>mRNAの発現も確認した。これらの結果は、この組換えL.. caseiにおけるCry j 1_<158-329>の発現を示している。このリコンビナント乳酸菌によるIL-12P70誘導能をBALB/cマウスの脾臓細胞で検討した結果、 LLOの発現によってIL-12の産生が増強されることが明らかになった。
著者
村山 眞維
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.今回東京で行った質問票調査によれば、我国の法律業務は個人の不動産や相続・離婚など主に個人を顧客とする仕事と、中小企業を主な顧客とする仕事とが中心となっている。渉外関係などを突出した部分とする大企業関係の法律業務は、増えてきているように見えるが、まだ法律業務の基本構造を変えるには至っていないように思われる。2.刑事弁護の担手は徐々に減少してきているようである。少なくとも国選受任者の割合は2割に満たない。国選弁護の主な担手は、登録後十年未満の弁護士と老令の弁護士、および刑事弁護を続ける意志のある比較的少数の中堅弁護士である。これに対し、私選弁護はより広い弁護士層によって受任されており、いわゆる一般民事案件と同様なものとして受任されているように見える。3.以上の状況は、今世紀初頭の米国と比較し、国選弁護に類似の問題をもつ反面、弁護士会について大きな相違いがある。ビジネスロイヤ-が主導権をもった米国と異なり、東京では一般民事案件を扱う個人経営弁護士が運営の中心となっている。これは、法律業務の構造と、法律専門職の理念の相違とも関連しているのかもしれない。4.国選弁護活動は、私選弁護活動に比べ余り活発に行なわれているとは言えない。ただし、それは国選事件の内容が活発な弁護活動を必要としないようなものであるからかもしれず、その点の今後の検討が必要である。5.法律業務の構造変化がもたらし得る影響をより明確にするためには、刑事事件の受任がいかなる業務環境の下で、どのような動機によってなされているかを、面接調査などの方法により明らかにすることが必要であろう。