著者
大矢 英世 大竹 美登利 天野 晴子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.164-173, 2014-11-01 (Released:2017-11-17)
被引用文献数
1

The aim of this study is to shed light on the process whereby home economics education is introduced and established in boys' preparatory schools, and to suggest how improvements can be made in home economics education in these schools. Semi-structured interviews were carried out with ten home economics education teachers at boys' preparatory schools, and the data were analyzed using M-GTA (the modified grounded theory approach). The results are as follows; the departure point of the process of stabilizing home economics education in boys' preparatory school is the reality that the subject is considered "unacceptable". However, through the trial and error process of creating teaching materials and lessons in line with the actual situation of boys' school, and emphasizing the importance of home economics education, changes were noted with respect to students' attitude, cooperation of other teachers, and environment. More specifically, three factors are extracted. They are raising the awareness of pupils who are studying the subject, understanding and cooperation by teachers of other subjects, and improvements in the educational environment. Further, the circular nature of these three elements proved to be an important factor in establishing home economics education. Creating this flow may thus be regarded as enabling home economics education to obtain a sure footing.
著者
吉野 真弓 深谷 和子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.242-252, 2001-10-01 (Released:2017-11-22)
参考文献数
21
被引用文献数
1

The purpose of this study is to clarify the role of male teachers of home economics in the formation of students'gender consciousness. We distributed a questionnaire to a sample survey of 1216 high school students. The results were as follows : 1) Male students who were taught by male teachers liked the subject of home economics. 2) Students who had had experience of male home economics teachers had a lower gender bias in home economics education. 3) Students who were taught by male teachers had greater expectations of becoming a home economics teacher as a future career option.
著者
大石 恭子 Natsuko MITO Kuniko SUGIYAMA
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.69, 2020 (Released:2021-08-01)
参考文献数
12

We formulated the revised edition of “Standard of Nutrition Intake Criteria for Six Food Groups” as a fundamental resource for home economics education in junior high schools. We investigated the appropriate nutrition intake according to each Dietary Reference Intake Criteria to adjust and formulate new reference values applicable to specific age groups. The results indicated an acceptable intake of each nutrient. However, we also formulated measures for improving excessive/ insufficient nutrition intake, including fibers, vitamin B1, saturated fatty acid, magnesium, or iron by substituting one-fourth of rice intake with brown rice, low-fat milk for dairy products, or low-fat red meat for meat products. Further, the concept of approximate food is more easily understood in the revised edition and the particular reference standard is expected to serve effectively in implementing educational guidance for meal selection/menu preparation.
著者
明神 遼子 倉持 清美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第60回大会/2017年例会
巻号頁・発行日
pp.8, 2017 (Released:2017-08-13)

【研究目的】近年、児童生徒を取り巻く食環境の変化に伴い、食を自ら選択する力や判断する力を身につける教育の必要性が言われている。これらの必要性から、平成16年には、栄養教諭制度が、平成17年には食育基本法が制定された。家庭科は、食育において中核を為す教科の一つであると言える。栄養教諭は、これまで食の専門的知識を活かして、家庭科との連携を図り、様々な実践を行ってきた。しかし、それらの連携授業を児童生徒たちの視点から調査した研究はほとんど見当たらない。そこで今回、家庭科の授業の中にいる栄養教諭を児童生徒たちはどう捉えているのかを明らかにし、豊かな学びを育む連携授業のあり方を探る第一段階としたい。【方法】中学校第1学年の生徒に質問紙調査を行った。調査は2度行い、1度目と、2度目は別のクラスで行った。各クラスの人数はともに40名である。この中学校は、半数程度は隣接している小学校から進学してきた者である。調査時期は、2016年11月~12月で、教員を通して質問紙の配布・回収を行った。質問項目は、小学校時の栄養教諭の有無や家庭科と栄養教諭の連携授業の経験について、他に、1度目の調査では、連携授業で印象に残っていること、栄養教諭が家庭科の授業に入ってよかったことを記述式で回答してもらった。2度目の調査では、給食について、家庭科の授業を受けた後の家での実践、食に関する知識・説明・工夫を尋ねた。【結果・考察】1.栄養教諭の有無や家庭科と栄養教諭の連携授業について…小学校時の栄養教諭の有無を尋ねたところ、多くの生徒が、栄養教諭がいたと回答し、栄養教諭をはっきりと認識していた。さらに、家庭科と栄養教諭の連携授業を受けた経験を尋ねると、半数以上の生徒が、経験があると答えた。経験のある生徒に、栄養教諭が家庭科の授業に入ってよかった点を聞くと、深い学びがある、知識が身に付く、実感が湧きやすいという回答が多く挙がった。2.給食について…栄養教諭と家庭科教諭の連携授業を受けた経験のある生徒に、その授業に給食が教材として使われていたかを尋ねると、52%の生徒が、給食が授業で教材として用いられていたことを記憶していた。給食が教材として使われていたと回答した生徒に給食が授業に出てきたことで分かりやすいと感じたかを尋ねたところ、75%が分かりやすかったと回答した。また、給食を参考に自分の食生活で取り入れていることを全員に尋ねると、家庭科の内容を含んだ回答が多く挙がることから、家庭科と栄養教諭が連携し、栄養教諭の強みである給食を家庭科の教材として使うことで、生徒たちの学習を豊かにできる可能性が示唆された。3.家庭科の授業を受けた後の家での実践について…家庭科の授業を受けた後の家での実践について尋ねると、その実践率は40%であった。このことからは、家庭科の授業で学習した内容を自分の生活に結びつけるには至っていないという問題点が考えられる。連携授業を受けた経験と家庭での実践の間には関連があるとは言えなかった。4.食に関する知識・説明・工夫について…食に関する知識・説明・工夫を尋ねたところ、穴埋め式の、食に関する知識問題は平均得点率が80%であった。一方で、深い理解を要求される説明問題は平均得点率が35%であった。また自分の生活における工夫を問うと、無回答や、ないと回答する生徒が目立った。連携授業を受けた経験とこれらの得点の間には関連があるとは言えなかった。上記の結果から、現段階では、栄養教諭が家庭科と連携することに有意に効果があるとは言えないが、家庭科の中の栄養教諭を児童生徒たちは肯定的に捉えていることや、連携を工夫していくことでその学びを豊かにできる可能性がうかがえた。今後は、この調査を現状として踏まえ、よりリアリティーと具体性を伴う家庭科と栄養教諭の連携(伊波、2007)のあり方を検討していきたい。
著者
福井 典代
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第54回大会・2011例会
巻号頁・発行日
pp.74, 2011 (Released:2011-10-11)

目的 各メーカーからすすぎ1回で洗濯が可能な超コンパクト洗剤が発売され,洗濯工程の時間短縮と節水効果が期待されている。しかしながら,今まで2回行っていたすすぎを1回のみのすすぎで十分に洗剤が除去されているのか不安に思う消費者は多い。そこで本研究では,各洗濯工程における水の表面張力の測定を通して,水中に含まれる洗剤濃度を予測した。この実験結果から,目に見えにくい洗剤量の把握を通して洗濯におけるすすぎの役割を理解するための教材を作成した。 方法 1)陰イオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(以下SDSと略す。)を用いて,濃度の異なる水溶液を調製して,デュ・ヌイ表面張力計と簡易液滴法による表面張力を測定した。 2)簡易液滴法により,4種類の市販合成洗剤(メーカーの異なる2種類の超コンパクト洗剤,液体洗剤,粉末洗剤)水溶液の表面張力を測定して,臨界ミセル形成濃度(以下cmcと略す。)を算出した。 3)電気洗濯機を用いて4種類の市販合成洗剤による通常洗濯を行い,各洗濯工程の水を採取して,簡易液滴法により表面張力を測定した。 4)文献をもとに衣類に残留する界面活性剤量から各市販合成洗剤の水溶液濃度を算出して,すすぎ限界濃度として定義した。上記3)の洗濯工程における実験結果と比較して,各洗剤のすすぎ性能の定量化を試みた。 5)各洗濯工程の水溶液の表面張力の値と水道水の表面張力の値を比較することから,すすぎの役割を理解できる教材を提案した。 結果 1)濃度の異なるSDS洗剤水溶液を用いて,デュ・ヌイ表面張力計と簡易液滴法による表面張力を測定した結果,相関係数r=0.8767となり,両者の測定値に比較的高い相関関係が得られた。この結果から,以下に行う実験は比較的容易に測定できる簡易液滴法を用いて表面張力を測定することにした。 2)4種類の市販合成洗剤水溶液の表面張力を測定してcmcを算出した結果,各洗剤の使用量の目安と類似した濃度となった。超コンパクト洗剤のcmcは液体洗剤,粉末洗剤のcmcと比較して約1/2の濃度であることがわかった。 3)4種類の市販合成洗剤の各洗濯工程の水の表面張力を測定した結果,すべての洗剤において,洗い,すすぎ1回目,すすぎ2回目の順に表面張力は高くなった。 4)超コンパクト洗剤では,文献をもとに算出したすすぎ限界濃度の表面張力よリすすぎ1回目の表面張力が高く,水の表面張力に近い値となった。この結果から,すすぎ1回での洗濯により,十分に洗剤成分が除去されていることがわかった。 5)以上の基礎実験の結果をグラフ化して,すすぎの役割を視覚的に理解できる教材を作成した。
著者
宮下 理恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.185-193, 2010-10-01 (Released:2017-11-17)
参考文献数
45

For the realization of coeducational Home Economics, the Association of Promoting Coeducational Home Economics made a positive appeal to the government. The opinions of the government at the time included the content about the gender division of work, content ok(OK) coeducational Home Economics, and the matters concerning coeducational system. Moreover, the basic idea of the Committee of Home Economics Study (1984) was that of coeducation. This was considered as a ratification of convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against women. However, the Committee also gave a consideration to those opposed of coeducation.
著者
鈴木 洋子 永田 智子 赤松 純子 榊原 典子 中井 昌子 野田 文子 矢野 由起
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.130-135, 2009-07-01 (Released:2017-11-17)
参考文献数
8

教育職員免許法上の指定科目と現行の学習指導内容及び教員養成上の必修科目が一致していることは必須であるが,教育職員免許法施行規則に設定されている家庭科に関する専門科目は,教科に求められている時代の要請に比べ,大幅な変革がなされていない。そこで,教育職員免許法施行規則に示された「教科に関する科目」と現行家庭科の学習指導内容の整合性を確認し,問題点の究明と改善の方策を探る際の示唆を得ることを目的に,高等学校教員の現行教育職員免許法施行規則に指定の「家庭」の教科に関する科目に対する意識を調査した結果,以下のことが明らかになった。・高等学校普通科における普通教科「家庭」の履修科目は,「家庭基礎」57%,「家庭総合」14%,であった。専門科目「家庭」の中の科目については「フードデザイン」と「発達と保育」の履修が多かった。・高等学校教諭普通免許状「家庭」の授与に指定されている科目・内容のうち,必要性が高かったのは食領域の「調理実習」「栄養学」「食物学」「食品学」と「保育学」であった。必要性が低かった科目・内容は「家庭電気・機械」「製図」「情報処理」「家庭看護」「家庭経営学」であった。不必要とされる理由に「他の教科で学習したほうがよい」「家庭総合・家庭基礎にない」の回答が多かった。「家庭電気・機械」「製図」「情報処理」は,中学校においては技術科の内容であることを考慮し,削除も含めて今後検討する必要があるのではないかと考える。・教育職員免許状では必要な科目・内容として指定されてはいないが,高等学校で家庭科を指導する上で教員養成上必要と思われる科目・内容に,「消費生活」「福祉」「環境と資源」「高齢社会」の回答が多かった。低かったのは「キャリア教育」,「ジェンダー」,「生活文化」,「少子化問題」であった。
著者
岡田 みゆき
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.9-16, 1998-10-01 (Released:2017-11-29)
参考文献数
51
被引用文献数
1

The objective of this study was to examine the paternal role that was conducted in the conversation between father and child at meal-time, and to clarify the educational significance at meals. The results are as follows: 1.Conversation at meals has much educational significance in the training for morality in connecting the child with society. The father has a great influence to socialize his child through their conversation. 2.The modern father cannot play his role sufficiently, because of his inability to have meals with his child.
著者
中西 雪夫
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.217-225, 2011-01-01 (Released:2017-11-17)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The purpose of this study is to investigate the significance of coeducational home economics. In order to achieve this purpose, two surveys were carried out, before and after the introduction of coeducational home economics. The first survey was conducted in 1990, and the second in 1998. In both surveys, the same questionnaires were used. The major findings were as follows. 1. Male students who studied home economics accepted diverse family styles, had an intimate attitude towards their family, and had views toward sex roles less influenced by gender. And they participated in household work actively than male students who didn't study home economics. 2. Female students who studied home economics in a coeducational class room accepted diverse family styles, and had views toward sex roles less influenced by gender. 3. Male students who studied home economics in coeducational class room showed higher degree of "readiness for parenthood" than male students who studied home economics in male only class room. By surveys of university students and adults, impressions of home economics have been changing. They who studied coeducational home economics acknowledged studying home economics.
著者
藤田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.46, 2004

【研究の目的・背景】<br>「食育」という言葉の流行や栄養教諭の設置など、栄養の知識を身につけることが重要視されている。さらに、自己の食生活に対して意識的に行為できる力、すなわち意思決定能力を身につけることも必要とされている。高校生では、自己と食生活の関わりにおいて、自分自身に直接関係することに価値をおく傾向が高く、学習したい内容として「ウェイトコントロール」が挙げられることが明らかにされている(佐藤・山中 1994)。家庭科教育の中で自己の「食生活をみつめる」際に効果的な方法を考察するため、女子高校生がどのように「ダイエット」を認識しているのか、高校1年生で食物を学んだ後のレポートを分析する。<br>【研究の方法】<br>対象は東京都内の私立女子高校に通う高校1年生122名である。家庭総合の食物分野を教科書(実教出版『家庭総合』)にそって授業を行った(2003年10月~2004年3月)。授業の最後に、「食生活」に関する新聞記事を読ませ、「特に自分が関心をもった点を記述した上で、自分の食生活を振り返ること」を課題とするレポートを提出させた(有効回収数91件)。そのレポートをKJ法によって分析した。配布した新聞記事:「食大全 第六部 ダイエットしますか?」?~?(?「理想体形」という幻想20代女性2割が低体重 ?やせすぎは「慢性飢餓状態」・健康には「普通体重」 ?人口甘味料の落とし穴ノンカロリー「ゼロ」ではない ?断食やめれば元に戻る・自分の体と向き合う機会 ?必ず起こるリバウンド」・生命維持機能活動の証拠 ?エステで本当にやせる?・効果は「施術」より日常生活 ?アミノ酸に大きな誤解・飲むだけで脂肪は燃えない ?問題多い「効果食品」・無理な制限、健康障害も ?増え続ける小学生の肥満・食生活の変化も一因)産経新聞朝刊 2003年10月1日~9日。「怖い思春期の過激ダイエット 骨粗しょう症の危険性も」東京新聞朝刊 2003年11月7日<br>【研究の結果】<br>レポートの内容のうち、ダイエットに関する記述をKJ法により分類した結果、以下の7つのカテゴリーに分かれた(なお複数のカテゴリーわたる内容のレポートは重複してカウントしている)。〈ダイエットに関係する商品表示やマスメディア情報〉(52名) 商品の表示やマスメディアからの情報を誤信していたことに気づいたという記述が中心(33名)であるが、情報リテラシーが必要(17名)、表示改正が必要(2名)という記述もあった。〈「良い」ダイエットと「悪い」ダイエット〉(25名)摂食障害など心身の健康を害する「悪い」ダイエットに対し、「良い」ダイエットとは「健康的」に「努力と自己管理」であり、「良い」ダイエットをすべきであるという記述である。〈心身の健康とダイエット〉(25名)ダイエットよりも「体が健康であること」「内面の美しさ」の方がより重要だだという記述である。〈痩身願望の肯定と否定〉(36名)「女性」「思春期」「流行・時代」を理由に痩身願望を抱くことは当然である、痩せている方がやはり良いという「痩身願望を肯定」する記述である(28名)。一方、現代のダイエットブームや過剰な痩身志向への疑問も述べられていた(8名)。〈自己のダイエット経験と評価〉(13名)自己のダイエット経験、ダイエットへの強い興味に関する記述である。〈友人のダイエット経験と評価〉(2名)友人が過剰なダイエットをしてぼろぼろになるのをみた経験があるという記述である。〈自己理解とダイエットの必要性の判断〉(5名)「自分のことをもっと知ればダイエットが必要か判断できる」「今は必要ない」「痩せることが幸せにつながるわけではない」といった、ダイエットをすることと自己理解を関連付けた記述である。<br>【考察】ダイエットに関係する商品表示やマスメディア情報に関する記述が最も多かった。情報の誤信に気づいたことから、情報リテラシーの必要性を考えた者もいた。体を壊すような「悪い」ダイエットではなく、「健康的」なダイエットを行うべきである、心身の健康のほうがダイエットより重要であるといった、比較的教科書の内容に近い記述もかなり多かった。だが、なぜダイエットが必要なのかは考えられていなかった。心身の健康が重要であると考える者は、痩身願望に対して否定的であった。一方で、痩身願望を肯定する意見を持つ者は、ダイエットの危険性をあまり考慮していなかった。自己のダイエット経験からは痩身願望を肯定する意見と否定する意見に分かれたが、友人の経験を目にした者は、否定的な意見であった。自己を理解することによって{当に自分にとってダイエットが必要なのかlえた生徒は、その前段階に、商品表示やマスメディア情報に関する記述を誤信していたという気づきがあり、誤信に気づいたことが自己理解の必要性へとつながっていた。
著者
土屋 みさと 堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.141-149, 2005-07-01
被引用文献数
1

高校生の制服に対する意識をもとに, 今後の被服教育における「着装」の指導の方向性について検討した結果, 以下のような示唆を得た。1.制服校では, 男子は, 「スクール・アイデンティティ(学校らしさ)」や「男らしさ」といった他者から与えられるイメージを, そのまま求め受け入れている傾向があった。また, 女子は「流行」という, 戦略的に創り出すこともできる服装を重視し, 流行にとらわれやすいといった傾向をみることができた。2.自由服校の生徒は, 「自分らしい」着装を心がけていた。これらの生徒の意識をふまえた上で, 自分を表現する手段だけでなく, 自分に合った服装を考えられるような指導が必要である。3.自由服校では, 男子が「高校生らしさ」を否定し異性によく見られようしているのに対し, 女子は「高校生らしさ」を容認し服装における男女差をもっとも嫌っているといったように, 男女がそれぞれ相反する考えをもっていた。4.生徒たちが, 「自分を表現する」ことを学ぶために, 制服の意義や役割を確認するとともに, 「自分らしさ」「高校生らしさ」「男らしさ」「女らしさ」といった服装規範としての概念についてとりあげ, 生徒同士が意見を交わし合うといった授業の工夫ができる。
著者
土屋 みさと 堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.141-149, 2005
参考文献数
4
被引用文献数
1

高校生の制服に対する意識をもとに, 今後の被服教育における「着装」の指導の方向性について検討した結果, 以下のような示唆を得た。1.制服校では, 男子は, 「スクール・アイデンティティ(学校らしさ)」や「男らしさ」といった他者から与えられるイメージを, そのまま求め受け入れている傾向があった。また, 女子は「流行」という, 戦略的に創り出すこともできる服装を重視し, 流行にとらわれやすいといった傾向をみることができた。2.自由服校の生徒は, 「自分らしい」着装を心がけていた。これらの生徒の意識をふまえた上で, 自分を表現する手段だけでなく, 自分に合った服装を考えられるような指導が必要である。3.自由服校では, 男子が「高校生らしさ」を否定し異性によく見られようしているのに対し, 女子は「高校生らしさ」を容認し服装における男女差をもっとも嫌っているといったように, 男女がそれぞれ相反する考えをもっていた。4.生徒たちが, 「自分を表現する」ことを学ぶために, 制服の意義や役割を確認するとともに, 「自分らしさ」「高校生らしさ」「男らしさ」「女らしさ」といった服装規範としての概念についてとりあげ, 生徒同士が意見を交わし合うといった授業の工夫ができる。
著者
荒井 きよみ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

【目的】平成17年に施行された食育基本法の前文で「国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」に関わる人々の様々な活動への感謝の念や理解を深めつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付けることによって、 心身の健康を増進する健全な食生活を実践する」とある。  すなわち、現代の「食」をめぐる問題の解決を目指すならば、心身の成長が著しい高校生に家庭科教育を通して、食生活への意識や能力を育む必要があると考えられる。そこで、高校生の実態から食をめぐる現状と課題を明らかにすることにより効果的な家庭科授業の実践に役立てる。【方法】2012年1月に高校生の食行動および意識について質問紙調査を実施した。 調査対象は、関東の公立高校1~3学年の638名(男子119名、女子519名)である。調査内容は外食産業の利用状況、行事食や日常食の食経験と社会問題に配慮した食品への関心、1日3回の食事の摂取率や内容についての14項目である。【結果】(1)マクドナルドの利用経験率は99.1%であった。膨大な広告費をかけたCMや景品による企業戦略の効果も考えられる。(2)吉野家の利用経験率は77.4%であった。(3)ガストの利用経験率は88.9%であった。(4)田作りの食経験率は84.6%であった。(5)親子丼の食経験率は96.7%であった。親子丼は和食の定番として根づいているといえる。(6)フェアトレードのチョコレートの食経験率は49.8%であった。フェアトレードが1年生の英語の教科書にとりあげられていたり、家庭基礎の調理実習で材料として使用したためと考えられる。自ら「フェアトレード商品を購入した」という行動まで発展させることが今後の課題である。(7)朝食の欠食率は8.6%、主食は米が48.0%、共食は39.4%であった。(8)昼食の欠食率は2.8%、主食は米が78.9%であった。また、昼食の弁当が家族の手作りは65.8%、自作が8.0%であった。(9)夕食の欠食率は2.7%、共食は68.2%であった。夜9時以降に摂るものが19.9%であった。成長するにつれ共食はかなり減少傾向にある(日本スポーツ振興センター2005)が、アルバイトや塾などによる生活時間の変化によるものと考えられる。脂質の過剰摂取の食生活から「日本型食生活」へ再び注目が集まる(健康日本21評価作業チーム2011,農林水産省2012)なか、朝食で主食として米を摂取している回答者は半数以下にとどまった。食の簡便化の傾向がうかがえる。弁当箱に詰める形態をとる昼食の場合、主食が米の割合は8割近くにのぼる。(10)食生活に対する興味が「大変ある」16.9%、「少しある」39.0%、「あまりない」28.8%、「全くない」7.8%であった。高校生が身近な問題として自分の食に興味を持つようになるためには、伝統食や朝食の摂取、夕食の摂取時間および共食の重要性が有効な視点であることが明らかになった。
著者
柴 静子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第61回大会/2018年例会
巻号頁・発行日
pp.10, 2018 (Released:2018-09-07)

【研究の背景および目的と方法】本年3月末に公示された新高等学校学習指導要領では、「政治や経済,社会の変化との関係に着目した我が国の文化の特色、我が国の先人の取組や知恵、武道に関する内容の充実、和食、和服及び和室など、日本の伝統的な生活文化の継承・創造に関する内容を充実したこと」が改訂の眼目とされている。発表者が平成26年度に行った広島県と山口県の高等学校の家庭科教師を対象とした調査では、その時点で既に95%の教師が、「家庭基礎」や「家庭総合」において,「衣食住の文化や様式について授業をしたことがある」と答えていた。それらは,浴衣の着装やたたみ方・帯の結び方の実習、外部講師による着付け講習、刺し子のコースターやランチョンマットの製作、日本の伝統文化である着物や風呂敷についての解説、備後絣や柳井縞についての解説、着物解き布のはぎれを使用した小物製作などであった。これらは生徒の興味を喚起する実践であるが、上記の指導要領改訂の際に考慮された、「先人の取組と知恵を知り、社会的・歴史的視点から衣生活文化を継承・発展させる」という視角から見ると、再考の余地があるように思われる。全国を見廻すと、かつて生糸や絹織物の名産地であった埼玉県秩父市や群馬県伊勢崎市においては、総合的な学習として「銘仙」を取り上げている小・中学校がいくつかある。伊勢崎市立境北中学校においては、「伊勢崎銘仙によるふるさと学習」が中学2年生の衣服分野と絡めて実践されている。平成 26年度は、家庭科の授業で、伊勢崎銘仙について専門的知識を有する外部講師を招き講話をしてもらったこと、および数多くの銘仙を準備し、実際に着用してよさを実感させたこと、さらには他地域のものと比較ができるように、多様な伊勢崎銘仙を展示するといった環境づくりをしたこと、その結果、生徒は感動し、興味関心は高まった、という報告がなされている。このように「銘仙」に焦点を合わせて、衣生活の伝統と文化に関する学習が実践されていることは、この着物への国内外からの注目が高まっている今日、意義深いことと考える。銘仙は、大正期から昭和戦後期にかけて、長期にわたり大衆向け着物として衣生活を支配した、歴史的・社会的に見て特別な意味をもつ着物である。そのように考えると、銘仙についての学習は、特定の地域に限定されるものではなく、着物の文化に関する学習として広く全国の学校に普及させる価値があると思われる。そこで本研究においては、銘仙の実物収集と考察、国内外の関連文献の検討およびはぎれ布を使用した教材見本の製作を通して、銘仙に焦点を当てた衣生活の伝統・文化の学習の創造に向けての基礎的資料を提供することを目的とした。【結果】1.銘仙の五大産地として、伊勢崎、秩父、足利、桐生、八王子が認められているが、これらに限定されず日本全国で生産されており、中には品質に相当問題があるようなものまで流通していた。2.1932年までの銘仙生産量は、伊勢崎が他の地域を圧倒していた。伊勢崎銘仙の特徴は「併用絣」にあり、他地域の銘仙に比べて色の鮮やかさで抜き出ている。伊勢崎銘仙には「馬首印(マーク)」や「正絹マーク」が付けられており、収集した着物や羽織、反物や洗い張りの中にも、このようなマークが見られるものがある。3.銘仙の大きな特徴は、アール・ヌーボーやアール・デコの影響を受けた、まるで絵画といってもよいデザインにある。ボストン美術館、ミネアポリス美術館などの海外の美術館には、相当数の銘仙が収蔵されているが、それらのデザインの多くはこの範疇に入る。4.近年、海外のコレクターが銘仙を収集し、写真・図を中心とした大型本を出版するなど、活発化している。色鮮やかで大胆な模様の伊勢崎銘仙(併用絣)が数多く取り上げられているが、収集した銘仙の中にも類似のデザインのものがある。5.本研究から、銘仙は、国際的、歴史的、社会的、文化的要素を入れて教材化することが可能であることが示唆された。
著者
佐々木 多津子 日景 弥生
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第47回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.39, 2004 (Released:2005-02-01)

【目的】家庭科で高校生にジェンダーに気づく授業を実践するときに、高校生のジェンダー観を数値としてつかむことが必要であると考える。高校生のジェンダー観に関する調査はいくつかあるが、それらは高校生の意識を中心とした調査(例えば、「~だと思いますか。」)であり、行動を含む実態調査の報告はあまりない。そこで、ジェンダーに気づく授業を実践するにあたり、高校生のジェンダー観を把握することを目的とした。【方法 】(1)調査対象者及び方法2002年5月下旬~6月上旬に、青森県内の高等学校3校(合計384名;内訳は男子158名、女子226名)で実施した。質問紙法により各学校の家庭科の授業時間に実施したため回収率は100%だったが、データ分析の関係から回答中に「無回答」があった生徒は調査対象から外し、有効回答率は94.1%であった。(2)調査項目アンケート項目は(財)東京女性財団が作成した「ジェンダーチェック学校生活編」「ジェンダーチェック家族・家庭生活編」を参考にし「意識」・「行動」・「感情」に分けて各12項目作成した。(3)集計方法各項目においてジェンダーフリーまたはジェンダーセンシティブと回答した者の割合をジェンダーフリー度(以下フリー度とする)とし、それらの選択肢に対して1点の得点を与え、それ以外は0点とした。このようにして得られた合計点は高い方がジェンダーフリーを示すようにした。【結果および考察】(1)高校生のジェンダーフリー度検定の結果、学校間の有意差はみられなかった。男女別にみると、3校とも女子の方が男子よりも点数が高くフリーとなり、この結果は他の調査とも一致した。各カテゴリー(「意識」「行動」「感情」)におけるフリー度の平均から、「意識」(71.0%)>「行動」(38.0%)>「感情」(31.9%)の順となった。このことから、高校生は「意識」は全般に高いが、「行動」や「感情」ではあまり高くないことが明らかとなった。(2)高校生の実態調査各項目ごとの男女の有意差を検定により調べた結果、36項目のうち16項目で有意差がみられ、男女の有意差についても「意識」より「行動」「感情」で多くみられた。これらの結果より、女子は「男は仕事、女は家庭」という性別役割を多くの面で否定しつつも「仕事を持つ」という意識が低く、結婚したら仕事を辞め、養ってもらいたいと思っている実態も明らかとなった。(3)実態調査から考えるジェンダー学習以上のことから、ジェンダー学習に必要な授業について、次の2つのことが得られた。1つ目は高校生は「意識」ではフリーであることから自分に置き換え、フィードバックして気づくことのできる授業が必要である。2つ目は、内容として「働くことは両性に必要である」「生活的自立も両性に必要である」ことを実感できることが必要である。
著者
堀内 かおる 花岡 美紀 小笠原 由紀 太田 ひとみ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

【目的】  中学校技術・家庭科家庭分野の「A家族・家庭と子どもの成長」は、家庭分野の導入として、ガイダンスの位置づけとすることになっている。しかしこの内容に含まれている「自分の成長と家族とのかかわり」は、中学校入学当初のみならず、家庭分野の学習を通して生徒に見つめさせていきたい内容である。中学生の時期に自立の概念をとらえ、今後の自分の人生を展望することは極めて重要であり、キャリア教育の視点も加味しつつ、家庭科学習との関わりで自らの成長を振り返る契機としたいと考えた。以上の授業観に基づき、中学生が自らの成長を家族との関わりを可視化することを通して考える授業を設定し、その効果と課題を明らかにすることを目的として、「絵本」を教材とした授業実践とその分析・考察を試みた。【方法】 2012年10月に、国立大学附属K中学校第1学年4クラスの生徒を対象として、家族と家庭生活に関する内容の絵本を教材とした授業を試みた。授業は2時間続きで行われ、1時間目には本授業のために制作されたオリジナルのデジタル絵本『「なりたい自分」になるために必要なこと』を、2時間目には、レイフ・クリスチャンソン:文(にいもんじまさあき:訳)、ディック・ステンベリ:絵の『じぶん』(岩崎書店、1997年)という絵本を使用し、他者とのかかわりの中で、相手意識をもって「自分に何ができるのか」を考えるように促した。 授業の中では、現在に至るまでの、家族とのかかわりに着目させることとし、自分の成長の背景には、家族をはじめとする身近な大人たちの存在が不可欠であり、そうした人々との関わりを通して今の「自分」を形成してきたのだということに生徒たちが気づくための手立てを考え、授業の内容が組み立てられた。本授業における生徒の気づきをワークシートや授業後の感想から読み取り、分析を行った。【結果と考察】1.生徒にとっての「自立」: 1時間目の授業の冒頭で、教師は「自立」のイメージマップを生徒たちに書かせた。その結果、「自立」という言葉から直接枝分かれして書かれている言葉は、「一人暮らし」「視野が広がる」「自分の意思をもつ」「自分の力で生活する」ということであった。自立には、生活的な自立、精神的自立、経済的自立があることをとらえていることが分かった。しかし、「自分の力で生活する」と言う言葉から派生しているのは、「自分のことは自分でやる」ということであって、「一人でできるようになる」ということが自立の根本的な考え方として捉えられていた。「誰かと共に助け合って生活する」「誰かのために役立つ自分になる」という「共生」の概念は、この「自立」のマップからは見取ることができなかった。2.「共生」というコンセプトについての生徒の理解: 1時間目の授業では、「自立」の概念に続いて、「共生」の意味についても生徒に提示している。「共生」の概念を押さえたうえで、2時間目の「いまの自分・これからの自分と家族とのかかわりについて考えてみよう」という小題材へと学習は展開した。「自分の成長と家族とのかかわり年表」は、自分の成長とともに家族それぞれも年齢を重ねていくということを可視化させる手がかりとなり、家族とのかかわりを見つめ直した様子がうかがえた。3.教材としての絵本の効果: 授業後のアンケートにより、生徒たちの絵本教材に対する意識を把握したところ、約4割の者が絵本に対する関心を持っていた。しかしほぼ同率で「あまり関心がない」と回答する者もおり、授業にあたり、絵本それ自体に対しては、自発的な興味・関心を抱いている学習者ではなかった。しかし、それにもかかわらず、今回使用したデジタル絵本に対しては肯定的な評価が得られ、約6割が「わかりやすかった」と回答し、約4割が「いまの自分のことを考える手がかりになった」「文章(言葉)がよかった」と回答している。「将来の自分のことを考える手がかりになった」という回答も約4割見られ、これからの自分の生活を考える視点を持つきっかけになったと推察された。
著者
小川 裕子 林 希美 矢代 哲子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.64, 2008

-目的- 近年の少子化の進行や児童虐待の増加傾向の中で、文部科学省では中・高校生の保育体験学習を重視しているが、家庭科の授業時間数の削減や教師の多忙さのために、特に高等学校における保育体験学習の実践は多くない。また、保育体験学習に関する先行研究によって、保育学習の意欲が高まること、乳幼児に対する感情が良くなること、自己省察が出来ること等の成果が明らかになっているが、これらの多くは体験そのものによる成果である。本研究では、静岡県立高等学校の全校で実施されている「高校生保育・介護体験実習」の実態から、学習の成果が最も高まると考えられた家庭科の保育学習の一環として保育体験学習を実践する。この保育体験学習では、乳幼児理解と共感性を育てることを目標として、事前指導・体験・事後指導を体系的に計画した。この体験学習を実践することによる学習者の学びを明らかにすることによって、保育体験実習のあり方について示唆を得ることを目的とする。-方法- 静岡市立S高等学校において、必修家庭科(家庭一般)保育学習(2007年4~7月)の中で、保育体験学習を実践する。事前指導2時間(1時間目:体験先の概要、諸注意、グループ編成など。2時間目:乳幼児との会話や関わり方のアドバイス、ワークシート「こんな時どうする?」、保育体験の個人目標の設定)、保育体験2時間(体験90分と感想書き15分)、事後指導3時間(1時間目:自分達の体験の様子についてDVDを視聴し、感想を一文ずつ付箋に記入。2時間目:グループ毎に付箋を集め分類して、模造紙1枚に貼り込んでまとめる。3時間目:グループ毎にまとめた模造紙をもとに発表する)である。 以上の保育体験学習における、学習者の学びを明らかにするために収集したデータは、学習者(2クラス、計78名)一人ひとりの1.中学校での保育体験の有無、2.乳幼児への気持ち(体験前、体験直後、体験1ヶ月後)、3.乳幼児についての考え(2と同時期)、4.体験の目標、5.体験直後の感想(目標について分かったこと、乳幼児とどのような関わりをしたか、感想など)、6.事後指導後の感想文、である。-結果- 計画・実践した保育体験学習で目標とした、乳幼児理解と共感性を育てるという二点について、以下のことが明らかになった。まず、乳幼児理解については、5.体験直後の感想文と6.事後指導直後の感想文の記述内容の変化(量的に増加)から、今回計画した事後指導(3時間)の効果が明らかになった。 次に、共感性の育ちについては、実践した2クラスの内1クラスで、たまたま事前指導の2時間目の時間が確保出来ず、1時間目の間に各自に体験の目標を立てさせて体験を行ったという変更があったため、このクラスをAとし、計画通り2時間の事前指導を行ったクラスをBとして、A,Bクラス間で、生徒たちの設定した4.体験の目標がどう異なるか、また、3.乳幼児についての考え(体験直後、体験1ヶ月後)、5.体験直後の感想(目標について分かったこと、乳幼児とどのような関わりをしたか、感想など)、6.事後指導後の感想文といった各データにおける乳幼児との関わりに関する記述内容に差異があるのかに注目した。その結果、まず、事前指導の2時間目に予定していた乳幼児との会話や関わり方についてアドバイスや「こんな時どうする?」と考える機会を実施できたBの方が、体験の目標として「関わり」に関するものを立てた生徒が圧倒的に多い結果となった。体験後の関わりについての記述内容については、目標で認められた程の著しい差は認められないものの、共感的な関わりが出来たと認められる生徒の数は、同様にBの方が多い結果であった。
著者
河村 美穂
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

研究目的:家庭科の思い出として語られることの多い調理実習では多様な学びが展開されている。また、調理実習は子どもがよろこび手ごたえのある授業、生活と関連しやすい授業と多くの家庭科担当教師に捉えられている。近年、調理実習において学習者が何をどのように学んでいるのかということを、教育的な営みとしてとらえる研究が行われている。そもそも調理実習は実践的で体験的であるからこそ学びが多いとされてきた。しかし、実際に調理をやってみることについて、子どもたちがどう感じ、何を考えているのかは十分に明らかにされてはいない。具体的に調理を学ぶことによって、子どもたちはなにがわかったと感じているのであろうか。 本研究では、以上のような問題意識から、小学校2年生において電子レンジ調理に関する一連の学習を行い、その中の調理実習において児童が書いた学習記録を分析対象として、子どもたちが調理という体験を通して理解したことを明らかにすることを目的とする。 研究方法:研究対象としたのは、小学校2年生の食育の授業(10時間扱い)-1)電子レンジ加熱した食品の試食 2)電子レンジの機能に関する理解 3)キャベツのおひたしをつくる 4)ポテトサラダをつくる 5)電子レンジをもっと知る調べ学習 6)電子レンジ調理に関する研究発表-のうち 3)キャベツのおひたしをつくる 4)ポテトサラダをつくる という2回の「電子レンジを用いた調理実習」である。これらの調理実習は、電子レンジを用いるほかは、包丁やキッチンバサミを用いずすべて手作業で行うよう設定した。授業はクラス担任と埼玉大学教育学部の学生により、TTで行った。対象クラスは、埼玉県T市立小学校2年生1クラス27名(男子16、女子11)である。実施時期は、2010年9月~11月である。対象授業においては、調理実習を行った後、または翌日に調理実習をふり返って学習の記録を児童本人に記入させた。内容は、調理をしてわかったこと、気をつけること、おもったこととした。この記録をデータとして、児童自身が調理を経験して何を学んだと考えたのかを分析した。結果と考察:今回検討対象とした電子レンジの調理は、技能の学習としては電子レンジを使うことが主となるため、電子レンジのしくみを科学的に理解できるような教材を用いて授業を行ったうえで、対象の調理実習を行った。そのため「ぶんしくん(水分子のこと)とマイクロハで水じょうきが出てきて・・・」といったようにマイクロ波によって食品中の水分があたたまるという概念的知識についての記述が見られた。 一方で多く記述されたのは、やってみてわかったことである。具体的には「でんしれんじであたためるとさいしょよりすんごくこい色になりました。」「きゃべつがしなしなになってへってた。」といった見てわかることである。 また、電子レンジにより加熱した食品やその容器が体感的に「あつい」という記述も多く見られた。この「あつい」という体感的な理解は、「めちゃくちゃあつい」「大やけどするほどあつい」「あつくてびっくりした」というようにあつさの感じ方や驚き具合が多様であることを物語る記述がみられた。 さらに、「(ジャガイモが)あつあつのあいだにかわをむくこと」というように、調理の手順を概念的に理解している記述もあった。以上のことから、子どもたちは自分の言葉で調理することを理解していると言える。
著者
来 小 渡邊 彩子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.63, 2007

<B>【はじめに】</B><BR> 中国の教育は、2001年6月に基礎教育課程改革要綱が公布され、2005年には全国で完全実施することが目指された。この改革のねらいは、これまでの知識偏重を是正して生徒の興味・関心を重視すること、現代社会に密接にかかわる内容を取り入れることと、生涯学習に必要な基礎的知識・技能を獲得できるようにすることである。中国には家庭科は置かれていないが、家庭生活や健康増進については、小中学校のいろいろな教科で学ぶようになっている。経済成長が著しく少子化傾向の中国で、この言わば生きる力の育成が求められるようになった子どもたちの生活はどのようなものか。広い国土と多様な民族・文化をもつ中国の中で、筆者の出身地であり、生活がこれから急速に変化することが予想される少数民族のモンゴル人の中学生について家庭生活の現状を調査することとした。<BR><B>【方法】</B><BR> 内モンゴル自治区東部の左后旗にあるモンゴル民族初等中学校1,2年生167名(男子81名、女子86名)とその親を対象にアンケート調査を行った。調査内容は、日常生活領域として、衣食住の消費生活、家事分担などの家庭生活、家族との関係を設定して、質問項目を設けた。調査時期は2006年8月である。有効回答率は中学生98.2%、親61.8%であった。<BR><B>【結果】</B><BR>1.属性 生徒は自宅が遠いため85%は寮に入っており、週末に帰省する。居住地は農村(農村、鎮)81.5%、都市(誠市)18.5%であった。家族形態は核家族73.5%で拡大家族より多い。きょうだい数は2人が57.7%で最も多く、1人31.3%がこれに次ぐ。<BR>2.中学生は衣食住に関する家事によくかかわっていた。「食器を洗う」「洗濯をする」「部屋のそうじをする」「気候に合った服装を自分で決める」「子どもと遊ぶ」では女子の方が男子よりやっている割合が高かった。<BR>3.家事をする理由は「自分のことは自分でする」ためが最も高かった。一方、親が家事手伝いをさせる理由は「労働観を養うため」が最も高かった。親が子どもに身につけてほしいこととして「日常生活習慣」「周囲の人と仲良くする」「自分の考えを相手に伝える」が「学習」よりも高かった。<BR>4.衣服の不良品を購入した場合、そのままにする者が多かった。また、食生活では「安全性」「栄養」に関心が高く、「低農薬」や「添加物」への関心は低かった。<BR>5.家族との団らんは「テレビを家族みんなで見る」と「会話をする」の割合が80%と高かった。また、悩みの相談は父母が最も高かった。<BR> 内モンゴルの家庭では家族の協力やコミュニケーションはよく行われている。日常生活の消費の問題についてはまだ関心が高くなく、これからの課題であろう。
著者
野田 知子 伊深 祥子 菅野 久実子 石川 勝江
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.92, 2008

<b>はじめに</b> 2008年1月に発覚した「中国製冷凍餃子農薬混入事件」は、日本人に大きな衝撃を与えた。それは中国の問題のみならず、日本の食の在り方が浮き彫りにされた事件であるからである。私たちの毎日の食のあり方、食料生産と日本の農業の問題、食料と環境、消費者の権利と責任など様々な問題が内在している。食生活と消費のあり方を食の現代的課題から学ぶには「中国餃子事件」は適切な教材だと判断し、大学生対象に授業をした。<br><b>目的</b> 1どのような授業を行なうか、学生の認識から出発し、学生の意見を採り入れて編成する方法を探る。2知識だけではなく、意識・行動の変革へつながる学びの方法を検証する。これまでの共同研究*で、「各自が個人として意見をもつこと・批判的な思考を導入すること、グループ討議等で自分の意見を発表し他者との考えをすりあわせること」の3つの方法を授業に取り入れることが有効であることあきらかになっている。その方法を取り入れる。<br><b>方法</b> 「中国餃子事件」を授業の切り口として、「消費」の学習に位置づけて大学生を対象の授業をおこなう。事前事後の学生の記述をもとに学生の意識の変容を探り、授業の有効性を検討する。授業展開 対象は社会福祉学部の「家政学」受講生3年生68名。<br>1.中国餃子事件に関して、自分の認識を明らかにし、他の人の意見を知る(自分の意見を書いてから小グループで意見交換後発表)。<br>2.事件の概要を知るため、VTR「食のチャイナショック」(『ガイアの夜明け』2008年3月18日)を見る。感想・思ったことを書く。<br>3.何が問題か、何を学ぶ必要があるか、話し合う。<br>4.学習内容の提示 学生の意見を基に授業者の意見も加えて提示。<br>(1)価格のもつ意味-値段には理由がある (2)表示の見方-ジャム2種の食べ比べから (3)日本の食料事情 (4)食の安全性(「食料の価格は社会情勢・気候などにより変動する」ことを知る、に変更)(5)消費者の権利と責任-ロールフ゜レー「エコ買い」(6)食と環境-フート゛マイレーシ゛買い物ゲーム(輸送機関によるCO2排出量換算データ付カード使用)(7)公正貿易(チョコレートのフェアトレード)(8)世界的視野から日本の食の現状を見る (9)地元産小麦で餃子をつくる。<br><b>結果</b> _I_.「中国の問題」という授業前の意識が「日本の問題である」という意識に変わった。_II_.「他人の責任」という意識が「自分の問題」として捉えるようになった。<br> 授業前は、「中国の生産・衛生管理の不備」「中国人の食に対する意識の低さ」「中国の事実隠蔽体質」など「中国の問題」の記述が一番多く、次いで「輸入管理体制の不備」「外国の生産管理体制の把握に責任を負っていない企業」「事件発生後の企業の対応のまずさ」など輸入管理体制や企業の問題に関する記述が多かった。<br> 授業後の「授業を受けた現在、何が問題か」の問に対する記述を、記述数の多い順に次に示す。1日本の自給率の低さが問題・自給率を上げるべき 2日本人が輸入食品に頼りすぎている 3消費者の食に対する意識が低かった 4業の責任感のなさ・管理の甘さ 5企業が利益ばかりを追求しすぎる 6食に対して見分けられる目・安全の判断のできる目を養い選ばなくてはいけない 7環境に対して関心を持つ必要がある 8自給率が低いのは日本の農業政策が問題等の記述があった。<br> 食生活や消費のあり方など、意識・行動の変容が問われる授業では、視野を広め、物事を多面的に考えられるようになることが必要である。その為の授業方法として、学ぶ内容に学生が意見を言えること、「自分の意見を表明し他者の意見と摺り合せること」を組み込んだ授業は有効であると言えよう。*「魚の調理から始める循環型社会を志向する授業」「子どもの食生活の現状からどう学びをつくるのか―授業「なぜひとりで食べるの」」など