著者
八田 武志 三輪 和久 川口 潤 筧 一彦 川上 綾子 栗本 英和
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

昨年度に続き本年度も今までに収集した漢字誤記のタイプ別分類(1)とその産出メカニズムの説明モデルの作成と、(2)さらなる自発書字における漢字誤記の収集を行った。さらに,(3)今までに収集した漢字誤記のデータベース作成と,(4)データベースの利用容易性の検討である。(1)については,音韻、形態、意味の3つの基本要素を中心にそれらの組み合わせから生じる音韻+形態、音韻+意味、形態+意味、音韻+形態+意味、語順、部品欠損、その他の合計10タイプに漢字誤記は分類できることが明らかとなった。このような誤記の産出は3基本要素の心内辞書での活性化によるとする認知モデルは,基本的に変更する必要を感じなかった。これは,10タイプの分類で不可能とするような新しいタイプの誤記は生じなかったためである。(2)について本年度行ったのは,(1)ベネッセ「赤ペン先生」に解答者が記載する赤ペン先生へのletterにおける誤記(この場合中学生が主な対象となる)。(2)大学生における約400名の自由記述タイプの試験答案における誤記(これは一人あたりおよそ2000文字以上の記述がある),(3)専門学校生におけるレポートおよび感想文における誤記を対象に収集した。(1)については,添削がネット上で行われる様態に変更されたために,途中で収集は断念せざるを得なかった。(3)および(4)に関しては,誤記を考慮した手書き入力デバイスへの支援ソフトに利便性の高い形式を模索中である。本研究に関連の深いものとして,書字において情動価をどの様に伝達するのかに関する実験研究を行い結果を発表した。その内容は,漢字,平かな,カタカナなど表記のタイプと活字体の種類を変数にしたもので音声言語でのプロソディに相当する機能を書字でも行っていることを立証するものであった。
著者
足立 守
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学博物館報告 (ISSN:13468286)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.115-128, 2002

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
鈴木 祥二
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、土佐藩参政の吉田東洋が中心となって編纂した『海南政典』と、安芸藩が化政期に編纂した『芸藩通志』を素材に、19世紀前中期に獲得された統治理念と技術・知識、及びその維新変革への影響を考察することを目指した。3か年にわたる研究の結果、次のような成果と展望を得ることができた。1、幕末土佐藩における吉田東洋および彼の門下による藩政改革は、藩政組織の再整備と役人の規律の確立、海防体制のための軍事力強化、政治儀礼の再編成をめざしたものであり、そうした内容が『海南政典』としてまとめられた。こうした政治文書は他に例を見ないもので、その内容は明治維新の政体構想の基礎になった。2、また、王政復古に行われた土佐藩の藩政改革は、「士民平均」を理念として、身分制度の廃止を実施しようとしたもので、こうした先進的な改革は『海南政典』に現れた改革思想を背景にもつと同時に、その理念は米沢藩や彦根藩などにも影響を与え、土佐藩を中心とした政治的連携を生み出すことになった。この点をよりいっそう解明していくことによって、廃藩置県の政治的背景を新たな側面から明らかにできる。3、19世紀に入り、幕府や大名は支配地の歴史・地理・生産などを把握するために、地誌の編纂に着手したが、それを可能にした知識の集積、地誌に反映された文明意識と歴史意識について明らかにした。また、20世紀初頭の地域史編纂にいたる出発点となった点を検討し、この100年間の地誌編纂史の流れを把握することができた。4、『芸藩通志』の編纂過程について、町村が作成した「国郡志御用につき下調べ書出帳」などを収集し、『芸藩通志』の内容との比較のための材料を得た。また、郡村毎の石高・戸口・牛馬数・物産・社寺・宗教者数など基本項目のデータベースを作成し、それらが藩政改革にどの程度生かされたのかを、今後検討していく基礎を作った。5、今後は藩政改革のために編纂されたこれら二書を、人民統治のための技術と知識が集積された政治文書としてとらえ、「民政学」という範疇でとらえて、近代化の上で果たした役割を検討したいと考えている。
著者
小嶋 誠司 本間 道夫
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

細菌のべん毛モーターは、細胞表層に自己集合し、エネルギー変換を担う超分子複合体である。モーターの回転力は、エネルギー源となる共役イオンが固定子中を流れる際に生じる、固定子-回転子間相互作用により発生すると考えられている。回転力発生のメカニズムを明らかにするためには、モーターの心臓部である固定子の構造情報が不可欠である。本研究では、ビブリオ菌Na^+駆動型モーターの固定子PomA/PomB複合体の結晶化を試みた。今年度は、これまで困難であった複合体の膜からの抽出の際に、界面活性剤Cymal-5を用いることで可溶化と精製度の向上が見られたので、大量精製し結晶化のスクリーニングを行ったが、現在のところ結晶はまだ得られていない。我々は部分構造の結晶化も同時に行い、H^+駆動型のサルモネラ菌固定子蛋白質MotBのC末端ペリプラズム側断片(MotB_C)の結晶構造を分解能1.75Aで決定することが出来た。固定子はこの領域に存在する推定ペプチドグリカン結合(PGB)ドメインを介してPG層に固定されていると考えられている。またイオンの透過は固定子がモーターに設置されて始めて活性化される。本研究で用いたMotB_CにはPGBドメインだけでなく、ペリプラズム側において運動に必須な部分がすべて含まれている。MotB_Cは1つのドメインで構成され、二量体を形成していた。MotB_Cが予想以上にコンパクトな構造であるため、ペプチドグリカン層に作用し固定するためには、MotB_Cにおいて大きな構造変化が起こらなければならない。構造情報をもとに行った機能解析により、PGBドメインでの二量体形成が固定子のチャネル部分を形成する膜貫通ヘリックスの適切な配置に重要であること、MotB_CのN末端部分の大きな構造変化がPG結合とプロトンチャネルの活性化に必要であることが明らかとなった。
著者
石川 佳治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

クラウドコンピューティングでは,並列・分散環境において多数のコンピュータを連携してスケーラブルな情報処理が実現される.また,さまざまな情報の連携による高度なサービスが提供される.本研究では,このようなクラウド技術の発展を考慮に入れた大規模時空間データの管理・処理技術に着目した.時空間データの特性を踏まえたクラウド環境上でのデータベース問合せ処理技術や,クラウドシステムの利活用技術などを開発するのみならず,時空間・モバイルデータベースにおけるプライバシー保護などの応用技術についても開発を行った.
著者
南 雅代 中村 俊夫
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.9, pp.46-54, 1998-03

第10回名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム(平成9 (1997)年度)報告 「最新型タンデトロン加速器質量分析計(加速器年代測定システム)による高精度・高分解能14C年代測定の利用分野・方法の開拓(II)」
著者
石田 勢津子
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大學教育學部紀要. 教育心理学科 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.57-66, 1988

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
川合 伸幸 香田 啓貴
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

他人の行動をまねることは、新たな行動や技能を獲得するうえで重要であるが、ヒト以外の霊長類では、模倣は非常に稀である。ただし「あくびの伝染」はさまざまな霊長類で観察されている。他人の行動をコピーすることの進化的、神経的基盤を調べるために、サルでの行動伝染と、ヒトでのあくびの伝染に関する脳活動(脳波)などを調べた。視覚手がかりに対して発声する訓練を受けたサルは、音声刺激に対しても高頻度で発声したが、提示されたものと同じ音声を発声することは無かった。ヒトのあくびの伝染には、認知的な模倣と情動的な模倣が脳の異なる領域で、かつ異なる時間順序で処理していることがあきらかになった。
著者
尾関 直樹
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、「分子状水素水を用いた間質性肺炎(IP)に対する新たな治療法の開発」である。本研究ではマウスによる肺線維症モデルおよびIPの一因であるARDSモデルを用いて、分子状水素水のIPに対する治療効果とそのメカニズムを系統的に分析する。分子状水素の活性酸素(ROS)に対する防御機能や、Nrf2を介したヘムオキシダーゼ(HO)-1、制御性T細胞(Treg)の誘導機能により、IPやARDSが制御されることが期待される。
著者
佐宗 章弘 中村 友祐 北村 圭一 長田 孝二 太田 匡則 市原 大輔 杵淵 紀世志
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

本研究では、衝撃波面前方に僅かな流速場を誘起すること(流速場nudge)によって波面を消失させるくらい積極的に背後圧力の増加を抑制する方法を原理実証し、ソニックブームなどの衝撃波被害緩和に応用することを目的とする。主要実験装置として「流動衝撃波管」を開発し、既設の屋内自由空間も活用して実験サイトを整備し、数値解析と光学可視化計測と密接にタイアップして研究を推進する。流速変化領域の有限長さや多次元性の影響等も含めて、関連する流体力学現象を解明し、衝撃波緩和・消失デバイスを原理実証、機能評価し、応用展開につなげる。
著者
山本 憲幸
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年、免疫チェックポイント阻害剤(抗CTLA-4,抗PD-1など)の出現により固形癌に対する治療も変わりつつある。これらと放射線治療の併用により遠隔病変にも治療効果が期待できることがわかってきた。しかし、温熱療法とこれらの併用による基礎的な研究報告はほとんどない。申請者らは、温熱治療の結果、免役機構が賦活化し治療をしていない腫瘍まで効果がある「アブスコパル効果(バイスタンダー効果)」と呼ばれる現象がありその効果を確認してきた。本研究は、口腔癌に対する半導体レーザーによる温熱療法と免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用療法の効果及びその作用機序の解明することである。
著者
石黒 澄衛
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2021-04-01

花粉の表面はエキシンと呼ばれる殻で覆われている。エキシンは樹脂でできた軽くてフレキシブルな構造物で、雄性配偶体である花粉を保護するのに役立っている。植物の種類ごとに形が決まっていることからエキシンの構造は遺伝子によって規定されていることがわかるが、遺伝子が形を決めるしくみはまだ十分に理解されていない。本研究では、微細で普通の顕微鏡では見ることができないエキシンの形成の初期過程を特殊な方法でイメージングするとともに、形の決定に関与する分子を洗い出し、どのような分子が相互作用しながらエキシンの形を作っていくのかを明らかにする。
著者
吉田 早悠里
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、エチオピア南西部カファ地方の民族学的研究の第一人者であるF.J.ビーバーが残した資料群を学術研究に利用するための基盤を整えることを目的とし、F.J.ビーバーの人物詳細の解明と、資料群の整理、デジタル化、目録作成を実施し、複数の場所に分散しているF.J.ビーバー資料群の全貌解明に取り組んだ。特に、資料の内容と詳細が明らかになっていなかったヒーツィンク区博物館所蔵資料と、K.ビーバー個人蔵資料の資料整理を行い、それらを学術研究に活用するための素地を整えた。これにより、F.J.ビーバーの資料群を後世に継承し、広く世の中に資するものとして活用していくための基盤を形成した。
著者
山本 浩之 吉田 正人 松尾 美幸 安藤 幸世 粟野 達也 鳥羽 景介
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

裸子植物でありながら被子植物のような二次木部を持つグネツム科の高木について、傾斜樹幹における負重力屈性発現のメカニズムを調査した。傾斜樹幹では、上側で二次木部の肥大成長が促進されると同時に、特異的に大きな引張の成長応力が発生することがわかった。その微視的メカニズムは、原始的なタイプの引張あて材をつくるモクレン科の樹種に類似していることがわかった。このことから、グネモンノキの負重力屈性挙動は、他の裸子植物に見られるような圧縮あて材型ではなく、被子植物に見られるような引張あて材型であると結論した。さらに二次師部においても、傾斜の上側で著しい肥厚が見られ、そこには大きな引張応力の発生が認められた。
著者
大野 民生
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

研究代表者は糖尿病モデル動物の腸管に膜様条虫というにサナダ虫を寄生させると、感染後2週間程度で他に病的な症状を一切呈さないまま高血糖状態だけが正常化するという現象を見出した。その原因は「膜様条虫は腸管細胞のインクレチン分泌を誘導してインスリン分泌を亢進させ高血糖を正常化する」と考え、その機構を遺伝子改変マウスを用いて解明する。
著者
河西 秀哉
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

象徴天皇制においてメディアの影響力は大きい。その関係性は切っても切れないものである。これまで、新聞や雑誌などとの関係性は研究されてきたが、戦後のテレビに関するものは未だ対象となっていなかった。本研究では、1959年10月より開始された「皇室アルバム」を中心とする、象徴天皇制を伝えるテレビ番組に関する史料調査を通じて、象徴天皇制とメディアの関係性を歴史的に検討する。こうした番組を製作した人々や伝えられる天皇側(宮内庁)などの関係者などへの聞き取りも行い、その意図についても明確化する。
著者
大路 樹生 井龍 康文 高柳 栄子 長谷川 精 Dornbos Stephen Q. Gonchigdorj Sersmaa
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

モンゴル西部ズーン・アツのエディアカラ系より藻類化石を発見し、その特徴的な保存状態に関して化学分析と考察を行った結果、バージェス頁岩タイプの堆積岩であることが判明した。またバヤンゴル渓谷のエディアカラ系より垂直構造を持つ生痕化石を発見した。これは海底下4㎝まで潜りU字状の形態をもった生痕で、おそらく前後に伸びた体制と深く底質を掘り込むことが可能な筋肉組織をもった左右相称動物によって形成されたもので、また捕食動物の存在も示唆される。このようにカンブリア紀より前に深く潜る生痕化石を報告し、左右相称動物と捕食動物の存在を示唆する成果が得られたことは、従来の学説を大きく変えるものとなった。
著者
松村 英之 橋本 光靖 浪川 幸彦 向井 茂 大沢 健夫 四方 義啓
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.橋本は局所環の重複度の研究,ことに交差の重複度が零にならないというセール予想の研究に取り組んだが,大問題なのでまだ結果が出ていない.2.岡田はフィボナッチ半順序集合に関係した半単純代数の増大列とその既約表現などについて研究したが,平成5年9月からM.I.T.に留学中である.3.吉田はlinear maximal Buchsbaum modulesを定義してその性質を研究した.局所環(A,m)上の有限生成加群Mが,e(M)+l(M)個の元で生成されるとき,Mをlinear maximal Buchsbaum moduleと呼ぶ.ただしl(M)=sup(length(M/qM)-e(q,M):q is a parameter ideal of M)Aがmaximal embedding dimensionをもつとき,剰余体A/mのsyzygyがすべてlinear maximal Buchsbaum moduleになるなど,多くの興味ある結果が得られた.この研究は38ページの論文にまとめられたが,なお推敲中である.4.松村は局所環の合成によって非ネーター環を簡単に作る方法を考案した外,留学生鄭相朝の博士論文(一般化された分数の加群とクザン複体),修士2年生の志田晶の修士論文(局所環の準同型のDGファイバーに関するもの)を指導した.