著者
梅村 浩 川平 友規
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)ガロア理論の同値性。一般微分ガロア理論には、Malgrange 理論(2001)と研究代表者によるもの(1996)がある。 前者は幾何学的であり、後者は代数的である。 代数的にジェット空間のなす Lie groupoid を構成することにいより、 両者が同値の理論であることを示した。(2)差分ガロア理論の提唱とその力学系への応用。差分方程式の一般ガロア理論を構成した。それを閉リーマン面上の離散力学系に応用して、閉リーマン面上の力学系でガロア群が有限次元であるものを決定した。 それらの力学系のガロア群は可解であるので、閉リーマン面上の離散力学系で可積分なものを決定したと言ってもよい。(3)ガロア理論の量子化。研究代表者の学生であった F. Heiderich は我々の一般ガロア理論が微分方程式や差分方程式のみならず、 一般の Hopf 代数の作用に関する関数方程式にまで拡張できることを発見した。この理論を具体的に意味付ける研究を開始し、成果を上げ始めている。
著者
戸田山 和久 久木田 水生 間瀬 健二 唐沢 かおり 鈴木 泰博 秋庭 史典
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、人類よりも知的な人工システムが技術的に可能になる日であるとされるシンギュラリティを巡り、その技術予測としての妥当性、そこで用いられる「人類よりも知的」の意味を明らかにし、その基礎作業の上で、なんらかの意味でのシンギュラリティが起こりうるという仮定にもとづき、予防的にシンギュラリティに人類はどのように対処すべきかを検討し、提言することを目指す。平成29年度は、シンギュラリティの「哲学的問題」として(1)知能爆発の可能性(必然性?)を論証する回帰的議論は果たして妥当か。(2)知性・知能とは何か。そもそも機械はどのような心的能力をもちうるか。(3)知能爆発の結果、倫理や価値(真・善・美)はどうなるのか。(4)シンギュラリティ後の世界において、われわれ人間はどんな役割を果たせるのかという問題群を取り出した。また、これまでに「シンギュラリティ」について書かれた言説について包括的なサーベイを行い、技術予測、シンギュラリティ概念、知性の概念、コンピュータ観、人間観等にかかわる基礎的概念について、著者によって大きく異なることを見出し、それを整理し、「シンギュラリティ」についてどのように論じるべきかというメタ的・方法論的なことがらについて結論を得た。それは、研究代表者により『人工知能学大事典』の「シンギュラリティ」の項目執筆というかたちで発表された。その他、シンギュラリティについて考察するのに関わりをもつ副次的概念や問題(とりわけ機械が犯した失敗についての責任の所在、機械は責任主体になりうるかという問題)について、研究成果を得て、さまざまな媒体で発表した。
著者
古賀 一男
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究課題では,1歳未満の乳幼児の眼球運動を正確かつ定量的に記録するための新しい方法を開発すると共に,その方法を用いて乳幼児の眼球運動から眼科的あるいは認知発達的な見地から発達の不具合を早期に検出するという極めて限定した目的で研究が進められている.本研究課題では,言語的コミュニケーションが不十分な場合でも被験者の眼球運動を定量的に計測する手法を確立することと,その応用例を示すことを採取的な目標としている.特に萌芽的研究の限られた期間内に上記の目標のみをアクション・アイテムとして設定し確実に方法を確立することを目指す.初年度では,赤外光による角膜反射光法をとるため薄暗い中で撮影が行えるよう、現有システムに、リモートコントロール可能な赤外線カメラと、複数カメラ間の同期をとるための装置を追加した.さらにXY-tracker(浜松ホトニクス:フレーム内の最明点を検出し、その座標値をXY軸同時にデジタル出力できる)を用い、XY-trackerで追った眼球運動と頭部運動の軌跡を解析することで眼球の移動量や方向などを定量的に測定するシステムを構築した。このシステムを用いて引き続きデータの取得を継続し,また取得されたデータの解析を行い.新規に考案されたアルゴリズムを用いて,すでに取得された乳幼児の眼球位置の較正を試みた.
著者
阿曽沼 明裕
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

まず第一に、研究大学を検討するための枠組みを構築する。研究大学とは何か、研究大学と非研究大学との比較枠組みを検討し、組織的・財政的基盤でどこに着目すべきかを検討する。第二に、研究大学と非研究大学を比較し、研究大学独自の共通な構造を実証的に明らかにする。しかし、第三に、共通な構造を探すのと逆に、研究大学群の多様性に着目し、組織的・経済的基盤にどのような多様性があるのかを明らかにし、そのパターン化を行う。第四に、こうした研究大学の共通な構造や多様性の背景にあるメカニズムを探る。研究大学群および個別研究大学の形成の歴史も検討する。第五に、以上の検討を経て、日本の研究大学の在り方を考察する。
著者
星野 晶成
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年、日本では「長期海外留学の減少」と「大学生の短・中期海外留学の増加」(約6割が1ヶ月未満の滞在)が顕著になっている。更に、英語先進国(伝統的留学先国)以外に、ASEAN、アフリカ、中南米、南アジアといった非伝統的留学先国への留学が拡大している。つまり、日本からの海外留学に変容(短期化/多様化/プログラム化/大衆化)が見られる。この変容において「政府」、「大学」、「大学生」の相互・因果関係を明確に指摘できていない。結果、教育政策の運用や効果等の議論に精度を欠く状態である。本研究では、大学を対象として、非伝統的海外留学プログラムの動態(設計/取組/課題等)を解明し、政策提言に用いる。
著者
森 久美子
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大學教育學部紀要. 教育心理学科 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.65-78, 1994-12

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
天谷 祐子
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 (ISSN:13461729)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.9-19, 2005
被引用文献数
1

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
角田 篤泰 松浦 好治 外山 勝彦 小川 泰弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

e-Legislation(電子立法)の方法論の研究とこれに基づく支援システムの提供を行った。その結果として、条例・規則(=例規)のデータベース・システムを開発・提供し、全国の約半数の自治体で利用されるようになった。これによって自治体の立法作業に役立つことができた。このデータベースは我が国で初めての大規模な例規データベースであり、実際にその統計情報なども発表して、例規を定量分析できる学問的基盤を与えることにもなった。このシステムにはスーパーコンピュータを利用した例規分類機能や立法作業の支援機能も装備されている。さらに、この研究過程で法政策の形式的記述方法や定義条項の執筆方法論も提案した。
著者
高橋 徳幸 伴 信太郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

医師の共感的態度醸成の必要性が叫ばれるなかで、医師の共感的態度は経年的に低下することが定説となっている。しかしこれは「患者の視点からの量的検証」を経たものではない。よって本研究は、我々が開発した患者の視点から医師の共感を評価する質問紙票であるCARE Measure 日本語版(Aomatsu et.al, 2014)を踏まえて作成された、医師の診療の質を患者の視点から評価する尺度C Q I - 2 の信頼性・妥当性検証を行うことを目的としている。それに先立ち、CARE Measure日本語版の評価者間信頼性に関して明らかにされていなかったことから、本研究で検討を行っている。その結果、評価者間信頼性を検討するために40枚程度の質問紙票を回収する必要があることが明らかになった。これは過去に他国で検討された数値と比較しても妥当な値であり、日本語版CARE Measureの汎用性を高める意義がある。一方、本研究では医師の共感的態度の経年的低下という定説に対して、質的探索によるアプローチも行っている。すなわち、既に我々は医学生・初期研修医への質的探索により「共感の量的減少ではなく質的変化」の可能性を示した(Aomatsu et.al, 2013)。これを踏まえて、本研究では後期研修医・指導医についても共感に関する認知構造を質的に探索し、共感の認知構造に関する新たな経年的変化モデルを構築することを目的としている。これまでに、患者との信頼関係構築のためのコミュニケーションスキルとして共感を特に重視する総合診療科に焦点を当て、そこで研修をする後期研修医(専攻医)に対して、2017年度は質的探索を行った。その結果、専攻医は臨床経験によって認知的共感を獲得し、それを主に用いながらも、専攻医自身の出産といった非職業的経験によって感情的共感をも行っていることが明らかになった。
著者
吉川 卓治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、戦後改革期の公立大学について、「理念」、「制度」、「実態」の三側面から、一次資料を収集・分析することで実証的に解明することを課題としている。本年度は、「理念」および「制度」の面については、昨年度までに収集してきた資料に加えて、国立国会図書館憲政資料室に所蔵されている連合国軍最高司令官(GHQ/SCAP)の公衆衛生福祉局(PHW)文書の「マイクロフィッシュ」を集中的に調査・収集したほか、引き続き国立公文書館、国立国会図書館所蔵の関係資料を集めた。また、福岡共同公文書館、および秋田県立図書館・秋田県立公文書館でも資料の調査・収集を実施した。さらに情報公開請求によって、福島県立医科大学に戦後改革期の制度改革にかかわる資料が所蔵されていることが判明したため、その資料の収集も行なった。これらの資料の分析を進めることで、昨年度、その成果の一端を、戦前から戦後改革期の医学専門学校や医科大学の成立・展開において重要な役割を果たした医学視学委員制度の成立過程と組織改編、およびそれがもった意味を解明した論文のなかにまとめることができた。公立大学の「実態」にかかわっては、昨年度収集した山梨県庁所蔵の資料を分析することで、戦時中に発足した山梨県立医学専門学校を前身とした山梨県立医科大学の設立運動が、どのようにはじまり、どう展開して、そしてなぜ成功しなかったのか、ということについて新たな見解をまとめた。これは公立大学の成立過程の実態をいわば裏側から明らかにする意味をもっていた。中部教育学会において報告した。そのうえで所属大学の紀要に論文として発表した。
著者
吉川 卓治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、戦後における高等教育機関の都道府県格差の淵源をその大増設期だった1940年代とみなし、その時期に高等教育機関が府県ごとに設置されたりされなかったりしたことに注目して、その原因を解明しようとしたものである。公立高等教育機関を設置した地域では「官立医学専門学校誘致ブーム」に反応して過熱した地方議会の要望を地方当局が公立へと落とし込んでいったこと、政府・文部省側には設置認可の弛緩という状況が生じていたこと、反対に高等教育機関が設置されなかった地域では、財政問題はもとより、複数の高等教育機関像が競合し、地方議会レベルおよび地方当局レベルで調整されない状況がネックとなったことなどを解明した。
著者
斎藤 夏来
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究課題において設定した研究対象である宇喜多能家画像について、その伝来事情を論考「宇喜多能家画像の伝来事情」にまとめ、『岡山地方史研究』に投稿した。大寺社や大名家に伝来したわけではなく、近世期には村方社会において保存されてきた本画像の伝来経緯をいおおむねあきらかにすることができた。こうした伝来事情の検討を通じ、研究対象である能家画像が、むしろ典型的な中世画像の一例と考え得ることなどを指摘した。この論考は年度内の刊行予定である。また、主な研究目的である画像賛の読解について、高精細赤外線画像を用いた読解作業と、関連史料の収集とをほぼ終了し、「(仮)室町武士の創出ー宇喜多能家画像賛の検討」と題する論考の執筆に着手した。文書や記録などの補助史料としてではなく、むしろ文書や記録などの読み直しを迫られる史料として、画像賛という史料の特性や価値を捉えようとしている。なお本研究で撮影作成した高精細赤外線画像は、求めに応じて東京大学史料編纂所に提供し、『大日本史料』9編28の346~349頁掲載の「絹本着色宇喜多能家像」の翻刻に用いられた。この翻刻の成果も、執筆中の論考において、あわせて検討を加える予定である。また、本研究課題に密接に関連する著書『五山僧がつなぐ列島史ー足利政権期の宗教と政治ー』(名古屋大学出版会)を刊行した。
著者
湯澤 秀文 斉藤 真子 仲田 恵子 竹内 史央 大林 直美
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要 (ISSN:03874761)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.59-80, 2001-11-15

中学3年では広島・大久野島への研究旅行を中心に、国際理解と平和についての総合学習を行なった。様々な企画も織り交ぜながら、年間を通してグループで学習を進め、年度末にはその成果を研究集録とWe bページにまとめた。