著者
横山 英 曽田 三郎 楠瀬 正明
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

1.本研究課題に関する内外の論文・著書の調査・収集につとめると共に, 問題点の整理を行った.2.新聞類・政書類・地方志類を広く検索して史料の収集につとめ, それを基礎にした研究の一部は別記の如く発表し, または発表を予定している.3.外務省外交史料館所蔵の中国近代地方自治関係文書の目録の整理を完了し, 『外務省外交史料館所蔵諮議局・省議会関係史料目録』の書名で印刷・公表し, 内外の関係方面へ配布した.
著者
西崎 一郎 上田 良文 林田 智弘
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

(1) 耕種農業と畜産農業が混在する北海道十勝での耕畜連携型農業モデルの研究に対して,耕種農業者への便益,畜産農業者への便益,耕畜連携型農業を運営する組織の運営,環境への影響の4つの目的を有する多目的問題として定式化し,複数の代替案を構成し,比較する.(2) 日照時間の長い宮崎での太陽熱利用のハウス暖房による有機野菜栽培モデルの研究に対しては農家の満足度,地域農業の振興,環境への影響の3つの目的を有する多目的問題として定式化し農業ビジネスモデルの複数の代替案を構成し,比較する.
著者
長沼 毅 今中 忠行 伊村 智 内田 雅己 大谷 修司 神田 啓史 黒沢 則夫 幸島 司郎 高野 淑識 東條 元昭 伴 修平 福井 学 星野 保 宮下 英明 吉村 義隆
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は地球環境の健康診断「国際極年」の中核計画として実施されたものである。地球環境変動のうち温暖化の影響は南北両極、特に環境変動に鋭敏に応答する微生物の生態に顕著に現れる。そこで本研究では初めて総合的な極地微生物の生態調査を行った。極域および高山氷河域に生息する微生物の種類と現存量および固有種・汎存種を調べることで、今後の変遷を評価する上で必要になる「国際極年参照データ」を残すことができた。
著者
田代 聡 孫 継英
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

放射線被ばくによるゲノム損傷の適切な修復には細胞核構造変換が重要であると考えられているが、その詳細については未だ不明な点が多い。本研究では、高次構造を構築するために必要な構造関連蛋白質に注目して、ゲノ修復関連高次構造体形成の分子メカニズムの解明に取り組んだ結果、構造関連蛋白質Matrin3 (MATR3)が RAD51 の細胞内局在制御にMATR3 が関与し、組換え修復活性の制御に関与していることが明らかになった。
著者
藤本 吉範 山岡 薫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

破骨細胞は骨吸収において中心的な役割を演ずるが、その活性調節には細胞外Ca^<2+>濃度が関与している。骨吸収期において、破骨細胞は非常に高濃度な細胞外Ca^<2+>に曝露され、細胞内にCa^<2+>が流入することで細胞内のCa^<2+>storeからCa^<2+>が放出される。この結果、細胞内Ca^<2+>濃度は急速に上昇し、骨吸収抑制のシグナルとなる。細胞外からのCa^<2+>の流入経路としては細胞膜に発現したryanodine receptor(RyR)様Ca^<2+>チャネルの存在が細胞内Ca^<2+>濃度を測定する方法や分子生物学的手法での研究で示唆されているが、実際にそのCa^<2+>チャネルを通るイオンチャネル電流は記録されたことがない。我々は初めて破骨細胞の細胞膜に発現したRyRの性質を有したイオンチャネル電流を検出した。破骨細胞にruthenium red(RR)を投与した場合、高濃度(0.1mM)では細胞内Ca^<2+>濃度が上昇し、低濃度(0.5μM)では細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が抑えられたことにより、破骨細胞の細胞膜にRyR様Ca^<2+>チャネルが存在することが示唆されている(Adebanjo OA et al.Am J Physiol 270:F469-F475,1996)。我々は破骨細胞の細胞膜に発現したRyR様Ca^<2+>チャネルの性質を検討するため、単一チャネル電流記録法のうちinside-out法を用いたが、細胞内液にRR0.1mMとMgCl_23mMを添加することによりRR感受性電流を惹起することができた。またこの電流は低濃度(10μM)のRRによりブロックされた。以上の結果は上記Adebanjoらの報告におけるRyR様Ca^<2+>チャネルの性質を有したチャネルの活動を初めて測定したものと考えられる。本実験で得られた電流は、保持電位-40mVで内向きに長い開口時間を有し、平衡電位は+5〜+10mVであった。イオン伝導度は20pS(電極内CaCl_2:10mM)と27pS(電極内CaCl_2:60mM)でCa^<2+>濃度依存性の性質を示し、この電流がCa^<2+>を運んでいることを示唆した。
著者
武知 正晃
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、高分子ポリマーの欠点である機械的強度の向上と疎水性であることから細胞接着の改善を目的に、アテロフラーゲン含有アパタイトセメントを用いて、各種の気孔径および組成の吸収性多孔質ポリマーを作製し、これに骨髄細胞を移植じ、培養系および動物実験で骨再生を試み、臨床応用に最適の条件を見いだすことを目的とした。まず培養骨髄細胞を用いた骨再生の評価として、近交系ラットの大腿骨から骨髄細胞の細胞懸濁液を調整し、作製した各種試料に播種し、培養後、実験を行った.その結果、PLGAにアテロコラーゲン含有非崩壊型アパタイトセメントを混合した高機能性バイオセラミックス複合体は、対照群として用いたハイドロキシアパタイ'ト多孔体と比較して、細胞接着能、増殖能、アルカリフォスフアターゼ活性、タイプIコラーゲン合成能およびオステオカルシン産生能において優れていた。次に、高機能性バイオセラミックス複合体と骨髄細胞の複合体を利用し異所性骨形成実験を行った。高機能性バイオセラミックス複合体と骨髄細胞を3週間培養することによって試料を作製し、同種の近交系ラットの背部皮下に移植した。その結果、経時的に新生骨量は増加し、移植後8週においては、試料全体において骨形成が認められた。以上の結果から、PLGAにアテロコラーゲン含有非崩壊型アパタイトセメントを混合した高機能性バイオセラミックス複合体は、骨組織再生における細胞の足場として、より有用な担体となり得ることが示唆された。
著者
相田 美砂子 大野 啓一 岡田 和正 勝本 之晶
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

放射線による構成塩基の直接的損傷を調べるため、モデル分子として2-アミノ-3-メチルピリジンを対象とし、その窒素および炭素内殻領域での解離を調べた。その結果、特に窒素内殻イオン化が起こる励起エネルギーにおいて、窒素原子周りでの解離が顕著となる特徴的な反応が観察された。この系に対して提唱した解離機構は、2-, 3-, 4-ピコリンを用いた同様の実験によって支持された。DNA構成塩基のモデル分子として2-アミノピリジン類をとりあげ,紫外光による直接的損傷がどのように生じるのかについて,実験と理論計算から取り組んだ。低温マトリックス赤外分光システムに紫外線照射光学系を組み込み、光反応を追跡したところ,紫外光励起によってアミノ-イミノ互変異性が生じることを明らかにした。間接的損傷として,活性酸素による核酸塩基の修飾塩基をとりあげた。それらが,どのようなメカニズムでDNA損傷につながるのかを明らかにするために,精度の高い非経験的分子軌道法およびQM/MM法を用いた理論化学計算を行った。突然変異を引き起こす修飾塩基としてよく知られている8-オキソグアニンは,互変異性体の相対的安定性がグアニンとは大きく異なり,このことが突然変異能の一つの原因であることを明らかにした。DNA塩基の互変異性化に対する溶媒効果については,これまで系統的に調べられていなかった。そこで,様々な溶液中におけるモデル塩基の互変異性化を,赤外分光法と量子化学計算によって調べた。その結果,ピリドンやピリミジミノンおよびそれの誘導体の互変異性は溶媒の極性に大きく依存することを明らかにした。これらの結果は,DNA損傷をもたらす別の要因として,外部環境によるDNA塩基の互変異性化促進が重要であることを示している。
著者
渡部 和彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究における成果をまとめると、これまで一流スキージャンプ選手の踏み切り局面における構えおよびサッツ動作の解析を行うことができた。それと合わせて、足底部圧力分布と圧力中心点(COP)の移動の特徴を解析した。その結果次のような知見を得ることが出来た。(1)バイコンシステムによる3次元画像解析装置により、選手のサッツ動作時における構えのシミュレーション実験を行い、身体重心位置(COM)を特定するとともに、地面からのベクトルが圧力中心位置(COP)といかなる関係にあるかを静的な条件のみならずダイナミックな状態で記録し、すぐさまそれを分析して、その場でコーチ・選手に結果を呈示することを可能とした。このことにより、研究者がその実験資料の意義をについて解説・説明し、その場所で資料を基に、選手・コーチと共に結果と今後の取り組み方等を論議することができるようなシステムを構築できた。(2)足底圧のCOP移動軌跡から、一流選手の特性として、サッツ動作を行わせた際の移動軌跡を分析した結果、COPが足部の尖端近くにまで及んでいるものと、その手前で終了してサッツ動作を行っているものとがあった。その違いは、サッツのテクニックおよび跳躍の高さと関係があることが判明した。ある一流選手のサッツ直後のスキー板の変動とサッツ動作の選手の特性との関係が明らかとなり、選手・コーチの疑問に対してその場で、実験資料を基にアドバイスなど指導することができることが示された。その結果、オリンピック直前に代表選手の一人は、自分が抱いていた疑問を払拭して自信を持って自己のサッツ動作を行いトリノのオリンピックに出場した。良い成績を上げることができた。このたびの研究における成果の一つであり、我が国のオリンピックの成績に貢献できたと考える。今後の指導のあり方に、具体的な方向を示すことが出来た。
著者
河村 祐治 西村 龍夫
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

流路壁が正弦波状をなす波状流路内に生じる2次流れ及び物質移動特性におよぼす影響について実験的な検討を行った.1.2次流れは遠心力の不安定性よって形成ささるTaylor-Goertler渦であり, 幾何形状パラメータ(振幅・波長)にかかわらず, 流路間隔が壁面振幅の2倍以下では必ず発生することがわかった. したがって従来ほとんど問題とされなかった2次流れは, 流れのはく離と同様, 波状流路における流れの性質の一つとみなされる. また, 特殊な流動パラメータを用いることによって波状流路内の流れの不安定性を表す中立安定曲線を得た.2.波状流路内に生じるTaylor-Goertler渦は曲率の方向が周期的に変化するため, 曲率一定の長方形曲りダクトとは異なり, 上・下壁面に渦を生じる. その配列は2つあり, 一つはどちらか一方の壁面だけに渦が形成される安定型と, 上・下壁面に同位相で形成される不安定型である. 特に後者の配列が渦の崩壊をみちびき, 乱流遷移を促進させることが明らかとなった.3.2次流れの発生は局面からの物質移動速度を増進させる. 特に2次流れの特質によって流れが一波長毎に更新されるため, 物質移動の助走区間が短くなることが, その原因の一つであることが明らかとなった.
著者
岡村 仁 松川 寛二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,主任研究者らが開発した速度フィードバック療法システが認知症高齢者の認知機能障害改善に有効かどうかを無作為化比較試験により検証すること,およびマルチチャンネル近赤外光酸素モニターを応用して,上記認知機能障害改善システムの有効性を脳科学・生理学的に明らかにすることを目的とした。得られた結果は以下の通りである。(1)認知機能障害改善システムの有効性に関する臨床的検討適格基準を満たした認知症高齢者90名を,介入群45名,対照群45名に無作為に割付け,対照群には標準的な自転車エルゴメーター駆動,介入群には速度フィードバック療法を行った。介入前,介入終了直後,介入終了1ヵ月後のMini-Mental State Examination(MMSE),N式老年者用日常生活動作評価尺度(N-ADL),認知症高齢者QOLスケール(QOL-D)の各評価尺度得点における両群問の差を検討するため,各評価尺度の得点の変化量を従属変数とした二元配置分散分析を行った結果,MMSE, N-ADL, QOL-Dの各評価尺度得点の変化において両群間に有意な差が認められ,本研究で作成した速度フィードバック療法システムの有効性が示唆された。(2)高次脳機能評価システムの開発健常成人8名に対して,エルゴメーター運動の前後にストループテストを行い,その際の前頭葉脳酸素代謝動態を測定した。測定にあたっては,近赤外線分光装置を用い,脳神経活動に付随した局所酸素代謝を示すと考えられる酸化型ヘモグロビン濃度(Oxy-Hb),還元型ヘモグロビン濃度(Deoxy-Hb),総ヘモグロビン濃度(Total-Hb)を計測した。2組の光グローブは,ストループテスト中に機能するといわれる頭頂葉部位に照射させるよう前額部左右の眉上に装着し,リアルタイムで同時測定を行った。その結果,40%強度の運動中にOxy-Hbの有意な増加が認められ,その増加は持続した。ストループテスト所要時間は40%強度の運動後に短縮し誤答数は運動前後で変わらなかったことから,40%強度の動的運動により認知機能が向上すること,その認知機能の向上と前頭葉脳酸素動態は関連することが示唆された。
著者
前川 功一 小瀧 光博 矢野 順治 椿 康和 宣名眞 勇 北岡 孝義 高林 喜久生
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

3年間に渡たる研究実績は以下の通りである。研究の分野、内容、論文番号、分担者を以下に列記する。文中の番号は、本報告書の項目11「研究発表」に挙げられた論文に付された番号である。(1)理論的研究・単位根の検定方法の提案に関する論文:(論文1,2:前川、久松)・和分過程I(1)に伴う変数を含む回帰モデルの推定・検定問題に関する論文:(論文3,4:前川)非正規性のもとでの回帰モデルの推測に関する論文(論文5:前川)・季節的周期性のある時系列に於けるI(1)変数と構造変化の問題に関する論文(論文6:前川)ヨハンセンの共和分検定に関する論文(論文15:小滝)・ブ-ストラップ法と経済時系列に関する論文(論文16,17:福地)(2)応用的研究・和分共和分分析の金融時系列への応用に関する論文(論文7,8:北岡)・ARCHモデル、共和分モデルなどの時系列モデルの在庫投資理論への応用研究に関する論文(論文9,10:宣名真)・マクロ経済の実証分析への時系列モデルの応用に関する論文(論文13,14:矢野)(3)データベースの研究・経済データのデータベース化に関する研究(論文11,12:椿)
著者
松村 武 稲見 俊哉 道村 真司 松岡 英一 椎名 亮輔 谷田 博司 世良 正文 伊賀 文俊 鈴木 博之 大坪 亨
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

強相関電子系物質におけるスピン・軌道の複合自由度が低温で示す様々な新奇秩序現象を研究する上で極めて強力な実験手法である共鳴X線回折実験を,最低温度0. 6 K,磁場8Tの環境で行うことができるシステムをSpring-8の日本原子力機構ビームラインBL22XUに構築した.典型3物質Ce0. 7La0. 3B6, PrPd3S4, DyPd3S4について実験を行い,いずれもf電子の多極子自由度が密接に関与した秩序を形成していることを観測した.
著者
榎田 一路 J・J ラウアー
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ネットワーク経由の購読型音声配信(ポッドキャスティング)を利用した英語学習システムを構築し,その効果と継続的学習のあり方を検証した。2007年度の予備調査を経て2008年度から週1回の配信を開始し,2009年度末までに教材87本を開発・配信した。教材はすべてウェブやiTunesを通じて一般に公開している。また同教材を授業等で使用し,学習の絶対量を確保する手段としての効果を検証した。
著者
山本 健吉
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,DMD素子とイメージャを一体で制御することにより,イメージャ本来の撮像スピードを超える高フレームレートのビジョンシステムを開発し,その有効性をアルゴリズムおよびシステムの両面から検証し評価することを目的としており,実際に振動分布イメージング,広ダイナミックレング撮像,多重フレームストラドリングについてシステムを開発し,その有効性を確認した.
著者
狩野 充徳 岸田 裕之 勝部 眞人 妹尾 好信 高永 茂 伊藤 奈保子 本多 博之 西別府 元日 中山 富廣 有元 伸子 竹広 文明 古瀬 清秀 フンク カロリン 三浦 正幸 久保田 啓一 野島 永 瀬崎 圭二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多くの伝承・伝説に包まれた世界遺産・厳島は、人間社会の傍らで、人びとの暮らしとともにあった。無文字時代には、原始的宗教の雰囲気を漂わせながら、サヌカイト・安山岩交易の舞台として。有史以後には、佐伯景弘らの創造した伝説を原点に、中世では信仰と瀬戸内海交通・交易の拠点として、近世では信仰と遊興の町として、近代では軍事施設をもつ信仰と観光の町としてあった。そして、それぞれの時代に、多くの伝承・伝説が再生産されていったのである。
著者
迫田 久美子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、五つの実験調査を実施し、以下の二点を明らかにした。(1) 第二言語習得研究の観点から、シャドーイングのメカニズムを分析し、作動記憶や日本語の運用能力の養成において、シャドーイングが音読や書写よりも効果があること、教材の難易に関係なく効果が見られる事等を明らかにした。(2) 国内の教育機関で授業にシャドーイングを導入し、教室場面での実施可能性を検証し、多人数の授業においてもシャドーイングの有効性を実証した。
著者
水野 恒史
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

宇宙最大の爆発現象であるγ線バースト(GRB)の放射機構の解明には、FermiによるGRBのモニタ・解析体制(γ線領域)の立ち上げと、「すざく」衛星搭載WAM検出器(X線領域)および「かなた」望遠鏡(可視光領域)とをあわせた多波長同時観測の確立が鍵を握る。そこで[1]2008年6月のFermi衛星の打ち上げに合わせて米国スタンフォード線形加速器センターに長期滞在し、初期運用に貢献するとともに、データの解析方法についての情報収集を行い、[2]また日本国内でのFermi衛星の運用や、WAM検出器および「かなた」望遠鏡による同時観測・解析の立ち上げを国内の研究機関および広島大学のスタッフ・学生と協力して行った。これらの準備状況について、2008年11月の三鷹での研究会で報告をおこなった。2008年9月に起きたGRB080916Cは、1GeV以上での史上最高のイベント数を記録した歴史的なGRBであり、母銀河の赤方偏移も決まったため科学的価値が極めて高い。このGRBについてFermiチームがまとめた論文が受理された。GRB081024Bは、赤方偏移こそ決まらなかったものの、100MeV以上の放射がはじめてshort GRBで検出されたものであり、またWAM検出器でも同時に検出がなされた点でも貴重な事象である。このGRBについては、WAMとの同時解析も含め積極的に解析に参加しており、天文学会でその報告を行った。
著者
山本 幹雄
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、音声認識技術を活用した(1)音声字幕付き教材配信システムおよび(2)要約復唱(リスピーク)方式による情報支援システムの開発を行うとともに、同システムを実際の大学講義に導入し、事例研究にもとづく教育効果の定性的分析および実用化のための課題整理を行った。これにより、情報保障および教育効果のベンチマークが明らかになり、市販の音声認識エンジンを活用した実用的な教育支援モデルの提案を行うことができた。
著者
緒方 満
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

基礎的な音楽能力(例えば聴唱力、視唱力、正確な音高で歌唱・合唱できるスキル等)を児童に保障するには、児童の「音高認識体制」の成長を体系的に促進するためのエクササイズアプローチによる音楽教育プログラム(以下、本プログラム)を音楽科授業に導入することが有効である、と考える。緒方らは、《独自に開発した本プログラムの実践→実践の効果を測定する音楽能力調査の実施》という手続きを繰り返しながら、本プログラムの効果に関する実証的研究を2か年連続で行ってきた。平成19年度の研究は、昨年度までに本プログラムの実践を経験したにもかかわらず、合唱スキルが未熟なままである児童に焦点をあてた。2007年7月より、そのような課題を有する児童6名を抽出し、彼らに本プログラムを個別に実施し、10月に音楽能力調査を行った。目的は、彼らの音楽能力の特徴に関する情報を得ること、および彼らに適合した本プログラム開発の模索であった。個別指導の観察経過から以下のことがわかった。本プログラムにおいて単なる「音パターン」の階名聴唱・階名視唱を行うだけでは、「音高認識体制」の強化につながりにくい。したがって、本プログラムの導入期、つまり「ドレミ」の3音で開始する低学年の時期から、児童の内面において音高と階名が強固に結びつく指導方法の工夫が必要である。さらに、実践では、階名での即興唱をしばしば取り入れながら、児童の「音高認識体制」の強度を教師が常々把握していくことが必要であろう。調査では、オルフ木琴を演奏させる課題を用いた。歌唱によって音高再生を行う困難さを除外することができ、児童の「音高認識体制」の測定を実証的に進めることができた。結果は、プリテストを実施していないので明確に明らかとは言えないが、個人得点を詳細にみると、(1)2名が高得点であったこと、(2)不安になると混乱傾向にある男子が、調査中の緊張の中、一定の得点を獲得していること、および(3)「音高はずれ」児童である2名も得点であったことなど、個別指導の効果がみられることを示した。