著者
本城 秀次 金子 一史
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1812名の中学生に対してネット利用状況の質問・日本語版インターネット中毒テスト・Strength and Difficulties Questionnaire(SDQ)を行った。その結果,中学生の半分以上が1週間に1回以上ネットを利用していることが分かり,中学生においてもネット文化が浸透していることが示唆された。また,女子中学生にネット依存傾向が強いことも示された。
著者
小田 寛貴 増田 孝
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.13, pp.189-194, 2002-03

我々はこれまで, 加速器質量分析法(AMS : Accelerator Mass Spectrometry)による^<14>C年代測定が古文書の年代判定法としてもつ有効性と限界とを示すことを目的として, 書跡史学の見地から年代を求めた古文書の^<14>C年代測定を名古屋大学年代測定総合研究センターのタンデトロン加速器質量分析計を用いて行ってきた.現在までに測定した古文書資料は表1に示した18点である.こうした研究から, 和紙は"old wood effect"による誤差(ずれ)が小さく, 暦^<14>C年代が歴史学的年代と大きく異なるものではないことを明らかにしてきた.これら18点の古文書のうち12点の資料(資料No.1-12)についての解説・歴史学的年代・^<14>C年代は, 既に別稿において報告されている(小田・増田ほか, 2000;小田・増田, 2001).そこで本報では, 今年度新たに測定を行った6点の資料について, その解説と^<14>C年代測定の結果を報じるものとする.前年度までに測定を行った12点の資料に続き, 資料番号を以下のようにNo.13〜18とした.
著者
細井 厚志
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)積層板は,高強度・高剛性など優れた機械的特性を有し,かつ軽量であるため,航空機の1次構造材料に適用されるなど,今後は自動車や高速鉄道車両など,金属に替わる構造材料としての適用が期待されている.CFRP積層板は一般に疲労に強い材料として知られているが,10^7サイクルを超える超長寿命域における損傷成長挙動について十分な評価は未だなされておらず,構造材料としての長期信頼性が確立されていない現状にある.これまでの研究で,高サイクル疲労領域におけるCFRP積層板の損傷進展挙動は,従来と異なる破壊形態を示すことを明らかとした.しかし,従来と異なる損傷の進展挙動については,未だ定量的評価はなされていなかった,そこで,本研究では,高サイクル疲労領域における実験データを蓄積するとともに,高サイクル疲労領域におけるCFRP積層板の損傷をモデル化し,その進展挙動について定量的に評価を行うことを目的とした.まず,負荷応力レベルに依存したCFRP積層板の損傷形態の違いについて定量的に評価を行った.層内樹脂割れ(トランスバースクラック)を考慮した層間剥離進展について,単位長さ当たりの損傷進展に伴い解放されるエネルギを導出した.さらに,Paris則を応用して損傷進展速度と損傷進展に伴い解放されるエネルギの関係について,トランスバースクラック進展及び層間剥離進展のそれぞれを定量的に評価した.その結果,低エネルギレベル(低応力レベル)域では層間剥離が進展しやすく,高エネルギレベル(高応力レベル)域ではトランスバースクラックが進展しやすい結果を得た.この結果は,実験結果とよい一致を示した.また,破断応力の20%を最大応力に設定した疲労試験では,繰返し数3×10^8サイクルまで,損傷は観察されなかった.
著者
森島 邦博
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

原子核乾板は、高速中性子による反跳陽子を3次元飛跡として検出することにより、その飛来方向やエネルギーの測定が可能であるが、ガンマ線起因の電子飛跡がバックグラウンドとなる。本研究では、原子核乾板の受光素子である臭化銀結晶に電子トラップとして働くロジウムをドープして感度制御を行う事で、高いシグナルノイズ比で中性子起因の反跳陽子飛跡の解析が可能な原子核乾板の開発に成功した。本研究において開発した原子核乾板を用いた高速中性子検出技術は、神岡鉱山やイタリア・グランサッソ研究所などにおける地下の高速中性子フラックス測定に用いる事が可能である。
著者
嶋田 義仁 坂田 隆 鷹木 恵子 池谷 和信 今村 薫 大野 旭 ブレンサイン ホルジギン 縄田 浩志 ウスビ サコ 星野 仏方 平田 昌弘 児玉 香菜子 石山 俊 中村 亮 中川原 育子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

家畜文化を有したアフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明が人類文明発展の中心にあった。家畜は蛋白資源生産(肉、乳、毛、皮)に止まらない。化石エネルギー使用以前人類が利用しうる最大の自然パワーであった。移動・運搬手段として長距離交易と都市文明を可能にし、政治軍事手段としては巨大帝国形成を可能にした。これにより、旧大陸内陸部にグローバルな乾燥地文明が形成された。しかしこの文明は内的に多様であり、4類型にわけられ。①ウマ卓越北方冷涼草原、②ラクダ卓越熱帯砂漠、③小型家畜中心山地オアシス、④ウシ中心熱帯サヴァンナ、である。しかし海洋中心の西洋近代文明、化石燃料時代の到来とともに、乾燥地文明は衰退する。
著者
齋藤 芳子
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

先行文献を踏まえた上で、複数の理工系研究室の参与観察およびインタビューを実施し、研究室における活動・生活を通じて学生が発達する様子を確認するとともに、指導教員が重視していること・配慮していることや、それらを学生がどのように受け止めているかなどについても知見を得た。これらの知見を、他の教育学研究者と議論したり、別の研究室を率いる指導教員等に意見を求めたりする中で、さらに精査した。得られた知見は、『シリーズ大学の教授法5 研究指導』(玉川大学出版部、2018)における15章のうちの5章にまとめ、上梓した。
著者
田中 正文 毛利 元彦 水村 和枝
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

今回の一連の実験では、長期間閉鎖・隔離された環境(海洋科学技術センター設置の潜水シミュレーターを使用)にお互いに未知である20代の男性5人を被験者とし、そこでの人間関係を中心とした行動パターンやそれに伴う心身両面でのストレス度について研究した。測定項目は共同生活中の人間関係を含む行動分析、精神的ストレスの知覚への影響や計画立案などの精神集中度の変化、対人関係の距離などであった。さらに、閉鎖・隔離環境への隔離前後、隔離中の血液分析により、内分泌系ストレス因子やNK活性の測定を行うとともにアクティグラム使用による行動量の測定、睡眠時の脳波や心電図解析により自律神経機能の変化をも検討した。結果の概要:5人で開始した実験であったが、開始2日目に1人の被験者が脱落し、以降は4人で行った。今回もリーダーの役割を果たす者の存在は認められず、結果的に2-1-1の集団構造に落ち着いた。このような構造の中で、他の成員から排斥されていると感じていた2人の被験者において内分泌系ストレス因子の顕著な上昇が観察され、閉鎖・隔離終了まで他の2人の被験者とは有意な差が認められた。閉鎖・隔離環境は刺激が少ない環境である。そこでストレスを最小限に押さえ、出来るだけ快適な生活を送ろうとすれば、自分たちで刺激を減少させる方向に彼らの行動を制御した。それは、例えば、被験者間のコミュニケーションの減少や環境内での行動量の減少であった。このような現象は現代社会において顕著に観察されていることであり、現代の人々、特に若者たちが新しい状況に直面したとき、人間関係も含む状況への適応能力において劣っていることを再証明したことになる。
著者
パブローバ マルガリータ ピィティス ジェームズ 横山 悦生 丸山 佐和子 丸井 美穂子
出版者
名古屋大学
雑誌
職業と技術の教育学 (ISSN:13442627)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.43-66, 2002-04-30

本論文は英国のデザイン(設計)を基礎としたアプローチをロシアの技術科教育に応用する際の制約を検討する。この際,技術科教育の発展に影響する主要な社会・文化的な要因がまず分析される。これらの特徴としては,ロシア文化の可能性(実用主義的ではない),科学技術の解釈における強固な工学の伝統,その教科の歴史的な発達,1980年代以降の教育政策の主な傾向があげられる。次に,上記の諸要因によって確立された独特なコンテキストがロシアにおける市場改革の一つの結果として現れる経済的合理主義のイデオロギーと知識の理解と習得への非実用的なアプローチとの間にある緊張関係,そして教育政策における主な傾向としての人間化と教授への伝統的な教科主義アプローチとの間にある緊張関係をつくりだすことが議論される。本論文の後半部分は,ロシアにおける技術科教育のモデルとそれに関する言説が議論される。デザイン(設計)を基礎としたアプローチはこの教科領域における発展の主要な傾向であることが示される。次に,ニジニ・ノブゴーラドにおける先導的な学校での実験の結果の評価を目的とした研究結果が示される。デザイン(設計)を基礎にしたアプローチの英国バージョンのロシアの学校への適応には制約があることが示される。このアプローチの深く文化的に根づいた"誤った解釈"がみられる。これらは,デザイン(設計)を基礎としたプロジェクトに対する生徒の態度と理解,教師の教育活動に対する解釈に反映している。その制約が本論文の最初の部分で議論された社会・文化的枠組みによって形成されることが議論される。この結果,このデザイン(設計)を基礎にしたアプローチが普遍的なものとして採用されるべきではなく,おのおのの文脈に対して,特殊化されるべきであることが議論される。
著者
西川 芳昭 根本 和洋 大井 美知男 新海 尚子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

農村・農家レベルの現地聞き取り調査及び実証調査,ならびに,保全・管理の実施および支援組織レベルの聞き取り調査を実施した.結果として,農家が参加して実現しているようなローカルな遺伝資源管理事業であっても,実は数多くの地域内外の関係者と水平・垂直のネットワークを構築していることが明らかにされた.カナダのNGOのように,そのような関係性を意識的に強化・発展させる活動も始まっていることが起きらかになった.今後,具体的にどのような要素が,そのような組織制度の持続性・発展性を担保するか・または制限・阻害するかについて明らかにしていくことが必要であると結論した.
著者
笠井 俊和
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、数量的な貿易研究と船乗りの社会史研究を融合することで、近世の大西洋上に展開したヒトとモノのネットワークの実像を明らかにすることを目的としている。年度の前半には、若尾祐司・和田光弘編『歴史の場-史跡・記念碑・記憶-』(ミネルヴァ書房)が刊行され、ジャマイカの港町ポートロイヤルを俎上に乗せた拙稿「海賊の息づく港町ポートロイヤル」が所収されている。同稿では、海賊を議論の軸に据えながら、本研究のテーマである貿易と密貿易、町を訪れる船乗りについて、一時史料をもとに詳述している。また、研究の基盤となる作業は、前年度に引き続き、イギリス領アメリカ植民地の主要港を出入りした船舶のリスト(海事局船舶簿)のデータベース化であり、ボストンとジャマイカのデータを18世紀半ばまで拡大した。そのうえで、航海日誌や書簡、海事裁判記録など、米国で入手した史料をデータベースとのクロスチェックで補完することにより、ジャマイカからスペイン領へと向かう密貿易の具体的な方法、関与した船舶の移動経路や船員数などを考察した。この研究の成果は、22年7月に近代社会史研究会(於京都大学)で報告し、12月にはEarly American Studies at Komaba in Winter, 2010(於東京大学)にて、英語による報告の機会を得た。なお、研究遂行のために、同年10月から11月にかけて、米国とカナダを訪れて史料収集をおこなった。その際、ピッツバーグ大学では、船乗りの社会史研究の泰斗として知られるマーカス・レディカー特別教授と面会し、研究へのアドヴァイスを受けた。
著者
西澤 泰彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、愛知県に拠点を置いた建築家の活動概要を明らかにし、その評価をおこなったものである。その結果、次のことが判明した。1点目は、組織について、愛知県や名古屋市の建築組織が民間の建築組織に比べて巨大で、活動量も多く、大きな影響力を持っていたこと、2点目は、「民」において個人の建築事務所が成立する素地は1920年代になって確立されたこと、3点目は、「官」「民」ともに人材を輩出・供給する教育機関として1906年開校の名古屋高等工業学校に設けられた建築科が果たした役割が大きかったこと、4点目は、「官」の建築組織よって設計された公共性の高い建築が都市の近代化に貢献したこと、5点目は、そのような建築家の活動が全国的には報じられることが稀有であったことである。
著者
鹿島 央 橋本 慎吾
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、以下の2点である。(1)リズムの契機は、日本語話者と日本語学習者ではどのように異なるか。そのときの呼気圧、呼気流量はどのようであるか。(2)持続時間が特徴的な学習者の発音は、日本語話者とは呼気圧、呼気流量にどのような違いがあるか。実験1では、リズム契機とユニット長の関係を調べるため、日本語母語話者と日本語学習者(中国語)を対象とし特殊拍を含む音節を組み合わせた6語(たーたん、たーだん、たんたん、たんだん、たったん、さったん)を分析した。発話はメトロノームにあわせ1語につき10回収録し、呼気圧、呼気流量について分析した。結果は、全体長では日本語話者の方が長く、語中の破裂音の外破からメトロノームまでの時間は学習者の方が長いという特徴がみられた。特に呼気圧がより強いことが観察されたが、語頭の破裂音にはそのような傾向はなかった。このことは、呼気圧の影響がリズム契機を形成する違いに何らかの役割を果たしていることを示唆する。実験2では、リズム配置の異なる18語を選定し、単独発話と「これは...です」というフレームに入れたものを発話資料とし、呼気圧、呼気流量の側面から分析した。発話者は中国語(北京語)話者2名、スペイン語話者1名、日本語話者2名で、KAY社製の「エアロホン」を用いて収録した。この研究の特徴は、生理的な要因である呼気流量と呼気圧のピーク値が学習者では各語の特徴的な持続時間の開始点とどのような関係であるか、また日本語話者とどのように異なるかを分析する点にある。分析の結果、中国語話者では呼気圧のピーク時点が第3ユニットにきていること、流量は調音法によっても異なることが判明した。しかしながら、これまでの結果では、特に呼気圧、呼気流量の違いが持続時間の違いとなるという結論には至っていない。ただ、破裂音の閉鎖時間や発声の違いに影響を与えていることを示す結果となっている。
著者
釘貫 亨
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

形容詞は名詞修飾に主たる機能を持つ。形容詞に限らず、名詞を状態的に修飾する揚合は形容詞的用法である。動詞の形容詞的用法には「流れる水」のような現在分詞的なものと「忘れられた事実」のような過去分詞的なものとがある。このうち前者の用法は、奈良時代から自動詞を資源として発達したが、後者は日本語独自のヴォイスの仕組みと受け身文の特徴が干渉して、成立が大幅に遅れた。本研究では、「失われた時間」「破られた記録」のような、他動詞を資源とし、これに受け身助辞が接続して自動詞に転換する過去分詞的用法の歴史的成立を通史的に解明した。かかる観点での研究は従来になかったものである。「他動詞・受け身・過去(タル)・名詞」の連接は、助辞ユ・ラユが未発達だった奈良時代に存在せず、ル・ラル成立後の平安時代に成立したが、文脈から自立した「忘れられた事実」のような形容詞的用法は成立しなかった。本研究ではその成立が近世期に下ることを明らかにしたが、それでも伝統的受け身文が干渉して「離縁された嫁」のような迷惑文の枠組みの中での成立であった。迷惑と無関係な「開かれた社会」のような広い用法を確立するのが明治期の欧文翻訳における過去分詞による名詞修飾の翻訳を通じてであったことを最終的に証明した。かかる観点からの研究は、従来に存在しない。
著者
山田 孝
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要 (ISSN:03874761)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.45-47, 1992-08-15

本校の学校改革の一環として、一昨年より実施されれた中学1年生のオリエンテーション合宿も2回目をむかえた。今年は、去年の反省をふまえ、入学式後日を置かずに実施することになった。中高6ヵ年一貫教育の出発点にあたる、中学1年のオリエンテーション合宿の概要を報告する。
著者
小田 寛貴 中村 俊夫
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.13, pp.186-188, 2002-03

本報においてその^<14>C濃度を報じる試料は, 青銅製の爵とよばれる器の底部に確認された付着物である.これらの青銅爵付着物は中京大学文学部の佐藤房儀氏より提供されたものであり, 爵が火にかけられた際に付着した煤とのことであった.表1に示した九点が提供された資料である.しかしながら, これらの付着物は明確に炭化物と判断できるものではなく, 緑青などが混入しており, 土壌もかなり含まれているように見受けられた.また, 爵を包んでいた布のものであろうか細かい繊維も確認された.特に, 試料No.4,7は緑青, 試料No.5,8,9は土壌と判断して間違いないような試料であった.緑青色〜黒褐色を呈する残りの四点についても, 実際に試料調製を行ったところ, その炭素含有率は1%にみたない結果であった.すなわち, 見た目からも炭素含有率からも, 炭化物ではなく土壌・緑青などの混合物と考えることが自然であるような付着物であった.この1%におよばない炭素についても, 煤に由来すると考えるよりも, 主成分は土壌に含まれていた炭素であると考えた方が無理がない.この点を明らかにするため, また^<14>C年代には適さないこうした試料が実際にはどのような^<14>C濃度を呈するものであるか, その一つの実例を示すため, 土壌・緑青混合物と考えられる青銅爵付着物についての^<14>C濃度測定を実施した.本報では, その^<14>C濃度測定の過程と得られた青銅爵付着の見かけ上の^<14>C年代を報告する.
著者
豊國 伸哉
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ゲノム情報の変化は発がん過程で重要な役割を果たしている。本研究においては、培養細胞や個体各臓器の細胞のゲノム配列において、紫外線・放射線あるいは鉄を介した酸化ストレスによってDNA塩基への傷害が起こりやすい部位をアレイ技術の応用により網羅的に同定し、その法則性を見いだすことを目的とした。これまでに、私たちは鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)腹腔内投与による腎発がんモデルを開発し、その病態に酸化ストレスが関与すること、主要な標的遺伝子にCDKN2Aがん抑制遺伝子やptprz1遺伝子などがあることを示し、ゲノムに酸化ストレスに対して欠損・増幅しやすい領域があることを報告した。今年度は遺伝解析より新たにalninoacylase-1にがん抑制遺伝子としての作用があることを見いだした。昨年度に引き続き、モノクローナル抗体で修飾塩基を含むDNA断片を免疫沈降する技術とマイクロアレイ技術を組み合わせることにより、ゲノム内の酸化ストレスに対する脆弱部位を網羅的に解析した。Fe-NTA腹腔内投与による腎癌モデル初期において代表的な酸化修飾塩基である8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)に対するモノクローナル抗体を使用した実験を反復した。対照のラット腎臓ならびにFe-NTA投与3時間後の腎臓からゲノムDNAを抽出し、制限酵素BmgT120Iで切断後,DNA断片の免疫沈降を行い,8-OHdGを含むDNA断片を回収した。DNA断片を蛍光色素でラベルした後CCGHのアレイにハイブリダイゼーションし解析を行った。すると、8-OHdGは非遺伝子領域に高密度に分布し、遺伝子領域には相対的に低密度に分布することが判明した。ゲノムの遺伝子密度と8-OHdGの存在頻度に有意な負の相関を認めた。分布のパターンそのものは対照と酸化ストレスのかかった状態でほとんど差が見られなかった。CDKN2A部位では酸化ストレス時に8-OHdGの増加を認めた。
著者
笠 浩一朗
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、英日同時通訳者の発話速度について定量的に分析した。分析では、名古屋大学同時通訳データベースを利用した。また、分析には17人の通訳者が、22講演のデータに対して、4人ごとに通訳を行ったデータを用いた。その結果、同時通訳者の話す速さと講演者の話す速さにはほとんど相関関係がないことを確認した。また、講演者の発話が完了する前よりも、完了した後の方が発話速度が速くなることなどを確認した。
著者
宮地 朝子
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題は、日本語構文構造史の一として、形式名詞・格助詞・副助詞として言語化される意味機能(比較・程度・限定)と、係助詞として体現する意味機能(其他否定)の関わり、当該の意味機能にかかる文法化を可能にする言語内・外的条件を考察するものである。最終年度は形式名詞の文法化という観点からの歴史的・理論的考察を中心に行った。まず前年度のシンポジウムの成果を論文化し、形式名詞の比較・程度から限定のとりたて助詞へ、あるいはモダリティの助動詞へといった文法機能への用法拡大を考えるためには、名詞句としての特性からの分析が必要かつ有効であることを主張し、係助詞化には否定のスコープの再解釈が要因となるという説を支持した(青木編『日本語の構造変化と文法化』所収論文)。ここには形式名詞による範疇化という操作そのものの意味的文法的特性を追究する必要性の主張も含む。これに基づく具体的実践として、モダリティの助動詞へ対象を広げ、口頭発表「筈からハズへ、訳からワケへ-名詞が文法化するとき」(名古屋大学文学研究科シンポジウム「拡張し変容する日本語」H19.3.3)を行った。ここでは名詞述語文および日本語の名詞の指示の文脈依存性という普遍の構造的前提と、名詞ハズ・ワケの形式化、個別具体から一般抽象へという語用論的再解釈が「助動詞」的用法の獲得につながっていると主張した。また今年度は本研究課題を含む10年来の研究成果として『日本語助詞シカの構文構造史的研究』を上梓した。ここまでに得られた成果と視点・試みの精緻化・発展を目的とし今後は「名詞の文法化」という包括的な新課題に着手する。形式名詞の文法機能への体系的な参画は、古代語と近現代語の顕著な相違である。この発展的課題への着手は、動態としての日本語構文構造の追究という根本的な問題へのアプローチとなるだろう。本研究課題から発した大きな成果と位置づける。
著者
田所 光男 長畑 明利 藤井 たぎる 布施 哲
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

今回の共同研究では、20世紀に飛躍的な発展を遂げたポピュラー音楽の歌詞を分析し、それが、一方で、「高級文化」に属する諸テクスト(文学、哲学、宗教、など)と相互浸透し、他方、特定の時代や集団の記憶、政治的・社会的意識(戦争、世代、マイノリティ、性、他者、差別、失業、暴力、人種、移民、植民、などの問題に関わるもの)とネットワークを築いている様を解明した。20世紀ポピュラー音楽は、国境を越えて地球的規模で受容されたが、音楽複製技術や音楽産業、マス・メディアが高度に発展した地域が、その重要な発信地となった。そこで、各研究分担者は、おもにアメリカ・イギリス・ドイツ・フランスの代表的なポピュラー歌手(ボブ・ディラン、ビートルズ、ローレン・ニュートン、エンリコ・マシアス、など)の歌を中心対象にして、ポピュラー音楽の言葉にかかるテクスト連関性を解明した。また、この解明に基づいて、歌詞の日本語への翻訳も試みた。市場に出回るいわゆる訳詞には、明らかに誤訳と呼ぶべきものが少なくなく、その原因のひとつは、上記のような二方面でのテクスト連関性を十分に理解していないところに求めらるからである。外部機関の研究者および所属大学院の博士課程の学生の協力も得て、ポルトガル語・アラビア語・中国語圏のポピュラー音楽も研究領域に加え、ジャンルとしても、20世紀先進諸国のロックンロールやフォーク・ソングばかりではなく、ほかの諸地域における特色ある音楽(アルジェリアのライ、上海の歌謡曲、など)を研究対象にした。