著者
太田 尚宏
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-33, 2014-03

本稿では、国文学研究資料館所蔵の真田家文書のうち、「家老日記」として分類される日記類(特に松代に関する日記)を分析対象として、そこに含まれる日記の種類と性格について論じた。まず、日記の外見的考察により、文政期までの日記の表紙に記されている「松代」「御国」といった記載の多くが後筆であることを確認し、これらの追記や朱字の番号で示されている管理の痕跡が、松代藩や真田家ではなく、家老の望月氏によるものであると推定した。さらに、これらの日記の中には、家老日記とは性格が異なる「御国日記」の原本(あるいは全体の転写本)が混入していること、望月氏自身が御国日記の転写を進めていたことなどを明らかにした。続いて、望月行広という人物の動向に着目し、家老日記の性格について検討した。その結果、①松代藩における公式の家老日記は、「置附日記」という家老御用部屋に設置された日記であり、真田家文書に残る家老日記は、御用番を担当した家老が「置附日記」の下日記として記したもので、「置附日記」への転記にあたり記事の取捨選択が行われていたこと、②18世紀半ばには、家老の執務内容のうち定例化・慣習化された事項について日記には記述しないと規定されていたこと、③望月行広が「勝手懸り」を担当してからは、職務上の需要に応じて、自らが御用番のとき以外の日記も詳細に転写するようになり、勝手懸り関係の記述も加わって、1年間を通じた記事を御用番・勝手懸りの2本立てで記す「御在所日記」の形式を完成させたこと、などの点を明らかにした。This paper discusses the descriptions and characteristics of "KaroNikki"(Diary of chief retainer), the Sanada family's documents of National Institute of Japanese literature. From the contents written on the cover of this diary until Bunsei era, it was confirmed that some descriptions such as "Matsushiro"and "Okuni" were written later. It is presumed that postscripts and running number were written by Mochizuki chief retainer. It was also confirmed that "Okuni Nikki" (Okuni Diary), which was different with "Karo Nikki'', was included and Mochizuki chief retainer was carrying out the transcription of "OkuniNikki". .Subsequently, we focused on the activity of Mochizuki Yukihiro and studied the characteristics of "KaroNikki''. As a result of this study, it was clarified that an official diary of the Matsushiro domain was "Okitsuke Diary" and a diary preserved by Mochizuki family had a function of a rough draft. Originally, "Karo Nikki" was created based on a work shift on monthly bases, but it was also clarified that a file type of diary (Gozaisho Diary) had been begun to create throughout the year in stated of a monthly work shift diary since the middle of 18th century due to the volume of work was increased, the contents were written in more details and the descriptions regarding the financial affairs were added.
著者
松原 真
出版者
国文学研究資料館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度の成果は次の二点である。(1)単著『自由民権運動と戯作者――明治一〇年代の仮名垣魯文とその門弟』を和泉書院より刊行した。「あとがき」にも記した通り、本書は、仮名垣魯文及びその門弟の明治10年代における活動実態を明らかにし、それを通じて、近代日本の基礎が築かれるこの期の文学空間をより立体的に再現する試みである。なかでも、彼等と自由民権運動、特に自由党との繋がりを見出すことを重視している。本書の結論はだいたい以下の四点にまとめられる。①仮名垣魯文は明治10年代に新聞人または続き物作家(新聞小説家)として多くの読者に支持され、門下生を多く輩出し、多方面にわたる人脈を持ち、文壇(新聞界)に巨大な権力を築いていた。②仮名垣魯文とその門弟の戯作表現は、社会的に無毒無害なものではなく、明治政府の意思に反する位相にあった。魯文達はこのことに強く意識的で、特に読者獲得のために、戦略的に自らの戯作表現を用いた。③上記二点に惹かれ、自由党系の民権家、政治小説家は魯文達にみずから積極的に近づいた。一方、魯文達もまた、新聞の経営上好都合ということもあって、彼らとの交流を積極的に受け入れた。④野崎左文(魯文門弟)の著名な回想とは異なり、実際には③の交流の中から、二世花笠文京(魯文門弟)のように民権家として自由民権運動のための小説を書く戯作者も現れた。――そして、この政治運動の衰退とともに仮名垣魯文とその門弟の時代は終わり、入れ替わるようにして、坪内逍遥唱える写実主義を始めとする新興文学が文壇を席巻する、というのが本書の史的見取り図である。(2)仮名垣魯文またはその門弟が所属した小新聞に連載された続き物(連載小説)について調査分析を行った。紙面を悉皆調査しどこに何が書かれているかを明らかにしたうえで、続き物を実際に読みメモを取った。本年度は特に「絵入自由新聞」(明治15~23年)を中心的に扱った。ただし、これについては引き続き調査分析を必要とする。
著者
山下 則子 武井 協三
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

当該科学研究費補助金によって得られた研究成果は、以下の通りである。1.様々な文芸に表れた「やつし」と「見立て」の用法について研究した。特に江戸時代の文学作品や演劇資料に表れた「やっし」と「見立て」の用例について調べ、時代に沿った展開や普遍性について研究した。2.「やつし」と「見立て」関係の浮世絵と版本とを原本収集し、「やつし」と「見立て」が最も著しく表れている箇所をデジタルカメラで撮影し、それらをデジタル画像データベースとした。これらの画像データベースは、310点である。3.「やつし」と「見立て」の浮世絵・版本画像データベースに、それぞれ書誌的説明を加え、それらの「やつし」と「見立て」の文学的・演劇的な解釈の情報を加えたデータベースを作成した。研究代表者及び研究分担者が作成した画像データベースは、95点である。4.「やつし」と「見立て」の文学的・演劇的な解釈の情報を加えたデータベースは、冊子体或いは展示会の形で公開し、関係研究者からの意見を求めた。5.これらの解釈付き画像データベースからいくつかを抽出して、音声付きDVDを試作した。つまり、「見立て」浮世絵とその解説を共にパソコン上で見られるばかりでなく、解説を朗読として聞くことができるものである。展示場等での、観客のDVDへの反応は大変良い。次の段階では、画像データベースを音声付きDVDとして完成させるべく、解釈付き画像データベースのコンテンツを更に充実させたい。
著者
山崎 圭
出版者
国文学研究資料館
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

当初たてた研究計画は、(1)組合村-惣代庄屋制の解体過程の解明、(2)取締役など特権的豪農の活動の解明、(3)明治地方自治の解明、の3点を柱としながら信州幕領をフィールドとして分析を深めると同時に、他地域との比較研究も行うというものであった。今年度はポイントをしぼって上記課題の(2)について集中的に検討した。まず第一に、郡中取締役の阿部家について金融を中心とした経済的活動のあり方を検討し、同家は18世紀半ば以降諸領主や酒造家への大口貸金などによって経営を伸ばし、18世紀末に領主貸が行き詰まると、当時盛んになりはじめた繭・綿・細美などの農間商いを行う南佐久の百姓たちを相手にした商仕入金などの貸付を急増させて、一層の経営発展を遂げたこと、天保期後半に貸付が停滞すると資金を土地集積に振り向けて地主経営にウェイトを移し、金融も貸出対象の範囲を上層に限定して継続したこと、このような活動が明治期の伊那県商社、第19国立銀行などに関与する前提となっていること、などを明らかにした。第二に、この地域の政治構造については上記のような阿部家を一つの核とするような経済構造とはあまり関係なく、年番名主制や組合村制などが展開していく傾向があるが、文久期以降社会情勢が緊迫していく中で郡中の豪農層が郡中取締役に就任し、政治的な秩序のあり方に大きな変化をもたらしたことを明らかにした。この問題は課題(3)の「明治地方自治の解明」にもつながっていくテーマであるが、見通しを持つにとどまったので今後の課題としておきたい。なお、以上の成果の一部を組み込みながら歴史学研究会2001年大会で「地域社会構造の変容と幕領中間支配機構」という題のもとに報告を行う予定である。
著者
渡辺 浩一
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-22, 2009-02

本稿は、日本近世の文書管理史や由緒論と言われている研究潮流も含めて、過去情報に関わる様々な現象を、「記憶」をキーワードに、より広範な文脈のなかに位置づけるための基礎的な事例研究の一つである。対象は近江八幡町である。近江八幡町は、江戸時代を通じて、戦国末期から近世初期にかけて授与された織田信長や徳川家康の朱印状を、他の文書と区別される特別な保管体制に置いていた。そして、これらを「諸役免除」という「特権」の根拠としていた。しかし、信長朱印状は先行都市安土に授与されたものであり、家康朱印状には諸役免除が記されていなかった。このため、八幡町はその時期に応じて様々な内容の短い由緒書を叙述した、つまり様々な過去を創造することになった。また、創造された過去をより強化するために、1721年に「八幡町記録帳」という文書集を編集した。この文書集は、項目を立てて分類編集されており、その時期の在地社会の過去情報蓄積形態としては洗練された形式を備えていた。このため、過去の描写内容は微妙に揺れ動くものの、その後幕末に至るまで、文書集という形式が踏襲された。また、ここでの編集の対象は原文書だけではなく短い叙述(由緒書)も含まれていた。以上のように、本稿では、過去情報蓄積形態の三つの局面、原文書保管、筆写分類編集、叙述、のうち、編集と叙述の関係について主として分析した。This essay is a fundamental case study on various phenomena about information of the past. The aim is to position there cord keeping history as broader context from the view point of memory. This case is Omi-hachiman that is a local commercial town in early modern Japan. This towns men had kept a kind of royal charters in the special system distinguished other records. They were seemed to the evidence for their privilege of demission of labor. But their charters were not direct evidence. And so their towns men invented various memories to meet the needs of various cases. Moreover for the purpose of enforcing memory, they compiled the collection book of original documents in l721. This book has subject classification. I estimate this style as excellent in the first half of 18th century local era. And so they did not write along historical narrative, and followed the style of compilation until the end of early modern (1868). They compiled not only original documents but also short narratives. As above, I examined the relationship between compilation and narrative among three aspect of the form for accumulation of past information; record keeping, compilation, and narrative.
著者
渡辺 浩一
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-22, 2009-02

本稿は、日本近世の文書管理史や由緒論と言われている研究潮流も含めて、過去情報に関わる様々な現象を、「記憶」をキーワードに、より広範な文脈のなかに位置づけるための基礎的な事例研究の一つである。対象は近江八幡町である。近江八幡町は、江戸時代を通じて、戦国末期から近世初期にかけて授与された織田信長や徳川家康の朱印状を、他の文書と区別される特別な保管体制に置いていた。そして、これらを「諸役免除」という「特権」の根拠としていた。しかし、信長朱印状は先行都市安土に授与されたものであり、家康朱印状には諸役免除が記されていなかった。このため、八幡町はその時期に応じて様々な内容の短い由緒書を叙述した、つまり様々な過去を創造することになった。また、創造された過去をより強化するために、1721年に「八幡町記録帳」という文書集を編集した。この文書集は、項目を立てて分類編集されており、その時期の在地社会の過去情報蓄積形態としては洗練された形式を備えていた。このため、過去の描写内容は微妙に揺れ動くものの、その後幕末に至るまで、文書集という形式が踏襲された。また、ここでの編集の対象は原文書だけではなく短い叙述(由緒書)も含まれていた。以上のように、本稿では、過去情報蓄積形態の三つの局面、原文書保管、筆写分類編集、叙述、のうち、編集と叙述の関係について主として分析した。This essay is a fundamental case study on various phenomena about information of the past. The aim is to position there cord keeping history as broader context from the view point of memory. This case is Omi-hachiman that is a local commercial town in early modern Japan. This towns men had kept a kind of royal charters in the special system distinguished other records. They were seemed to the evidence for their privilege of demission of labor. But their charters were not direct evidence. And so their towns men invented various memories to meet the needs of various cases. Moreover for the purpose of enforcing memory, they compiled the collection book of original documents in l721. This book has subject classification. I estimate this style as excellent in the first half of 18th century local era. And so they did not write along historical narrative, and followed the style of compilation until the end of early modern (1868). They compiled not only original documents but also short narratives. As above, I examined the relationship between compilation and narrative among three aspect of the form for accumulation of past information; record keeping, compilation, and narrative.
著者
岡 雅彦 松野 陽一 落合 博志 山下 則子 谷川 恵一 新藤 恊三 キャンベル ロバート 山崎 誠
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、ヨーロッパ各地に所在する日本古典籍の調査を網羅的に行うことを目的としている。また、ヨーロッパ各地における日本文学者との交流や、各地と日本との文化交流についての研究もその対象としている。本研究の中心となる、ヨーロッパにおける日本書籍調査は、合計4回行われた。第1回(2000年1月19日〜31日)は、館内者3名と館外研究協力者2名(後半のみ)が参加した。日本古典籍(主に近世の絵本)の書誌調査を行い、カードをとった。イタリア共和国ジェノバのキオッソーネ東洋美術館で81点、ドイツ連邦共和国ケルンのプルヴェラー家で86点の成果であった。第2回(2000年3月1日〜16日)は、館内者4名が参加し、オーストリア共和国ウィーンのオーストリア国立図書館で265点、チェコ共和国プラハのプラハ国立美術館(ズブラスラフ分館)で27点、ナープルステク博物館では142点、ボドメール図書館では、12点の成果であった。第3回(2001年2月20日〜3月5日)は、館内者6名が参加した。連合王国ロンドンのチェスタービーティー図書館では1点の成果があり、主要な資料の撮影も実施した。第4回(2001年3月9日〜24日)は、館内者3名が参加した。イタリア共和国ローマのサレジオ大学図書館では、日本書籍の整理(帙入れ・請求番号の確認・ラベル貼付)と調査12点、キオッソーネ東洋美術館では68点、プルヴェラー家では105点の成果があった。
著者
山口 優子 (越野 優子)
出版者
国文学研究資料館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

源氏物語の最終部分である宇治十帖(橋姫~夢浮橋巻)において、室町期に流通した伝本である高松宮家本と国冬本の顕著な類似が、一年度目で確認できたので、二年度目の今年は、この事実を如何に視覚化し・分析するかに最重点のポイントを置いた。ただし宇治十帖は膨大な量であり、この分析には規制の方法では多くの時間と手間がかかる。そこでここに、統計学的手法(多変量解析等)を用いることとし、出来るだけ多くの巻について対照・分析を行う。文字列の一致の段階は先例があるので、そこに新しい係数を加え、国冬本全体の考察の最終的な完成を導き、同時に文学と統計学的解析に進歩をもたらした。また一年度目の昨年末、"源氏物語とは一つ(青表紙本系統、とりわけ大島本)ではないことを国内外に明確に知らせたい為、独特の物語世界をもつ5巻に絞って翻刻・注釈・現代訳・(外国語訳)考察等を付し試作版を韓国で口頭発表し、論文を韓国で二〇〇九年五月末刊行した。更に七月には台湾(台湾日本語文学会)で、上記に述べた統計的手法について口頭発表し、これを同八月に刊行した。
著者
前川 佳遠理 大久保 由里 北岡 タマ子 田中 輝 ライデルマイヤ マーガレット フェルフーフェン ポール 戸塚 順子 内海 愛子 ランゲン ヨハン・ファン
出版者
国文学研究資料館
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

国内外の史料所蔵機関のウェブサイトやカタログの収集に加え訪問調査を行い、個人・全国の戦友会・団体の事務局に質問票を郵送し、アンケートの集計を行った。個人・戦友会・団体の活動履歴や所蔵資料を国際文書館評議会ICAの国際標準「団体,個人,家に関する記録史料オーソリティ・レコード:ISAAR (CPF) Ver.2」に準拠して作成し公開準備を行った。本課題を機に戦友会事務局資料を中心に寄贈が進み、順次公開の予定である。国外ではインドネシア及び在オランダを中心に東南アジアの戦中・戦後の資料所在情報を調査し、特に俘虜銘々票の原本や原爆被害者調査委員会の原本資料のデジタル化・データベース化を通じた共有化モデルのプロジェクトに発展した。
著者
小林 健二 齋藤 真麻理 山下 則子 鈴木 淳 武井 協三 寺島 恒世 大友 一雄 江戸 英雄 恋田 知子 小峯 和明 石川 透 徳田 和夫 福原 敏男 藤原 重雄 高岸 輝 恋田 知子 浅野 秀剛 キャンベル ロバート
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究はニューヨーク公共図書館スペンサーコレクションに所蔵される絵入り本の全容をつかむために、絵入り本解題目録の作成を目指して絵巻・絵本など絵入り写本類の調査研究を実施した。所蔵者の都合により悉皆調査は叶わなかったが、貴重な資料の調査と研究を進めることができ、その成果を『絵が物語る日本―ニューヨーク スペンサー・コレクションを訪ねて』と『アメリカに渡った物語絵―絵巻・屏風・絵本』、その英語版の報告書『Japanese Visual Culture― Performance,Media,and Text』の三冊の論文集にまとめて刊行した。
著者
根岸 理子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究は、マダム花子(1868-1945)の活動を明らかにすることを目的として実施した。マダム花子は、20世紀初頭、20年近くにわたって欧米を巡演した日本女優であり、彫刻家オーギュスト・ロダン(1840-1917)の唯一の日本人モデルでもある。花子に関する資料は、海外に点在している。それらを現地調査し、花子一座の活動の実態を一部明らかにすることができた。特に、アメリカ議会図書館やニューヨーク公共図書館で、花子の写真や図版入りの記事や劇評を新たに収集できたことは、学界への大きな貢献であった。この成果は、2013年6月22日に開催される日本演劇学会において発表する。
著者
渡辺 浩一 岡崎 敦 高橋 実 大友 一雄 臼井 佐知子 蔵持 重裕 林 佳世子 三浦 徹 丑木 幸男 須川 英徳
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度は、11月に二日間にわたり、韓国国史編纂委員会の協力を得て、同委員会にて「近世東アジアにおける組織と文書」という国際研究会を開催した。日本側報告4本・韓国側報告4本・中国の報告1本を中央政府・地方行政組織・村落と家・商人の4つのセッションに編成した。参加者は約30名。平成17年度は、8月に二日間にわたり、復旦大学歴史地理研究所の協力を得て、上海において「東アジアにおける文書資料と家族・商業および社会」という国際研究会を開催した。日本側報告4本・中国側報告5本が行われたほか、韓国・トルコからのコメントも寄せられた。参加者は約30名。平成18年度は、9月に一日間で、アンカラ大学歴史地理言語学部の協力を得て、同大学において「オスマン朝と中近世日本における国家文書と社会動態」という国際研究会を開催した。日本側報告2本・トルコ側報告3本のほか、中国・韓国からのコメントも寄せられた。参加者は38名。平成19年度は、まず6月に、フランス国立古文書学校の協力のもとフランス国立文書館(パリ)において「アーカイヴズ、社会、権力(中世・近世の西欧と東アジア)文書管理働くさまざまな力」という国際研究会を行った。日本側報告4本・欧州側報告3本のほか世界各地からの多彩な比較コメント20本を、国家・都市・商人の3つのセッションと総合討論に配した。参加者は約40名。ついで、12月には本研究の総括として、立教大学において「近世アーカイブズの多国間比較」という国際シンポジウムを二日間にわたり開催した。日本側報告2本のほか、トルコ・西欧・中国・韓国から報告者を招聘し、「統治と社会」「実践」の二つのセッションに編成した。参加者は約100名。各研究会・シンポジウムの前後には国際共同史料調査を実施した。
著者
落合 博志 岡 雅彦 岡 雅彦 雲英 末雄 大橋 正叔 岡本 勝 市古 夏生 和田 恭幸 鈴木 俊幸 堀川 貴司 落合 博志
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究は江戸時代初期、文様から明暦末年までの約60年間に日本で出版された全書籍の出版年表を作成することを目的としたものである。調査研究の方法は、全国の図書館の蔵書目録、古書店の販売目録、その他各種目録・図録等から、文様から明暦未年までに出版された文献の清掻を採集して調査台帳を作成し、この所蔵情報をもとに、実地に当該文献の調査を行い、刊記を中心とする書誌情報を原本から採録し、また、刊記の写真の収集に努めた。年表の構成は、古活字本と整版の別、書名、巻冊、刊記、所在の5項目から成り、年代順、月順に書目を配列した。四年に亘る書誌調査の結果は、まだ未確認の文献を残してはいるか、採録した書目は文様慶長25年間で359件、元和寛永29年間で1824件、正保慶安8年間で1415件、承応明暦7年間で930件、合計69年間で4528件である。この有刊記本の調査はほぼ8割程度の完成度ではあるが、報告書百部を印刷して関係機関等に配布した。これは一年後を目途に公刊の予定である。この出版年表を眺めるだけで、本屋の出版活動の具体相、古活字版の趨勢、京都中心の文化状況の中での江戸版、大坂の出版、地方における出版の状況、相間板の出現状況が見て取れ、書誌調査からはまた付訓点漢文体本文の流行、絵入り本の流行などの具体相が見てとれる。これらについては現在研究論文を作成中である。今後この研究を継続して総合的な出版年表を作成するために、江戸時代初期無刊記本の調査研究、五出版を中心とする中世出版文化の研究、元禄末年までの江戸初期出版年表の作成などが当画の緊急に推し進めたい課題である。
著者
伊藤 鉄也 伊井 春樹 鈴木 淳 入口 敦志 荒木 浩 海野 圭介 スティーヴン・G ネルソン 伊藤 鉄也
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本課題は、日本文学に関する情報を所有する海外の機関や研究者を確認し、どのような情報が収集・利用されているか、またはどのようなテーマで研究がなされているかを解明することにある。そのために、日本文学や文化に特化したものを集積・分析し、諸外国の研究者相互の連携を推進し、情報網を広げ、質の高い研究情報を蓄積し、国内外の研究者へ提供してきた。国際集会の開催、刊行物「日本文学研究ジャーナル」第1~4号の作成はその成果の具体的な証である。
著者
武井 協三
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

「与論十五夜踊り」は予想以上の型の崩れがあったため、なお分析研究を残すことになったが、沖縄県立芸術大学教授の板谷徹氏や元日本学術振興会特別研究員鈴木博子氏の協力のもとに、新出の文献資料に注目できたこと、さらに「登場の演技」と「笑いをよぶ演技」という視点を導入することによって、17世紀後半の野郎歌舞伎の演技・演出研究の実態解明を進展させたことが本研究の主たる成果であった。
著者
樹下 文隆 渡邉 守邦 渡邉 守邦 竹下 義人 樹下 文隆
出版者
国文学研究資料館
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.実施計画にそって、以下のごとく調査研究を行った。(1)稀本零葉集の種類と所在についてリストアップを行ない、稀本零葉集25種の所在リストを作成した。(2)上記のリストにもとづいて、各地の文庫・図書館等に所蔵される稀本零葉集の零葉一葉ごとの書誌調査を実施した。(3)調査した稀本零葉集のうち収集可能なものについては、これを複写によって収集し、内容についての書誌的研究を行なった。現在までに18種の稀本零葉集について書誌調査を終えたが、零葉ごとの書名の同定作業に手間取り、計画年度中に終了できず、次年度に見送ったものもある。(4)調査・研究を終えた稀本零葉集について、零葉一葉ごとの細目一覧、および書名綜合索引を作成した。2.以上の調査の結果、稀本零葉集のうち、安田善之助(安田文庫主)、加賀豊三郎(加賀文庫主)、三村竹清らの蔵書家によって明治末年頃に作られた『玉屑集』について、その実態をほぼ明らかにできた。他に、『紙魚玉屑集』、堀田葦男氏編『反故草子』についてもその内容が明らかになった。3.石田元季氏編『もとがしわ』、禿氏祐祥氏編『古経群玉』・『玉果屑帳』等、研究期間内に新たに知り得た稀本零葉集もあり、それぞれの内容を確認できた。また、古書店主による新編の『古活字版史料』については、事前にその内容を知ることができ、そのため解体される運命にあった。新出古活字版『大坂物語』零本を、現態のまま撮影収録しておくことができた。4.以上の成果を、『調査研究報告』(国文学研究資料館文献資料部)において随時公表した。
著者
谷川 恵一 青田 寿美 木戸 雄一 山下 則子 高木 元 中丸 宣明 青木 稔弥
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

幕末から明治初期にかけての時期に刊行された仮名垣魯文の著作をひとつひとつ検討していくという基礎作業を積み重ねた本課題は、当該時期の文学・文化研究の学術基盤の整備に関して、主として以下のような成果を挙げた。1.従来の仮名垣魯文の著作目録を大幅に補訂し、236点に及ぶ魯文の著作を掲出し、それぞれの著作の所蔵先を併記した著作目録を作成した。なお、本目録では、当時の戯作者と本屋(版元)をめぐる出版状況に鑑み、魯文序や魯文〓といった一般的には著作と扱われない作品をも拾い出すことで、より広範な問題領域に対応させた。2.80点の魯文の著作または魯文に関連する著作について、書誌事項を中心とした詳細な解題を作成した。3.明治8年から12年にかけて魯文を主筆として刊行された『仮名読新聞』の記事の中から、魯文およびその周辺人物の動向に関連した記事を拾い出し、仮名読新聞記事データベースを作成した。4.購入した原本や原資料を展示に供し、また研究成果の一部を取り込んで、詳細な解説を付した展示目録を作成・配布することによって、研究活動を対外的に拓いたものとした。これらに加え、従来明らかでなかった以下の事項について取り組み、明治初期という過渡期における文学と出版文化との研究を進展させた。5.新聞に掲載された〈つづきもの〉が単行本として刊行される過程において、著者・版元・読者がどのように関与したのか、具体的な作品に即しながら再構成した。6.「著作道書キ上ゲ」として知られるテクストを同時代の情況の中で多角的に分析することによって、明治という新たな時代を迎えたときの魯文たち戯作者の動向を明らかにし、文学史におけるあらたな戯作の位置づけを提出した。