著者
西田 佐知子 西田 隆義 高倉 耕一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

植物には、気温や地質条件などでは説明できない不可解な分布様式を示すものがある。このような分布は、繁殖干渉という、繁殖過程で他種(とくに生殖機構が似ている近縁種)が悪影響を与える現象で説明できる可能性がある。そこで本研究では主にフウロソウ属植物などを用い、繁殖干渉が植物の分布に及ぼす影響について調査と解析を行った。その結果、フウロソウ属の中でも繁殖干渉が見られること、それが近縁種の棲み分けなどに関わっている可能性があることを確認した。
著者
池田 慎太郎
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大學法政論集 (ISSN:04395905)
巻号頁・発行日
vol.260, pp.75-98, 2015-02-25

本論文は、平成23-26年度科学研究費補助金基盤研究(A)(課題番号23243026)「日米特殊関係による東アジア地域再編の政治経済史研究」の助成を受けた研究成果の一部である。
著者
石川 菜央
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

21年度は,主に岩手県久慈市および沖縄における調査を実施した。久慈市では,市内で開催された全国闘牛サミットおよび全国闘牛大会にて,来場者へのアンケート調査,牛主への聞き取り,資料収集を行った。沖縄では,闘牛がさかんなうるま市や読谷村,北谷村,今帰仁村などで,牛舎を訪れ,牛主に対する聞き取りを行った。22年度は,調査のまとめと発表,論文化を重点的に行った。研究の目的における「日本における闘牛の存続の要因を解明する」点について,現代では闘牛を通した担い手の交流が活発になっていることに着目し,成果発表を行った。
著者
渡辺 美樹
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

病的な痩身は、1873年にガル卿が神経性拒食症という病気であると明言する前から、イギリス小説の中で女主人公がかかる病の一種として描き出されていた。その最も古い例としては『クラ リッサ』が挙げられる。医学的な命名が遅れた原因として、拒食症という神経性障害が肺結核を併発しやすいことが挙げられる。両者の因果関係が理解されないまま、この二つの病気が混同されやすかったのである。肺結核が不治の病から治癒可能な病にかわり、拒食症が1970年代に再発見されてからは、文学作品における拒食症の描かれ方は変化していく。痩身を理想とする人々の増加と共に、拒食症が精神の病であると認識されるようになったことによる変化である。例えば、アトウッドは『食べられる女』の中で拒食症へと突き進む女性の心理を描き出し、臨床心理医レベンクロンは、拒食症に苦しむ少女に向けて一種の処方箋として『鏡の中の少女』を提示した。またジョージやウォルターズは、女性の異常な大食を犯罪の動機を示す目印として利用した。摂食障害は女性の病としてリアリスティックな小説の中で現在もなお描き出されているのである。『嵐が丘』の最後の場面で、拒食死したヒースクリフやキャサリンが死後子供の幽霊として彷徨っていることが語り手ロックウッドによって語られているが、ヒースクリフが食屍鬼と罵られることやキャサリンが死後もそのままの姿形を保っていたことから、この作品を吸血鬼の物語として読み解くこともできる。1897年の『ドラキュラ』以来、つまり精神科医の権威が吸血鬼の好敵手となって以来、吸血鬼についても一種の摂食障害として解釈することが可能となった。人血以外の食物を受けつけない異食症という摂食障害である。またその一方で、『トワイライト・サガ』や『銀のキス』といった現代の吸血鬼物語群の中にも拒食症と女性とのつながりを見て取ることができる。よって19世紀に小説の中で女性の病として語られた拒食症は現代文学の中にも生き続けているといえよう。
著者
今津 孝次郎 服部 晃
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「指導力不足教員」の問題は、教員の"負"の側面であるだけに、教育界も情報発信しようとはせず、研究者も研究テーマとして取り上げてはこなかった。そこで日本初となる全国61教育センターを対象にしたアンケート調査と、その内30教育センターを北海道から沖縄まで訪問してのインタビュー調査に基づき、各地の「指導力不足教員」の実態と、その現職研修の構造について解明し、併せて教員免許更新制との関係を検討した。
著者
佐野 充 村西 明日香 揚野 敏光 伊藤 誠 新美 雅則 白髭 民夫
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
2014-01 (Released:2014-07-18)

報告書のp.30-31の一部、p.45-46, p.63は都合により掲載しておりません
著者
瀬野 由衣
出版者
名古屋大学
雑誌
心理発達科学論集
巻号頁・発行日
no.33, pp.11-25, 2003

This article reviewed DeLoache's studies on the development of children's understanding of symbol. DeLoache defined a symbol as follows : "A symbol is something that someone intends to stand for or represent something other than itself." Firstly, we examined this definition in terms of five elements (someone, something [symbol, referent], represent or stand for, intend). Secondly, we discussed DeLoache's theory which emphasized the importance of symbol's dual nature and reviewed her findings providing a strong support for it. Finally, we described the future direction about the research of the symbolic understanding.
著者
速水 敏彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は自伝的記憶がその中に含まれる感情を介して動機づけにどのような影響を与えるかを明らかにすることである。自伝的記憶の内容は何らかの具体的経験であり、その認知としての過去の具体的経験が今後の行動をどのように動機づけるかを検討しようとするものである。3つの調査的研究が実施された。研究1は女子大学生のスポーツについての自伝的記憶と動機づけが、続く研究2ではスポーツ振興会に所属して現在もスポーツに励む(動機づけの高い)人と特にそのような会に所属しない看護婦のスポーツについての自伝的記憶が比較された。さらに研究3では大学生を対象にして英語学習についての自伝的記憶と現在の英語学習への動機づけの関係が検討された。現在スポーツをしている社会人は学生時代以降の自伝的記憶が多かったが他の群では学生時代の自伝的記憶が多かった。また英語学習に関しては学校外の出来事に関する自伝的記憶が意外に多いことがわかった。いずれの研究でも自伝的記憶の内容は正の経験として成功経験、正の対人関係、フロー経験、負の経験として失敗経験、負の対人経験、怪我・危険な経験の6つに分類された。正の経験の多くが正の感情を、負の経験の多くが負の感情を伴っており、正の経験は現在のその行動の動機づけを高めていたが、負の経験は必ずしも動機づけを低減させているわけではなかった。
著者
押田 芳治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

核のDNAと比較して,ミトコンドリアゲノムは小さいものの,機能している部分は核DNAの3分の1にも及ぶ.これに加えて,ミトコンドリアDNAの進化速度は核DNAよりも5倍から10倍高いので,ミトコンドリアゲノムの多様性は核ゲノム全体の多様性に匹敵すると考えられる.これらの特徴から,トレーナビリティー、肥満、2型糖尿病との関連を検討した。さらに、ミトコンドリアゲノム変異により引き起こされる細胞内応答を明らかにし、ミトコンドリア病の分子メカニズムを解明する手がかりを得るために、3243A>G変異{MELAS (mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)の主要変異}、8993T>G{NARP (neuropathy, ataxia, and retinitis pigmentosa)の主要変異}を有するサイブリット(2SD細胞、NARP3-1細胞)を用いて、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。その結果、ハプログループAでは、ATP合成酵素の第6サブユニットの90番のアミノ酸であるHisをTyrに置換する多型は、マラソン選手や駅伝選手において高頻度で検出された。ハプログループM7b2は,非肥満者に比して肥満者に高頻度で検出された。また、正常なミトコンドリアを持つ143B細胞と比較して、MELAS、NARP変異を持つ2SD細胞、NARP3-1細胞では、CHOP、ASNS、ATF4の発現量が増加していることが判明した。さらに、CHOP、ASNSの発現上昇がAARE、NSRE-1を介しており、ATF4の発現に依存していることが明らかになった。
著者
小澤 正直
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

量子論の実在論的解釈の問題は,幾多のパラドックスを生み,量子論の基礎に関する重要な未解決問題である。本研究は,この問題に数学基礎論の方法を導入して,量子集合論というチャレンジ性のある新しいアプローチを開拓して,量子論の実在論的解釈の実現を目指した。一般の完備オーソモジュラー束上の量子集合論を展開して,量子論の様相解釈の基礎を与え,代数的量子論の枠組みでボーアの相補性原理における実在概念を明らかにした。
著者
衣川 隆生
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、中上級レベルの日本語学習者の口頭発表におけるモニタリング能力を育成することを目標としてデザインされた教室活動の効果、妥当性を検証した。その結果、相互評価活動を繰り返し行うことで、モニタリングの基準の意識化が促進されることが示された。さらに目標設定、口頭発表、モニタリング、相互評価というメタ認知過程を繰り返すことにより、モニタリングの基準の精緻化、構造化が促進され、モニタリング能力も向上することが示された。
著者
林 上
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は,近代以降における都市の発展過程を明らかにするさいに,交通基盤の建設や整備が果たした役割の重要性に着目し,交通発展と都市構造の形成の相互関係を明らかにする点にある。2年間にわたる研究の結果,名古屋市とその周辺地域において,鉄道敷設,港湾建設,道路建設など進められた結果,都市や地域の空間構造が段階的に変化していったことが明らかにされた。具体的には,東海道線をはじめとする幹線鉄道,これと連絡する私設鉄道が貨客輸送の面で重要な役割を担った。鉄道ルートの決定はその後の都市発展を左右するに十分であり,とくに名古屋駅の開設位置が市街地構造の形成に及ぼした影響は顕著である。鉄道交通とならんで特記されるのが港湾の建設・整備である。とりわけこの地域にとって重要なのは名古屋港の開港である。後背地域の経済発展に後押しされるかたちで開港したが,その後は港湾が産業発展の必須条件となり,両者は一体的に発展していった。さらに陸上部での道路建設は,名古屋市とその周辺地域を結ぶ役割を近世とは比べようもないレベルで果たすようになった。基本的には近世までの交通ルートを踏襲したといえるが,個々の道路が都市間の連絡や地域発展しに対して果たした役割は多様である。いずれにしても,近代都市・地域の空間的発展を考えるさいに交通が果たした役割の重要性は十分に検証されたといえる。
著者
佐藤 彰一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

研究着手の出発点であるトゥールのサン・マルタン修道院長アゲリクスのみならず、12月30日の聖人として5世紀のトゥール司教ペルペトゥスについての記述が含まれていることを明らかにした。中世の聖人祝日暦の系統を大きく二分するものとして、「アドン祝日暦」(860年)と「ウズアルドゥス祝日暦」(865-870年)がある。より広く参照されたウズアルドゥスの聖人祝日暦では、ペルペトゥスは4月8日が祝日とされているから、本写本がアドンの聖人祝日暦の系統に属する蓋然性が極めて高いことが明らかになった。
著者
石田 敏彦
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.分子レベルでの気泡モデルの改良本研究では単一気泡の内部を分子レベルで扱い,気泡界面の境界条件は従来の連続体の方程式であるKellerの方程式にしたがって決定するモデルを構築したが,気泡界面での水分子の蒸発と凝縮は組み入れられていなかった.また,以前のモデルで確認された気泡内部の衝撃波は,実際には界面での熱伝達により存在しないとも考えられた.今年度ではさらにモデルを改良して,界面での水の蒸発と凝縮,しいては熱伝達と質量流入を考慮し,境界条件も界面での蒸発と凝縮を考慮したYasuiの方程式に変更することで,最近報告された気泡内部における分子種の分布の変動や非平衡状態をシミュレートすることを可能にした.得られた結果では,気泡運動半径,気泡内部の温度,圧力の分布は他の研究者によるシミュレーション結果と一致したが,衝撃波らしき急激に変動する圧力分布が見られ,現在有力視されているソノルミネッセンス発生メカニズムの理論を裏づけるには到らなかった.今後,内部の水分子の解離や希ガス分子のイオン化を含め,より詳細に発生メカニズムの解析を行っていく予定である.2.発光の実験条件への依存性調査昨年度作成した実験装置により,単泡性ソノルミネッセンスから多泡性ソノルミネッセンスへの遷移を確認することができた.本研究では計上した熱電対による水温のモニター,及び計上したポータブルイオン・pH計によりpH値を予定していたが,既に実験で得られているpHの変化量が予定したポータブルイオン・pH計の分解能以下であることが判明し,購入および実験を断念した.しかし,ソノルミネッセンス発生の温度依存性,音圧条件と単泡性から多泡性ソノルミネッセンスへの遷移領域は現在も未知の部分があり,今後も多泡性および単泡性ソノルミネッセンスの差異の支配する要因を計測する手段を開発することを目指す.
著者
杉浦 正利 成田 真澄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、日本人英語学習者の持つコロケーション知識と英語母語話者の持つコロケーション知識とが、質的・量的にどのように違うのかということを、コーパス・反応時間・光トポグラフィーという三つのデータを利用して明らかにすることを目的としている。平成17年度は、まず学習者コーパスの設計と構築を行った。著作権処理をし研究資料として自由に使用できるデータを英語学習者と母語話者それぞれ200人分収集し、テキスト処理を施し学習者コーパスNICE(Nagoya Inter language Corpus of English)の基礎部分を構築した。また、反応時間測定実験のためのプログラム開発を行った。平成18年度は、学習者コーパスのデータに、英語母語話者による添削文を付与し、誤用分析ができるようにコーパスデータを拡張した。コーパスデータに含まれるn-gram表現を抽出し、英語学習者と母語話者の使用するコロケーション表現の分析を行った。また、反応時間の測定実験と光トポグラフィーによる実験で使用する実験項目の選定を行った。平成19年度は、学習者コーパスの言語的特徴を分析し、英語学習者と母語話者の違いを判別分析により明らかにした。また、添削文データの分析に基づく誤用分析も行った。反応時間の測定実験により、英語学習者もコロケーション知識を持っているが、習熟度により差があることが明らかになった。光トポグラフィーによる実験では、英語母語話者はコロケーション表現の処理に言語野のみを使いながらも脳に対する負荷が少ないのに対し、学習者では言語野以外の部分の活性化が起きるのみならず、その活性化に統一的なパターンが見られないことと、コロケーションを処理する際に脳に負荷がかかってることが明らかになった。
著者
杉浦 正利 木下 徹 山下 淳子 井佐原 均 大名 力
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究では、書きことばと話しことばに関する英語学習者の産出データを大量に収集し、各文に英語母語話者による「書き換え文」を付けた上で、自然言語処理技術を応用し「誤り」や「不自然な表現」をコンピューターを使い自動的に抽出・解析・分類し、その特徴を英語教育の専門家が分析することで、英語学習者の中間言語体系全般にわたるエラーの全体像を明らかにすることを目的としている。本年度は、これまでの分析のまとめと、研究成果および開発したプログラムとデータを公開するための環境整備を行った。(1)英語学習者の誤りに関する体系的な分析:話しことぱと書きことばに関する分析を統合した。(1-1)誤用タグの種類と付与方法に関する知見をまとめた。(1-2)話しことばに関する誤用の傾向をまとめた。(1-3)書きことばに関する誤用の傾向をまとめた。(1-4)話しことばと書きことばの誤用の相違点をまとめた。(1-5)英語学習者の言語習得プロセスを誤用データの分析から把握できるような指標の開発を試みた。(2)開発したプログラムの公開:本研究で開発した誤り表現の自動抽出プログラムをWWW上に公開できるようにした。本プロジェクトで得られた知見のみならず、開発したプログラムも広くフリーで使用できるようにする。(3)データベースの公開:本研究で作成した誤りデータベースをWWW上で検索可能にし公開できるようにした。本プロジェクトで得られたデータをまとめ、今後、本格的に誤用研究を行う際に、さまざまな観点から誤用分析を試せるような検索システムを開発した。本研究により、自然言語処理技術の応用による誤用分析の可能性を追求できたとともに、その限界や問題点も把握でき、今後、本格的な誤用分析研究を行うための基礎となる有益な知見を得ることができた。